本居宣長『済世録』における擬態語について
著者名(日) 渡辺 睦美
雑誌名 大妻国文
巻 11
ページ 87‑107
発行年 1980
URL http://id.nii.ac.jp/1114/00001638/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
本 居 宣 長
﹃ 済 世 録
﹄ に お け る 擬 態 語 に つ い て
渡
辺
睦
美
一 本居
宣長 の﹃済 世
﹄録 の︑ 毎 日 の天 候 記が さ れる よう にな たっ 第 七巻 以後 の記 述 に つい て︑ 北 原 進氏 が 本﹃ 居 宣長 全集
・ 第 十 九巻
﹄︵筑 摩書 房︶ の解 題 で次 のよ う に説 明 し て いる
︒
﹁済 世 録 七﹂ 表 紙 に
﹁寛 政 四年
/ 壬子 月正
﹂︑ 裏 表紙 に 本﹁ 居 廿五
﹂ とあ り︑ 記載 期 間 は同 年
︵一 七 九 二︶ と 翌年 の二 年分
︒ 墨附 一六 五 枚︑ 自 紙が なく 表紙 とも で 一六 七枚
︒
⁝⁝
﹁済 世 録 八﹂ 表 紙 に
﹁寛 政 六年
/甲 寅 月正
﹂︑ 裏 表紙 に
﹁本 居 廿六
﹂ とあ り︑ 同 年
︵一 七九 四︶ より 寛 政 八年 ま で三 年 間 を記 載 す る︒ 墨附 二〇 八枚 白︑ 紙 くな 表 紙 とも 計 二 一〇 枚︒ な お︑ 寛 政 六年 月十 より 十 月二 に至 る宣 長 の 和歌 旅山 行中 の記 載 には 異︑ 筆 と みら れ る箇 所 があ る︒
﹁済 世 録 九﹂ 表 紙 に
﹁寛 政 九年
/ 丁 巳正 月﹂︑
裏表 紙 に 本﹁ 居 廿七
﹂ とあ る︒ 記 載期 間 は同 年
︵一 七九 七︶ 正 月 ょり 十 月一 ま で三 箇年 分 であ るが
︑
⁝
・⁚︒ 残存 部 を整 す理 れば 次︑ のご くと あで る︒
① 政寛 九年 月正 元
〜日 月七 十 本居 宣長 済﹃ 世録
﹄に おけ る擬 態語 につ いて 八 七
八八 日前 半
②︑ 寛 政十 年 月七 十 八日 後 半
〜翌 十 一年 月七 十 八日 前半
③︑ 集計 部 の寛 政十 一年 七 月分
︑ およ び盆 前 分︑ 同十 年
︒九 年 の集 計部 分 全部
︑ であ る︒ 墨附 八十 枚 表︑ 紙 とも で計 八十 二枚 が残 る︒ な お︑ 寛政 十 一年 正 月 より 月二 に い た 和る 歌 旅山 行期 間中 の記 載 に異 筆が みら れ る︒
﹁済 世 録十
﹂ 表 紙 に
﹁寛 政十 二年
/庚 申 月正
﹂︑ 裏表 紙 に
﹁本 居 廿
﹂八 とあ り︑ 同年 盆 八〇
〇
︶正 月 より 本︑ 居 宣長 没後 文の 化 四年
︵一 八〇 七︶ ま で︑ 八年 間 わに た てっ 記 載 さ れて いる 寛︒ 政十 二年 十 月一 から 翌年 月三 初 旬 に いた る︑ 宣長 の和 歌 山行 の不 在期 間 の記 述 に異 筆 があ る︒
⁝
⁝墨 附 五十 八枚
︑ 自紙 はな く︑ 表 紙 とも 六十 枚 あで る︒ 毎
日 の天 候 が記 さ れ て いる 中 に︑ 非常 に興 味深 い擬 態 語 使が わ れ て いる 本︒ 論 は︑ そ れら が︑ うど いう 状態 を いう のか 明 ら か にし よう と す るも ので あ る︒ 天候 に関 す 擬る 態語 はに
﹁︑ ウザ ウザ
﹂ 公 一十 三例
︶ ウ﹁ サウ
﹂サ
︵十 例六
︶ モ﹁ ヤ モヤ
﹂ 2 例︶
