智山学報第二 十七輯
人
間
の
習
得
性
に
つ
い
て
1
文
化
化
と
基
本
的
習
慣
の形
成
・主
に乳
幼
児 の生
活
課
題
1
藤
井
皀
立 目和
序 幼 児 に と っ て 、家
庭 は 生活
の 基 地 で あ り 、 心 理的
な 依 存 の 中枢
に 直 接 関 係 し て い る 。 家 庭 生 活 の安
定
と 不 安 定 乃 至 は 混 乱 は 、 一 に こ の 心 理的
な 依 存 度 に 求 め な け れ ぽ な ら な い 。 そ し て 家 庭 に 於 け る 子 供 の 日 課 は 、 基 本 的 生 活 習 慣 を 中 軸 と し た 生 活 課 題 に か か っ て お り 、 子 供 を 育 成 す る 条 件 の 決 定 条 件 と な る 。 子供
が 人 間 の仔
と し て 生 ま れ 、 人 間 の 児 と な る に は 、 様 々 の 障 壁 を 考 え な け れ ぽ な ら な い 。 フ ロ イ ト は 、 人 間 の 仔 の存
在
様態
を 、 動物
的
存 在 と き め つ け 、 成 人 と し て も 猶 、 そ の 非 合 理 的 存 在 の あ り 方 が あ っ た と見
た と い わ な け れ ば な ら な い 。 現 代 の 幼 児 心 理 学 は 、 家 庭 教 育 の 部 分 と 幼 稚 園 教 育 の 部 分 か ら な っ て い て 、保
育 を中
心 と し て 成 り 立 っ て い る と す る と、 そ の 心 理 学 的 部 分 は 、 基 本 的 生 活 習 慣 に基
づ い て 考 察 す る こ と が で き る 。 扨 て 、 人 間 は 、 第 一 自 然 と第
二 自 然 を 所 有 し て い る と ガ レ ノ ス は 言 っ て い る と い わ れ る 。 私 は そ れ に つ い て 記述
し な け れ ぽ な ら な い 。 説 明 す る と 、 第 一自
然 と は 、 人 間 の 生 ま れ た儘
の存
在 状 態 で 、 フ 卩 イ ド は そ の 性 心 理 的 局 面 (冨
鴇 ゲ o 山 Φ釜
a
茖
器 Φ ) を 見 た 。 ア リ ス ト テ レ ス は 、 第 一 自 然 の 霊魂
( 男謦
。冨
) は 、 植 物 性 及 び 動 物 性 で あ る と い っ た と 取 っ て よ い で あ ろ う 。 ポ ル ト マ ン に よ れ ば 、 人 間 の第
一 自 然 は 、 一 次 的 に 、 一 歳 乃 至 一歳
半 ま で で あ る 。 逆 に第
二 自 然 の事
一一120
一人 間の 習得性に つ い て (藤 井竜 和) e ) を
述
べ 得 れ ば 、今
日 の 発達
心 理学
は 、 そ れ は 五 歳 を 以 て 獲得
さ れ う る と し、 三 歳発
達 説 に よ れ ぽ 、 そ れ の萠
芽 を 三 ( 二 )才
に 求 め て い た の で あ ろ う か 。 (i
三 つ 児 の 魂 百 ま で ) … 。文
化 人 類 学 的 知 見 に 従 え ぽ 、 一 に 、 二 足直
立 歩 行 と 着 衣 、第
二 に 、 道 具 の 使 用 製 作 、 火 の 操 作 、 第 三 に 言語
の 使 用 と 概 念 形 成 、 の 三 点 に、 第 二自
然 の 根 拠 を 求 め る こ と が で き る 。何
故 な ら ば 、第
二 自 然 ( 人 間 の 特徴
) は 、 獲 得 を 通 じ て 所 有 す る こ と が 出 来 る の で あ っ て 、 自 然 に受
容 な い し は 把持
で き る も の で も な い 。 若 し 、 自 然 に 所有
す る と な れ ば 、 相 当 の レ デ イ ネ ス が 必 要 で 、 適 当 な 模 倣 ( 同 目 畧 帥 ◎ O づ ) が な け れ ば な ら な い 。 一 般 に は 、 人 間 は 、 生 ま れ た 儘 で は 人 間 に な ら な い の で 、何
ら か を 所 持 す る こ と に 於 て 、 人 間 に な る の で あ る 。 今 、 そ う し た 事 態 を 記 述 し て 見 よ う 。H
人 間 は 、 文 化 と あ る
習
慣 を 所 有す
る こ と に 於 て 人 間 と な る 。 ギ リ シ ヤ 以来
の 考 え 方 で 行 く と 、 動物
は 、本
能
を 所有
し 、 人 間 は 人 間 性 を 持 っ て い る 。 ア ダ ム は 、 ヘ ブ ラ イ 語 ゜ ° ( 三 ) ( 四 ) ア リ ス ト テ レ ス は 、 プ ラ ト で 、 ひ と の 意 で あ っ た し 、 プ ラ ト ン は 、叡
智
的 霊 魂 を 以 て 人 間性
の 特 徴 と し た 。併
し 、 ン の 情 緒 的 霊魂
の 方 を 考 え て い た 。 そ れ で 、 霊 魂 の 三 種 を 区 別 し 、 人 間 性 霊 魂 を数
え た の で あ る 。 か ん が 私 説 に よ れ ば 、 諸 家 の 諸 説 を鑑
み て、 第 一 自 然 の 状態
(旦
ヨ 騨q
巨
旨目
冨
宕 H 、 °・ °・ぎ
銭
8
) を 、 四 つ の 観 点 か ら 考 察 す る こ と が 出 来 る と 思 う の で あ る が 、 そ の 方法
は 誠 に 困 難 であ
り 、 そ の 説 の 論 点 の 根 拠 を 探 る こ と は 難 し い の で あ る 。今
、 そ れ を 、 仮 定 と し て 試 論 す る と 、 次 の 様 に な る の であ
る 。 特徴
一 。 無 ( 能 ) 力 性 ( げ 巴 冨 o °・ °・ 昌 窃 ゜。 ) こ の 特 徴 は 、 頼 り な さ に あ る が 、 こ の 「無
」 は 禅 家 流 を拝
借 す る と 、 「 有 」 で あ る と い え る 。 心 理学
的 に 言 え ば 、能
力
が な い の で は な い の で あ っ て 、 そ れ を潜
在 的 に持
っ て い る の であ
り 、 人 間 に な ろ う と 思 え ば 、 そ れ を 試 み る と 一121
一一智 山学報第二十七輯 か
実
行 す る と い う こ と が先
ず な け れ ば な ら な い の で あ る 。 感 じ て行
動 し、 行 動 し て 悟 る な ら ば 、開
悟 に 至 り 、 人 間 に な る の で あ る 。 し か し 、仏
教 で は 、 人 間 に な っ た 丈 で は 、真
実
の 人 間 で は な い の で あ る 。 心 理 学 で は 、身
辺 自 立 か ら 、 例 え ば 、 箸 を 持 っ て 御 飯 を 食 べ る こ と か ら 、 即 ち 、 し っ か り 箸 を持
っ て御
飯 が食
べ ら れ る か ど う か と い う こ と か ら 、 経 済 的 自 立 ま で 含 め て い る か ら 、能
力 (普
出ξ
) の存
在 を 認 め、 認 め う れ ば 、第
二自
然 に 移 行 可能
な の で あ る 。 従 っ て 、 こ の 特 徴 は 、 非 自 立 か ら 、 自 立 へ 、 無 力 か ら 有 力 へ 、 と い う こ と に な る 。 詳 説 は 割 愛 す る 。特
徴 二 。 未 熟 性 (戸 昌 PHP 陣 一 口 → 昇 蜜 ) 。 こ の 特 徴 を 述 べ る 術 語 は 、 未 分 化、 団 塊 的 ( 日 鋤 圏 ) 、 依 頼 性 ( 荘 司 ) 、 他 律 等 々 ( 五 ) あ る 。 荘 句 氏 は 、 こ の 「未
」 は 、 「 消 極 的 ・ 否定
的 意 味 の も の で は な く 、 肯 定 的 積極
的 意 味 を も つ 。 」 と し て い る 。 こ れ は 、 可 能態
( ( 噂 o絡
げ 欝 な ) と し て の 成 熟性
( ヨ 四9
鼻
団 ) を 予 定 し て い る の で あ り 、 そ の 存 在 様態
に な れ ば、 自 律 ( ω 一 { lO ◎ HF 冖 HO 一 ) ・ 良 識 ( げ8
。・ ¢ 磊 ) を 所有
す る と 考 え て よ い 。 そ れ に 至 る道
は 、一 つ に は 、 発 見 学 習 に あ り ( 六 ) 冒 険 に あ る 。 ロ ジ ャ ー ス に よ れ ぽ 、 そ の 道 は 、 自 己 実 現 ( oq 一 { 1 β◎ O ゴ 』 P 一 一 N 淨 一 一 〇 b 「 ) へ の 道 で あ り 、 そ の
特
徴
を 、 責 任性
、 ( 七 )自
律 性 、 独 立 性 、 自 制 や 創 造、 能 動 に 求 め て い る 。 現 代 の 教 育 心 理学
は 、 そ の 行 動 変 容 を な さ し め る の が 、 教 育 で あ る 、 と し て い る 。 特 徴 三 。 欠陥
性 ( 山 Φ { Φ C 口 卩 Φ の qn ) 。 人 間 は 、 本 当 は 、 本 能 力 の 低 下 し た、 無 力 な (震
碍穹
画 ) 動 物 的存
在 で あ る 。 諸 々 、 欠 陥 性 を有
し そ の 機 能 を発
揮 し な い も の も あ る 。 或 い は 退 行 し て 麻痺
し て い る 機 能 も 出 来 て 来 る 。 内発
的 自発
( 八 ) 性 ( ぎ三
磊
皆 。。 冒8
冨 口 。 胃 鴇 ) は 、今
日 の 心 理学
で も 、 二 〜 三 の 反 射 ( 吸 啜 ・ 把 握 ・ パ ビ ン ス キ ー ) に 求 め て い る に 過ぎ
な い 。 こ の 反射
の 存 在 も 、 あ る 外 界 の 刺 激 ( 特 に 日 o 臣 奠 ぎ αQ ) の 存 在 が 不 可 欠 で あ る 。 次 い で 、 匍匐
( 自?
