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(1)

日本人

EF

L学習者の英語受動文の習得 につ いて : 日英語比較研究

OntheAcquisitionofEnglishPassivesbyJapanleseEFL

L ea

mers: AComparativeStudyofJapaneseandEnglish

野地美幸 Mi y u k

i,Noji

Abstract

JapaneseEFLleamersoftenhavedifficulite

s

inacqtJiringEnglish passives・αleimportantfactorthatcan beconsideredascausing t

his situadon is thatJapanese passives do notnecessarny 0

0rrespondtoEnghshpassivesandviseversan epurposeof t

hepresentstudyistoshow whatkindofdifferencesbetween JapaneseandEnglishmaycatwethislackofcorrespondence

キーワー ド

日本人

EF

L学習者

JapaneseEFLlearner

受動文

passivesentence

日英語比較研 究 c

omparativestudyofJapaneseandEnglish

統語的相違

syntacticdifEerence

語秦的相違

Iexicaldifferencc

0.

は じめに

英語 の

marr

yを実 時の使 用例 を参 考 にす る こ とな く単 に 日本語の

「結婚 す る」 に対応 させて学習 して しまうと

、 (la)

を用 いるべ きと ころで

(1b)

の ような誤用 を生む ことにな る :

(1) a・ JohnmarriedSusan・

b.*JohnmarriedwithSuZan.

逆 に英語話者 が 日本語 を学習 する隙 には 「誠 は和子 を結婚 した」の

(2)

ような誤用を犯すことがある (吉川(1995))。 このように誤用が言語 の違いに根差 していることはよ くあることである。

受動文を考えた場合、 日本人英語学習者が英語の受動文を難 しい と感 じる実際の場面 というのは、英語の受動文を日本語に直訳する と日本語 として不 自然になった り、 日本語の受動文を英訳 しようと して もこれに相当する英語の受動文はないといった状況、すなわち 日本語の発想で考えると 「いま一つ ビンとこない」状況、が生 じた 場合ではないだろうか。本稿では英語の受動文を取 り上げ、 日本語 母語話者が英語の受動文の学習をなぜ困難に感 じるのか、 その原因

を日英語比較の観点か ら追及 してみたい。

1. 受動文の使用

まず、受動文が どの ような場合 に用い られるのかを簡単に見ておこ う。安井(1982:93)は次のように述べている (下線は筆者による) :

@)

英語の受動態 がどの ような場合 に用 い られ るか とい うこと に関 しては、 さまざまな説明が行われて きているが、英語の ように語順が固定 している言語の場合は、特に華 作車以外 の要義 を文頭 に置 くための仕組みの一つであ るというように 理解 するのがもっとも良い と思われ る。動作 主以外の要素を 文頭へ置 くという必要は どういう場合 に生ず るか というと、

そのO,)非動作 羊が、談許の流れの中で話額 になって続いている 並全、あるい琴、その (C)非動作羊が問薪の文に別 て 既 知 項 目 であ り、それたっいて何 かが述べ られ るとい う状況にある場 金 である。

下線部 仲)は 「話題の一貫性」、下線部(C)は 「新情報か ら旧情報 へ」 という談話の原則を述べているが、受動文はこうした文 と文を つな そ談話の原則 を守 るよう意図的に 「動作主以外の要素を文頭に 置いた」構文 ということになる (福地 (1985)を参照)0

では 「動作主以外の要素を文頭に置 く」 とはどういうことであろ うか.下線部 (a)にも表現 されているように、動作主以外の要素 を

(3)

文頭 に置 くとい うのは、実は受動文 に限 ったことではな く

、(3a)

の 話鹿化文や

(3b)

の左方転位 文で もそ うである :

P )

a・ rnleSebooks,IgavetoMary・

b. n esebooks

,I

gavethemtoMary, cf・ ThesebooksweregiventOMary.

