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数学教育 におけ る数学史の指導についで

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(1)

藤 原 重 幸**

は じめに研究の動機について述べ る.次に今 日の数学史書の特色 と数学史研究の動向を把 捉する.その基鍵の上に数学史指導の立脚点を明確に し,指導の目標を立てる.続いて実践 例を示す.すなわち高専三年次数学授業における数学史指導の内容 と結果を概説す る.

1 . 研 究 の動 機 とね らい

高専の数学教育はその指導を直線的に進めてい く関係上,内容が多様化 ・高度化する三年 次あた りに学習困難者が多発する ( 0). 最近の科学教育は現代化につれて,指導内容の質の深 化 と量の拡大にもかかわ らず,授業時数の増加が伴わないとい う不調和があって,つめ こみ 式傾向が現われている. とくに数学は実験性に乏 しく形式性 と抽象性のためにその複雑化に つれて,学習者に内容の理解 と関心の点で問題が生 じ易い. これ らの打開策 として,学習項 目の精選 と内容の平易化は大事であるが,それ以上に学習の意義の認識が高揚されなければ 持続的学習は期待できない.

わが国の文化の近代化の歴史は新 しく,科学的合理性は生活の中に定着 していない.西洋 の固い文化基盤の上に建てられた科学 としての数学は,人間の長い実践的活動を通 して築か れてきたものである.数学の技能面に とどまらない文化的意義の史的考察は,科学の中の数 学 とい う視野を広げ,以後の学習に資するものは大きく,抽象数学の意義を求める自主学習 にも好影響を及ぼす ものと考えられる.

2 . 数 学 史 と数 学 史研 究

‑ 2 ‑1 数学史書の特色 ( 1 ) 数学史書の時代的憤向

カジ ョリの数学史( 1 )の初版は1 8 9 3 年に出た.数学者一般を対象 とし,史実の正確 ・完全を 期 した通史である.その序論にい う 「 人塀がどんな経路でおびただ しい数学的知識を獲得 し たか,そのいきさつを考究することは数学者の興味をひ くに違いない.一見異なる数学 の各 分野が緊密に関係することが発見された実状を明 らかにする.研究者に過度の専門化の好 ま しくないことを教え,解決ずみの問題に時間と精力を浪費 させないようにす る」教育的配慮 と流麗な掌紋,人物小伝や描話をまじえて説得力がある.

ルイプニコフの数学史( 2 )は1 9 6 0 年に現われた.大学の講義をまとめた通史で,相当な数学 的素養を要求 している.序論 「 数学史の対象」の中で 「 数学史は数学の分野の一つである.

* 昭和5 1 年 8 月 日本数学教育学会全国数学教育研究岐阜大会において発表

* *一般科数学助教授

原稿受付 昭和5 1 年1 0 月 4 日

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数学の発達の客観的法則についての科学である.数学の方法,概念が どんなふ うに発生 した か,数学 と人間の実際的な要請や活動の関係,他の科学の発達 との関係 な ど を 明らかにす る」 と述べる.固有名詞の括話的扱いは少 く,唯物史観を土台に して理論を進めている.

1 9 世紀か ら 2 0 世紀にかけて幾多の数学史書が容かれた ( 3 ) . 上記の二書を読んだだけでも数 学史に対する考え方が大分変 ってきた ことに気づ く. そ こで 現代の歴史学者 E・H カーの

「 歴史 とは何か」( 4 )を参照にす る. 1 9 世紀は事実尊重の時代であった とい う.有名なランケ は 1 8 3 0 年代に 「 歴史学者の仕事はただ本当の事実を示すだけだ」 と極言 した といわれる.カ ーの言を引用すると 「 歴史家 とい うのは,自分の解釈に従 って自分の事実を作 り上げ,自分 の事実に従 って自分の解釈を作 り上げ るとい う不断の過程に巻 きこまれているものだ」さら に 「 歴史 とは歴史家 と事実 との問の相互作用の不断の過程である」といっている.現代の数 学史家の態度は史実の記述だけでなく,発展の構造を明らかにする多角的考究である.

( 2 ) 二つの百科事典の項 目 「 数学史」にみ られる差異

・ 有料事典は普遍的な情報の要約だがその国の伝統 と文化水準で固有の色彩をもつ.

