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脊髄空洞症

監修:中村利孝 国⽴国際医療研究センター 平野徹 新潟⼤学医⻭学総合病院 整形外科

■トップページ

#1981 概要 疾患のポイント: 脊髄空洞症とは、さまざまな原因による髄液の循環障害によって脊髄内に空洞が形成され、多 彩な神経症状、全⾝症状を呈する疾患である。特に、初発症状は⽚側上肢の痛みやしびれなど の感覚障害であることが多く、また、バルサルバ(Valsalva)⼿技に準ずるようないきみ動作 に伴う後頭部痛、頚部痛も特徴的な症状である。 原因として最も多いのは①キアリ I型奇形であり、約半数を占める。それ以外には②脊髄損傷 後、③髄膜炎、頭蓋内出⾎や脊髄レベルでの出⾎、脊髄⼿術などに続発する癒着性クモ膜炎 ([ID0602])、④髄内腫瘍([ID0603])、⑤キアリII型奇形、などがある。 キアリI型奇形による脊髄空洞症:[ID0601]

脊髄空洞症は、指定難病であり、⼀部(modified Rankin Scale、⾷事・栄養、呼吸のそれぞ れの評価スケールを⽤いて、いずれかが3以上)では、申請し認定されると保険料の⾃⼰負担 分の⼀部が公費負担として助成される。([[https://clinicalsup.jp/jpoc/doc/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000085344.pdf 平成27年7⽉施⾏]]) [[難病法に基づく医療費助成制度]] 診断:[ID0701][ID0011] ⾮特異的な臨床症状(頭痛、頚部痛、四肢のしびれ、脱⼒)と神経学的所⾒(解離性感覚障害 など)およびMRIにより診断できる。重症度を判定し、治療法を選択する。 重症度・予後:[ID0013] 症状としては、成⼈のキアリI型症例では、⽚側上肢のしびれ、痛み、感覚障害で発症し、その 後脱⼒や筋萎縮が出現することが多い。進⾏すると症状は対側上肢にも広がり、さらに進⾏す るとホルネル症候群、発汗異常などの⾃律神経障害、横断性⿇痺を合併することがある。 脊髄空洞症の⼿術によって⽐較的改善しやすいのは、バルサルバ⼿技に伴う頚部痛や後頭部痛 である。⼀⽅、四肢のしびれや痛みは改善しないこともあり、筋萎縮は改善しにくい。 治療:[ID0701][ID0014] 保存療法: 基本的には保存療法は⾏わないが、症状が軽度で⾮進⾏性の患者では経過観察のみでよ い。症状が悪化しない患者も少なくなく、空洞の⾃然縮⼩例も報告されている。定期的に 神経症状とMRIをチェックする。 ⼿術療法: 原因・病態によってさまざまな⼿術⽅法がある。代表的なものはキアリI型奇形に伴う脊髄 空洞症に対する⼤孔減圧術である。 専⾨医相談のタイミング:[ID0020] MRIで明らかに空洞を認め、⼿術を要する可能性があると判断された場合には、整形外科、脳 外科に紹介する。また、側弯症例では整形外科に紹介する。 臨床のポイント: ⾮進⾏性の⼿指の筋萎縮と知覚解離を認める例では、頚部の脊髄空洞症を想起する。 MRIで偶然に発⾒されることもある。 評価・治療の進め⽅ ※選定されている評価・治療は⼀例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。 ■診断、症状治療例 ほとんどすべての患者で、単純X線(脊椎)、MRIを⾏う。MRIが施⾏不能な例では、脊髄造影と CTを⾏う。症状が⾮進⾏性で軽度な例では、経過観察のみとする。本疾患に起因するしびれや痛 みの保存治療に関するエビデンスはないが、対症療法としての薬物療法などは試みてもよいかも しれない。 ○ 診断には1)と2)は必須である。疼痛やしびれに対しては3)が有効なことがある。 1)単純X線(頚椎4⽅向、全脊柱2⽅向)

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開⽰: 平野徹:特に申告事項無し 監修:中村利孝:特に申告事項無し 最終更新⽇ : 2016年5⽉23⽇ <<ページ末尾:#searchDetails4.aspx?DiseaseID=1981>> 薬剤情報を⾒る 2)MRI(神経障害から疑われる脊椎の部位) [ID0501] 3)リリカカプセル[25mg] 2カプセル 分2 1週間 [脊髄空洞症は適⽤外/他適⽤⽤量内/㊜ 神経障害性疼痛](編集部注:想定する適⽤病名「脊髄空洞症」/2015年11⽉) ■⼿術 症状が⽇常⽣活に影響する例、進⾏性の例、⼿術を要する側弯例などでは、空洞症に対する⼿術 を考慮する。術式は病態に応じた⼿術を選択する。 ○ ⼿術予定例では以下の項⽬の検査はすべて必須である。 1)CBC 2)凝固能(PT, APTT) 3)⼀般肝機能(AST, ALT, γ-GTP) 4)⼀般腎機能(BUN, Cr) 5)Glu(⾎清) 6)感染症(梅毒RPR定性, HBs抗体[PA], HCV抗体[CLEIA]) 7)胸部単純X線 8)⼼電図 9)脊椎CT 追加情報ページへのリンク 脊髄空洞症に関する詳細情報 脊髄空洞症に関する評価・治療例(詳細) (1件) 初診時、フォローアップ時 脊髄空洞症に関するエビデンス・解説 (7件) 脊髄空洞症に関する画像 (14件) ※薬剤中分類、⽤法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独⾃に作成した薬剤情報であり、  著者により作成された情報ではありません。  尚、⽤法は添付⽂書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。 ※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載⽇時にレセプトチェッ クソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適⽤の査定において保険適⽤及び保険 適⽤外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、⾎液製剤、全⾝⿇酔薬、抗癌剤等の薬 剤は保険適⽤の記載の⼀部を割愛させていただいています。 (詳細はこちらを参照)

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脊髄空洞症

平野徹 新潟⼤学医⻭学総合病院 整形外科

■詳細情報

#1981

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態) [ID0001] 脊髄空洞症は、脊髄内に空洞(syrinx)が形成され、多彩な神経症状、全⾝症状を呈する疾患 であり、種々の原因で発症するが、共通の病態は髄液の循環障害である。 原因として最も多いのは①キアリ I型奇形であり、約半数を占める。[ID0601] それ以外には②脊髄損傷後、③髄膜炎、頭蓋内出⾎や脊髄レベルでの出⾎、脊髄⼿術などに続 発する癒着性クモ膜炎([ID0602])、④髄内腫瘍([ID0603])、⑤キアリII型奇形、などが ある。 代表的な症状としては、上下肢のしびれや疼痛および筋⼒低下(頚髄レベルの空洞の場合には 上肢が優位)、⼩脳・下位脳神経症状、頭痛、⾃律神経障害、側弯症などがある。 有病率はわが国では2⼈/10万⼈以上と推定される [1]。

脊髄空洞症は、指定難病であり、⼀部(modified Rankin Scale、⾷事・栄養、呼吸のそれぞ れの評価スケールを⽤いて、いずれかが3以上)では、申請し認定されると保険料の⾃⼰負担 分の⼀部が公費負担として助成される。([[https://clinicalsup.jp/jpoc/doc/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000085344.pdf 平成27年7⽉施⾏]]) [[難病法に基づく医療費助成制度]] 問診・診察のポイント [ID0002] 問診: 現在の症状、発症時期、初発からこれまでの症状の推移を確認する。 成⼈例での初発症状は⽚側上肢の痛みやしびれなどの感覚障害であることが多い。バルサルバ (Valsalva)⼿技に準ずるようないきみ動作に伴う後頭部痛、頚部痛も特徴的な症状である。 発症のリスクを確認する。 脊髄髄膜瘤(キアリII型)、脊髄損傷、癒着性クモ膜炎の原因となり得る疾患の既往(髄 膜炎、頭部外傷、クモ膜下出⾎、脊椎・脊髄⼿術など)、難産あるいは分娩時外傷の既往 診察: 感覚障害や疼痛の領域の把握(特に解離性感覚障害の有無に注意する必要があり、触⾓のみで なく温痛覚、深部感覚など、複数の感覚の評価が重要である)。 脊髄空洞症における感覚障害としては宙吊り型の解離性感覚障害が有名だが([ID0604])、 これを⽰す典型症例は少ない。 筋⼒低下や筋萎縮の有無と部位。 反射の低下や亢進の有無と部位(腹⽪反射の異常は脊髄空洞症による側弯症例ではよくみられ るため、必ず⾏う)。 側弯症の有無、程度、部位。[ID0605] ホルネル症候群やシャルコー関節を呈する症例がある。

