‑ 特集 「 人間 力 」
と学力の関係を問うく6)
国際学力調査 ( pI SA 調査)に見 られる 学力観 としての科学的 リテラシー
上越教育大学 久 保 田
善彦 はじめに
日本で は,国際比較 を 目的 とした全 国規模 の学力調査 として,「国際数 学 ・理科教育動向調査」(IEA実施,略称 :TIMSS)や 「生徒 の学習到達度 調 査 (ProgrammedfわrInternationalStudentAssessment)」(OECD実 施, 略称 :PISA)が実施 されている。
TIMSS調査 は,小学校4年生 と中学校2年生 を対象 に実施 され,各 国の 学校 カリキュラムで児童 ・生徒が身につけた 「基礎学力」の達成度 とそれに 影響 を及ぼす諸条件 を明 らかに しようとしている。 そのため,問題作成にあ たっては,各国のカリキュラムに可能 な限 り配慮 している(1)。一方でPISA 調査は,義務教育を終えた段階の生徒たちが,これか らの国際社会の中で生
きてい く準備 として どの程度の学力が身についているかを測定 しようとして いる。つ まり,各国のカリキュラムを基盤 とした上で,実社会で「生 きる力」
を評価 しようとしているのである。 この ように,PISA調査 は,TIMSS調 査 とは異な り,必ず しも現在の学校教育 における学習内容が問われていない 点,現代および近い将来に要請される力の評価 を試みている点が特徴であ り, 今後,国際的な学力 を視野に入れた教育課程 を考 えてい く上で重要な指針 と
な り得 る調査である。
PISA調査では,測定する学力 として,読鰐力 (ReadingLiteracy),数学 的 リテラシー (MathematicalLiteracy),科学的 リテラシー (Scienti丘cLit‑ 84
国際学力調査 (pISA調査)に見 られる学力観 としての科学的 リテラシー
eracy)を設定 している。本論では,PISA調査 を中心 に科学的 リテ ラシー を取 り上げ,その現代的意味 と今後の 日本の理科教育のあ り方を考察する。
1 .米国における科学的 リテラシー概念の変遷
リテラシーの用語は多義的であるため,科学的 リテラシーを取 り上げる前 に,リテラシー概念 を若干整理する。
リテラシーは,狭義に 「読み書 き能力 (3R■S)」とされる。た とえば,70 年代のアメ リカでは,「基礎 に帰 れ (backtobasic)」運動 において,3R'S を中心 とする基礎技能に対 して リテラシー もしくはリテラシー教育の用語が 使われている。 一方で,社会的 自立に必要な基礎教養の概念 を 「機能的 リテ ラシー (functionalliteracy)」とし,ハイスクールが捷供す るレベルの教養 をリテラシー と定義 している。 また,1956年ユネス コの発展途上国における リテラシープログラムでは,「読み書 きの能力だけではな く,大人になって 経済生活に十全 に参加するための職業的,技術的な知識 を含 む」 と定義 され ている。 このようにリテラシーは,学校 において教育 される共通教養であ り, とくに社会的 自立の基礎 となる公共的な教養 とされている(2)。
科学的 リテラシー (scienti丘cliteracy)の用語 は,1950年代後半の米国で 使われは じめている。 そこで,米国における科学的 リテラシー概念の登場 と 変遷を以下に概観する。
(1) 科学的 リテラシー概念の登場
Roberts(1983)によれば,米国では,1958年 にHurdが初 めて科学 的 リ テラシーに類似する用語 を使用 している。 その後1960年代後半においてほと んど慣用句化 し,1971年には科学教師の全米的組織であるNSTA (National ScienceTeachersAssociation)は 「科学的 リテ ラシー」の育成 こそが科 学 教育の 日的であると明言するまでに至っている。科学的 リテラシーの用語が 登場 した1950年代後半は,スプー トニク ・ショックを受けて科学 カリキュラ ム改革運動が全米的に展開された時期で もある。 この運動は,科学者や技術
者の育成を目指す ような学問的な優秀性 (exceuence)を念頭 に置いていた。
この運動は,社会や 日常 との関連が希薄で学問としての科学のみを目指 して いるとの批判か ら,一般市民に必要な資質 として科学的 リテラシーの議論が 始め られたとされている(3)0
