• 検索結果がありません。

中外 TV フォーラム 透析患者と便秘 ~ その重要性と対策 薬物治療を含めて ~ 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター長 臨床薬理学分野教授平田純生先生 1- 糖尿病 Q1: 糖尿病の患者さんにソルビトールの投与は可能でしょうか? A 1: 内服のソルビトールは吸収され

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中外 TV フォーラム 透析患者と便秘 ~ その重要性と対策 薬物治療を含めて ~ 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター長 臨床薬理学分野教授平田純生先生 1- 糖尿病 Q1: 糖尿病の患者さんにソルビトールの投与は可能でしょうか? A 1: 内服のソルビトールは吸収され"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

熊本大学薬学部附属

育薬フロンティアセンター長

臨床薬理学分野

平田 純生

先生

1-

糖尿病

2-

虚血性腸炎

3-

ソルビトール

4-

セベラマー

Contents

透析患者と便秘

∼その重要性と対策、

  薬物治療を含めて∼

中外TVフォーラム

5-

カリメート

6-

サプリメント

7-

投薬・服薬関連

8-

マッサージ

9-

その他

(2)

1-糖尿病

Q1: 糖尿病の患者さんにソルビトールの投与は可能でしょうか? A1: 内服のソルビトールは吸収されない糖アルコールですから、血糖値が上がることはありません。したがって糖 尿病患者さんにも使いやすい下剤であり、投与可能です。ただし糖尿病患者さんは自律神経障害によって、 便秘・下痢を繰り返す人が多いので、ソルビトールだけでなく、すべての下剤のコントロールが他の患者さん よりも、難しくなります。 Q2: 便秘による腸管穿孔をきたす要因として、カリメート服用と昇圧剤服用患者・水分管理不良が上げられました が、近年糖尿病性腎不全の患者が増加しており、糖尿病患者さんはこのリスクが高いように思われます。(糖 尿病合併症として胃腸障害もあるので)同じ慢性便秘の透析患者において、糖尿病と非糖尿病患者での検討 はなされているのでしょうか。もし資料があれば教えてください。 A2: 糖尿病患者では非糖尿病患者に比較して有意に便秘が多く、多重ロジスティック回帰分析においても糖尿病 は便秘になりやすいリスクファクターであることが証明されました(西原 舞, 平田純生, 他:透析患者の便秘 症についての実態調査.透析会誌37:1887-1892,2004.)。しかし、動脈硬化を有する透析患者が虚血 性腸炎になりやすいというデータは得られていません。同様に、特に糖尿病患者で虚血性腸炎発症率が高い というデータも示されていません(西原舞,平田純生,他:血液透析患者における虚血性腸炎の発症因子に 関する検討.透析会誌38:1279-1283,2005.)。 Q3: 既に便秘状態となっており、横行結腸〜下行結腸にかけて糞塊が多量にある。そこから先の便は排出される。 または水様便のみが排出される。このような場合(たぶん頑固な宿便状態)の対処方法はいかがですか? 患 者は糖尿病があり水様便が出るためロペミンを服用しております。硬便の横を通過した水分だと説明したの ですが・・・ A3: 摘便をして大量の宿便の排泄ができれば、それ以降は、ソルビトールを使って常に適度の硬さになるよう服用 量を自己コントロールしてもらい、毎日排便できるよう指導するのがよいと思われます。ただし糖尿病の場合、 下痢・便秘を繰り返す過敏性腸症候群のケースが多いことから、コロネル®やポリフル®のような薬剤のほうが 適しているかもしれません。この薬剤使用に際しても、腸管内圧の上昇が危惧されますので、摘便をして腸管 内圧を下げてから使用する必要があります。

中外TVフォーラム

2009.01.20 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター長・臨床薬理学分野教授 

平田 純生

先生

透析患者と便秘

~その重要性と対策、薬物治療を含めて~

(3)

Q4: 糖尿病の患者さんと非糖尿病の患者さんで便秘の頻度、重症度は異なるのでしょうか? A4: 糖尿病患者では非糖尿病患者に比較し有意に便秘が多く、多重ロジスティック回帰分析においても糖尿病は 便秘になりやすいリスクファクターであることが証明されました(西原 舞, 平田純生, 他:透析患者の便秘症 についての実態調査. 透析会誌37: 1887-1892, 2004.)。重症度までは調べていませんが、一般的に 糖尿病では自律神経障害によって、便秘・下痢を繰り返す過敏性腸症候群の患者さんが多いようです。その ため糖尿病患者さんは便秘だけを一律にコントロールすれば良いわけではないので、非糖尿病患者さんとは 異なります。 Q5: 糖尿病患者さんでは、神経症に対する投薬(キネダック®等)は効果があるのでしょうか? A5: 糖尿病患者さんは自律神経障害によって、便秘・下痢を繰り返す人が多いのですが、キネダック®は適応のあ る末梢神経障害に対しても著効したという症例も非常に少ないと感じております。したがって、あまり効果は 期待できないのではないでしょうか。 Q6: 先生は便秘対策として、ソルビトールの処方をお奨めされていますが、糖尿病性腎症による腎不全のため透 析導入された患者さんには、下剤として何がより適切と考えられますか? A6: 毎朝決まって排便する癖をつけることが便秘治療の基本です。そのような理由から非腎不全患者での第一選 択薬は浸透圧下剤の酸化マグネシウムです。腎不全では高マグネシウム血症になることから使いにくく、ソル ビトールが第一選択薬だと考えます。しかもソルビトールは吸収されない糖アルコールですから、血糖値が上 がることはありません。したがって糖尿病患者さんにも使いやすい下剤であると思います。ただし高齢者で 蠕動力・腹筋が低下している症例では、刺激性下剤もよい適応と考えます。また、下痢、便秘を繰り返す過敏 性腸症候群のタイプの方も糖尿病の透析患者さんには多いようです。このような症例にはコロネル®、ボリフ ル®などが有効と思われます。

(4)