診断⽅針

0:想起 [ID0010] 成⼈例では、神経症状のあるリスク症例、⽚側または両側上肢の解離性感覚障害のある症例で は脊髄空洞症を想起する。 ⼩児では側弯症例、特に⾮典型的な弯曲(左凸の胸椎側弯例)([ID0605])を持つ例や腹壁 反射に左右差がある症例でキアリ I型奇形に伴う脊髄空洞症を想起する。 患者の訴え⾔葉:「くしゃみや咳をしたときに⾸に響く、後頭部に響く」 1:診断 [ID0011] ⼩児では側弯(特に⾮典型的な弯曲例)、成⼈ではリスク例や上肢しびれ、痛み、解離性感覚 障害などで疾患を想起するが、症状のみから脊髄空洞症を診断することはできない。 診断には画像検査が必須であり、X線では頸椎側⾯像で脊柱管前後径が拡⼤している例では空 洞症が疑われる。 確定診断にはMRIが最も適する。MRI T1強調画像にて、髄液と同様の低信号を有する脊髄内

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占拠性病変が上下数髄節以上にわたり存在することをもって、脊髄空洞症と診断する。最多で あるキアリI型奇形の画像診断上の定義は、⼩脳扁桃が⼤後頭孔より3mm以上下垂し、原則と して⼩脳扁桃の変形(先端が楔状になっている)を⽣じているもの、とされている。 ([ID0601][ID0604])延髄の下垂を伴ってもよい。 MRIが施⾏できない例では、⽔溶性造影剤によるCTミエログラフィーによって空洞を確認でき る。通常、造影後4時間で空洞内への造影剤流⼊がみられ、空洞症の診断が可能であるが、症 例によっては12〜24時間後のCT撮影を要することもある。 2:疾患の除外 [ID0012] MRIやCTミエログラフィーによって空洞の所⾒がなければ、脊髄空洞症は除外される。

治療⽅針

3:原因の評価と加療 [ID0025] ポイント: 原因として最も多いのは①キアリⅠ型奇形であり、約半数を占める。[ID0601] それ以外には②脊髄損傷後、③髄膜炎、頭蓋内出⾎や脊髄レベルでの出⾎、脊髄⼿術などに続 発する癒着性クモ膜炎([ID0602])、④髄内腫瘍([ID0603])、⑤キアリⅡ型奇形、などが ある。 キアリⅠ型奇形の診断と治療: ポイント: 脊髄空洞症の原因として最多である。 空洞が頚髄〜胸髄レベルに存在することが多いため、上肢のしびれ、痛みなどが初発症状 として多い。しかし、空洞が延髄にも及ぶと脳神経症状も出現し得る。 ⼩児では側弯症が唯⼀の症状で、キアリⅠ型奇形の発⾒契機となることが多い。 症状では進⾏性のものが多いが⾃然改善する例もあり、軽症例では経過観察も重要であ る。 診断: 神経学的所⾒として、教科書的には宙吊り型の解離性感覚障害(温痛覚が障害されるが、 触覚や位置覚は保たれる)が有名であるが、典型例は少ない。頭痛、頚部痛などの局所の 症状も重要な所⾒である。 X線は頭蓋頚椎移⾏部の先天奇形、脊柱管の拡⼤、側弯症、などの評価に重要である。 MRIは最も重要な画像検査であり、⼩脳扁桃の下垂と空洞の存在が確定診断となる。 治療: 症状が軽度で明らかな進⾏を認めない例では、疼痛はしびれに対する保存治療(薬物治 療)や経過観察を選択する。 症状が重篤な例、または進⾏している例では⼿術を考慮する。 ⼿術は⼤孔減圧術が選択されることが多いが、空洞-クモ膜下腔シャントを施⾏する施設 もある。他の先天奇形の合併例では後頭頚椎固定の併⽤を考慮すべき例がある。 予後: 脊髄空洞症の原因疾患の中では、適切な治療によって最も良好な予後が期待できる。 空洞の縮⼩は80%以上の症例で得られるとの報告が多く、空洞の縮⼩が達成されれば 90%以上の症例で神経症状の悪化が停⽌し、80%以上の症例で何らかの改善が期待でき るとされている[2]。 脊髄損傷後の診断と治療: ポイント: 損傷部での髄内嚢胞形成に引き続き⽣じる、⾼度なクモ膜癒着による髄液還流障害が原因 と考えられている。症候性の脊髄損傷後空洞症の発⽣率は0.5〜4.5%とされており、完全 ⿇痺における発⽣率は不全⿇痺の2倍に増加する[8]。 発症時期は受傷後2カ⽉〜30年と幅広い。 進⾏性の場合、治療の基本は⼿術だが、さまざまな術式が提唱されている。 診断: 脊髄損傷による初期の神経障害よりも上位レベルに疼痛やしびれ(本症に伴う空洞は、ま ず脊髄後⾓部に発⽣するとされている)が出現した際に疑う。 MRIで損傷レベルより上位に広がる空洞像を呈することで診断できるが、経時的な変化が 重要である。 治療:

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頚髄損傷後の空洞による神経症状の悪化は、障害脊髄レベルがわずかに上昇してもADL障 害が⼤きく悪化することがあるため、より積極的な治療が必要となる。 治療の原則は⼿術である。 空洞が明らかで、運動障害が進⾏性である場合には⼿術が考慮されてよい。しかし、知覚 障害や疼痛のみで運動障害を認めない場合の⼿術適応に関しては議論が多い。 空洞が⼤きく、脊髄が菲薄化した部位に正常なクモ膜下腔が存在すれば、空洞-クモ膜下 腔シャントが適応可能だが、再発が多いことも報告されている。⼀⽅、正常なクモ膜下腔 がなければ、クモ膜下腔-クモ膜下腔バイパスが選択されてよい。 癒着剝離と硬膜形成により良好な成績が得られたとの報告もあるが、再癒着の可能性が⾼ いことが危惧される。 上記⼿術で改善が得られない場合には、空洞-胸腔または空洞-腹腔シャントが選択され る。⾃験例では短期的には有⽤であることが確認されているが、シャントチューブの距離 が⻑いためチューブ不全が⽣じやすい可能性がある。 予後: 脊髄損傷後脊髄空洞症は、キアリ奇形によるものに⽐べ改善が劣るとの報告が多い。 現時点では⼿術⽅法による差はないとされている。改善する割合は報告により異なる(30 〜70%)が、経過が⻑くなるほど、再癒着やシャントトラブルのため成績が悪化するとの 報告がある[8]。 髄膜炎・頭蓋内出⾎や脊髄レベルでの出⾎・脊髄⼿術などに続発する癒着性クモ膜炎の診断と治 療: ポイント: 髄膜炎、頭蓋内出⾎や脊髄レベルの出⾎、脊髄⼿術などはいずれも脊髄癒着性クモ膜炎の 誘因となり得る。 クモ膜の癒着に基づく髄液還流障害が基盤となって発症する。 症状は徐々に進⾏する脊髄障害である。 症状進⾏例や重篤例では⼿術が基本となるが、さまざまな術式が提唱されていることは本 病態の難治性を⽰している。 診断: 症状は空洞レベル以下の脊髄障害で、進⾏する例であっても⼀般的には⻑期経過での進⾏ が多い。⼀⽅、進⾏しない例もあることから、経過を詳細に観察することが重要であるこ とは他の空洞症と同様である。 原因が明らかでない場合もあり、既往歴の聴取は重要である。 X線で過去の⼿術部位や油性造影剤の使⽤などが判明することもある。 確定診断はMRIにより、空洞および癒着性クモ膜炎の範囲や程度がある程度把握可能であ る。 詳細な診断のために脊髄造影や造影後CTも有⽤だが、検査後の神経症状悪化の可能性が否 定できない。 治療: 症状が軽度で⾮進⾏性であれば、症状に合わせた薬物治療や経過観察のみを⾏う。 症状が進⾏性であれば、⼿術以外によい⽅法がない。 術式は、癒着剝離+クモ膜下腔形成、クモ膜下腔-クモ膜下腔バイパス、空洞-腹腔・胸 腔シャント、などの報告がある。癒着剝離+クモ膜下腔形成では他の⽅法に⽐べて良好な 成績が報告されているが、クモ膜炎による癒着が広範な例では、成績が劣るとされてい る。 予後: 癒着剝離+クモ膜下腔形成によって、癒着の範囲が限定されている場合では60%程度の症 例に空洞の縮⼩と症状の改善が得られるが、癒着の範囲が広範な例では空洞の縮⼩がみら れたのは50%程度、症状が改善したのは40%程度で、20%の症例では症状が悪化したと 報告されており、難治である[9]。 髄内腫瘍の診断と治療: ポイント: 髄内腫瘍は脊髄腫瘍全体の5〜15%とされている。 空洞を伴いやすい髄内腫瘍の代表は上⾐腫と⾎管芽細胞腫である。 腫瘍を摘出し空洞壁を開放すれば縮⼩する。空洞に対する特別な処置は不要である。 診断: 初発症状としては疼痛の頻度が⾼いが、それに引き続き脊髄障害が⽣じる。 腫瘍による脊髄障害により症状と空洞による脊髄障害による症状の両⽅が出現し得るが、