当時の科学的 リテラシーは 「一定水準の市民的資質,すなわち一般教育の 一部 としての科学教育の 目的であ り,小学生は小学生な りに,中学生は中学 生な りに望 まれ,その成長を伴って高まり,更に成人 としてふさわ しさへ発 達することが望 まれる資質である。」と考えられている(4)。年代 に応 じて連続 的に発達すべ きもの と捉 えられているが,その具体は論者によって様々であ る。Pellaら (1966)は,1946年か ら1964年の100の関連文献か ら,科学的 リ テラシーの構成要素を抽出している。そこでは,「科学 と社会」「科学の倫理
(科学者 としての精神 ・考え方)」「科学の本性 (科学の 目的)」「概念的知識
(既存の学問体系 にもとづ く知識)」「科学 と技術」「科学 と人文」の6つの 要素が抽出されている(5)。科学概念の理解や科学者の精神の理解 を目的 とし てきた科学教育に,科学 と関連する社会,技術,人文の理解が組み入れ られ ている。ただ し,それらは政策的な達成 目標や公的な科学教育の 目標ではな く,スローガン的な意味合いであった。内容 も従前通 り知識理解が中心で, 各要素の関連性や市民生活でのリテラシーの活用 については十分な議論はな
されていなかった。
(2) sFAAおよび全米科学教育スタンダー ドにおける科学的 リテラシー 米国では,70年代後半の経済停滞,国際的競争力の低下 による危機感か ら,1983年には 「危機に立つ国家 (NationatRisk)」が発表 され,国家の再 生には教育の再生が必要であることが明言 された。これを受け,1985年には AAAS (AmericanAssociationf♭rtheAdvancementofScience)が 中心 と な り,科学的 リテラシーの向上を目指す 「プロジェク ト2061」が発足 し,堤 在 も活動を続けている。 このプロジェク トにおいても,1950年代後半 と同様 に教育における優秀性 (exceuence)の担保 を掲げている。プロジェク トの 最初の報告書である 「Sciencef♭rAmAmericans(以下,SFAAとす る)」
国際学力調査 (PISA調査)に見 られる学力観 としての科学的 リテラシー のタイ トルか らも推測で きるように,その方向はすべての市民が よりよい生 活を営むための科学教育の構築に向いている。 報告書では科学的 リテラシー を備えた国民像 を 「科学,数学,技術がそれぞれの長所 と制約 を持ち,かつ 相互に依存する人間活動であることを認識 した上で,科学の主要な概念 と原 理を理解 し, 自然界 に精通 してその多様性 と統一性の双方を認識 し,個人的, 社会的 目的のために科学的知識 と科学的プロセスを用いる。」 と定義 してい
る。報告書 には"Habitsofmind"という章が設けられ,科学に対する態度や 価値観について も言及 している(6)。
1996年には,「プロジェク ト2061」の成果 を基 に 「全米科学教育ス タンダ ー ド」が作成 されている。そ こでの科学的 リテラシーは,「個人的な意志決 定,または市民的お よび文化的な活動‑の参加,そ して経済生産力の向上の ために必要 となった科学的な概念お よびプロセスについての知識お よび理解 のこと」 と定義 されている。ス タンダー ドの内容 として,「物理科学」「生命 科学」「宇宙お よび地球科学」のような従前の学問分野の他 に,「科学 におけ る統合概念 とプロセス」「探究 としての科学」「科学 と技術」「個人的,社会 的観点か ら見た科学」「科学の歴史 と本質」 などが含 まれている(7)0
米国における1950年代後半 との比較か ら,SFAAお よび全米科学教育ス タンダー ドの科学的 リテラシーには,次の特徴が見 られる。 第一に,科学概 念の理解 は,単なる名称や用語 についての知識にとどまらず,科学の限界や 科学に関連す る価値観や倫理観の理解 を含めている。第二に,科学的な概念 とプロセスの理解 は個 々に重要ではあるが,その活用は両者 を組み合わせ る 必要があることを強調 している。 これ らの特徴か ら現代の科学的 リテラシー は,知識や技術の習得 に終わ らせ ることな く,意志決定過程 に参加するため の応用力,実践力 としている。 この背景には,環境問題に代表 される複雑化 した社会の存在がある。 このような社会 を生 き抜 くには,科学的な概念 とプ ロセスを活用 しなが ら,よりよい意志決定が不可欠であるとしたのである。
