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晴乳 類 の 胃の比較 形 態 鈴 木 - 憲 ・永井 虞

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Academic year: 2022

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(1)

晴乳 類 の 胃の比較 形 態 鈴 木 ‑ 憲 ・永井 虞

岡 山大学歯学部 口腔解剖 学 第一講座

1

.哨乳類の食性

晴乳 類 の食性 は大 き く分 け て植 物 食 をす る草食 性 と動物 食 をす る肉食性 と, どち らも食べ る雑 食 性 に分 け られ る。 肉食性 の 中には虫 を食べ る食虫 性や魚 を食べ る魚食性 が含 まれ ,草 食性 の 中には 果実や花 みつ を食べ る果実 食性 が 含 まれ る

st evens ( 1 980)

7

)

は晴乳類 の各 日と食性 につ いて表

1

の よ うに ま とめ て い る これ に よる と, 単孔 目 ・鯨 目 ・有鱗 目 ・管歯 目は肉食性 の ものの

兎 目 ・長 鼻 目 ・海牛 目は草 食性 の もののみ で あ る

食性 が 多様 な 目はそ うでない 目に比べ て様 々 な環 境 に適合 してお り,音歯 目でみ られ るよ うに種 の 数 も多い。

2

.草食性 への特殊 化

虫や 肉や 果実や みつ の よ うな繊維質 の少 ない も の を食す る動物 では ,食物が消化 酵素 に よ り分解 され腸 よ り吸収 され る しか し繊 維質の 多い草や 樹葉 は消化 酵素 に よ り分解 され ない。 この ため草 表

1

晴乳 類 の各 日におけ る食性

肉食性 雑 食性 草 食性

Monot remat a

Cet acea Phol i dot a Tubl i d ent at a Chi ropt era l nsect i vora Carni vora Marspi al i a Edent at a Rodent i a Pri mat es Dermopt era Hyracoi dea Art i odact yl a Peri ssodact yl a Lagomorpha Probosci dea Si reni a

単孔 目 鯨 目 有鱗 日 歯 目 巽 辛 目 食虫 目 食 肉 日 有袋 目 貧歯 目 音歯 目 霊 長 目 皮翼 目 岩狸 目 偶蹄 目 奇蹄 目 兎 日 長 鼻 目 海牛 目

+ + + + + + + + +

み で構 成 されてお り,異 手 目,食虫 目,食 肉 目で は肉食性 と雑 食性 の ものが あ る 有袋 目 ・貧歯 目

・音 歯 目 ・霊 長 目に は 肉 食性 ,雑 食性 ,草 食性 すべ ての食性 が あ る 皮異 目と岩狸 目は雑 食性 の もののみ で,偶蹄 目は雑 食性 と草 食性 ,奇蹄 目 ・

( C. E. St evens,1 980)

食動物 では繊維質 を粉砕す るため に歯, と くに 臼 歯 の大 型化や下 顎の水 平運動 のための顎関節 の変 化や 岨噂筋の強化 が お こる。 また粉砕 した繊維 を 微生物 に よ り発酵 ・分解 して吸収 す るため に消化 器 の一部 に特殊化 が 見 られ る 消化器 の発達 とし

(2)

て具体的には微生物 に よる分解 を促進す るため , 消化管の一部 の大容量化 と盲嚢や弁 の形成 に よる 貯 臓 と貯溜時間の延 長がお こる。 これは前胃の形 成 と大腸の変化 でみ られ ,この うち大腸 ではウサ ギの よ うに盲 腸が発達す る もの と,ウマの よ うに 結腸が発達 す る ものが あ る。前 胃や大型の大腸 内 では微生物の生育 条件 をよ くす るため に

