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はじめに

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Academic year: 2021

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はじめに

 平成19・20年度立正大学社会福祉研究所プロジェクト研究として、「感性と福祉とが関わ る研究領域の研究内容・方法論の構築」を提案したところ、4名の共同研究者を得ることが できたが、拠ん所ない事情から3名で行なうこととなった。

 感性福祉論はまったく新しい学問領域である。この名を冠した学会である「日本感性福祉 学会」も、ようやく平成13年に東北福祉大学の感性福祉研究所を基盤に設立されたばかりで ある。それによれば、感性福祉の研究は、物質文明に頼りすぎて衰えた人間の感性を呼び覚

まし、生きがいを感じて人生を送れる福祉社会の実現を目指すものである。

 すなわち、五感への働きかけによって、すべての人々が心の豊かさを実感でき、喜びを もって生きられるようにするには、いかなる方法が効果的かを試し、それを科学的に実証し ていこうというものであり、かつ、そうした感性を育てるにはどうしたらよいかについて

も、生命科学のレベルから、福祉の実践レベルにいたるまで学究することになる、

 しかし、現在進められている感性福祉論は、いくつかの大学に設けられている「感性」の 名を冠した研究領域にも見られるような、いわゆる「感性工学」の傾向に沿ったものである。

それは、「科学的実証性」の視点からの客観的妥当性を追究する方法に頼っている、,すなわ ち、感性の計測と定量化に関する手法の開発、揺らぎ・ファジィ・フラクタル・複雑系と いうような解析方法の導入、情報11学・人間工学・認知科学・心理学・デザイン学などの諸 領域にわたって学際的に研究し、さらにこうした成果の事業化の可能性に関する調査など、

既存の工学や境界領域で取り上げにくいテーマを、積極的に対応していこうとするものであ

る。

 このような感性工学的研究目的と方法は、近現代の科学主義への批判的対置としてクロー スアップされ「流行化」すらしてきた「感1生」を、なおまたこの科学主義の系譜に則った手 法で解明しようとする二律背反的な矛盾を抱えて突き進んでいる。現在のところ、このよう な科学的手法のみが、研究方法と成果の客観性を推し量る唯一のあり方として「周知」され ているため、致し方がないのであろう。もちろん、一面的ではあっても、そこから一定の成 果は認められる。

 本研究は、以上の感性工学に代表されるような手法とそれに基づいて進められている感性 福祉研究の現在について検討すると共に、過去からの学問の系譜を踏まえた本質的かつ総合 的な感性福祉論のあり方を探った。

 前半の側面については、溝口元教授に、感性工学と感性福祉とをつなぐディシプリンの形 成に迫っていただいた。後半の側面については、三友量順教授に、普遍性を有する感性の問

一 3一

(2)

立正大学社会福祉研究所年報 第11号(2009)

題としての「共感」のメガニズムを仏教文化の観点から追究していただいた。そして、梅澤 は、斯学の根本的な研究のあり方を示唆するものとして、感性を媒介とした人間の可能な生 き方(幸福)の生涯発達過程(感性生涯発達過程)解明のための視点を提示した。まだ、こ の研究内容・方法論の構築を行うまでには至っていないが、その第一歩を示すことができた のではないかと考えている,

2009年2月

プロジェクトを代表して

  梅 澤 啓 一

一 4一

参照

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