2.PISA
調査 に見 られる科学的 リテラシーの特徴
前述 したように,PISA調査 は,OECD (経済協力開発機構)が実施す る 15歳児 を対象 とした国際的な学力調査 である。OECDは,先進工業国 を中 心 に構成 され,国際的な経済協力 を目的 とする機関である。経済発展や労働 市場の開拓 との関連か ら,PISA調査 に代表 される教育や人材育成の事業 も 実施 している。
PISA調査 は2000年,2003年,2006年の3回が実施 されてお り, どの回 も 読解力,数学的 リテラシー,科学的 リテラシーが測定 されている。2003年は, 問題解決能力の調査が追加 されている。調査が 目的であるため,ペーパーテ ス トで評価可能な知識,技能,能力 を想定 し,各 リテラシーの詳細 を設定 し ている。
(1) 科学的 リテラシーの定義
表1は,PISA調査 における科学的 リテラシーの定義お よびその発達の程 度である(8)。 この定義 は,科学的知識 とプロセスを結びつけていることやそ れ らを意志決定の重要 なツール としていることな ど,SFAAお よび全米科 学教育ス タンダー ドにおける科学的 リテラシー概念 を踏襲 している。 また, 科学的 リテラシーを,低度な発達か ら高度な発達 まで連続 した能力 として捉 え,その具体的な能力 を例示 している。
Bybee (1997)は,科学的 リテラシーを,名称や用語 を理解す るレベルの
「名称上の科学的 リテラシー」,限 られた文脈の中で科学用語 を利用で きる
「機能的な科学的 リテラシー」,科学の概念お よびプロセスを理解で きる「概 念的 ・方法的な科学的 リテラシー」,科学 とテクノロジーの哲学的,歴史的, そ して社会的役割の理解 を含む 「多次元的な科学的 リテラシー」 に分けてい る(9)。定義か らは,科学的 リテラシー教育の 目標 を 「概念的 ・方法的な科学 的 リテラシー」 と設定 していることがわかる。 しか し,低度お よび高度の発 達の例示か らは,「機能的な科学的 リテラシー」にまで測定の ターゲ ッ トを 88
国際学力調査 (pISA調査)に見られる学力観としての科学的リテラシー 表1 円SA調査における科学的 リテラシーの定義および発達の程度
定 義
自然界及び人間の活動によっておこる自然界の変化について理解 し,意志決定 のために,科学的知識を活用 し,課題を明確にし,証拠に基づ く結論を導 き出す 能力o
発達状態 生徒の具体的状況 .特徴
低度 ある単純な事実についての知識 (名称,事象,用語,簡単なルール など)を思い出したり,常識的な科学的知識を使って議論を出した り, 評価することができる○
高度 単純な概念モデルを作 り出し,それを用いて予測 したり,‑説明した り,正確にこれを伝達 した り,実験計画に関する調査結果を分析 し,チ 一夕を証拠 として使いなが ら,別の見方や異なる見通 しとその意味に
置いていることがわか る。高度で専 門的な能力 とされる 「多次元的な科学的 リテラシー」 は,全米科学教 育ス タンダー ドには含 まれていたが,PISA調 査では取 り上 げてはいない。
(2) 科学的 リテラシーの 3つの側面
注 目すべ きは,科学的 リテラシー を,表2の ように 「科学的知識 または概 念」「科学的プロセス」「状況 または文脈」の3つの側面か ら捉 え直 している ことである。 3つの側面 は独立 した ものではな く,常 に相互 に関連 して科学 的 リテ ラシー を構 成 してい る。PISA2003AssessmentFramework(2003)
によれば,3つの側面 を以下の ように解説 している。
「科学的知識 または概念」 は,物理学や化学 な ど既存 の学問体系 の知識や 概念か ら, と くに, 日常性 との関連ある内容,将来 にわたって生活 に持続 的 な関連のある内容 を取 り上げる。つ ま り,実生活 に応用可能である科学的知 識や概念 を重視 している。
「科学的プロセス」では,教科 内容 と関連 しないプロセスは無意味である とする点,広範 囲な教科 と関連 して使用で きる能力である とす る点,現在の 学校教育 に一般的であ る帰納的手順 を唯一のプロセス としない点 を特徴 とし ている。 ここで取 り上げ られるプロセスは,科学 に関 して取 り上げ られたプ ロセスであ り,科学それ 自体 のプロセスではない。
