熟筒医学 第14巻 帯5号111‑123貢, 19ワ2年9月
Illl
ウェステルマン肺吸虫の抗原分析に関する研究 1.成虫体抽出液の抗原活性と理化学的性状に
及ぼす加熱の影響
今井淳一
長崎大学熱帯医学研究所寄生虫学部門(主任:片峰大助教授)
(Received for Publication August 25, 1972)
Studies on the Antigenic Analysis in paragonimus westermani 1. Effect of Heating upon the Serological Activity and Physico-chemical Character of the Adult-worm Extract
Jun-ichi IMAI
Department of Para∫itologツ, In∫titute for Tropical Medicine, Nagasaki University (Directer : Prof. D. KATAMINE)
Abstract
An antigen which was extracted in saline from the adult worm of Paragonimus westermani was treated by heating at differed degrees of temperature.
Examination was made on the serological activity of these antigens and on the physico-chemical character of their protein components.
In this study, use was done of the sera taken from paragonimiasis patients, experim- entally infected cats and immunized rabbits. The agar-gel diffusion test and the comple- ment fixation were employed for immunological measurement and the polyacrylamide-gel
electrophoresis was done for protein determination.
(1) The total protein quantity in the antigen was found to decrease in inverse proportion to the height of temperature for heating. For example, approximately 30% of protein was coagulated by heating at 100℃ for 10 minutes. While, change of the carbohy‑
drate quantity was very little and only 3.2% of it was lost by the same treatment.
長崎大学熱帯医学研究所業績 第651号
112
今 井 淳 一(2) In the findings of the electrophoretic pattern, the protein components to move rapidly to the anoden side appeared to be lost by raising the heating-temperature and these components were contained in the ES (excretion and secretion) antigen. On the other hand, the bands to move slowly to the cathoden side appeared to be almost unchanged or slightly decreased in quantity by heating. From this finding, these compo- nents were thought to be rather thermostable. The quantity of these ones in the ES antigen was very little.
(3) The heated antigens were examined on their serological characteristics to 6 of the infected cat sera and 22 of the patient sera by the agar-gel diffusion test. The soma- tic antigen heated at 60•Ž for 10 minutes showed precipitin lines to all the sera employed.
The one heated at 70•Ž, however, showed a negative result to 6 of the patient sera.
Further, with the one done at 80•Ž or more, the reaction changed to negative to all the sera except 2 of the infected cat ones.
To the immunized rabbit sera, precipitin lines were observed even by the antigen heated at 100•Ž. The increase of the heating-time from 5 up to 30 minutes resulted in the disappearance of the fine and weak precipitin lines but little was influenced on the formation of the main precipitin lines.
(4) In the complement fixation, the dilution-titre of the antisarum showing a posit- ive reaction to the heated antigen became lower by raising the heating-temperature. To antisera of high concentration, the heated antigen showed a positive reaction even with the dilution of 6,400 to 12,800 times. It was estimated that in the complement fixation, there were two reaction systems which were given separately by the thermostable antigen
fractions and thermolabile ones.
緒 看
多くの感染症の中でも特に寄生嬬虫性疾患にみられ る免疫現象は虫体が持つ抗原構成の複雑性や寄生部位 の違い,或いは寄生体内での発育に伴なう臓器,組織.
の構造やその働きの質的,量的な変化,更には宿主側 の条件などに依つてその様相を異にするなど寄生虫感 染免疫の業種ま極めて複雑なものと想像される.従つ て免疫学的な追究もにの様な寄生現象の多様性に対す る診断の適正を確立し,他の感染症に於ける診断法と 同等の意義を見出す可く多くの研究者によつてその開 発力チ試みられている.然し乍ら,寄生虫感染,寄生に より発現する抗原抗体系の詳細な分析やその時異性の 検討などに関しては未だ知見が少ない.
肺吸虫症に於いても免疫学的研究,殊にその抗原抗 体系の酔軒に関する報告例は極めて少なく, Y〇g〇re
et al (1965), Capron et al(1965), Seed et al
(.1966),辻ら(1967) ,多田(1968)および片峰,令 井(1965,帥,的)などの報告があるにすぎない.こ れらの報告ではいずれも肺吸虫の感染寄生により多く の抗原抗体系が存在する事を認め,感染後の経過日数 に伴ない反応系が増加する事,I更けま感染免疫に主要 な役割を果すものは虫体の代謝物質である事も推論し ている.
本章別に於いてもこれらの現象を更に明らかにする 為にウェステルマン肺吸虫を材料にその虫体抽出液を 各温度で加熱処理し,それに伴う虫体抗原の理化学的 性状の変化および免疫学的抗原活性の質的,量的変化 について寒天ゲル内反応,補体結合反応およぴpolyac rylamide‑gel電気泳動を応用して比較検討した.