ブ リタニカ国際大百科事典の数学史 の項( 5 )は,歴史的概観を述べ,舌代 と中也 近代 と区 分 し,別に現代数学をとり上げる.史実の排列は定形的であ り,純粋数学の流れを貫 く形で ある.ヒルベル トの 「 数学の基礎の問題」の解説に多 くの行をさき,現代数学は厳密性 と抽 象性の追求を主要テーマとす ると述べ,プルパキ数学をその延長でとらえている.

ソビエ ト大官科事典の数学の項( 6 )は コルモゴロフが書いたものだといわれる.時代区分に 特色がある.数学の発生期,初等数学 の時代,変数の数学の創成期,現代数学の時代 とする.

現代数学を対象の拡大 としてとらえ,大きな新 しい理論は自然科学や技術の直接の問題の結 果だけでな く,数学の内部か らの要求により発生すると述べ,現代数学の数理物理学への応 用などの説明が比較的大 きく扱われている.

( 3 ) 新 しい型の数学史

ブ, レバキは数学全体の再編成を構造の理論で 「 原論」に凝集 L ようとしている( 7 ) . ブルパ キの数学史( 8 )は 1 9 6 9 年に出た.訳者の言を借 りると 「読み物的な歴史でな く,個人の伝記や 年代記の類でな く,数学の形成を整理 しそのあるべき形に対 して明確な意見をもち,それに 準拠 して史実を整理排列 した」ものである.通史の形をなさず,時代区分 も度外祝される.

最近話題になっているのに 「 伊藤 ・原 ・村田共著の数学史 」( ¢ ㈹ ( 1 9 7 5 年刊)があ る. 古 代 ・近代 ・現代の三つの時代に分担 して三人が独立に取組み,共通のテーマ 「無限」を追い 求める形はプルバキ数学史のいき方を連想させる.過去の事実を羅列的に語 る知識の展示で はな く選択的史限で,数学の思考の成立発展を重視 している.

2 ‑2 数学史研究の動向

わが国における数学史研究は,三上義夫 ・小倉金之助 ・藤原松三郎 らによって起 り,東洋

数学史の基礎を固めた.とくに小倉に よる O D O B )日本数学史研究の進境は著 し く,更に世界数

学史に及んでは,数学のイデオロギーの発生,近世欧米数学史を階級性 ・社会性でとらえた

創見は高 く評価 される 脚. 和算は今日では専門家僅少で史的研究 も盛んではないとき く,村

田全氏は和算を西欧数学 との思想対比でとらえ8 4幾つかの問題点を指摘する中で,一例 とし

て和算が文化的遺産であ りなが ら現実 とのつなが りと哲学的省察を忘れたので表敬 した とい

う.科学史家中山茂氏は和算が学 より技芸に近い的 との論拠を刻明に示 している.中国の数

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学史については,和算の前身をなす ものであり,独 自の文化型態で発達 した,同時代では高 レベルの数学 として 「 九章算術」u Qなどが見直 されて きた.薮内清氏の著書0 7 ) 咽はその啓蒙 に役立ち,中国の科学文明の再評価は考古学的発掘 と共にすすみ,その研究は上昇気運にあ る.

ユークリッドの原論がわが国で完訳刊行された㈹のは1 9 71 年のことであ り,史的意義は大 きい 榊. 純粋数学の発祥地をどこに求めるかにつ い て,ギ リシア数学を今 日的問題 とする研 究はノイゲパワー,伊東俊太郎氏 らに よってなされ る.伊東氏はギ リシア数学樹立に古代オ リ エ ソ トの果 した役割を強調する ( 9 ) . また従来,中世を暗黒時代 として片づ け て,ルネ ッサ ンス以後の西欧数学 と科学をのみ重視 してきた科学史家たちの通弊を指摘糾 し,中世のアラ ビア科学の高度の蓄積 こそ近世の発展に資 した ことを論 じる力作を発表 している 物. このこ とに関連 して,矢島祐利氏は,つ とにアラビア科学の意義 と役割を説いていた的.

数学史の中に登場す る一見性格を異にす る数学について「 単一性 ・多様性」を問題にする 朗

村田全氏は,数学に時 と所を超越 した唯一絶対な存在を認めるか,文化を異にす る数学 とそ の時代の間に飛躍や断絶があ りうるかなどを論 じ,現代の数学の方向に懐疑をむける.

中村幸四郎氏は,近世における無限小解析の由現をめ ( ・ って1 6・1 7 世紀の数学史的を文献 を駆使 して,新事実をとりこみつつ展開す る. これにつけても今 日のわが国における西欧数 学史の研究の高水準性が,史料の入手を可能に した現代の情報の発達に負 う所が大きいとい

うことを感 じる.

