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左房粘液腫の外科治療

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Academic year: 2021

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(1)

一 80

東医大誌 51(1):80〜82,1993

左房粘液腫の外科治療

Surgical Management of Left Atrial Myxoma

東京医科大学八王子医療センター・心臓血管外科

工 藤 龍 彦 張   益 商

内 山 隆

長 田 鉄 也 曲   恵 介

 同 循環器内科

渡  辺  健

        同

池 田 寿 昭

麻酔科

一 色

福 島 洋 行

石 井 俊 彦

はじめに 表1臨床症状

 左房粘液腫は循環器領域において比較的稀な疾患 であるが,最近では心エコー検査の普及により的確 に診断されるようになった.しかし,治療面では粘 液腫の摘出方法や術後管理の困難さなど,まだ,い

くつかの問題点が残されている.

 われわれは開設以来,4例の左房粘液腫の手術を 経験したので,とくに外科治療上の問題点を中心に 検討した.

症 例

 198!年5月から1992年4月までの期間に,当施 設にて開心術を施行した左房粘液腫は4例であっ た.年齢は31〜65(平均51)歳で,男女比は2対2 であった.臨床症状としては2例が動悸,息切れを,

また2例が動悸と呼吸困難を訴えた.呼吸困難を訴 えた2例(症例3,4)は心不全を合併しており,内科 的管理が困難であったため準緊急手術となった.

 心電図は洞調律が2例,心房細動が2例であった.

胸部X線像の心胸比は50〜61(平均57)%であっ た.左房粘液腫の確定診断は全例,心エコーにて得

症 例

1 2 3

4

年齢・

@性別 53・M 31・F 65・M 55・F 臨床症状 動悸

ァ切れ

動悸 ァ切れ

 動悸 ト吸困難

 動悸 ト吸困難 心電図 心房細動

カ室肥大

洞調律 カ房性

@P波

洞調律 カ房性

@P波

心房細動

心胸比 61% 50% 57% 60%

確定診断 心エコー S血管

@造影

、心エコー

S血管

@造影

心エコー 心エコー

られたが,全身状態が安定していた2例(症例1,2)

では,心血管造影を追加した〔表一1〕.しかし,手術 に必要な情報である腫瘍の大きさ,可動範囲,腫瘍 の茎(stalk)の付着部位などはすべて心エコーの所 見から把握することができた〔図一1〕.

 血液検査では,CRP反応の強陽性と血沈値の:充進 を全例に認めた.

(1992年9月21日受付,1992年9月24日受理)

Key words:左房粘液腫(left atrial myxoma),心エコー(echo cardiography),経中隔法(transseptal approach)

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1993年1月 工藤他9名:左房粘液腫の外科治療 81 一

編〆7

暖.

嬉,一)

図1 症例4の心エコー所見(矢印が粘液腫)

1門1 高円山1り

図2 症例4の粘液腫(割面の所見)

表2手術所見

症  例

1 2 3

4

手術方法 右房切開経中隔 カ房小切開

右房切開経中隔 右房切開経中隔 カ房小切開

右房切開経中隔 カ房小切開

腫瘍茎付着部 心房中隔中央 同 同

腫瘍の大きさ(cm)

   ●

U×6 6×5 8×5 7×5

腫瘍の重さ(9) 110 52 80 64

腫瘍の性状 卵型 同 同 同

術後不整脈 心室性期外収縮 発作性頻脈 心房細動 心房粗細動

再  発 なし 同 同 同

手術所見

 手術は4例とも全身麻酔下に胸骨正中切開にて心 臓に到達した.心膜に癒着はなく,上行大動脈送血,

上下大静脈白血にて体外循環を開始した.操作中の 腫瘍片遊離による塞栓症の発生を予防するために,

下大静脈のテーピングは心拍動停止後に行なった.

中等度低体温併用による体外循環下に大動脈を遮断 し,心筋保護はice−slush法と順行性のcardioplegia を併用した.心房の切開方法は,症例1,3,4の3例 は,まず左房に小切開を加え,腫瘍の性状を観察し たのち,右房を房間溝と平行に切開する経中隔アプ ローチを選択した.症例2については,あらかじめ 心血管造影所見から腫瘍が卵型で,腫瘍茎が心房中

隔に付着していることが確認されていたので,左房 への小切開は省略し,右房切開,経中隔アプローチ にて手術を行った〔表一2〕.

 粘液腫は全例が有茎性であり,腫瘍茎の付着部は 卵円窩に相当する心房中隔の中央部であった.重量 は50〜110(平均76)gで,形状は卵型であった〔三 一2〕.腫瘍は心房中隔のstalk付着部を切り抜くよ うに,一塊にして摘出し,心房中隔の切開部には馬 心膜パッチをあてて縫合閉鎖した.