ウェステルマン肺吸虫の抗原分析に関する研究
実験村料 と方法
11吉
Ⅰ 抗原の作成
* 1
a)虫体抽出液(SOM抗原)
犬にウェステルマン肺吸虫(P.にvestert乃am")のメp セルカリアを与え感染後5ケ月以上経過した後に肺臓 より虫体を摘出した.虫体を水で十分洗浄後p〇tter のガラスホモジナイザーで2‑5分間磨砕する.これ に.℃以下に冷却したアセトンを5O倍量加えて2‑3 分間擾拝し吸引炉過を行う・この操作を速やかに2.回
くり返した後減圧吸引してアセトンを除去し脱脂を行 ラ.この乾燥粉末を少量の〇.15M‑ Na℃Lと共に再び h〇mogemzeし,事に粉末重量の約5〇倍量相当の生食
U
水を追加する.にれを0‑2‑℃の℃oolni℃s mixerで 24‑48時間摸拝抽出後5.℃, 15,〇〇〇× ♂, 2〇min.逮 心し,上宿液を抗原とした.
b )熱処理虫棒杭原(HSOM抗原)
上記の方法で作成した虫体抗原の一部を取り6〇ニ℃, 7〇.℃, 8〇〕℃,卯.℃, 1〇〇e℃の各温度で加熱処理した.
更ににれらの各温度に於て 5min., lOmin., 15min., 20minり 3〇mm.間加熱後,生じた不陽虻沈毅物を 3,5〇Or.p.m.,2〇mi‡1.遠心し,その上宿液を反応抗原
として用いた.
℃)飼育液抗原CES抗原)
十分に洗浄した虫体を生理的食塩水1静l当り)15個体 の割合で加えたものを37.℃に12時間in℃ubateした.
にの飼育液を15,〇〇〇× g, 2〇min・遠QL・し,上宿液 をES抗原とした.
丑 抗血清の準備 a)感作家兎血清
感作方法は前に準備した虫体抽出液の1 miを静聴内 注射,同じく1抑iを等量の Freund's in℃〇mplete adjuvan七 と十分混合して.兎の背部および大腿部の皮 下と筋肉内に注射した.注射免疫間隔は静注が6日, 皮下および筋注は5日間毎に行い,最初の吉回は静注, 後の5回は皮下又は筋注を行つた.最後にゲル内反応 で十分抗体価が上昇している事を確めてから最終注射 後ワ日目に全採血して血清を分離した.
b )実験的感染猫血着
雄の猪C約2.5K動)6匹に夫Qる4O個のメタセルカリアを 与えた.投与方法は麻酔した描の食道内にピペットを 深く挿入し,胃内に直接注入した.感染後5‑6ケ月日 に頚動舵より全採血し血清を分離後‑2〇〇℃に保存した.
℃)患者血清
肺吸虫症の流行地に於て集団挽診の結果,肺吸虫感 染を疑わせるものとして採血された血清のうちから虫 卵陽性者22例を対象に選定し実験に供した.
Ⅲ 実験方法
a)寒天ゲル内沈降反応
本法の術式は Ou血七erl〇ny 〔195♀)の方法に準じ たが多少改良して徽量法を適用した.寒天ゲルは半井 化学のA酔r〇Se を用い, 〇.1%のⅣaⅣ日 を加えた
〇.15M, pH7.2のNa℃1溶液を使用した.ゲ)Lノ平板は 1 %の寒天溶液を加熱溶解し,厚さるm耽のものを作戒の 級,経5mlの抗原および抗血清を入れる穴を切り取り, 相互の距離を4mmとした.また抗原および抗血清の量 娃〇. 〇5‑0,(誹iでこれらのゲ)Lノ内反応は適当な温度に 保たれたガラス容器特に.寒天平板を静置し, 37 ℃の 定温のもとに24‑48時間反応を進行させた.反応終了 後生理的食塩水申で2 ‑5日間洗浄し,未反応蛋白 成分を除去後乾燥ゲルフイルムを作成した・にれf Amido l〕1a℃k l〇B染色液で染色し乾燥保存した・
b)ポリアクリルアミド・ゲル薄層電気泳動 本法は荻田ら(19ら6)の方法に準じて行つた.ゲル 調整には pH8.6> 〇.〇5Mトリ ス.アミ/メタン‑
〇.〇〇7Mクエン醸緩衝液を用い,ポリアクリルアミド.