℃ ぎ ぴq ) を 成 し、 未完
成
な ひ とe
奠 。。 o づ ) か ら 、 脱 皮 し て 、 完 態 と し て の 人 間 (需
磊 o葛
一 一蔓
人 格 ) を 所 有 す る こ と が で き る の で あ り 、 そ れ は、 学 習 を 通 じ て 完 全 円 満 性 を 現 前 せ し め得
る の で あ る 。 現 代 の 心 理 学 は 、 こ の 未 完 成 の 一 122 一人 間の習得性につ い て (藤 井竜和 ) ひ と の 学 習 可
能
性 を 、 人 間 の 初 期 学 習 に 求 め る 傾 向 に な っ て 来 、 就 学 前 教 育 の 重 要 性 を 強調
す る 様 に な っ た 。 初期
の 人 間 は 、 童貞
的 ・ 純 潔 的 ・ 無 心 的存
在 で あ り 、 軈 て 、魂
を 持 ち 、 道 具 を 使 っ て 衣 ・食
・ 住 等 生 活 文 化 を 持 つ 様 に な り 、 脱 野蛮
・ 脱 野 性 を通
じ て 、 洗 錬 さ れ た 文 化 的 人 間 に な る も の と 考 え た戦
後 の 日本
の 新 教 育 の基
礎
に は 、 ゲ ゼ ル 的 な 文 化適
応
( 900 ⊆ 澤 口 「 9 け 一 〇 P ) の考
え 方 が あ っ た と い わ な け れ ば な ら な い 。 単 な る 粗 暴 性 を 去 っ て 、 人 間 味 を 獲得
し な け れ ぽ な ら な い の で あ る 。 人 間 は 、 か く て 、 基 本 的 に は 、 獲 得 を 通 じ て 、 即 ち 、 節β
ロ 巨 甑 o 口 を 以 て 、 人 間性
( 『 口BP
昌 口 四 け 口 HO ) を 所有
す る の で あ る 。 特 徴 四 。 無 知 (彗
OO コ O ) 。 ソ ク ラ テ ス は 、 人 間 の 第 一 自 然 を 無 知 ( 戯 ロ 。 冨琴
無 学 ) に 置 い て い た 。仏
教 説 に よ れ ば、 こ の 「 無 」 は 、 無 明 で 、 夜 明 け の 微 か な 光 ( 明 り 、燭
光
) に 照 ら さ れ て 誕 生 を 迎 え 、 時 間 的 ( 人 生 的 ) に 早 期 で あ る と 、 人 間 が 若 い こ と を 示 し 、 毛 沢 東 は 、 青 年 期 は 、午
前 十 時 頃 ( 朝 ) で あ る と し た 。 生 ま れ て 七 歩歩
け た の は 、 そ れ も 直 立 し て 、 お 釈 迦 様 丈 で あ っ た ( 仏 説 ) 。 幼 児 は 、 悪 を 知 ら ず 、 善 の 善 た る を 知 ら な い 。 危 険 に 対 処 す る も 不 十 分 で あ る 。 未知
な る 刺激
に 対 し て は 、 恐 怖 ・ 不安
だ け あ る も の と 思 わ れ る 。 し か し 、 善 や 快 に は感
じ る こ と が 可 能 で あ る 。 経 験 と ( 仏 の ) 教 え を 通 じ て 愛 ・慈
悲
を 知 り 、 見 聞 を 広 め て 覚 知 、 即 ち 、 知 識 (ぎ
o註
Φ α αq ) を持
ち 、 生活
を す る 。 仏 説 で は 、持
つ と は 三 昧 で あ っ た 。見
性 と は 、 こ の 三昧
を 見 、 こ の 良 な る を バ ラ ン ス よ く持
つ 等 持 の人
が 人 間 と な る 。 ペ ス タ ロ ッ チ 説 で は 、 調 和 的 人 間 で あ る 。 発 達 心 理学
で は 、 人 間 は 発 達 的 存在
で あ り 、 そ の 人 間 化 の作
用 は 教 育 的 環 境 に あ っ た 。 そ れ は 、 栄 養 的 ・自
然 的 な そ れ と 、 教 化的
な 母 や 教 師 で あ っ た 。 未 分 化 ( 目 即 ω ω ) を 包 容 す る の は 、 母 の 愛 ( 印q δ げ 巴 Φ ヨ耳
碧
巨 σq跳
寡 一 〇 ロ ) で あ り 、 分 化 を 通 じ て 構造
↓
再 構造
( 同 ー ω 冖 同 口 O ゴ 』 吋 ⇔ け 一 〇 】 P )化
さ れ 、 或 は し て 、 統 合 的 人 格 ( 言 冨 鴨巴
く 。 勹 臼 ω o ロ β。 嵩 宀 団 ) に な る素
地 を 形 成 す る の で あ る 。 人 間 の 学 習 可能
性 は 人 間 の 可 塑 性 ( 鳳 器 け三
蔓
) に あ り 、 模 倣 と 好 奇 心 が あ る か ら 子 供 は 発 達 す る の で あ ろ う 。 パ ー ラ イ ン も 、 好 奇 心 に 関 心 を持
っ た 。 =・一・123
一智 山学報第二 十 七輯 神 経 生 理 学 的 に は 、 第 二 自 然 へ の 移
行
を決
め る の は、 神 経 の 興奮
( 魯 鬢 贄 o 昌 ゜。 °。覚
醒 ) 又 は 、 神 経 の 生 理 的 発 生機
序 が な け れ ぽ な ら な い 。 一 般 に は 自 覚 の存
在 で あ り、邑
{ 19 ≦ 母 。 昌 o ω ω を 通 じ て で あ る 。 口第 = 自
然
の ヒ ュ ー マ ン な パ ー ソ ナ リ テ ィ を 持 っ た 存 在特
徴 一 。 成 熟 性 ( ヨ ⇔ 言ヨ
団 ) 。 オ ル ポ ー ト の 成 熟 せ る 人 間 の 概 念 が あ る が 、 心 理 学 的 に は 、 耐 え る 力 ( 蹄 昜 冨ま
口 什9
冨 口8
) に 求 め て よ い 。 し か し 、教
学 上 、 欲望
( 要 求 ) を 処 理 す る能
力 を 持 つ こ と 、 そ れ も 、社
会 的 に 認 め ら れ た 形 で で あ る 。身
辺 処 理能
力 ・ 自 己 統 制 力 ( ・・午
。8
#9
の 所 持 是 で あ る 。 特徴
二 。能
力 (筈
二 凶 昌 ) 又 は 技 能 (8
冨
。芽
) 。 一 般 に 、 技 術 ・ 科 学 を 持 て る 人 間 と し て の あ り方
。 し か し 、 科 学 は 完 態 で は な い 、完
全 十 分 で は な い 。 特徴
三 。完
全 性 (8
ヨ 它 。 け9
器 ) 、 正常
性 ( 昌 o 目 日 巴 # 嘱 ) 。 一 般 に 、 知 ・ 徳 ・ 体 、 知 ・ 情 ・ 意 、 頭 と体
、 手 足 と 心 、 コ ヨ ロ 愛 と 知 の 所 有 が い わ れ る 。 人 間 は 、 身 体−
心 (情
)1
精 神 ( 『 二Y
ω Φ Φ8
−O
宮 閏 ヨ げ警
) 単位
で あ る か ら で あ る 。 ( 九 ) 特 徴 四 。 良 知 ( を 冨 畠 o 目 ) あ る 人 間 と し て 。 心 理 学 で は 、 身 体 の 叡 知 ( キ ャ ノ ソ ) と 精 神 の 叡 智 (創
造 性 窪 窪 け7
≦ ξ ) を 区 別 し た 。 科 学 ・ 宗 教 ・ 法律
を も ち 、 創 造 的 、 発 展 的 、 人 間 的 と し て あ る こ と 。 要 約 し て 、 心 理 学 的 存 在 論 と し て は 、 人 間的
環
境 の 刺 激 に 応 じ る 感 覚 ・ 運 動 能 力 の 所 持 あ る こ と 、 身 体 の 成 長 に よ る ホ ル モ ン 等 内 分 泌 系 あ る こ と 、 知 力 (巨