「状況 または文脈」では,一般的な生活状況 を設定す ることの必要性 を述 べ ている。従前 の学習 は,学校 内の状況設定が多 く,科学的プロセス と知識 の利用 は実験室 または教室 に限定 されることも多かった。 しか し, よ り実践 的,実用的な能力 として科学的 リテ ラシー を捉 えるために,与 え られた素材 や状況の中で如何 に判断で きるかが重要 と考 え られている。
これ までの科学的 リテラシー概念 との違いは,知識や概念 を "日常" と密 接 に結 びつけた点,獲得 した知識やプロセス を活用す る "状況や文脈" を明 確 に位置づ けた点 にある。 つ ま りPISA調査 の科学的 リテ ラシーは,社会 を よ りよ く生 きる知識 ・技能だけでな く,社会 に積極 的に参加 で きる機能的な 知識 ・技能 を包括 した概念 といえる。
表2 科学的 リテラシーの 3つの側面
科学的知識また 物理学,化学,生物学,地学,宇宙科学などの主要な分野か は概念 ら選択 され,力 と運動,生命の多様性,生理的変化などの多 く
のテーマか ら導かれるo
科学的プロセス 証拠に基づいて習得 し,解釈 し,行動する能力を中心 とし,次 の3つのプロセスからなるo
(1)科学的現象の描写,説明,予測 (2)科学的調査の理解
(3)科学的証拠 と結論の解釈
状況または文脈 生活と健康,地球環境,技術について,日常生活における異
(3) pISA調査の背景 にある学習論
PISA調査 は,SFAAや全米科学教育ス タンダー ドの流 れ を受 けなが らも 独 自の科学 リテラシー概念 を作 り上 げている。その背景 を,同時期 にOECD
が設定 したキー ・コンビテ ンシーズ (KeyCompetencies)か ら探 る。
OECDは,2003年 に 「人生 の成功 と良好 に機 能す る社 会」の ため に コア となる能力 として,キー ・コンビテ ンシーズ を策定 している。PISA調査 で 扱 うリテラシー よ りいっそ う広 い範 囲の概念である。策定の作業 は,1997年 後半か らスイス連邦の リー ダー シップの もと,DeSeCo(TheDe丘nitionand SelectionofCompetencies)に よって進 め られた。1999年 の第一 回DeSeCo
会議では,表3のキー ・コンゼ テ ンシーの3要素が挙 げ られた。 さらに,3
国際学力調査 (PISA調査)に見られる学力観としての科学的リテラシー 要素すべ てに関連す る中核概念 として 「批判的で反省 的な思考」が捷示 され ている吐功。
表3 キ‑ ・コンビテンシ‑ズの3要素 1.相互作用的に道具を用いる
1A:言語,シンボル,テクス トを相互作用的に活用する能力 1B:知識や情報を相互作用的に活用する能力
1C:技術を相互作用的に活用する能力 2.異質な集団で交流する
2A :他者 とうまく関わる能力 2B :協力する能力
2C :争いを処理 し,解決する能力 3.自立的に活動すること
3A :大 きな展望の中で活動する能力
3B :人生計画や個人的プロジェク トを設計 し実行する能力 3C :自らの権利,利益,限界,ニーズを表明する能力
*PISA調査における 「読解力」と 「数学的リテラシー」は1Aの能力に,「科学的リテラシー」
は1Bの能力に含まれる。
3要素のキー ワー ドとして,道具 (tools)や相互作用 (interacting)を挙 げるこ とが で きる。道具 (tools)は, コ ンピュー タな どの情報機器 のみ な らず,会話や文字 な ども含 めた様 々なメデ ィアである。高度化 し複合化 し流 動化す る知識社会では,様 々なメデ ィアを媒介 とした相互作用 の能力が重要 であることを示 している。
ドミニク (2006)は, コンピテ ンス を 「個人の属性 と,その人が働 きかけ る文脈 との相互行為 の産物 であ る。」としている。 この ような言説や,上記 のキー ワー ドか ら, コンピテ ンスモデルは,状 況 的学習論 (situatedlearn‑