.%旦
ゲルの濃度を7・5ヲ/とした.ブリッジ用けまpH8.2,
〇.3M ホウ醒=..〇SM 苛性ソーダを用い,異なる2 つの緩衝液を組合せた不連続緩衝液系を適用した.ゲ ルの大きさは1〇m×1〇m,厚さは1.〇77Z77i/‑N^i 5iwnとし, にれに1.〇7m× 9..地mの試料膚を7つ設けて泳動を行つ た.泳動条件はゲ]Lノ巾1珊当りIrnA‑1.5mAの電流 を流し,指示薬のBP]〕が原点より) 6‑7en移動した 時を終点とした.泳動完了後,直ちに1%アミドブラ ック1〇B.メタノール酉苦酸溶液で蛋白泳動帯の固定染 色を行い, 7チ硝茜酸液でパックブランドの脱色を行つ
た.更にこれを透明な乾燥ゲルフイルムとし,デンシ トメーターにより,泳動岸の分離パターンを測定した.
℃)補体結合反応
本反応の術式は緒方民法に従つて行つた.尚材料と して用いた乾燥補体,めん羊血球,溶血素は東芝化学 工業の製品を使用した.反応の形式け甫体量を一定と し,抗原および抗血清を共に2倍連続希釈法で希釈し て反応を行ない陽睦限界を示す反応の場を求めた.
ilE!
今 井 淳実 験 成 績
Ⅰ 理化学的性状の変化 A)蛋白質および糖類の変化
ウェステルマン肺吸虫虫体抽出液を 帥〇℃, 7.ウ℃, 8〇o℃, 9〇つ℃, 1〇O〕℃ の各温度で1〇分間加熱し,生じ
た不溶性沈毅物を遠QL、除去した.この上清液の蛋白量 を℃u‑Folin法で測定し,その成績をTable lに示 した.これをみると抗原の可溶性蛋白質は加熱温度の 上昇にともない順次減少して行くのが観察される.即
ち不溶性凝固沈澱を起した蛋白質の割合は各温度で夫 々 9.4%, 18.9%, 22.3%, 28.3%, 29.1%と次第に 増加した.一方,各温度での加熱時間の差による蛋 白質量の変化をみたが, 5min., 1〇min., 15min., 20min, 3〇min.の処理ではいずれの温度に於ても著し
い相違はみられなかつた.糖類についても同様にアン スロン法を用いて測定した・,この成績でも加熱温度の 上昇にともない減少がみられたが,その量的変化は極 めて少なく1〇〇つ℃ 処理でもわずかに吉.28%にすぎな かつた.この様に糖類(Table 1 )が熟により波壊さ
れる影響は極めて低い.
B)紫外線吸収の変化
未処理抗原( S〇M抗原)および各温度処理抗原を 夫々5O倍希釈液とし,これらの紫外線吸収を22〇.36〇 mμの波長填で測定した.その吸収曲線をFig.1に示 したが,いずれの加熱抗原も未処理抗原と同様に 2S〇
‑ 26〇mμに吸収帯が認められた.然し,その強さは 加熱温度により異なり処理温度が高くなるにつれてそ の吸収帯は特異的な曲線を呈した・にれは特に245m,it に吸収を持つ成分が加熱温度の増大によしり肖失して行
く結果に基づいている.にれに射し未処理抗原の吸収 器ま極めて不明瞭で弱い.尚, ES抗源についても紫 外線吸収をみたが虫体抗原のそれとは明らかに異なり
28〇mμ に吸収帯が認められた. CFig‑ 1)
℃)電気泳動像の比較 亡 Ci)虫体抗原(S〇M抗原)と飼育液抗原(ES抗原)
の比較
pH8.6,ゲル濃度7・5%のポリアクリルアミド・ゲ ルを支持体とした薄層電気泳動により, S〇M抗原と
Fig. 1 Change o王ultravi〇1e七abs〇rpti〇n curves of the whole extract antigen of Parasonimu∫ Lue∫termani by heating
o.D.1.5
1.0〇;Adマ e,5.
ult一二.〇l。w)
Table l ℃hange 〇f.the protein and ℃Qrb〇hydrate quantity 〇f the whole extract antigen, of Paragonim雑S・‑にuC∫termani by heating
Temperature 王or heating
Non ‑heated
6つc℃
7〇。℃
8〇.℃
9〇〔℃
1〇〇.℃
宮ur…tem litity〔mg/ml)
13.25
12.〇〇 1〇.75 10.3〇 9.5〇 9.40
℃〇agulated
pr〇tern C%3
9 * 18・9 22.3 28.3 29.1
℃arbohydrate quantity (mgノml)
14.64
14.58 14.4♀
14.37 14.33 14. 16
Redu℃ti〇n
C.%j
〇.41 1.02 1・84 2.12 3.28
note : The heatingーtime was l〇 minuetes
ウェステルマン肺吸虫の抗原分析に関する研究
F5g 2‑ Dia酢・amati℃ illustrations of七he thin layer electrophoretic patterns showed by theES antigen, the SOM antigen and the heated SOM antigen
ES‑antigen
S〇M‑an七men heated
SOMニーantigen
60‑C
70‑C
. 1.