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前者がほとんどで、空洞による症状はまれである。 画像診断はMRIが基本である。⾎管芽細胞腫では腫瘍が⼩さくても空洞が⼤きいことがあ り、造影MRIで初めてその存在が確認できることがある点に留意すべきである。 治療: 髄内腫瘍のほとんどは放射線感受性が低く、有効な化学療法も確⽴されていない。よって 外科的な摘出が基本となる。 腫瘍を摘出し空洞壁を開放すれば空洞は縮⼩するため、空洞に対する特別な処置は不要で ある。 予後: 髄内腫瘍の組織型と腫瘍の摘出の程度(どれだけ摘出できたか)により予後が異なる。空 洞の有無や⼤きさは予後に関連しない。 星細胞腫以外は全摘できるものも多く、全摘できた場合には⽣命予後はよい。しかし、脊 髄に対する操作が必須となるため、術後に神経症状が悪化する可能性がある。また、しび れや疼痛などの残存も少なくない。 4:原因疾患・合併疾患 [ID0023] 下肢⿇痺が⾼度な症例では深部静脈⾎栓症の合併に注意する。 5:重症度・予後 [ID0013] 症状としては、成⼈のキアリI型症例では、⽚側上肢のしびれ、痛み、感覚障害で発症し、その 後脱⼒や筋萎縮が出現することが多い。[ID0604] 進⾏すると症状は対側上肢にも広がり、さらに進⾏するとホルネル症候群、発汗異常などの⾃ 律神経障害を合併することがある。 最終的には横断性⿇痺となり、下肢の神経症状や膀胱直腸障害を引き起こす可能性がある。 予後を規定する因⼦として、①病態、②神経障害の重症度、③罹病期間、④⼿術年齢などが報 告されている[2]。 脊髄空洞症の⼿術によって⽐較的改善しやすいのは、バルサルバ⼿技に伴う頚部痛や後頭部痛 である。⼀⽅四肢のしびれや痛みは改善しないこともあり、筋萎縮は改善しにくい。 キアリ I型奇形に伴う脊髄空洞症では、⼿術により多くの症例で空洞の縮⼩や症状の改善が期 待できる[2]。 外傷後や癒着性クモ膜炎に伴う脊髄空洞症では⼿術を施⾏しても再発が多く、治療成績はキア リ I型奇形に⽐べて劣る。 6:応急処置 [ID0024] 脊髄空洞症で応急処置が必要となることはきわめてまれである。しかしキアリI型奇形に伴う脊 髄空洞症例で頭痛の悪化や急速な⿇痺の進⾏で緊急⼿術が必要となった例が報告されている。 外傷に伴って増悪する例もあり、注意が必要との報告がある[7]。 7:治療 [ID0014] 無症状例や症状があっても⽇常⽣活に⽀障がないほど軽度な症例では経過観察のみでよい [3]。 症状が進⾏性で、⽇常⽣活に⽀障がある場合には⼿術治療を選択する。 成⼈例で、中等度以上の症状を有する例では⼀般的には⼿術が推奨されるが、年齢、全⾝状 態、患者の希望も考慮し、⼿術を希望しない場合には薬物療法も選択の余地がある。脊髄空洞 症による神経障害は中枢神経障害性の疼痛やしびれを呈するが、プレガバリンや弱オピオイド の効果が期待できる可能性がある。 キアリI型奇形に伴う⼩児例では⾃然に空洞が縮⼩する例も少なくないため、⼿術適応に関して は成⼈以上に慎重であるべきである[4]。側弯症が唯⼀の症状である例が少なくなく、その場 合⽇常⽣活には不便を感じていないことがほとんどである。Cobb⾓が20°〜30°程度であれば 装具療法を⾏いつつ経過を観察し、進⾏性であれば側弯が40°を超えない段階で、空洞症に対 する⼿術を考慮する[5]。なお、50°以上の⼿術適応例では矯正操作による脊髄障害の危険性を 低減させるために、側弯症⼿術に先だってキアリ I型奇形に対する⼿術を⾏っておいたほうが よい。 8:保存的治療 [ID0015] 空洞症に対する保存的治療は原則ないが、年齢や全⾝状態から⼿術ができない、または⼿術を 希望しない症例に関しては、薬物療法を試みてもよいかもしれない。しかし有効性は確⽴され ていない。 薬物治療:

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痛みやしびれに対して:リリカカプセル (25mg) 2カプセル分2朝⼣⾷後より開始し、効 果と副作⽤をみながら適宜増量する。 9:⼿術適応・⼿術の選択 [ID0016] ⼿術適応:疼痛、しびれ、筋萎縮などで⽇常⽣活に不⾃由を感じる例、進⾏性の側弯症例では ⼿術を選択する。 ⼿術の種類:病態により⼿術⽅法は異なる。術式の選択については下記リンク参照

⼤孔減圧術(foramen magnum decompression、FMD)特徴:キアリI型奇形などで、 ⼤孔での髄液の循環状態を改善させるために後頭⾻と上位頚椎の後⽅要素の切除、各種硬 膜の処置を⾏う⼿術。クモ膜炎がある場合には適応とならない。[ID0505] 空洞-クモ膜下腔シャント(S-S shunt) 特徴:脊髄を切開し空洞と癒着の少ないクモ膜下腔 の間をチューブで橋渡しをする⼿術。クモ膜下腔の癒着が強い場合には適応とならない。 癒着剥離+クモ膜下形成術 特徴:クモ膜炎症例で癒着を剥離したうえで、クモ膜下腔を形成 して空間を確保する⽅法。再癒着が問題となる可能性がある。 クモ膜下-クモ膜下バイパス 特徴:癒着したクモ膜下腔をまたいで、その頭尾側の正常クモ膜 下腔どうしをチューブで橋渡しする⽅法。チューブ抜去や移動などが問題となる可能性があ る。[ID0506] 空洞-胸腔(腹腔)シャント 特徴:空洞と胸腔(腹腔)の間をチューブで橋渡しする⽅法。特 に胸腔の場合には陰圧がかかるので空洞の縮⼩が短期間に得られやすい。[ID0507] 10:フォローアップ⽅針 [ID0017] 保存療法時や経過観察時には、症状の悪化、側弯症の進⾏などに注意する。また、適宜MRIを ⾏い空洞の⼤きさに変化がないかを確認する。 ⼿術後は術前の神経障害の重症度に応じたリハビリを⾏う。特に神経障害が重篤な四肢⿇痺例 や対⿇痺例では深部静脈⾎栓症のリスクが⾼く、注意を要する。 神経症状の軽度な例では、術後の特別なリハビリは不要である。 11:難治症例の治療 [ID0022]

