観光經濟学の基礎概念
著者 河村 宜介
雑誌名 關西大學商學論集
巻 創立七〇周年記念特輯
ページ 57‑79
発行年 1955‑11‑04
URL http://hdl.handle.net/10112/00022225
去においてよりも︑今日において一層盛になりつ
4 あ
る ︒
人間はある︱つの欲望を充足するために︑
とがある︒このことはわれわれが︑
﹁愉しみ﹂とかいったいわゆる﹁休息の欲望﹂について言えるのである︒近代生活における日々の熱病的なリズ ムは人間生活に︑種々の新しい欲望をおこさせてかるが︑そのうちにはわれわれの日頃の活動を比較的短期間休 息せしめる欲求が見出されてくる︒しかもこのような生理的要求は年々益々増加し︑今日各社会階級の間に広く 顕著に認識されるようになった︒即ちわれわれが日々たづさわっズいる仕事場から暫らく開放せられて広々とし たところに行遊し︑自然または人為によって提供せられた種々の魅力を享楽せんとする刺戟を感ずることは︑過 このようにして都市から地方に︑或は海に山に出かける人々によるある移動が形成せられるのである︒また近
鑢光経済学の荼礎概念︵河村︶
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が
日常住み馴れた土地を離れて異った土地に行って味う﹁気晴らし﹂とか或は キ
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観 光 経 清 学
一時的に一定の場所から他の場所え移動することを要求せられるこ
の 基 礎 概 念
河
村 宣 介
更 に
︑
の牒村や小都市から︑ 易にしてきている︒この﹁休息﹂の欲望はまた一方前述の場合とは逆の意味で人々の移動を育成している︒地方 な社会慣習︑乃至週末休日︑など勤労者に与えられる休暇は︑この欲望の反覆性を一層刺戟し且つその充足を容 の度数を増加せしめている︒殊に我国のように古い文化を有する国においては︑種々の祭典や宗教的行事のよう 時より一層迅速となり︑安全︑正確となった各種交通機関の発達はこの移動をより便利快適なものにし︑且つそ
﹁気晴らし﹂と﹁享楽﹂とを求めるために多くの人々が大都市えと移動する︒従って︑旅 行は必ずしも︑疲労困懲した身体に生気を取戻すための休息を与えるために企てられるものではない︒肉体的鍛 錬︑或は風光の観賞︑或は変った土地を見物する好奇心等のためにも亦旅行は︿止てられる︒かくて旅行は今日都 市といわず︑農村といわず︑近代人にとつて︑欠くことのできない気晴らしであり︑新奇なものえの欲望を満足
させるための︱つの手段となったのである︒
﹁休息﹂や﹁気晴らし﹂の要求の仕かに︑往々︑人間をして︑
に 仕
阿 け
る ︑
その居住地より一時的に離れさせるよう
いま︱つの生理的要求がある︒それは温泉︑鉱泉其他の療養地のように︑疾病その他肉体上の欠陥 を治癒せしめるために︑ある特定の土地に赴く場合が駆々ある︒そこでは︑快適な自然が︑空気或は水︑或は特 別の治癒効果を有する砂などが病体に健康と力を回復してくれるからである︒
れの仕かに︑また他の土地に移行しなければ満足させることのできない﹁精神的欲望﹂がある︒例えば﹁巡礼
﹂という形式で現われた宗教的感情がこれである︒巡礼という風習は︑凡ゆる国民︑凡ゆる時代において見られ る現象であって︑神仏えの侶仰は︑多数の信者達を聖なる場所え︑著名な神社仏閣え︑参詣に駆り立てることで
/ 5 8
最 後
に ︑
進歩した社会においては︑ 限度の形式が結果として生ずる︒ 遠隔の地方え赴かせて︑その住民の慣習︑風俗を調ぺさせたりする︒ ある︒時としてこの巡礼はマホメット教徒に対する﹁メッカ﹂詣でのように︑特定の巡礼行を義務として課せら
C 1 )
れているものさえある︒
註
( 1 ) マホメット教では︑メッカにカーパ︵百邑)という石造方形の神殿があって︑教徒は生涯に一度は必ずここに参拝 することになっている︒殊に回教暦の最後の月にはカーバに大祭があって多数の信者が参詣しこの月を﹁巡礼月﹂とい
つ て
い る
︒
宗教的感情だけでなく︑更に︑知的欲望も亦われわれに︑諸国訪問の機会を与えるものである︒貴重な芸術上
の財宝ーー絵画陳列館、博物館、紀念物その他'~が集中している国とか、研究を助成し、偉大なる科学的知識
を達成ーー大学︑研究所︑図害館その他ーーできる国︑また︑各種の大会や︑会議の開催される国などを︑訪問
する場合がその例である︒知的欲望は︑また科学者達を廃墟の都え移動せしめて︑その遺跡をたずねたり︑或は
以上述ぺたところの生理的︑精神的並に文化的要求は︑若しそれが他の条件と合致さえすれば︑ ツーリスト移
動の要因となるのである︒今日の経済社会においては︑まづ旅行及び滞在に要する費用を支弁するための牧入を
有することが前提とせられる︒欲望の頭度︑牧入の程度︑時間的余裕の有無等によって︑規定される消費の最高
蠣光経済学の基礎概念︵河村︶ ツーリスト移動の根源的欲望は︑ 概ね共通性を持つており︑
は︑循環的な性格を帯びる傾向がある︒そして︑比較的大なる所得力を有する人達について言えば︑ その大部分 これらの欲
