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図形の学年配当 ―東アジアの教育課程の比較―

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(1)

図形の学年配当

―東アジアの教育課程の比較―

張  思 瑶 正 田  良

はじめに

国立教育政策研究所( 2009 )では「理数教科書に関する国際比較調査」の対象として,

11 か国に注目した。そのうちで,教科書を授業で使う義務が法令に示されている国は,日・

韓・中・台 の 4 か国である。ともに東アジアの国・地域であった。これらの国は,学 校制度,特に小学校 6 年,中学校 3 年とするなど,学校制度についても共通点が高くなっ ている。

これらの国の国際比較での高スコアについて, TIMSS ・ 2012 では,学問に対する関 心の高さや勤勉さ,成績を重んじる儒教文化の影響が強いとされている(吉永契一郎,

2018 )。他の地域の教科書と比べれば古色蒼然としたと言われかねないような,三角形 の合同条件を用いた証明を中学の教科書に載せている。この点では,共通性が高くなる ことは容易に想像できる。しかし,まったく同じという訳ではない。

韓国・中国・台湾の図形に関する義務教育での教育課程を,代表的な教材 10 数件に 関して学年配当を調べ,その順番や構造の違い及び共通点から配列の意図を分析するこ とによって日本のそれと比較する。相互に比較することで,他の特徴であるアウトプッ トを説明したり,他の選択肢とみなして日本のこれからを考える機会としたい。本研究 では,その見落としやすい違いを明らかにすることを目標とする。

1. 図形の概要と教育課程

図形の教育内容が日本の義務教育課程に導入されたのは,緑表紙を端緒とする。正 田( 2019 )をもとに教材がどのような学年に配当されているかの概略を,表 1 へ記す。

以降,「〜年度告示の小学校の学習指導要領で示される教育課程」を,[〜]と,“[”,“]”

で数をはさんだ記号で略記する。また,特に注記しない限り,教育課程を示す表示は,

小学校での算数の学習指導要領の告示された年度で表すこととする。 2 つの逸脱があっ

た。

(2)

[ 1947 ],[ 1951 ]の「生活単元学習」と呼ばれる時期と,週休完全 2 日制を採用した

[ 1998 ]である。しかし,その直後の[ 1958 ],[ 2008 ]でそれぞれ復帰しているので,

緑表紙は,その修正版ともいえる戦後の教科書とともに,図形教材の内容・構造に関す る典型となっている。

その大要は,小学校低学年では,色板遊びなどで図形と親しみ,中学年で図形の分類 を通じてその性質に着目させ,高学年では求積などを通じ,中 1 では観察,操作や実験 を通じて図形の性質を理解する。中 2 で証明(仮定と結論)が導入され,中 3 では三平 方の定理などの式で性質を表す際に線分の長さに関する 2 次式を必要とするものを扱っ ている。

次項以降では,国立教育政策研究所( 2009 )で紹介されている韓国・中国・台湾の教 育課程を日本と比較する。その比較の対象とする日本の教育課程は,時期を合わせ[ 2008 ] とする。これは[ 1998 ]の完全週休 2 日制実施に伴う大きな改訂から,もとに戻したも のに当たるので,典型的な「緑表紙の修正版ともいえる戦後の教科書の主流と,図形教 材の内容・構造」と位置づけることができる。

表 1 :主な教材の学年配当

長方形・正方形 33432 22322

2位数×2位数 34543 33333

平行四辺形・台形・菱形 45744 44544

小数 × 小数 55755 55555

線対称・点対称 64955 66766

長方形の面積公式 43544 44444

平行四辺形の面積公式 46855 55555

台形の面積公式 46855 55N55

分度器の使い方 45644 44444

三角形の内角の和 4HH75 55555

四角形の包摂関係 45N55 66866

証明の仮定・結論 HHH88 88888

三平方(事実を知る) H8999 99999

三平方の定理の証明 HHH99 99999

因数分解・展開 H8H99 99999

※ 左の5桁ずつ区切った10個の数字は,それぞれの教材の配当学年を表している。緑表紙は戦後の ものではないが,戦後のものとの類似性を示すために左端に記した。左から,

 緑表紙(1935年より学年進行により使用),1947195119581968。   1977, 1989, 1998, 2008, 2017年度告示

の小学校の学習指導要領で示される教育課程でのものである。なお79は中学校の13年を,H は当時の義務教育での範囲を超えていたこと,Nは対応する記述がないことを示している。

