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株式会社の合併
市 川 兼 序 文
本論文は,株式会社の合併に関連する法律問題を研究することを目的とする0 そのため,まず第一偏において,株式会社合併の経済的機能を研究する○株 式会社の合併は資本集中の手段であり,最も効率的かつ最も強力な独占資本形 成の法的機構である。独占利潤の本体は市場に強制された不等価交換に基づく
利潤である。酪二編において.ほ,株式会社合併の法律的性償について研究する0現在,嘩 説は人格合一儲であり,これに対する有力な反対説として現物出資説がある。
(1)
私としては,スイスの学者ズ−テルにならって−,合併が会社主体の交替である
ことを主張したい。合併に.おいて株式会社の実質内容ほ存検している○株式会社における社員地 位の同一億はその実質内容紅即して判断すべきである0したがっ一て,被吸収会 社に.おける社員地位と吸収会社における社員地位とは同一催を宿する。したが
って,合併に.おける包括承継に・は,会社の対外関係のみならず,周■内関係(社 員関係)も含まれる。すなわち合併ほ会社主体の交替である0 したがってニ,
吸収会社に.よる新株発行ほ,磯吸収会社に・おける社員地位を承継す盲ための手 段配すぎなヤ、。新株券は被吸収会社における社員地位を確認する証券にすぎな い。したがって合併による新株発行には,通常の新株発行における諸原則はあ てはまらない。額面以下発行禁止の原則や,自己株式引受禁止の原則はあて−は
まらない。
第三偏においてほ個別的法律問題を研究する。
① 合 併 比 率
(1)JiirgSuter,DieFusionvonAktiengesellschaftenin Privatrecht und Steuer・
ⅠeCbt,ZはⅠich1966
蜜42巻 餓4号 432
ー・3β −
合併も取引であり,当事者が自由になしうる。客観的な価値測定基準に基づ
いて測定される価値と,当事者が契約において:主観的に約定した価格とは異な
る。前者ほ後者を決定する際のひとつの判断資料にすぎない。株主保護ほ総会 の特別決議と反対株主の株式買取請求権 で,債権者保護ほ債権者保護手続で十 分である。不等価交換に基づく利潤獲得を求めておこなわれる合併が,不等価 交換によることは何ら寄妙なことではない。商法が他の場合には要求していな
い等価交換を,合併の場合に限って要求しているとほ考えられない○④ 債務超過会社
法律は合併を当事者の財産状態や経済的意図の如何によって合法または遵法
とするべきでない。合併にによる新株発行にほ額面以下発行禁止の原則はあて はまらない。将来の債権者も合飯後の合社についての資本充実の原則より以上 を要求しうるものでない。したがって債務超過会社も合併可能である○
⑧ 解散後の会社
会社継続後の会社ほ完全な権利能力を有する。したがって,解散後の会社も 会社継続をなしうる限り,あらゆる種類の合併を,自社を吸収会社とする合併
もなしうる。合併を資本集中の制度とみれば,物資産と現金資産を区別する必一
要はない。したがって全資産を現金化したのちの会社も合併しうる。
④、貸借対照表継続性の原則
合併によって,損益計算領域への資産価値の移出入は生じない。複数の損益 計算領域の合一・は新出発またほ蘭織変更とは.異なる0合併の効果を判断するた め,合併の前後での,経営成績の比較可能性は保持さるべきである。株主およ
び債権者が欺むかれることを防止するため,評価替ほ・阻止さるべきである○経 済的には会社は継続しており,貸借対照表は会社の経済的状態を反映すべきで ある。したがって貸借対照表継続性の原則は.保持さるべきである○⑤ 自 己 株 式
新株発行は社員地位承姓の手段であり,株式の原始的取得は生じない。合併 に.際しては.,自己株式引受禁止の原則はあてほ.まらず,あらゆる形態の自己株 式取得が合法である。ただ,合併後の会社における自己株式の保有鼠が,資本
株式会社の合併 − 3上)・−
433
充実の原則によって制約されるのみである。
⑥ 合併交付金
合併は会社の合叫・である。このことを犯さない限り,合併に.関連してのいか なる変更も合法である。合併交付金ほ合併に関連しての減資に基づく払戻しの 手段ともなりうる。したがって1株のみしか被吸収会社の株主に交付されず,
他はすぺて現金による合併も合法である。交付金紅使用されうる資産の範園は 合併後の会社の拘束資本を除くすべての資産である。
第一・編 株式会社合併の経済的機能 第1葦 現代社会と経済
現代社会ほ巨大組織の時代と言われる。個人が社会的私行勤しようと欲すれ ば,組織の−・貞として行動する以外にない。国家機構の巨大化,労働者団体の 巨大化,企業の巨大化みなその一側面である。このような巨大組織社会をもた らしたものほ,その下部構造,すなわち,独占資本主義経済である。独占資水 主義経済は自由な資本主義経済の必然的帰結である。すなわち,資本主義経済 においては,生産手段の私的所有と,それに基づく自由な営利追求競争がおこ.
なわれる。より安い価格の商品を提供できるものが特別剰余価値を得て:,その
競争に勝ち生き残る。より安い商品ほ.より高い生産性紅よってもたらされる。 \
より高い生産性ほより大規模な生産に依存する0そこで各企業はそ中生産規模 を強大化する必要,すなわち,資本を強大化する必要紅かられる。
資本を強大化する方法には資本集中と資本集積がある。資本集積は個別資本 が自己の利潤を再生産に・投入すること紅よっておこなわれる。資本集中は複数 の資本がそれぞれの自立性を失って融合し,1個の資本となるこ.とによって行 なわれる。信用・株式会社制度の発展に・よって,資本の巨大な規模の集積と集 中が可能となる。かくして市場支配力を有する少数の独占団体,カルテル,ト ラスト,シソジケ」−ト,コンツェルンなどが発生する。、市場支配力を有する独 占資本ほ,独占価格を設定して独占利潤を得ることができる。独占利潤ほ・≪特
籍42巻 貨4弓
434 ー 40 一
別剰余価値部分≫と≪社会的平均をうわまわる利潤部分≫よりなる○前者は標 準よりもより高い生産性によるものであり,後者は市場支配力に底づくもので ある。すなわち独占利潤の本体は,独占資本がその市場支配力に応じて価値以 上の価格を設定し,苗場に蘭刺した不等価交換軋基づいて獲得する利潤,なの である。
第2葦 資本集中の手段としての株式会社の合併
資本集中は次のような経済的機能を有する○すなわち,資本力の強化 企業
の大規模化に.よる生産および経営の効率化,市場支配力の強化等である○資本集中の方法には遊休資本の集中と機能資本の集中とがある0遊休資本の 集中は一・般公衆からの株式の募集に・よっておこなわれる○機能資本の集中はす でに磯能せる2つ以上の資本の1個の資本への合一・によって・おこ・なわれる0
株式会社ほそれ自体すでに強力な資本集中の所産である0複数の株式会社が
結合する方法にほ,契約による結合と株式取得による結合と所有権取得による
(3ヽ 結合とがある。契約による結合は,経営権の経済的。法律的自立性を前提とす
る。株式取得による結合は経営権の法律的自立性を前提とするが,しかし−・定
の限度を超えると経営権を実質的に支配する。所有権取得による結合ほ,経営 権の形式的実餐的結合を意味し,経営権そのものが1個の痙営権に.融合され
る。契約による結合および所有聴取得による結合には相手方経営者の同意を要 するのに対し,株式取得に・よる結合にはそれを要しない。