望は唯一回限りでなく︑或る頻度
( f
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y )
と規則性
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とをもつて︑比較的短い間隔で現われるもの
註 ( 2 ) g
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の某本的な目椋は旅行資金に乏しいかまたは旅行に馴じんでいないか︑或は教育の不足乃至は旅行事
愉にうとい等のために今日まで錮光旅行の埓外にあった大きな国民層を撰光往来に参加させるに必要な状態につくり●
げることである︒
( 3 )
一九五二年度のアメリカにおける旅券統計によりヨーロッパ旅行申睛者の職業別をみると家庭の主婦が最大多数であ
るが︑これを除けば第一位は熟練工︑第二位は学生︑第三位は事務員︑会社員︑第四位は会社謳鴬者︑第五位は教員︑
第六位は杵通の労務者︑第七位は退職者︑第八位は技師となっている︒換首すれば今日の旅行暦から推論して所謂﹁四 C
ホテル﹂の時代は過ぎ夫ったのである︒﹁四
C ホテル﹂とはステッキを手にする老鹸の紳士
( C
a n
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) 松葉杖をつく
人 (
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)
不具者
( C r i
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g )
及び高級車を乗廻す金持ち
( C a d
i l l a
c s )
を主たる顧客とするホテルをさしている︒
で あ
る ︒
二、観光財及びサーヴィス|—概念 ツーリスストの希望する欲望充足手段を得せしめるための継続的な組織は︑観光旅行に対する欲望が︑益々広
( 2 )
範囲に︑社会の各屑の人達にまで拡大されてゆくこと︑更に︑それが国内および国際的な︑ある特定の政治経済
的情勢を形成するような環境にあること︑そして︑またある特定期間内における当該国えの︑
関する凡その予想を可能ならしめるような環境からこそはじめて生れるものである︒このようにして︑ツーリス
( 3 )
ト層の大体の構成︑並に平均所得を知ることによって財およびサーヴィスに対する彼等の需要の性質や強度を予
め推測することができるのである︒こ 4 にツーリスト移動即ち観光現象の経済学的把握が可能となってくるわけ
で あ
る ︒
ツーリスト流入に
60
槻光経済学の基礎概念︵河村︶
観光業はその経済的意味において︑これを総体的にみるときは︑売手と買手双方の間に於て糾織的に交換を行 うところの︱つの市場としての構造を示している︒この場合に市場の対象物は何であるかというに︑第一にはツ ーリストの切望する財をあげることができる︒ツーリストはこの財の効果を享受するためには︑その常住する土 地を離れなければならぬ︒われわれが﹁観光財﹂と呼んでいるこれらの財は︑例えば快適な気候︑自然美︑風景 などのように自由な状態におかれているものもある︒またあるものは︑多かれ少なかれ私的若しくは公的な独占 の形態において所有運営されるところの例えば温泉︑記念物︑美術館等のごときものもある︒私有の観光財も個 々の所有者によって完全に占有できないで共同してこれを所有する場合もある︒観光資源としての森林や山岳そ の他がこれである︒また所有主に帰属する効用の度合とは別に︑
用を有する場合がある︒例えば︑芸術作品や美術品などのように︑私人と共同の利益が対立する可能性が生ずる
場 合 で あ っ て ︑
の 国
家 は
︑
このようなときには︑所有権の制限という形式をとった法律上の保護が必要となってくる︒近代 ツーリストに対する︱つの吸引力となるこのような財の総体を法律の上で保護している︒この保護は 自然の景観は勿論︑芸術上或は歴史上価値ある事物︑特定地帯の特徴的な公園または動植物乃至民俗などを包含
( 1 )
し て
い る
︒
註(1)
国立公園法︵昭和六年四月一日法律第三六号︑昭和二五年三月三十一日法律第三十四号改正︶文化財保瞑法︵昭和二 十五年五月三十日法律第ニ︱
0
号 ︶ また観光財は時として人工的に創り出されることがある︒冬季娯楽に対する愛好熱や登山熱は︑山の幻想を与
一般社会にとつて等閑視することのできない効
えるような奇抜な吸引力を︑大都市の内部に発生せしめている︒例えば︑
設 の
よ う
に ︑
さて﹁自由観光財﹂に関しては︑
ス ケ
ー ト
場 ︑
第 二
は ︑
または銀盤遊びのスケート館などがこれである︒療養館の建 そこでは室内水浴や保養のために︑温泉場その他の施設が造り出されているものもある︒
人間はその保存および改良を目的とする種々の経済的活動を行うことがあ る︒この場合このような財の経済的性質は如何というに︑第一には風景の美︑太陽の光や熱などのように︑自然