2-虚血性腸炎

Q7: 虚血性腸炎のイベントを防ぐため、便秘の期間によって透析後体重をDW+αにすることは有効と思われま すが、目安としてどのくらい残せば良いでしょうか? (体格、年齢にもよるが) A7: ドライウェイトを増やすことによる虚血性腸炎の発症を防ぐメリットに比べて、ドライウエイトを増やすことに よる心不全のリスクが高くなるデメリットのほうが透析患者の心不全の死亡率の高さからしても問題だと思 います。ドライウエイトを変えるよりも、水分管理(塩分管理)についてしっかり教育することのほうが重要と 考えます。ソルビトールはドライウェイトを増やさずに腸管内の水分含量を増やすため、より有用であると思 います。 Q8: 虚血性腸炎防止を考慮して昇圧剤を使用するには、その種類による優先順位はありますか? (MAO阻害剤 など) A8: 体重増加の多い症例、慢性便秘、イオン交換樹脂服用者では血管を収縮させる作用の昇圧薬が虚血性腸炎 の原因になると思われます。エホチール®は血管収縮作用よりも心収縮力を高めることによって血圧を上げ るため、虚血性腸炎の心配は少ないでしょう。ただし心臓に負担をかけるデメリットがありますので、すべて の症例にエホチール®を推奨できるわけではありません。 Q9: 透析中、頻繁に腹痛を訴える患者がいます。今思えば虚血性腸炎様の症状であったかもしれません。もちろ ん穿孔には至っていません。その様な腹痛を軽減するためにはどうすれば良いでしょうか? 補液などで現在 は対応しています。 A9: 特に体重増加の多い人や、リズミック®などの昇圧薬服用者では結腸虚血による腹痛が起こりやすくなること が考えられます。生理食塩水の補液によって腹痛が改善すれば、腸管虚血を疑っても良いかもしれません。 Q10: HD中昇圧剤(ノルアドレナリン)を持続注射している患者さんがいます。昇圧剤服用中の患者同様、上腸間 膜動脈の収縮により小腸への血流が低下し、虚血性腸炎になりやすくなったと考えてよろしいですか? A10: ノルアドレナリンの非常に強力な血管収縮作用のため、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈が収縮し小腸・結腸へ の血流が低下することが原因で、虚血性腸炎になりやすくなると考えられます。このような症例で透析中に 腹痛・悪心が起これば生食を補液するなどの工夫が必要かもしれません。 Q11: 透析液をカーボスター®に代えたためか、昇圧剤を使用する機会が少し増えたように思います。虚血性腸炎 の発症率が高いとのことですが、昇圧剤服用中の患者を含め、看護師が注意すべきことを教えてください。 A11: カーボスター®は血管拡張作用のある酢酸を含まないため、血圧低下が起こりにくいと考えられます。そのた め、カーボスター®が血圧を下げるというよりも血圧が下がりやすいからカーボスター®に変更せざるを得な かった症例かもしれません。透析中の血圧低下は予後悪化因子になりますので、昇圧剤の投与をやめること は得策とは思えません。透析中、特に透析後半になって腹痛・悪心などの症状が現れれば腸管虚血による症 状の可能性が考えられます。生食を補液して症状が治まれば、その可能性はより強く疑われます。透析終了 後も腹痛・悪心などの症状が続けば主治医に報告し、症状に応じて観察入院する必要があるかもしれません。

(5)

3-ソルビトール

Q12: ソルビトールは5gぐらい投与しないと効かないと言われていましたが、1〜2gの少量投与ではどうなので しょうか? A12: 1回5gを推奨しているのは、昔からカリメート®投与時にはカリメート®5gとソルビトール5gを併用する処 方が一般的だったからです。米国のUSPDI(薬局方のようなもの)では1回量はもっと大目ですが、私自身 は少量頻回投与したほうが便の硬さを一定に保てますので、理想的だと思っています。ただし1回1〜2gだ と投与回数もかなり増えますね。 Q13: 当クリニックではプルゼニド®とラキソベロン®がよく処方されますが、その下剤で3〜4日に1回便があり、 本人もその状態で納得していますが、やはりD-ソルビトールに変更すべきでしょうか? A13: その患者さんの年齢、ADL(日常生活動作)にもよります。高齢者で腹筋力も蠕動力もない細身の方であれ ば刺激性下剤が適していますので、定期的な排便がある限り、変える必要はありません。ただし若くて活力 のある方ならば、D-ソルビトールに変更を考えてもよいかもしれません。耐性を生じて10錠以上のプルゼ ニドを服用している若い患者さんでもソルビトールに変えることによって毎日排便できるようになった症例 を経験しています。 Q14: また、今までの下剤からD-ソルビトールに変更した際、初期はまた便秘になったりしませんか? D-ソルビトー ルと下剤を併用したりも可能でしょうか? A14: バルコーゼ®などの線維性下剤なら効果発現に1週間かかることもありますが、D-ソルビトールは速効性で すので、効かないとすれば投与量が少ないと考えてください。若くて活気のある透析患者さんであればD-ソルビトールのみで排便コントロールは可能です。D-ソルビトールを毎日服用するベースの下剤として用 い、排便のない日に刺激性下剤を屯用することは高齢者でもよく行う方法です。 Q15: 刺激性下剤服用により、結腸が空となる状況が発生する。下剤の処方は通常連日服用が主であるが、患者の 排便サイクルが把握できれば1日おきであったりしたほうが良いのでしょうか。D-ソルビトール服用の効果 を得ている患者さんでも腹部のゴロゴロする(ガスによる?)違和感で中止する患者さんが多く、続かない が、服用を続けることで解消されるのでしょうか。 A15: 排便が週3〜4回でも定期的にあれば問題ないとされていますが、毎朝決まって排便する習慣をつけること が便秘治療の基本です。D-ソルビトールは服用開始時には発酵によってガスを発生する菌のエサにもなり、 最初はガスを発生する菌量が増えるために腹部がゴロゴロする症状が出ます。健常者であれば数日間でガ スを発生しない菌が増えて、ガスを発生する菌数が淘汰されるため、服用を続けることで症状が解消されま す。透析患者では健常者と腸内細菌叢が異なるため、ガスの発生が収まるのにもう少し長期間を要するかも しれません。