﹁ボ ロポ ロ﹂ 公二 例
︶
﹁ジ リジ
﹂リ C 一例
︶
﹁ニ ヤ ニヤ
﹂ 2 例
︶ の六 つが 現 れ る︒ 日付 の順 を追 てっ そ︑ の箇 所 を抜 き 出 し てみ ると 次︑ のと おり であ る︒ ただ
し︑ 年号 は便 宜 上︑ 寛﹁ 政﹂ を
﹁寛
﹂︑ 享﹁ 和
﹂ を
﹁享
﹂と たし
︒ 以下 も同 様 であ る︒ 二
○ ウ ザ ウ ザ o済 世 録 第 七 巻 oウ ザ ノ ヽ
寛 4
・ 4
・ 2
●ウ ザノ ヽ 寛 4
・晴 曇 ウザ ノヽ 他 所夕 立 寛 5 o雨 後晴 ウザ ノヽ 寛 5
・大 雨 ゴ ヽウ ザノ ヽ 晩 晴 寛 5 o第 八巻
・欲 晴 ウザ ノ ヽ
・ビ ウ 天 後 ク モ リ ウザ ノ ヽ 寒
・兆 晴 叉 雨 ウ ザ ノヽ
・雨 或 止 ウザ ノ ヽ
・雨 ウザ ノ ヽ
●ウ ザ ノ ヽ
・晴 曇 ウ ザ ノ ヽ
・晴 曇 ウ ザ ノ ヽ ジ ヽ雨
●ウ ザ ノ ヽ ゴ ヽ晴 夜 フ ケ雨
●ウ ザ ノヽ 後 晴
・朝 ウザ ノ ヽ 晴 夜 雨
・朝 雨後 ウ ザ ノ ヽ 晩 晴
・晴 ウ ザ ノヽ
・晴 ウ ザ ノ ヽ 本居 宣長 済﹃ 世録
﹄
における擬態語について
寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 7 寛 8
56888886555532 8875
8 24 27 10 8 7 5 4 22 21 20 14 12 21 12 18 27 9
八九
●ウ ザ ノ ヽ o第 九 巻
・曇 雨 ウ ザ ノ ヽ o第 十 巻
●ウ ザ ノ ヽ 曇・ ウザ ノヽ 夜 晴
○ ウ サ ウ サ o第 八 巻
・雨 天 兆 晴 晴 又 フリ ウ サノ ヽ o晴 ウ サど
︑
●ウ サノ ヽ o晴 曇 ウ サノ ヽ
・晴 曇 ウ サノ ヽ 夕 立 少 雷
・朝 ウ 才ノ ヽ晴
・雨 天 ウ サノ ヽ
・雨 天 ウ サノ ヽ ゴ ヽジ リノ ヽ 晴
・曇 後 晴 ウ サノ ヽ
●ウ サノ ヽ 雨
・兆 晴 晴 ウ サノ ヽ
寛 8 寛 10 寛
6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 6 寛 7 寛 7 寛
7 寛 寛
12 12
87788866555 9 7 10
18 21 19 29 28 11 6 5 26 25 15 13 18 14
九
〇
・雨 後 晴 ウ サノ ヽ
二 里 大 ゴ ヽ晴
ウ サ ノ ヽ
o第 九 巻 oウ サノ ヽ
●ウ サノ ヽ o第 十 巻
●ウ サノ ヽ
○ モヤ モヤ o第 七 巻
・晴 曇 モヤ ノ ヽ
○ ボ ロボ ロ o第 七巻
・晴 午 時 雨 ボ ロノ ヽ 曇
・曇 ボ マイ フ︑ リ ど
︑
・曇 ジ ヽボ ロノ ヽ ゴ ヽ晴 曇
○ ジ リジ リ o第 七 巻
・曇 ビ ウ ア リジ リノ ヽ 晴 寛 5 o第 八巻 本居 宣長
﹃済 世録
﹄ にお ける 擬態 語 につ いて
寛 8 寛 8 寛 9 寛 9 寛
12 寛
4 寛
4 寛 5 寛 5
8 8 12 5 5 12 5
19
23 11 7 27 26 23 22 1 9
九 一
・朝 曇 ジ リノ ヽ 晴
・雨 天 ウ サノ ヽ ゴ ヽジ リノ ヽ 晴
○ ニヤ ニヤ o第 十 巻
・晴 ヤニ ノ ヽ 晩 少 シ雨
享 1
・8 l 2o 以
上 の六 例 のう ち︑
﹁ウ ザ ウザ
﹂ と
﹁ウ サウ
﹂サ は︑ 音が 似通 てっ おり