経済財と自由財との中間カテゴリーであるとする場合︑第三 それらの所有権を取得し得ないところから自由財に対して経済財としての性格を一応否定はするが︑
し︑それらの享楽は︑取引行為の対象となり得ることを認めるものである︒
われわれはこの場合︑観光財は︑生産諸要素の使用によって価値を生ずるものであるから︑
たといそれが私的
或は公的︑乃至はまた自由財であっても︑常に資本財としての性質を帯びるものと考える︒事実︑
この観光財は
ツーリストにとつては︑これから一定壁の精神的︑倫理的乃至保健的その他の享楽を摂取しているし︑またこの 財は金銭的牧入の源泉でもある︒蓋し︑それらの財またはそれと不可分の物的財の所打者は︑如何なる時でもそ 次に観光財の享楽は︑他の数多くの財およびサーヴィスとの補完関係によって結合されている︒即ちツーリス
トは︑彼を旅行に誘った欲望以外に︑尚允足すぺき一連の欲望をもつて市場に現われる︒而も生活様式や程度の
肘上とともにこのような欲望も増大してきている︒このようにして︑例えば︑単に温泉または気候療養の欲望を の効果の対価として一定の富を得ているからである︒ は ︑ そのものの生産力と考えることができ︑ 電力を利用して造られた人エスキー︑
ヵ し
、
スキーヤーとかスケーターを目当てに
6 J 2
な 財
︑
槻 光
経 淀
学 の
基 礎
概 念
︵ 河
村 ︶
イ 需 要 持った人々も︑唯単にその上地の完備した治療的施設のみを要求せず︑愉快に時を過させてくれるようなその他 のあらゆる通俗的な娯楽やスポーツ施設などをも随時要求するものである︒従って観光財の価値化は一国全般の 事業活動を発展させる︒即ち述輸︑ 映画演劇企業その他である︒ ホテルおよび料理飲食業︑ 士産物始め各種店舗ひいては手工芸的中小産業︑
それ故に︑観光業は経済的側而からみれば︑限定することの出来ない種類の財およびサーヴィスを包含する市
( 2 )
場を構成するものであって︑純枠の観光財と︑ その価値化のために必要な条件と関連して︑他のすべての補完的
およびサーヴィスが存在するのである︒而して︑これらの財およびサーヴィスは︑その総体において︑受
入手段の準備︑即ち一国︑または一地方の受入施設を形成することになる︒
註
( 2
)
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の 著
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の要素が相集つて成立すると述べている︒Robert
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20
観光財及びサーヴィスの市場は︑他の商品市場と同様に︑需要と供給及びこの両者の一致を容易ならしめるカ
の側面から考察することができる︒
まづ︑この需要はある特定の国内価格︵国内観光業︶若しくは一定の為替相場︵国際観光業︶で取得するために
準備された財およびサーヴィスの量であって︑他の多くの財及びサーヴィスの需要と関連するものである︒これ
らのうち主なるものは︑運輸業並にホテル業に関するそれである︒ツーリストが他の市場に導入するところのも
通貨インフレ期間において増加する︒ 伝播作用が行われ︑ スに対する一連の需要をそこに齋らすものである︒他の需要との関係が不可分的であるから︑観光需要の一種の なく︑彼の生活様式に応じた︑他のあらゆる欲望なり願望なりを︑満足させることのできる財︑ のは︑唯だ一個の需要ではないのであって︑彼を誘つてその常住の土地から離れるように仇きかけた欲望だけで
またそれが一時的に当該国に滞在するツーリストと同じ場所に常住する他の人達との間に或 る一定の相関々係を発生せしめる︒それ故にツーリストが齋らす財及びサーヴィスの需要は極めて複雑である︒
それはすべての需要と同様に︑財及びサーヴィスに帰属する効用と貨幣の効用との相関々係によって規定され る︒即ちツーリストの有する牧入︑
およびサーヴィ
その心理︑並に財及びサーヴィスの価格などに関する変動がこの需要の上に 影響を及ぼしてくる︒観光財需要の推移は︑それを構成する個々の需要の推移如何によるが︑然し一般的に言っ て︑国内観光業については︑財及びサーヴィスの価格水準の変動とは逆に動き︑国際観光業については通貨の対 外的購買力の変動と逆の方向に動くものである︒さて観光財及びサーヴィスの或るものについては︑個々の需要 はより大なる経済的能力を有する人々によってのみ生じ︑これらの推移は前に述べたような需要の理論的法則か ら逸脱したものになる︒即ちこれらの人々は︑
その土地における財︑及びサーヴィスの価格の高騰傾向があるに も拘らず︑大流行の観光地を選択するのである︒従ってこの場合︑観光財及びサーヴィスに対するツーリストの 面要は︑価格及び為替相場を︑諸外国と均衡せしめるに役立つ︱つの手段ともなる︒而してこの需要はその国の 或る与えられた価格の変動による需要の平均弾力性については︑その個々の構成分子に言及する必要がある︒
6ム
観光経済学の某礎概念︵河村︶
り高度の所得能力を持つところの経済的に適格年齢に在る
A 地の住民 ︵大体において十五オから六十五オまでの間と
