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論文審査委員

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Academic year: 2021

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(1)

博士学位論文内容の要旨

氏 名 細野

ホ ソ ノ

知子

ト モ コ

所 属 人間健康科学研究科 人間健康科学専攻 学 位 の 種 類 博士(看護学)

学 位 記 番 号 健博 第

134

号 学位授与の日付 平成

29

9

30

日 課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 名 2型糖尿病者における〈日常〉の現象学的記述 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 西村 ユミ

委員 教 授 斉藤 恵美子 委員 教 授 山本 美智代

委員

教 授 榊原 哲也

(

東京大学

)

【論文の内容の要旨】

背景

長期にわたる2型糖尿病者の経験はさまざまな局面を伴い、そのケアには困難を伴うこ とも多い。そのため、病者の経験が明らかにされる必要がある。慢性の病い経験は日常的 にあたりまえとなって病者もそれになじんでいるため、2型糖尿病者の経験を捉えるには、

このような

病いとは言いがたい

様相を明らかにする、新たなアプローチが必要である。

研究目的

2型糖尿病者にとってあたりまえとなっている〈日常〉の経験を、入院や定期的な診察、

生活場面への参与を通じて現象学的に記述することである。

研究方法

2型糖尿病、あるいはその合併症の治療目的で入院している者

4

名に、約

1

年間、参加観 察と非構造化インタビューを実施した。入院中は退院支援の場面、退院後は定期受診の場 面と生活場面を参加観察し、適宜、インタビューを実施した。現象学の思想を参照して2 型糖尿病者における〈日常〉の経験に着目し、その成り立ちを記述した。本研究は、本学 の研究安全倫理委員会による承認(承認番号:

14098

)を受けて実施した。

結果

「入院から始まった2型糖尿病者の経験」を

1

名ずつ記述した。各研究参加者のあたりま

えの様相は、以下の通りであった。退院後間もなく悪化した血糖コントロールが続いた研

究参加者は「実感を手がかりにして決断」し、

1

年間にわたり

HbA1c

値が変動した研究参加

者は「緩やかに揺れる数値を生き」ていた。良好な血糖コントロールが持続していた研究

(2)

博士学位論文内容の要旨

参加者は「ちょっとしたことで安定してくる」日常を送り、入院中に覚えた食事と運動を 厳密に継続した研究参加者は「獲得したパターンに従っ」ていた。

次いで、研究参加者のあいだで類似していた「2型糖尿病者のありふれた治療経験」を 記述した。「病院食の経験に宿る間身体的な了解が作動する」経験、「普段の食と食事療 法とのずれを存在させるための方法」、「自己穿刺行為してきた身体がもつ確かな時間幅」

の成り立ちが明らかになった。

考察

入院、いつもの取り組み、診察から、あたりまえとなっている経験を多角的に論究し、

それぞれの機会から2型糖尿病者における〈日常〉の経験を開示した。

入院は、それまで埋もれていた習慣的なふるまいを振り返る契機になっていた。一方で、

入院を繰り返した経験は、治療してきた長い時間を見渡すときに一つの習慣として組み込 まれており、2型糖尿病と暮らし続けていた身体に親しんだ知になっていた。

研究参加者たちは、いつもの取り組みを

やる

する

という主体的な表現で伝える一方 で、血糖値や体重などの変動した数値の現われから自ずと取り組みが生まれてもいた。

定期的な診察では、捉えなおした近況を主治医に提示し、主治医と検査値を共有して過 去と未来を含み込んだ現在を意味づけ、交渉や説得などの相互行為を介してこれからの治 療方針や暮らし方を決定していた。また、受診の合間には、定期的な診察の機会がふと頭 を過ることがあり、自分の近況を振り返っていつもの取り組みを修正していた。

結論

研究参加者たちは、入院や定期的な診察の機会に主治医たちの視線に触れ、さらにはそ の機会にHbA1c値を見つつ、また、普段から血糖値や体重といった数値を確認しつつ、そ こに自分の習慣的なふるまいを見て取っていた。彼/彼女らは、時には痛感するように、

時にはふと気づくように、さまざまな仕方で頻繁に習慣を捉えなおしていた。他方、この ような捉えなおしは習慣化されてもいた。2型糖尿病者の〈日常〉の経験には、習慣の捉 えなおしとその習慣化のたえまない運動があった。

この運動の中で、習慣の捉えなおしを促していたのは、医療専門職者のまなざしや数値 の現われといった他なる視線に向かう隠れた志向性であった。研究参加者たちには、医療 専門職者らの視線に触れて取り込んできた主体性、治療を続けながら未来に向かおうとす る身構え、痩せてきた身体から湧き出るさらなる減量への目標があった。彼/彼女らは、

能動的・主体的に治療に取り組みながらも、その手前で働くこれらの隠れた志向性によっ て他なる視線に動機づけられ、治療の継続を可能にしていた。

本研究の記述から見出された、他の視点を含み持つ〈日常〉の経験は、2型糖尿病の原

因としての

生活習慣

や、個々の病者に求められてきた

能動性・主体性

という概念の再検

討を促すものであり、併せて、2型糖尿病者のケアを再考していく素地として、医療専門

職者に重要な視点を与えるものである。

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