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有価証券時価評価の計算構造および 期間配分についての一考察

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有価証券時価評価の計算構造および

   期間配分についての一考察

一アメリカFASB会計基準書を中心に一

裕 正

1 はじめに

 国際会計基準委員会一(IASC)や財務会計基準委員会(FASB)などが公表する会計諸基 準では金融商品に関連して時価評価が導入されている。日本でも1999年1月に企業会計審議 会から「金融商品に関する会計基準」(金融商品会計基準)が公表され,平成12年4月1日 以降開始の事業年度から段階的に適用されるようになってきている。

 金融商品という言葉は,「一方の企業に金融資産を生じさせ他の企業に金融負債を生じさ せる契約及び一方の企業に持分の請求権を生じさせ他の企業にこれに対する義務を生じさせ る契約(株式その他の出資証券に化体表章される契約である)」(日本公認会計士 協会(2000)

第3項)と一般には定義され,具体的には,現金預金,売掛金・買掛金,受取手形・支払手 形,貸付金・借入金,株式・公社債等の有価証券,デリバティブ取引により生じる正味の債 権債務等が含まれている(企業会計審議会(1999)第一,一)。金融商品の内容は広範囲に わたっているのである。したがって,これらに対応する会計基準の規定も多岐にわたるが,

このうち,有価証券の期末評価基準に関して,FASBの財務会計基準(以下, FASと略)

No.115「特定の負債証券及び持分証券への投資の会計処理」, IASCの国際会計基準(以下,

IASと略)No.39「金融商品:認識と測定」および日本の「金融商品に係る会計基準」の規 定を要約すると表一1のようになる。

 表一1で示しているように,これらの基準は有価証券をその保有目的に分けて,それぞれ の評価方法を規定しているのである。逆に,有価証券の時価評価といっても,売買目的有価 証券と売却可能有価証券(日本では,その他有価証券)とが主に問題になっているのであり,

有価証券のすべてが対象となっているわけではない。

 本稿は,主にFASBの有価証券の評価規定を参考に,その時価評価の計算構造論的な側 面の検討を行い,さらに時価を用いた利益の期間配分の意味について試論的に簡単に述べよ

うとするものである。

(2)

表一1 有価証券の評価基準

FAS. No.115 IAS. No.39

金融商品会計基準(日本)

売買目的有価証券(par.12,13)

トレーディング目的で保有の金

売買目的有価証券(第三,二,1)

一公正価値評価

融資産および金融負債(par.69,

一期末時価による評価 未実現保有損益は利得に含め 103) 評価差額は当期純損益

一公正価値評価

評価差額は当期純損益

売却可能有価証券(par.12,13) 売却可能金融資産(par.69,103) その他有価証券(第三,二,4)

一公正価値評価 一公正価値評価 一原則期末日の時価評価

未実現保有損益は,実現まで 評価差額は以下のいずれかで 評価差額は以下のいずれかで処

株主持分の独立項目として純額 処理

を計上 ①評価差額が生じた期の純損益 ①評価差額の合計額を資本の部に

(その後,FAS. No.130par.

に計上 独立項目で計上

33aにより,その他の包括利益 ②実現または減損時まで持分に ②評価損は当期損失,評価益は資

において報告と修正)

計上 本の部に計上

満期保有目的有価証券(par.7) 満;期保有投資(par,73) 満期保有目的債券(第三,二,2)

一償却原価で計上 一実効利子率法による償却原価 一取得原価または償却原価(償却

で計上 原価の場合,実効利子率法に加え

定額法も適用可能)

子会社関連会社株式(第三,二,3)

一取得原価(低価法不可)

市場価格ないもの(par.73,115) 市場価格ないもの(第三,二,5)

一固定満期のものは実効利子率 一社債その他債券は債権に準じた 法による償却原価 評価(貸倒見積控除)

固定満期でないものは取得原 その他のものは取得原価

減損の処理(par.16) 減損の処理(par.111,117) 減損の処理(第三,二,6)

一(売却可能と満期保有目的有 一償却原価法適用金融資産は, 一(売買目的有価証券を除く)

価証券)公正価値下落が一時的 予想キャッシュフローを取得時 市場価格あるものは,著しく下 でない場合は評価減 点の実効利子率で割り引いた現 落(50%以上)し,回復の見込あ

評価減は実現損失 在価値と簿価との差額 る場合を除いて評価減し当期損失 公正価値評価の金融資産のう に計上

ち,評価差額が持分計上されて 市場価格ないものは,実質価額 いるものは,公正価値下落分を が著しく下落(50%)したとき評

純損失に計上 価減し当期損失に計上

注)1.FAS. No.115は市場性ある有価証券を主に対象としている(par.3,43)。また金融負債やヘッ    ジ会計に関する規定はNo.115には含まれていない。

  2.IAS. No.39は,金融商品全体を保有目的別に分けて,それぞれについて規定しているので,

   有価証券以外のものも厳密には含みうる。また,有価証券は含まないが,上記以外に「企業自ら    創設した貸付金・売掛債権」という区分がある。なお,IASCは, IAS 39号を暫定的なものと位    置づけており,現在金融商品の全面時価評価にむけての基準設定作業をJWG(Joint Working    Group:日本も参加しているが, JWGは正式にはIASCの組織には属していない)を通じて行    っている。JWGは,2000年12月14日に,その公開草案「金融商品及びその類似項目」(Financial