受動文 との比較 か ら明 らかなように、(

3a,b)

では動作主が主語位置 に現 われた ままであ る。つま り、皆同 じ 「動作主以外の要素 を文頭 に置 くための仕組 み」ではあ って も、受動文の場合 は、動作 主 ( 正 確 には動詞 の外項

rextemalar糾men

t l lを文 中か ら表面上消 し去 り、

目的語 ( 動詞の 内項

(internalargument

) )を主語位置‑移 す とい う統語 的操作 が加 え られてい る1 ) 。動作主 を主語位 置 に置かない ( 換 言す れば、 あえて受動文 を使用 す る)のは、動作主 を明示 した くない、

あるいは不明で明示できないといった理 由があるか らであ る。また、

受動 文 と して はむ しろ特 別 な場合 にな るが、 by句 と して 文末 で ( 即 ち新情報 として)提示 したい という理 由があるか らであ る2 ) 0

以上、英語の受動文が 「 話題の一貫性」や 「新情報か ら旧情報へ」

とい った談話 の要請 を満 たすために用い られ る構文であ り、動作主 を表面上消 し去 り非動作主を主語位置に移 す ことによ り形成 され る とい うことを見て きたが、一般 に談話の原則や統語的操作 とい うも のは言語 によって異な るものではない と言われ る。 したがって、 こ れ まで見て きた英語の受動文の使用 ・形成 に関わる談話の原則 ・統 語的操作 とい うものは、原則 として日本語の受動文にも当てはまる、

つま り日本語母語話者 にも暗黙の知識 として頭の中に備 わっている とい うことにな る3 ) .では、英語の受動文 と日本語 の受動文の どこ に違 いがあ って 日本人学習者 を混乱 させているのだろうかO この間 題 を以下統語的側面 と語嚢的側面か ら考 えて行 くことに しよう。

2.

統語的相違

(voice)とい う観 点 か ら受動文は通常能動文 と対応 させて引 き合

いに出され るが、動作 主以外 の要素 を文頭 に移動させ るとい う観点

(4)

か らするとむ しろ話題化文や左方転位文がその比較の対象 となる。

本節 では、 さまざまな タイプの文の比較 を通 して、受動文へ の依存 度が 日本語 と英語 とで異なっているとい うことを示 したい。

1 節で見 たように、受動文は話題化文 ・左方移動文 とは異な り(

i)

動作主 を明示す るの を避 けたい、 も しくは逆 に ( i)文末で実現 させ てよ り際立 たせ たい、場合 に用 い られ るとい うこ とであ った。(

ii)

は次節で取 り上 げるこ とに して、本節 では ( i )の要請 に応 え るため に受動文であ る必要があ るか という問題 を考えてみ よう。

受動文を用 いないで動作主の明示 を回避で きるか どうかの可能性 は空主語言語

(nunsubjectlanguage)

と しての 日本語 と非空主語言語 としての英語 とい う違 いが大 き く関わっている。英語 では時制文の 主語 が必ず音声的 に具現 されていなければな らないの に対 して、 日 本語は必ず しもそ うではない :

(4) a・ HiveinNii由ta.

b.

( 私 は)新潟 に住んでいます.

( 5 )

a・ Itissaidthatthejewelisdeepinthe血lanticOcean・

b.

その宝石 は大 西洋の奥深 くに沈んでいると言われ る.

(4a)

I

の ような強勢 のない代 名詞 は、 日本語では文脈等 か ら推測 が つ く限 り省 略 可 能 で あ る 。 ま た

、 (5a)の it

の よ う な 虚 辞

(expletive)

は 日本語 には存在 しない4 ) 。 このように日本語は英語 とは 類型的に異な った明示的主語 を必ず しも要求 しない空主語 言語であ る。 したが って能動文で も主語の明示を回避することが可能 である :

(6) a.

たった今、 ・犯人 を逮捕いた しました.

b.

たった今、犯人が逮捕 されま した.