I 1墓.印書.相中蜜柑..
..毒.蔓■胡.謙f■I
圧二I「4二丑重
8〇つ℃
90‑C
1
1〇〇つ℃
L虹二二.腰i
.t二.妻■l笹.ll ]円。L」因r儲陽二二]]
BPB
ES抗原の蛋白成分の相違をみた. (Fig. 2)デンシト メトリーにより両者の泳動岸の数をみるとSOM抗原 こでは8本, ES 抗原では11本が認められ,.その)うち共 通バンドが7本,特異的バンドは夫々l本(j)と4本 (b? e,i, i)が観察された. 〔Fig. 3,A), (Fig. 3,B) 両者の泳動パターンにも明らかに相違がみられ, .S〇M 抗原では各成分の分離が明確でその畳も多く, 陰極から陽極の全域に広がつて分布している.にれに し対ES抗原の泳動像は陽極側に多くの分布がみられ 各成分の畳も著明なものが少ない.
C.ii)加熱抗原の泳動像の変化
S〇M抗原を各温度で加熱処理すると,その泳動優 に著明な変化が観察された. (Fig‑3, ℃)特に著しし) 変化は陽極側に移動する4本の泳動苗(g, j, k, 1)に 認められた.即ち未処理抗原で濃厚な泳動帯を示した ピークgは6〇o℃. 1Omin.の加熱でさえ急激な減少 がみられ, 8〇.℃以上の処理ではその潜んどが消失し た. (Fig. 3, ℃‑1‑3)然し, 8〇つ℃から1〇〇つ℃ の処 理抗原ではそれに替つてピーク g より梢々陽極側に 新しく形成されたと思われる巾広い泳動蒜の出現増加 が観察された. (Fig.3, ℃‑4‑5)にれは熟変性による 蛋白構造の化学的変化によるものか否か明らかでない.
更に陽極側に移動する近接した3つの泳動帯(j, k, 1 )は6〇o℃, 1〇min.処理で明らかな量的減少がみ
られ, 7〇℃, 1〇mm.では更に著特に減少し泳動罵 jが消失した. 3〇=℃, lOmin.処理では泳動帯kも
Ill厘
消失し, 1のみが痕跡程度に認められるにすぎない.
この源に5本の泳動帯が加熱温度の増大にともない陰 極側のバンドから順次消失して行く現象は興味ある所 見である・ CFig.3,℃‑1‑33 一方,陰極側で殆んど 移動しない泳動帯aは加熱温度の増大につれて減少 して行くのがみられるが1〇〇ロ℃でも消失する事はな い.更に泳動苗dのみはいずれの加熟温度に於ても全
く変化が認められない.
以上の如く,易熱性の成分は陽極側に早く移動する 泳動特に認められ,にれらはES抗源に多く含まれる 事が明らかにされた.にれに対し耐熱性を示した泳動 滞aおよぴdは虫体を構成する組織成分に由来する ものと考えられる.尚各温度での処理時間の遠いによ る泳動像の変化は 3〇mm.以内の処理では殆んど確 認されなかつた.
2.寒天ゲル内沈降反応による観察
この実験では前記の方法で加熱処理した各抗原の免 疫学的反応活性について寒天ゲル内沈降反応を用いて 観察した.尚抗血清としては実験特に感染させた6匹 の猫血清, 22例の虫卵陽性の患者血清および虫体抽出 液で感作した2例の宏兎血清を用いた.にの実験に於 ては更に感染と感作による反応の出方の相違について も観察した.
A)感染帯血清に対する加熱抗原の反応
実験的に濃厚感染さした措血清に対する反応は6O.℃, 1〇mm.処理で未処理抗原の反応と全く変化がなく2
‑3本の強い沈降線が形成された. 7〇.℃処理では静 々沈降線の滅弱が認められ 80‑♀ R」上の加熱ではら 例中4例に完全な沈降線の消失がみられた.特に沈降 線が消失しなかつた2例の血清では抗原穴の側に形成 される肉太い沈降線け肖失するが,抗血清の穴側に出 現する鮮明な沈降線は100‑℃処理でも殆んど変化が
なかつた. (Fig. 4, B)一方,各温度で Smiru から 3〇mm.までの加熱時間の差による反応の変イヒは沈降 線の強さの減退に認められた.即ち6〇.℃では2〇皿in.