の相違という点から︑・国民を区別することができる︒
この関係はまたこれを量的に表現することができる︒即
る ︒ である︒而して他の若干のものは︑随意的性質の欲望に関するもので︑ これらの構成分子のあるものは︑必要且つ殆んど抑制のできない欲望に関するものであるとこるから︑非弾力的
これは弾力性がある︒例えば著名な芸術
作品とか︑考古学上有名な洞穴とか博物館などの参観のような知的性格の観光サーヴィスに関する需要はかなり の程度の硬直性をもつもののように思われる︒若しも欲求せられる財が絶対に代替のできないものであれば︑
こ
の弾力性は零であり︑これに反して若し他の財によって完全に代位せられ得るようなものである場合は︑需要は ある程度の価格の高騰によって皆無となる︒過去において考察された需要の弾力性については︑例えばツーリス トの嗜向の変化︑流行または慣習の移り替り︑所得の変動のような数多くの要素がこれに影響を及ぼしている︒
また経済の一般的動態において景気︑或は不景気の相が移り替るに伴い︑或る市場のツーリスト層に関する需要 の弾力性の度合がその都度変化している︒弾力性の度合は需要者の社会経済的条件によって影響されるのであ 観光業の市場を︑
この需要の側面から考察するならば︑観光的趣向の強弱︑従って観光目的えの動員性の度合
ち︑或る特定の時期に︑観光目的をもつて A なる土地を離れる人々の数を
T a で表わし︑同じ時期における A 地方
の住民を
P a で
表 わ
す な
ら ば
︑
T a ‑
A P a の割合は
地方の住民の観光目的に対する動員指数を示すことになる︒これは
住民全体に対して求められた指数であるから﹁一般指数﹂である︒もし観光旅行の欲望を強烈に意識し︑然もよ
推定されるが︶だけをもつて
r a を除すれば︑尚一層正確な﹁特別指数﹂が得られ︑
一層よく反映することができる︒
或る特定の時期に或る一国に流入するツーリスト集団はその構成︵性︑年令︑職業︑その他︶において相違する︒
従って適当な統計資料を整備すれば当該﹁構成指数﹂を作成することができるのであって︑
する時︑大なる利用価値を持つものである︒
この集団の慣習若しくは傾向を
この利用価値は極め
て大きく︑現象全体に関する直接調査の欠如する場合に︑間接方法によりツーリストの総消費額を算出しようと 甲なる国の或る一定の国内価格︑若しくは為替相場において生産者が︑国内若しくは国外の需要者に対して︑
特定量の観光財およびサーヴィスを供与する準備があるとき﹁供給﹂なる概念を構成する︒この供給は︑他の総 ての市場と同様に︑財及びサーヴィスの原価と︑貨幣のもつ効用との間の相対関係の産物である︒
て︑国内観光業は︑財及びサーヴィスの価格水準の変動と正比例し︑また国際観光業に関しては為替相場の変動 と正比例して動くことを特徴とする︒右の二つの水準の間には或る種の政治的または貨幣的目的を遂行するため に故意に一つの不一致を保持せしめることが出来る︒更にまた国家若しくは公共団体の手によって行われる観光 財及びサーヴィスの供給は︑前に述べた法則から部分的に逸脱する基準によって規制される︒或る場合において は︑観光財の供給は国家によって直接運営されるが︑これはこのような手段を講ずることによって︑私的企業が 能く果たし得る以上に︑国家観光資源の璽要要素を保存または利用しようと狙うからであり︑或はまた︑公益の
ロ
ヽ供 給
一 般 的 に 言 っ
66
親光経済学の某礎概念︵河村︶
に向う傾向があり︑前者は自然的吸引力︑後者は発生的吸引力と呼んで︑
c l )
る ︒ る ︒ る限界点を越えると︶益々大きなものにするのが通例である︒
これを一般原則として取り上げてい
また恒久的︑または専門化した施設に対する費用︑不活動期間中においても亦欠くことのできない一部の主要
労仇力に充当さるぺき報酬︑
または給料などによって主として構成されるところの所謂﹁潜在原価﹂の存在は︑
観光財およびサーヴィスの総数を縮少する場合よりも寧ろこれを増大せんとするとき︑
すべての国は︑観光業を供給の側から考察すると︑ 供給の弾力性をして︵或
それぞれ一定のツーリストによる選択が行われるものであ ローマ大学教授のマリオッティはその﹁観光経済学講義﹂において︑観光吸引地点に関する理論について記述
しているが︑その中で︑
ツーリストの移動は美術的︑建築的︑気候的︑衛生的利益に対する自然的要素と他の人 工的要素及び快適︑慰安︑ホテル組織其他これに類するものの上部構造的要素との有機的な結合に恵まれた地方
註
( 1 ) アンヂエロ・マリオッティ教授著﹁観光経済学購義﹂国際餓光局訳三一八頁︶
右の考え方に対してこれを量的に表現することができる︒即ち或る特定の時期に
A 地域に流入したツーリスト
の数を
で表わし︑同じ時期に︑ A の属する P T a
国において記録されたツーリストの総数を
r P で表わすとすれば︑
T ‑
T
という割合は当該地域の選択指数︵優先指数︶と見倣すことができる︒
a p
原則による管理を普及しようと意図するからである︒
