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東医大誌 74(3): 297
-298, 2016
プ ラ ザ
第 53 回医科学フォーラム
The 53 rd Medical Science Forum (MSF)
石 川 孝 Takashi ISHIKAWA
東京医科大学乳腺科学分野
1
第53
回医科学フォーラムは、平成28
年3
月16
日(水)東京医科大学病院教育研究棟(自主自学館)3
階大教室に於いて開催されました。今回の講師は、山梨大学大学院 総合研究部医学域 社会医学講座 主任教授 山縣然太郎先生をお迎えし、「エコチル 調査(JECS)と臨床研究」をテーマに、エコチル 調査の概要、DOHaD(Developmental Origins of
Health and Disease)、研究ガバナンス、出生コホー
ト研究の意義と課題などについて講演して頂きまし た。山縣先生は、公衆衛生学、人類遺伝学、疫学・
分子遺伝疫学をご専門とされ、疾患易罹患性を遺伝 子レベルで検討し、生活習慣との交互作用を考慮し た予防法の確立を目指し、主に地域保健に関する疫 学、健康保険、健康事業評価の研究や、ダウン症を 中心にした遺伝性疾患患者の遺伝カウンセリング、
障害者医療に関する研究をされています。
「Identification of microsatellite gene polymorphisms
in the placental alkaline phosphatase gene」で山梨県医
師会奨励賞(1994年)、「骨粗鬆症の遺伝要因と環 境要因に関する研究」山梨科学アカデミー奨励賞(1999年)他を受賞されています。
1.
「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」とは?
エコチル調査とは、胎児期から小児期にかけて、
化学物質暴露をはじめとする環境因子が、妊娠、生 殖、先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、
代謝・内分泌等に影響を与えているのではないかと の仮説の解明を目指した、全国
10
万人規模の出生 コホート研究です。2010年より開始され、研究期 間は、リクルート3
年、追跡13
年、解析3
年の、2031
年度まで22
年間にわたります。期待される効 果として、① 小児の健康に影響を与える環境要因 の解明 ② 小児の脆弱性を考慮したリスク管理体制 の構築 ③ 次世代の子どもが健やかに育つ環境の実 現 ④ 国際競争と国益が挙げられます。実施体制は、環境省が調査の企画立案、予算の確 保を行い、厚生労働省、文部科学省、WHO、米国 が連携して、コアセンター(国立環境研究所)、メディ カルサポートセンター(国立成育医療研究セン ター)、ユニットセンター(大学など全国
15
か所)を設置して実施されています。
2.
研究ガバナンスエコチル調査は大規模多施設共同研究であり、研 究ガバナンスの構築が重要です。組織のあり方、決 定プロセス、コンプライアンス、リスク管理、危機 管理について組織として徹底することが必要です が、エコチル調査は決定プロセスを明確にした組織 編制、多くの標準手順書の作成、研修会等を実施し て、質の高い研究実施のための研究ガバナンスを 行っています。エコチル調査は、我が国で初めての 大規模長期追跡調査で、かつ、全国
15
か所で実施 されるマルチセンター方式(多施設共同研究)であ ることから、調査の遂行を妨げる様々な因子が存在東 京 医 科 大 学 雑 誌
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巻 第3
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し、一つの事象が調査全体の継続を脅かすことも想 定されます。基本的にはコンプライアンスの低下に よる信頼関係の毀損によりリスクは生じるため、調 査を円滑に遂行し、目的を達成するためにはコアセ ンター、ユニットセンター、メディカルサポートセ ンターが協力してリスク管理、危機管理に取り組む ことの重要性を説明されました。3.
ま と め10
万人規模の出生コホート調査はデンマーク、ノルウェーに次いで日本で
3
番目に開始されて世界 が注目しています。2014年10
月に、参加者の5
パー セント(5,000人)を対象として詳細の調査が行わ れ ま し た。 生 涯 を 通 じ た 健 康 支 援(Life coursehealth care
)のためには、エコチル調査のような出生コホート研究によって、社会に還元できる成果が 生まれ、安全で健やかに育つ環境づくりの科学的根 拠を提供すると考えられます。
長期にわたる本研究を継続するための基盤の一つ として、リクルートやフォローアップの実務をする 調査担当者(リサーチ・コーディネーター
: RC)、
研究マネージメントができる人材、領域架橋研究が できる研究者サイエンス・コミュニケーターなどの 若手の育成も重要な課題です。未知の課題を抱えな がらも、エコチル調査が目的を達成し、一生を追跡 するコホートとなることは、健康分野だけでなく、
経済学や社会学、教育学、政治学の研究基盤、同時 に、成果が政策に反映されるような政策基盤として の機能をもつコホートに発展することが期待されて います。