(2.)Haussmanは物樅的事例,潰権的事例,混合的事例に分類する(GrundI・iβdes RecPtsderUnternehmungszusammenfassunざen,1926,S・125)oW・Kaskellは,
律的独立性を制限しない個別的な目的のための一・時的な契約上の合一・(KonsoIitium),
法律的な独立性の放棄の下での紘続的な契約上の合一・(Fusion),法律的な独立性保持の 下での継続的な契約上の合一・,と分類し,さらに籍三のものを価格形成のための相互的
規制(Kartell)と,他の目的,特紅原料購入および販売の継続保障(Konzern) 紅分ける
(TW.1927,S.1669)。大隅博士はカルテル,コンツェルン等紅つき,法律的概念構成 を不可として,経済学上の概念を借用し,各概念ビとの法律組織を研究する(大隅健・−・
郎「企業合同法の研究」3ぺ−・汐)。
株式会社の合併
− 4J−
435
契約による結合にほ利益共同契約,営業の賃貸借契約等がある。株式取得に よる結合には,山方的参加と相互的参加がある。所有権取得に.よる結合には営 業譲渡と合併とがある。契約による結合は当事者の意思によって破棄可能であ
る。株式取得による結合は株式取得者の意思によって破棄できる。所有権取得 による結合ほ経営権を単一・にする最も強力な結合である。営業譲渡と合併とを 比較すれば,前者は対価を現金で支払わねばならないのに対し,後者は紙切れ
(自社株券)を交付すればよい。すなわち合併の経済的特質ほ,現金支出なく して,資産を獲得できることにある。したがって合併ほ資本集中の最も強力か っ最も効率的な手段である。しかし,吸収会社は他のすべてゐ集中方式におい てほ,相手方の債務に対し責任を負わないのに対し,合併においてほ相手方の 債務に対しても資任を負わねばならない。また他のすべての集中方式において ほ.株主の収容を要しないの準・対し,合併においてほ無償で資産を獲得する手段 として,被吸収会社の株主を収容しなけれはならない。
資本集中が一局の段階に達すると,独占を成立させる。独占ほ大資本家に.独 占利潤をもたらすが,その源泉は小資本家およぴ−・般大衆からの収奪である。
そこで国民経済の健全な発達および大衆保護のため,独占禁止法が制定され た。この法律ほ私的独占,不当な取引制限および不公正な取引方法を禁止し,
事業カの過度の集中を防止する.ことを目的としている(同法舞1条)。合併につ いてもー雇の取引分野における競争を実質的年制限する合併および不公正な取 引方法による合併が禁止されている(同法欝15粂第1項)。
合併は最も効率的かつ最も強力な資本集中の手段である。したがって現在に おいては,株式会社の合併ほ独占資本形成の最も効率的かつ最も強力な手段で ある○独占資本は不等価交換に基づく独占利潤を取得する。合併のこのような 経済的機能ほ合併を規制する商法としでも考慮せざるを得ないものである。ご以 下紅おいて,合併の個別的法律問題が,合併の経済的機能を考慮して,如何に 解釈されるべきか検討する○そのため,まず第二偏に.おいて,合併の最も基本 的概念たる句括承継に・つき検討する?それ紅先立って,ドイツの合併法規が合 併の経済的機能をどのように反映しているかを,先の経済的分析を法史的紅確
策42巻 第4葛
−42 −
436記する意味において,みておこう。
第二編 株式会社合併の法律的性質 第1童 ドイツの合併法規
Ⅰ. ADHGB
ドイツの産業革命を背農として,1861年普通ドイツ商法(ADHGB)が制定 された。ADHGB第247条は合併を解散の−・種として規定し,また譲渡会社の
債権者が満足を得るまで阻止期間の間,両会社資産の分離管理を規虚した。し
かし吸収会社のその義務は.取締役の損害賠償責任によって保証されるにすぎな かった。また夢215条第4項は譲渡決議に株主全員の−・致を要求した。なお他(8)
の法律によって合併は免許(Konzession)を必要とした。また株式会社の吸 収合併のみが許された。
ⅠⅠ.HGB
重工業部門における産業革命の進展とともに,エソカ・−と産業資本家の適合 隊が国家権力を振ることとなる。したがってもはや産業資本の集中を国家権力 が抑制する必要ほなくなる。とのような状況を背克として,1870年第一次株式 法改正(Nove11e)によって特許主義が除去される紅至る○さらにドイツ資本主 義が−・応の完成をみた1884年には,第二次株式法改正軋よって欝215条第4項 が変更され,譲渡決議は総会において二代表された資本の4分の3以上を必要主 することに凝減された。この変更ほ株式会社の大規模化た・照応し,資本集中を 促進するためのものであった。この段階によって合併法規の内容的発展ほ−・応 完成するに.至った0
1897年のドイツ商法典(HGB)は従来の合併法規を整備したものであった。
HGB第306条ほ合併を営業譲渡の一層種として規定した○また算304条は清算 を伴う合併を規定した。第305条は株式合資会社紅も合併を認めた。HGBのも とにおいては,資本増加を伴わない限り譲受会社の合併決議ほ不嘗と解されて いた。
株式会社の合併
− 4β −
437ⅠⅠ・1937年株式法
1937年の株式法は,始めて合併を営業譲渡,組織変更,と.並ぶ独立の制度と して規定した。譲受会社の合併決議は原則として−必要とされたが,譲受会社の 付与する株式の券面総額が会社の資本の二1.0分の1を超えないときは,譲受会社 の合併決議は不要であった(同法第234条第1項)。合併決議の要件は決議に.代 表された資本の4分の3以上の多数決であるが,譲受会社の合併決議の要件だ けは,定款によって単純多数決に変更する一ことも可能であった(同法第234条 第2項)。37年株式法ほ始めて,合併交付金を付与株式の券面総額の10分の1以 下の限度において,認めた(同法第238条第2項)。また自己株式の交付を,し たがって無増資合併の合法性を認めた(同法第238条1項)。従来譲渡会社の債 権者保護のため,合併登記後3回にわたる催告と譲渡資産の1年間の分離管理
とが規定されていた(HGB第306条第1項〜5項,< 第297条,第301条)。しかし 企業の即時の合理化および当事会社の財産の併合たる合併の経済上の目的紅反 するとして,債権者に合併登記後6カ月内の担保請求権のみしか認められない
こととなった(同法欝241条)。債権者および株主保護のため,取締役および監 査役の過失責任に基づく損害賠償義務が認められた(同法第247条)。
これらの変更ほ第一・次大戦後のドイツ経済の危機に.照応するものであって,
資本集中を容易にするための変更であった。37年株式法の合併法規は詳細を 極め,もはや判例・学説の活動しうる余地をはとんど残して.いない。従って,
1937年以後のドイツにおける合併論には余り見るべき論文が存在しないようで ある。
ⅠⅤ・1965年株
合併法規に・関する限りでは,1965年株式法は1937年株式法をごくわずか変更 したのみである。すなわち,65年株式法ほ,解散後の会社も継続を議決して譲 受会社として合併できることを明瞭にした(同法第339条第2項)。また従来論 争の卒った,譲渡会社株主の譲受会社株主となる時点を,譲渡会社の商業登記 簿への合併登記の時点とした(同法第346条第4項)。同じく従来論争のあった 合併に・よる自己株式取得を合法と規定した(同法第71条第1項)。こ.れらはいず
第42巻 第4号
−・〟 − 438
れも従来の通説の立.場を肯諾したるのである。さらに.,同法第340条によって:,
