様式8の1の2 別紙2
論文審査の結果の要旨
No.1専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 八講 学
本論文は、「背景散乱光を用いた回折光学素子の形状推定」と題し、回折光学素子に 光を照射したときに特定の方向に発生する所望の回折光に加えて、あらゆる方向の発 生する散乱光から、その回折光学素子の形状を推定しようとする研究について記述さ れる。一般に、散乱光は回折光に比べて微弱であり、回折光と同時に検出することは 難しい。しかし、オプティクス教育研究センターにおいて近年開 発された光散乱計は、
1010以上の光強度変化を捉えられるため、散乱光と回折光の同時計測が可能になった。
本論文は、サンプルの光散乱光計測後に行う、新しいコンセプトに基づく形状推定法 の有効性を明らかにしている。以下に本論文の構成と各章の内容について述べる。
第1章は研究の背景と動機や意義について記述する。
第2章では、測定対象としている回折光学素子と、その製造方法や品質評価方法について 記述する。本論文の研究目的は、回折光学素子の新しい品質評価方法を構築することである ので、既存の品質評価方法や評価装置の性能を明らかにし、今後の解決すべき課題を述べる。
第3章では、背景散乱光を用いたデータマッチングの形状推定の処理の流れを概観し、
その一連の処理の流れにおいて必要となる測定対象モデルと標準サンプル、計算機シ ミュレーションの手法、実験装置の構成、測定値のノイズ除去の方法、データマッチ ングの方法について記述する。
第4章では、計測システム特性の取得と背景散乱光の特徴領域の決定について記述する。
実験値と物体モデルの回折光と散乱光の計算機シミュレーション結果と実験値がよく一致し たこと、背景散乱光が物体形状に反映して変化し、背景散乱光から物体形状を推定できるこ とを示す。さらに、背景散乱光の偏光特性が、-0.485 < sin < -0.405の角度領域において 大きく異なることを発見した。その角度領域をマッチングのための特徴領域とした。
第5章では、特徴領域において、ノイズ除去後の計測値と計算ライブラリとのデータ マッチングを実行について記述する。データマッチング結果は、特徴領域外において も計測値と計算ライブラリとよく一致した。また、異なる偏光に対する背景散乱光や
±1次の回折光強度に対するデータマッチングが形状推定精度 をさらに向上させること を示した。
様式8の1の2 別紙2
論文審査の結果の要旨
No.2専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 八講 学
第6章では、散乱光の極小値の発生由来に対する幾何光学的な手法の検討について記 述する。その解析は、散乱光を発生させる微小構造が孤立して存在するときによく説 明できることを示した。複数の微小構造が波長の数倍程度に近接すると 、それらを1つ の構造と捉えて解析することを必要とすることを示した。これらは、今後の計算ライ ブラリ構築の糸口となる。
第7章は結論であり、本研究で得られた結果についてまとめている。
本論文については、2014年8月5日、審査委員および関連分野の研究者が出席して公聴会が 開催された。論文発表の後、質疑応答が交わされたが、特に問題はないことが確認された。
公聴会終了後ただちに学位審査委員会を開催し、本論文の内容について詳細に検討した。そ の結果、光散乱計測に基づく回折光学素子に対する形状推定法に関して、新規な方法を 提案し、その有効性を明らかにした点で、産業の現場でも実用可能なことを期待できると 共に、研究内容の学術的水準と独創性においても極めて優れていると判断した。
よって、本論文は、博士(工学)の学位論文に値するものと認める。