キアリ I型奇形では通常は⼤孔減圧術 (foramen magnum decompression、FMD)を選択す るが、ほかの先天異常を合併する例、空洞が⼤きな症例、などは成績が劣る可能性があり、適 宜S-S shuntや後頭頚椎固定術の併⽤を考慮する。 癒着性クモ膜炎における脊髄空洞症の治療は難治になりやすい。癒着剝離とクモ膜下腔形成術 で良好な成績が得られるとする報告もあるが[6]、癒着が広範囲な場合は施⾏が困難なことも 少なくないと思われる。S-S bypassや空洞-腹腔または空洞-胸腔シャントも考慮すべき症例が ある。 空洞症の⼿術治療成績は必ずしも良好なものばかりではない。残存しやすい症状として、知覚 障害、筋⼒低下や筋萎縮などがある。特に⾼度な知覚障害や筋⼒低下は難治であり、治療の⽬ 標が症状の悪化予防にならざるを得ない場合があることを⼗分術前に説明しておく必要があ る。 12:リハビリテーションプロトコール [ID0018] 神経障害の軽い例ではリハビリは必要ない。 重症例では脊髄不全損傷に準じたリハビリを⾏う。 13:治療の中⽌ [ID0019] 神経症状が消失し、MRIで空洞の縮⼩が確認できれば治療は終了となる。 しかし、特に外傷例や癒着性クモ膜炎例などでは再発が少なくないことから、⻑期にわたる経 過観察が望ましい。患者にもそのことを⼗分に伝えておく必要がある。 14:⼊院適応 [ID0021] ⼿術症例では⼊院が必要である。 ⼩児で鎮静下でMRIを施⾏する場合も、⼊院することがある MRIが施⾏できず、脊髄造影や造影後CTで評価する場合にも⼊院が必要である。 15:専⾨医相談のタイミング [ID0020]

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神経症状のみで空洞症を疑うことは難しい。MRIのない施設では、神経症状が存在する患者に 関しては、空洞症を含めた神経疾患の可能性を念頭に置き、MRIが施⾏可能な病院の整形外 科、脳外科、神経内科に紹介する。 MRIで明らかに空洞を認め、⼿術を要する可能性があると判断された場合には、整形外科、脳 外科に紹介する。 側弯症例では整形外科に紹介する。 イメージ [ID0601] キアリI型奇形による脊髄空洞症 ⼩脳扁桃の下垂と先端の楔状化(⽩⽮印)、脊髄内の空洞形成(⿊⽮印)を認める 1: 著者提供 [ID0602] 癒着性クモ膜炎に伴う脊髄空洞症 脊髄腫瘍摘出術後に⾎腫を⽣じ、再⼿術を施⾏したが、術後癒着性クモ膜炎が⽣じ、脊髄空洞(⽩ ⽮印)が形成された。 1: 著者提供 [ID0603] 脊髄腫瘍(円錐部⾎管芽細胞腫)に伴う脊髄空洞症

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腫瘍に伴う脊髄空洞もしばしばみられる。空洞を形成する代表的な腫瘍として⾎管芽細胞腫があ る。本例では、腫瘍は⾮常に⼩さいが、⼤きな空洞が形成されている。空洞のなかに⼩さな低信号 域を認めるが、これが腫瘍である。 1: 著者提供 [ID0604] キアリI型奇形に伴う脊髄空洞症における解離性感覚障害の発⽣機序 脊髄空洞症では脊髄中⼼に空洞が形成されることが多い(キアリI型奇形では中⼼管が拡⼤するわ けではないことに注意)。この場合脊髄灰⽩質にて交差する温痛覚の⼆次ニューロンは障害される が、深部感覚や表在知覚の伝導路は障害されないため、解離性感覚障害を呈すると説明される。し かし、図のような典型的な宙吊り型の解離性感覚障害を呈する例は少ない。 1: 著者提供 [ID0605] キアリI型奇形と脊髄空洞症による⾮典型的側弯(左凸胸椎側弯)

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症状から鑑別すべき疾患 脳幹部・⾼位脊髄腫瘍 環軸椎脱⾅ 頚椎椎間板ヘルニア 加齢に伴う変形性脊椎症や靱帯⾻化症による脊髄症および神経根症 X線(全脊柱PA像)で左凸胸椎側弯を認めた場合には、キアリ奇形を疑う必要がある。 1: 著者提供 ページ上部に戻る アルゴリズム [ID0701] 脊髄空洞症の診断・治療のアルゴリズム ⼿術術式の選択は、主に病変の部位(脊髄病変か後頭蓋窩病変か)とクモ膜炎の有無、によって決定さ れるが、クモ膜炎や癒着の範囲、初回⼿術か再⼿術例か、などによっても変わってくる。症例に応じた 適切な術式選択が望まれる。 1: 磯島晃、阿部俊昭: 脊髄空洞症の分類と治療法. 脊椎脊髄ジャーナル20: 1128-29, 2007を改変 ページ上部に戻る 鑑別疾患

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運動ニューロン疾患 平⼭病 特発性側弯症 画像所⾒から鑑別すべき疾患 脊髄腫瘍 脊髄動静脈奇形 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. ページ上部に戻る エビデンス/解説 典型的症例集:症例1: 詳しく⾒る 典型的症例集:症例2: 詳しく⾒る 典型的症例集:症例3: 詳しく⾒る 典型的症例集:症例4: 詳しく⾒る ⼤孔減圧術の⼿術⼿技 詳しく⾒る クモ膜下腔-クモ膜下腔バイパスの⼿術⼿技 詳しく⾒る 空洞-胸腔シャントの⼿術⼿技 詳しく⾒る ページ上部に戻る

1: Nationwide survey on the epidemiology of syringomyelia in Japan. PMID 21943925 J Neurol Sci. 2012 Feb 15;313(1-2):147-52. doi: 10.1016・・・

2: Long-term results after posterior fossa decompression in syringomyelia with adult Chiari Type I malformation.

PMID 22938552 J Neurosurg Spine. 2012 Nov;17(5):381-7. doi: 10.3171/2・・・

3: Natural history of Chiari malformation Type I following decision for conservative treatment. PMID 21806365 J Neurosurg Pediatr. 2011 Aug;8(2):214-21. doi: 10.3171・・・

4: Spontaneous resolution of Chiari I malformation and syringomyelia: case report and review of the literature.

PMID 11270558 Neurosurgery. 2001 Mar;48(3):664-7.

5: Neurosurgical management of spinal dysraphism and neurogenic scoliosis. PMID 19602995 Spine (Phila Pa 1976). 2009 Aug 1;34(17):1775-82. doi: ・・・

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最終更新⽇ : 2016年5⽉23⽇

<<ページ末尾:#actionDetails4.aspx?DiseaseID=1981>>

6: Surgical management of syringomyelia associated with spinal adhesive arachnoiditis. PMID 11148076 J Clin Neurosci. 2001 Jan;8(1):40-2. doi: 10.1054/jocn.・・・

7: Acute deterioration of a Chiari I malformation: an uncommon neurosurgical emergency. PMID 21472461 Childs Nerv Syst. 2011 Jun;27(6):857-60. doi: 10.1007/s・・・

8: Surgical management of post-traumatic syringomyelia.

PMID 20881468 Spine (Phila Pa 1976). 2010 Oct 1;35(21 Suppl):S245-58.・・・

9: Treatment of syringomyelia related to nontraumatic arachnoid pathologies of the spinal canal.

