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明星大学発達支援研究センター紀要 MISSION March/2020 No. 5
【寄稿】
Tatsuya Koeda:国立成育医療研究センターこころの診療部
1.はじめに
ディスレクシアとは、いわゆる学習障害の中核 となる疾患で、知的な遅れはないにもかかわらず、
文字の読みに著しい困難があり、それによって学 習に支障をきたすものである。読めないと書けな いので、書字の困難も伴う。
根底にあるのは、文字とその読みとの対応に努 力を要する状態が続くこと(解読障害という)であ る。筆者は
35
年間にわたってディスレクシアの 診療と研究を行い、T
式ひらがな音読支援という 早期発見と指導の方法を開発したので紹介する。2.T 式ひらがな音読支援
T
式ひらがな音読支援は、2
段階方式による音 読指導とRTI
モデルによる早期発見と早期指導の2
つから構成されている。2.1 2 段階方式による音読指導
ディスレクシアには、文字とその読みとの対応 がスムーズに行われにくいという困難がある。こ れを解読障害というが、解読が自動化しにくいた めに、いつまでも読みに努力を要し、時間がかか る。そのため文章を読むと疲れるので本が嫌いに なってしまう。その結果、文章の中にある文章独 特の表現や語彙がわからなくなって学業不振に陥 るのである。したがって、治療は解読の自動化を
諮って、一文字が楽に読めるように指導する。次 に意味がわかり聞き覚えがあるという語彙を増や すための語彙指導を行う。解読指導と語彙指導と いう
2
段階方式で指導するとかなりの改善が期待 できる。(1) 解読指導について
治療の第一は解読が自動化されて、一文字が自 然と楽に確実に読めるように指導することであ る。解読指導は「音読指導アプリ」を用いて行う。
スマートフォンのアプリ検索で「音読指導アプリ」
と入力すると、図
1.
の画面が出るので、インストー ルする。令和2
年1
月現在、無料で配信している。スマートフォンと
iPad
に対応している。アプリでは「ひらがな直音」、「ひらがな単音」、
「カタカナ直音」、「カタカナ単音」の音読練習が できる。文字が出てから
2
秒後に読み上げる音声 が聞こえてくるので、子どもには「文字が出たら すぐに読むように」教示する。音声が出る前に読 めたら指導者が〇をタップし、読めなかったり、間違えたり、読み上げる音声と重なってしまった 場合には、正しい読み方を言わせて、×をタップ する。読める文字が増えてくると、次第に出てく る文字数が減少して、最後には終了となる。リセッ トをして、
1
日1
回5
分の練習を繰り返す。5
~6
回リセットするくらい練習するとかなり読めるよ うになってくる。解読指導は3
週間ほどで効果が 現れる。リセットした回数が多いほど改善効果が 高い。小 枝 達 也
ディスレクシアのある子どもの診断と 治療および早期からの支援
――T 式ひらがな音読支援の理論と実践――
57 ディスレクシアのある子どもの診断と治療および早期からの支援
(2) 語彙指導について
語彙指導は、見覚えのある、意味が分かる、聞 き覚えのある言葉を増やすことで、音読の速度を 高めるための指導である。教科書(国語がお薦め)
の中に書いてある言葉で、その子がよく知らない 言葉を抜き出して、①読んで聞かせ、②意味を教 えて、③例文をつくるという
3
つのステップで指 導する方法が効果的である。「見覚えがあり、聞き覚えがあり、そして意味 が分かる」という語彙が増えることがポイントに なる。③の例文つくりがとくに重要で、
1
つの語 彙につき3
つくらいの例文を作るとその語彙を忘 れにくくなる。語彙指導の効果を実感するには、半年以上は指導を継続する必要がある。
2.2 RTI モデルによる早期発見と早期指導
RTI
(Response to instruction
:指導に対する反 応)モデルとは、通常の学級での指導だけでは困 難を生じる子どもに対して、診断の有無に関わら ずに指導を行い、その指導への反応にあわせて段 階的に指導の方法や頻度を変える支援方法であ る。
RTI
モデルによる指導(図2.
)では、小学校1
年 生の各学期末にひらがなの音読評価をして、基準値以下の子どもには音読指導アプリを使って解読 指導を実施する。基準値をクリアしていれば指導 は終了とするが、基準値以下であれば音読指導を 継続する。
1
年生の3
学期に評価をして、基準値 をクリアしていない子は、2
年生から通級指導教 室にて解読指導と語彙指導を行う。語彙指導の効 果が現れるには、時間がかかるため2
年生の3
月 にひらがなの音読評価をして、改善が不十分な場 合には、ADHD
などの併存も考慮して医療機関 の受診を検討する。
T
式ひらがな音読支援は、開発が終了して社会 実装の段階である。鳥取県では約8
割の小学校で 取り入れられているし、最近では東京都内の小学 校でも取り入れる学校が現れている。ディスレク シアと診断がつくほどではない小児に対しても、とても早く読めるようになり、子どもも保護者も そして教師も手ごたえを感じているという連絡を もらっている。
クリニックで開発した方法であるが、そのエッ センスを取り入れた
RTI
モデルによる早期発見と 早期指導が、教育現場に広まっていくことを願っ ている。図1. 音読指導アプリの画面
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【文献】
小枝達也、関あゆみ(2003):T式ひらがな音読支援 の理論と実践 ~ディスレクシアから音読が苦手な 子まで~.日本小児医事出版.
図2. RTI モデルによる早期発見と早期指導