以上の加熱で肉太い沈降線の繊弱がみられ, 7〇.℃で は1〇mm.加熱とISmin.以上の加熱とで明らかに 沈降線の出方に相違が認められた.即ちIOmin.加熱 抗原では2本の沈降線が形成されたが ISmin.初 熱すると肉太い沈降線が消失し鮮明な沈降線のみとな つた.また8〇○℃以上の加熱ではいずれの処理時間で も肉太い沈降線の形成がみられず残存する1本の沈降 源ま1〇〇.℃, 3〇mm.でも尚形成された.然し, 9〇.℃
以上の加熱では処理時間が増すにつれて沈降繰の位置 が次特に抗原穴の側に近く移動して行く傾向が観察さ
[ft!望
今 井 淳 一
(A) ' f ES‑antigen
.∴...
. 〇rigin
(℃.2) di.‑
(‑)70‑c,lOmin.
il(+)
7〇.℃,1〇mm.
SOM‑antigen
d
?i¥¥
Ht
。rigin(+)
(℃=3)
朝℃ , lOmin.
R1日日・ :EE
(℃‑4)
9〇○℃, 1〇mm.
(c‑1)aheatedSOM‑antigen 60‑c,lOmin.
H(+)
a
n円
(℃.5)
1〇〇o℃, 1〇mm.
i
aFig 3‑ ℃ompanson 〇f the polya℃rylamide‑gel ele℃trophoreti℃ patterns 〇f the ES antigen (A),
七he‑soma七i℃ antigen (B) and也e heated S〇M antigens (℃, i‑s)
ウェステルマン肺吸虫の抗原分析に関する研究 ユlワ
れる.これは抗原活性が処理時間と共に低下減少して 行く事を裏づけている. CFig. 5, A)
B )患者血清に対する加熱抗原の反応
虫卵陽性の患者句清22例を用いて同様の反応を試み た,反応の出方およぴその強さの変化は感染措血清の 場合と全く同様であ?た, (Fig, 4, ℃)然l, 7〇.℃, lOmin,加熱抗原では22例の患者血清のうち6例(22.2
%,に沈降線の出現が認められなくなつた,にの.6例の 臨床的所見については陽性反応を呈した他の症例との 間に特記すべき相違は認められない†この様に加熱抗 原で速やかに反応が陰性化するにれらの症例は同じ虫 卵の排継がみられ乍ら免疫現象に質的相違が窺われる.
にれは感染の濃度あるいは感染の Stageの差による 抗体産生の質的量的な相違によるものか,更けま生体 の虫体抗源に対する感受性の相違によるものか想像の 域を出ないが極めて興味ある所見である.尚 8.o℃,
10min.加熱抗原では全例の患者血清に反応が陰性化 bfc. (Table 2‑3
℃)感作家兎血清に対るす加熱抗原の反応 感作家兎血清に対する加熱抗原の反応の出方は感染 血清のそれとは大きな相違がみられた・感染血清に対 する反応では概ね3〇〇℃の加熱で陰性反応を呈した が,感作血清の場合はいずれの実験例でも1〇〇⊃℃加熱 で尚沈降線が形成された,然し,この場合も抗血清の穴
Table 2 Res山七〇f七he agar‑gel diffusion test between比e heated antigens and the paragonimiasis patient sera
Ⅳo.
1 2 3 4 5 6 7 a 9
‑1〇 4f1 12 13 14 15 16 m 18 日害 2〇 21 22
Patients
H. Y.
S. T.
T. At.
T.Mm I. U.
T. B.
T. Ak.
T. F.
Y・ A.
Y. M.
R. N.
S. M.
K. A.
V. S.
M. M.
Y. K.
T. Ah.
Ⅳ. D・
T. Mk.
〇. Y.