   Instruments and Similar Items)を世界的に公表している(http://www. jicpa. or. jp)。

  3. 日本については,日本公認会計士協会「金融商品会計に関する実務指針(中間報告)」も参考

   にしている。

(3)

有価証券時価評価の計算構造および期間配分についての一考察

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2計算構造的検討一両産負債アプローチの側面から一

 まず,FASBやIASCの会計基準が採用しているといわれる資産負債アプローチの損益計 算構造について,FASBの概念ステートメントおよびその前提となった討議資料を中心に 簡単に見ておきたい1。

 FASBの討議資料によると,「資産負債アプローチの支持者たちは,企業活動の目的はそ の富を増大させることであり,企業が所有する事物の変動は,1期間における当該企業の活 動に関する最良の,しばしば唯一確実な証拠になると主張する」(FASB(IO76)par.48)

と述べられている2。

 ここで,所有する事物の変動が1期間における企業活動に関する最良で確実な証拠である としていることから,資産負債アプローチにおける会計の対象は企業の所有する事物(また は富)であり,会計の目的はその事物の増減を測定することと解することができるであろう。

そして,その測定にあたっては,損益を純資産の純増減と定義し,資産負債を鍵概念として いるので(FASB(1976)par.34),この損益は貸借対照表で算定されると考えられる3。他 方,損益計算書における収益と費用は資産と負債の増減と関わらせて定義されているが

(FASB(1976)par.34),それらは発生した損益の内訳明細を示すもの,つまり損益の発 生原因を表示したものとして理解できるであろう(FASB(1984)par.78,森田(2000)p.

7,拙稿(1999)pp.70−75)。その意味では「損益説明書」とでもいうべき位置づけになっ

ている4。

1 本稿はFASBの諸基準を中心とするものではあるが, IASに関しても関連する範囲で,脚注で述べていく

 ことにしたい。

2 この引用だけでは,会計の対象は所有物と見ることもできるが,FASB概念ステートメント第6号の資産 の定義を見ると,所有は資産の本質的な特徴ではないとされているので(FASB(1985)par.26),所有と

いう観点は実際には薄くなっている。

3 1ASCが公表した「財務諸表の作成表示に関する枠組み』(以下, IASCフレームワークと略)では,「収 益一費用」で損益が定義されている(IASC(1989)par.69)。 FASB概念ステートメントとIASCフレーム

ワークとでは,同じ資産負債アプローチといわれながら,このように相違が見られるところがある。

4 「収益費用,利得および損失の定義は,利益がいかにして得られたかを示すことのみを目的としている。

引用された定義は,利益二様益一費用+利得一損失という関係を形成するが,この関係は利益を定義づける ものでも,その金額を決定するものでもない。利益は,資産および負債の変動によって定義され,また測定

されるのである。」(FASB(1976)par.211)

 「利益=収益一費用+利得一損失が持っている主要な利点は,それが異なる種類の利益源泉の区別を行う ことにある。収益と利得は,…両者相まって利益の正の要素のすべての原因を説明している。同様に,費用

と損失は,…両者相まって利益の負の要素のすべての原因を説明している。資産負債アプローチにおいては,

・収益と利得は純資産(資産一負債)のあらゆる増加を,また費用と損失はそのあらゆる減少を説明してい

る。」(FASB(1976)par.243)(いずれも下線は引用者)

(4)

 これらのことに基づいて,資産章債アプローチの損益計算の構造を設例で示せば,、以下の ようになると考えられるのである。

 【設 例】

 1)現金100円で営業を始めた。

 2)100円の商品を現金仕入れした。

 3)仕入れた商品のうち70円分を現金80円で販売した。

現  金 1)100

3)80

商  品

2)100 残 80

2)100 3) 70

残 30

貸借対照表 現金  80 商品  30

損益計算書 資本金 100     売上原価70 利益   10 一  利益   10

売上  80

 基本的に,FASBの資産負債アプローチにおいて,損益は期首と期末の純資産の純増減 と見なされているのであるから,まず各資産および負債の期末の残高(上記設例では現金と 商品の期末残高)を求め,それに基づいて期末純資産額を求め(上記設例では110),その後

に期首の純資産額(上記設例では100)と比較することになる。そして,この計算を直接に 担うものが貸借対照表であると理解できるのである5。

 資産負債アプローチでは,対象となる富があって,その増減に基づく期末時点での残高を 基礎とした損益計算になっているのである。このような仕組みの中で資産や負債は金額で表 示されているが,この金額表示について,概念ステートメント第6号では,「財務諸表に正 式に記載される項目は,実体の一定の資源,これら資源に対する請求権,およびこうした資 源や請求権に変動をもたらすことになる取引その他の事象および環境要因の影響について財 務的に表現(文字と数値による叙述)したものである」(FASB(1985)par.6)と述べてい る。このことから,資源などの会計の対象を改めて金額で表示する会計になっているといえ るだろう6。資産負債アプローチにおける金額表示は,会計の対象として企業の富が存在す るが,これは本来多様な物量単位のものであるから,それらを統一するための尺度としての 役割を持っているのである。したがって,FASBの資産負債アプローチの中では,有価証 券に限らずすべての資産や負債をいくらで評価するかというとき,取得原価ではなくても時 価を用いることも可能な構造になっているということができるのである。言い換えれば,ど のような金額で評価するかは,どのような目的の下にこの会計の仕組みがおかれているかと いうことと関わるのである。