︑ 使 い方 も はぼ 同様 と みら れ るも のが 多 いよ う あで る︒ 試 みに
︑ そ の意 味 辞を 書 に当 た てっ みる と︑
ウ﹁ ザ ウザ
﹂ を見 出 語し と し て採 録 し て いる 辞典 は多 くあ り︑
小﹁ さ いも のが 多数 集 ま てっ うご めく まさ
﹂翁 広辞
﹂苑 岩波 書店
・昭 和五 一年 版︑ その 他十 六種 の辞 典︒
︶な とど し て いる が︑
﹁ウ サ ウ
﹂サ を採 録 てし いる も のは くご 少な く︑ か つ︑ 採 録 し て いる も ので も︑ そ 意の 味 は︑ 天候 や空 気 状の 態 表を すも のと し て は不 適 当 と思 われ もる のば かり であ る︒ 例 えば
﹁日 本 国語 大 辞典
﹂︵小 学館 に︶ は︑ ウ﹁ サウ サ﹂ に つい て︑ 方言
①梢 然
︵し うょ ぜ ん︶︒
し おし お︒ 勢﹁ いこ ん でか け て い たっ が︑ うさ うさ と帰 てっ き
﹂た 秋田 県鹿 角郡 156
②落 ち
着 か な い さ ま
︒
﹁う さ う さ あ る く
﹂ 神奈 川 県津 久井 郡 285
とある︒なお︑この項の﹁神奈川県津久井郡﹂という地名は︑同辞典の﹁うざうざ﹂の項にもある︒
① か ぜ を ひ い た と き な ど の 寒 け の 感 じ
︒ 東 京都 南多 摩 郡 280
神奈 川 県津 久井 郡 う﹁ ざ う ざ す る
﹂ 286
富 山県 嘱 波
﹁う ざ う ざ 寒 い こ ちっ ゃ
﹂ ぼ
② 以 下 略
︒
寛 9 8 あ 寛 9 8 2・9
九 二
また
︑
﹁全 国方 言辞
﹂典
︵東京
︶︑堂
﹁方 言俗 語語 源辞
﹂典 倉︵校 書房
︶に も︑
﹁悪 寒 がす るさ ま︒ ぞ くぞ く
﹂︒ の意 味 のあ と に︑ 神﹁ 奈 川 県津 久井
﹂郡 と し てあ る︒ ウ﹁ サウ サ﹂ の意 味 す る
﹁落 ち着 かな いさ
﹂ま と いう こと から
︑
﹁湿 度 が高 く てじ めじ めし う︑ とっ う くし て過 ご し にく いよ う す︒
﹂ と いう 意味 も考 え ら れる し︑ 寒﹁ さ で体 がぞ く ぞく し︑ 落 ち着 かな い︒
﹂ と いう 意味 も考 え られ る︒ 落 ち着 かな いさ まと 悪︑ 寒が す るさ ま は意 味 違が がう
︑ 全 く関 連 がな いと は言 えな い で あ ろ う︒ いず れ にせ よ︑ 神奈 川県 津 久井 郡 には
﹁︑ ウザ ウザ
﹂ と ウ﹁ サウ
﹂サ が 両 方 残 てっ いる のは 興味 深 いこ と あで る︒ こ の二 語 の語 源 が同 もじ ので あ る かど う か はわ から な いが 小︑ さな 虫な ど 集が ま りう ご くめ さま から
︑ わず らわ し い︑ 落 ち 着 かな い︑ と いう 意 味が 生じ さ︑ ら に︑ 気 味 が悪 い︑ ぞ くぞ くす る︑ と いう 意 味 に発 展 し︑ 悪寒 がす る︑ と いう 意 も味 出 てく ると は考 えら れな いで あ ろう か︒ も し︑ 源語 が同 だじ とす ると
︑ こ の ウ﹁ ザ ウザ
﹂ と ウ﹁ サウ サ﹂ は同 もじ だの と い う こと にな る︒ と ころ で︑
﹁修 訂大 日本 国語 辞典
﹂
︵冨山 房︶ に
﹁う さ うさ
﹂し と いう 見出 語し が載 てっ いる
︒ を﹁ さを さ し に同
﹂じ とあ り︑
﹁を さ さを
﹂し は︑ 同辞 典 で︑