ヨ σq28 ) ・ 情 感力
( 感 受 性 。・磊
8
冨
び 詈 ¢ ) の 所 有 と い う こ と に な る 。 人 間 は 、 か か る も の を 所有
し て い る 人 を 見 附 け て 人 間 味 を 感 じ る 。 所 有 の あ る か な き か に よ っ て 、 人 間 の 存 在 が 変 っ た様
に 感 じ る の が 人 間 な の で あ る 。 か か る 観 点 に 立 つ と き 、 心 理 学 的 所 有 論 と な る 。 又、 文 化 的 風 土 ( Φ 臣 o ω の有
) か ら 、礼
儀 ( Φ 冖5
器
什 冨 行儀
作 法 ) が あ る の で あ る か ら 、 行 為 規 準 の 獲得
( 一社
会 体 制 下 の ) か ら 、 個 の 形 成 が あ る 。 ゲ ゼ ル は 五 才 を 以 て 、 一 つ の ま と ま っ た 人 格 の 形 成 が あ る と し た 。 日 基 本 的 生 活 習 慣 ( 隔 閏 昌 畠 凶 冒 冒 齢 9自 一 , 脚 げ 一 駐 ) に 関 し て の 一 考 察 _124
一人 間の 習得性につ いて (藤井竜和) こ れ を 規 定 し て み る と 、 あ る
社
会
( 文 化 ) 体 制 下 に於
け る 行為
的 存在
の あ り 方 、 生 ( い げ 口 ) を 充 足 す る 基 本 的 ひ と 様 式 、 人 間 の 児 が 獲 得 す べ き 習 性 と い う こ と に な ろ う 。 即 ち 、 あ る 文 化 圏 に お け る な ら わ し で あ り 、 そ の 社 会 ( 又 は 家 庭 ) で 、 容 認 さ れ た 行 為 規 準 の 項 目 が 列挙
可能
で あ る 。 そ れ は 、当
然 、 欲 望 処 理許
容 通 路 で あ り 、 教 育 的 ・ 保 育 的 ・ 配 慮 、 特 に マ ザ リ γ グ を 伴 う 。 ( 十 〉 山 下 は 、 ωH
食 事 、 働H
排
泄 、H
睡 眠 は 、 以 前 か らあ
っ た 説 で ( こ れ は 、 ア リ ス ト テ レ ス の 植 物 的 生 にあ
た る ) そ れ に 、 幽H
着
脱 衣、H
清潔
を 附 加 し て 五 つ と し た 。 ( 十 こ 大 西 に よ る と 、 ω が な く て 、 圈 、 ω 、 にH
安 全 、H
遊 び 、H
仕 事 を 数 え 、 働 に 礼 拝 を数
え て い る 。 私 説 を 掲 載 す る な ら ば、 表1
の 様 に な る 。 こ の 表 の 左 へ 行 く 程、 保 育 の 次 元 で あ り 、 右 へ行
く 程 教 育 の 次 元 で あ る 。 而 し て 、 人 間 は 、 教 育 さ る べ き 動 物 ( Φ 匹 ロ $ 三 。 巳 旨巴
で あ る 。 幼 児 ( 言 討 三 ) は 、 人 間 的 特 徴 を 示 さ な い か ら と い っ て 放置
さ る べ き で は な い 。 一 個 の魂
あ る 人 間 と し て 取 扱 わ れ 、 生 命 の尊
厳 を 保障
し 、 そ の 幸 福 追 求 に 理解
を 示 さ な け れ ば な ら な い 。 単 な る 強 制 ( 冠 Φ 一 H 角5
け ) と 禁 止 ( 冒 ぼ げ 三 〇 昌 ) で は な く 、 温 和 な る 人 間 的 配 慮 と 、 自 由 性 あ る 許 容 性 を 以 て 、 反 復練
習 し て 生 活 力 を つ け ね ぽ な ら ぬ 。 基 本 的 生 活 習 慣 の 各 項 目 が 、慣
れ (匿
げ巨
豊
8
、 貯 旨 出 冨 H 一 N豊
8
) に よ っ て 障 碍 な い 所 に 、 所 謂 、 伸 び る 児誓
つ ・物
が少
な萇
も 強 く た く ま し く ・ 勿 論 ス ピ ・ ツ の い毒
性愛
に よ っ三
そ し て ・ 人 間嘩
。 生命
あ る 存在
で あ る か ら 、 バ イ オ リ ズ ム ( 生 の 律動
) が あ る の であ
る が 、 目 々是
好
日 と し て 、 日 々 是無
事
に 生 涯 を 送 る 知 恵 が身
に つ く な ら ぽ 、 人 間 の 血 と な り 肉 と な る 肉 附 的 受 肉 性 は 肥 え 、良
き
人 間 の 形 成 も 、 不 可能
で は な い 。 四 仏教
諸 説 と 関 連 せ る 教 化 の 方 法 と 躾 ( 十 四 ) 基 本 的 な 生 活 習 慣 を身
に つ け る こ と は 、 ゲ ゼ ル に よ れ ば 、文
化 適 応 で あ っ た 。 我 々 は 、我
々 の 社会
の 文 化 又 は生
と と の 活 様式
を 身 に つ け 、 わ が 身 を 美 し く す る の で あ る 。 こ れ は 、 「 身 を 慎 し み て 、 身清
麗 に し 、身
だ し な み を調
え る 」 一125
一智山学報第二十七輯 表
1
基 本的生活習慣の表 (Basic
Habits
) 私 説 ωH
食 事H
排 泄 圖H
睡 眠 山 下 ○ ○ ○ 働H
着 脱 衣H
清 潔H
安 全6
りH
遊 び 圖H
学 習 圃H
礼 節 ○ ○5
習慣と安 全教 育 (健康教育)刹
○ ○ ・隣
説 ○ ○ ○ ○ 仕事麟
て
掴
植 物 的 生 動 物 的 生 人 間 的 生 1 1 1 1 1 事 項 ・偏食 ・ 夜尿 ・ 夜ふ か ・ 寒暑に ・手を洗 ・ 刃物 ・ 指 し ゃ ・ 労作 ・ 感謝 .小食 .性し
応 じひ
う
.火燃 物
ぶ り
仕 事
. 愛と信
i
萎
甕
…
羣
鬢
休毳
{
華
蚕
ii
盞
:
一韈[
麺
i
鑾
拶 養 護 保育的次元 ← (Pflegen
) 幼 保 一 元 化 健康は, 健全 な社会の健 全な精 神的 風土に 宿る。 → 教育的次元 (Erziechen
) 慣 ら す 愛 と知, 躾と規律, 信頼と友愛, 社会的 訓練 本能の浄化と人間化 ,訓練 ・練 習と習慣 化 → 教 育 → 情… …・…… … …・・… … 知 … ……・… ・… ・…… …意 のゆ−−■!ロけ−tけロi−れ’・−■・−−■− 育 育 → 育 情緒的慈育 ・ 知的愛育 ・意志的精神 教育 美育
を 一 つ に は い う 。 正 に 、 乳 幼 児 は 、 そ の 生 理 的 心 理的
生
活 ( 身体
育 成 、情
育
) を 合 理 的 に 統制
( 他 律 か ら自
立 へ ) さ れ る と 共 に 、 生活
行
動 の 自 立 に よ っ て 社 会 的 人 間 の 一員
と し て 迎 え な け れ ぽ な ら ぬ 。 こ れ が 、社
会
的 ・ 家 族 的 要 請 で も あ っ た 。 身 体 の健
康
を 土 台 と し、 心 の健
康
と 共 に 、社
会 の 一 員 と し て の 正 常 性 が 求 め ら れ て い る の で あ る 。 噌26
ユ }人 間の 習得性につ いて (藤井竜和) (
1
) 飲 食 の 習 慣 基 本 的 生 活 習 慣 に つ い て は 、 食 事 の 習慣
か ら 説 か な け れ ば な ら ぬ 。 流動
食 か ら 固 形食
へ ( 四 ヶ 月〜
一 才 ) 。 こ れ は、 ス キ ン シ ヅ プ ( 肌 と 肌 の 関 係 ) を 伴 っ て 、後