(3)

上述の国立教育政策研究所( 2009 )では,「主要国及び PISA 等での理数教科の成績 上位国」である日本を含めた 10 か国にオランダを含め, 11 か国を対象としている。こ のうち教科書を授業で使用する義務が法令に示されているのは,日・韓・中・台に限ら れる。このような条件があるので,図形に関する授業比較が,教科書を比較することで ある程度可能である。

韓国では,第 1 次( 1954-1963 ),第 2 次( 1963-1973 ),第 3 次( 1973-1981 ),第 4 次( 1981-1987 ),第 5 次( 1987-1992 ),第 6 次( 1992-1997 ),第 7 次( 1997- )と時 期区分をしていた。第 7 次は金大中大統領の在任期間に当たる。その後,大統領の改選 などによって,頻繁に改訂が行われているので,第〇次という言い方ではなく,改訂さ れた年によって呼ばれている。しかし以降の教育課程でも,各教科等の内容・内容の取 扱いなどは,第 7 次のものを基準としている。韓国の教育人的資源部のインタネット・

サイト( 2019.7.27. 採取)

http://ncic.re.kr/english.kri.org.inventoryList.do#

で,学習指導要領の英語版を見ることができるが, 1997 年のものには,日本と同様に 各学年に教材を配当する方法で,詳細に教育内容が記述されている。また, 2009 年当 時小学校での教科書は 1 種類のみの発行となっていた。国立教育政策研究所( 2009 )は,

中学校のものも小学校のものを発行している会社のものを代表的な教科書とみなし,こ れの目次を教材の学年配当とみなしている。

中国では, 1969 年に始まった文化大革命によって修業年限が短縮されていたが 1980 年代初頭から原則的に 6-3-3 制に復帰した。しかし地域差があり,財政的な理由で小学 校を 5 年制とするところもあった。『諸外国の教育改革の動向』では,その後の情況を 次のように記述している。

1985 年の「教育体制改革に関する決定」において, 9 年制義務教育の導入が決定

された。…(中略)…その結果, 2000 年までに人口の 85 %が住む地域で義務教育

が普及し,…(中略)… 2008 年に 9 年制義務教育は人口の 99 %が住む地域で実施

されている。(文部科学省生涯学習政策局調査企画課, 2010 : pp.246 − 247 )

また, 2005 年より『全日制義務教育数学課程標準』が初等中等学校で完全実施されて

いる。教材の学年配当は,学年ごとではなく, 9 年間を 3 年ごとに分けられている(国

立教育政策研究所, 2007 )。しかし,人民教育出版社の教科書のシェアが高いので,国

立教育政策研究所( 2009 )は,代表的な教科書とみなし,これの目次を教材の学年配当

とみなしている。

(4)

台湾では, 1968 年に義務教育を,それまでは小学校 6 年間であったものを,小中の 9 年間とした。小学校では, 1975 年(民国 64 年 8 月)に『国民小学課程標準』が公布 され,中学校では, 1983 年(民国 72 年 7 月)に『国民中学課程標準』が公布された。

これには, 2 ・ 3 年に「選修科目」として,電子工,珠算,簿記,実用数学,そして進学 希望の生徒のための「数学(甲)」が設定されており,日本でも [1958] にあった「選択 教科としての数学」を連想させるものであった。李登輝総統の在任は, 1988 2000 に当たるが,こうした政治的・社会的変動によって,後期中等教育(高級中学と高級職 業学校)への進学率は, 1996 年には 8 割を超える。また, 1994 年には「教育改革」が 開始された。 2000 年に「国民中小学九年一貫課程暫行綱要」が定められた。「暫定版」は,

2003 年に「正式版」となり, 2005 年( 2004 学年度)から,全面実施されている。

2006 年までは,小中の 9 年間を,小 1 〜 3 ,小 4 ・ 5 ,小 6 と中 1 ,中 2 ・ 3 の 4 段階 に分けていたが, 2006 年から, 3 年ごとの 3 段階に改めている(国立教育政策研究所,

2007 )。

また,教科書は検定制であるので複数種類の教科書が発行されている。上の 2 国と同 様に,国立教育政策研究所( 2009 )は,代表的な教科書の目次で教材の学年配当とみな している。