pH

の調 壁 ,そ して分解産物 の吸収 のため に粘 膜表面積の 拡大や粘膜 固有層の血管系の発達 がみ られ る。繊 維質の分解産物 は

VFA

(揮発性 脂肪酸 )として発 酵部位 で直接吸収 され る05)また前 胃発酵の動物 で は菌体 タンパク質が主なタンパク源 として利閏される。

3

.胃粘膜の構築

嘆器 ,岨噂器や大陽につ いては他 の機会 にゆず る として ,今回は 胃の形態 につ いて比較 してみ る。

晴乳類の 胃粘 膜には重層南平上 皮か らな る無腹 部 と腺 をもつ粘 膜がある 胃の形態 とこれ ら各粘 膜の分布 は動物種 に よ り異 ってお り,機能 と深 い 関係が あ る 腺 を持つ粘 膜には粘液腺 である噴門 腺粘 膜 ,ペ プ シノー ゲ ン ・塩酸 ・粘液 を分泌す る 胃底 (体 )腺粘 膜 ,そ して粘液腺 であ る幽門腺粘 膜が あ る

繊維質の少ない食物 を利用す る果実食や 肉食性 の動物 では図1の ような構築 を示す。重層扇 平上 皮は食道か ら噴 門 までで,噴門の狭 い領域 には噴 門腺が分布 している この よ うな 胃をもつ動物 に はイヌ,ネコ,ジャ コウネ ズ ミ等の 肉食動物 と食 虫性や果実食性 のサル とヒ トが含 まれ る 草 食性 であ るウサ ギの 胃 (図2) もこの型に類似 してお り,前 胃の発達 がみ られない点 では草食動物 の 中 では特 異 であるが ,盲 腸が非常 に発達 してい る。

草 食動物 は多 くの動物 で前 胃の発達 がみ られて い る これにはウシ科 (図

5)の ように盲嚢状 に

発達 した前 胃の粘 膜がすべ て重層平扇上皮 である もの,ラ クダ (図

6) i , )

ナマ ケモ ノ (図

7

)1'の よ うに盲嚢 の盲端 に噴 門腺が あ る もの,カンガルー (図

9)

6)の よ うに前 胃の粘 膜が噴門腺 でで きてい る ものが あ る ウマ (図1

1)

2‑の前 胃は重層南平 上 皮であるが盲嚢 を形成 していない。 しか しウマ で は結腸が非常 に大 き くな ってお り結腸発達 をして い る 実 験動物 として用 い られ る‑ム ス ターは草 食性 であ り,盲 腸が発達 してい るが ,胃 も前 胃 と 後 胃に分 れて二腔性 を示 してお り,前 胃粘 膜は重 層南平 上皮であ る (図1

3)

1と

雑食性 の動物 で も繊 維質の 多い もの を消化 で き る動物 では大腸 の特殊化 と共に 胃に前 冒状の構造 がみ られ る ペ ッが ト (図

8

)1厄 盲嚢状の前 胃 を もつ。ブ タ (図

3)

2)や マ カカ属のサ ル (図

4

)'8‑

の 胃は噴 門腺粘膜が広 く,繊維質の食物 の貯 臓 ・ 発酵が行 なわれ ている ラ ッ トやマ ウ スで も胃の 特殊化がみ られ ,前 胃は重 層平肩上皮 であるが単 腔 であ る(図1

2) 0

4

.胃底腺 の比較

胃底腺は3種 の細 胞か ら成 り,ペ プ シ ノー ゲン は主細胞 ,塩酸 は壁細 胞 ,粘液は副細 胞か ら分泌 されている 多 くの動物 の 胃底腺 では主細 胞は腺 底部 に,壁細 胞 と副細 胞は腺頚部 に多い。 胃の表 層 を被 って い る粘液上 皮が落 ち込 んでい る胃小高 に 胃底腺は数本開 口 して い る 開 口部が狭 くなっ ている もの もあ り,これ を腺の狭部 とい う 腺 を 構成す る細 胞は この部位 で有糸分裂 を くり返 し, 粘腺の上方 と下 方の腺底部 に移動 してゆ く。腺の 発達 の良 い動物 では粘 膜が厚 く,また粘 膜の厚 さ に対す る腺の長 さの割合が高 くなる傾 向が ある