、 生 理的
離
乳 に 至 る も の で あ る 。 そ し て 、 乱 雑 な食
事 法 が始
る の であ
る が 、身
清麗
な 衛 生 的 な 食 事 法 へ 移行
す る 。 こ れ は、食
器 ・ 食 事 器 具 の 上 手 な扱
い 方 の 習 得 を 含 み 、併
せ て 、 正 し い 姿 勢 が 要 請 さ れ る 。 栄 養 摂 取 、衛
生 的 観 点 、真
正 な る 姿 勢、 よ く か ん で食
べ る 、 落着
い て 食 べ る 作法
、 美 味 を味
わ う 等 々 考 え ら れ る 。姿
勢 と食
事 作 法 は 、 宗 教 的 な 要請
で あ っ て 、 ’ そ れ は 、 精 神 生 活 を 正 す こ と に よ っ て 、 最 高 の 生 理 的 心 理 的 満 足 ( ℃ ω 鴇 げ oI喜
甥 ぢ 巴 芻 凱 ゜・ 鉾 o 江8
) を得
る こ と に あ る 。 に む な め さ い 古 代 か ら 人 間 は 、 生 存 の た め に 、 食 生活
を 重 視 し て 来 た 。 戦 前 の 慣 例 で あ っ た 新 嘗 祭 は 、 天 皇 が そ の 年 の新
穀
を 初 め て 天 地 の神
々 に捧
げ 、 御自
身 も 召 し 上 が る 宮 中 の 祭 儀 で あ っ た 。 昔 は 陰 暦 十 一 月 の 中 の 卯 の 日 に 行 わ れ 、 近 時 は 、 十 一 月 二 十 三 日 に 行 わ れ 、 現 在 は こ の 日 が 勤 労 感 謝 日 で あ る 。 ほ う じ よ う豊
飲 と は 、 「 穀 物 が よ く実
る こ と、 土 地 が よ く 肥 え て い て 作 物 が よ く 実 る こ と 」 で あ る が 、 人 間 は 、 古代
よ り 、食
生活
が 豊 か で 、 生 理 的 ・ 心 理 的 満 足 の 生 活 が 行 え る事
を 、 一 つ の 幸 福 の 指 標 に し て い た 事 が わ か る 。 西洋
で は 、 葡 萄 の神
た る デ ィ オ ニ ソ ス が そ れ で あ り 、 日 本 で は海
の 幸 ・ 山 の 幸 が 人 口 に 喜 こ ぽ れ 、 ハ レ の 御馳
走 に 山 海 の 珍 味 が 供 さ れ る 。 栄 養 のあ
る 美 味 な 山 海 の 珍 味 は 、 主食
・ 副 食 の 別 は あ れ 、 体内
の新
陳
代
謝 を よ く し 五 臓 六腑
の 良 好 化 と 、 生 命 観 的 爽快
性 、 生 命 力 の 充 実 感 を も た ら し た の で 、 そ の 需 要 供 給 の 手 閭 と 入 手 に 対 し て 、 感 謝 の意
が 込 め ら れ た 。 宗 教 界 で は 、 か か る 基 本 的 要 求 充 足 行 為 に 際 し 、 一種
の 作 法 が あ り 、 こ れ を食
事
五観
の 偈 と い っ た 。e
真
言 宗 智 山 派 智 積 院 流 食 事 作 法 は じ め ω 一 め に は 、功
の 多 少 を計
り 彼 の 来 処 を 量 る べ し … …食
物
の 身体
に 対 す る効
き
目 ( 価値
) を 考 慮 し 、 そ の 山 海 の 珍 味 ( 栄 養 源 ) が 、 自 分 の 口 に 至 る ま で の 労 力 と感
謝
を 思 う べ し 。 特 に、 珍 味 が吾
に 与 え ら れ て 、 満 足 な る 目 一127
一智山学報第二 十 七輯 を 経
験
す る事
こ そ有
難 い こ と であ
る 。 お の ぜ ん け つ た げ ん は か 二 つ に は 、 己 が 徳行
の 全 か 欠 か 多 か減
か を忖
れ 。 … … 栄養
を 頂 い た 身 体 に 対 し 、自
分 は そ れ に 値 す る 健 全 な 徳 のあ
る行
動 (精
神 生活
) を 行 っ て い る か ど う か を、 よ く か み し あ て 、 よ く 反 省 ・自
重 し て味
え 。 よ く カ メ カ メ と い う こ と は、有
難 く 頂 く と美
味 で あ り 、 ま ず い も の な し で あ り 、 よ く 唾 液 ( プ チ ア リ ソ ) と ま ぜ て 頂 く こ と は 、消
化 を 助 け る 。 そ れ と 共 に、 日中
の 行 動 の 全 欠 多 減 を 、 よ く 思 っ て 考 量 す る こ と は、 次 の 行 動 を よ り 正 し く、 合 理 的 に 美 し く す る も の で あ る 。 こ こ ろ ふ せ か あ ら わ 個 三 つ に は、 心 を 防 ぎ 、 過 を 顕 す は 、 三 毒 に は 過 ぎず
。 … … 事食
事
に 関 し て は 、 食 欲 (食
本 能 ) と も い い 、 食 物 の欠
乏 感 は、 人 間 の 生 き方
を 醜 く く す る ( 居 ぎ た な く、 口 ぎ た な く す る ) 。 通 常 の 正 常 人 で も、食
要 求 の 衝 動 は 抑 圧 し難
く、 身 体 的 に も 異 常 行 動 を 惹 起 せ し め る 程 、慎
し み を 破 っ て 、 過 多 に 走 る こ と は 、 正 に よ き も の が 、 毒 に代
る如
し 。 仏 教 で は 、 人 間 に と っ て 毒 な る も の を 三 つ 挙 げ て い る 。 と ん ω貪
又 は貪
欲 … : ・ こ れ は 過 度 に物
を ほ し が る こ と で 、 ひ と り じ め し て む さ ぼ る ( 欲 張 る )事
で あ る 。 冷 静 に 自 己 に 立 ち 返 り 、洗
練 さ れ た 手 法 で 、 自 分 丈 の 欲 望 満 足 を 考 え ず 、 「 腹 八 分 目 、 医 者 い ら ず 」 「 腹 六 分 目 不 老 長 寿 ( 禅家
の 法 ) 」 に て 、 爽快
生 命 力 源 泉 湧 出 の法
を 知 ら な け れ ば な ら な い 。 人 は 、 物 ( 特 に 食 ) に 、充
ち 足 り る と 、 怠 惰 に な り 、家
畜
化
さ れ て ( 偶 O 【 戸 Φ ω 叶 一 〇 餌 叶 一 〇 昌 ) 肥 満 化 し 、 行 動 や 頭 脳 が に ぶ り 、 万 病 ( 風 邪 を 初 め と し て 、 風 疹 ・ 痛 風 ・ 糖 尿 ・高
血 圧 ・ 胃 カ タ ル ・ 胃 下 垂 ・ 胃 癌 ) の 本 に な る か ら で あ る 。 又、 食 が 乏 し い時
、 吾 に 愛 が あ り せ ば、自
分 の 食 の 分 も 他 人 に わ け与
え る こ と の 出来
る 余 裕 あ る 利 他 行 動 も 可 能 ( 十 五 ) で あ る 。 又 、 馬 鹿 の 大 食 漢 ( 例 、 山 下 清 / ) と い う が 、何
か 欲 求 不 満 が あ っ た り、 低 次 元 の 生 活 を し て い る と 、 ど う し て も 、 食 べ る 事 丈 が 楽 し み と な り 、 却 っ て 、 心 身 の健
全 化 の 向 上 を も た ら さ な い 事 に な る 。 フ ラ ン ク リ ン は 、 自 敍 伝 で 、 食 生活
に も 節 度 が あ る べ き で あ る と し て 、 「 頭 が に ぶ る ま で食