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脊髄空洞症

平野徹 新潟⼤学医⻭学総合病院 整形外科

■評価・治療例(詳細)

#1981 初診時、フォローアップ時 対象患者・コメントを隠す/表⽰する ※下記は、⼀部を除き、執筆者が過去に診た20⼈の患者で2⼈以上に⾏った事を羅列して頂いています。実際の1⼈の患者に ⾏った内容は、下記の⼀部分であることを了解下さい。 評価⽅針 確定診断のための検査を⾏う(初診時) ⼿術治療のための検査を⾏う(紹介初診の⼿術対象患者) 症状の変化を観察し、空洞の縮⼩、増⼤などを定期的に観察する(⼿術後フォローアップ患 者) バイタルサイン 呼吸状態、酸素飽和濃度、⾎圧、脈拍数 対象: 急速に進⾏する⿇痺例・術直後の患者(推奨度2) 検体検査 CBC 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) 凝固能(PT, APTT) 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) ⼀般肝機能(AST, ALT, γ-GTP) 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) ⼀般腎機能(BUN, Cr) 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) Glu(⾎清) 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) 感染症(梅毒RPR定性, HBs抗体[PA], HCV抗体[CLEIA]) 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) ⽣理・画像検査 単純X線(頚椎4⽅向、全脊柱2⽅向) 対象: 脊髄空洞症を疑う患者(推奨度2) MRI(神経障害から疑われる脊椎の部位) [ID0501] 対象: 脊髄空洞症を疑う患者(推奨度2) 脊椎CT 対象: ⾻の処置の際のさまざまな情報が必要な場合 コメント: ⼩児では被ばくに注意する 胸部X線 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) ⼼電図 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) 呼吸機能検査

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薬剤情報を⾒る 薬剤情報を⾒る 薬剤情報を⾒る 薬剤情報を⾒る 対象: ⼿術を検討する患者(推奨度2) 治療⽅針 症状のない場合、または症状が軽く⾮進⾏性である場合は、定期的な経過観察を⾏う。 中等度の症状があるが⾮進⾏性で、年齢や合併症から⼿術を希望しない場合には、投薬を試 みる。 症状がADL症状を引き起こしている場合、進⾏性の場合には、⼿術療法を選択する。 治 療 神経性疼痛緩和薬 リリカカプセル[25mg] 2カプセル 分2 1週間 [脊髄空洞症は適⽤外/他適⽤⽤量内/㊜神経障害性疼痛] (編集部注:本ページで想定する適⽤病名「脊髄空洞症」/2015年11⽉) 対象: ⾮⼿術例で痛みやしびれを有する患者 ⼿術後も痛みやしびれが残存する患者 コメント: 症状に合わせて適宜増減 弱オピオイド(⾮⿇薬) トラマールOD錠[25mg]1錠 分1 1週間[脊髄空洞症は適⽤外/他適⽤⽤量内/㊜慢性疼痛] 対象: ⾮⼿術例で痛みやしびれを有する患者 ⼿術後も痛みやしびれが残存する患者 コメント: 症状に合わせて適宜増減 抗菌薬(セフェム系 第1世代) セファメジンα点滴⽤キット[1g1キット] 30分かけて投与 ⼿術⽇:1回⽬は執⼑30〜60分前。その後3〜4 時間ごとに追加。その後、術後第1⽇・第2⽇:朝⼣2回 [脊髄空洞症は適⽤外/他適⽤⽤量内/㊜⽪膚感染 症] 対象: ⼿術を⾏う患者 コメント: 症状が特に重篤と考えられる場合は1⽇5gまで投与可能。なお、Medical deviceを挿⼊しない清潔創 の⼿術の場合は、術後の抗菌薬投与は省略できる。また、発症4時間未満の穿通性外傷(事故などに よる新鮮な開放創)の場合は術後1⽇のみの投与でもよい。 NSAIDs(プロピオン酸系) ロキソニン錠[60mg] 3錠 分3 1週間 [脊髄空洞症は適⽤外/他適⽤⽤量内/㊜変形性関節症] 対象: 術後創部痛を認める場合(短期間のみ使⽤) 緊急対応 緊急的な⼿術(⼤孔減圧術など) [ID0505] 対象: 急速に進⾏する⿇痺例 コメント: きわめてまれ 合併症のコントロール 糖尿病患者の⾎糖値 対象: ⼿術を検討する患者 ⿇痺患者の深部静脈⾎栓症 対象: ⼿術を検討する患者 再診・⼊院の指⽰ 1カ⽉後 対象: 症状が進⾏性かの判定 推奨度1:明らかに利益が害やコストよりも上回る。必ず⾏う必要があり得る⾏為。 推奨度2:害、コストよりも、利益が上回る可能性が⾼い。半数以上の状況で⾏われ得る⾏為。 推奨度3:利益よりも、害、コストが、上回る可能性が⾼い。半数以下の状況で⾏われ得る⾏為。

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最終更新⽇ : 2016年5⽉23⽇ <<ページ末尾:#situationDetails6.aspx?DiseaseID=1981&situationno=1>> 推奨度4:明らかに利益が害やコストよりも下回る。医学的に原則禁忌といわれている⾏為。 (詳細はこちら参照) ※薬剤中分類、⽤法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独⾃に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。 尚、⽤法は添付⽂書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。 ※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載⽇時にレセプトチェッ クソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適⽤の査定において保険適⽤及び保険 適⽤外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、⾎液製剤、全⾝⿇酔薬、抗癌剤等の薬 剤は保険適⽤の記載の⼀部を割愛させていただいています。 (詳細はこちらを参照)

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脊髄空洞症

平野徹 新潟⼤学医⻭学総合病院 整形外科

■エビデンス・解説

#1981 典型的症例集:症例1: 17歳 男性 主訴:頭痛 1. 現病歴 数年間から頭痛があり、特にくしゃみの際に後頭部痛を感じていた。徐々に増悪し、最近両⼿のしびれも出現し たため初診した。 2. 家族歴・既往歴 特記事項なし 3. 初診時所⾒ Valsalva⼿技で頭痛が誘発された。上肢の温痛覚鈍⿇をわずかに認めた。上肢の筋伸張反射は正常、下肢は軽度 亢進していた。腹壁反射は両側で消失していた。 4. 主たる臨床検査結果とその解釈 ⾎液検査は特記事項なし。特徴的な頭痛、上肢の知覚鈍⿇より頚髄病変や頭蓋内病変を想起した。 5. X線像その他画像の解釈と診断結果 X線では頚椎に明らかな変性や不安定性は認めなかったが、脊柱管前後径が拡⼤していた。MRIでは⼩脳扁桃の下 垂と頚髄から上位胸髄にかけて⼤きな空洞形成を認めた(a)。 6. 上記から推定できる病態とその根拠 症状、神経所⾒とX線、MRIの画像所⾒に⽭盾はなく、キアリI型奇形に伴う脊髄空洞症と診断した。 7)治療計画とinformed consent 画像所⾒では明らかなクモ膜下腔の癒着や頭蓋頚椎移⾏部の奇形などはなく、⼤孔減圧術の適応と考えた。頭痛 はキアリI型奇形に由来する可能性が⾼いが、それ以外の原因不明の頭痛もあり、その場合症状の改善が得られに くいことがあること、⼿術合併症として神経障害、⾎管損傷、感染、⾎腫、頚椎後弯変形、癒着性クモ膜炎、な どを説明した。 8)実施した⼿術的治療 ⼤後頭⾻隆起から軸椎に⾄る⽪切を置き、後頭⾻から軸椎までを展開した。軸椎の展開においては、棘突起に付 着する頚半棘筋を損傷しないよう注意した。後頭⾻と環椎後⼸を切除し、硬膜の浅層を縦に切開し、左右に反転 したところ、内部に拍動する⼩脳扁桃を認めた。エコーで⼩脳扁桃と深層硬膜の間にスペースがあることを確認 し、閉創した。 9)実施したリハビリテーション ⼿術当⽇より下肢の⾃動運動を積極的に⾏うことを指⽰した(深部静脈⾎栓症予防)。 それ以外には特別なリハビリテーションは⾏わなかった。 10)治療経過と成績 ⼿術後しばらくは創部痛を訴えたが、数週間で消失した。くしゃみの際の頭痛は術後早期から消失した。しびれ はあるものの苦にならない程度となった。合併症はなかった。術後半年で脊髄空洞は縮⼩していた(b)。

1: Foramen magnum decompression with removal of the outer layer of the dura as treatment for syringomyelia occurring with Chiari I malformation.