原亨書氏 も同時代を扱い,主 として幾何学の徴積分学発生への影響鯛を論 じているのは興 味深い.原氏は別に数学史の研究方法 として,原典注釈の記述例を平易にするため,現代式 書きかえの必要性を説きつつも,それに よる古い数学の変質 との/ くランスを考慮すべ きだ と 注意 している.

1 8 世紀を,科学史家は革命 と創造の科学的谷間とか哲学の世紀 とかい う.わが国でグルー プの研究 「 十八世紀の自然科学」鰯が著わされた. この世紀の科学史は世界を通 じて研究が 不足 しているといわれる.十八世紀の数学因の性格や価値の論究を望む声がある.

数学史の研究がかかえる問題は幾多ある.古代 ・中世 ・近世 と一見定着 した歴史において もなお不明点の史実を史料 ・新文献の発掘 と解釈か ら問い直 し,修正 し,史観を より普遍的 客解的なものに高めることは大切である.近世以後の思想概念の発展の本質 とそのもた らす べき数学的意義をきわめてい く中に,現代数学の特色はどこにあるかを見出し,その学問的 な意味づけをすることも重要である.

3 . 数 学 教 育 にお け る数 学 史指 導

3 ‑1 数学史指導の立脚点

科学史家渡辺正雄氏は日本における近代科学榊の導入 と西洋学術文化の摂 取 の問題 点 と して 「 生みだ した思想的文化的基盤を考えずに技術の模倣を した.諸分野相互の関連性を考 えずに専門細分化 して学んだ」 ことなどをあげ る.また数学史家たち別田は 「 数学は前のこ

とがすべて後のことにきれいに吸収されて しまうので,過去が役に立たな くて新 しい ことを

理解すれば こと足れ りとい うことになって しまう.明治の頃に数学を実用的道具 としてのみ

とり入れた態度が大 きく影響 して数学を文化史の中でとらえる西欧的基盤が 日本には全 くな

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い」 と言っている. これ らは知識修得一辺倒 のいき方への警 め と して傾聴すべ き意見であ る.

そ こで数学史 ・技術史などの科学史を歴史教育の一環 として扱えた らよい との考えが出て くるが, これには幾つかの困難点があ る.歴史教育 自体の 目標 と効果 を考えた ら適切な素材 は他に豊富にあること,学校教育の中で歴史に割当て られた時間のわ くでは これ らを入れ る 余地の少いこと,特殊な部門だ桝 こ専門的知識の前提がないと学ぶ者に内容の理解と関心を

?なぎとめえない ことな どである.科学史が単一教科 として認め られ るのには時期尚早だ と しても,科学史的教育が必要だとあれば,当面は,科学 の各分野で扱わざるをえない.

数学史を数学教育の中で扱 うことに もかな り面倒な問題がある.数学者の数学史 ざらいも 多い ときく.数学者 の数学史教育に反対す る主な理由は,数学史は数学そのものではない, 数学は演緯理論であるのに数学史は社会科学の側面において解釈理論で客観性に欠ける,数 学を築いた人 々の生 きた時代,経歴を知 りえても,その特殊事情が現在の数学的思考の向上 にな らないな どで,数学史に対す る誤解や認識の不足 も手伝 っている.

ここで今一度数学史が分ち もつ学問的 ・教育的役割を考えてみ よう.数学史の解明すべ き 最大のテーマは,過去の事実 の羅列が 日的ではな く,数学の個 々の事実を実証 として人間の 歩んで きた知的発見の姿を条理あるものに考えんとす ること,一言でいえば数学的思想の発 展の哲学である.数学の形式性 ・抽象性は他の学問の構成上の範 とな る価値 もあるほどに,

このことの認識は個 々の数学事項 の理解 とその実用に も劣 らず重要性をもつ.