全当事会社が合併決議をしなけれはならなくなり,しかも議決に代表された資 本の4分の3以上の多数決という要件は定款に.よってより低く変更されえなく なった。また同法第340粂第3項において,
対する解説請求権が与えられた。1965年の改正は,従来の論争点を解決すると ともに.,少数株主の保護強化を主としてなされている。これほEEC内におけ る経済活動の活発化に伴なって,ごくわずかの遊休資本をも集中するための変 更である,と言えよう0
37年株式法よりは株主保護がなされているとはいえ,しかし,株主各人に周 有の権利として認められて:いるのほ,65年株式法においても,37年株式法と同 様,譲渡会社の取締役および監査役の過失讃任に基づく損害席償義務のみであ
る(同法第349条)。債権者保護粧ついてこも,37年株式法と同じく,6カ月内の 担保請求権(同法第347条)と譲渡会社の取締役および撃査役の過失責任に・基 づく損害賠償義務である(同法第349条)。
このよう紅みてくると,ドイツに.おける合併法規の発展期ほ,まさ紅激しい 経済上の変革期に−・致しているというこ.とができる。そしで合併法規ほ資本集 中をより容易にする方向に・むかって発展してきたといえよう○そしてまた,合 併牲大資本がより大資本となるための手段であるとも言いえよう○その反面と
して,株主および債権者の利益はしだいに軽視され,現在に・おいてほ・,両者 についての譲渡会社の取締役潜よび監査役の過失貴任紅基づく損害賠償義務,
および株主鱒ついての4分の3以上の多数決と,債権者紅ついての6カ月以内 の担保請求権が両者の利益を保護するものであるといいえよう○
第2章 包 括 承 継
Ⅰ.ま え‥ が き
我々は先に,合併の経済的械能を資本集中の手段とし七規定し,したがって 現在においてほ,独占資本形成の手段となっていることを見た0ついで前章に おいて,ドイツの合併法規の歴史より,上の合併の経済的意義づけが法史的に
439
株式会社の合併・− 4β −
も正しいことを確認し,また合併法規の発展方向を見てきた。次に本章以下の4童において,合併における最も基本的概念である包括承継 について検討する。その際の最も重要な問題ほ包括承継紅内部関係(社員地 位)が含まれるか否かである。
ⅠⅠ.承継と同叫・性
承継紅よって,譲受人ほ譲渡人の権利・義務を受け継ぐのであり,そのさ い,その主体の交替にもかかわらずその権利・義務が同一・性(Identitat)を保 持する場合把.のみ,法律上の承継が存在する。・−・身専属的な権利・義務は主体 の交替紅よって,その内容を変えるから承批不可能である。権利・義務の一身 専属性ほ各法秩序によってその意味を異にする。権利の承継湛.よって生じる権 利の取得ほ,派生的取得であって,原始的取得でない。合併に・際しても派生的 取得のみが問題となる。
ⅠⅠⅠ・特定承継と包括承継
承継紅は特定承継と包括承継がある。現行法においては,簡定承継が原則で あり,包括承継は例外をなす。したがって包括承継には法律上の根拠を必要と
(4)
する。キュリはこのことから,さらに故律が包括承継を許すためには,譲渡人 と譲受人との間に償異な事実関係が存在することを要すると考え,それを継続 性(Kontinuitat)と呼ぶ。たとえば,相続に.おいてほ,被相続人と相続人との 間に個人法上の継続性が,合併に.おいては,吸収会社と被吸収会社との間に・会 社法上の継続性が存在しなければならないとする。そして譲渡人と譲受人との
(3)ProtokolIder40。Sitzung: 合併に対する国家的な認可(Genehmigung)の必要性 は資本のかかる合一・および巨大な資本力の一つの会社への集中紅よって,−・方において二 国家的な利益が侵害されうるだけにますます有益である。だが他方国家的な認可がこれ
らの会社に.おこなわれる諸前提も,またもはや同一・ではありえ.ない。複数会社の合併は 本来新会社の創設と異なるものではない 。Vgl.RobertGoldschmidt,Diesofortige Verschmelzung(Fusion)von AG,Berlin1930,S.18.
(4)Annelies鱒iiry,DieUniversalzukzessionbeiderFusionvonAG,Basel19621
なお久保欣哉「資本増加なき株式会社の合併−キュリの所説紹介を中心として,わが国学説の欠陥を顧みる−」(田中誠二先生古稀記念「現代商法学の諸問題」223ぺ一汐以下)
を参照されたい。久保教授ほ日本法の解釈についても,キュ.りの説をほぼ全面的に肯定 される。
第42巻 第4号
440
一イげ 一一聞に継続性が存する場合に始めて法律ほ包括承継を認めることができるとする のである。しかし当事者間に特定の関係が存在するかどうかということは,包 括承継にほ無関係であって,資産の移転を包括承継によらしめるか否かは,法 の自由に定めうるところである。ただ包括承継は全体性(Gesamtheit)におけ
る承継であるがゆえ.に,全体性の範囲が問題となる。
ⅠⅤ.全 体 性
包括承継ほ資産の・一・括しての譲渡であるがゆえに.,譲渡される範囲が法律上 明確たることを要する。したがってこ.の全体性ほ.機能または目的に.よって定ま る全体性(univeISitas facti)であってはならないので,法によって定める全 体性(universitasiuris)でなけれはならない。法律に,よる全体性の定め方に は,消極的にある法主体への帰属に.よって定める方法と,積極的に.法律がある 種の資産を特別扱いする方法とがある。前者の場合には,全体性ほ多くの権利 義務が特定の主体に帰属し,この共通の帰属点によっで一・単位となるこ.とによ
って,与えられる。この場合にほ.,全体性の範囲ほ譲渡主体に帰属する全権利 義務,すなわち譲渡主体の法的地位に.よって定まる。譲渡主体はその限りでの み意煉を有するのであり,したがって譲渡主体の消滅ほ包括承継の要件でほ・
(∂)
・・(8)
い。包括承継は主体の交替であり,特定承継は物の交換であるというひゆも,
譲渡人の法的地位が継承されるばあいに.のみあてはまる。
着任または債務の移転の問題は包括承継の概念とは関係なく,それは恩的 な,つまり全体性の範囲の問題である。したがって法秩序が自由に定めうると
ころのものである。積極資産と消極資産の関係ほ,権利(積極資産)の全体が 当該権利主体の債務(消極資産)のための資任客体であるこ.とによって与え.ら れる
譲受人が譲渡人の法的地位を継承するばあいに.ほ,全体性の範囲ほさら紅そ れにまとめられている客体の移転可能性紅よって限定される。移転可儲性の論
(5)保険業法欝111条は保険会社の保有突約の一・部の包括的移転を認める。
(6)Breit,ZHR95,S・32: 権利客体のあらゆる移転は主体交替とも,物交換ともみな しうるものであり,それはただそのいずれに注目するかの差にすぎない。
株式会社の合併
−47・−−
441
理的前提ほ,主体交替にもかかわらず存続する権利の同一・性である。しかしこ の間−・性ほ.多かれ少なかれ歴史的発展の産物である。たとえば債権に/ついて ほ,長い論争の後始めて移転が認められるようになった。すなわち主体が権利 の同一一・性紅とって重要なものでなくなり,それゆえ権利の移転が可能となっ
(7)
た。債務の移転可能性についても同じこ.とがみられる。ただこの場合にほ,人 格の無視のみならず,その背後に責任の問題がある。なぜならば資産は−・人格 に帰属することに.よっての衣ならず,またその主体の債務の責任客体であるこ