PMID 8264881 Neurosurgery. 1993 Nov;33(5):845-9; discussion 849-50.

[ID0661]

典型的症例集:症例1:

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a: 術前   b: 術後6カ⽉ 1: 著者提供 典型的症例集:症例2: 4歳 ⼥児 主訴:脊柱変形 1. 現病歴 幼稚園で肋⾻隆起を指摘されたため、近医整形外科を受診し、X線で側弯症と診断されたが、徐々に進⾏するた め当科を紹介された。 2. 家族歴・既往歴 特記事項なし 3. 初診時所⾒ 左肋⾻隆起と肩の⾼さの左右差(左肩上がり)を認めた。⽪膚の異常所⾒はなく(神経線維腫症I型の否定)、関 節弛緩もなかった(マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群の否定)。 知覚および運動の障害はなかったが、腹⽪反射は左で右に⽐べ減弱し、下肢の筋伸⻑反射は亢進していた。病的 反射は上下肢ともに認めなかった。 4. 主たる臨床検査結果とその解釈 ⾮典型的な側弯症(左肋⾻隆起→左凸側弯)、腹⽪反射異常より、脊髄空洞症に伴う側弯症を想起した。 5. X線像その他画像の解釈と診断結果 ⽴位脊柱全⻑正⾯像では第6胸椎から第1腰椎で左凸Cobb⾓44°の側弯を認めた(a)。側⾯像では、第5胸椎から 第12胸椎で後弯⾓ 41°であり、C5椎体前後径が10mmであるのに対し、脊柱管前後径は17.5mmであった。椎 ⾻の奇形や肋⾻の異常などは認めなかった。MRIでは⼩脳扁桃の脊柱管内への下垂(11mm)を認め、頚髄から 胸髄にわたる広い範囲でT1強調画像で低信号、T2強調画像で⾼信号、脳脊髄液と等信号の数珠状の領域を髄内に 認めた(c)。 6. 上記から推定できる病態とその根拠 左凸(⾮典型的)側弯とMRI所⾒より、キアリI型奇形に伴う脊髄空洞症による側弯症と診断した。 7)治療計画とinformed consent 進⾏性の側弯で、Cobb⾓がすでに40°以上であったことから、⼤孔減圧術の適応と考えた。⼿術合併症として神 経障害、⾎管損傷、感染、⾎腫、頚椎後弯変形、などを説明した。 8)実施した⼿術的治療 症例1と同様である。 9)実施したリハビリテーション 特にリハビリテーションは⾏わなかった。 10)治療経過と成績 側弯症に対しては、装具療法を⾏った。術後1年のMRIでは空洞は縮⼩していた(d)。側弯は徐々に改善して術 後4年では8°となり、装具療法を中⽌した(b)。 2: 症例 [ID0502] 2 / 7

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1: 庄司寛和、伊藤拓緯、平野徹 ほか: ⼤孔減圧術後に改善した脊髄空洞症、キアリ奇形に伴う脊柱 側弯症の1例. 新潟整外研会誌25: 29-32, 2009 [ID0662] 典型的症例集:症例2: a: 術前X線   b: 術後4年X線   c:術前MRI   d:術後半年MRI 1: 著者提供 典型的症例集:症例3: 3: 症例 [ID0503] 3 / 7

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60歳 ⼥性 主訴:歩⾏障害 1. 現病歴 5年前に下肢のしびれを⾃覚。1年前より歩⾏障害が出現した。症状が進⾏するため他院を受診。脊髄腫瘍を疑わ れ、当科を紹介された。 2. 家族歴・既往歴 家族歴に特記事項はなかったが、既往歴として、頭蓋内クモ膜下出⾎、糖尿病、⾼⾎圧、⾼脂⾎症、バセドウ 病などがあった。また20歳ごろに腰椎椎間板ヘルニアの⼿術を受けていた。 3. 初診時所⾒ 上肢には、知覚、運動、反射ともに明らかな異常所⾒はなかった。歩⾏は痙性歩⾏を呈していた。臍以下のし びれと知覚鈍⿇を認め、徒⼿筋⼒テストで腸腰筋が4に低下していた。上肢の筋伸張反射に異常はなかったが、下 肢のそれは亢進していた。Babinski徴候を両側で認めた。 4. 主たる臨床検査結果とその解釈 胸髄レベルの脊髄障害と診断し、診断を特定すべく画像検査を⾏った。 5. X線像その他画像の解釈と診断結果 X線では明らかな異常は認めなかった。MRIでは胸椎レベルでクモ膜下腔の拡⼤と脊髄空洞を認めた(a)。脊髄 造影ではMRIの病変部での造影剤の通過障害と造影剤のpoolingを認め、何らかの髄液通過障害が疑われた (b)。 6. 上記から推定できる病態とその根拠 画像所⾒より癒着性クモ膜炎による脊髄空洞症と診断した。癒着性クモ膜炎の原因については特定できなかった が、20年前の腰椎⼿術かクモ膜下出⾎が関与している可能性があると考えた。 7)治療計画とinformed consent 進⾏性の脊髄障害であることから⼿術適応と判断した。癒着性クモ膜炎の範囲が⽐較的限定的であったことか ら、クモ膜下腔-クモ膜下腔バイパスを施⾏することとした。⼿術合併症として、神経障害、⾎腫、感染、バイ パスの閉塞による再発、バイパスの固定不良による迷⼊、椎⼸切除後脊柱変形、などを説明した。また本例では 歩⾏障害もあったため深部静脈⾎栓症のリスクに関しても説明した。 8)実施した⼿術的治療 癒着性クモ膜炎の部位をはさんで、頭尾側で正常なクモ膜下腔が存在すると思われる部位まで椎⼸切除を⾏い、 病変部位の頭尾の正常クモ膜下腔が存在する部位で硬膜とクモ膜を切開してチューブを挿⼊した。チューブが移 動・迷⼊しないように、挿⼊部でチューブをクモ膜と硬膜に固定した。 9)実施したリハビリテーション 術前歩⾏障害が⾼度であったため、不全対⿇痺に準じて下肢筋⼒訓練、歩⾏訓練などのリハビリテーションを ⾏った。 10)治療経過と成績 術後10⽇⽬のMRIで空洞の縮⼩が確認された(b)。下肢のしびれの改善は乏しかったが、歩⾏障害の進⾏は術 後みられなくなった。術後2年の現在、空洞の再発はないが、脊髄髄内にT2強調像で⾼信号領域を認めている (c)。 [ID0663] 典型的症例集:症例3: a:術前   b:術後1週間   c:術後2年 1: 著者提供