ハ︑需要と供給を一致せしめる手段 の目的にとつては︑大した効果のないものになるのが通例である︒
この指数についても亦も
選択︵優先︶の比率は外国ツーリストのみを考察することによって求めることもできるし︑
トのみ︑或はまた前二者を総体的に考察することによってもこれを求めることができる︒更にまたこの比率は︑
ツーリストの数相互の間でなく︑
出 す
な ら
ば ︑
もしこれを滞在期間の部分的数︵Aに関する︶と全体数
( P
に関する︶との間で
より一層大きな統計価値をもっ︒
また P
国に流入した外国ツーリストの数︵これを
t p な
る 記
号 を
も っ
て表わすことにする︶と世界の各国において示されたツーリスト総数
( t n )
との比率を求めることもできるであろ う︒右の場合には
P
国に関して
t P ‑
t m なる選択指数︵憂先指数︶が得られることになる︒
( 2 )
しこれを滞在日数に基いて求めるならばより大きな価値を持つことになろう︒
註
( 2 )
︑ ︑
︑ ケ
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・ ト
ロ イ
ジ 博
士 論
文 ﹁
観 光
事 業
及 び
観 光
牧 益
の 経
済 学
的 理
論 ﹂
しかしながら観光業に関する国際統計の適合性には尚欠陥があり︑
或は国内ツーリス またツーリストの姿それ自体を定義づける
場合の見解に相違があるために︑前述したような指数の設定は国家的な枠を越えると具体的な現実に関する評価 観光財及びサーヴィスの市場は︑また需要と供給の一致を容易ならしめる諸力の側面からも考察される︒これ
らの力は就中︑宜伝︑旅行斡旋業務︑流行︑
一般の施設︑その他によって構成される︒旅行の欲望にとつて不可 欠の条件である観光財についての認識は宜伝によって普及されるのであって︑
用の増加を決定するときに真の生産様式と認めることができるのである︒
この宜伝はその対象である財の効
68
綱光経済学の某礎概念︵河村︶ にまで拡大された重要な行動を展開している︒ ィスの甜要が増加するにつれて寧ろ減少して行くからである︒ ツーリストの流れは宜伝︑印刷物︑写真︑ ラヂオ︑映圃その他の効果によって寧ろ他の方面に流れるべきもの
( 1 )
も一定の方面に向わしむるものであり︑否場合によってはそこにツーリストの流れを創造することさえある︒
註
( 1 ) l
九五四年ヨーロッパ各国が欧洲旅行委員会の提唱し来ったオフツーズンの米人ツーリストの誘致運動に呼応して雑
誌︑新聞の両媒体に十月を中心として活證な宜伝活動を展開し︑特にイクリーがオフツーズンの利益を大々的に取り上
げて米国の旅行大衆に訴えた広告はその代表的なものといえよう︒
( 2 )
観光直伝のために︑それぞれの国において支出される経費は︑また実に莫大な金額に上る︒
註
( 2 )
アメリカにおける各国綱光宣伝事務所および各地域旅行委員会は一九五四年アメリカ人ツーリス t を誘致するために
約四八 0 万ドルを支出している︵国際鎮光愉報九 0
号 ︶
これらの経費は︑観光財︑およびサーヴィスの需要を刺戟する目的に投ぜられるならば︑明らかにより一層生
産的であると認めらるぺきものである︒即ちそれらの財︑及びサーヴィスの単価は平均単価による財及びサーヴ
( 3 )
︵
4 ) 旅行斡旋業及び旅行事務所は︑単なる切符発売のみに︑限定されず︑組織的な分野乃至はまた銀行業務の領域
註︵ 3 ︶ヨーロッパのホテルは︑その販売業務を多分に旅行業者に依存している︒控目に見てその迎える客の七五痴は旅行業
者の手を経てくるものである︒これに反し︑米国内のホテルの湯合は︑五%疸度である︒然し︑新らしく開拓された旅
行局は︑旅行業者に相談するよう教育されている︒ •4) アメリカソ・エクスプ>ス社は今日世界最大の旅行業者で広く世界各地に一三九の事務所を設け、イタリー、スイス、
イギリス︑フラソス及びドイツのような国々においては︑それは一種の大銀行である︒ドイツでは米軍と取引する公認
のアメリカ銀行となっている︒
の 特 異 性
布に広範な変化を発生させることのできるものである︒
旅行に躊躇逸巡する人々を無理矢理に参加させたり或はまた︑彼等に旅行の欲望を生ぜしめたりする個々の強 力な啓発宣伝事業を通じて︑これらの機関はツーリストの流入を誘致し︑或は直接にそれを編制することを目的 宜伝︑または旅行案内所の活動の仕かに︑
また他の諸要素がその地方に対するツーリストの選択を決定するの に与つて力がある︒その一は経済的な性質のもので例えば︑個々の地方における財及びサーヴィスの価格の如何 であり︑その二は慣習︑風俗︑流行のような心理的な性質のものである︒もし︑或る時代において︑
うために山小屋に滞在することが流行しているような時には︑多くの人たちはそれにならい︑
スキーを行
われもわれも山え 向うことを選ぶであろう︒流行と宜伝は︑趣味を特定の方向に変更せしめ︑特に享楽的な欲望に対しては一層そ の影響力を与えるものである︒現代の経済においては︑企業家達はそれらの力を利用することによって︑趣味の 動向を形成する上に︑非常に積極的な役割を果している︒観光事業の分野においては流行はツーリスト流入の分