5 なお,資産負債アプローチにおける複式簿記を検討したものに森田(2000)がある。

6 同様の記述は,IASC(1989)par.82にも見られる。

(5)

有価証券時価評価の計算構造および期間配分についての一考察

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3 キャッシュフロー生成能力の評価

(1)概念ステートメント

 前節では,資産負債アプローチにおける会計は,企業が保有する資産や負債を統一する尺 度として貨幣評価するものであると述べたが,では概念ステートメントは資産や負債の評価 を通して何を表示しようとしているのであろうか。この点については周知のように,:FASB は,投資者などさまざまな情報利用者に対する意思決定に有用な情報の提供を重視している

(FASB(1978)par.34)7。ここで,投資者などは当該企業が将来において生み出すキャッ シュフローに関心を持っているという前提に立っている(FASB(1978)par.25)。したが って,彼らに提供する会計情報の内容もまずこの企業が将来生み出すキャッシュフローの評 価に役立つものでなければならないことになる(SFAC(1978)pars.37−39)。時価評価は 企業の実態開示との関連で問題にされることが多いが,実態開示ということもこのことと関 連したものでなければならないだろう。FASBが採用しているといわれる資産負債アプロー チも,企業のキャッシュフロー生成能力に関する情報提供目的の下で具体的に構成されたも のである8。

 その具体的な例の一つに,FASB概念ステートメントでは資産や負債を将来のキャッシ ュフロー生成能力(経済的便益)と関連付けて定義していることがある(FASB(1985)

par.25,28,35)。この資産や負債の定義をキャッシュフローと関連付けてみれば,資産は企 業にとって将来キャッシュイソフローの直接的な源泉であり,負債は将来キャッシュアウト フローの直接的な原因と理解することができるのである(FASB(1978)par.41)。さらに,

このような資産と負債の理解に基づいて資産負債アプローチの利益について付言すれば,純 資産は将来キャヅシュイソフローの源泉と将来キャッシュアウトフローの原因との差額であ るから,ネットの将来キャッシュイソフローを生み出す能力,つまり株主持分に帰属するキ ャッシュフローを生成する能力を示すものとなるので,損益(包括損益)はその能力の純増 減を表示したものということができるであろう。もともと事物(富)の純増減として捉えら れていた損益は,キャッシュフロー生成能力の表示という目的の下ではその能力の純増減と いう意味を持たされているのである。

7 1ASCフレームワークでは,特に投資者の要求を満たせば他の利用者の要求の多くを満足できると考えて

いる (IASC(1989)par.10)。

8 逆に,収益費用アプローチが意思決定に有用な情報を提供できないという積極的な理屈はないと考えられ る。この点についていえば,FASBでは収益費用アプローチは企業の経営過程に焦点を当てた会計であると 考えており,それは実際に企業が活動に投下した資源とそこから産出した生産物との比較による効率性(経 営者の能力)を表示する会計であるとしているからであろう。経営者の効率性を表示する利益が投資家にと

って重要であるとする考えもある(Paton=Littleton(1940)p.16,訳p.25)が,それよりは企業が決算時

点で保有している資産や負債の方が将来のキャッシュフロー生成能力を直接的に評価表示した方がよいと FASBは考えていると思われる。

(6)

 このようにFASB概念ステートメントでは,資産や負債についてキャッシュフロー生成 能力を内容としたものと考えている。そこで,資産や負債の評価というとき,いかにこの能 力をよく評価することができるかということが問題になってくる。もとより企業が生み出す キャッシュフローは個々の資産の複合体から生じるものであるから,個別にそれを評価する ことだけでは不十分なものではあるが,個々の資産や負債を通じたキャッシュフローの潜在 能力についての間接的測定は特定の資源にとっても企業全体にとっても必要と考えているの である(FASB(1978)par.41)。

 そこで,資産や負債の具体的な測定属性が問題となるが,FASB概念ステートメント第5 号では,歴史的原価,現在原価,現在市場価値,正味実現可能(決済)価額,将来キャッシ ュフローの現在価値を併記している(FASB(1984)par.67)9。概念ステートメント第5号 では,これらの属性のどれかひとつを採用するという決定はせず,今後も異なる属性を採用 する予定であるとしている(FASB(1984)par.66)。将来のキャッシュフローの生成能力 を評価するにあたり,測定の信頼性や目的適合性という条件も考慮して,それぞれの資産や 負債の性質に合わせて評価するという方針を採っているといえるであろう10。

 このような状態の中で,FASB概念ステートメントでは,有価証券の期末評価について も「ある種の市場性のある有価証券に対する投資は,その現在市場価値で報告される。現在 市場価値とは,通常の換金(orderly Iiquidation)において資産を売却することによって入 手されうる現金額または現金同等額をいう」(FASB(1984)par.67)と述べている11。これ はまた,「さほどの努力も要せず信頼できる確定可能な価格で売却できるという理由で,容 易に実現可能である場合には(例えばゴ特定の農産物,貴金属および市場性のある有価証券),

収益およびある種の利得又は損失は,その生産完了または当該資産の価格の変動の時点で認

9 1ASCフレームワークでは,歴史的原価,現在原価.実現可能(決済)価額,現在価値の4つが示されて  いる(IASC(1989)par.100)。 FASBの現在市場価値と正味実現可能(決済)価額の両方がIASの実現可