(6)

Q16: ラクツロース、モニラック®など、糖尿病患者に使用しても全く問題ないのでしょうか? A16: ソルビトールもモニラック®も吸収されない糖アルコールですから、血糖値が上がることはありません。した がって糖尿病患者さんにも使いやすい下剤であり、投与可能です。ただし糖尿病患者さんは自律神経障害 によって、便秘・下痢を繰り返す人が多いので、ソルビトールやモニラック®だけでなく、すべての下剤のコン トロールも他の患者さんよりも多少、難しくなります。 Q17: ソルビトールの飲みにくさ解消のために、良い工夫はありますか? また、モニラック®やラクツロース®のほう が飲みやすいでしょうか? A17: 特に男性で甘いソルビトールを嫌う方がいらっしゃいますが、モニラック®やラクツロース®も同様に甘いです からほとんど差はないと思います。対処法としては料理やコーヒーなどに入れるということも可能です。し かしお薬ですから、苦い薬を我慢してのむように、甘さも我慢して飲んでいただければと思います。 Q18: ソルビトール7mL/回は計量しにくいので、1回10mLでは不都合でしょうか? A18: ソルビトール7mL/回はソルビトール末5gに当たります。昔からカリメート投与時にはカリメート5gとソル ビトール5gを併用する処方が一般的にあったため、ソルビトール7mL/回としました。米国では1回10〜 20mLを飲んでいますから1回10mLでも構いません。しかしソルビトールの作用発現時間は、数時間と短 いため、少量を頻回投与し、常に便を適度の硬さに保つことが大切と考えます。 Q19: ソルビトールの分割投与もトライしましたが、患者さんより甘すぎて飲みにくいと言われます。何か飲みや すい方法はありますか? また、粉末と液剤の効果は同じでしょうか? A19: 特に男性で甘いソルビトールを嫌う方がいらっしゃいますが、対処法としては料理やコーヒーなどに入れると いうことも可能です。しかしお薬ですから、苦い薬を我慢して飲むように甘さも我慢して飲んでいただけれ ばと思います。ソルビトール7mLとソルビトール末5gの効果は同じです。 Q20: 大腸壁室が多く出来ている人がいて下剤服用していますが(プルゼニド®、大黄末など)イレウス症状をよく 起こします。ソルビトールのほうが良いですか? A20: プルゼニド、大黄末などでは結腸全体を刺激して結腸内すべてを空っぽにしますから、毎日排便がなく、硬結 便ができてイレウスになるのかもしれません。ソルビトールを少量頻回服用してもらうと適度な便の硬さを 一定に保つことができるため、良いと思われます。

(7)

Q21: 多糖類:D-ソルビトール、モニラック®、ラクツロースは適応外で使ってもよろしいですか? もし使えるとした ら、どのように使用したほうが良いですか? A21: 厳密に言うとD-ソルビトール、モニラック®、ラクツロースは多糖類ではありません。D-ソルビトールは単糖 類でバリウム服用時の下剤、モニラック®(ラクツロース)は二糖類で妊娠時の下剤の適応しかありません。 教科書的にも浸透圧下剤が下剤の第1選択薬と書かれていますが、酸化マグネシウムは昨年3名の高Mg 血症による死亡者が明らかになりました。米国では酸化マグネシウムはMg補給剤で浸透圧下剤と言えばソ ルビトールが主役です。透析患者に低薬価のソルビトールをルーチンで投与して査定されたとしても、うまく 説明すれば理解していただけると思います。しかしモニラック®は二糖類のため効果はソルビトールの1/2 で、薬価は約5倍ですから10倍高いモニラック®をルーチンで投与すると査定される可能性はあります。ソ ルビトールは少量を頻回投与するのが理想的ですが、1回5〜10mLを服用することが多いと思います。 Q22: ソルビトールは便秘に適応がありませんが、全国ではどれくらい使われていますか? A22: 厳密に言うとD-ソルビトールはバリウム服用時の下剤としての適応しかありませんが、透析患者で査定を受 けたという話は一度も聞いたことがありません。全国での透析患者への使用量は把握できていませんが、 レナジェル®発売後、ソルビトールを併用し始めた医師の話はよく聞きますから増えつつあるのではないで しょうか?ただし、具体的なデータはありません。 Q23: D-ソルビトール液はいつ(食前、食後、空腹時)飲めば最も効果があるでしょうか? A23: いつでも構いません。便の硬さを一定に保つためには、できれば少量分割投与することが最も効果的です が、飲み忘れを防ぐには併用するカリメート®やレネジェル®と同時に飲むほうが良いかもしれません。 Q24: 外での仕事のため排便コントロールをプレゼニド週一回の服用で調節されている患者さんに、毎日の排便を 促すにはどのような指導をしたら良いでしょうか? また、プレゼニドからソルビトールに変更した場合は、腸 管の破裂など起こりえるのでしょうか? 除水量1回4㎏です。 A24: 高圧浣腸が最も危ないことは予測できますが、腸管内圧を上げるのはソルビトールだけではなくすべての下 剤で共通しています。プルゼニドによって排便があった日からソルビトールに変更し、便の硬さがちょうどよ くなる量にコントロールしてもらうと腸管内圧が下がっていますので穿孔を起こすこともなく安全です。D-ソルビトールは服用開始時にはガスを発生する菌数が増えるために腹部がゴロゴロする症状が出ますが、1 週間から10日くらいでガスを発生しない菌が増えて、ガスを発生する菌が淘汰されるため、服用を続けるこ とで症状が解消されるということも説明してあげてください。

(8)

