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( ) 東医大誌 75(1): 105-106, 2017
プ ラ ザ
第 54 回医科学フォーラム
The 54
thMedical Science Forum (MSF)
石 橋 英 俊 Hidetoshi ISHIBASHI
オーガナイザー
東京医科大学疾患モデル研究センター
1 第54回医科学フォーラムは、平成28年12月8 日(木)午後6時半より、東京医科大学病院教育研 究棟(自主自学館)3階大教室に於いて開催されま した。今回は「再生医療・遺伝子細胞治療の実用化 に向けた戦略」をメインテーマとして、日本医科大 学 生化学・分子生物学(分子遺伝学) 主任教授 岡田尚巳先生と、東京医科大学 口腔外科学分野 大学院生 藤居泰行先生に講演をしていただきまし た。
1. 岡田尚巳先生の講演『Duchenne型筋 ジストロフィーに対する遺伝子細胞治療』
遺伝子治療の現状について概説しました。有用な ウイルスベクターは何種類かありますが、対象とな る疾患や組織の特性に応じて用いるウイルスを選択 する必要があります。例えば、神経筋疾患に対して は、ヒトに対して病原性を持たず細胞障害性がない アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いることが有利で
す。演者らは超遠心法の代替としてイオン交換によ る精製法を改良し、高規格のAAVベクターの大規 模製造を可能としました。
AAVベクターの欠点の一つは搭載できる遺伝子 の長さが短いことです。デュシェンヌ型筋ジストロ フィーの原因遺伝子であるジストロフィンは79の エクソンから成り、cDNAとして14 kbあることか ら全長をAAVベクターに搭載することはできませ ん。そこでAAVを使った遺伝子治療ではエクソン スキッピングを起こさせる、あるいはマイクロジス トロフィンを発現させるアプローチを取ります。
遺伝子治療にはまだ克服しなければならない点が あります。その一つは免疫応答によってウイルスベ クターが排除されることです。演者らは筋ジストロ フィーモデルイヌの胎児期に超音波ガイド下穿刺に よって羊水にAAVベクターを投与することで免疫 寛容状態を作り出しました。出生後にさらにAAV ベクターを投与すると、対照個体と比べて運動能力 の低下が抑制されることを確認しました。
また、Duchenne型筋ジストロフィーは炎症素因 が関わっていますが、骨髄間質細胞が炎症部位に集 積しやすい性質を生かして、歯髄より作製した機能 強化型骨髄間質細胞を投与することで、筋ジストロ フィーモデルイヌの症状進行を抑制することに成功 しました。
今後は、ここで紹介したようなAAVベクターを 用いたin vivo gene therapyと幹細胞を用いたex vivo gene therapyを適宜組み合わせた遺伝子治療・細胞
東 京 医 科 大 学 雑 誌
─106─ 第75巻 第1号
( ) 治療の実用化を図ります。
2. 藤居泰行先生の講演『ヒト歯髄幹細胞を用いた 新規三次元骨再生医療戦略』
ヒト歯髄幹細胞は不要となった抜去歯から採取可 能であることと、高い増殖能と多分化能を有してい ることから、再生医療での細胞源として注目されて います。とはいうものの、臨床応用に向けてはさら に安定的かつ高効率な骨分化誘導法の確立が課題で す。
演者らは低分子化合物であるヘリオキサンチン誘 導体(TH)がマウス骨芽細胞株や間葉系細胞株に 対して骨分化誘導能を有することをこれまでに報告 してきました。本講演では、ヒト歯髄幹細胞の骨分 化誘導におけるTHの有用性の検討と、ヒト歯髄幹
細胞の安定した高効率な分化誘導法の確立について 紹介します。
16-23歳の抜去智歯よりヒト歯髄幹細胞を単離・
培養後、骨分化誘導培地、及びTH (10-8-10-5M)添 加 骨 分 化 誘 導 培 地 で の 培 養 を 行 い ま し た。TH
(106M)添加によって骨分化マーカーの高発現、及
び、骨分化誘導早期にアルカリフォスファターゼ陽 性細胞を認めました。さらにin vivoでのTHの有 用性を検討するため、予備実験としてTH添加骨分 化誘導培地にて培養したヒト歯髄幹細胞シートをマ ウス頭蓋骨欠損部に移植したところ、対照群と比べ て有意な骨形成を認めました。
このように、移植時のヒト歯髄幹細胞の骨分化誘 導におけるTHの有用性が示唆されました。
3. ま と め
講演後には、活発な質疑応答がありました。また、
病院6階のカフェテリアで開催された懇親会の席で も、演者を囲んで活発な意見・情報交換が行われま した。今後の広まりが期待される再生医療と遺伝子 細胞治療の分野での基礎と臨床の橋渡しに関する最 先端の内容であったことから、大変有意義な会合と なりました。
(文責 石橋英俊)
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