 能(決済)価額に含まれていると考えられる。

10 この測定について,FASB概念ステートメント第7号『会計測定におけるキャッシュフロー情報と現在価  値の利回』では,最近のFASBの会計基準が,当初認識時点やその後の新規再測定時点で,公正価値をほ

 とんどの測定目的にしていることから,これら5つの属性についてコメントをしてし層・る。それによると,現 在原価,現在市場価値,正味実現可能価額は当初認識と新規再測定(Fresh−start measurements)に焦点を

 あて,歴史的原価は当初認識とその後の配分に焦点をあて,第5号における将来キャッシュフローの現在価  値は歴史的原価,現在原価,現在市場価値を用いて当初認識された資産や負債の償却方法になっているとし  ている(FASB(2000)pars.4−7)。概念ステートメント第7号は,現在価値の測定に関するものあるが,そ  れは公正価値を測定するための手段として位置づけられている。そして,本稿で取り上げる有価証券のよう  に市場価格がある場合には,それが公正価値とみなされているため,現在価値の測定は必要ないとされてい

 る (FASB(2000)par.17,26,68)。

111ASCフレームワークでも「市場性ある有価証券は市場価値で記載してもよい」と述べている(IASC

 (1989) par.101)。

(7)

有価証券時価評価の計算構造および期間配分についての一考察       71 識される」(FASB(1984)par.84)ということとも関連しているだろう。つまり,市場性あ

る有価証券はいつでもそれを売却することによって現金に換えることができるものであるか ら,この売却による入金予想額がキャッシュフローの生成能力を表していると考えているの であろう。

(2)FAS. No.107およびNo.115における評価

 ここまでは,概念ステートメントに即して資産や負債の評価全般について述べてきた。概 念ステートメントでも有価証券の評価について述べているが,その保有目的は考慮されては いない。これに対して,FAS. No.115「特定の負債証券及び持分証券への投資の会計処理」

では,表一1で示したように,有価証券を,その保有目的に基づいて分類した上で,それぞ れの評価基準が定められている。簡単に繰り返せば,売買目的有価証券と売却可能有価証券 については「公正価値」による評価,満期保有目的有価証券については償却原価法に基づい て算定された価額となっている。売買目的有価証券と売却可能有価証券とでは,公正価値で 評価した後の評価差額の処理について異なっているが,いずれも公正価値で期末評価する点 では共通している。

 公正価値については,FAS. No.115では「強制的あるいは清算による売却以外で,意思あ る当事者間の現時点での取引において,ある金融商品が交換されうるであろう金額である。

ある金融商品について市場価額が入手可能である場合には,本基準書を適用する際に使用さ れる公正価値は,当該金融商品の取引単位にその市場価額を乗じたものである」(FASB

(1993)par.137)と定義されている12。市場性ある有価証券の場合,その公正価値は市場 価値ということになるが,この点について,FAS. No.107「金融商品の公正価値に関する開 示」は,「公表市場価値が金融商品の公正価値の最善の証拠である」と述べている(FASB

(1991)par.11)。ここで,先ほどの概念ステートメント第5号において市場性ある有価証 券に用いられるとされた「現在市場価値」と「公正価値」との異同が問題になるが,概念ス テートメン g第7号では,現在市場価値は公正価値の定義に含まれるとしている(FASB

(2000) par.7)o

 :FAS. No.115の有価証券の公正価値評価についての記述を見ると,前節で資産負債アプ ローチにおける資産の評価は対象となる資産を金額表示するものであると述べたが,有価証 券についても「取引単位に市場価額を乗じたもの」としているので,同じことがいえるであ

ろう。

12ちなみに,FASB概念ステートメント第7号では,資産(または負債)の公正価値について「意思のある  当事者間の現時点での取引,すなわち強制的あるいは清算による売却以外の取引において,資産(負債)が 購入(発生)または売却(返済)されうるだろう金額である」としている(FASB(2000)Glossary of

Terms)。 IAS 39号では公正価値を「独立第三者間取引において,知識を持ち,自発的な関係者間で,ある

 資産が交換されうる,または負債が決済されうる金額である」(IASC(1998)par.8)としている。

(8)

 そして,このように有価証券を公正価値評価する理由については,FAS. No.107および No.115では,投資家などが企業の投資戦略を評価する際に役立つからであると考えている

(FASB(1991)par.41, FASB(1993)par.40)。投資家は,企業に流入するキャッシュ フローが当該企業から彼らに対して分配される資金の源泉であるので,その金額,時期およ び不確実性に関心を持っているのであるが,公正価値は,「現行利率とそのキャッシュフロー が発生しないであろうリスクに関する市場の見積との両方を反映するために割引かれた有価 証券がもたらす将来ネットキャッシュフローの現在価値についての市場の見積を表してい

る」と考えているからでもある(FASB(1993)par.40,なおFASB(1991)par.40も参照)。

投資家は企業に流入するキャッシュフローに関心があると考えられている。その企業が生み 出すキャッシュフローとの関連で有価証券の公正価値評価が位置づけられているのである。

だが,さらにここではキャッシュフローに関連するリスクの見積を織り込んだものと市場価 格(公正価値)は考えられているのである。

 ちなみに,満期保有目的有価証券に対して償却原価が適用されるのは,FAS. No.115では 満期保有目的有価証券は満期まで保有するがゆえに,市場金利変動や期日前償還リスクの影 響を受けないと考えているからである。つまり,市場金利変動や期日前償還リスクを公正価 値が反映しているので,それを利用することは整合的ではないと考えているのである