数学史を数学教育の中で扱 う態度 としては,定着 した史実をふ まえて,底流をなす思想の 点で偏 しないいき方の配慮がいる.通史 としてとどめるべ き所,細史 として深入 る限度は講 じる者 とその対象の関係できめ られ 本来的な導入 目標 と時期はその効果をつねに考えて行 わなければな らない とい う難 しさも伴 う. 「 数の概念」なる基本事項一つをとってみても自 然数か ら複素数に至 る拡張は何千年か らの歩みを もっている.僅かの叙述で片づけて,代数 系 の公理でまとめただけでは,凝集 した美 しきと簡便 さがわかる程度である.人類全体の文 化遺産であ り,現在生きる上に不可欠の数に理解 の眼をむけさせ ることは大切であろ ラ.読 証幾何は今 日教育数学では重視 されな くな ったが,それが二千年に渡 り学問のすべてに君臨 してきた事実 も見逃せない.その価値は何であったのか,他のものでおきかえ られた経緯は 数学教育史の内面 として論 じる値打もある.

現代の数学は研究人 口の増大で発展一途だが専門分化が著 しく,他部門では一向に通 じな い語記号で表現 され,図形ぬ きの幾何理論,数計算ぬきの代数理論が尖端的な姿である.数 学 の細分化 ・総合化が問題になっている. この調整に数学史教育の果すべ き‑役割がある.

3 ‑2 数学史指導の自壊

数学教育の 目標に実用的,訓練的,教養的の三つがあった. ここでは教養的 ( 文化財 とし ての知識,数学の文化の発展への貢献について) 目標の達成を意図 して,数学教育の中に系 統的 ・集中的に数学史指導をとり入れて,次の諸点に着 目す る.

( 1 ) 学習数学 とは別の形の数学発達の史実があることに気づかせる.

数学が現在のように系統的に編成され教え られ るようになったのに紘,先人が多 くの数学

的知識を発見 し蓄積 し整理 してきたことの恩恵が大 きい.時代的 ・地域的な数学,数える,

測 る,計算の器具な ど徐 々に進んできた こと.真理の発見に対す る素朴な感動を与える.

(5)

( 2 ) 学習項 目の位置を知 り,その理解 と関心を高めることをね らう.

微積分 とそれに関連する解析学学習は一つのタイプをもって行われている.学習の道が長 く,息切れを生 じ, 目標も失われがちである.歴史をふまえての発想の原形,応用発展の姿 をある程度位置づけること,問題の提起も唐突でな く歴史的意味の説明で効果をあげる.

( 3 ) 科学史 との関連において数学の成立ちをつかむ ことを示唆す る.

天文学 ・物理学 ・工学の発達が数学か らえた もの,数学に及ぼ したものを知 るべ きであろ ら.数学史 ・科学史の年表 を通 して事実を考えさせることも大事だ.歴史を読み物的傾向で 扱わず,科学す るとい う根本的な思考態度の練成の意味でとり上げる.

( 4 ) 抽象数学は合理的発展過程をへてつ くられてきた ことを理解 させ る.

近代数学か ら現代数学‑の道は時代的に新 しく,内容は多岐であるが 1 9 世紀前半 までを眺 めるとき,数学の発展にルールが うかがえる.学究情報組織の編成や研究者の数の増加や討 論による改善,一般化や拡張の概念など数学の思考法則の合理化に よっていること.微積分 概念の精密化によって数学の全領域の研究が著 しく進んできたことを知 る.

4 . 指 導 の実 際 (内容 )

高専教育課程の標準の数学の項末尾に 「 数学の歴史は必要に応 じて取扱 うものとする」 と あるだけで,指導時期 も内容も全 く示 されない.数学内容の量か らみて時間は多 くとれない.

数学史導入の適期 として,指導対象に数学の知識がある程度蓄え られた段階の三年次をと ることにす る.前期に④数学通史,後期に⑧数分積分学の歴史を行 う.概要を次に示す.

④ の内容は時代区分に従い,古代 ・中世 ・近世 とす る.年代 ・国 ・人名な どをとり上げ時 代的背景,著名数学者やその著書,定理の出現時や画期的意義などを とり扱 う.

① バ ビロニアの数学 粘土板,数記号 ( 挺形文字) ,6 0 進記数法, 位取 り原理はあった が零の発見はなか った.数表を用いる計算,桁の大 きい数の計算技術発達,代数の高度 な計算方法はあったが実用的なものが多か った.天文学 と商業に密接に関係 した.太陰 暦.

② ェジブ トの数学 現存の リ ソ ドパ ピルス ・モスクワパ ピルスの中の問題,実用的性格 のもの,分数計算,計算は複雑,ナイル氾 らんと幾何学の起源,各種図形の面積体積の 計算,天文学 ・暦法 ( 太陽暦)の発達.数学成立以前の経験的蓄積であった.

③ 古代ギ リシアの数学 タレスが ピラミッドの高 さを測 る.幾何の定理の発見 と証明.