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典型的症例集:症例4: 52歳 男性 主訴:左肩痛、左側胸部痛 1. 現病歴 神経線維腫症I型に伴う頚髄多発砂時計腫瘍に対し、これまで3回摘出術が⾏われている。数年前から左肩痛、左 側胸部痛を訴えていた。MRIで脊髄空洞症の経時的な増⼤を認め、⼿術⽬的に⼊院した。 2. 家族歴・既往歴 家族に神経線維腫症I型のものはいなかった。内科的な合併症はなかった。 3. ⼊院時所⾒ 過去の⼿術の影響もあり、四肢の不全⿇痺を呈していた。また数年来の左肩痛、左側胸部痛を認めた。知覚は 右上肢では前腕、左上肢ではほぼ全体に表在知覚の鈍⿇を認め、下肢ではさらに強い感覚鈍⿇を認めた。筋伸張 反射は上肢ではすべて消失、下肢では亢進しておりBabinski徴候は両側で陽性であった。 4. 主たる臨床検査結果とその解釈 多数回⼿術例であり、障害脊髄レベルの詳細な特定は困難であったが、頚髄から上位胸髄レベルでの病変が疑 われた。 5. X線像その他画像の解釈と診断結果 X線では椎⼸切除後であったがアライメントの異常はなかった。MRIでは頚髄レベルで脊髄空洞を認めた (a)。 6. 上記から推定できる病態とその根拠 頚髄多発腫瘍の多数回⼿術後であり、癒着性クモ膜炎による脊髄空洞症と診断した。 7. 治療計画とinformed consent 疼痛が増悪していることから⼿術適応と判断した。癒着性クモ膜炎の範囲が⽐較的限定的であったが、空洞は 上位頚髄レベルまで存在し、硬膜周囲の癒着も⾼度であることが予想されたため、クモ膜下腔-クモ膜下腔バイ パスは困難と考え、空洞-胸腔シャントを⾏うこととした。⼿術合併症として、神経障害、⾎腫、感染、バイパス の閉塞による再発、バイパスの固定不良による迷⼊、などを説明した。また本例では下肢の⿇痺も⽐較的⾼度で あったため深部静脈⾎栓症のリスクに関しても説明した。 8. 実施した⼿術的治療  残存する椎⼸の⼀部を切除して正常硬膜を露出し、そこから硬膜とその周囲の癒着を剝離しながら硬膜を展開 した。エコーで空洞を確認し、硬膜を切開したが、多数回⼿術により脊髄と硬膜は癒着していた。菲薄化した脊 髄を切開し、シャントチューブを挿⼊し固定した。次に左側胸部に横切開を加えて肋⾻を露出し、その頭側から 壁側胸膜を切開し、胸腔内にもカテーテルを挿⼊した。空洞に挿⼊したシャントチューブと胸腔内の挿⼊したカ テーテルをステンレスコネクターを介して連結した。 9)実施したリハビリテーション 術前脊髄障害が⾼度であったため、不全四肢⿇痺に準じて上下肢筋⼒訓練などのリハビリテーションを⾏った。 10)治療経過と成績 術後1週間のMRIで空洞の縮⼩が確認された(b)。疼痛に関しては改善したが、⿇痺の程度に変化はなかった。 術後半年の現在、空洞の再発はない。 [ID0664] 典型的症例集:症例4: a:術前b:術後1週間 4: 症例 [ID0504] 4 / 7

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1: 著者提供 ⼤孔減圧術の⼿術⼿技 ⼤後頭⾻隆起から軸椎に⾄る⽪切を置き、後頭⾻から軸椎までを展開する(⼩脳の下垂の程度によって尾側の⽪ 切は適宜変える)。軸椎の展開においては、棘突起に付着する頚半棘筋を損傷しないよう注意する。環椎後⼸と 後頭⾻とをdrillやKerrison punchを⽤いて切除し(a)、硬膜の浅層を縦に切開して左右に反転し、深層硬膜下に 拍動する⼩脳扁桃を観察する(b)。エコーで⼩脳扁桃と深層硬膜の間にスペースがあることを確認し、ドレーン を留置、閉創する。もしエコーで⼩脳扁桃と深層硬膜の間にスペースがないことが確認されれば、硬膜の全層切 除と⼈⼯硬膜による硬膜再建を⾏う。 なお、本術式での硬膜の処置に関しては、施設間で異なる。我々の施設では合併症の少なさから硬膜浅層切開を 第1選択としているが、深層とともに切除して⼈⼯硬膜による再建をルーチンで⾏う施設もある。 [ID0665] ⼤孔減圧術の⼿術⼿技 a:展開し後頭⾻とC1後⼸を切除したところb:硬膜浅層を切開したところ 1: 著者提供 クモ膜下腔-クモ膜下腔バイパスの⼿術⼿技 癒着性クモ膜炎の部位を含め、その頭尾側で正常なクモ膜下腔が存在すると思われる部位まで椎⼸切除を⾏ う。エコーで病変部位の頭尾側で正常クモ膜下腔が存在する部位を確認し、硬膜およびクモ膜を切開してクモ膜 下腔に癒着がないことを確認する。そのうえで、チューブの⻑さを決定する(頭尾の硬膜切開部の距離+6cm程 度がよい、クモ膜下腔には3cm程度チューブを挿⼊するため)。頭尾の硬膜切開の間の浅層硬膜や瘢痕部を縦に 切開し、チューブを留置し固定するスペースを硬膜上に作成する。チューブが移動・迷⼊しないように、クモ膜 下腔への挿⼊部でチューブをクモ膜と硬膜にナイロンで固定する。さらに深層硬膜上に置いたチューブを切開し た浅層硬膜で被覆して縫合する。癒着防⽌や再⼿術を念頭に置き、これらの上には⼈⼯硬膜を置く。ドレーンを 留置して閉創する。 [ID0666] 5: 解説 [ID0505] 5 / 7 6: 解説 [ID0506] 6 / 7

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クモ膜下腔-クモ膜下腔バイパスの⼿術⼿技 a:椎⼸切除して正常クモ膜下腔を展開したところ b:バイパスチューブを挿⼊固定したところ 1: 著者提供 空洞-胸腔シャントの⼿術⼿技 空洞が最も⼤きく、脊髄が最も菲薄化したレベルで椎⼸切除を⾏う。エコーで空洞を確認し、硬膜とクモ膜を切 開し、脊髄を露出する。再⼿術例では脊髄と硬膜やクモ膜は癒着していることがあるので注意を要する。菲薄化 した脊髄を切開し、シャントチューブを空洞内に2〜3cm程度挿⼊し、ナイロンを⽤いて軟膜と硬膜に固定し (a)、切開したクモ膜と硬膜は縫合して修復しておく。次に側胸部に横切開を加えて肋⾻を露出し、その頭側か ら壁側胸膜を鈍的切開し、胸腔内にカテーテルを10cm程度挿⼊する。空洞に挿⼊したシャントチューブと胸腔 内の挿⼊したカテーテルをステンレスコネクターを介して連結し(b)、これも周囲の筋組織などに縫合固定す る。空洞から胸腔までのシャントチューブやカテーテルが不⾃然に折れ曲がっていないかどうかを確認し(c)、 ドレーンを留置して閉創する。 [ID0667] 空洞-胸腔シャントの⼿術⼿技 a:チューブを空洞に挿⼊し固定   b:胸腔のチューブと連結   c:シャントの全体像 7: 解説 [ID0507] 7 / 7

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最終更新⽇ : 2016年5⽉23⽇

<<ページ末尾:#evidenceDetails4.aspx?DiseaseID=1981>> 1: 著者提供

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脊髄空洞症

平野徹 新潟⼤学医⻭学総合病院 整形外科

■画像⼀覧

#1981 出典欄記述⽅法 ※「作図にあたって参考にした⽂献」「さらに詳しく知るための参考資料」の場合は、出典と区別するために「参考⽂ 献:」とご記述いただけましたら幸いです。 ※画像出典表記についてご了承のお願い 先⽣に元図をご提供いただき、それを元に弊社にてイラストを描き起こしている場合は、エルゼビア作成のイラストとし て、出典を割愛させていただいている場合があります。その点ご了承のほどお願いいたします。 ※他社出版社発⾏物からの転載は、⾼額の場合や許諾が下りない場合は、掲載できない場合がありますので、ご了承くだ さい。 ※説明、出典のご記載を頂いている場合は空欄で結構です ①ガイドライン 【編者名】編:【ガイドライン名】【策定年度】年版、p【掲載】or【図版番号】、【発⾏元】、【出版年】 ②雑誌 著者名:表題. 雑誌名 発⾏年(⻄暦);巻(号):⾴-⾴. 〔例1〕⼭⽥⼀郎:中枢神経の構造的特徴.脳と神経 1998;45(7):12-15.