(FASB(1993)par.62)。

 なお,ここで,このような有価証券の公正価値変動分の性質についてFASBの見解を見 ておくと,今一1でも示したように,FAS.No.115では時価評価による評価差額を保有損益 と見ている(例FASB(1993)par.13)。 FASBの概念ステートメントに関連する討議資料 では,保有利得は有価証券に限らず棚卸資産でも存在していると考えているが(FASB

(1976)par.235),有価証券については,「企業は株式を保有してもそれになんら追加的な 効用を与えるわけではない」点で棚卸資産等と異なっており,その結果「営業上の利得また は営業利益に見合うような利得はいっさいない」と考えている(FASB(1976)par.237)。

FASBでは,有価証券はそれを売却しようと保有しつづけていようと,つまり実現,未実 現を問わず,すべて保有利得という点で同じと考えているのである(FASB(1976)par.

237)13。

13有価証券,特に売買目的有価証券は短期の価格変動に基づく利益の獲得を目的にしたものである(FASB  (1993)par.80)。そこに投資するか否か,売却するか保有するかという意思決定は経営者の裁量というこ  とになる。売買目的有価証券への投資は,ある意味で,銀行への預金と同じような性格のものということが  できるであろう。預金するか否か,いつ引き出すかは,売買目的有価証券の購入や売却の意思決定と大差な  いように思われる。しかも両者ともそこに何か効用を追加するものでもない。売買目的有価証券はいつでも 換金できるという性格のものであるから,期末時点で入手可能なキャッシュイソフローを示すものとして,

示さなければならないのではないかと考えられる。なお,会計の対象としての有価証券に関する学説につい

 ては,石川(2000)で詳細に検討されている。

(9)

有価証券時価評価の計算構造および期間配分についての一考察

73

4 時価による利益の期間配分

 ここまで,資産負債アプローチの構造は,本来,有価証券に限らずすべての資産や負債に ついて時価評価を容認できるものであること,次いで,それをキャッシュフロー生成能力の 表示という制度目的の下においたときの経済的便益の評価の点から有価証券の時価評価(公 正価値評価)について簡単に述べてきた。FASBでは,投資家に有用な情報として,有価 証券に対しても,現在市場価値(公正価値)や償却原価による評価を考えているのである。

 ところで,FASBでは,このように有価証券については時価評価を用いて期間損益計算 がなされているのに対して,いわゆる全体損益計算に関しては現金の純増減が全体損益にな るとしている。だが,第2節で述べた資産負債アプローチの計算構造のレベルでは,各種の 富の残高が集められて損益計算をしているのであるから,そこだけの議論でいえば収支とい

う枠にはとらわれていないと考えられるし,概念ステートメントの資産の定義でも資産の本 質的な特徴として現金支出が位置づけられているわけではない(FASB(1985)par.26)14。

したがって,この点だけに基づいて考えれば,資産負債アプローチにおける全体計算は現金 収支と結びついてはいないと考えられるのである。しかし,FASB概念ステートメントで は,「企業の全存続期間を通して,その包括利益は,出資者によって投資されまた出資者へ 分配された現金を除いた現金の受領額と支払額との純額に等しい」としている(FASB

(1978)par.46, FASB(1985)par.73)。この記述は,本来現金収支と関連していない資 産負債アプローチの計算構造を全体計算のレベルで収支差額に帰着させようとするものと位 置づけることができるであろう!5。した炉って,有価証券などの時価評価による期間損益の 認識は,最終的には収支差額に帰着する全体利益計算の枠組みの中において,取得原価だけ を用いた期間損益計算における全体利益の期間配分とは異なる全体利益の期間配分をもたら すことになる。そこで,時価を用いた期間配分がもつ制度的な意義がいかなるものなのかが 問題になる16。

 だが,この検討の前に,表一1に示したように,FAS. No.115では,公正価値で評価され る売買目的有価証券と売却可能有価証券と評価差額の扱いにおいて相違が見られていたこと について簡単に述べておきたい。

 これらのうち,売却可能有価証券については,アメリカではA:LM技術の進歩により,有 価証券などの金融資産を金融負債と関連づけて保有しリスク管理をしている場合に,関連す る負債を無視して金融資産だけの保有利益を報告することは利益の不適当なボラティリティ

141ASCフレームワークでも同様に考えられている(IASC(1989)par.59)。

151ASCフレームワークでは,このような記述は見られない。

16 この点は,貨幣資本維持と物的資本維持のどちらを選択するかということとも関連している。第2節で述  べた計算構造のレベルであれば,どちらを採用しても構わないと考えられる。なお,時価主義会計における

全体損益の期間配分の論理を検討したものに藤田(1987)第2章がある。

(10)

をもたらすことを考慮したためである(FASB(1993)par.57,79, pars.93−94)。損益は キャッシュフロー生成能力の変動を意味している。関連する負債の評価をせずに売却可能有 価証券の保有利益だけを単独で評価することはその能力を実態とは異なって変動させてしま