アナクシマソ ドロス ( 幾何学大要), ピタゴラス一門 ( 三平方の定理,教諭,球面幾何, 正多面体,無理数の発見),ソフィス ト ( 作図三大問題), ゼ ノ ソ ( 道理), プラ トン学 L沢 ( 数学観),ア 1 )ス トテ レス ( 哲学 ・論理) ,ノミビロニア ・エジプ トか ら輸入 した経験

的知識を統一ある理論的体系に築 き,純粋数学の誕生‑影響する.

④ ‑ レニズム時代 第 1 期 ユークリッド‑アルキメデス‑アポロニウス,第 2 期 プ トレ マスオス‑J {ッボス‑デ ィオパソ トス.ユーク1 )ッドの原論は数学的知識の体系 となる.

数学を公理の上に組立てる現代的方法の先駆.アルキメデスは力学 ・物理学の理論的形 式をつ くる.無限小の方法は近代性をもつ.円周率の計算.アポロニウスの円錐曲線.、

デ ィオパ ソ トスの計算術の後世への影影, プ トレマイオスの三角法.

⑤ ローマ時代 計算術,暦 の改良,測量の幾何学, p‑マ数学 ,1 2 進法,有理数 と無理

(6)

数の区別,現実的 ・実用的なものに関心が強 く,理論を軽視 した.

⑥ イン ドの数学 天文学 ・算術 ・代数に関心をもつ. 1 0 進法算法 と零の発見が重大,ア ラビア数字の前身,平面球面三角法,二次 ・不定方程式,利率計算,大 きい数表示.

⑦ 中国の数学 「 九章算術」の内容 と意義,円周率の計算,体系的でな く問題解法 ・計 算術を主 とする.国政統括のための数学で両者の振興 と衰退が密着 していた.

@ アラビアの数学 東方は代数の幾何学的研究,西方は三角法発展.アルジェブラ ・ア ルゴリズムの語源,宗教 ・商業民族 として活躍,ギ リシア ・イン ド数学を混交させる.

@ 1 5 世紀 イン ド・アラビア流の算術代数さかえ,ギ 1 )シア古典幾何衰える. ル ネサ ン スと西欧数学,商業計算 と実用むき幾何が要求される. レギオモンクヌス ( 三角法).

⑲ 1 6 世紀 数学の発展に二つの方向が生 じた,グィェタの記号改良による代数,独立 し た科学としての三角法.三次 ・四次方程式解法,小数理論,指数記号,投祝図法.

⑧ の内容は 1 7 世紀か ら 1 9 世紀中頃までの無限小解析の発展をたどり,高専数学の中核をな す徴積分学の回顧 と展望を果すなかに科学史観への関心をめざす.

① 徴積分発見の前史 アルキメデス,ケプラー, ガ1 )レイ,カノ ミ1 )ェ, ト1 )チェリ,メ スカル,ウォリス, pベルパル,フェルマ,デカル ト,バローの果 した役割.数分に関 する問題は速さ,接線,極大極小の三つの方向か ら迫る.積分の方法の発生は無限 ・極 限への積極性,求積法の一般化 不可分量の幾何か ら起 る・積分の方が古い. ・

② ニュー トンの流率法 とライプニ ッツの微積分法 前者は自然哲学や物理学の研究の道 具 として速度 ・加速度をつかむ数学的手段 として成す.後者は科学的認識の一般的方法 のために数学研究 し論理的推論をコ トバや記号計算になおす.故積分学の基本定理の発 見,二人の発見の先取権,算法記号,積極的普及の功績など.

③ オイラーを中心 とする 1 8 世紀の発展 学会の創設,学術雑誌の創刊,大学設立,微積 分教程の出版,解析学の基礎理論と応用理論に二分する.オイラーは前世紀につ くられ た無限小解析の基礎の上に豊かで精巧な構造を組立てたが, ライプニ ッツ流形式主義の 伝統の上にやや不透明な極限概念で徴積分を考えた ことが問題を残 した.

( 参 コ‑シーを中心 とす る 1 9 世紀の発展 1 7‑1 9 世紀の数学の特色を科学の世紀,多産の 世紀,現代化‑の世紀 とみる.解析学の諸概念の明確化,倣積分学の合理的整備, コ‑

シー 「 解析教程」の中に変数 ・関数極限値の定義,平均値定理 と徴積分学の確立,連続 関数の積分存在定理,徴積分基礎概念の確立.