とによっても・−・単位を形成する。しかし債務者の人格は債務者が彼の資産を自 由に処理でき,そして彼の債務の責任客体を定める限りでのみ意味を有するに すぎない。しかし債務者の人格とその債務との関連は,債務の移転可能性およ ぴその同一・性が問題となる場合軋は,全く重要でない。なぜならば,現代的理 解によれば,債務ほ原則として移転可能であり,それは通常債権者の同意を要 するのみである。もし債権者の同意が包括承継に.おいてと同様必要でないとす れば,債務の移転ほ債権者にとって強制的な債務者交替をもたらす。しかしそ れは責任の問題であり,信頼関係の保証ほ債務の同一・性自体と、ほ何の関係もな い。
主体に極めて強く結合していることによって移転不可能な権利義務が存在す るが,法人においてほ,法人自体の非個人性のゆえに.はとんど存在しない○
Ⅴ. ま と め
譲渡人の人格は,移転さるべき全体性の範囲にとってのみ意味を有するので あって,その人格の消滅と包括承継そ・れ自身とは無関係である。しかし権利主 体の消滅は最も包括的な全体性を作り出す。この全体性を特定の利益の保護の ためす 制限することは全く法秩序の自由である。法的全体性の存在するあらゆ る場合に包括承継が可能である。責任の問題も債務移転の問題も包括承継の概 念とは無関係である。貿任の問題は信漑関係保持の問題である。譲渡人の紘的 地位が移転される場合把.は,全体性の範囲はさらに.それ紅まとめられている諸
(7】von TuhI ,BGBI,S.220.
第42巻 第4号
442
−・Jβ −−−
権利義務の移転可能性によって限定される。譲渡主体の法的地位が移転される 場合にほ,各個別権利義務の移転形式ほ不必要である。法的全体性の形成は法
(8) 秩序に.よって定められる。
第3章 合併における包括承継
Ⅰ. ま え が き
前章において包括承継は譲渡法人格の消滅と無関係であること,および包括 承継において全体性の範囲が譲渡法人格への帰属(譲渡人の法的地位)によっ
て定まるほあいたは,承継の範囲を限定するのほ権利義務の移転不可能性のみ であることを衣た。
本草においては法人の全権利義務が移転可能かどうか,したがって包括承継 に.おける移転の範囲が制限されるかどうか検討する。
ⅠⅠ・相続との比較
自然人の死は自然法の支配下にあり,そして法秩序によって処理されねばな
らない状態を否応なしに.作り出す。法人の消滅は儀規定によるかまたは参加者の自発的意思による。自然人の死に.おいてほ,譲渡主体の消滅に.よって,その 資産の管理人も,また譲渡紅必要な形式を守るぺき主体も消滅する。したがっ
て,相続は・不要式でおこなわれざるをえない。法人の消滅においてほ,会社資
(9) 産の管理ほその機関またほ社員によっておこなわれうる。それゆえ譲渡に方耳
(10) を要するか否かは法政策に.よる。自然人の死に.おいては,包括承継以外の他の
方法が存在しないのに対し,法人の消滅に‥おいては.,原則は清算と特定承継で あり,包括承継は例外にすぎない0自然人の死に・よって人の生活は終了し,従 来の活動の成果は残るが,活動自体は消滅する。相続人ほ被相続人の財産関係 紅入りこむだけであって,その活動力までは承継しない。会社の法人格ほ営利
(8)Suter,a.a.0.S.33
㈲それゆえ清静の排除によって包括承継が必然となるという推論(Ⅹ山y,a.a.0.S
73い)は正しくない。
仏0)K山y,aりaハ0・Su39: 特定承継と異なって包括承継はつねに不要式でおこなわれ,
しかも法律行為との関連にいおいてかまたほ法によって法律上雇要な自然的事実紅結びつ けられる。
株式会社の合併
こ一49・−
443
目的のための手段■■であり,自己目的ではない。会社に.おける侶儲関係は法人格 について成立するのでほなくて−,会社に体現し,凝結している経済的利益およ びカ,いいかえれば財政的基礎,信用,営業の種類および規模など会社の組織 と経済的給付能力について成立する。会社の組織および給付能力ほ,合併によ って,従来のまま吸収会社に.移転サる。自然人の死にさいしてこほ,移転しない 一身専属的な権利義務も,それがすでに非個性的な法人格のため存在していた
ということによってその個人的な性質を奪われ,移転する。したがって法人に 存在するすべての権利義務ほ,その活動力まで含めて,合併紅さいして,包括 承継に含まれ,移転する。
第4章 法人 と 企業
Ⅰ. ま え が き
前々章および前章に.わいて,法人の全権利義務ほ原則として移転可能であ り,その法主体の交替に.もかかわらず同一性を有すること,したがって合併に よる包括承継に.も原則として全権利義務が含まれることをみた。
このことについて−,法人の外部関係(対第三者関係)に/関する限りでほ.,現 在異説をみない。しかし法人の内部関係(会社社員関係)については,我国で ほ現在すべての学者が承継されないことを当然の前提としている○ はたして 内部関係ほ当然に承継されえないものであろうか。これについて以下の本章お よび次章で検討する。そのためまず本章に.おいて,合併紅さいして消滅するも のと存続するものを明らかに.し,次章において,社員地位の同・一億ほそのいず れに.ついて判断されるべきかを,したがって被吸収会社紅おける社員地位(内 部関係)ほ消滅するか存続するかを検討する。
1Ⅰ.法人の概念と本質
通常 PeI・SOn という概念にほ2つの意味がある。1つほ権利義務の担い手 の意味紅おける法主体としての PeI・sOn であり,もう1つは倫理的意味に.お ける Person すなわち法に‥おける Mensch である。第一・の意味に.おいては 純粋に形式的なあるもの,すなわち抽象的な法的資格であ句,同様に形式的な
第42巻 簡4号
ー 5クー 444
権利義務の純粋に形式的な帰属点であるものが示されている。第二の意味紅お いてほ,人的静厳および人格権,すなわち白から行為し,思慮し,責任を負う 人間を形成するすべてのメルクマールが帰属するところの人が表示されてい る。法人においても,同じく権利義務の担い手たる抽象的資格の意味における 法主体(形式的な帰属点またほ法秩序のテクニー・ク)としての法人と,具体的な
(11)
経済的共同生活の形成物としての法人とが存在する。ラレンツにならって,前 者を抽象的−・般的意煉に.おける法人(eineJuristischenPersonim abstrakt−
allgemeinenSinne),後者を具体的p戯的意味における法人(einejuristischen
Personim konkret−allgemeinenSinne)と呼ぶこと紅する。合併において
消滅するのは,抽象的−・般的意味における法人(=法人格)のみであって−,具 体的−・般的意味における法人は存続している○ⅠⅠⅠ.企
業具体的−・般的意煉における法人ほさらに主体的要素と客体的要素よりなる。
主体的要素とは共同目的追求のため組織された人的結合体としての会社(組織 体と社員関係)であり,客体的要素とは−・定目的に・よって統一劇な組織的単位 に結合されている資産複合物,諸権利義務の総計,事実上の諸関連,すなわち 経済的観点から組織された単位である。この客体的側面を企業(物的結合)と 呼ぷ。法人税法上納税義務ある法人とほこの企業をさす。
第5章 社員地位の承継
Ⅰ.ま え が き