うことになるので,かえって投資家を誤解させる可能性があるといえるであろう。

 他方,売買目的有価証券の公正価値評価変動額(未実現保有損益)を利益として報告する ことに関して,FAS. No.115では,ある期から次の期にわたり一般にある程度その構成が変 動する現在の株主にとって目的適合的な情報が提供されるのと同時に,売買目的有価証券の 保有期間に渡って異なる株主集団の間でも,株主持分の結果と変動について一層公平な報告 が提供されるとしている(FASB(1993)par.92)。つまり,現在の株主だけではなく,現 在株主と将来の株主との公平さということを考えているのである。

 このように公正価値評価と関わる損益の期間配分といっても,評価差額の処理については 相違が見られていたのである。しかし,その後のFAS. No.130「包括利益の報告」によっ て,売却可能有価証券の評価差額は「その他の包括利益」として報告するように変更されて いる(FASB(1997)par.33a)。その結果,いわゆる「純損益」に含まれるか「その他の包 括利益」に含まれるかの相違はあるが,いずれの有価証券の公正価値変動分も損益計算に含 まれるようになってきている17。そこで,本来であれば2つの有価証券に分けて細かく検討 する必要もあると考えるが,本稿では,FAS. No.130の規定をふまえて,特に両者を区別せ ず公正価値の変動についての期間損益計算における意義を考えてみたい。

 この点についてまず考えられるのは,投資家の意思決定に関連しての意義がある。もし有 価証券の売却時にのみ売買損益を計上するとすれば,売買損益が計上された時点での株主に のみその損益が帰属することになる。売買目的有価証券との関連においてではあったが,

FAS. No.115において指摘されていたように前期と今期とでは株主が異なっている場合,こ のような売却益(損)が生じる可能性が予め公正価値評価によって分かっていれば,それは 将来のキャッシュフローの予測にも関わるので,前期の株主は株を売らなかった(売った)

かもしれないということが考えられる。さらに,この投資家自身による評価に基づいて投資 先企業の株式の売買を行うということは,当該企業がもつリスクを負いたくない投資家とそ

17 「純損益」と「その他包括利益」との相違は,有価証券に関していえば,公正価値変動分が持つボラティ  リティの相違,換言すれば未実現損益の変動可能性の程度の相違になっているのではないかと考えられる。

FAS. No.115では,例えば金利リスクを売却可能有価証券と負債と併せて管理しているような場合,一方だ

 け公正価値で評価することは片面的であり,益出しの弊害も取り除けないとしている(FASB(1993)pars.

 93−94)。つまり,売買目的有価証券の場合と異なり公正価値変動額の確定性が低いために純損益に含めてい

 ないのではないかと思われるのである。したがって,純損益はある程度確定したキャッシュフロー生成能力  の純増減の原因,その他包括利益は確定性が低い純増減の原因となっているのではないかと考えられる。な

 お,万代(2000)p.220参照。

(11)

有価証券時価評価の計算構造および期間配分についての一考察       75

のリスクを負っても良いと考える投資家との取引を通じてリスク負担の取引が行われている といえる。できるだけその取引が公平に行われるようにする一環として,つまり当該企業が 抱えるリスクを何らかの形で表示するものとして,未実現保有損益の表示がなされているの ではないかと思われるのである。

 また,売却時に損益を認識する場合,有価証券投資をしている企業にとっても自由な益出 し(gain trading)が可能となり,そのことによる前期と今期の株主間の不公平が生じるの で,それを回避するという意味ももっているであろう18。

 これらのことと関連して,有価証券投資をしている企業自体が発行している株式の価格と の関係も考えられる。公正価値による未実現保有損益を含めた損益を通じて,投資家は次年 度以降の配当などにつながるキャッシュフローを予測するのであるが,FASB概念ステー

トメントではキャッシュフロー生成能力に関する情報は株価に影響するとも考えているので ある(FASB(1978)par.39)。投資先企業のキャッシュフローの正確な予測に基づいた投 資家の行動による適正な株価などの形成という意義も考えられるのである。

 次に,既に述べたように,FAS. No.115において,有価証券の公正価値である市場価格は,

「現行利率とそのキャッシュフローが発生しないであろうリスクに関する市場の見積との両 方を反映するために割引かれた有価証券がもたらす将来ネットキャッシュイソフローの現在 価値についての市場の見積を表」すもので昂るとしていることとの関連での意義も考えられ る。有価証券の市場価格がそのキャッシュフローに関するリスクを含んだ現在価値を反映し ているということは,仮に同額の期待キャッシュフローをもつ12種類の有価証券があるとし ても,それぞれの市場価格は各有価証券に関するリスクを織り込んで形成されることを想定 しているため,市場価格が同額にはならない可能性があることを意味している。単純な言い 方ではあろうが,他の条件が一定ならば,リスクの大きい有価証券の市場価格はリスクの小 さい有価証券のそれに比べて低くなると考えられるので,その結果,評価差額の認識を通じ て当期の損益にも差が生じてくることになる19。このことを株主の立場から見れば,同額の 期待キャッシュフローをもつ2つの銘柄の有価証券を2つの企業がそれぞれひとつ保有して いるとしても,リスクの大きい有価証券投資をしている企業の株主持分とリスクの小さな有 価証券投資をしている企業の株主持分との間で差が生じるということである。リスクが大き い有価証券投資をしている企業の株主の場合,企業がその有価証券を保有している期間中の 株主に対する利益は時価が低い分小さくなるが,「もしその有価証券が:最終的に期待されてい た額またはそれ以上の売却益を出したり決済されるならば,それはその時点での株主がリス クを冒して株を保有していたことに対する報酬という意味合いをもっことになるだろう。他