Q25: 以前はよくD-ソルビトールを透析患者の便秘症に使用しておりましたが、保険適応外でありカリメート®との 併用禁忌とのことで最近はあまり使用しておりませんでした。日常的にソルビトールを使用し大きな効果を 得られることを学ばせて頂きましたが、透析療法に携わる医師が1人ではないのでカリメート®が処方されて しまった場合を考えると二の足を踏んでしまいます。この点何か改善できるような良いアドバイスがござい ましたらお願い致します。 A25: カリメート®との併用禁忌はソルビトールの内服ではなく注腸だけです。結腸粘膜が直接高濃度の浸透圧剤 で満たされるわけですから危険なことは当たり前です。カリメート®と内服のソルビトールの併用であれば胃 液、腸液で徐々に薄められるわけですから危ないことはないと考えられます。しかし、数日間排便がないのに 腸管内圧を上げる下剤はソルビトールだけでなく、すべての下剤の併用が危険です。内服での併用で結腸狭 窄が発症した報告の原因は、米国では下剤としてソルビトールを併用するのが当たり前で、ケイキサレート® のソルビトール懸濁液が汎用されているため、実際に結腸穿孔の原因になったのはソルビトールではなく、カ リメート®(米国ではケイキサレート®)にあると私は考えています。カリメート®による硬結便を未然に防ぐに は浸透圧下剤が理にかなっています。しかし浸透圧下剤の代表である酸化マグネシウムは長期連用により昨 年3名の高Mg血症による死亡者が明らかになりました。米国では酸化マグネシウムはMg補給剤で、浸透圧 下剤といえばソルビトールです。というようにソルビトールの併用を勧めてみるとよいのではないでしょうか。 Q26: D-ソルビトールの投与回数21mL分3で無効の場合、20mL〜24mL分4ということでしょうか? 27mL/ 日が最大量でしょうか? A26: 私の経験では、無効の場合1回7mLを4〜6回まで増量します。患者さんには「便の硬さがちょうどいいく らいになるまで1回7mLを何回飲んでもいいですよ」と説明していますが、6回を超えて服用する必要の あった症例はありません。例えばプルゼニド10錠/日服用していた症例でも1回7mL×6回までで、その後 プルゼニドは全く必要なくなり、毎日排便できるようになりました。ただし、ソルビトールの1回投与量は5〜 10mL程度で便秘の重症度に応じて増やしても構わないと思います。 Q27: 透析患者の便秘に対しては、ソルビトールの使用が理にかなっていると考えますが、同時に塩分制限が必要 ではないかと考えます。 A27: 塩分の制限は水分制限につながりますし、除水量が少なくなれば腸管が虚血にさらされる心配は少なくなる と思われます。ただし、塩分制限は便秘解消とは関係がないと思います。

(9)

4-セベラマー

Q28: 塩酸セベラマー服用後の便秘への対策として数日間のうちに摘便をしてから下剤をかけると良いということ ですが、慢性便秘患者の腸管膜が薄くなっている場合、摘便による穿孔のリスクも高いということになるの ではないでしょうか? そのあたりの注意はいかがでしょうか? A28: 下痢気味でない患者であれば塩酸セベラマー服用と同時にソルビトールを併用すれば、硬結便の生成を防 止できます。さらに、それによる長期間排便がないことも防止できます。もし塩酸セベラマー投与後、数日 間、排便がない場合には腸管内圧が上がっているため、摘便が必要です。直腸部位に便塊がとどまるのは排 便時のみですから、透析患者特有の菲薄化は直腸には起こりませんので、摘便による直腸穿孔のリスクはあ まり高くはないと思います。 Q29: セベラマーによる便秘が、4〜8週以後慣れを生じて緩和されるのは、どういう機序ですか? 下剤により大 腸壁に色素沈着するということはありますか? A29: 慣れを生じるメカニズムについては解明されていませんが、生体内の恒常性を保つ機構(アセチルコリンや モチリンなどの分泌促進など)が働いているからだと予測していますが、今のところ不明です。刺激性下剤 の中で大黄やセンナ〔センナの主成分であるアントラキノン(プルゼニド®錠)〕を連用すると大腸壁が黒褐色 に変化します。これを大腸メラノーシス(大腸黒皮症)といいますが、粘膜固有層内のマクロファージに貪食 された色素であり、便秘の増悪要因になることを示唆する報告もありますが、結腸の色が黒くなるだけで、手 術がしにくくなるなどの不都合を除けば、全く問題ないとする専門家がほとんどです。 Q30: レナジェル®発売当初、便秘への対応として漢方薬(大黄甘草湯、麻子仁丸等)でも良いと聞いていたが、漢 方薬の効果は現在、いかがでしょうか? A30: 私は漢方薬の使い方については詳しくありませんが、大黄甘草湯、麻子仁丸ともに大黄を主成分とする刺激 性下剤です。大黄の主成分はセンナと同じアントラキノンですから、作用機序はプルゼニド®やアローゼン® と同じと考えてよいでしょう。大黄にはこの他にタンニンが含まれており、この収れん作用によって便秘にな ることがあります。ということで、大黄を主成分とする大黄甘草湯、麻子仁丸は刺激性下剤の中でも、より好 ましくない下剤だと私自身は考えています。 Q31: レナジェル®新規投与の患者には、ソルビトール等の薬剤を積極的に併用すべきですか? A31: 下痢気味でないレナジェル新規投与の患者には、ソルビトール等の薬剤を積極的に併用して、硬結便の発生 を未然に防ぐ必要性があると考えます。

(10)