前章に.おいて合併にさいして消滅するのほ,坤象的一腰的意味における法人 であり,具体的−・般的意味に・おける法人は存続することをみた○本章払おいて ほ,社員地位承継の前提としての社員地位の同一・性がそのいずれに即して判断 されるべきか,および商法の−・般理論よりしでそのような判断が可能かどう か,検討する。
(11)KarlLaren2:,Methodenlehreder Rechtswissenschaft,Berlin1960,S一・353ff
株式会社の′合併
−βJ−
445
−・般に我国においてほ.,合併にさいして社員地位ほ承継されない,と考えら れている。すなわち,譲渡会社紅おける社員地位は譲渡会社の消滅とともに消
(12)
滅し,譲受会社における社員地位ほ新たに.発生すると考えるのである。したが って対外的権利義務のみが包括承継に含まれ,対内的権利義務(社員関係)は 包括承継に.含まれないとするのである。譲渡会社における社員地位と譲受会社 における社員地位との間に同一・性が存しない,ということがこのような考え.の 前提となっている。
しかし両者とも,議決権,利益配当請求権,残余財産分配請求権等は存在す るから,同一・性の否定ほ問題となる。もし同一・性が肯定されれほ,合併に.おけ る包括承継の範囲は,譲渡主体の法的地位によって定まるから,社員関係も包 括承継に含まれることとなる。
ⅠⅠこ 同一・性否定の根拠
譲渡会社における社員地位■と譲受会社における社員地位が同叫性を有しない ということほ,当然の前提とされ,これを理論的に.明言する学者ははとんどい ない。ただ大隅博士がこれを明言されているから,大隅博士の論拠を紹介し,
検討する○
大隅博士は,譲渡会社の株主の取得する譲受会社の株式が承継財産によって
(13)
制約される,ということを理由として同・−・性を否定する○
(14) また同博士ほ合併現物出資説の立場から次のよう紅主張する。すなわち,合
併に.おいても通歯の現物出資に・おけると同様,出資財産の正しい評価とそれに
(1訝 したがって譲受会社払おける社員地位の取得は原始的取得と考えられることとなる。
ゆえに自己株式引受楽止の原則が問題となる。参照本論文33ぺ−ジ以 下
仏3)大隅健一郎「会社法の諸問題(増補版)」……・以下,大隅,と引用…‥刷,360〜361ぺ一 汐「存続会社の増加すべき資本額またほ新設会社の資本額が解散会社から承継する純財 産額によって制約され,したがって解散会社の株主が存続会社またほ新設会社払おいて 取得する株式もまた右の純財産額により規定されるということは,すなわち解散会社の 株主の地位が存続会社又は新設会社に移行するるのでなくして,合併により移転する財 産を出資と㌧て新たな株式が発行され割当られるということ紅外ならない。この場合に 合併の前後における解散会社の株主の地位に同一バ性を認めることは不合理なばかりでな
く′,何らの意味もないことであるJ
(14)大隅363ページ。
第42巻 第4一弓
44(5
ーー うヱ ー
相当する適正な存続会社の資本増加額または新設会社の資本頗の決定が要求さ
(15)
れる。現物出資に基づく新株発行において,会社の資産状態・収益力・金融市 場の状態などに応じる公正な発行価額が要求されるのは,従来の株主の利益保
(1$)
護と資本充実の原則のためである○
しかし合併にさいして,譲受会社の株主の利益ほ保護しなければならない が,譲渡会社の株主の利益ほ保護しなくてもよい,奉るいほ譲渡会社の株主の 利益を犠牲にしてまで譲受会社の株主の利益を保護しなければならない,とは 考えられない。両会社の株主の利益保護は,両会社の株主の持分価値が両者と
(17)
も合併の前後で同じである場合にのみ,保証される。したがって両会社の財産 価値が測定され,それに応じて両会社の1株あたりの持分価値が測定され,そ れに.応じて株式の交換比率が定まる。この交換比率に基づいて株式の発行数が 定まり,したがって額面株式であれば資本増加額も定まる0
(18)
このように考え,かつ株式を会社事業における相対的持分と考えるとすれ ば,譲渡会社の株主が譲渡会社財産によって合併後の会社に・おけるその相対的 な所有株式数を制約されるのと同じように,譲受会社の株主も譲受会社財産に ょって合併後の会社におけるその相対的な所有株式数を制約されるわけであ る。したがって.大隅理論からすれば,譲受会社に・おいても株式は合併の前後で 同一・性を有しないこととなる。しかし存続会社における株式は合併の前後で同
−・性を有すると考えられるから,大隅博士の論拠は合併の前後における譲渡会 社株主の株式の同州性を否定する根拠とはなりえないものと思われる○
払5)大隅370〜371ぺ・−・汐。
仕6)大隅,会社洩論上巻167ぺ一汐。大隅,会社法論中巻299ぺ・−汐。
(用 −・般に.株主平等原則から,このように・考えられている。たとえば「株式会社の合併
(会社法セミ.ナ」−)_巨…以下セけ・−・と引用…‖‥い,矢沢272ぺ−汐および277ぺ一汐参照○
なお本論文の19ぺ一汐以下を参照されたい。
仕8)大隅,会社法論中巻222ぺ−汐「経済的には会社事業は社員全体の共同◆の所有に属 し,社員ほ会社事共につき一億の持分ないし分け前をもつものとみとめられる○しかし
この持分は,会社が法人とされ,会社事業は会社そのものの所有紅屈する結果,法律的 に.は各種の権利義務からなる会社と社員との間の法律関係ないし社員の会社紅対する法
律上の地位としてあらわれる。右の社員の会社事業における持分及びその法律的表現と もいうぺき社員の会社に対する法律上の地位を株式という。」
株式会社の合併
447
・一方3 −−
ⅠⅠⅠ・同一一牲肯定の根拠
合併における法人格の消滅は権利義務の担い手たる資格の喪失のみを意味す る。この意味における法人は形式的な権利義務のための帰属点,法秩序のテク ニ−クである。会社の本質は,つまり法人の内容ほ,合併にさいしては存続し ている。会社資産は従来と同じく営利目的に結合された会社資産であり,株主 の組織された共同体は従来と同じように存続レている○株主ほその社員資格上 の地位を失わない。株主と会社資産との間にほ従来と同じく法人格が入りこん でいる。また会社の積極。消極資産の鼻的変化が社員地位の同一・性の判断の指 標たりえぬことは,増資の前後で社員地位が同一・性を失うとほ考えられないこ とから明白である。抽象的意味における法人は,法人であ孝限りすべて同じで あり,またそれは法技術にすぎない。抽象的−・般的意味における法人は具体的
・一磯的意味における法人を前提として始めて存在しうるのであり,前者ほいわ ば後者の外皮にすぎない。したがって社員地位の同一・性ほ具体的−・般的意味に おける法人について判断すべきである。そうであるとすれば,被吸収会社の社 員地位は合併後の吸収会社の社員地位と同一・性を有すると判断してよい。事態
ほ.増資の前後に.おけると本質的にほ同じである。また会社社員関係の移転可能
性は社員の側での主体交替が問題となる限りでは肯定されている。したがって(19)
会社の側での主体交替【も否定すべき理由はない○それほちょうど債権債務関係 に.おいて,債権者の側での主体交替(債嘩譲渡)と同様,債務者の側での主体 交替(債務引受)が認められるのと同様である。
ⅠⅤ.同一・性の肯定より生じる効果
合併の前後によって社員地位は同一・性を有する。事態ほ増資の前後における と同じである。したがって譲渡会社の社員地位ほ包括承姓に.含まれ,譲受会社
(20)
に.よって承継される。合併ほ.会社社員関係にりおける会社の側での主体交番であ
(19)Suter,a.、a小0.S′′55〜56.