18 もっとも,FAS. No.115では,売却可能有価証券の評価差額の処理を売買目的有価証券のそれと区別して  も,益出しが完全になくなるとは考えていない(FASB(1993)par.94)。

19 この点については,本稿末の補遺で概念ステートメント第7号における現在価値の設例を示しているので,

参照してもらいたい。

(12)

方,リスクが小さい有価証券投資をしている企業の株主の場合には,リスクの大きい有価証 券に投資している企業の株主に比べて,その保有期間中の株主と売却や決済時点の株主との 間で利益が平準的に帰属することになるのではないかと考えられるのである。つまり,リス クの高い有価証券を保有している企業ほど,その有価証券がうまく売却または決済される場 合には,その時点での株主に対して大きな利益が帰属するようになっているのである。

 さらに,経営者の企業所有者に対する受託責任という観点も考えられる。FAS. No.107で は,「現在の市場条件に基づきうまず,資産を取得し負債を発生させるのに最良の時期はい っか,次に損益をいつ,どのように実現させるべきかについて意思決定を行うことは,企業 のオーナーに対する経営者の受託責任の重要な部分である」(FASB(1991)par.44)とも 述べているように,有価証券をいつ取得し,その保有損益をいつ実現させるかは経営者の重 要な受託責任の一部であるとされているのである。有価証券の時価変動額は,経営者が企業 の経済的資源の収益性高い利用を最大化するような意思決定とその成功度を評価するための 基準を提供するからでもある(FASB(1991)par.44, FASB(1993)par.78)。公正価値 に基づく保有損益は有価証券のリスクを反映したものであり,それが損益にも影響するので あるから,経営者の財務活動の良し悪しを判断する材料となっているのである。また,これ に加えて,経営者が交代するとき,後任の経営者にして見れば,前任者がどれくらいの成果 または損失を出しているかを確定することが,自分の業績を明確にする上で重要になってい るのではないかとも思われるのである。売却時にのみ損益を計上する会計の場合,含み損を 抱えた株を多く引き継いだ後任者がそれを実現させてしまうと,後任者自身の経営責任にな る可能性がある。自分の責任(損益)と前任者の責任(損益)とを区別しておくことは自ら の受託責任を明らかにする上で必要なのではないかと考えられる。そして,そのことは経営 者がどれくらいのキャッシュフローを生み出す能力を増減させたかということであるから,

投資家はそれを見て投資先の経営者の能力を判断しているともいえるのであり,ひいては投 資家にとってもその意思決定に有用な情報になるのではないかと考えられるのである。

5 結びに代えて

 本稿では,アメリカのFAS. No.107およびNo.115を主として取り上げ,有価証券の時価

(公正価値)評価の問題を,まず資産負債アプローチにおける計算構造の側面から検討し,

計算構造的には取得原価評価であれ時価評価であれ各種資産や負債の共通尺度としての金額 表示がなされるものであることを指摘し,それを受けて,概念ステートメントとFAS. No.

107およびNo.115とにおいて具体的にどのような金額が選ばれるかについて述べた。そし て,最:後に有価証券の公正価値評価が,基本的には収支差額に基づく全体損益計算の枠の中 での期間配分の問題であると位置づけ,その配分の意義について考えられることを試論的に 述べてきた。

 公正価値による評価差額の計上は企業の実態開示ということと関連している。それは投資

(13)

有価証券時価評価の計算構造および期間配分についての一考察       77

家が企業に投資した資金をどれだけ増やすことができるかという判断に関わっているが,他 面では投資した金額を回収することができないかもしれないリスクを伴ったものであるか ら,その判断に役立つものでもあろう。その意味では実態開示は一面で投資リスクの開示と いう側面も持っていると考えられる。また,有価証券の時価変動額の計上は,企業が保有す る有価証券のリスク評価を市場に委ね,そのリスクが織り込まれた数値を損益計算の中で利 用するものになっているといえるであろう。

 ただ本稿では,概念ステごトメソトと関連させた検討において概念ステートメント第7号 を含めた総合的な検討にはなっていない。また,公正価値に基づく全体利益の期間配分の意 義についても試論的に述べたものにとどまっており,特に体系だてたものにはなっていない。

これらの点を含めた形での検討は今後の課題としたい。

補遺 概念ステートメント第7号の現在価値評価における    リスク評価と期間損益との関係

 本稿第4節で述べたように,FASBでは公正価値として市場価格を用いる場合,その価格 は当該有価証券がもっているリスクの市場評価が含まれていることを想定している。その結 果,同じようにキャヅシュフローが期待できる有価証券であっても,その市場価格が異なり,

その結果有価証券を保有する企業の損益にも差が生じると述べた。この点と関連して,・概念 ステートメント第7号では現在価値を用いたものではあるが,説明をしているので,簡単に 補足しておきたい。

 概念ステートメント第7号では,現在価値と公正価値との関係について,「現在価値の唯 一の目的は,当初認識時や新規理解定時20に会計測定を用いるとき,公正価値を推定するこ

