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平伸明 長崎大学熱帯医学研究所ウイルス学部門(主任:林 薫教授)

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(1)

熱滞医学 第13巻 第1号 61‑67頁, 1973年3月

61

ECHOウイルス11型の HeLa細胞の染色体に及ぼす

形 態 的変 化

平伸明

長崎大学熱帯医学研究所ウイルス学部門(主任:林 薫教授)

(Received for Publication February 10, 1973)

Morphological Study on Chromosomesof HeLa Cells Infected with ECHO Virus Type 11.

Nobuaki TAlRA

Department of Virology, Institute for Tropical Medicine, Nagasaki University (Director : Prof. Dr. K. Hayashi)

Abstract

Karyotype pattern of the cells persistently infected with small plaque variant viruses isolated from ECHO virus type 11 (gregory strain) was studied after several passages of subculture. The results are as follows.

1. The mode of chromosome number in infected HeLa cells was 67 (28%) with the range from 62 to 69, while those in uninfected cells (control) was 68 with the range from

66 to 68.

2. The karyotype analysis of infected cells revealed a decrease in groups B, C and D, and an increase in group A, F and G.

3. Such chromosome aberrations as double minutes and dicentries were observed in in- fected cells.

緒         昌

Hamper and Ellison (1961)はchinese hamster 胎児由来の,すでに異数化している株化細胞を用い, Herpes simplex virusを感染し細胞変性や分裂抑制

現象をみないが,感染細胞の染色体数の変動や染色体 の欠失及び切断などの形態異常が認められることを始 めて報告した.その後,同様の現象は Nich℃Is and 長崎大学熱帯医学研究所業績 第670号

(2)

62

平     伸  明

Levan (1962),Aula (1963) (1965), Kuroki (1966), Aya and Makino (1966)などによつて直接患者材 料について観察され,また,培養細胞とウイルレスとの 組合せではKopr℃wski (1962), Nichols and Levan (1964), Utsumi 〔1965)などによって観察されている・

これらの報告から一般的に言えることは,ウイルス感 染の結果認められる染色体異常は,染色体切断,染色 体細紛化,乱鉄路形成異常が主な変化である.ウイルス による染色体の切断は放射線やアルキル化列など化学 物療によつて誘発されるものと多少異なり, delayed

. .

isolocus chromatidーセype breaks (Ostergren and

Wak。nig 1954)とよばれる染色分体レベルの切断は たはGapを主とし,通常切断端の再結合はほとんど みれらないという.実績にMakinoす(1965)は無菌性

髄膜炎患者の血液培養で高い比率に染色体異常,特に 切断が認められることを報告している.

さきに,教室の陳(1971)はECHOウイルス11型 標準療であるGregory株に大(Lp),小(Sp) 2種 a) plaque変異ウイルL分スが含まれていることを指摘し.

次いで Lp及び SpウイルスとHeLa細胞の組合 せで持続感染系を得て,その模作について若干の解析 巷行なった.因みに ECHO ウイルス11型は無菌性 髄膜炎や発疹症の)原因ウイルスとして知られ乱国でも その流行例が報告されている(多ケ谷).著者はウイ ルス感染細胞の染色体変化を系統的に追究する目的で 実験を行なってシlるが先ず4調は上記の.持綻感染系に ついて染色体の形態変化を観察し,興味ある2, 3の 知見を得たので予満としたい.

実験材料と実験方法

ウイルス:教室の陳(1971)によつて plaque 純 イヒしたS皿all plaque (Sp)変異ウイルスをHeLa 制包で継代し,実験のたびに1ar酢plaque (Lp)餐 異ウィルスの混在しないことを確かめた.