〔例2〕参考⽂献:Hauenstein EJ, Marvin RS, Snyder AL, et al.: Stress in parents of children with diabetes mellitus. Diabetes Care 1989; 12(1): 18-23. PMID: 2714163

③単⾏本

著者名: 表題. 編者名. 書名. 発⾏所所在地(⽇本の出版社の場合は不要):発⾏所,発⾏年(⻄暦);掲載⾴. 〔例1〕⼭⽥⼀郎: 脳と脊髄への⾎液供給. 吉⽥次郎編. 神経科学.エルゼビア・ジャパン, 2003;125.

〔例2〕参考⽂献:Kettenmann H, Ranson BR: Neuroglia. New York: Oxford University Press,1955; 154. ④その他 「××⼤学●●先⽣よりご提供」等、明記してください。 [ID0601] キアリI型奇形による脊髄空洞症 ⼩脳扁桃の下垂と先端の楔状化(⽩⽮印)、脊髄内の空洞形成(⿊⽮印)を認める 1: 著者提供

※説明、出典のご記載を頂いている場合は空欄で結構です

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出典

□著者提供

[ID0602]

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癒着性クモ膜炎に伴う脊髄空洞症 脊髄腫瘍摘出術後に⾎腫を⽣じ、再⼿術を施⾏したが、術後癒着性クモ膜炎が⽣じ、脊髄空洞(⽩ ⽮印)が形成された。 1: 著者提供

※説明、出典のご記載を頂いている場合は空欄で結構です

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[ID0603] 脊髄腫瘍(円錐部⾎管芽細胞腫)に伴う脊髄空洞症 腫瘍に伴う脊髄空洞もしばしばみられる。空洞を形成する代表的な腫瘍として⾎管芽細胞腫があ る。本例では、腫瘍は⾮常に⼩さいが、⼤きな空洞が形成されている。空洞のなかに⼩さな低信号 域を認めるが、これが腫瘍である。 1: 著者提供

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[ID0604] キアリI型奇形に伴う脊髄空洞症における解離性感覚障害の発⽣機序 脊髄空洞症では脊髄中⼼に空洞が形成されることが多い(キアリI型奇形では中⼼管が拡⼤するわ けではないことに注意)。この場合脊髄灰⽩質にて交差する温痛覚の⼆次ニューロンは障害される が、深部感覚や表在知覚の伝導路は障害されないため、解離性感覚障害を呈すると説明される。し かし、図のような典型的な宙吊り型の解離性感覚障害を呈する例は少ない。 1: 著者提供

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[ID0605] キアリI型奇形と脊髄空洞症による⾮典型的側弯(左凸胸椎側弯)

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X線(全脊柱PA像)で左凸胸椎側弯を認めた場合には、キアリ奇形を疑う必要がある。 1: 著者提供

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[ID0661] 典型的症例集:症例1: a: 術前   b: 術後6カ⽉ 1: 著者提供

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[ID0662] 典型的症例集:症例2: a: 術前X線   b: 術後4年X線   c:術前MRI   d:術後半年MRI 1: 著者提供

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[ID0663] 典型的症例集:症例3: a:術前   b:術後1週間   c:術後2年 1: 著者提供

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[ID0664] 典型的症例集:症例4:

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a:術前b:術後1週間 1: 著者提供

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[ID0665] ⼤孔減圧術の⼿術⼿技 a:展開し後頭⾻とC1後⼸を切除したところb:硬膜浅層を切開したところ

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[ID0666] クモ膜下腔-クモ膜下腔バイパスの⼿術⼿技 a:椎⼸切除して正常クモ膜下腔を展開したところ b:バイパスチューブを挿⼊固定したところ 1: 著者提供

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[ID0667] 空洞-胸腔シャントの⼿術⼿技

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a:チューブを空洞に挿⼊し固定   b:胸腔のチューブと連結   c:シャントの全体像 1: 著者提供

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[ID0671] ⾮典型的側弯(左凸胸椎側弯)症例におけるキアリI型奇形による脊髄空洞症

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⾮典型的側弯(左凸胸椎側弯)例や腹壁反射異常を伴う側弯例ではMRIで空洞の有無を確認すべき である。 1: 著者提供

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[ID0701] 脊髄空洞症の診断・治療のアルゴリズム

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最終更新⽇ : 2016年5⽉23⽇ <<ページ末尾:#ImageList4.aspx?DiseaseID=1981>> ⼿術術式の選択は、主に病変の部位(脊髄病変か後頭蓋窩病変か)とクモ膜炎の有無、によって決 定されるが、クモ膜炎や癒着の範囲、初回⼿術か再⼿術例か、などによっても変わってくる。症例 に応じた適切な術式選択が望まれる。 1: 磯島晃、阿部俊昭: 脊髄空洞症の分類と治療法. 脊椎脊髄ジャーナル20: 1128-29, 2007を改変

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脊髄空洞症は、脊髄の中に脳脊髄液(水) を含む空洞ができ、そのために痛みやしび れ、知覚障害、筋萎縮、脱力などの神経症 状が引き起こされる病気です。 発症機序は不明ですが、脊髄の周りを循環 している脳脊髄液の通過障害と考えられま す。 原因として最も多いのは、生まれつき小脳 の一部が正常の位置よりも下に垂れ下がっ ているキアリ奇形です。それ以外にも、脊 髄や脳のケガ、腫瘍、感染、出血などに 伴って発生することがあります。 今のところ、有効な保存治療法はありません。症状が進行性であったり、日常生活を妨げたり、 画像検査で空洞が増大する場合には、手術が唯一の治療法です。 ただし、空洞が自然に縮小することもあり、早急な手術が不要になることがあります。 手術は原因に応じて方法を選択しますが、進行予防的な意味合いが強く、重くなる前に手術を 選ぶことになります。 特に、癒着性くも膜炎などに伴う脊髄空洞症では、手術後に再発が多くみられます。症状の悪 化がみられたら、定期受診日を待たないで早めに受診しましょう。 軽症の場合は経過観察になります。自覚症状に注意して、症状が悪化するようなら定期受診日 を待たないで、早めに受診しましょう。

脊髄空洞症

脊髄空洞症

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専⾨分野 専⾨医 経歴 治療アドバイス メッセージ 執筆者 所属学会

執筆者ご紹介

平野徹 新潟⼤学医⻭学総合病院 整形外科 平野徹 脊椎脊髄病(特に脊椎・脊髄腫瘍、脊柱変形、透析性脊椎症、など) ⾻代謝学 ⽇本整形外科学会専⾨医、⽇本整形外科学会脊椎脊髄病医、⽇本脊椎脊 髄病学会脊椎外科指導医 ⽇本整形外科学会、⽇本脊椎脊髄病学会、⽇本側弯症学会、など 1991年 新潟⼤学卒業 1997-1999年 ⽶国インディアナ⼤学解剖学教室(⾻のバイオメカニク ス、⾻代謝学) 2002年 新潟⼤学整形外科助⼿ 2009年 新潟⼤学医⻭学総合病院講師 2014年 新潟⼤学⼤学院整形外科学分野准教授 脊髄空洞症に関しては、脳神経外科の先⽣も治療されていると思いま す。私は整形外科医ですが、側弯症、脊髄損傷、脊髄腫瘍などを治療し ている関係で、脊髄空洞症も⾃ら執⼑しています。これらの観点も織り 交ぜながら、執筆させていただきました。特に癒着性くも膜炎に伴う脊 髄空洞症は難治性であり、患者さんと⼀緒に病気と闘っている状態で す。 脊髄空洞症は稀な病気ですが、しかるべき時期にきちんと治療すること によって進⾏を防ぐのみでなく改善も望める病気です。他の疾患同様、 早期発⾒が重要な病気で、進⾏してからでは治療の効果も限定的です。 患者さんの声に⽿を傾け、疾患を疑う真摯な態度は年を重ねても失いた くないものです。

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2)医用画像診断及び臨床事例担当 松井 修 大学院医学系研究科教授 利波 紀久 大学院医学系研究科教授 分校 久志 医学部附属病院助教授 小島 一彦 医学部教授.

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