御 寺尾元彦「会社合併論」(早稲田法学舞一∵巻90ぺ一汐)「社員権又は.株主権即ち社員又は 株主が社員又は株主たる資格に於て会社に対し萌する権利義務ほ合併により消滅会社よ
り存続又は新立する会社に移転し消滅会社の社員又ほ株主は合併紅.より存続又は新立す る会社の株主となる。此事ほ異に会社合併の本質的特色とも云う可せものにして合併に
第42巻 寛4弓 448
−54−
る。このことより次のような結果が生じる。
①社員地位ほいずれの会社が譲受会社であるかによって原則として何の相違
(21)
もない。
④合併によっては,その他の場合に.も多数決議によって認められている社員 権の変更のみがおこなわれうる。原則として譲渡会社における社員権と譲受会
(22)
祉における社員権とは同一・である○
⑨合併における株式の交付は,既存の社員地位に関する新たな証券の交付に すぎないのであって,反対給付ではない0
④社員は社員資格地位を失わないがゆえに,新たな受諾行為は必要でない0
⑨社員の収容ほipsojure(法に・よって)ではなく,unO aCtu(−・行為によっ て)おこなわれる。
⑥社員地位の承継のためには十分な数の社員主体を欠く空の社員地位が存在 すればよいのであって,これが増資新株によろうと自己株式によろう′と全く周
じである。
第三編 個別的問題の検討 序
前編において,合併にさいして消滅するのは抽象的−・般的意味における法人 のみであって具体的−・般的意味における法人は存続すること,および合併に・よ る包括承継に偲外部関係とともに・内部関係も含まれるこ・と,したがって合併の 本質ほ会社主体の主体交替であることをみてきた。さて本編においては・これら
於ける権利義務の承継申最主要なるものなり。」
Schilling,Wolfgang,VeISChmelzung(Gadow・Heinichen Grosskommezltar Zum Aktiengesetz2..Band,Berlin1962),Anm48§240: 譲渡会社に・おける社員資格 は全権利義務をもって移行する。
位封 KarlWieland,HandelsrechtII,S.359: 被吸収会社の株主にIとって参加関係およ び会社関係は同じままにとどまる。
C22)Schilling,a.a.0。Anm15§233: 譲渡会社の株主紅与え,られる蛍式はその資産 価値およびその社員権に,したがってその株主が従来所有していた,かつ合併によって 消滅した株式に一l致しなければならない。当事者の同意なしの社員権の変更は,これが
その他の場合にも多数決議によって許されると同じ範囲において−のみ,合併の折にもお こなわれうる。
株式会社のノ合併
−ββ −一 449
のことを手がかりに.して,合併比率の問題,合併当事会社の問題,自己株式と 相互保有株式の問題,貸借対席表継続性の問題および合併交伺金の問題を検討 する。
第1葺 合併比率(交換比率)
Ⅰ. ま え が き
株式会社の合併も経済的に.みれば,利害対立者が資産と持分権とを交換する 行為である。したがって−−・般の攻引におけると同様,取引安全円滑化の要請と 利害関係者の利益調和の要請が問題となる。この問題は株式会社の合併に.おい
ては,資本集中の容易化という要請と債権者および株主の利益保護という要請 との対立として現われる。したがって商法がこの対立をどのように調和させて いるかが問題となる○
ⅠⅠ.価値 と 価格
価値(Wert)ほ客観的な評価基準に従って測定された潜在力(Potential舶t)
であり,価格(Preis)とは契約において最終的に約定されたものであって現実 性(Realit畠t)である。価格には多かれ少なかれ主体的要菜が影響する。価値 も当事者が価格を決定するさいのひとつの判断資料であり,当事者ほ価値と異 なった価格を決定できる。
産業鹿本主義の時代においてほはば完全な自由競争がおこなわれる結果,価
格は平均的に・は価値とほぼ等しくなる○ しかし独占資本主義の時代に飼いて ほ.,独占資本が苗場支配力を有する結果,−・般的に価格は価値と異なって決定 され,不等価交換がおこなわれる。ⅠⅠⅠ.商法の立場
取引の安全円滑化の要請が大きければ,いかなる価格で取引されようと,当 事者の自由ということになる。利害関係者の利益調和の要請が強くなればなる はど,価イ直に.近い価格で取引されることが要求される。
商法ほ原則として株式会社の取引を取締役の自由にゆだねている(同法第
260条,第261条)。新株発行のばあいに.は額面以下発行が禁止されている(同法
第42巻 第4号
・− β6 −・ 450
第203条欝3項)。また株主以外の者に備に有利な価格で新株の発行をなすばあ いに叔,株主総会の特別決議が必要であ卑(同法第280条の2第2項)。また法 令定款違反の,または著しく不公正な方法による新株発行により株主が不利益 を受ける恐れのあるはあいには,株主ほ発行差止請求権を有する(同法第280条 の10)。そして取締役と通じて不公正な発行価額を以って新株を引受けたる者
は公正な発行価額との差額を会社に∵支払う義務を有する(同法第2寧0条の11)0
現物出資に基づく資本増加の場合においてほ,付与株式数が発行済株式総数の 20分の1を超えるばあいに限り,検査役による検査紅服する、(同法第280条の
8)。営業譲渡,営業全部の賃貸,経営委任,損益共同契約等に・おいては株主総 会の特別決議が必要であり(同法欝245条),反対株主は株式買取請求権を有す る(同法第245粂の2)。資本減少のばあいには株主総会の特別決議が必要であ り(同法375条),また債権者保護手続がおこなわれねはならない(同法第376 粂第2項)。株式会社の合併のばあいにほ株主総会の特別決議が必要であり(同 法第408条第3項),反対株主は株式買敬語求権を有し(同法算408条の3),ま た債権者保護手続も要求されて−いる(同法第416条,100条)。すなわち,商法 は利害関係者の利益調和を最も必要とする取引においてさえ,原則として株主