観取及び持続感染系中尉立: 10%年血清及び0.5%ラ クトア}L,ブミン如Hanks液で継代したHeLa細胞 を使用した・ 150ml容の培養瓶に培養した単層培養 分関胞の)培養液の)をすて,燐酸緩衝生理食塩水〔PBS)pH 7.4でよく洗候し, Spウイルス(105‑5TCD50分0.2ml) 2mlを接種した. 37。C 1時間保った後,維持培地,

2チ6仔牛血清加Hanks液を加え, 37℃Cに培養を続け た.約2週間後CPEをまぬがれた細胞を残し,維持液 を更新して培養を続けた・約2ケ月後細胞集落をトリ

プシンで消化し,新めて継代培養した.増殖した細胞 を更らに継代し,実験には7ないし10代目のものを使 用した・その際の)放出ウイルレスの)値は約1O生.OTCD50 分0.2 mlであつた.

染色体の検査: Spウイルス持続感染HeLa細胞並 びに未感染の対照のD HeLa細胞は10%牛血清及び0. 5

%テクトアルブミン加Hanks液で150mlのplaque 用培養瓶を用いて37cCで培養した。培養液10mlに

コルヒチン(O.Sr/ml)を注射針で4〜5満加え me七aph.aseの状態で細胞分裂を止めた.コルヒチン 摘加政3時間目に培養液をすてサ 0.2%のトリプシンン液 を加え37℃Cに10分間保温し,続いて瓶をふり細胞を ガラス壁から別離した.染色体の検査のための標本作 製はMorehead (1960)の変法を用いた.すなわち上 記の剥離した細胞浮遊液を遠心菅に移し,遠心分離後 上垣液O)ト)ルプシンを除き(U のクエン酸ソ一ダ液 と0名1MKCl溶液を4 1・ 1に混合した液で10分間低張 処理を行なつた.これを再度遠心し,上清を捨て,メ

タル一ルと酢酸を3 : 1に混合したカルレルア液で固定 した.遠心分球9よって固定液を2回交換し,細胞を カルノア液に再拝遺して,スライド上に毛細管ピペッ トで2〜4滴おとした後細胞を含む液が一般に拡がっ た頃をみはからつて,ガスバ一ナ一上で乾燥した・

続いて位相差顕微鏡で染色体の拡がり具合を観察し Giemsa液で染色し標本を作製した.

染色体の観察:持続感染HeLa細胞並びに素感染 の対照 HeL乱 細胞の metaⅠKhase をそれぞれ40個 及び20個ずつ換鏡し願徴銑写真とした後詳細に分析し た・

実  験  成  積

二先ず束感染の対照HeLa細胞株の染色体数モード は68で markerとしてB群, G群に1個ずつの) 異常巷有していた(Fig‑1).

染色体数の分布:Table lに示すように束感染対 照HeL乱 細胞の染色体数の分布は66‑68に集中し68 を示す細胞が65%を占めた・一方 ECHOウイルレス

(3)

ECHOウイルL分7ハ11型のHeLa細胞の)染色体に及ぼす形態的変化

63

Table 1 Distribution of chromosome numter Tafcle 3 Karyotyping in carrier state出IeLa im七he cells o王carrier state with ECHO virus cells.

typ',ellandnon・山n王ectedHeLacells.

Chromo‑

triploid

62ー364 向68高69j

total o壬 cells

2O

4o

0 0 1 5 13 0

6L S住 9 ll 2 1

Table 2 Karyotyping in non‑infected HeLa

cells.

Remarks : In七he column of number of increase and decrease, numerator mean the

total cells e;にamined and denominator

mean cells associated with changing the chromosomes.