以上に概観したように, 2000 年ころまでに,日本との比較を行う韓・中・台では,

経済的発展を遂げ,政治的状況も安定しており,教育課程が整備されていた。そういっ た意味で, [2008] と似た傾向にあると言えよう。また, TIMSS 2012 で指摘されるよ うな「儒教文化の影響」によって教育熱心な状況にあったと言えよう。

2. 韓国での図形の教育課程

西村ら( 2012 )では,小学校の国定教科書の発行所でもあり,シェアが高いという理 由で中学の教科書例として斗山社のもの(小は 2009 ,中は 2008 年版)を扱って 9 年間 分の教科書の目次を記している。これを参考に図形に関わる内容と,後の記述にかかわ りのある内容のみを抽出し,図 1 を作成した。 2 本の直線に,上に韓国,下に日本の教 材配当のペースを示す 〇 を記し,各教材に関して対応線を記した。項目の順番に関 しては学習指導要領の配当学年が同じ場合,理論上決まってくる順番ならその順で,そ れ以外では対応線が交差しないように任意に決めた。なお,目次の文面だけでは内容・

程度が分かりにくいものに関しては,教科書研究センター附属教科書図書館の蔵書に

よって確認した。

(5)

この図から読み取れる特徴として,

( 1 )小学校 3 年生に行わせている合成変換の素地は,ユニークである。操作を中心 とした扱いであるが,対称へのステップとして注目できる。

( 2 )日本では小学校 6 年で扱われる線対称は,小学校 5 年で扱われている。

( 3 )重心・内心・外心,および相似などの平面幾何の教材が,中 2 で充実している。

( 4 )日本では高等学校での扱いとなっている三角比が,中学校 3 年で扱われている。

の 4 点が指摘できる。しかし,総じて日本との差異よりも共通点が多いと言えるだろう。

ここでは,特に上記の箇条書きのうち,( 1 )に注目しよう。小学校 3 年の教科書で扱 われている部分にある問題について,図 2 として類題をあげる形で紹介する。

図 2:韓国の小 3 教材の類題。左をどうすれば,右になるだろう?

図 1:韓国での図形の学年配当 韓国

3

角比〇→高校

日本

円周角の定理〇〇三平方の定理〇〇因数分解〇〇

2

角形の内心・外心〇→高校中

3

3

三角形の重心〇→図形の相似〇→四角形の性質〇〇合同条件を使った証明〇〇

1

角形の内角の和〇〇基本的な作図〇〇平行・同位角・垂角〇〇一次方程式〇〇

6

△〇縮図・拡大図線対称・点対称円の面積〇〇

5

対称〇→図形の合同〇〇台形・三角形の面積〇〇

4

角形の分類〇〇垂直と並行〇〇三角形の分類〇←

3

形の移動・変換◎〇三角形の分類コンパスの使用法〇〇正方形・長方形〇←

2

→正方形・長方形三角形と四角〇〇

1

ろいろな形〇〇色板で絵つみきあそび〇〇

(6)

実際に,考えてみていただきたい。韓国の小学校 3 年用の算数の教科書にでている問題 を,印刷の都合で改題したものである。 OHP の透明シートのような紙に,左のような図 形が刷られている。これを裏返したり回したりして,右のような図形にしたい。どうすれ ばよいだろうかという問題である。

どうだろうか。例えば,右回り,つまり時計回りに 90 °回転させればよい… と答 えが得られるかもしれない。しかし,そのように回転すると, L (エル)のような字の 部分が  L にはならずに,左向きの椅子になってしまう。

正解は,いくつかの方法があるが,そのうちの一つは,「 90 °時計回りに回してから,

左右裏返しにする」である。おとなでも,「うわ,ひっかかった」との感想を持つ人は 少なくないと思われる。こうしたひっかけに耐えられるような能力を,小学校 3 年生に 求めている。

3. 中国での図形の教育課程

杜( 2012 )は,シェアの高い,人民教育出版社の 2007 〜 2008 年版を選んでいる。

その目次について,日本との比較の図を前節の韓国でのそれと同様に作成したものが図 4 である。

中国での四角形の分類は独特である。図 3 のようになっている。

「直角梯形」とはあまり見慣れない言葉であるが,小倉金之助( 1903 )『ルーシエ/コ

図 3:中国での四角形の分類

(『義務教育課程標準実験教科書』(小 4上冊)人民教育出版社版による)