K。。d

。( 1 966

)3)は各種 の動物 の 胃底 腺 粘 膜の厚 さ と腺の長 さの割 合 を報告 してい る (表

2)

こ 表2 家畜動物 の 胃底腺粘 隈

ウシ ヤ ギ ヒツジ ハムスター ウサ ギ ウマ ブ タ ペ ッカ リー イヌ

① 粘膜の厚 さ

(

pm)

6 06 45 9 62 0 63 8 62 7 1 840 1 836 2 0 0 0 933

② 腺の長 さ

(

〟m)

452 3 80 5 5 2 5 26 486 1 671 15 65 1 8 0 0 756

③ ② /①

x l OO

(%)

7 4. 6 82. 8 89. 0 82. 5 77. 1 9 0. 8 8 4. 2 95. 0 8

1

. 0

(Rondo

,1966.

3)Tamate,Yamada

,1983

11))

(3)

れに よると草食性 で大腸発酵の ウマ と雑食性のブ タは他 の動物 , とくに前 胃発酵 をす る草食動物 に 比べ てかな り粘 膜が厚 い。 また粘 膜の厚 さに 占め

る腺の長 さの割合 も高 い。

また腺 を構成す る

3

種 の細胞の比率 も機能 と関 係が深い と考 え られ るが ,良 く判 っていない。

5

霊長類の 胃

以上述べ て来 たように晴乳類の 胃は動物種 に よ り大 き く異ってお り,これは食性 か ら乗 る機能 の 差 と考え られ る 特 に繊維質 を消化 で きる能 力は 各 日の動物がそれぞれ別 に進化 した結果得 られた ものである この こ とが どの よ うな過程 で起 きて 来 たか を考 えるには一つの 目の中で系統関係 を含 めて議論す るこ とが必要 である しか も食性が 多 様 であることが重要 である

Ⅵ' ront sov( 1 96 0)

121

は音歯 目の消化器 につ いて歯 と胃,腸の形態 を食 性 と含めて議論 している また偶蹄 目の 胃の形態 につ いてはLanger(

1 97 4)

,4)玉手

, ( 1 9 80

)10)の比較 解剖学的研究が ある しか し他の 目では この よ う な系統的な研究はみ られていない。

霊長 目は表

1

でみ られ るように食性が 多様 で食 虫性か ら果実食性 ,雑 食性 ,菓 食性 と多岐に渡 っ ている。そこで食性の異なる もの数種 を選 んで比 較 してみた。

虫食 と果実食 をす るシルパーマー モセ ット

( Cα‑

1 l i t hri x ar ge nt

ata)と コモン リスザ ル(Sα

i mi ri sci ur eus

)は噴門腺が狭 い図

1

の型 の 胃腺分布 を 示すO他の食虫性や果実食性 のサル も同様の形態 を示す。

果実 ,種子 ,若芽や 虫の他 に繊維質の 多い草や 樹皮 も食べ る雑 食性 のニホンザル

(M

acaca

fus‑

cata)は図4の ような 胃腺の分布 を示 し,全 胃粘 膜の約

3

分の

1‑ 4

分 の

1

を噴門腺が 占めている

この ような腺の分布 は食性が比較的似 ているブ タ に もみ られ る。 しか しブ タの噴門腺が多量の粘液 を出すのに対 してニホンザルの噴門腺には主細胞 様 の葦液性細胞が腺底部 にみ られ る また前 胃で はみ られない壁細胞が少数 なが ら見 られ る この ことか ら,ニホンザルの広 い噴門腺粘 膜部 は完全 な前 胃ではないが ,前 胃‑移行型 と見 るこ ともで き,実際前 胃的機能 をもってい る とも考 え られ る

この ような 胃はオナ ガザル亜科 のマ カカ属 とヒヒ 属 にみ られ る。

リー フモンキー属や コロブスモンキー属 を含む コロブ スモンキー亜科 は繊維質の 多い樹葉 と果実 を食べ るこ とが知 られている リーフモンキー属 のフランソワール トン