(6a)

は警察官 に限 らず 、例えば現場の レポーターが 「 今犯人が捕 まっ た」 ことを伝えるため に

(6b)

と同様に用いることができる文である。

これに対 して英語 には

(6a)

の能動文のオ プションは存在 しない :

CT) a・'arrestedtheculpritjustnow.

b・

T

heculpritwasaTreStedjustnow.

英語の時制文の主語は明示 されていなければな らないか らであ る。

(5)

日本語では二種類の文 を用 いて表現で きるが英語では‑種類の文 で しか表現で きない とい うこ とは、 日本人の英語学習 について考 え た場合、 もともと使 っている二つのオプシ ョンの うちの一つ を用 い てい るに過 ぎないので、英語の受動文の習得 は一見それ程 負担 にな らないように思える。 しか しなが ら、実際には英語の ( 7 b)のオプシ ョ ンに対 して

(6a,b)

のオ プションが常に保証されているとは限 らない :

(8) a・ Themedicineisusedintemallyandextemally.

b・

T

hemedicinecanbeusedintemallyandextemally.

(9) a.

その薬は内服外用 ともに用い られ る.

b.

その薬は内服外用 ともに用 いることがで きる.

(8a,b)

は法助動詞

ca

nの有無 とい う点が違 ってい るだけであ るが、

(9)

に示 した よ うに

(8a)

は 日本語で も受動文で表現 され るが、 (

8b)

は どう して も能動文 にせ ざるを得 ない。 これは、c

a

nと 「で きる

がタイ プの異な る述語であ るか らであ る。

cm

はそれ 自体 主語 を要 求 せず本動詞 の主語 をそれ 自体 の主語 とす る繰 り上 げ述語

(miSing predicate)

であ るの に対 して

(KoopmanandSportiche(1991)

を参 照) 、

「 で きる」はそれ自体 の主語 を要求するコン トロール述語であ る5 ) 。

(8b)

に対応 する日本語 を考 えた場合、 「で きる」が 「その薬」 を主 語 とす ることがで きないために

(9b)

の ような能動文 にせざるを得 な いのであ るが、見方 を変えると

、(9b)

の ように能動文であ って も主 語 を明示 しな くて済むのは 日本語 が空主語言語であるか らである。

この ように、 日英語 には空主語 を許すか どうか という統語的違い があ り

、 ca

nと 「で きる」の ような語秦的違い と相 まって、英語の 受動文 と日本語の受動文 との間の対応 関係 に 「ずれ」 を引 き起 こ し てい る。 この 「ずれ」が英語の受動文の習得 に際 して 日本語母語話 者に (冒頭で も述べ た) 「いま一つビンとこない」状況を作 りだ し、

負担 をかける原 因 となっているのではないだろうか。

3.

語集的相違

では、受動文や能動文 といった文の選択 に関わ る語秦 について 日英

(6)

語間にどのような遵いがあるかを見てみよう。

3.1.迂言的受動表現

英帝では、(10a)の能動文に対 して (lob)の受動文が存在 するが、

(10a)の主語 と目的語を入れ替 えることが可能 という意味で (lob) 同 じ受動的意味を持つ (10C)のような迂言的表現 も可能である : てlo) a

T

hchorsckickedBob・

b. Bobwaskickedbythehorse.

C. Bobhadakickfromthchorse.

また、(ll)が示 しているように、動作主を必ず しも明示する必要が ないという意味でも受動文 と共通 している :

(ll) Bobgetanastykickinthestomach・

したがづて、受動文は 「動作主以外の要素を文頭に置 くための手段 の一つ」で、(i)動作主を明示するのを避けたい、 もしくは逆 に (益) 文末で実現させてよ り際立たせたい、場合に用いられる構文であっ たが、(10C,ll)のような迂言的受動表現は能動態であ りながらこう