① 立 優ち り りた
︑ かひ が ひし
︑ は かば かし さ︑ か し︒
② おと な び たり
︑ おと なら し︑ おと な し︒ とあ
り︑ 天候 と は関 連 が見 だい せな い︒ たし が てっ
︑ こ の
﹁う さう さ
﹂し は︑ う﹁ さう さ﹂ と は無 関 係 の語 あで り︑ 本 論 の場 合 は考 慮す る必 要 はな とい 思わ れ る︒
﹁ウ サウ サ﹂ に つい て︑ 辞書 の見 出 語し に関 てし は︑ 以上 との おり あで る︒ 次 に︑ ウ﹁ ザ ウザ
﹂ と
﹁ウ サウ
﹂サ と 表が し て いる 天候 の状 態 の似 て いる 場合 を表 にま と めて み ると
︑ 次 のと おり あで 本居 宣長 世﹃済 録﹄ にお ける 擬態 語に つい て 九三
2一︒
○ウザウザ
○ ウ サ ウ サ O
ウ ザ ウ ザー ー 晴
十 八 八 七 七 巻済世
数録 寛
⁚ 4
︐ 寛 1 5 3
寛 6
・ 5
・ 22 寛 8
・ 10
・ 14 寛 Y
7 i
年 月 日
ウ ザ ノ ヽ ウ ザ ノ ヽ ウ ザ ノ ヽ ウ ザ ノ ヽ ウ ザ ノ
ヽ 用
前
2 ︲日雨ウザノヽ︑
2 0 日雨天或止ウザノヽ
備考 ︵﹁前 州デ 颯裁
﹇敷 哩 だ
﹄神 げ
¨ガ 訊 す︒ ︶
寛 6
・ 5
・ 26 寛 9
・ 5
・ 22
寛
? 5 苑 寛
? 7 島
ウ サ ノ ヽ ウ サ ノ ヽ ウ サ ノ ヽ ウ サ ノ ヽ
前 25
日晴 ウ サ
/ ヽ 前
18 日ウ ザ ノ ヽ
九 四 十 九 九 八
寛
︐ 2 1
寛 7
・ 6
・ 24
寛
⁝ 5
⁚
欲 晴 ウ ザ ノ ヽ 晴 ウ ザ ノ ヽ 晴 ウ ザ ノ ヽ
翌9日雨後晴ウサノヽ 八 八 八
寛
︐ 5 先 寛 6
・8
・■ 寛 7
・8 1・8
晴 ウ サノ ヽ 朝 ウ サノ ヽ 晴 兆 晴 晴 ウ サノ ヽ
翌 2 6日
ウ サノ ヽ 前 1 0日
朝 ウザ ノ ヽ 晴 夜 雨
○ ウ サ ウ サー ー 晴
○ウザウザーー雨
八 一 寛 9 5 i
雨ウザノヽ
○ウサウサーー雨 Oウ
ザ ウ ザー ー 雨 後 晴 本居 宣長
﹃済 世録
﹄ にお ける 擬態 語 に つい て
前
2 0 日雨天或止ウザノヽ︑翌
2 2 日ウザノヽ
九 五
寛 9 8 亮
寛 7
・ 7
・ 2︲
雨天 ウ サノ ヽ ウ サノ ヽ 雨
2 9 2 7印 爾 耐 珈蜂 ハ咄 〃W 靖 リノ ヽ晴
八 八 八
八 八
九 六
○ウサウサーー雨後晴
O ウ ザ ウ ザ ー ー 晴 曇
O ウ サ ウ サー ー 晴 曇 以
上 こ の表 か ら わ か る よう に︑ 同
じ
﹁晴 れ
﹂で も
﹁晴 ウ ザ ノ ヽ
﹂ と
﹁晴 ウ サノ ヽ
﹂ が あ り
︑ ま た︑ 前 日︑ 翌 日 を 見 とる
︑ 当 日 の
﹁ウ ザ ノ ヽ
﹂o ウ﹁ サノ ヽ
﹂ に 対 し て︑ そ れ ぞ れ
﹁ウ サ′ ヽ
﹂・ ウ﹁ ザ′ ヽ
﹂ と 記 し てあ る場 合 が あ る︒ こ の よう な 場
八 八
寛
⁝ 5 3 寛
︐ 12
i
雨後晴ウサノヽ 雨天ゴヽ晴ウサノヽ
前 8 日晴 ウザ ノ ヽ 八 八 七
寛
︐ 7 井 寛
︐ 6 1 寛 9 8
⁚
晴曇 ウザ ノヽ 他所 夕立 晴曇 ウザ ノヽ 晴曇 ウザ ノヽ ジ ヽ雨
翌聾 印晴 曜妙 ヽ ガハ 夕立 少雷
け皐一月ぃ夕立少雷 一 一則4日晴曇ウザノヽ
八 八
寛 6
・ 6
・ 5
寛 6
・6 6・