についてほ株主総会の特別決議と反対株主の株式買収話求権で十分としてお り,債権者についてこは債権者保護手続で十分としている,といって−よかろう。
ⅠⅤ.合 併 比 率
合併比率は当事会社の株主の利益保護または株主平等原則を理由として公正
(23) であることが−・般に当然のこととして要求されている。すなわち当事会社の企
業価値に.応じた合併比率が定められること,いいかえれば合併の前後に・おいて二
各当事会社の各株主の持分価値が変わらないことが要求されて1、る。なぜなら,もしそうでないとすれば,必ずいずれかの株主の利益が害されるからであ
位3)田中耕太郎「商法学特殊問題上」291ぺ−ジ,矢沢惇「合併貸借対照表における資産 評価」(企業会計5巻)…・以下矢沢と引用‥1243ぺ一汐,久保欣哉「株式会社の合併
とのれんの計上」(青山法学論集5巻2号)…以下久保のれんと引用・・・・8ぺ一汐,上 柳克郎「合併」(経営法学全集2企業形億)…い以下上柳と引用 …218ぺ」一汐。
株式会社の合併
451 − 57−・
(コ1\
る。
しかしこれらの論者も現実にほ.合併比率が当事会社の勢力関係によっで定ま
(26)
ることを認めている0したがって法律上公正な合併比率が当然要請される,と する考えほ検討を要するものと思われる。
合併比率決定の基礎ほ確かに牒式の内面価値である。この内面価値は有機的
−・体としての企業価値つまり収益還元価値を株式数で除して得られる。しかし
株式の内面価値に基づくこの合併比率はあくまでも商談のための基礎資料に.す
ぎない○現実の最終的な合併比率に.は純粋紅主観的な要素が作用する0たとえ(26)
ば当事会社のめんつ,勢力関係,競争排除,市場支配,相互参加等々である。
すなわち合併比率は当事会社によって約定された一層の売買価格であり,した がって客観的な価値と異なって,原則として二当事会社が自由紅定めうる。商法 ほ現物出資のばあいには検査役によるチェ.ックにより,株主に不利な価格での 株式の発行を禁止しているといってもよかろう。しかし合併のばあいに.ほ価格 決定は当事者の自由紅ゆだねられて㌧いる0商法ほ合併のばあいにおける利害関 係者の利益調和の要請を,株主保護について−は,株主総会の特別決議と反対株 主の株式買取請求権で十分であるとし,債権者保護については,債権者保護手
(27)
続で十分としているといいえ.よう。商法の現物出資と合併とにおけるこの態度 の相違は,基本的に.は商法が合併の方法による資本集中をより容易化している
(28)
結果といってもよかろう。
以)矢沢1243ぺ一汐,久保のれん8ぺ−ジ。
佗5)合併比率は多くのばあい,当事会社のめんつ等に・より,1対1になるようである。セ ミナ−271〜273ぺ一汐。
C26)Suter,S.132〜134。
q7)H.Wtirdinger,Aktien−und Konzernrecht21Auflage S.223: 付与株式の準備 に・関しての法律上の制限は合併の観点からは存在しない。特に株主平等原則からも,譲 渡会社の社員ほ譲受会社の株主と同等紅おかれるべきであるということは生じない。な ぜならばあらゆるほあい紅おいて,譲渡会社の株主ほ合併契約の承認についての議決匿
さいして,彼らの利益保持のための機会を有している,§340abs.1Akt G.〟
朋〉 竹周省「商法の痙論と解釈」111・以下竹田と引用……237ぺ一汐は合併の本質を現物 出資とすることから,合併にさいしても現物出資紅おける検査役の検査が類推適用され
ると主張する。
一一占∂− 第42巻 塊4号
452 価値と価格とは本来異なるものであり,商法が他のはあいに要求していないそ・の合一せ,合併の場合に限って要求しているとほ考えられない。さらに・いえ ば,独占資本主義時代においてほ不等価交換が】・般的におこなわれている。株 式会社の合併ほ独占資本形成の最も効率的かつ最も強力な手段である。不等価 交換の−−−・般的におこなわれる時代において,不等価交換に.基づく独占利潤を求 めて−おこなわれる合併が,不等価交換軋よることは.経済的には何ら奇妙なこ.と でほない。取引を原則として当事者の自由にゆだねている商法が,経済のかく
(29)
の如き要請に反することを命じているとは考えられない。
第2章 合併当事会社
Ⅰ. ま え が き
合併当事会社ほ会社であって社員または株主でほない0商琴ほ合併の絶対的 自由を規定しているが(同法第56条),しかし数種の例外がある(同法欝56条第
(80)
2項,有限会社法滞59条,第60条)。ここでは特に解散後の会社と債務超過会 社の合併について論じる。
ⅠⅠ.解散後の会社
(1)なしうる合併の種類
商法は解散後の会社が存立中の会社を存続会社として合併できる旨を明定し ている(第98条第2項)。しかし新設合併が可能であるかどうかについては争い がある。多数説ほ条文上「解散後の会社は存立中の会社を存続する会社とする
(31〉
限り」と記載されていることを理由として\新設合併ほ不可能であると解する。
すなわち商法第98条第2項を合併の制限規定と解するのである。こ.れに対し少 数説ほ,欝98条欝2項ほ単なる注意規定であって,その趣旨は商法が合併を形
C9)RG.inTW1927S小1348,1350‥ Eine Fusionistnicht schon deshalb sitten・
Widrig,Weildie Gegenleistung hinter dem wahren Wert zuriickbleibt.Zu be・
riiCksichtigen sei,dass die Fusion ein S王iekulationsgesch云ft sei.