した要請にも応えることが可能である。

‑方、日本語にも 「試験をする」に対 して 「試験 を受ける」のよ うな迂言的表現が存在する :

(12) 能動表現 受動表現

被害/損害/恩恵/迷惑 を あたえる を こうむる 激励/要請/保護/差別 を する うける 責傷/倭/損害/罪 を 負わせる を 負う 億頼/専敬/支持 を する を あつめる もてな し/ ご馳走/ひいき を する に あづかる 非難/攻撃/二類打 を あびせる を あぴる 東認/認可/指名/融資 を する を える 乗認/認可/許可 を する を もらう

うらみ/怒 り/ひん し 名声/喝采/好評

を かう を は くす (吉川(1995:95))

(7)

能動表現 と受動表現 を比較すると、能動表現が必ず しも存在 してい ない。また存在 して も〜をする」 という形態をとることが多 く、

「負わせる「あびせ る」の ようにもともと受動表現で用いている 動詞 を基に派生 した複合動詞 も含 まれる。 したがって特に受動表現 の豊かさが目立つ。

影 山

(1996)と吉川(1995)の考察に基づ きこのような迂言的受動表 現に関する日英語の違いをまとめると次のようになる。まず英語の 場合、動詞はget,have,make,takeのようなごく一部の動詞に限 られ る上、後続 する名詞 もanswer,supp

o

rtexaminadonといった動詞派 生名詞に限 られる。これに対 して日本語は、英語 と比較 して動詞の 種類 も多 く、後続する名詞 も動詞派生名詞に限 らない。さらに、英 語の場合、 こうした迂言的表現はそもそも口語的な言い方であ り、

用い られる動詞 も方言によってhavetakeかといった違 いが見 ら れる。こうしたことか ら、迂言的受動表現 を受動態 を回避する一つ の手段 として見た場合、英語は 日本語 と比べて不利な状況で、その 分受動態への依存傾向が強 くなると言えよう。

3.2.自他の対応

吉川(1995:91)によれば、 日本人の態 に関する誤用には次の ような ものがあるという :

(13) a. 蛋音問題はまだ解決 していない.

*¶leproblem ofitsnoisehasnotsolvedyet

.( ‑

与hasnotbeen solved)

b.新幹線沿線の住民は困っている.

*ThepeoplelivingaroundtheTokaido血e u喝・(.+ aretroubled)

C. 魚が揚がった.

m e伝shhasfried・(チisBled) d.、ジャガイモがゆだった.

*n efX)tatOCShaveboiled(>areboiled)

(8)

C. バ ンが焼けた.

*n ebredhasbaked(isdone)

日本語 との対応関係 か ら、こういった誤用は 日本語の干渉によるも の と容易に推測で きる。英語の受動文 と日本語の受動文が対応 して いないのである̀)。ではなぜこの ような 「ずれ」が生 じるのだろう・

。(13)で用い られている動詞の 自他の対応関係 を見てみよう7):

(14) 自動詞 他動詞 自動詞 他動詞 solve 解決する 解決する trouble 困る (困 らせる) f

ly 揚がる 揚げる

boil ゆだる ゆでる bake 焼 ける 焼 く

(14)を参考 に(13)の間違いを分析すると、いずれの場合 も日本語で は 自動詞が存在するが英語では対応 する自動詞が存在せず、その 自 動詞 を補う形で受動態が用いられてい場合に、誤用が起こっている。

吉川(1995)はこうした誤用について、 日本語の受動態 と(14)のよ うな 自動詞 (彼女は 「受動詞」 という用語を用いている)は意図性 の有無で使い分け られ、英語では動作主が意図的か否かにかかわ ら ず受動態が用 い られ、 日本語のような区別がないか らだ、 と説明 し ている。つま り、 日英語の 自動詞文 と受動文の使用に関 して次のよ うな違いがあるとされ る :

(15)

動作主の意図有 り 無 し

受動文 受動文 自動詞文 受動文

確かに、彼女 自信が述べているように、 このように考えると(16) の ような例 もうま く説明がつ くように思われる :

(16) a・ Hewaskilledinaplanecrash・

b.彼は飛行機の墜落事故で亡 くなった.