三
︑ 観 光 価 値 観光財及びサーヴィスの市場に於ける機能は︑若干の特異性を有している︒ツーリストによって︑要求される 観光財そのものに関する価格の直接の決定は︑必ずしも行われない︒大抵の場合この観光財はそれ自体において
価格というものを持たず︑ と
し て
い る
︒
それは色々な周囲の環境によって決定されることのできるものである︒即ち或る場合
r / , 0
であると断定している︒
スチュアート・ミルはいい︑
この観光酎は例えば気候︑自然美その他のように量的にも無限で︑全く自由な状態にあったり︑或 はまた品念物︑公園︑庭園その他のように︑官公有財産に属し︑そのため共同の使用に供されていたりして︑交 換の対象とはならないものもある︒また他の場合に於ては︑私人によって所有されているが︑然し非常に高い間 接的効用を持つているコレクツョソとか︑または数の少い美術品などがこの類であろう︒更にまた︑他の財及び サーヴィスとの密接な補完関係の中に見出される︒例えば特殊の治療的或は保健的効能を有し︑療養の目的に利
( 1 )
用される水︑泥土或は砂などの場合に見られる︒
註
( 1
)
グ リ
ュ ッ
ク ス
マ ン
は 入
浴 の
方 法
か ら
泥 浴
︑ 泥
土 浴
︑ 砂
浴 及
び 海
ホ 浴
に 区
別 し
て い
る ︒
而も尚観光財は︑ に
お い
て は
︑
一般には何等の経済的効用を有しないあ
たといそれ自体において決定し得ないものであっても︑常に一つの価値を有している︒
れた崇観美の場所は概して供給に制限がある︒従ってもし大きく求められると稀少価値を取得する︒﹂とジョン 場価格の増加に反映される︒
マーシャルは﹁通俗的な会合場所の自然美は看過され得ない直接的金銭価値を有 する﹂が然し﹁変化に富む美しい景観の中を回遊することのできることが男達女達子供達にとつてどのような価 値を持つかを確定的にするためにはある種の努力を必要とする﹂といい︑具体的に価値を認識することは︑困難 観光財の価値は︑艇々同じ地域において供給され︑
槻光経済学の某礎概念︵河村︶
ツーリストによって要求される他の財及びサーヴィスの市 ある特定地域におけるツーリストの流入は︑
に︑直接或は間接に影響を及匠す︒就中︑無際限供給の形で存在して︑
他 の
各 種
財 ︑
及びサーヴィスの価値
﹁ 優
る種の自由財に対して︑その効用を創造してくれる︒例えば︑自然の恩恵を受けた土地の上に気候療養の目的の
ための建物を建てるならば︑気候によって構成される主要資本は経済的価値を取得する︒雪も亦︑
達︑例えばホテル業者︑ 一年のうちあ
る時期に自然がわれわれに与えてくれる一つの自由財であるが︑山間における観光業によって生活する多くの人
スキー教師︑ガイド一般サービス提供者︑各種物品販売業者その他にとつては︑評価す
ることのできない価値を持つ財となる︒何故ならば︑それは彼等の営業の繁栄に関係するからである︒従って︑
このような観光財の欠如︑或は稀少から失うところのもの︑或はそれによって蒙る損害は恐らく尚一層切実であ
り︑且つまた金銭にも評価できるであろう︒もしも予定された季節に雪が降らないか︑またはスキーを楽しむに
必要なだけの営が降らなければ︑ホテルに宿泊する訪問客︑或は滞在客は殆んど無いであろうしへ料理店または
ホテルで提供される食事をとる者も︑商店で物品を購入する者も殆んどないであるう︒このようにして︑これら
の業者は︑営業の不振に苦しむであろう︒
ある特定地域えのツーリスト移動は或る種の自由財に対する経済的効用を創造するばかりでなく︑またそれら
の財以上に強度に要求される他の多くの財︑及びサーヴィスに対する価格の増加をも決定する︒それは別荘︑ホ
テル︑公園︑庭園等の建造に適当な土地について言える︒従って次のことが明らかである︒即ち︑自然の自由な
恩忠︑芸術作品︑古い記念物︑文化的並に宗教的施設等は︑ ツーリストに慰安或は効用を与え︑而して︑これら
の効用は︑これが供給者にとつては︑金銭的牧入︑即ち観光牧入の源泉となるものである︒
7 ・ 2
観光経済学の某礎概念︵河村︶
或る一観光地において取得された一定期間中の総牧入は︑提供された財︑及びサーヴィスの供与に関与した︑
生産諸要索に対する﹁報酬﹂を構成するものである︒その中には所得︑即ち土地その他利用される自然の自由恩 恵の生産的サーヴィスに対する価格も包含される︒まづ第一に︑
訪問客に供給される食料品や使用原材料を直接自分の土地から獲得する企業家︑乃至は︑また他人の資本︑或は 労力の提供を利用しない企業家を想像することができる︒右のような単純な仮定にあっては︑ツーリストの消費 額全部は︑財及びサーヴィスの提供者だけの懐に入ってゆく︒第二にツーリスト往来の増大と共に出てくる分業 に着日しなければならない︒ここでは原始的な受入産業に代つて各業種の企業家達が出現する︒即ちホテル︑別 荘︑娯楽館︑運動場︑道路などを建設するために土地を取得する人︑資本を投じ従業員を雇つてホテルを経営す る人︑自動車輸送その他の運輸業を組織する人︑等々である︒このようにして︑大は会社経営による大ホテルか ら小は旅行斡旋業者に至るまでツーリストの欲望や好奇心を満足させるための各種多様の事業が生れてくる︒ツ ーリスト消費の流入はこのようにして無数の細流に分たれ︑