う な 」 と い う 戒 律 を 作 っ て 、 節 制 ( 心 的 一128
一人 間の 習得性につ いて (藤 井 竜和) 生 活 の 正 常 化 ) を 忖 っ た 。 忖 る と は 、 「 思 い は か る 」 「 心 で 按 配 を 考 量 す る 」 と い う こ と で 、 心 で 、 一
寸
ま て よ と 、 心 的 平衡
( 心 の バ ラ ン ス 、 心 の コ ン デ ィ シ ョ ン ) を 考 量 す る こ と で あ る 。 (参
照 、 フ ラ ン ク リ ン 自 敍 伝 ) 。 特 に 飲酒
は、 身 体 の コ ン デ ィ シ ョ ン を よ く し 、 身 心 の 苦 痛 を 和 ら げ る こ と に 於 て 、 効 能 が あ る が 、 深 酒 し て 、 嘔 吐 や 不安
を 憶 え 、 身 心 失 調 に 至 る こ と 程 毒 な こ と は な い 。 「 酒 に 飲 ま れ る な 」 と い う こ と は 、 こ の 事 を い う の で あ り 、年
令 的 な 飲 酒 法 が 云 々 さ れ る の も、 身 心 の 節 度 を 教 え る も の で あ る 。 じ ん @ 瞋 … … こ れ は 自 分 の 心 性 に違
反
(背
馳 ) す る 事 物 又 は 心情
に 対 し て憎
み憤
り 、 そ の た め 、 心 身 の 状 態 が 平 安 な ら ざ る 事 を い う 。 一 つ に 怒 り 、 二 つ に は憎
し み 、 三 つ に恨
み 、 妬 み、 と い っ た 原 始的
感
情 の 事 で あ る 。 心 の穏
や か な ら ざ る 事 こ そ、 精 神 衛 生 に 悪 い の で、食
事 中 で は 、 静 か に 食 べ る と い う 静 を 愛 す る事
が 、 禅 家 で は尊
重 さ れ 、内
面 生 活 に 沈 潜 し て 、 深 く 人 生 の 意 味 を か み し め味
う こ と が 大 切 と さ れ る が 、 西 洋 の食
事 法 で は 、食
事 時 に の み 一 堂 に 会 す る の で 、 楽 し く 対 話 を か わ し て 、 団 欒 す る こ と が 徳 と さ れ 、 「 沈黙
を 金 と し 、 饒 舌 を 銅 と す る 」東
洋 的 生活
法 と は 、 対 照 的 に な っ て い る 。 こ れ は 、 静 か さ を 尊 ぶ 東 洋 的 生 活 法 と は 対 照 的 で あ っ て 、 活 気 の あ る 行動
的 な 有 言 実 行 の 西 洋 流 と は 異 り 、 話 し て も 静 か に 話 し 、 無 言 実 行 を旨
と す る 東 洋 的 行 動 法 と 対 照 的 で あ る 。 而 れ ば、 心 を乱
い か す 原 始 的 感 情 の 発 露 は 慎 し み、秋
風 を 以 て 慎 し み 、 人 に は 春 風 を 以 て 接 す べ き で 、瞋
り の 感 情 は 、 良 好 な る 人 間 の 状 態 で は な い 。 食 事 時 も 努 め て 平 静 に、 静 か に 、 落 着 い て 、 行 儀 よ く 食 す べ き で あ る 。 ち お ろ ば か 痴 ( 癡 ) … … 愚 か、 莫 迦 ( 梵 で 無 知 の意
) 、 馬 鹿 者 ( 愚 か な 人 ) の 事 を い う が 、 人 間 的 知性
又 は 知能
( ぎ け o 田 1 ぴq ¢ ロ 。 o あ る事
に よ っ て 、 万物
の 霊 長 と し て、 今 日 の 文 明 を 樹 立 し て来
た の で あ る 。 よ り 良 い 生 活 を し よ う と 思 え セ オ リ ば 、 物事
の 道 理 を よ く 理解
し ( 理 論 ) 、 物 事 の 処 理 ・操
作 法 ( 技 術 ) を わ き ま え 、 以 て 合 理 的 .能
率
的 ( 能 力 ) に セ ン ス 事 態 に当
る 事 こ そ 近代
人 の 本質
で あ ろ う 。 従 っ て 、 よ い 感 覚 ( 勘 ) を 持 ち 、 よ く 弁 へ 、 知 性 ( 科学
的
知 識 ) あ る 行 動 こ そ望
ま れ る 。 そ し て 、 食 習 慣 一 般 に 関 し て は 、 衛 生 の 知 識 と 共 に 、 栄 養 価 を知
っ て、献
立 す る 事 こ そ 、食
生 一129
一ffll
亅学報第二 十七輯 活 の 改 善 と 、無
病 息 災 ( 健 全 な 身 体 に 健 全 な 心 的 生 活 ) が 約束
さ れ る の で あ る 。 ま さ り よ う や ぐ こ と ぎ よ う こ す ぐ し よ ぐ も つ 國 四 つ に は 、 正 し く 良 薬 を 事 と し 形 苦 を 済 わ ん 事 を 取 れ … … か く し て 、 栄 養 価 あ る食
物 ( フ ー ド ) は 、 心 身 の コ ン デ イ シ ヨ ン条
件 を 良 好 化 す る も の で あ り、 人 生 苦 は こ れ で 一 つ消
去 す る も の で あ る 。 そ し て 、満
足 を得
て食
す る楽
し み は 、 か た ち の う つ く し さ 人 生 を 豊 か に し 、 こ の 心身
の 豊 か さ こ そ 、 顔 相 を も 良 く す る 、 そ し て 形態
美 へ と 連 な る 美 育 ( シ ュ ト ラ ッ ツ ) に な る の で あ る 。 ど う ぎ よ う じ よ う た せ ほ う い あ ら 五 つ に は 、 道 業 を 成 ぜ ん が 為 め な り 世 報 は 意 に 非 ず … … 美 育 は 単 な る 美食
で は な い 。 五 感 を 喜 こ ば す 欲 望 追究
の み の 動 物 的 生 活 を し て い て は 、 精神
の 向 上 あ る 人 間 的 生 活 は 出 来 な い の で あ っ て、 そ れ は 、 ど こ 迄 も 仏 道 に の っ と り、最
高 の 人 間 ら し い 生 活 を す る 様 に 、修
業 し 、精
進 し な け れ ば な ら な い 。 そ し て 、 同 じ 人 間 仲 間 で あ る 他 人様
も 向 上 し て 頂 い て こ そ、 楽 し い 平 和 な 世 界 が 生 成 す る の で あ る か ら 、 欲得
・権
利 ・ 権 力 の為
に 明 け暮
れ る 生 活 を な す べ き で な い 。 何 故 な ら 、 利 得 . 権 力 の 世 界 は 、 人 を 堕 落 さ せ る か ら で あ る 。 か く て 、 一 人 で も 多 く 、 彼岸
の 仏国
に 生 き る 様、 作 為 を 為 さず
報 酬 を あ て に せ ず 、 他 の 人 々 と 共 に 、 そ し て特
に 、 幼 き も の 、 病 め る も の 、 老 い た る 者 、 及 び 、無
力 な 人、 誤 ま て る 人 々 と 共 に 、 人 間 向 上 へ の 階梯
( 道 ) を 心 掛 く べ き であ
る 。 ( 参 照 、 総 本 山 智積
院 「 御 著 」 の 裏 文 よ り ) 口 禅家
臨
済妙
心 寺 派妙
心 に 伝 わ る 食 事 の 作 法 ( 五 観 の 偈 ) ニ う た し よ う は か か ら い し よ は か 一 つ に は功
の多
少 を 計 り 、 彼 の 来 処 を 量 る 。 … … こ の 食物