5-カリメート

Q32: カリメート®の半量での効果はいかがでしょうか? A32: 半量では効果が半減すると考えるのが普通ですが、半量でも便秘がましになれば糞便中へのカリウム排泄量 が増すことによって便秘がましになるのであれば、効果は期待以上かもしれません。 Q33: カリメート®を使用した症例で強い便秘症状がありましたが、ケイキサレート®でも同様に強い便秘はおきま すでしょうか? A33: カリメート®とケイキサレート®の違いは基本的にCaのくっついた陽イオン交換樹脂とNaのくっついた陽イ オン交換樹脂の差ですので、便秘の発症に関しては全く同様だと思います。スライドで示しました海外で重 篤な便秘により腸管穿孔を起こした4症例はすべてケイキサレート®服用者です。 Q34: カリメート®服用患者は非カリメート®服用患者と比べ食物繊維の摂取量が多いと思います。服用患者がカリ メート®を服用しないで便秘が増悪することはないのですか? A34: 高カリウム血症になるのは野菜などの食物線維摂取量が多いだけではありません。降圧薬として汎用され ているARBやACE阻害薬服用者も高カリウム血症になりやすいですし、体質的にカリウムが上がりやすい 患者さんもいらっしゃいます。また食物線維摂取量が多いと便秘は改善されるため、カリメート®服用患者が カリメート®を服用しないで便秘が増悪することはないと考えられます。 Q35: 腸閉塞手術後の症例で、カリメート®とマグラックス®を内服する場合、内服時間が重ならないようにしてます が、カリウム値が高く、便が硬く困っています。どう内服したらよいのでしょうか? A35: カリメート®とマグラックス®を同時服用することによってカリメート®の作用が減弱する可能性は考えられま すが、報告はまったくありません。やや下痢気味になったほうがカリウム値は低下しやすいのですが、酸化マ グネシウムは長期連用により昨年3名の高Mg血症による死亡者が明らかになりました。そのためマグラッ クス®はやめてソルビトールと併用してみてはいかがでしょうか。ソルビトールは1回7mLをカリメート®と同 時に投与し、便の硬さに応じて服用回数を増減して、便の堅さがちょうどよくなるようにセルフコントロール してもらいましょう。 Q36: カリメート®20gとアーガメイト®ゼリー 1個とケイキサレート®1包では便秘をおこす頻度はどちらが高いの でしょうか? A36: カリメート1包は5gですので、カリメート5gがアーガメイトゼリー 1個とケイキサレート1包に対応します。 その3つで比べると、理論的には差がないはずです。しかしアーガメイトゼリー中には甘味料としてマルチ トールというソルビトールのような吸収されにくい糖質、便秘を改善する効果のある寒天が入っているため、 硬結便を生じにくい可能性があります。このため、アーガメイト®ゼリーのほうが便秘になりにくいのかもしれ ません。

(11)

Q37: カリメート®の飲み方について1包を丸ごと一気に飲むのと、ごはんなどにまぶして少量づつ摂取するので

は、便秘を誘発する頻度は変わるのでしょうか?

A37: 難溶性薬剤を1度に大量に摂ると便秘を誘発しやすくなるため、少量ずつ摂取すると、便秘しにくい可能性 はあります。ただしカリメート®は樹脂であり、砂のような味なので、御飯にまぶして食べることは難しいと思

(12)

6-サプリメント

Q38: 食物繊維が摂りにくい透析患者さんが、効率よく摂れる繊維性食品・サプリメントがあれば教えて下さい。 A38: 太陽化学(株)の販売しているクッキングサプリ「サンファイバー」や扶桑薬品工業㈱販売のチュアブル錠「セ ルリーハイ」などはカリウム含量が低く、透析医学会での発表でも透析患者の便秘に有効であったという報 告があります。 Q39: 透析患者の便秘の原因のひとつに食物繊維摂取不足がありますが補助食品などの効果・使用方法について 教えてください。 A39: 太陽化学(株)の販売しているクッキングサプリ「サンファイバー」は透析医学会での発表でも透析患者の便 秘に有効であったという報告があります。使用方法はそのまま服用するだけでなく料理に混ぜることもでき ます。詳しくはメーカーのホームページを調べるか、電話でお問い合わせください。この他にオリゴ糖は食 品店で売っていて非常に安価です。 Q40: 寒天の利用はどうでしょうか? 糖尿病の有無や年齢での便秘割合の表がありましたが、透析患者さんの調査 でしょうか? 健常人の調査でしょうか? A40: ゲル化した寒天は腸内で食物と混ざり合い、保水したまま便を増やして腸の蠕動運動を促し、自然に近いお 通じを促すことが期待できます。しかし透析患者さんでは水分を多く含んだ寒天から、どれくらいの水分が 吸収されるのか、あるいはまったく吸収されないのかについては検討されていません(水分が吸収されれば 溢水になる危険性があります)。スライドでお示ししましたのは透析患者さんの調査です。 Q41: ソルビトールとラクツロースの他にプレバイオティクスの薬または食べ物はあるのでしょうか? A41: 食品店で販売している「オリゴ糖」あるいは食物繊維、例えば太陽化学(株)の販売しているクッキングサプリ 「サンファイバー」は透析医学会での発表でも透析患者の便秘に有効であったという報告があり、プレバイ オティクスとして働きます。

(13)

7-投薬・服薬関連

Q42: 市販品のコーラック®を飲んでいる患者さんがいます。安心して飲んでも良いのか? または服用に関して注 意が必要ですか? A42: コーラック®には多種類の成分が入っていますが、主作用は刺激性下剤であるセンノシド(アローゼン®やプル ゼニド®と同じようなもの)とピコスルファート(ラキソベロン®)と考えてよいでしょう。患者さんにとっては処 方薬に変更してもらったほうがほぼ同じ薬効を得られますので、経済的にも助かるのではないでしょうか。刺 激性下剤の連用は耐性を生じやすいのが問題です。ソルビトールをベースにして、刺激性下剤はどうしても 排便がない時に週に2〜3回程度までの頓服として刺激性下剤を服用してもらうほうが良いでしょう。 Q43: 透析時に排便したくないために、自分で薬剤をコントロールしている患者さんに対する平田先生のお考えを 教えてください。 A43: 多人数同時透析中にトイレに行くのは患者さんにとって非常につらいことですから、刺激性下剤を透析日の 夜だけ服用して、透析日には排便しないようにするお気持ちは非常に理解できます。しかし毎朝、排便習慣を つけることが便秘解消の基本ですから、ソルビトールを使って常に適度の硬さになるようコントロールして、 毎日排便できるよう指導することも大切なことだと考えます。 Q44: 下剤の依存性になり、大量に服用していることで壊死・虚血になることがありますか。腸管の菲薄化につな がりますか? A44: 刺激性下剤は耐性を生じますが、それは効きが悪くなるために大量飲まないといけないだけのことで、体に とって悪いことではありませんが、経済的には問題です。ただ刺激性下剤ではカリメート®やレナジェル®によ る硬結便の発生を抑えることができませんから、活気のある若い患者さんが大量の刺激性下剤を飲んでい る場合には、ソルビトールに変更することを考えても良いかもしれません。私の経験ではプルゼニド®10錠 /日服用していた症例も、ソルビトール1回7mL×6回までで、以降はプルゼニド®は全く必要なく、毎日排便 できるようになりました。 Q45: 透析患者さんに適切な下剤として膨張性の下剤がいいと書いている本がありましたが、どうなのでしょうか? A45: 膨張性の下剤には便量を増やすバルコーゼ®といいう繊維性下剤があります。自然なお通じをもたらすよい お薬ですが、効き始めるのに1週間はかかりますし、1回にコップ1杯以上の水を飲まなくてはいけませんの で、溢水の心配もあるため、透析患者で使いやすいとはいえません。このほかにもコロネル®やポリフル® ような薬剤もあり、下痢・便秘を繰り返す過敏性腸症候群の症例には有効です。