⑤ 複素関数論 ・微分方程式論成立 オイラー ・ガウス ・コーシーの役割,極形式オイラ ーの公式,複素数の幾何学的意味, コ‑シーの積分定理の意義,微分方程式の形でかか れた 自然法則,求積法 ・無限級数,定数変化法に よる解法, コ‑シーの解の存在定理.

5 . 指導の実際 (結果と考察)

この指導の対象は 2 クラス約 8 0 名,授業は④を 5 時間 ( 1 0 回に分割),⑧を 5 時間 (5 回) にて講義する.立案内容は優に 1 5 時間の分量だが進度の影響で略す部分 も出てきた.すべて プ リソ ト教材 とし参考年表 ( 1 6 0 0‑1 8 50 の間の数学史 ・科学史 ・技術史 ・思想史等を一覧で きるもの」をも添えた.㊨,⑧を行い,それぞれ 1 カ月,半月後に レポー トを提出させた.

分量は 8 0 0 字以上,数学史の授業 ・自学習の感想,所見等内容は自由で研究発表 という程の

(7)

ものではない. 別に学年末に 「 数学史学習実態調査 ( 無記名 ア ンケー ト ) 」を行 った.以下 にその概要を記す∴

( 1 ) レポー トを通 してみた学習の評価

① 採点に よる分析 ④について 数学史学習意義,数学史関心,数学への意欲,内容創 意,学習分量の 5 項 目に分けて各 2 点 ( 大ぺんよい 2 点, よい 1 点,他 0点)を配 し, 1 0 点満点で成置評価 し項 目別平均は順に 1 . 2 9,1 . 51,0. 61,0 . 45,1 . 81 総平均は 5. 6 7 点,⑧について数学史授業の理解,史観,数学学習意欲,数学史学習意義,内容創意の 項 目について上記同様 1 . 5 4,1 . 3 4,0 . 8 2,1 . 5 4,0. 71 総平均 5 . 95 点

② 感想例 Al ・ ・ ‑・ 数学が不得意のポ クに とって公式の重みが伝わって き て よか った, 広大な歴史的背景をもつ数学を人生の一時期に学習す ることは多 くの人 々の苦労の上 に立ってらくを しているような気がする.

A2 ‑ ‑中国の数学に興味をもったのは同 じ東洋だか らともいえるが,ギ 1 )シ7,イン ド などが他の文化の影響を受けているのに,中国は独 自の形態をとっている点にもある.

打の計算でアルキメデ スと同 じ方法を行った ことに人間の思考の類似性を見た.

A8 ‑・ ・ ・ 数学の歴史はそのまま人間の歴史だ.文明や時代の相異によって,数学の観念や 発想に微妙なちがいのあることに気づ く.これか らも細か く数学史を読みたい.

B l

・ ‑数学は天才によって進歩させ られてきたが,その定理が単なる思いつ きでな く先 人の知恵 と努力を受けついでの結果であることがわか った.

B 乞 . ・ ・ ・ ・ ・ 積分の方法の発生背景 として 「 無限に対する積極性」をあげるが,その時代の近 代的精神 とい う思潮が学問に多大に影響を及ぼ した ことを感 じた.

B8 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 盲年を一時間でみた数学史であった.アルキメデスか ら 2 00 0 年幾何学 と代数学 があってこそ徴積分学は成立 した.われわれは表面だけ眺めて高等数学をや った と満 足 している. これ らをつ くった数学者に申訳ないと思 う.

( 2 ) アソケ‑ ト調査を通 しての統計的処理 (回答総数 7 7 名)

調査項 目を大きく 4 群に分ち,その中で細分 して計 2 0 項 目について行 う.境 目を示す.

Ⅰ 数学史についての閑J L l( 数学史 との出合い,数学史の関心,数学は好 きか,歴史は好 きか,数学史 として読んだ書名)

Ⅱ 数学史授業についての感想意見 ( ④の理解,⑧の理解,数学史授業の時間の量,⑧の 学習の適期,授業の中で興味をもった個所)

Ⅲ 数学史学習 と数学その他の教科学習との関係 ( 数学学習意欲にプラスか,参考年表に ついて,科学一般 とのかかわる認識,科学史への関心,数学史学習の意味)

' Ⅳ 数学史学習の希望 ・意見 ( 授業の形憩,学習評価の方法,参考書その他学習の便宜, 学びたい数学史部門,学習への希望 ・意見)

上記の中か ら 7 項 目をえ らび統計を示 し,意見項 目の傾向もかかげ る.数字は%を示す.