 手術後の血行動態は安定していたが,心房細動,

心室性期外収縮,発作性頻拍などの多彩な不整脈が 出現した.しかし,いずれも抗不整脈剤の投与によ り徐々に改善し,術後4週目以降は問題となる不整 脈は消失した.4例の術後観察期間は平均で5.7年

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一 82 一

東京医科大学雑誌 第51巻第!号

になるが,腫瘍の再発もなく全例順調に経過してい

る.

考 察

 われわれは1984年に,2例の左房粘液腫と1例に 右四粘液腫について報告した1).本症の診断につい て,前回の報告では心エコーについで心血管造影を 追加すべきであると述べたが,症例3,4のように状 態が悪く手術を急ぐ必要がある場合には,心エコー の所見のみであっても手術に踏切って良いと考え る.事実,重田ら2)は緊急手術になった症例について は,心エコーに経食道エコーを併用し,心血管造影 を省略している.また,心エコーと胸部CT検査を 組合わせることで,手術に必要な情報を十分に得る ことができるとの報告もみられ3),とくに手術を急 がなければならない時には,侵襲的検査である心血 管造影をあえて強行することはないと思われた.

 左房粘液腫の形状分類について,下野ら4)はゼラ チン状で比較的もろい分葉型と,表面が平滑で壊れ にくい卵型とに大別している.そして,発生頻度は 分葉型が64%,卵型が36%と分葉型の方が多いと

し,塞栓症の合併率についても分葉型の方が圧倒的 に高いと述べた.

 しかし,われわれの経験では全例が卵型であり,

他の報告をみても卵型と思われる症例の方が多かっ た2)3).塞栓症も症例2で下肢の動脈塞栓を経験して おり,卵型であっても塞栓症の危険性は否定できな いと思われた.

 左房粘液腫の手術成績は良好であるが,手術方法 については現在なお意見が別れるところである.代 表的な手術方法としては,左房切開によるもの5)6),

厨房切開,経中隔アプローチによるもの7),そして,

右前と左房と同時に切開するものや,両心房から中 隔にかけて縦に切開を加えるDubost法など2)が考 えられる.われわれが選んだ右房切開,経中隔アプ ローチは手術操作が簡便で,左房に小切開を加える ことで腫瘍の観察も容易である.しかし,腫瘍が大 きい場合には心房中隔を通過させるのに無理がかか り,中隔の組織が裂けてしまうことがあった.心房 中隔の裂傷はパッチによる補強で十分に修復するこ とができたが,この一連の操作が,術後不整脈発生 の誘因になったかとも考えている.したがって,手

術方法の選択については,手術視野の良悪,手術操 作の簡便さ,また術後不整脈の発生率などを考慮に 入れると,早急に結論を出すわけにはいかない.

 本症の外科治療のポイントは,最小限の心房切開 でいかに完壁に腫瘍を摘出するかということと,同 時に合併する僧帽弁の異常に対し的確に対処するこ とにある.これらの治療目的を達成するためには,

まず日常やり慣れた手術方法を基本とし,あとは症 例の病態に応じた術式を適宜追加することが必要で

ある.

結 語

 過去11年間に経験した左房粘液腫4例について,

とくに外科治療上の問題点を中心に検:討した.4例 とも卵型腫瘍であり,腫瘍茎は心房中隔の中央部に 付着していたが,右房切開,経中隔アプローチにて,

とくに問題なく完全に摘出することができた.

文 献

1)工藤龍彦他:心臓粘液腫,3手術例の検討.東医大誌

 42 :793nv795, 1984.

2)重田 治他:緊急手術を要した左房粘液腫の3例.

 日救急医会関東誌 10:168〜170,1989.

3)石橋義光他:左房粘液腫の3例.胸部外科 43:202

 一一205, 1990.

4)下野高詠他:左房粘液腫の臨床的検討一特に腫瘍形  状による特徴について一.日島外会誌 40:1060

  一1065, 1992・

5) Disesa. VJ. et al:Consideration in Surgical  Management of Left Atrial Myxoma. J Cardiac  Surg. 3:15r−22,1988.

6) Radermecker. M.A. at al:Surgical Management  of Left Atrial Myxoma. Acta chir belg 91:27

  一31, 1991.

7) Guiloff. A.K et al:Surgery of Left Atrial  Myxoma, Report of eleven cases and review of  the literature. J. Cardiovasc Surg. 27:194−v200,

 1986.

(別刷請求先:〒193八王子市館町1163

 東京医大八王子医療センター,心臓血管外科)

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