C.*彼は飛行機の墜落事故で殺 された.

日本語で 「殺 された」 という受動態 を用いることがで きないのは、

(9)

表面上は現われていな くても意図的な動作主 (殺 した人)の存在を ほのめかすか らで、一方英語で(16a)の受動文が可能なのは動作主 の意図は問われないか ら、 ということになるであろう。

しか しなが ら、 この説明には問題がある。まず第‑に、 日本語の 受動文に必ず意図的な動作主が存在するかというとそうではない。

例 えば 「言う」 と 「発見する」の場合 を考えてみよう : (17) a. その薬はよ く効 くと言われている・

b. その植物は南米で発見された.

(17a)の文に動作主の意図は感 じ取れない。また、(17b)は動作主に 意図がある (探 していて見つかった)場合と無い (偶然見つかった) 場合の両方の解釈が可能であろう。 こうした意味で、共に動作主の 意図 とは無関係であるよ

第二の問題は、(13C,d,e)に対応する受動文 (≡(18))(16C)の間 の容認度の違いを説明で きないことである。

(18) a. 7魚が揚げられた.

b. 7ジャガイモがゆで られた.

C. 7バンが焼かれた.

(18)の 「揚げる 「ゆでる 焼 く」 も(16)の 「殺す」も一般 に意 図的行為 とみなせ るにもかかわ らず、(18)(16C)と比べて容認度 はさほど下が らない。 「使い分けと言う言葉で表わされているよ うに、意図的かどうかが日本語 と英語の語用論的 (言わば 「好み」

の)問題で文法の問題ではないとすると、(16)の日英語の対立を受 動文の動作主の意図性で説明することには問題がある。

以上、吉川(1995)の説明に関する二つの問題点を(17,18)の受数 文を通 して見て きたが、 この二つ問題は実は独立 した間窺ではな く 互い、に関連 している。(17)が対応 する自動詞を持たない他動詞 「言

発見する」の場合で、(18)が対応 する自動詞が存在 している 他動詞の場合である((14)を参照)0(17)、 (13)の英文 と比べ ると 明 らかな.ように、英語に限 らず日本語でも対応する自動詞が存在 し ない場合 には他動詞の受け身形が自動詞の代 りをすることを示 して

(10)

お り、 この場合受動文は 日本語 として 自然である。 したが って、

(15)のように英語だか ら動作主の意図の有無を問わない ということ ではない。これに対 して(18)のように対応する自動詞文が可能な場 合、受動文を用いると不 自然な文、 しか しなが ら依然 として 日本語 としては文法的な文、に感 じる。つ ま り日本語は 自動詞文が可能で あれば、動作主の明示を避けたい場合 にわざわざ (動作主は潜在化 しているだけで構造上存在する (

1

を参照))受動文を選ぶような ことは しないのである。

これで(13C,d,e)の 日英語の違 いがいかに して生 じるのかを説明 したことになるが、(13a)の場合 も同様 に説明される。(13b)の 「困 る」 ように対応する他動詞●を持たない場合はそもそも自動詞文が基 本 となるので (7を参照)、 「困 らせ られ る(「困る」に使役動 詞 を付加 してそれを受動態にする) というオブti,ヨンはそもそも日 本語にはないのであろう。

ここで1つ問題 が残 る。ではなぜ(16C)は容認不可能 と判断され るのであ ろうか。 「殺 す」は対応 す る自動詞 が存在 しないので、

殺 された」のように受動態 に しても(16a)と同様 自然な文のはず である。(16a)(16C)の容認度の違いは、 日本語の受動文が英語の 受動文 とは異な り意図的動作主を要求するか らではな く、 「殺す」