が 食膳
に 運 ば れ る 迄 に は 、 幾 多 の 人 々 の 労 力 と 神 仏 の 加 護 に よ る こ と を 思 っ て 感 謝 し な け れ ば な ら な い 。 お の れ と く ぎ よ う ぜ ん け つ く お う 二 つ に は 、 己 が 徳 行 の 全 欠 を は か っ て 供 に 応 ず 。 … … 私 共 の 徳 行 の 足 ら ざ る に、 こ の 食 物 を 頂 く こ と を 過 分 に 思 わ な け れ ば な ら な い 。 L ん ふ せ と が と ん と う は な し ゆ う む さ ぼ い と す き き ら い 三 つ に は 、 心 を 防ぎ
、 過 貪 等 を離
る る を 宗 と す 。 こ の食
物 に 向 っ て 、貪
る 心 、 厭 う 心 を起
さ ず 、 好嫌
な く 居 な け 一130
一人 間の習得 性に つ い て (黜 半 竜和) れ ぽ な ら ぬ 。 ま さ り よ う や く ニ と ぎ よ つ こ り よ う 四 つ に は、 正 に 良 薬 を 事 と す る は 形 枯 を
療
ぜ ん が為
な り … … こ の 食 物 は 、 天 地 の 生命
を 宿 す 良薬
で 身 の為
に 先ず
い い 、 更 に 、 満 足 し 得 て 、 気 持 に も い い 。 ( 風 呂 に 入 る も 同 様 で あ る 。 ) じ き た め ま さ 五 つ に は、 道 業 を 成 ぜ ん が 為 に、 将 に こ の食
を う く べ し … … こ の食
物 は 道 業 を 成 ぜ ん が 為 に 頂 く 事 を 誓 い ま す と 思 わ な け れ ば な ら な い 。 ナ マ ン マ を 食 べ て 大 き く な る の で あ り 、 全 て の 自 立 は、食
の 要 求 か ら 始 る 。 こ の自
立 ( ω Φ 尾 1 } 宀 Φ 一 眉 ) を 、 「 天 は、 自 ら助
く る も の を助
く 」 と 自 助 の 精神
が あ る べ き 事 を 提 唱 し た の は 明 治 の 偉 人 、福
沢 諭古
で あ っ た 。 ( 参 照 、 臨 済 宗 大 本 山 妙 心 寺 発 行開
山 無 相 大 師 六 百 年 大 遠 諱 事 務局
編 「禅
宗 聖 典 」 四 〇1
四 一 頁 、 昭 三 四 ) 日 黄檗
宗 も 臨 済 門 と 殆 ん ど 同 じ 五 観 偈 で あ る 。 … … 一 つ に は 功 の 多 少 を 計 り 、 彼 の 来 処 を 量 る 。 ぜ ん け つ 二 つ に は 、 己 が 徳 行 の 全 闕 を忖
っ て 供 に 応ず
と が と ん と う 三 つ は 心 を 防 ぎ 過貪
等 を 離 る る を 宗 と す 四 つ に は 正 に 良 薬 を事
と す る は 形 枯 を 療 ぜ ん が 為 な り ま さ じ き 五 つ に は 道 業 を 成 ぜ ん が 為 め に 当 に 此 の 食 を受
く べ し 。 シ 三 匙 偈 い ぐ い だ ん い さ い あ ぐ い つ く 一 口為
断 一 切 悪 ( 一 口 に は 一 切 の 悪 を 断 ぜ ん が 為 に ) に ぐ ゐ し ゆ い つ さ い ぜ ん に く 二 口為
修
一 切善
( 二 口 に は 一 切 の 善 を 修 せ ん が 為 に ) さ ん く ゐ ど し よ し ゆ じ よ う さ ん く も ろ も ろ 三 口為
度 諸 衆 生 ( 三 口 に は 諸 々 の 衆 生 を 度 せ ん が 為 に ) か い ぐ じ よ う ぶ つ ど う皆
共 成仏
道 ( 皆 偕 に 仏 道 を 成 ぜ ん こ と を ) 一 131 一智 山学 報第二十七輯 結 斎 ( 昼 食 の
時
に 読 む ) ふ わ ん し い き た ん え ん ち よ ん す え ん そ つ を き や い ば ん き ゆ も ふ ふ わ ぼ ん じ き す で を は ま さ し ょ ( 一 β α O 円白
Φ 一 什 ω 一 口 ) 、 所作
飯 食 已 訖、 当 願 衆 生 、 所 作 皆 弁 、 具 諸 仏 ( 飯食
已 に 訖 る 。 当 に 願 わ く は 衆 生 と 偕 に さ み な べ ん も ろ も ろ ぶ つ ぼ う そ な 皆 弁 じ 、諸
々 の 仏 法 を 具 え な ん ) (参
照 、 黄 檗 宗 大 本 山 万 福寺
「 修 養 会 行持
」 よ り )食
事
は 、 坐禅
の 時 と 同 じ く 、 只 手 、 口 を 動 かす
丈 で あ る 。 又 、 音 を 発 す る こ と を極
力 防 ぐ こ と で あ る 。 一 、 先 ず 誦 経後
持鉢
を 解 き 、 粥 ( 飯 ) 点 薬 を つ け 終 る 迄 問 訊 、 引 鑿 一声
に て 低 頭 し て 頂 く こ と で あ る 。 二 、 次 に つ け る 時 は 必 ず 前後
合 掌 し て 行 う こ と 、 他 人 に膳
け て 貰 う 間合
掌 の こ と で あ る 。 三 、食
べ 終 っ て も 、 一 同 が 食 べ 終 る 迄 静 か に待
っ て い る こ と で あ る 。 四 、 次 の 引 鑿 一 声 に て お 茶 を つ ぎ 、持
鉢
を 洗 い 布 巾 に 包 む こ と であ
る 。 洗鉢
偈 ( 食 事 の 了 っ た 後 に 読 む ) せ ん ば つ せ よ お ん ま く ら さ い そ わ か 我 れ 此 の 洗鉢
の 水 は 、 天 の 甘露
の味
の 如 し 、鬼
神 衆 に施
与 せ ん 、 悉 く飽
満
令 得 せ ん こ と を、 庵摩
似 羅 細娑
婆
誕 粥 ( 朝 食 お か ゆ の 時 ) ち ょ う い う し り じ や う い ぎ よ う じ ん こ ほ う う べ ん き う き ん ち や ん ろ し ゆ く ぎ よ う し ん ね う え ま く わ ほ う む へ ん く つ き よ う た の 粥 有 十 利 、 飢 益 行 人、 果 報 無 辺 、 究竟
常 楽 、 ( 粥 に 十 利 有 り 、 行 人 を 饒 益 し 、 果 報 は 無 辺 な り 、 究竟
し て 常 に 楽 し ま ん 。 ) 五 、食
事 の 誦 経 終 れ ば 、 静 か に 引 鑿 = 尸 に て 合 掌 し 、 一 拝 の 後、 静 か に 席 を 去 る こ と 。 六 、後
片防
け は 丁 寧 にす
る こ と 。 扨 て 、食
事
行 動 の 自 立 は 、 授 乳 か ら 、 そ の 根 祇 的 基 礎 を 持 っ て い る が 、授
乳 は、 肌 と 肌 と を 接 す る 関 係 ( ω 匠 昌8
ω 匹 ロ 同 色 二 〇P
) が 、 幼 児 に と っ て の 情 緒 的 安 定 化 に よ い の で あ り 、 母 乳 が 人 工 乳 に ま さ る の は 、 そ の 事 と 、 人 工 乳 に 優 る何
ら か の プ ラ ス α 分 の 滋 養 が 含 ま れ て い る ら し い 。 こ れ は、 科 学 的 肥 料 が 土 地 を 貧 に す る と 同 じ で 、 母乳
に 依 っ て 良 い の は 、 こ の 二 義 を持
つ ら し く 、 風 邪 を ひ か ぬ 丈 夫 な 身 体 は 、 こ れ に よ っ て 形 成 さ れ る ら し い 。 従 っ 一132