N. A, M. K.
Age
69 B m 13 7♀
13 IK 26 14 m1 13 13 13 13 14 41 ‑ l1 60 13 18 12 12
Sex
M F M F F M F M M F M M M M M F M M M F M
M二
E鍔 IDT X‑ray
+* n〇t ♀xamin¢d + 串 (‑!‑ ‑)*:
+ 8 Cr) + (+) + no七examined
c‑o + C+3 + S (‑) + 12 C+) + c‑o + C‑) 4‑ 1 5 C‑0 + 1〇 C+) ,十 c‑o + 1〇 C.) + 9 C‑) + 9 Cー) + n.七examined + 1〇 Cー) + 5 C‑) + 1〇 C+) H‑ 12 ー)
‑!‑ #***
4十 + .ト + + + + + + + + + + + + + + + + + 十
n〇n・heatedheated for 10 mm.at 6..℃ 7〇.℃ 8〇.℃
+ + + + + + + + + + .ト + + + + + + + + + + + + + + + 1ト + + %l + + +
+ + + + 十
Total 22 22 16 〇
Cl〇〇%)〔77.8%) (〇%)
* indi℃a七ing乱positive result in stool examination
** showing the diameter 〇f wheal in intradermal test with ^BS乱ntigen
***しSh〇wing a p〇sitive王hiding in X‑ray examination
**棉sh〇wing the appearan℃ of pre℃ipitin lines in agar‑gel diffusion七est
118 今 井 淳
Fig 4‑ Agar double diffusion patterns of the heated antigens t〇 immunizedμrabbit
serum, in壬e℃ted‑℃at serum and parag〇nimiasis patient serum
(A‑1) (B‑1)
(℃.1)
二.ネ発.1I二重二.*二‑‑r‑
‑‑‑=."v‑‑‑̲^^^
二二..1二二喜
(A‑2) (B‑2) ℃.2)
髄顧動 Antigen (outer wells) :
1) n〇n‑heated
2) heated at 60‑C IOmin.
3) 〝 7〇o℃ 1〇min.
4) 〝 8〇〇℃ 1〇min.
S) 〝 9〇G℃ 1〇min.
6) 〝 1〇〇〇℃ lOmin.
iAntis'erum. (center well)
コ A) immunized rabbit……・ ‥ (A‑1), (A‑2)
B) infected ca七1.…‥.……‥・.‖‥…. (B‑1), (B‑2)
C) par軸onimia^is^paアien七…‥.... (℃‑1), (℃‑2)
側に形成された細い沈降線は8〇〇℃以上の加熱で消失 た現象と全く同一である. (Fig.S,B) がみられ,感染血清の場合と同様の傾向を示す反応系 3.補体結合反応による観察
の存在も認められた. (Fig. 4, A) 感作家充血情に対する加熱抗原の反応活性の変化を にのように感作血清では比較的耐熱性の物質と易熟 柿俸給合反応によつても観察した. Fig.6は各加熱抗 性の物質に対する2つの反応系の存在が窺われ,更に 原による反応の陽性限界の patternを直線で表わし 感作免疫抗原として主要な役割を果たすもけま耐熱性 たものである.
物質であることが示された.一方,加熱時間の差によ にれをみると抗血清の4〇倍希釈を境界線として,そ り形成される沈降繰の変化は比較的少け)が, 9〇.℃ れより低い濃度〔×4〇‑×160)の血特に対する加熱抗 加Q特になるとその影響が認められた.即ち出現する沈 原の反応では加熱温度の増大にともた」(p陽性反応を皇 降線の位置が15min.以上の処理で抗原の穴側に極 する血清希釈倍数に低下がみられる.即ち6〇○℃から 端に近く形成され,にの傾向は感染措血清で観察され 8〇つ℃までの加熱処理ではその血清希釈が16〇倍から
ウェステルマン肺吸虫の抗原分析に関する研究 Ill岩
Fig 5. Agar double diffusion patterns of the an七igens hea七ed壬or di肋ren七 Iength of七ime
(A) (B)
二誠二二4
ー6〇o℃ 1.・1→
芋
二発.A.二
‑70‑C‑
随
題
‑8〇⊂℃..1/,
戟.・=宮*二〒
‑90‑C‑
. . . . .
Antigen (Outer wells) : 1) n〇n‑heated 2) heating for 5min・
3) 〝 1〇min.
4) 〝 15min.
5) 〝 2〇min.
6) 〝 3〇min・
An七iserum (Center well) :
A) infected ℃at serum (left)
B) immunized rabbit serum (right)
12〇 今 井 淳
Fig 6. Result o王the ℃〇mplemen七壬ixation between七he heated'antigens and七he immunized rabbi七serum
Diluti〇n of antigen
X400 X800 X 1600 X3200 X6400
Dilution 〇f antigen
×4〇〇 ×8O〇 × 16O〇 × 32〇O ×64〇o
.コ ニニ
&
:エ こ) 3 .
←1h P〕
コ
=.
∽ R n [:
ヨ
×2O
×4〇
×8〇
×16〇 F F
×2〇%
×4〇.
×8〇%
×16〇. F
15〇倍の伸びを示し未処理抗原の反応と殆んど変化は ない.然し9〇コ℃加熱では8O倍, 1〇〇〇℃では4〇倍希釈に まで低下する・その減少の姿は Fig.6の斜線で表わ
した図形の術少によつても明かである・
一方, 4〇倍希釈より高い濃度(×1〇‑×4〇)の血清に対 する反応ではいずれの加熱温度に於ても未処理抗原と
殆んど変化ながく6.4〇〇倍から12,8〇.倍の高い抗原希 釈で尚活性が示された.又, Fig.6に示した反応の場 の図形で血清の希釈倍数が4O倍と6, 4〇〇倍希釈抗原で 囲まれる長方形は少なくともノ熟に安定な抗源に対する 反応系を示しているものと考えられる.然し熱に不安 穿たi,抗原活性がにの反応系のけにどれ位の割合に含ま
ウェステルマン肺吸虫の抗原分析に関する研究 121
れるか明らかでないが,加熱により肖滅して行つた4.