(7)

ンビルース「初等幾何学第一巻」』(山海堂)という,フランスの数学書を日本語に訳し 紹介した本に,

梯形(台形のこと)ノ平行ナラザル二辺ノ中一ツガ平行ナル辺ニ垂直ナルトキハ直 梯形ト云ヒ,平行ナラザル二辺ガ相等シイトキハ二等辺梯形(現代では, 「等脚台形」

と呼ばれている)ト云フ( p.47 :第壱篇 直線 第六章 平行四辺形)

とある。この「直梯形」が「直角梯形」にあたるので,中国の独創ではないことは分かる。

しかし,こう定義してもその章のまとめ以外に再び出てくることのない概念である。

図 4 に示した中国の学年配当であるが,韓国のそれに比べて,斜めの線が多い。

その他に認められる中国での学年配当の特徴として,

( 1 )小 2 に,紙を折り重ねて 8 枚重なっている状態のものを切る活動(折線がすべ て互いに平行である場合と,一点ですべて交わる場合の 2 通り)で,変換と移動に 関する素地を培う活動がみられる。

( 2 )小 4 に位置と方向( bearing )の内容が見られる。これは座標量としての方角を扱っ たもので,真北が 0 °で,時計回りにどれだけ回転すればその方角となるかによって 方角を表すものである。よって真東は, 90 °と表される。なお,この人民教育出版

図 4:中国での図形の学年配当 中国

3

角比〇△高等学校

重心

日本

相似〇〇内心・外心〇〇円周角の定理〇〇

2

平方の定理〇

四角形の性質 因数分解〇

・︵〇〇三角形の合同条件〇〇

1

角形・内角・外角〇〇基本的な作図〇〇平行・同位角・錯角〇〇

6

△〇縮図・拡大図円の面積・円周〇〇方位︵cf・小

4︶〇△ 小5

辺形の面積〇〇台形・三角形図形の変換〇△図形の回転〇△

4

対称〇

長方形の面積 四角形の分類〇〇位置と方向〇△分度器の使用法〇〇三角形の分類〇〇 小3

積・面積の単位〇三角形の分類△〇正方形・長方形〇

2

〇小

2

直角・鋭角・鈍角〇〇

1

組図形〇〇色板で絵つみきあそび活動園地〇〇

(8)

社 2007 年版では,小学校 4 年の内容とされていたが,同社の現行版

http://www.dzkbw.com/books/rjb/xiaoxue-shuxue/ ( 2019.5.07. 閲覧)では,小学校 6 年となっている。

( 3 )線対称は,小学校 4 年で扱っており,日本の 6 年生よりも 2 学年早い。

( 4 )中 2 で三平方の定理を扱っている。そのためもあってか,因数分解も中 2 で扱っ ている。日本ではどちらも中 3 の内容である。

( 5 )日本では高等学校で扱う内心・外心は,中 3 の扱いとなっている。

( 6 )同様に,日本では高等学校で扱う三角比も,中 3 の扱いとなっている。

を挙げることができる。

4. 台湾での図形の教育課程

杜( 2012 )はシェアの高い,康軒文教事業の 2008 年検定合格のものを選んだ。ただし,

新課程と旧課程の間であるという理由で,中学 2 年下以降は,それまで国定として作ら れていた国家教育研究院籌備処発行のものの目次を紹介している。

ここでも,目次について図 5 に記し,日本との比較の図を前節の韓国でのそれと同様 に記そう。

図 5:台湾での図形の学年配当 台湾

3

角形の内心・外心〇→高校

日本

三角形の重心〇〇円周角の定理〇〇

2

平方の定理〇→中

3

3

因数分解・平方根〇→四角形の性質の証明〇〇内角の和などの証明〇〇

1

立方程式〇→中

2

基本作図〇方程式〇〇

6

図と拡大図〇〇

速さ 円の面積〇〇速さ・旅人算・通過算〇△

5

対称〇→小

6

4

平行四辺形の面積〇〇四角形の分類〇←

4

直と平行〇〇

3

長方形の面積公式〇〇分度器の使用法〇〇三角形の分類〇←

3

の半径や中心〇〇

1

コンパスの使用法〇〇面積の任意単位〇◇

2

三角形〇→小

3

箱の形〇〇正方形と長方形〇〇

1

のまわりの形〇〇 高校

(9)