ホテルの建設に自己所有の土地を使用したり︑
これらの細流が各々曲りくねったコースを通つて終 局的には生産諸要素の基本的牧入を形成するのである︒このような牧入の中には土地その他ー利用の対象とな るーー自然の自由恩懸の生産的サーヴィスに対する価格が数えられる︒若し︑ツーリストが︑医学的効能を有す
る水に恵まれた地方に来訪するならば︑
四
︑ 観 光 牧 入
このような水源の所有者は︑
よしそれを自ら直接に利用すると︑或はそ
れを賃貸しにするとを問わず︑
それから︱つの所得ーーーこれは﹁独占的牧入﹂の性格を持ち得るものであるが ーを挙げることになる︒観光財が利用可能の自然的要素或は自然力によって形成される時には必ずそこに自主 的類型としての所得現象が生まれるのであって︑
この場合︑所有者の姿は企業家のそれとは自ら区別されるべき が常である︒これに反して︑もし観光財の所有者が同時にまた他人の労力または資本を利用する企業家である場 合には︑所得は利益と混合する︒このような場合︑これを実際の﹁絶対的観光所得﹂ということができるのであ
観光地の士地所有者はまた︑
ツーリストに好まれない他の場所の同じような土地に比較して︑その所得を増大 することを考える︒それは建設用敷地の需要増加またはツーリストに提供すべき貴重物資或は初物などの需要増 大による価格脆貨の結果である︒同様のことが家屋および一般建設物の所有者についても言える︒
自 然 的 で な い 観 光 財 ︵ 例 え ば 博 物 館 ︑ 美 術 品 ︑ 陳 列 所 ︑ 文 化 的 ︑ 宗 教 的 そ の 他 の 建 物 ︶ は ︑
所有権の対象である場合 には︑同様にまた他と異なる特殊の牧入︑往々にして独占的或は準独占的性格を帯びるところの牧入を生ぜしめ る︒店干のサーヴィス例え●ガイド︑通訳その他によって提供されるそれの如きは︑同様にまた独占牧入︑或は 準独占所得の源泉となり得るものである︒その特異性から︑ツーリストの欲望乃至好奇心を刺戟する或る種の地 方的産物︑或は記念品の提供者も亦︑特別異った牧入を挙げることができるのであって︑彼等は普通の商品原価 とは著るしく相異する価格で販売を行うのである︒気候︑雪︑景観美等の自由観光財は自主的類型としての︑或
は経済的現象としての牧入を発生せしめることはない︒それらは︑他の如何なる者によっても︑価値を生ぜしめ る ︒
74
観光蒜済学の基礎概念︵河村︶
価格で賃貸しされることになる︒
の 構 成 要 素
得るところのセ動的査本である︒而して︑
る大部分の牧入の中に分解している︒既に明らかにしたように︑それらの効用は︑結合体として︑
提供される他のすべての財︑及びサーヴィスの市場価格の増大に反映される︒
はツーリストの流入によって養われる各種の経済活動ー~運輸、
劇場、映画館、美術品および記念品の製作販売、等々ー~における純利益の増加を齋らすことができる。またそ
れ に
よ っ
て ︑
ツーリスト往来と︑
も亦利益を享受するのである︒
五
︑ 観 光 牧
一 幅
の
その生産性は︑如何なる物によっても取得ができ︑他の諸要索に対す
ホテル︑旅行斡旋業︑カフエー︑
ツーリストに
レ ス
ト ラ
ン ︑
より直接的な関連を持つ方面に原料資材を供給するすべての農業並に工業生産 入
或る特定の観光地域における財︑及びサーヴィス提供者の純利益は︑湯合により他の一切の効用即ち︑包括的 にツーリストに供給されるところの︑
そしてまた気候︑自然美並に芸術美︑歴史上の遺跡等によって与えられる ところの一切の効用の対価として考えることができる︒このようにして或は温泉地︑或は社寺などの近くに位置 するホテル︑若しくは料理飲食業は︑自己の顧客に観光財を享楽せしめることの利益に均痙するのである︒而し てこのような地位から︑前述のような特殊の効用の対価であるところの余剰価値が発生するわけである︒
絵画のような景色の眺望のきく家は︑他の諸条件は同じでも︑このような利益を供与できない他の家よりも高い
一般的に言って︑観光財の価値化
' "
観 光
財 ︑
六
︑ 観 光 牧 入 の 決 定 要 素
れらの供給価格は通常原価を割ることになる︒
観光財︑及びサーヴィス提供者がおかれた或る種の特恵的地位からの低かに︑更に︑場合によっては独占或は 準独占の条件からも余剰価値が発生する︒そしてこの構成には︑程度の差はあるが︑自然的要素または各種の吸 引力︑制度︑並に組織などによって代表される人為的要因が与つて力がある︒この他︑更に虚栄︑或は単純な模 倣などの動機から︑貨幣的効用の過少評価をしたがる傾向のあるツーリストの︑特異な消費者心理も亦右に影響 を及ぼす︒このことは︑多くの場合観光地における一般価格水準をしてツーリスト流入のない他の地域における それよりも一層高くするのである︒