( Pr esb yi i s fr anc o i si )

は図109)のような胃腺の分布 をしてお り,噴門腺粘 膜で被 われた盲嚢状の前 胃を有す る この前 胃で は微生物 に よる発酵が なされることが知られてお り, この上皮から

VFA

の吸収 も証明 されている50)噴門腺 粘膜は 胃小蒲が きわめて深 く,粘液上皮か ら成 る 拭 毛状 の突起になっている2)こういった形態は ウ シの第‑ 胃粘膜の重層南平上皮か らなる胃拭毛 と 類似 してお り,分解産物の吸収 と深 い関係がある と考 え られ る。 しか しこの ような構造は前 胃が噴 門腺粘 膜で構成 されているカンガルーの よ うな他 の草食動物 には見 られていない。

霊長類の 胃底腺粘膜の特徴につ いては表3に示 した が ,これで比較す ると粘膜の厚 さか らみて , 胃底 腺はシルパーマーモセ ッ トとフランソワール トンで発達 が悪 く,リスザ ル とニホンザル では比 較的発達が良い と考えられ る

原始的なサルは虫食 と果実食 をす る雑 食性 であ ったと考えられるためマ‑モセットや リスザルの よう な胃を持っていたであろう この様 な胃から胃粘 膜を 発達 させ消化能力 を高めることにより繊維質 食 まで 進 出することができたと考 えられる マ カカ属 の よ うに発達 した胃底腺 とともに前 胃様に噴門腺粘 膜 を発達 させ たサルは虫や果実か ら繊維 を含む食物 まで消化 で き,多様 な食物 を利用す るこ とが可能 とな り分布域 をさらに拡大す るこ とがで きた と考 え られ る また コロブスや 1)‑ フモンキーの よう に前 胃を獲得 した ものは森林 に多量にある樹葉 を 食物 にす るこ とがで き,霊長 冒全体 としての生態 域 を拡大す るこ とが可能 になった と考 え られ る。

マ カカ とヒヒはオナ ガザル亜科 に属 し, コロブス とリー フモンキーは コロブスモンキー亜科 に属 し てお り,この

2

つの亜科 は同 じオナ ガザル科 で比 較的近縁 である しか もコロブスとリー フモンキ ーの前 胃は形態的に違 いが見 られ る この ように オナ ガザル科 で草食性への適応が様 々な型で見 ら れ るこ とか ら,オナガザ ル科の消化器につ いて比

(4)

晴乳類 の 胃粘 陣

1

. イヌ,ネ コ,ジャ コウネ ズ ミ,マ‑ モセ ッ ト, リスザ ル , ヒ ト 図

2.ウサ ギ

3.

ブ タ 図

4.マ カカ, ヒヒ

5

. ウシ, ヒツジ,ヤ ギ,図

6

,ラ クダ 図

7.ナマケモ ノ

8.ペ ッカ リー

9.

カンガルー 図1

0.

リー フモ ンキー 図11.ウマ 図1

2.ラ ッ ト,マ ウス

図1

3.‑ ム ス ター

‑ 重層窟平上 皮

⊂=コ

噴 門腺粘 膜

E 三 三 ∃

胃底 腺粘 膜

巨書∃

幽 門腺粘 膜

(5)

較 して調 べ て ゆ くこ とに よ り,霊 長 類 に お け る草 食 性 の 進 化 の 過 程 が 考 察 出 来 る と考 え て い る

表3 霊長 目の 胃底 腺粘 膜

シノレノ‑マ コモン

‑モセト リスザ ル

フ ランル ソ,ド ン ニ ホ ンザ ル

ヽ) .ー

)

帆 mm

%

lHl へnl 川u

iHl川じ

00

厚さ

1

.

X ニ

粘腺②

①②③

5 5 1 5 4 ・ ・ 9 0 0 8

文 献

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参照