外角定理(多辺形の外角の総和は 4 直角である)と早めに導入することで,三角形の 内角の和は 180 °であることの証明が可能となり,論理的整合性をもって,同位角定理(平 行 2 直線の同位角が等しい)を扱っている。日本の教育課程に比べ,中学校でのペース が速い。三平方の定理が中 2 で扱われているが,それは中国のものと同様に因数分解が 既に扱われていることによって可能となっている。

これまでの 2 国のものと同様に,図 5 から読み取れる特徴について,既述事項の復 習も含め,

( 1 )線対称は,小学校 5 年で,日本の学年配当に比べて 1 年早い。

( 2 )小学校 6 年に,旅人算・通過算などの日本で「古典的文章題」とされている内 容を行っている。日本では私立中学受験のための進学教室のテキストにみられる教 材である。

( 3 )中 1 で,文字の導入から連立方程式をまとめている。日本では,連立方程式は 中 2 で扱う内容である。

( 4 )中 2 で,外角の定理を使って,三角形の内角の和が 180 °であることの効率の 良い証明を行っている。

( 5 )中国での特徴と同じく,中 2 で三平方の定理,並びに,因数分解を扱っている。

( 6 )中 3 で,重心・内心・外心を扱うとともに,章のうち一つを使って,証明の必 要性に関する読み物的な記述を行っている。

の 6 点を指摘する。

( 4 )について,具体的な記述を図や細かな補足を省いて引用しよう。

こうして外角の定理を先に出しておくと,手順がかなりスマートに,内角の和が 180 °であることを示すことができる。また,互いに平行な 2 直線があるときの同位角 が等しいことも,この外角の定理からの演繹で示してみせている。

あとの章でこれらの性質についてゆっくり検討することになるが,図形には意外な面白 い性質が沢山あることがわかるだろう。このページの下では三角形の外角の和の性質を説 明し,そしてなぜ内角の和が必ず180°であるかを説明する。

  …(中略)…

CAの途中にいる太郎(廷聰)が,三角形の形をした公園の周りをABCの順に一周する。

Aで左回りに曲がる角度を,Aの外角,同じように,BでもCでもその外角の大きさだけ 左回りに回る。向きが1周してもとに戻るので,外角の和は360°である。

(10)

また,( 6 )に記した,「証明の必要性に関する読み物的な記述」であるが,その一部 を日本語に訳して紹介しよう。

このように,活動を通じて理解させるというよりも,教科書に語らせる方法で,証明 の必要性を教えている。

つまり教科書のボリュームや授業時間数が大きく変わらないとすれば,内容の取捨選 択によって辻褄があうようにしないとならないが,台湾では,中学校では三角比を導入 せずに,証明の必要性に関して説明的な文章を教科書に載せているということになる。

5. まとめと補足

それぞれの国での,学年配当に関して述べてきた。違いのある主要な箇所についてま とめたものが,表 2 である。これによって読み取れる特徴として,

( 1 )韓国と中国では,図形の移動と変換について,比較的低学年で,対称などの素 地となるような操作的な活動を行っていること。

( 2 )日本では線対称が,小学校 6 年で扱われるが,他の 3 国は,小 4 ・小 5 である。

( 3 )長崎栄三( 1992 )は,平面幾何での扱いが日本では弱くなっていると,指摘

2本の互いに平行な直線があって,それらの上にはない点Aがある。Aを通る直線が,

互いに平行な直線との交点を,各々B,Dとした状態を左図は示している CX // EW ⇒ ∠ABX=∠ADW

∵) 互いに平行なので,Aを通る共通な垂線がある。それ との交点をCEとすると,結論の2つの角は,△ABC

△ADEの外角なので,ともに,

∠A+90°であるから等しい。

例えば,三平方の定理は,既に見てきたように,直角三角形の斜辺の長さと,直角をはさ む2辺の長さとの数量関係である。これは我々がすぐに看て取れる定理だとは言えない。古 代バビロニア人でも,古代中国人でも,経験によって,三角形の辺の長さの比を,345 とすると直角三角形になることを知っていた。しかし,一般の直角三角形の辺長に関する三 平方の定理と同列に論じられるような考察はできなかった。

この意味で,前に述べた「三角形の内角の和は180°である」は,驚くべき性質である。

紙を切って作った三角形を手にして,角を切り集めてみれば,その三角形の内角の和が,

180°らしいとわかる。でもどうして任意の三角形の内角の和がちょうど180°だとわか るだろうか?