(14)

Q46: 刺激性下剤連用による耐性機構で、依存性・耐性のおきている時の具体的な確認方法と対処の仕方を教え てください。 A46: 通常、非腎不全患者ではプルゼニド®を4錠以上、処方されている方は非常にまれです。透析患者さんで4 錠以上飲んでいるとすれば、耐性が生じていると考えてよいでしょう。その症例が虚弱・高齢・寝たきりの症 例であれば腸管の蠕動力が弱っているわけですから、量が増えても効いていれば問題はないと考えます(経 済的には多少、問題はありますが・・・)。ただし活気のある若い患者さんで耐性を生じていると、将来のこと を考えると積極的にソルビトールに変更したほうがよいのではないでしょうか。 Q47: 下剤(センノシド)を飲んで3日後に排便がくることがあります。結腸全体がカラになっているか? また、他に 要因があれば教えて下さい。 A47: 通常はセンノシドは8時間で排便が起こりますから寝る前に飲めば翌朝、排便があります。しかし連用すると 結腸全体を刺激して蠕動させる薬物ですから結腸が空っぽになり、しばらく排便がなくなります。患者さんは それで毎日多めにセンノシドを飲むようになります。これが透析患者さんの刺激性下剤の耐性の発症メカニ ズムだと考えています。 Q48: 高齢者では腸の動きが弱いようですが、当院では漢方の潤腸湯を使用し、生来の油で便をすべり出させるよ うにしています。このような考えはいかがでしょうか。 A48: 私は漢方薬の使い方については詳しくありませんが、潤腸湯は大黄を含有する刺激性下剤と考えられます。 大黄の主成分はセンナ(アローゼン®)と同じアントラキノンですが、大黄にはこのほかにタンニンンが含まれ ており、この収れん作用によって逆に便秘することがあります。ということで、大黄を主成分とする漢方薬は 刺激性下剤の中でも、より好ましくない下剤だと私自身は考えています。 Q49: プルゼニド®を使っていて効果が無くなってきたときに、アローゼン®に変更するケースがありますが他に良 い方法はありますか? A49: プルゼニド®はアローゼン®(センナ)の主成分のアントラキノンです。もとは同じ薬ですから変更する利点は 全くありません。因みに大黄もアントラキノンです。その症例が虚弱・高齢・寝たきりの症例であれば腸管の 蠕動力が弱っているわけですから、このような刺激性下剤は理にかなっています。ラキソベロンは液剤なの で微調整ができるのがよいところです。ただし活気のある若い患者さんで刺激性下剤を投与して耐性を生 じていると、将来のことを考えると積極的にソルビトールに変更したほうがよいのではないでしょうか。 Q50: 腹痛・嘔気を訴える便秘患者に対する投薬レジメンを教えてください。 A50: 便秘が原因で腹痛・嘔気が起こっており、その腹痛・嘔気が透析後半から透析後のみに起こっているとすれ ば腸管虚血が考えられます。腹痛・嘔気が起こったときに生食を注入して改善すればなおさら腸管虚血が疑 われます。穿孔を起こさないためには硬結便の発生を未然に防ぐ必要があります。これにはソルビトールの 少量頻回投与が推奨されます。

(15)

Q51: 腸内細菌叢の正常化という目的で整腸剤を使うとしたら、その効果はどのくらいと考えたら良いでしょうか? A51: 糞便中の好気性菌の比率は健常者の1%未満に比し、透析患者では約15%に増えています。そのため、 腐敗菌などが増殖しやすく、さまざまな弊害をもたらす恐れがあるため、透析患者さんは整腸剤をできれば ずっと飲み続けていただきたいと思います。 Q52: 下剤の使い方について「こういうケースでこういう処方と対応でうまく便秘が改善できた」という報告事例を お聞かせください。 A52: 刺激性下剤は耐性を生じますが、それは効きが悪くなるために大量飲まないといけないだけのことで、体に とって悪いことではありません。経済的には問題ですが。ただ刺激性下剤ではカリメート®やレナジェル® よる硬結便の発生を抑えることができませんから、活気のある若い患者さんが大量の刺激性下剤をのんで いる場合にはソルビトールに変更することを考えてもよいかもしれません。私の経験ではプルゼニド10錠/ 日服用していたいわゆる「刺激性下剤耐性の若い症例」もソルビトール1回7mL×6回まででプルゼニド® 全く必要なく、毎日排便できるようになりました。 Q53: 下剤の服用は、眠前の用法が一般的ですが、(食前などの)空腹時に下剤を服用するとより効果があるという ことを聞きました。その根拠を教えてください。 A53: 空腹時の服用のほうが効果があるという根拠についてはわかりかねます。寝る前の用法が一般的なのは約 8時間で効果が現れる刺激性下剤です。ソルビトールや酸化マグネシウム(透析患者では使わない)の効果 発現時間はもっと短いです。 Q54: 透析患者の症例で62歳女性糖尿病+毎日下剤を服用し便秘になります。大腸ファイバー:腸ヒダがなくな り蠕動運動がなくなったのは長年の下剤の服用の副作用といわれましたが予防はありますか? A54: おそらく、刺激性下剤の連用によって耐性が生じた可能性が考えられます。刺激性下剤の増量によっても蠕 動運動が回復する可能性がありますが、62歳と、比較的若い症例ですから、毎朝、排便する習慣をつけるこ と、排便を我慢しないこと、ウォシュレットを使って肛門を刺激する、ウォーキングなど適度な運動をすること、 サプリメントとして食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌などを摂取する(オリゴ糖は非常に安価です)、時計方向の下 腹部マッサージなどを試すと同時に、刺激性下剤からソルビトールへの変更も検討されてもよいかもしれま せん。 Q55: 週3回透析で非透析日の眠前に(4回/W)それぞれ下剤を内服させ排便を促すようにしていますが、内服さ せすぎでしょうか? 水様便にならなければ良いですか? A55: その症例がやせ気味の高齢者であれば、それで排便コントロールできていれば問題ないと思います。多人 数同時透析中にトイレに行くのは患者さんにとって非常につらいことですから、刺激性下剤を非透析日の寝 る前ではなく、透析日の寝る前にだけ服用して、透析日には排便しないようにする患者さまのほうが多いの ではないでしょうか。その症例が若くて活気のある透析患者さんであればD-ソルビトールのみで排便コント ロールは可能です。またD-ソルビトールを毎日服用するベースの下剤として用い、排便のない日に刺激性 下剤を頓用することは高齢者でよく行う方法です。