倍から16〇倍血清希釈で囲まれる斜線で示す反応の場 は疑いなく熟に不安定な反応系を示すと考えられる.
今回の実験では感染血清での反応を観察し得なかつた が感作血清とは異なり易熱性抗源に対する反応活性が
もつと強調された形で得られると思われる.
総 括 と 考 察
ウェステルマン肺吸虫抗原を各温度で加熱処理し, それに伴なう理化学的性状の変化および免疫学的活性.
の変化について寒天ゲ}り内沈降反応,補体結合反応お よぴP〇1ya℃rylamide‑gel電気泳動を応用して比較 検討した.
6『℃から1〇Oつ℃までの各温度で加熱処理した虫体抗 原の蛋白質および糖類は加熱温度の上昇に伴ない漸次 減少するのが観察され,特に1〇〇.℃, 1〇mm.処理で は約6〇0/.の蛋白量が凝固沈毅したが,糖甑の変化は 5.‑2御にすぎたSK然し,加熱抗原の蛋白成分について の電気泳動像をみると8〇コ℃以上の加熱処理で蛋白質 の構造変化を思わせる新たな泳動措の出現と増加が観 察される.従つ耐熱性と考えられる加熱抗原の可溶性 蛋白質にも化学的構造変化を起したものが存在すると 考えられる.更に構造変化を起した蛋白質が尚活性を 保持し得るか否かについては明らかでない.尚,加熱 時間の差による蛋白量の変化は SOmin.以内の処理 では各温度とも著しい相違はみられない.次に各加熱 抗原の紫外線吸収をみると,いずれも25〇‑26〇mμに 吸収帯が認められる.然し,吸収の強さは加熱温度に よつて変化し,処理温度が高くなるに伴ない明確な吸 収帯を示した.これは特に245m/Aの吸収右示す成分 が加熱温度の上昇につれて消失して行く結果である.
にの成分が抗原活性に関係するものか明らかでないが, 特に極めて特異的に故壌され興味ある現象である.
一方, ES抗原の吸収器ま280mμを示し虫体抗原と明 らかに異なる結果を得た.更に電気泳動像の変化を観 察すると 6〇〇℃, lOmin.処理でも急源に破壊される もの,処理温度が高くなるにつれて泳動帯が順次消失 して行くもの乃至は量的に漸次減少して行くもの或l) は全く変化しないものなどが観察された.また泳動碍 の移.動位置からみると陽極側に早く移動する成分が熟 に対して強い影響を受け余り移動しない陰極側の成 分は比較的熟に安定な傾向が窺われる.
一方,未処理の虫体抗原(SOM)と飼育液抗原(ES) の電気泳動像の相違をみると,泳動岸の数およびその 特異的な数は共に ES 抗原に多くみられる.然し, S〇M抗原では各成分の分離が明確でその畳も多く陰
趣から陽極の全域に広がつて分布している.にれに対 しES抗原は陽極側に多くの分布がみられ,各成分の 畳も著明なものが少ない.この様けに加熱抗原の泳動 像の変化を両抗原のそれと対比してみると易熟性の虫 体抗原成分は概ね虫体の代謝物質,即ち分泌,排滑物 に起源し,耐熱性成分は虫体を構成する組織成分に由 来するものと考えられる.この様な性状の変化に加え てゲル内沈降反応を指標として加熱が抗原活性に及ぼ す影響を観察した.
感染血清に対する加熟抗原の反応をみると7〇.℃処 理では概ね沈降繰が形成されるが, 8〇つ℃以上の加熱 を行うと反応は完全に陰性化した.特に22例の患者血 清を対象に行つた成績のうち7〇つ℃処理でもその6例
(22.2%)に反応の陰性化がみられ,これらの臨床 的所見は陽性反応を呈した他の症例との間に相違が認 められなか?た.にの結果は電気泳動像で観察された 陽頓側に速みやかに移動する成分が8〇.℃で消失した 現象とよく一致する.従つてこれらの成分が感染に於 て抗体産生に重要な役割を果している事が窺われる.
更に実験的に濃厚感染を行つた措血清でも同様の傾向 がみられるが,特に6例のうち2例では1O〇e℃処理抗原 でも尚沈降線の形成がみられ,感染に於ても濃厚な感 染では特に安定な成分に対する抗体の産生が窺われる.