(11)

しているが,特に,内心・外心に関して,その傾向が顕著である。

( 4 ) 三平方の定理や因数分解については,中国・台湾では中 2 で,日本・韓国の 中 3 よりも 1 年早くなっている。

( 5 ) 三角比は,韓国・中国で,中 3 で扱われている。

の 5 点を挙げることができる。

表 2:図形の教育課程 4 つの比較

日本 韓国 中国 台湾

図形の移動と変換 小3 2

線対称 小6 5 4 5

内心・外心 高校 中2 3 3

三平方の定理・因数分解 中3 3 2 2

三角比 高校 中3 3 高校

その他の特徴 縮図と拡大図(小6)円周・円の面積・円

柱を一度に 直角梯形 効率の良い証明

以下ごく簡単に,今後の課題について記す。

差異について指摘した。特に,対称の扱いについて日本の学年が高すぎるように思わ れる。ただ,日本は小学校の算数の教科書が 6 種類あり,コラムなどで対称の素地にな るような活動が盛り込まれている可能性もある。また逆に教科書の今後の改良としてそ のような内容を提案する必要もあろう。対称に関して,具体的に今後も調べていきたい。

中国では,低学年での活動,韓国でも,モダンな活動,台湾では,効率よく事実を示 してから証明の必要性について説得的な記述をする。こうしたそれぞれの特色は,

TIMSS などでの調査によって意識に関する差異として見出しえるのかどうか。実証的

な手法としては調べたいところである。ただ,今回に関しては,そこまでに到達できて はいない。今後の課題としたい。

[付記]

・本稿は,同名で日本カリキュラム学会第30回大会(2019.6.22-23.:京都大学)の「自由研究発表」

で口頭発表した内容へ,大幅に加筆・修正したものです。当日の発表に,ご助言ご指導戴いた当 日臨席の先生方に謝意を表します。

・正田が「はじめに」及び1.並びに5.,張が2.〜4.の草稿を作り互いに協議の上,改稿・縮約を した。文体の調整,日本語の校正は正田が行った。

(12)

・国および地域の呼称については,国立教育政策研究所(2009)のものに倣った。校種名と科目名 は日本のそれとした。

[引用・参考文献]

国立教育政策研究所(2007)『諸外国の教育課程(2)―教育課程の基準及び各教科等の目標 ・ 内容 構成等―(アメリカ合衆国,イギリス,フランス,ドイツ,中華人民共和国,韓国,シンガポール,

台湾)』教科等の構成と開発に関する調査研究 研究成果報告書(研究代表者山根徹夫)

国立教育政策研究所(2009)『第3期科学技術基本計画のフォローアップ理数教育部分に係る調査研 究:理数教科書に関する国際比較調査結果報告』。(2019.3.03.採取)www.nier.go.jp/seika_

kaihatsu_2/index.html

西村圭一 監修,鄭 泰徳(2012)「9. 韓国」下記☆所収。

正田 良(2019)「図形教材の学年配当 ―その経緯と傾向の分析―」東京学芸大学数学科教育学研 究室『学芸大数学教育研究』,31,37- 46

杜威(2012)「10.中国」「11.台湾」下記☆

長崎栄三(1992)「わが国の中等数学教育における平面図形の指導の変遷」東京学芸大学数学科教育 学研究室『学芸大数学教育研究』,4,133-141

文部科学省生涯学習政策局調査企画課(2010)『諸外国の教育改革の動向』ぎょうせい

理数教科書に関する国際比較調査委員会算数・数学部会編(2012a)『初等中等学校の算数・数学教 科書に関する国際比較調査調査結果報告書』教科書研究センター[教科書図書館分類番号:H| 5.9b|71-1]

この電子版が,国立教育政策研究所(2009)に収められている。

理数教科書に関する国際比較調査委員会算数・数学部会編(2012b)『初等中等学校の算数・数学教 科書に関する国際比較調査収集教科書目次一覧』教科書研究センター ☆[教科書図書館分類番 号:H|5.9b|71-2]

吉永契一郎(2018)『高等教育のグローバル化とSTEM教育改革』広島大学高等教育研究開発センター

参照

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