1 2 3 4 5 6 7 s 9 10 if) 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 23 26 27 28 29 3O 31 32 33 34 35 36 37 38 39) 40

1O 12 12 m 12 1O ll Q 10 1O 1O 1O 9 9 1O 12 Ill Ill ll 9 10 9 10 10 9 1O 10 10 10

3 5 5 6 4 ち s 4 3 s 6 s 7 ち s 6 5 3 3 6 3 6 4

18 18 16 14 16 20 18 2O 16 21 2O 19 18 21 19 18 18 18 17 18 17 18 19 19 16 16 19 17

9一 5117

9 9 9 8 1O 8 8 7

10 8 1O 9 10

9 12 12 9 7 10 9 s 9 9 9 10 8 9 9 in

9 a ll 9 9 8 7 9 7 7 7 9 7 8 1O 8 8 Ill 0 10 10 10

7 7 9 1O 10 1O O

7 6 6 8 7 6 9 8 7 7 7 7 8 7 7 7 7 7 7 8 7 7 7 7 7 8 6 7

6 6 6 7 9 6 9 7 8 6 3 7 6 7 4 4 5 6 8 7 7 7 7 Q

℃ 8 7

Dicentric and acen七ric texaploid

nuiin部)erof easeき2g

number o壬 decrease

7 7 7 7 7 7 7

7 6 7 ア 7 6

三3s主g芸1三喜

Remarks : see Table 2.

?

1

Doul)1e minutes

64 6各 65 64 6ア 63 m 66 3E 64 64 66 as 66 67 67 3S 65 67 67 64 63 63 65 66 66

(4)

64

Table 4 Summary of variability in number

.

。f karyo七ypm琴℃f n℃ninfected and carrier state

HeLa cells with EC!‡O virus type ll.

Karyotype (number) HeLa Cells

increase

decrease

carrier ‑

state

A高BIcID向FーG

11型持続感染細胞の)分裂像では, 62‑< と広く分布し 67のモード数を示す細胞が28%であつた・また対顔群 も持続感染細胞群もそのほとんどが3倍体域に属し6 倍体はそれぞれ1個ずつであった.

按型分析:非感染HeL乱細胞2D個及びECHOウィ ルレス11型による持続感染HeLa細胞40偶について観 察された染色体の群別とその数をそれぞれTable 2及 びTable3に示し,これらをまとめてTable4に掲 げた・

伸  明

罪感染HeLa細胞20個のうち, 6斂体細胞ユ個が 混在していたのでこれを除いた3倍体細胞19個eについ て染色体数の増減を各群別毎に調べた結果, A群で は8個, E群は15個, F体は14個, G群は10個の細胞 にそれぞれ染色体数が増加しているのを認めた.また, B群染色体は被検細胞19個中7個, C群では18個, D 群は3個の細胞に染色体数の減少を認めた.

それに反してECHOウイルス11型による持続感染 細胞40個中に6倍体細胞1個とmu1七iple aberatio皿 を示し核型分析が出来なかった細胞1個が含まれてい たので,これらを除いた残りの)3各個の)細胞について観 察したところ,A群染色体は29個,E群は13個, F群は 34個, G群は25個の細胞で染色体数が増加し,.特にE 群を除く各群染色体数の増加は非感染細胞の場合より 著明であると考えられた・一方, B群は25個, C群は 被検全細胞(3.8個) , D群は12個の神性に染色体数甲 減少を認め,これは非感染細胞の場合に比べて3群と

もその減少の傾向が著しいことが明らかであった.

以上の所見から ECHOウイルレス11型の持鰐感染 H^La細胞では, B群, C群, D群染色体の)著明な減 少とこれを代償するかのように, A群, F群及びG群 の染色体数の増加がみられた・

染色体の)形態的変化: Fig. 1, 2, 3,に示すよう に持続感染細胞群の)5 %に二動原体dicen七ric と断 片のdouble minu七esの染色体異常を見た.