(16)

Q56: 下剤1回量の多い患者さんの減量方法は、どうしたら良いでしょうか? A56: おそらく、刺激性下剤の連用によって耐性が生じた可能性が考えられます。毎朝、排便する習慣をつけるこ と、排便を我慢しないこと、ウォシュレットを使って肛門を刺激する、ウォーキングなど適度な運動をすること、 サプリメントとして食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌などを摂取する(オリゴ糖は非常に安価で長持ちします)、時 計方向の下腹部マッサージなどを試すと同時に、刺激性下剤からソルビトールへの変更も検討されても良い かもしれません。 Q57: 透析患者さんでは水分制限が難しく、当院では厳しい方では500mL〜600mL/日に設定されている方も います。ラクツロースシロップを頻回に投与することで、かなりの水分量と考えられますが、それについては どうお考えでしょうか? 除外して考えても良いのでしょうか? A57: ラクツロースシロップの投与量は1日最大量でも50mL程度です。しかもこの水分は腸から吸収されず、逆 に浸透圧作用によって腸管外の水分を腸管内に移行させて、便を柔らかくします。そのため、理論的には溢 水を改善して、水分制限を楽にしてくれる可能性があります。すなわち、ラクツロースシロップの水分量が増 えることによって飲水量を減らす必要はありません。 Q58: 各種下剤の使用量の上限・限界量を教えてください。Mg製剤は少量でも使わない方が良いでしょうか? A58: 添付文書の用量の最大量が上限・限界量と考えられますが、多くの透析患者さんでプルゼニド®やアローゼ ン®などの刺激性下剤の上限をはるかに超えています。Mgは短期投与では問題ないと思いますが、連用す ると高マグネシウム血症による不整脈や呼吸抑制によって死亡した症例も報告されています。同じ作用を示 すソルビトールのほうが安全でしょう。私の経験ではプルゼニド®10錠/日服用していた60歳代の男性透析 患者さんで、ソルビトール1回7mL×6回まででプルゼニド®は全く必要なく、毎日排便できるようになった 症例を経験しています。 Q59: 数種類の便秘薬を常用している患者さんがたくさんいます。その中でプルゼニドを10錠以上飲んでいる人 もいます。使用法として正しい方法なのでしょうか? 上限の量などを教えて下さい。 A59: プルゼニド®の常用量は1〜2錠、高度な便秘でも4錠までとされていますので、これが上限と考えてもよい でしょう。透析患者さんでは10錠以上飲んでいる方を多く見かけますが、下剤選択の誤りだと思います。プ ルゼニド®は虚弱・高齢・寝たきりの症例であれば腸管の蠕動力が弱っているわけですから、このような刺激 性下剤は理にかなっていますが、これも毎日連用するよりも、週に2〜3回頓用すべきだと思います。元気 のある若い患者さんで刺激性下剤を投与して耐性を生じているのであれば、将来のことを考えると積極的に ソルビトールに変更したほうが良いのではないでしょうか。 Q60: ラキソベロン®と水の割合をどうしたらいいでしょうか? ラキソベロン®のみ内服するのと、どちらがいいで しょうか? A60: ラキソベロン®を服用するときの水分量の増減で下剤としての効果に大きな変化があるとは思えません。水 分制限されている透析患者さんであればラキソベロン®のみ内服すれば良いのではないでしょうか。

(17)

Q61: 下剤にラキソベロン®を1回に1本全量を服用しないと効果がない人が多いです。使用時の注意として腸管 内圧を下げておくこと以外に他に何かありますか? 腎臓内科のDr以外のDrにラキソベロン®1本の処方は ダメと言われます。 A61: ラキソベロン®は刺激性下剤の中で唯一、耐性を生じにくいと言われていますが、作用機序は他の刺激性下 剤と同じ結腸全体への刺激ですから、他剤と同様、耐性を生じたのだと考えられます。虚弱・高齢・寝たきり の症例であれば腸管の蠕動力が弱っているわけですから、このような刺激性下剤は理にかなっていますので 大量投与もやむをえないかもしれません。しかし今後も投与量が増え続ける、経済的ではない、保険の査定 対象になるなどの問題があります。私の経験ではプルゼニド®10錠/日服用してたいわゆる「刺激性下剤耐 性の症例」もソルビトール1回7mL×6回まででプルゼニド®は全く必要なく、毎日排便できるようになりまし たので、ソルビトールへの変更を検討されても良いかもしれません。 Q62: ラキソベロン®やアローゼン®は透析日も非透析日も同じように服用させているのですか? A62: 医師は毎日処方していても、透析患者さんが多人数同時透析中にトイレに行くのは非常につらいことですか ら、ラキソベロン®やアローゼン®を透析日の夜だけ服用して、透析日には排便しないように自己コントロール している方が多いと思います。しかし、毎朝排便習慣をつけることが便秘解消の基本ですから、ソルビトール を使って、常に適度の硬さになるようコントロールして、毎日排便できるよう指導することも大切なことだと 考えます。