およびサーヴィスの提供者は︑必ずしも供給価格と通常生産原価との差額から生ずる純利得を享受す るものではない︒若干の場合においては︑この余剰利得は零或は逆に欠損となることもあり得るのである︒これ は或る特定地域えのツーリスト流入が多くの原因たとえば通貨または関税上の障害︑戦争︑高物価︑流行︑経済 的不況等の影響を受けて縮少する場合に起る現象である︒このような場合には観光財及びサーヴィスの供与に利 用される生産諸要素例えばホテル︑旅行斡旋業その他の如きは部分的に機能停止の状態におかれるか或はまたそ このようにして︑或る一国の観光財産は金銭的牧入の源泉である︒牧入取得のために支出される諸費用を超過
するこの牧入の一部が差引利益を構成することになる︒観光業と関連する個々の生産活動を考察するならば︑純
76
観光経済学の基礎概念︵河村︶ が計算されている︒ の負担が大きいからして︑ 利益の増加は︑供給価格と財及びサーヴィス生産の通常原価との差額に求められる︒
︵前掲トロイジ博士論
需
ツーリストの移動と︑直接に結びついた企業における原価の状況は果してどうであろうか︑例えばホテル企業 或は自動車運輸業︑温泉施設或は海水浴場︑等を例にとつても︑時間的に均一に配布されるところの経費はそれ 等の組織の中で顕著な部分を占めている︒そのことはまた︑建設費機械或はその他の器材に重複投下される資本 の利子並に債却率︑専門的労仇の使用︑その他についても言えることである︒それぞれの経済的活動は経常原価
一般的に言えば供給の非弾力性はかなり低率である︒
要の最低︑若しくは平均によるよりも︑
即 ち
︑
経常原価の現象は︑
更にずつと多くその頂点︵典型的には季節的頂点︶によって規定されると いう事実から生ずるものである︒ホテル産業においては経常原価は根本的な重要性を持つ︒例えば︑比較的好条 件の場合を想定して︑ホテルは年間最高六十日乃至七十日の期間中だけホテルの全牧容能力を利用していること
( 1 )
そして残余の期間中においては利用率は二 0
ーニ五劣を越えることは殆ど絶体にないと言ってよい︒
註
( 1 )
ホテル施設の利用度は実際の宿泊延日数と牧容し得るペット延日数との割合から求められる︒
文 ︶
統計上の計算においては︑季節的ホテル開設の平均期間は一
00
日と概算している︒受入れと︑食事供与の機
能を完全に行うホテル企業における平均宿泊原価は︑若干の不変的要素と︑宿泊客の流入と共に変化するその他
( 2 )
の要素とから形成されている︒不変的要索というのは︑場所の賃借に関する費用である︒
77
註 ( 3 ) 前褐トロイジ博士論文一四頁
対する手数料から与えられる︒ 註
( 2 )
伊太利のホテル産業にあっては︑ッソヂケート団体の手によって行われる統計的調査によると︑一般経要の二七・三
二%を吸牧しており︑高級ホテルの場合の最低一九・一五%から第二流ホテルの場合の最高三 Q
・ 七
五 %
の 間
を ●
下 す
る ︒
維持並に取替費︵牧入の一 0 %以内︶水の消費等である︒これに対し反比例に変化するものは︑食品類の加工並に
準備費︵取特原価の五 0 %にまで達する︒︶輸送サーヴィス電灯等である︒種々のクラスのホテルについて行ったガ
( 8 )
ートナーの調査によると一夜の宿泊原価と頻度数︵宿泊数︶と結びつける係数関係が明らかになった︒
を七五から五 0 %にまで減少することによって前者は約二 0 %だけ増加することになる︒尚更に五 0
%から三〇
形にまで頻度数を引ぎ下げると一︱
‑ 0
ー三五形の原価増大を来たす︒整備︑清掃その他の莉干の経費の如きは滞在
期間に比例して減少するものである︒かつて一九三九年にある独乙のホテルは宿泊客の滞在期間に従って逓減し
てゆく料金を採用することによって︑ 次に︑直接比例的に変化するものは︑ 即ち︑機械の維持︑
一種の差別的料率を実施して好結果を牧めている︒この企画は︑
ト移動増加の重要な要素となるものであろうから深く研究する価値のあるものである︒ ツーリス
旅行事務所を経営する企業にあってはサーヴィス原価というものがあるが︑この原価中では人件費︵特に専門的従
業員に対する︶が一般経費及び投下資本の著しい割合を占めている︒その牧入は︑乗車券の販光及びサーヴィスに
即ち後者
並に取替の費用︵設備資本の年率一 0 %以内︶備品の
78
観光財及びサーヴィスの原価決定の困難は大抵の企業において﹁包括供給﹂が行われるという事実のために一 柑増大するのである︒例えば︑輸送の場合についてこのことが現われる︒同様のことが殿々各種の派生的産業に 生命を与える多くの鉱泉及び温泉施設等についても見られる︒このような場合においては多く︑特別経聾と一般 経費との間の算定乃至はまた一生産品原価と同時に他の生産品原価に関連する経費の算定などは独断的なものと なる場合が多い︒会社形態の組織を持つ観光企業においては株主に分配される配当金の形で︑余剰価値決定のた めの比較的正確な資料を見ることができる︒即ち︑同じ程度の危険率を持つ事業に︑投資された資本の利子を超
要 す
る に
︑ ツーリスト移動にもとづく前述の総ての形式の余剰利得は︑所謂差額利益に対し︑特定︵或は相対︶
( 4 )
観光所得と名づける︒これはマーツャルの所謂﹁結合所得﹂の構造を持つている︒何故ならば︑その
l