Fig 1 marker chromosomes

(5)

ECHOウイルス11型のHeLa細胞の染色体に及ぼす形態的変化

F強  dicentric and acentric chromosomes

質g 3 d℃ able mirm七es

63

考       察

著者はウイルス感染における組織培養細胞の染色体 変化を系統的に追究したいと考え,先ず,その形態変 化に主眼をおいて, ECHOウイルス11型による持続

・感染HeLa細胞の場合について観察を行なった.杏 実態に使用した持続感染系は1O4・℃ TCD50/Q.雪m1の

⊂ ECHO n型ウイルスを放出しているので培養期間中

に素感染細肢は放出ウイルスの感染番うけることが考 ぇられる・そして細般っによっては1y七ic cycle一を示す ことも当然予想されるわけであるが,染色体標轟輝成 .に当っては,浮遊細肢はす分シバて洗い去って,ガき,貝更に り充分に固着している細胞だけを剥離して用いる‑にとrに 努めた。.本持蹄感染HeLa神性はその分裂娘細胞の

(6)

6ハ6

平     伸  明

すべてにECHOウイルス11型のgenomが保持されて いるかどうかは直接確めているわけではない.このよ うな持続感染細胞を用いて按型の分析を行ない,対照 として兼感染の継代HeLa 細胞について同様のこと を行なったのであるが,核型分析をすべき被検細胞数 を充分に多く(対,臀ン非感染HeLa補包20個及び持続 感染細胞40個)観察するとによつて異常の有無を検

定することが出来ると考えた.線型分析はDenver の方式に従つて染色体の太さや cem七romere の位置 によって未感染細胞及び持続感染細胞の核型分析を比 敬する一方,染色体数の変動を観察した.既述のよう に, ECHOウイルス11型による持綜感染HeLa細胞 では未感染細胞の照合よりB群,C群及びI)群染色体が それぞれ減少し,それを代償するかのようにA群, F群 及びG群染色体が増加している.しかもこれにはdi仁一 entricやdouble minutesの形態変化(Fg, 2, 3)香 伴っていることが注目さるべき現象であった. EC王‡O ウイルス11型によるHeLa細胞染色体のこのよう な異常所見はSaksela等(1965)早,海老名,高橋等

(1969)のパラインフルエンザHA2ウイルス感染ヒト 胎児細胞やHeLaSS細胞でもG群及びF群の)染色体の)

変動という範噂では一致していた.一方Nicholes and Levan等(1962)は麻疹患者, Aurea 〔1963,1965) は水痘,流行性耳下線炎及び麻疹患者, Makino and Sasaki (1966)は無菌性髄膜炎症例及びKuroki et al (1舶6)は風疹感染国についてそれぞれ患者の白血球 の核型分析を行ない切断像や細粉化像を観察し特に, Nicholes and Leven等(1962)によるとA群C群染色 体のあるもの及びE群に二次狭窄部分の切断があるの ではないかという一このように,ヒトのウイルス感染の

場合,直捷患者の末梢白血球の接型変化を観察した 所見は著者の実験例でも観察さたように頻度の差はあ るけれどもdicentricやdouble minutesの所見と共 通している.しかし,各染色体群内での変動や形態変化 は著者の場合を含めて一様でなく,一定の関連を見出 すことは今のところ困難である・しかし,今後実験村 料としてウイルスや細胞の種頬を増すと共に最近著し く進歩しつつある染色体分析の技法や観察法及び整理 法を導入し,ウイルス感染に伴う感染細胞の染色体の 形態変化だけでなく生物活性の)変化をも指標とするこ とによって一定の関連ずけが得られるものと考える.

結        論

ECHO ウイルス11型と HeLa 細胞の組合せで得 られた持続感染細胞の染色体の形態変化を未感染細胞 のそれと比較検討した結果次のような所見を得た.

(11持続感染細胞の染色体数は未感染細胞のそれよ り分散度が広いことが判った・

(2)持続感染細胞の)染色体はB群, C畔及びD群が 減少し,それを代償するかのようにA群, F群, G韓 の染色体が増加した.

(3)持続感染細胞ではdicen七ri9や断片の) double minu七es の異常を伴っていた.

稿を終るに当り,終始ど懇切なるご指導並びにご校 閲を賜りました教室主任林教授,並びに種々御助言を 賜わりました三舟助教授, AⅠ∋CC鏡石博士に射し,潔 甚なる謝意を表すと共に,ご臨力いただいた教室貝各 位に深謝を表します・

参  考  文  献

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