一人間の習得性に つ い て (藤 井竜 和) て 、 人 工
乳
で 育 て る 時 は 、 出 来 る 丈 、 実 存 的 対 話 ( 甲 { 同 冖 宀 ○ } 宀 Φ 卑 同 冖 同 Φ 一 帥 仲 一 〇 昌 ) に よ っ て 児 の 接 近 を拒
否 し な い よ う に す べき
で あ る 。 ブ ラ ス 又、 精 神 分 析 学 者、 臨 床 心 理 学者
の 研 究 で は 、 科 学 的 育 児 法 ( け 一B
Φ OO 昌 宀 「 O 一 5P Φ け げ O 山 ) に よ る 規 則的
授
乳 は 、情
ト レ シ ヨ ン 緒 不 安 を来
た し 人 格 形 成 に 望 ま し く な い と い う ’ 結 果 が あ る が 、 こ れ は 随 時 充 足 法 (器
巴
゜・ 舞獸
8
ヰ o 巳 o 日 Φ 件 ゲ巳
) の 必 要 性 も あ る こ と を考
え れ ば 、 一 長 一 短 で 折 衷 的 で な け れ ぽ な ら ぬ 。 こ れ は 、 人 間 と い う 複雑
な 動 物 の 欲 求 傾向
の 不 規則
性 に 由 来 す る も の ら し い 。 又 、離
乳
に 関 し て も 、早
期 、 突 然 、 遅 延 等 離 乳 は 攻 撃 的 傾 向 ( 口 唇 サ デ ィ ズ ム ) を 生 じ た り 、依
存
性 を 強 化 す る ( 自 立 心 の 弱 化 ) も の で 、 自 我 の 発達
を 歪 め る と さ れ る 。 か く て授
乳 は 、 単 に食
欲 を 充 足 す る 丈 で な く 、 母 親 と の 愛 情 の 交 流 ( 窪 o の 。 o ヨ 日 o 巳$
ユ oP 同 ⇔唱
臼 け ) を 通 し て の 人 格 形 成 の 契機
が 待望
さ れ る 。 離 乳 は 各 児 の 体 育 を 勘 案 し 、 通 常、 生 後 五 〜 七 ヶ 月 ( 四 ヶ 月 頃 か ら ス ー プ も 可 。 こ こ で は 、 腰 が 坐 る 、 おす
わ り の 時 期 頃 ) か ら 始 め 、 一 才 の前
半 に 完 了 す る の が 理 想 的 で あ る 。 以 後 、 固 形食
を 摂食
す る 様 に な る と 、 食 事 と 遊 び を 混 交 さ せ な い 様 分 節 化 す る こ と が 必 要 で あ る 。 正 に 健 康食
を 採 る と い う こ と は 、 次 の 様 な こ と で あ る 。 一 、 手 を 洗 い 、 食 事 の挨
拶 「 頂 き ま す 」 が で き る こ と 。 幼 稚 園 で は、 「 お 父 さ ん お 母 さ ん 有 難度
う 御 座 居 ま す 。 頂 き ま す 。 」 と 言 わ せ て い る の が 一 般 ( 三 才 頃 か ら食
事
の 挨 拶 も で き 、 箸 も 使 用 し 始 め る ) 。 二 、姿
勢 を 正 し く し 、何
で も 食 べ て ( 偏 食 ・ 拒 食 ・ 小 食 の 予防
) 、 こ ぼ さ な い ( 行 儀 よ く 作法
を 守 る ) 。 三 、食
器 を 正 し く使
い 、 箸 も 正 し く 上 手 に 使 う ( 一 才 半 で ス プ ー ソ の 使 用 、 コ ッ プ か ら 飲 む 事 が 可能
) 。 か 四、 食 器 を ひ っ く り 返 し た り し な い で 、 落着
い て 、 よ く 噛 ん で 食 べ る ( 四 才 で 、 家 族 一 同 と 、食
卓
を 混 乱 さ せ ず 、食
事
が 出 来 る ) 。 一133
一智山学報第二 十 七輯 五 、 「 御 馳 走 様 と 、
食
事 の 終 了 を告
げ 、 す ぐ 横 に な っ て寝
た り し な い で 、 し ば ら く 静 か に 、 又 は 歩行
し て消
化 を 助 け る こ と が 、 胃 の 調 子 に よ い ) 。 ( 貝 原 益 軒 「 養 生 訓 」 参 照 ) (n
) 排 泄 訓 練 (8
昌9
穹 曽 ぎ ぎ oq ) 人 間 生 活 の最
重 大 事 は 、 上 の摂
食 行 動 と 下 の 排 泄 行 動 の 二 つ で あ る 。 こ の 上 下 二 つ は 、 環 境衛
生 的 に 特 に 配 慮 さ れ ね ば な ら な い 文 明 人 の 二 大 課 題 で あ り 問 題 で あ る 。 従 っ て 摂食
に 対 し て は 、 煮焼
で 火 を 通 し 、 清 潔 な 上 下 水 道 の完
備 に 迫 ま ら れ る 。 こ れ は 、 生 物 の 生 存律
た る 同化
と 異 化 に 迫 る も の で あ り 、 衛 生 的 な サ イ ク ル の 完備
が な け れ ば な ら ぬ 。 大体
、 排 泄 訓 練 は 、 二 才 か ら 四才
半 の 間 に 完 了 し な け れ ば な ら な い と さ れ て い る 。 排 泄 も 、社
会 的 に 認 め ら れ た 一 定 の 場 所 で 、 用 を 済 ま せ な け れ ば な ら な い と い う の が 、文
明 社 会 の 社 会 的 要 請 で あ る 。 即 ち 、 上 下混
交
せ ず 、 区 別 す る の で あ る 。 仏教
で も 、便
所 の 神 様 が あ り 、 不浄
に 関 し て は、特
別 の 関 心 を 示 し て い る 。 汚 れ 、 穢 れ は よ く な い の で あ る 。 こ れ は 、 清 潔 の 習 慣 の 端 初 を 成 し 、 こ れ に 対 す る 心 遣 い と 躾 に 関 し て 、 精 神 分 析 で は 、 独 特 の解
釈 を し て い る 。 排 便 の 習 慣 形式
に 於 て 、 膀 胱 又 は 直 腸 の 括 約 筋 の 調 節 作 用 は 、 四才
半 迄 統 制 困難
ら し い 。 然 し、 尿 意 ・ 便 意 の 内 部 感 覚 は あ る も の で 、 一 才 で 排 便 を 事 後 に 知 ら せ 、一 才 半 で 予
告
が 可 能 で 、 こ の 頃 が お む つ ( 襁 褓 岳昌
臼 ) の 離 脱 期 で あ る 。 二 才 半 頃 に は夜
間 の お む つ も 不 用 と な り 、 三 才 半 で 小便
も 一 人 で 行 け 、 大 便 も こ の 頃 か ら 、 四 才 乃 至 四 才 半 の 間 に 自 立 す る 。 … …早
期
の 厳格
な 訓 練 は 、 気 が 散 り 易 く 、 集 中 力 を 欠 き 、 反 抗 的 、拒
否 的 傾 向 が 造 成 さ れ 易 い 。 フ ロ イ ト は 、 こ の 期 に 出 来 た 、 か か る 傾 向 の 不 快 感 を 伴 っ た 人 間 形 成 を 、 肛 門 的 性 格 (碧
巴 o冨
冨9
奠 ) と 名 づ け 、 ( 一 ) に 几 帳 面 、 秩序
を 重 ん ず る 、 清 麗 好 ぎ 、責
任 感 、 ( 二 ) に 倹 約 好 き 、 け ち ん 坊 、 ( 三 ) に 、 我儘
、 強 情 、 か ん し や く 持 ち 、 反 抗 的 、 頑 固 と い う 三 種 の 反 動 的 固 着 傾 向 を 区 別 し た 。 フ ロ イ ト は 、 二 才 か ら 三 才 の精
神 発 達 の 段階
を 、 肛門
( 加虐
) 期 ( 鋤 口 巴茖