(18)

8-マッサージ

Q63: 「透けてみえるくらい薄い」結腸になると冊子にありましたが、便が出なくなった時、下腹部を「の」の字に押 すということは避けたほうが良いでしょうか? 下剤によって排便促進をしたほうが良いのでしょうか? A63: 便が出なくなった時、下腹部を時計方向に(便の進行方向に)「の」の字にマッサージすることや、摘便、ウォ シュレットによる肛門刺激は排便を促す方法として推奨できます。しかし、たとえば1週間以上、排便がない 場合の下剤の増量や高圧浣腸の使用は腸管内圧が上がり、「透けてみえるくらい薄い」結腸の穿孔を誘発す る可能性があるため、非常に危険です。 Q64: 腹部マッサージの強さ、時間等について教えて下さい。 A64: 適切な腹部マッサージの強さ、時間についてはわかりかねます。腹部マッサージの有効性については個人差 があり、即効性のない場合がありますが、特に寝たきりの高齢者には有効性が高いと思われます。 Q65: 排便時に腹部を押すと奥の方に痛みがある場合は、自己流でマッサージをすると残りが出て痛みが取れるの で実行しています。1日おきにプルゼニドを4〜5錠、便の量としては200〜800gです。(注:患者向け勉 強会と間違えて来られた透析患者さんからの質問です) A65: プルゼニド®のような刺激性下剤は飲む量が増えると、腹痛を生じます。便量が800gというのは多すぎます ね。このような大量排便後には数日間、排便がなくなり、また便秘になるという悪循環になることがしばしばあ ります。できれば毎朝排便する習慣をつけたほうがよいでしょう。排便を我慢しない、ウォシュレットを使って 肛門を刺激する、ウォーキングなど適度な運動をする、サプリメントとして食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌などを 摂取する(オリゴ糖は非常に安価です)、時計方向の下腹部マッサージなどを試されても良いかもしれません。 Q66: 便秘予防にマッサージ・指圧・針灸・運動療法で良い方法はあるでしょうか? A66: 時計方向の下腹部マッサージ、ウォーキングなど適度な運動は便秘予防に効果があるといわれています。指 圧や鍼灸の効果についてはわかりかねます。このほかに薬に頼らない便秘予防法としては毎朝、排便する習 慣をつけること、排便を我慢しないこと、ウォシュレットを使って肛門を刺激することや、サプリメントとして食 物繊維、オリゴ糖、乳酸菌などを摂取する(オリゴ糖は非常に安価です)などを試すのも良いかもしれません。

(19)

9-その他

Q67: CTで認められる動脈石灰化の程度と発症率の関係はいかがでしょう? A67: 残念ながらスライドでお示しした手術症例15人は約30年間にわたる累積症例であるため、CTを取ってい る患者さんは少なく、虚血性腸炎の腹部X線写真やCTだけで、我々には石灰化の程度は判断できませんで した。透析患者以外では動脈硬化は一般的に虚血性腸炎の危険因子とされていますが、我々の検討では ASO合併頻度、総コレステロール値、Ca・リン値は発症群と非発症群の間に差が全くなかったことから、透 析患者の虚血性腸炎発症には便秘と透析による虚血・血液濃縮のほうが動脈石灰化や動脈硬化よりも重要 な因子だと考えています。 Q68: 塩分は腸管からの水分吸収を助け、末梢での浮腫の原因となりますが、塩分制限を十分に行うと、水分は腸 管を通り過ぎるだけとなると考えますが、いかがでしょうか? A68: NaClは細胞外液を増加させますが、腸管からの水分吸収を増大することはないと思います。NaCl摂取が 増えても便秘の増悪は起こりません。したがって塩分制限を行っても便秘は解消できないと思います。ただ し塩分制限を行えば溢水傾向が改善し、透析による除水が減少することによって、腸管虚血は起こりにくくな ると思われます。 Q69: 雑学でもけっこうですので、経験で知った便秘解消の方法をわかっている範囲で教えて下さい。 A69: 毎朝、排便する習慣をつけること、排便を我慢しないこと、ウォシュレットを使って肛門を刺激すること、食物 繊維をとること、ウォーキングなど適度な運動をすること。サプリメントとして食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌 などを摂取すること(オリゴ糖は非常に安価です)。時計方向の下腹部マッサージなどがあげられます。 Q70: 透析患者は結腸が薄くなっているため大腸ファイバーは止めたほうがいいといわれる先生もいらっしゃいま すが、下部消化管疾患が疑われる場合は行うべきでしょうか? A70: 結腸が薄くなっている透析患者さんはカリメート®やレナジェル®を常用している慢性便秘の方で多く、透析 患者さん皆さんが薄くなっているわけではありません。薄くなっている可能性高い方への大腸ファイバーは 危険性と有益性を天秤にかけて実施するか否かを決める必要があると思います。 Q71: イオン交換樹脂の影響で硬結便が腸に残留するようになるのは、定期的なファイバーの検査で早期発見す ることができるでしょうか? A71: そのような早期発見法に関しての報告がないと思います。私にもわかりかねますが、大腸ファイバーはあま り定期的には行いませんから、発見しにくいのではないでしょうか。また基本的に大腸ファイバーは下剤を 使って結腸内を空っぽにしてから行う検査ですので、便がある状態では観察できないと思います。

参照

関連したドキュメント

を,松田教授開講20周年記念論文集1)に.発表してある

仏像に対する知識は、これまでの学校教育では必

1 月13日の試料に見られた,高い ΣDP の濃度及び低い f anti 値に対 し LRAT が関与しているのかどうかは不明である。北米と中国で生 産される DP の

 5月15日,「泌尿器疾患治療薬(尿もれ,頻尿)の正しい

Ranunculaceae Ranunculaceae セリバオウレン Coptis japonica (Thunb.) Makino var.. dissecta

前項では脳梗塞の治療適応について学びましたが,本項では脳梗塞の初診時投薬治療に

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

口文字」は患者さんと介護者以外に道具など不要。家で も外 出先でもどんなときでも会話をするようにコミュニケー ションを