( 》 数学史 との出会いはいつ頃か 高専入学前 1 5. 6 高専 1 ‑2 年 6. 6 高専 3 年 77 . 8 .( 勤 数学史に関心があるか はい 5 4. 5 いいえ 2 4. 7 わか らない 2 0 . 8 ,③ 数学は好きな教科か はい 49 . 3 いいえ 1 8 . 2 わか らない 3 2 . 5

④ 数学史④の内容は理解できたか はい 44. 2 いいえ 32 . 5 わか らな い23 . 3

( 9 数学史⑧の内容は理解できたか はい 48 .1 いいえ 29 . 9 わか らない 2 2 . 0

(8)

⑥ 数学史学習は数学学習意欲にプラスか はい 41 .6 いいえ 16.9 わか らない 41.5

⑦ 数学が科学一般 とかかわ る認識 はい 67.5 いいえ 9.1 わか らない 23. 4

表 1

妄 高 ま 二頂 学史関心い ま い 巨 い え lわか らない l小 計 は い l 2 9. 8 1 7. 8 l 1 6 . 7 l 4 9 . 3

い 小 x‑ l 7. 8 I 6. 5 ‑ l 3. 9 I 1 8 . 2 わ か らない l 1 6. 9 ー 1 0 . 4 f 5 . 2 l 3 2 . 5

o授業の中で興味を感 じた個所の主な もの

エピソー ド的な話,微積分発見前史の登場人物 の苦心談,舌代学者の発見の方法 と今 日 の数学 との対比,数学史 と科学史,世界史 との年代的関連,微積分の発見の先取権 o数学史学習の意味は何か,主なもの

定理などに時間的重みが加わる,や っている数学の実用的価値を知 る,数学の中の各分 野の通が りを知 る,数学が何か と理解 し易 くなる,数学の発展過程を知 る

( 3 ) 結果の考察

( 丑 内容の理解 ④は比較的長期にわた り,エ ピソー ド的要素 も多 く,内容が代数 ・幾何 主体でわか りよくした.数学史には じめて接 し興味を もった ものが多か った.

⑧は短期集中講義式で,中容がやや高度で理論に傾 き,理解を困難に した.徽積分学 の学習終了の時宜をえて関心はもてた.特定数学者の果 した役割に注意が集 まった.

② 数学史への関心 前年同時期に行 った調査結果に比 しよい数学を示す.数学史学習の 意義を何 とみ るかの質問の回答 もその日標をはずれていない. レポー トか らみてもよい.

図 1 数学史への関心はあるか ( 前年統計の間へ今年分を取入れる)

は い い い え わからない

1 年

2 年

今年 3 3 年 年

(9)

③ 数学学習意欲 との関係 前年同時期 の数学の好雄の調査に比べてよい.数学史を通 し て数学に対す る親密感を増 し,数学の発展過程や有用性に興味がもてだ した響影か.

図 2 数学は好きか ( 前年統計の間へ今年分を取入れる)

は̲ い い い え わからない

1 年 2 年 今年 3 年 3 年

④ その他 ⑧ を通 して徽積分学 と他科学 との関係,数学は一朝に して成立 した ものでな い認識はできた ようだ.数学の上で大事なものを概括 しうる態度に向上をみた.

( 4 ) 総合的所見

数学史の断片的取扱いでは数学発展の姿を把捉 しに くい,学習の一時期に集中的に学ぶ 意義は対象に も自覚できた.授業時間の捻出 と指導内容の編成に問題がある.相当量の資 料か ら圧縮整理 しての分 らせる講義には工夫がい る.指導技術の向上 も意図すべ きだ.敬 材 ・年表 ・資料図版 の採用,教育器機の利用,参考書 リス ト作成など多角的に行 う必要が ある.

高専の教育内容か らみて,数学史 として重点的に扱 う内容は何がよいかは考え るべ き問 題 である.今回の通史 ・細史のコソビで行 った この形はある程度成功 した と思 う.定着 し た史実をもとに して,一応の史観をもって数学史を講 じることは,数学その ものの短絡性

とは別の細心の考慮 も要 る.数学史指導の実践報告が少い ことは数学史指導の意義を認め ても指導の実際は難事であることを物語るともいえ よう.指導の研究はグループに よって 史的考究にまた方法論的討議において,基盤の強化がなされ る必要性を感 じる.最後に こ の研究の動枚をふ りかえ り,指導対象にはこれを契機に数学史へ の持続的関心を保ちつつ 数学全般に対す る真の学習 目標の達成を期待 したい.