器9
・・ 鼠 山 。 ω巴
一 ρ 二丁
穹
巴
と し て い 一134
一人間の 習得性につ い て (藤井 竜和 ) る が 、
排
泄 訓 練 の 開 始 期 は 、 十 ケ 月 頃 か ら ( 四才
半 迄 ) 可能
で あ る 。 こ の 肛 門 期 へ の 母 親 の 躾 方 と 子 供 の 適 応 の 仕方
が 、 肛 門 的 性 格 を つ く る が 、 こ の 期 に 行 わ れ る 排 泄 や 清潔
の 躾 か ら、 こ の 期 は 二 期 に 分 か れ る 。 ボ ク 第 一 期 は 排 泄 す る 事 に 喜 び を感
ず る 時 期 で 、 母 子 関 係 が う ま く い っ て い る と 、 毋 へ の最
初 の プ レ ゼ ン ト ( 子 供 の ウ ソ コ ) が う ま く 出 る 。 母 の 賞讃
は 、 そ の 行 為 を讃
美 し、 良 い 人 間 関係
( ℃ 魯 ω o 昌8
Φ 誘8
器 『 諏 o 昌 ) を 形 成 す る 。 こ の 時 期 は 、 肛 門 が 性 的 に 興 奮 し 易 い 領 域 に な る か ら 、 排 泄 時 に 、 心 地 よ い 快感
( 生 命 観 ) を 喚 起 す る 条 件 で せ と が な け れ ば な ら な い 。従
っ て 母親
は 、 焦 き 立 て ず 、寛
容 の 態 度 で 、 色 々 と 咎 め 立 て な い 様、 十 分 成熟
し て い な け れ ば サ イ コ ゾ マ テ イ ン ク な ら な い 。 応 々 失 敗 す る の は 、 母 親 が 性的
(身
体 的 精 神 的 ) 未 熟 で 、 性 的嫌
悪 感 を持
っ て い る 場 合 で あ る 。 又 、 放 任 も い け な く、 長 く 便 器 に 放 っ て お く と 、 子 供 は 遊 び 出 し ウ ソ コ を い じ り 、 食 べ る 場 合 が あ る の で 、 注 意 し な け れ ぽ な ら な い 。 第 二期
は 、 排 濯 を自
分 で 統制
し て ( ウ ー ン と 自 分 で き ば る 。 山 下 ) 、 排 泄 せ ず に 貯 め て お い た り す る 時 期 で 、 前 期 が 、 プ レ ゼ ン ト を 母 に 捧 げ る 時 期 で あ る と す る と 、 こ の 期 は 、 母 親 の 要 請 に 反抗
し て 、 自 分 の統
制 下 に置
こ う と す る時
期 で あ る 。 こ う な る と 、愛
情 の 流 れ ( °。 穹雷
ヨ o {黙
。 ユ o ロ ) が 滞 留 し 、 ケ チ ン ボ 、 ガ ソ コ と い う、 第 二 、第
三 の 肛 門 的 性 格 が 形 成 さ れ る 。 黄 檗 宗 修 養 道 場 で は 、 次 の 様 な 東 司 ( 便 所 ) 使 用 心 得 を掲
げ て い る 。 に ユ れ 一 、 常 に 進 ん で掃
除
を す る こ と … … 人 の い や が る 下 の 仕 事 を 進 ん で や る こ と こ そ 人 間 の 誇 で あ る 。 一 灯園
修 養 団 も 、 こ れ を 生 活 課 題 の 一 つ と し て い る 。 二 、 自 分 が 汚 損 し た 場 合 は 、 必 ず 自 分 で 仕 末 を す る こ と 。 … … 責 任 を 他 に 転嫁
し な い と い う こ と が 、宗
教 の 根本
であ
る 。 進 ん で自
分 で責
任
を と り 、 良 き さ わ や か さ を自
他 共 に味
う 事 こ そ 、 無 上 菩 提 で あ る 。 一135
一一智 山学 報第二十 七輯 三 、 用 便 後 は 必
ず
手 を 洗 う こ と 。 … …文
明 の 敵 は 不潔
・ 伝 染 病 で あ る 。 人 間 が 退 行 し な い様
に洗
手 に 心 掛 け る べ き で あ る 。 ス ラ ム化
は 文 明 へ の 逆行
で あ る 。 四 、 下 駄 を 揃 え る こ と … … 公 共 心 の 発達
は 、 お 互 い 人 間 同 志 が 、 さ わ や か さ を 与 え あ う と い う こ と で あ る 。 自利
利 他 充 足 あ る と こ ろ に 民 主 々 義 の根
幹 が あ る 。 自 分 勝 手 で は な く 、 個 々 人 が 心 得 て 、 人 間 の 道 を支
持
し な け れ ば な ら な い 。 個 々 人 が 心 掛 け な き と こ ろ に 衆 愚 が は び こ る 。自
分 の 快 感 満 足 と 共 に 、 他 の 人 の そ れ も 考慮
さ る べ き で あ る 。 ( 皿 ) 睡 眠 ・ 安 息 の 習 慣 レ ス ト こ れ は 、 昼 間 の 活 動 的 な 生 活 リ ズ ム と 、 夜 の 休 息 ・ 安 眠 の リ ズ ム と い う 一 日 の ラ イ フ サ イ ク ル を 会 得 し 、 以 て 常 時 生 命 が 清新
に し て 清 気 に 満 ち た も の で あ る善
(Ooo
α ) を 学 習 す る こ と で あ る 。 昼 間 は 十 分 に 活 躍 し 、 夜 は 、 又 デ イ ナ 明 日 の 為 、 夕 食 ( 画 ピ ロ N … 大 抵御
馳
走 を 十 分食
べ 、 朝 は軽
食
に す る ) を 楽 し く 取 っ た後
、 夜 ふ か し し な い で ( 日 本 の 児 童 が 、夜
ふ か し型
で あ る と い う デ ー タ が あ る が 、 こ れ は 好 ま し く な い ) 、 十 分 に 休 養 す る の が 、 生命
の維
持 と コ ン フ オ タ ブ ル に 発 展 に 良 い 。 静 か な 部 屋 で 、 余 り の寒
暖 も な く 居 れ る の が 、 安 眠 の 条 件 で あ る 。 我 国 に よ く み ら れ た 、 添 い 寝 、 添 え 乳、抱
き 癖 は 、 必 要 以 上 の 母 子 密着
で あ る の で 、 生 理 的 ・ 心 理 的 独 立 又 は 自 立 を 妨 げ る の で反
省 す ぺ き であ
る 。 睡 眠 は 、 一 才 で 十 三 時 間 、 三 才 頃 で 約 十 二 時 間 必 要 で 午 睡 も 必 要 で ( 眠 る 児 は 育 つ と い う の は 、 情 緒安
定 に 良 だ か ら で あ る ) 、 以 後 特 に 疲 れ た 以 外 は し な く な る 。 ア グ レ ツ シ プ 父 親 が 卯 騨q σq 器 ゜。 °。 ぞ で 、 母 親 が神
経 過 敏 で あ る と 、 ス ト レ ス が 多 く 滞 留 し 、 夜 驚 、 夢 中 遊 行 を 誘 い 易 い か ら 、常
日 頃 、 親 の 安 定 し た 明 る い 生 活 態 度 の 所 有 が 幼 児 の 教 育 的環
境
と し て 望 ま れ る 。 又 、 過 保 護 ・ 過 干 渉 に な ら ず、 又厳
格
で な け れ ば 、 子 供 は 、 自 由 に 活 発 に 遊 ぶ の で 、 夜 間 は浅
眠 で な く 、 十 分 に 安 心 し て 安 ら か に 眠 る で あ ろ う 。 安 一136
一人間の習得性に つ い て (藤 井竜和 ) 眠 は、 明 日 の 生 活 の 糧 で あ り、 エ ネ ル ギ