の語集特性 として動作主、特 に無生物主語を嫌 う日本語の場合一般 に人、 を選択 するか らではないだろうが )。 これに対 して

ki l l

は無 生物の動作主をとることが可能なので、文の意味解釈上問題 となる ことはない。また

、( 1 7)

が可能なのはあ くまでも 「言う「発見す る」の動作主 として人を想定で きるか らである。

以上、 日英語の 自他の対応の違いが日本語の 自動詞構文好み と相 侯 って誤用 を引き起 こしているということを見て きたが、 日本人の 英語の受動文の習得 を考えた場合、個 々に対応の違いを指摘すると いうのは建設的ではない。 どういった動詞に対応のずれが起 こ りや すいのか といった傾向を押えてお く必要がある。

日本語はよ く指摘 されるように自他 を転換する接辞が非常によく

(11)

発達 している。影山(1996)によれば、他動詞を自動詞化する接辞は ICar・に大別されるという :

(19) a. ‑e:割 る/割れる、抜 く/抜 ける、砕 く/砕 ける、折 る /折れる、ほどく/ほどける、切 る/切れる、…

b. ‑ar:植える/植わる、集める/集まる、詰める/詰まる、

まぜる/ まざる、いためる/いたまる、…

この うち ‑e‑は他動詞 と非対格動詞 (影 山(1996)は 「能格動詞」 と び happenのような決 して外項 を取 ることのない動詞 と区別 して いる)の関係 を築 くもので、英語でもbreak(他)対break(自)のよう に自他の対応 があるのが普通なのに対 し、ar‑によって築かれる日 本語の 自他の対応関係は、英語では他動詞のみが存在 していること が多い とい う.‑eの付 く動詞 とar‑の付 く動詞 には意味的相達が あ り、前者は動作主 によって人為的に、 また動作主の介在な しに自 ずか ら起 こ りうる潜在的可能性がある状態変化 を表すのに対 し、後 者は通常動作主の関与な しには起 こ りに くい状態変化 を表す。つま り、 日本語にはar‑という接辞が存在するゆえに通常動作主が関与 するのが自然 と考え られる状況をあえて動作主を無視 してあたかも 自然 におこったように表現する自動詞が存在することになる。 自動 詞文が可能であればそれを好むのが日本語なので、英語の受動文に 対 して 日本語の 自動詞文 という対応のずれが起 こって くる。

では次に自動詞の他動詞化を考えてみよう。影山(1996)によれば、

日本語 には 自動詞 を他動詞化する接辞 として少な くとも ‑e‑と・as,

os2種類があるという :

(20) a. ‑e:建つ/建て る、進む/進める、並ぶ/並べ る、整 う /整える、…

・b. ‑as,os:鳴 る/鳴 らす、飛ぶ/飛ばす、ずれる/ず らす、

減 る/減 らす、動 く/動かす、起 きる/起 こす、…

一方英語は原則 として他動詞化は起 こらないo したがって(20)に対 応する英語の動詞も言わば他動詞が基本で、上でみたように自動詞 化 も、動詞の表わす状態変化 が動作主の介在な しに自ずか ら起 こ り

(12)

うる潜在的可能性がある場合 に限 られることになる 日英語の動詞 が必ず しも11対応 になるわけではないのであ くまで一例 として 挙 げれば、 「建て る」 は英語では人為的行為 と見なされ、 build 自動詞化 とい うのは起 こらない。よって、 日本語で 「建つ」 を基 に した自動詞文が 自然で も英語ではbebuildという受動文が用い られ ることになる。

4.おわ りに

本稿では、 日本語母語話者が英語の受動文を難 しい と感 じる原因を 日英語の受動文の対応関係 にずれが生 じているため と考え、そのず れが生 じる原因を明 らかにした。日英語 には統語的相違 として 「空 主語言語」対 「非空主語言語」 という違いがあき こと、そ してこの 違いが語秦的相違 と関連 して対応関係のずれを生 じさせていること、