SeedらCl♀66)はケリコット肺吸虫を器に感染させ 同様にその虫体抗原の熟に対する安定性を観察しでい る.それによると主要な2本の沈降源ま6Oo℃ lOmin.
処理では全く変化はないが8〇コ℃,1〇min.処理では沈 降線に強い減弱がみられ,更に1〇〇=℃では1本の沈 降源ま消失し,他の1本はわずかに残存が認められた 事を報告している.にの傾向は著者の成績と概ね一致 するが抗原の熟に対する抵抗性はウェステルマン肺吸 虫を用いた著者の成績がSe巳dらの行なつたケリコッ ト肺吸虫のそれより梢々弱い結果を得た.一方,感作 家兎血清に対する反応では加熱温度に関係なく主要な 沈降線の形成がみられ, loo.℃, 3〇min.処理でも消 失しない・然し,にの場合も主要な沈降線以外に形成 される沈降源ま帥〇℃以上の加熱で消失し感染血清で 観察された現象と同じ傾向を示した.
122 今 井 淳 一
にの様に虫体抗原で感作された動物では耐熱性の成 分に対応する抗体の産生が窺われ,にれは電気泳動の 結果からみても虫体を構成する組織成分に由来するも のと言える.これに対して自然感染血清では耐熱性成 分に対応する抗体の存在が認められぬ事から,これら の物質が感染免疫の抗原として果す役割は極めて低い 事は明らかである.尚楠俸給合反応でもこれらの成績 を更に裏付ける具体的な数値によつて活性の変動が示 された.
これをみると陽性反応を呈する抗原希釈の伸びは加 熱に関係なく未処理抗原のそれと殆んど変らない.こ れに射し抗体希釈の伸びは4〇倍以上の希釈で陽性を呈 した反応は加熱の増大に伴ない高い希釈から順次陰性 化して行くのが観察された.にの現象は高い抗体希釈 でも陽性反応を呈する抗原成分は加熱に影響を受け易 い事を示して居り,反対に高い抗原希釈でも陽性反応 を呈する成分は熟に比較的安定なものである事を裏付
けていQる・
にの特に補体結合反応に於ても虫体抗原による感作
ノ
血清けま易熱性抗原と耐熱性抗源に対する2つの反応 系の存在を示したものと考えられる.
感染血清については今回の実験で行つていないが沈 降反応の成績で耐熱性抗源に対する反応系の存在が撮 めて少ない事が示されて居り補体結合反応について も興味ある点である.にれについては今後更に検討を 加えるつもりである.
.以上を要約するとウェステルマン肺吸虫の可陽性虫 体抗原は易熱性と耐熱性の蛋白成分から成つている.
これらの成分は感染に於ては易熱性のものが,一方, 感作に於ては耐熱性のものが抗体産生に主要な役割を 果して居り,これらの加熱に対する抵抗性をみると基 軸性成分は8〇つCで完全に破壊されその抗原性も失活 するが,耐熱性成分は1〇〇.C.でも破壊されず抗原活 性も失活しない事が確認された.
摘要
1)虫体抽出液の可溶性蛋白質は比較的耐熱性のも のが多く,100℃,10min.の加熱で全体の約30%が凝 固沈澱した.にれに比べ糖類は更に安定で100℃加熱 でも約3%が減少したにすぎない。
2)加熱処理による虫体抗原の紫外線吸収の変化は 加熱温度の上昇に併行して吸収帯は顕著となる。その 吸収帯は250〜260mμに認められる。これに対しES 抗原は280mμに吸収帯を認め,虫体抗原と質的な相違 がみられる.
3)虫体抗原の電気泳動像は陽極域に速やかに移動 する成分と陰極で殆んど移動しない成分に大別され, 前者は加熱温度の増大と共に泳動帯が順次消失し,後 者は加熱に対して影響が少なく耐熱性を示した.易熱
性成分の多くはES抗原に認められ,80℃,10min.
処理でその殆んどが破壊される。
4)血清学的活性,沈降反応による変化は理化学的性 状の変化と概ね平行関係が認められる.感染血清に対 しては80℃加熱で沈降反応活性の失活がみられる。
これに対し虫体抗原で感作した家兎血清に対する反 応では100℃加熱でも活性の保持が認められた。
5)補体結合反応による感作抗血清に対する加熱抗 原の活性変化は加熱温度が上昇するに従い陽性反応を 呈する抗血清の希釈倍数は著しく低下する。
然し濃度の高い抗血清では熱処理された抗原でも高い 抗原希釈倍数で尚活性が認められた.
文 献
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