渕 上柳206ぺ−汐参照。
㈱ 西原寛一「会社法」(商法講義ⅠⅠ)35ぺ一汐,石井照久「新版商法」827ぺ一汐,野津 務「商法20講」32ぺ一汐、実方正雄「会社法学」63ぺ−ジ。
株式会社の合併
− 59 −
453
式的に解散原因と定めている(第94条第3項)ことから生じる靡いを除くこと
(82)
にある,と解する。したがって解散後の会社も新設合併できることとなる。し
かし両説とも清静中(解散後)の会社を存続会社としてこ合併することは,清算(33)
の目的の範囲外であるから不可能である,とする点においては−・致しているよ うである。
しかし解散後合併しうる会社とは自主的に解散した会社,らまり解散決蒔に よってかまたは定款所定の解散原因によって・L解散した会社紅限られよう。すな わち解散後合併しうる会社は自主的に会社継続をなしうる会社である。会社継 続後の会社が完全な権利能力を有し,いかなる合併もなしうることほ明らかで
ある。合併の要件(商法第98条第1項,第408条第2項)は会社継続の要件(
商法第97条,第406条)を含む0解散後の会社が合併するばあいには,会社を 継続してしかる後合併するものと解すぺきである。したがって解散後の会社は いかなる会併もなしうると解する0つまり清算中の会社は自社を存続会社とす る合併もなしうると解する0したが?て商法第98条第2項は少数説と同じく単 なる注意規定と解する。
(2)合併をなしうる段階
解散決議後または清算中の会社が清簸手続のどの段階まで合併をなしうるか についてほ,従来はとんど何も述べられていない。た.だ大隅博士が合併の目的 ほ企業維持,生きた営業を引き継ぐと.とにあり,したがって会社財産の主要部
(3ヰ) 分が換価された後にはもはや合併はなしえないとする。そして上柳教授もこれ
(36) (36)
を肯定しており,またドイツでも−・般にそのように.解されて−いるよ.うである。
上のような立場ほ合併を単に・企業維持の制度と考えること紅よるものと思わ 82)田中誠ニ「新版会社法論」736ぺ一汐,村上秀三郎「合併仮契約の不履行(付合併の
性餐)を論ず」(法学志林41巻3号)82ぺ一一汐。
(33)並木俊守「栢説会社法」727ページ,村上前掲昏82ぺ一汐,田中耕太郎「会社法概論 上」736ぺ一汐。
別 大隅健一・郎その他「合併手続」‥・以下手続と引用……16ぺ・−汐。
(35)上柳207ぺ−汐。
(36)G Krause,DieVerschmelzungvonKapitalgese11schaftepim deutschenund franz6sischen Recht,Berlin1966,S.3〜4;Hu Wtlrdinger,a a.0.,S..216.
餞42巻 鵠4葛
ー 60 − 454
れる。しかし合併は資本集中の制度であり,企業維持ほそのひとつの効果軋す
(37)
ぎない。合併を資本集中の制度と■考える立場からすれば,会社財産が現物資産 であろうと現金資産であろうと,全く同じである。したがって会社財産のすぺ てが換金されて,会社財産がもほや現金資産のみからなるばあいも合併ほ.可能
である。このように.解する理由は第一・に合併が資本力強化の手段であること,
欝こに凝済的に見れば,営業を構成する各個別資産価値の総和よりも,生きた 営業の価値がより大であるのと同じく,一山・定温の資本の価値は,それを構成す
る各単位資本の個別価値の総和よりもより大であること紅ある。
雪
会社財産のすぺてが現金化され,債務の支払も完了した状態,したがって後 咤残されている処置は残余財産の株主への分配と会社消滅登記である状態は,
株式会社にあってほ,いわば椿算の最終段階であると同時に,会社継蔵の可能
(S8)
な最終段階であり,したがって合併可能な最終段階でもある○最終段階という 患味ほ次のようなものである。法人にほ2つの意味がある。すなわち抽象的叫・
般的意味に.おける法人と具体的一・般的意味における法人である○ 前者ほいわ ば後者の外皮である。具体的叫・般的意味に∴ねける法人は客体的要素と主体的 要素よりなる。すなわち共同目的追求のための物的結合(企業)と人的結合
(社員)である。滴穿とは客体的要素の整理過程であり,それは外部的整理と 内部的整理に分かれる。外部的整理とは法人の対外関係(債権債務関係)の整 理であり,内部的整理とは対内関係(社員関係)の整理である。整理を簡易化 する技術として通草総資産の現金化がおこなわれる0総資産の現金化および対 外関係の整理がおこなわれた段階ではいまだ具体的−・般的意味における法人の
(恥′カルテルがうまくゆかないばあいに企業をつぶすために合併することもしばしばあ る。
(38)通説は未だ会社継続可能な最終段階とほみないようである。石井前掲苔870ぺ−ジ,
田中誠二前掲番727ぺ一ジは清算結了の登記前とし,なお残余財産分配後も,会社ほ株 主紅対しその分配財産の返還請求ができるとする。実方前掲書57ぺ・一汐,並木前掲番 716ぺ一汐は清算人が残余助産を株主虹分配しているばあいには,これを会社に返還し
なければならないとする。
ドイツ65年株式法第274条は株主間への財産の分配開始前と明定した。Ⅹ・Wieland,a a.,0..S′′359ほ会社が他の哩由から清算に.入るや全参加者(Beteiligter)の同意をもっ
てのみ許されるとする。
株式会社の合併
455 ーー 8ロ ー
■2要素は存在する。しかし内部関係の整理への着手と同時にそれほ崩壊する。
つまり従来の社員権(株主権)は債権(残余財産分配請求権)となり,従来の 会社社員関係ほ単なる債権債務関係となる。そして従来株主であった者のこの
債権はもはやその同意なしに.は決してノ奪われ.え.ない。したがって具体的−・般的 意味における法人の客体的要素はいまだ存在するとしても,主体的要素ほもほ
や存在しないのであり,その客体的要素も内部的整理の終了と同時酎肖滅すぺ く逼命づけられてし、るのである。内部的整理の着手と同時に.従来株主であった 各人ほ単なる債権者となり,共同目的追求のための人的結合と無関係に自己の 債権(残余財産分配請求権)を実現できる。すなわち最終段階とは抽象的・−・般 的意味における法人(法人格)の前提たる具体的一腰鱒意味に・おける法人が存 在する最終の段階という意味である。したがって㌧清算残余金の−・部がすでに−
部の株主に支払われたならば,もほや会社継続も合併も不可能であ挙と考え
(39)
る。その限りにおいて清算の排除ほ,つまり内部的整理のおこなわれないこと
(40) が包括承継のではなく,合併の前提をなす。
ⅠⅠⅠ.債務超過会社
(1)学 説
人格合−・説は債務超過会社の合併を肯定する。その理由は経済的必要がある こと,および利害関係者が同意する以上否定の必要なし,というこ.とである0 そしで現物出資説によれば,経済的必要のある合併を認めえないとして現物出
(41) 資説を非難する。これに対し現物出資説は債務超過会社の合併を否定する。そ
の理由ほ次のようなものである。すなわちそれが債務の出資に.対する株式の剖
(42)
当となること,および資本充実の原則に.反することである。そしてさら紅額面
鋤 もちろん,全株主の同意や;あれば,法人格消滅の登記紅至るまで会社継続可能であ り,したがって合併も可儲である。
射)Ⅹ枇y,孔.aい0いSい72滑算の排除は包括承継の前提たる2種の必読性(会社法上の継続 性と経済上の継続性)を作り出す。参照久保243ぺ−汐。RりGold声CIlmidt,a.aい0..S.38 清算の排除の下における包括承継は合併契約の内容である。
姐)野津前掲雷58・ぺ・一汐,田中誠二前掲書73ぺ一汐,高田源洒「商法演習1」196ぺ一汐。
(42)大隅370〜371ぺ−ジ。