を示 した。また、語秦的相違として迂言的受動表現の豊かさの違い、

自他の対応関係の違いがあることを指摘 し、 日本語が 自動詞文を好 む という 「文法」外の要因も絡んで、ここで も受動文の対応の乱れ が起 こることを示 した。言語差が全て人間の頭の中にある心的辞書 Oexicon)の違いか ら生 じ、空主語言語か どうか といった統語的違い INFLも しくはTenseといった機能範噂の違 い として還元で きる な ら(Chomsky(1995)を参照)、 ここで見て きた日英語の受動文の対 応関係のずれは全て語桑的相違によってもた らされることになる。

本稿では、 日本人EFL学習者にとって英語の受動文 を学習する適 切な時期はいつなのか といった問題 には一切触れなかったが、第一 言語習得 については受動文 よりwh疑問文の習得 が先行 しているこ とが知 られている(BoreerandWexler(1987)を参照).一方、統語的 知識の獲得 に関 して も第‑言語習得 と (外国語 も含めて)第二言語 習得 に共通 した一定の順序 があると言われて いるP awkins(2001), Stauble(1984)等 を参照)。よって今後の課題 としてはこうした実際 的な問題 も検討 してゆ く必要があるであろう。

(13)

I) この2つの操作は、受動形態素 (英語のen、 日本語のrare) が動詞 に付加 することによ り(i)動詞か ら外項 に付与され る意 味役割 を潜在化 させ、(ii)動詞か ら内項 に付与され る格 を吸収 するために起 こるとされている(Chomsky(1981),Jaeggh(1986)).

2) 個々の事例及びその詳 しい解説については加藤(1997)を参照。

3) 暗黙の知識 として備わっていることとそれを教えるか どうか の問題は外国語学習の際には当然別個 に考える必要があるであ ろう。母語であれば意識 しな くて も使 えるが、外国語の場合は 明示化することによ り学習効果が期待され るか らである。受動 文の学習に関してもこの問題は非常に興味深いことではあるが、

本稿の趣 旨か らは逸脱するのでこれ以上立ち入 らない。

4) 音形 を持たない虚辞があるとする立場 もあるが、少な くとも (5a)itのような 「音形 を持った」虚辞は存在 しない。

5) (i)の対立が示 しているようにCan には主語に対する選択制限 がないが 「で きる」にはある :

( i )

a・ Itcansnow insprlng・

b.*春に雪が降 ることがで きる.

̀) 時制の対応関係 にもずれがあるが、本稿の趣 旨か ら逸れるの でここでは扱わないことにする。

7) 「困 らせ る」はkomarと使役動詞(S)aseが結び付 いた統語的 複合語なので正確 には 「困る」に対応する他動詞ではないが、

troubleに対応するもの として載せた。 したがって、以下の議論 では 「困る」は対応する他動詞を持たないもの として扱 う.

受動文の意味上の主語 (外項)は日本語の場合 も 1節で示 し た ように潜在化 す るだけで構造上消 えてはいない (Miyagawa (1989)を参照)。そしてその点で非対格の自動詞文とは異なる :

( i )

a・ Theboatiwassunk/'Sankitocollectinsurance

b.そのボー トは保険金 目当てで (沈め られた/*沈んだト (i)の受動文 と自動詞文の違いは、生成文法では「般 に、 この外

(14)

項 の有無 とい う観点か ら説明されている。

吉川

(1995)

は 日本語の受動態 と自動詞は意図性 の有無で使 い 分 け られ る と述べて いたが、意図性の有無 とい うのは当然外項 の有無 か ら導 き出され るので、 日本語 に固有の問題 とは言えな い。む しろ、受動文 と非対格 自動詞文の一般的特性 がそれぞれ の使用上の違いを生み出 していると解釈する方が 自然であろう。

参考文献

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影 山太郎

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巻第

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