とである」(FASB(2000)par。25)というように,現在価値を通じて公正価値を測定する ことを明らかにしている。また,市場について,「市場は価格形態で情報を伝達するシステ ムである。市場参加者は価格を資産に帰属させ,このことにおいて,一つの資産のリスクと 報酬とを他の資産のそれらと区別する。…(中略),…観察された市場価格は,資産や負債の 効用,将来キャッシュフロー,そのキャッシュフローを取り巻く不確実性,その不確実性に 対して市場参加者が要求する金額についての市場参加者全員のコンセンサスを含んでいる」

(:FASB(2000)par.26)と述べている(下線部引用者)。有価証券の市場価格もこれらの 要素を含んでいるといえるであろう。

 そこで,これらの要素がどのように市場価格に影響するかということが問題になるが,こ こでは概念ステートメント第7号の設例を用いて考えてみたい。概念ステートメント第7号

20新規再測定とは,「当初認識以後の会計期間における測定であり,前期までの金額や会計慣行とは関係の

 ない新しい減価を設定するもので」あり,FAS. No。115「特定の負債証券及び持分証券に関する会計処理」

 の下での公正価値によるある種の市場性ある有価証券の報告のように,新規再測定には毎期利用されるもの

 もある(FASB(2000)Glossary of Terms)。

(14)

の設例は現在価値に関するものであるが,これと同じ要素を含んで市場において価格がつい ていると考えてよいであろう。

 概念ステートメント第7号では,次のような属性をもつ5つの資産を例に取り上げている

(FASB(2000)par.110,またpars.20−21も参照)。

 A:1日後が支払満期で,$10,000の固定した契約上のキャッシュフローをもっている。

キャッシュフローの受取は確実である。

 B:10年後が支払満期で,$10,000の固定した契約上のキャッシュフローをもっている。

キャッシュフローの受取は確実である。

 C:1日後が支払満期で,$10,000の固定した契約上のキャッシュフローをもっているご 最終的に受け取るであろう金額は不確実である。それは$10,000を下回るかもしれないが,

それを上回ることはないであろう。

 D:10年後が支払満期で,$10,000の固定した契約上のキャッシュフローをもっている。

最終的に受け取るであろう金額は不確実である。それは$101000を下回るかもしれないが,

それを上回ることはないであろう。

 E:10年後が支払満期で,$10,000の期待キャッシュフローをもっている(下線部は原文 ではイタリック)。最終的に受け取るであろう金額は不確実であるが,それは最高$12,000,

最低$8,000であり,この範囲の中で受領額が生じるであろう。

 資産Aは明日の確実な金額が約束されているので,この名目額は公正価値に非常に近い

(FASB(2000)par.111)。

 上記5つの資産のうち,資産B,D, Eは10年後に受け取る現金を問題にしているのに対 して,資産AおよびCは明日の現金を約束したものである。10年のデフォルトリスクフリー レート(5%と仮定)を用いると,資産B,D, Eの現在価値はいずれも$6,139となるが,

Bについては受取が確実なので,これは公正価値のよい推定値となるだろう。(FASB

(2000) par.112)

 資産AとCはいずれも明日の$10,000を示すが,合理的な実体は両者に対して同額を支払 おうとはしないであろう。Aに対しては$10,000近くを支払うであろうが, Cに対しては回 収が期待される金額以上の支払をしょうとはしないであろう。もし買い手がCのような約束 ではその約束された金額の80%しか回収できないと期待するなら,買い手はCに対して$8,

000以上は払わないであろう。もしDについても同じように期待するならば,買い手はDに 対しては$4,911以上は払わないであろう。Eは既にキャッシュフローの期待値となってい るので,この点については修正はされない。しかし,これらはいずれもリスクについては未 調整iである。(FASB(2000)par.113)

 リスク回避的な市場参加者は資産Aの比較可能な金額に投資するよりも資産CやEに投資 することを選択するなら,その前にリスクプレミアムを要求するであろう。その金額を資産

Cは$50,DとEは$500とする。(FASB(2000)par.114,なおpar.66も参照)

(15)

有価証券時価評価の計算構造および期間配分についての一考察

79

 A セ 日 サ 実

 B

P0年後 m 実

 C セ 日 s確実

 D

撃n年後

s確実

 E

P0年後 s確実

契約(約束)されたキャッシュフロー $10,000 $10,000 $10,000 $10,000

期待を反映した修正 (2,』000) (急,000)

期待キャッシュフロー

$10,000 $10,000 $8,000 $8,000

$10』,000 リスクプレミアムを反映した修正 (50) (500) (500)

修正されたキャッシュフロー

$10,000 $10,000 $7,950 $7.500 $9,500 現在価値(5%のリスクフリーレート) $10,000 $6,139 $7,950 $4,604 $5,832

 これらの条件に基づくと,それぞれの現在価値の計算結果は上記のように表示される

(FASB(2000)par.115)。

 詳細な検討は改めて行う必要があると考えるが,上記の血忌から,同じように見える($

10,000)資産であったとしても,それが生み出すキャッシュフローの金額,その時期,その 実現の可能性などを反映して,異なる金額で測定されるということが分かる。リスクが高い 資産は現在価値の測定を通じて小さく評価されることになるであろう。有価証券の市場価格 がこのようなことを織り込んで形成されているとすれば,この現在価値は時価と近くなるの で,評価差額にも相違が生じてくることになる。リスクの大きい資産を保有している企業の 利益はリスクの小さな資産を保有している企業の利益よりも小さくなるような会計測定にな

っているのである。

      参 考文献

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参照

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