参 考 文 献

( 1 ) カジ31 ):数学史 上,中,下巻 ( 1 9 1 3 年版 石井省吾訳) 津軽書房 1 9 7 4 年刊 ( 2 ) ルイプニコフ :数学史( I ) 〜㈹ ( 1 9 6 0 年版 井関清志他訳) 東京図書 1 9 6 6 年刊 ( 3 )村田全 :数学史散策1 4 数学史の歴史について 「 数理科学 1 9 7 0 年4 月号」

( 4 ) E. H・カー :歴史とは何か ( 1 9 6 1 年版 清水幾太郎訳) 岩波書 店 1 9 6 2 年刊

( 5 ) ブリタニカ国際大百科事典 第 1 0 巻 「 数学史」の項 1 9 7 3 年刊

( 6 ) 川尻信夫 :コルモゴF 27の数学観 「 数学セミナー 1 9 7 2 年 1 月 〜 5 月号」 (ソビエ ト大百科事典 第 2 6 巻 「 数学」の項の解説)

( 7 ) 森 毅 . .現代数学とブル, ミ キ 東京図 畜 1 9 6 7 年刊

( 8 ) ブルバキ :数学史 ( 1 9 6 9 年 版村田全他訳) 東京国 吉 1 9 7 0 年刊

( 9 ) 伊東俊太郎 ・原字書 ・村田全 :数学史 筑摩書房 1 9 7 5 年刊

的 竹内啓 :数学の思想と思想としての数学 「 思想 1 9 7 5 年9 月号」

(10)

8 1 ) 小倉金之助 :数学史研究 第 1 輯 岩波書店 1 9 3 5 年刊 的 小倉金之助 :数学史研究 第 2 輯 岩波書店 1 9 4 8 年刊

的 大沼正則 :小倉金之助わ思想における数学史の位置 「 思想 1 9 7 6 年 1 月号」

的 村田全 :和算の伝統 と性格 「 思想 1 9 7 4 年1 0 月号」

的 中山茂 :算家の世界 「 思想 1 9 7 5 年 1 月号」

色 ゆ 清水達雄 :中国数学の古典 r 九章算術 」r 数学セ ミナー 1 9 7 5 年 2 月 〜1 2 月号」

的 薮内清 :中国の数学 岩波書店 1 9 7 4 年刊

色 尋 薮内済 :中国の科学文明 岩波容店 1 9 7 0 年刊

8 9 ユークT )ッド原論 中村幸四郎他訳 共立出版 1 9 71 年刊 餌 村田全 :源泉に至る道 「 数学セ ミナー 1 9 7 2 年 1 月号」

帥 伊東俊太郎 :「 世界の科学史」に向って 「 思想 1 97 5 年 6 月号」

的 伊東俊太郎 :近代科学の源流 「自然 1 97 6 年 5 月号〜1 0 月号」

的 矢島祐利 :アラビア科学の話 岩波喜店 1 96 5 年刊

朗 村田全 :数学の単一性 ・多様性をめぐる試論 「 思想 1 9 7 2 年 4 月号」

困 中村幸四郎 :十六 ・十七世紀の数学史 「 数学セ ミナー 1 9 6 9 年〜1 9 7 2年連載」

的 原字書 :運動幾何学の祖pベルグ

ル 「 数学セ ミナー 1 9 7 1 年 8 月号」

¢7 ) 尿字書 :数学の記述をめ ぐって 「 数学セ ミナー 1 9 7 3 年 3 月号 」 困 小堀意編 :十八世紀の自然科学 恒星社厚生閣 1 9 5 7 年刊

¢9 村田全 :数学史散策1 3 1 8 世紀数学のこと r 数理科学 1 9 7 0 年 2 月号」

的 茨辺正雄 :日本人と近代科学 岩波書店 1 9 7 6 年刊 的 数学セミナー 1 9 7 0 年1 0 月号 座談会 数学史 よ興れ

的 数学ゼ ミナ‑ 1 9 7 4 年1 1 月号 対談 日本か らみた科学史 ・数学史

( o ) 藤原重亭 ・宮下重敬 :数学の活用態度を重視する指導について 長野高専紀要第 6 号

参照

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