ingtheory)を基盤 としている と推測で きる。Lave&Wenger(1990)に よ って提唱 された状況的学習論 は,相互作用の場 として実践共同体 を位置づ け, そこへの参加 こそが学習である と定義 している。 そ して学習 は,実践共 同体 内での文脈 に対 し意味ある活動の中に埋 め込 まれた ときにこそ成功す る とし ている仏力。 この ような学習論 の下で は, これ までの知識 を持つ者が持 たない 者に一方通行 的に情報 を伝 える指導ではな く,広範囲な文脈の中で 自己決定 や自己反省 をす る問題解決的な学習や,学習の場 としての実践共同体が必要
になる。
PISA調査の科学的 リテラシーの一要素である 「状況お よび文脈」は,状 況的学習論 と関連 していることが容易 に推測で きる。 この学習論か ら 「状況 お よび文脈」は,「知識やプロセスを社会的状況 に応 じて利用する」 に加 え,
「ある限定 された状況か ら知識やプロセスを創造する」 ことも必要であると 再定義で きる。
3.国際的な科学的 リテラシー政策か ら見た 日本の課 題
(1) 科学的 リテラシー概念からの課題
日本では,評価の観点 として 「自然事象への関心 ・意欲 ・態度」「科学的 ■
な思考」「観察 ・実験の技能 ・表現」「自然事象 についての知識 ・理解」の4 つが示 されている。 また,平成11年度の 「学習指導要領解説理科編」の改訂 の趣 旨には 「学習内容 を自然体験や 日常生活 と関連付 けるとともに,自然環 境 と人間 との関わ りを一層重視す る」 ことが示 されている02)。 これ らか ら, 日本の理科教育において も科学的 リテラシーの 3要素 「科学的知識 または概 念」「科学的プロセス」「状況 または文脈」は,ある程度包含 されているとい える。
しか し,各要素の詳細 は検討の余地がある。た とえば,これまで教育課程 は,内容範囲 (スコープ) と系列 (シークエ ンス)の関係か ら導 き出されて きた。そのため,科学の学問体系 と関連 した内容 に主たる焦点が当て られ, 関連するプロセスや状況は焦点化 されない現状がある。 日常的で近い将来に わたって必要な科学的知識や概念の抽出や,内容 とプロセスを緊密に組み合 わせた教育課程が必要である。
(2) pISA調査結果からの課題
過去2回のPISA調査 において, 日本の科学的 リテラシーの平均得点は, 第2位であることか ら,知識や技能を実生活に活用する力は国際的に上位 と いえる。 しか しなが らPISA2000の 「オゾン」の問題の ような論述形式の間
国際学力調査 (pISA調査)に見 られる学力観 としての科学的 リテラシー 題では,「完全正答の割合が高 く,誤答の割合が低 く,無答の割合が高い」
という結果 も示 されている。すでに知 り得ている知識や技能を活用する能力 は優れているが,新規の現象 に対 してこれを課題 として解決に取 り組む子 ど もが,国際的な水準か ら考えると低い といえる。 これを,再定義 した 「状況 および文脈」か ら考察す ると,「知識やプロセスを社会的状況 に応 じて利用 する」力 は高いが,「ある限定 された状況か ら知識やプロセスを創造す る」
力が十分ではない。学習課程の改善に状況的学習論の視点を応用 し,広範囲 な文脈の中で 自己決定や 自己反省 をする問題解決的な学習の展開や,学習の 場 としての実践共同体 を組織する必要がある。
おわ りに
米国における科学的 リテラシーの変遷お よびPISA調査での科学的 リテラ シーについて整理 した。特 に,PISA調査お よびDeCeCoのキー ・コンビテ ンシーズは国際的標準 と しての学力 として注 目すべ きである。一方で小川 (1998)は,西洋の科学概念 と日本の理科概念の比較か ら,特定の文化的文 脈によって作 り出される 「土着科学」の重要性 を提案 している03)。国際標準 の学力 を視野に入れつつ, 日本型の科学的 リテラシーの構築 を進める必要が あるのではないだろうか。
く参考文献 )
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ウェ ンガ‑ (佐伯肝訳) : 『状況 に埋 め込 まれ た学習一正統 的周辺参加」
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[キーワー ド】
科学的 リテラシー,PISA調査,キー ・コンビテ ンシー,状況的学習論