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サザンプトン大学滞在記

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Academic year: 2021

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1.はじめに

2004年8月23日より2年間,サザンプトン 大学の ORC(Optoelectronics Research Cen-tre)に訪問研究員として滞在する機会を得た。 私の滞在中には,クリーンルームの大規模爆発 火災事故など,思いもよらない事が起きたりし たが,サザンプトン大学は,光ファイバや光応 用の研究において,世界第一線の実績を誇る非 常に著名な大学であり,本当に色々な事を学ん だ貴重な時間となった。今回,滞在時のいくつ かのトピックをお話する機会を頂いた事に,ま ず感謝をしたいと思う。と同時に,読み苦しい 文章も多々あるかと思うが,お許し頂ければ, 幸いである。 2.サザンプトンでの生活立ち上げ 筆者も,妻と娘の家族3人での,しかも始め ての海外での長期滞在となるので,まず心配だ ったのは,大学の事よりも生活立ち上げの事で あった。外国の知らない土地で生活を立ち上げ ること自体,本当に大仕事であるが,私の場合 はさらに2週間後に学会でストックホルムに出 かける必要があった為,航空便で届いた荷物を 持ち歩く訳にもいかず,それまでに住む場所な どを決める必要があると言う非常にプレッシ ャーのかかる状況であった。とりあえず,大学 に挨拶だけ終えて,早速,不動産屋めぐりを開 始しようとしたが,何も無い状態であるので, 移動をするには車が必要,車の手続きには今度 は携帯電話が必要,と言った感じで,住居を探 す以前の段階で,刻々と時間が過ぎて行った。 それでも,何とか車の手続きを終えてからは, 不動産屋をはしごしながら良い物件を見つける と言う日々が続いた。しかし,現在,イギリス は住宅バブルの様な状態にあり,なかなか,良 い物件が見つからない。また,イギリス全般に 言える事なのだが,窓口の対応は柔らかでも, 対応のスピードはびっくりするくらい遅い(あ るいは忘れて放っておかれる)。そこで,連絡 を待つのではなく,何度も顔を出して,良い物 件があればその場で見せてもらう約束を取り付 ける必要がある事に気付くまでは,なかなか連 絡が来ない事にイライラしてばかりいた。ま た,そうして,ようやく物件を見に行く約束を 取り付けても,行ってみると不動産屋が来ない と言う事まであり,日本の様なサービスを期待 していると,何も前に進まない,と言う洗礼を 最初から受ける形となった。それでも何度も不

ガラス研究所訪問

サザンプトン大学滞在記

古河電気工業株式会社 ファイテルフォトニクス研究所

My staying at University of Southampton

Kazunori Mukasa

Furukawa Electric Co.,Ltd.,Fitel Photonics Laboratory

〒290―8555 千葉県市原市八幡海岸通6番地 TEL 0436―42―1728

E―mail : [email protected]

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動産屋や物件に足を運んで,学会出発の前日に 新居に入れる事になったのは,その後の生活立 ち上げをスムーズにしたと思う。銀行の口座開 設では,住居と同様に足を何度も運ばないと進 行しない体験を再びしたものの,住居の経験か ら何とか,持参したお金が底を着く前に口座を 開設することができた。また,住居が定まって いないと銀行を開く事が出来なかったので,学 会前に苦しみながら住居を探したのは,正解で あった。その後,娘が通う 家 の 近 く の Infant School(幼児学校)と,妻が通う大学提供の In-ternational Women’s Club や英会話学校の手 はずが整い,私も本格的に大学に通える様にな った。娘の学校の先生方がとても親切で,当初, 英語が全くと言っても良いほど話せなかったの に,幸いにも友達もたくさん出来て,新環境に すんなり溶け込んでくれた事と,大学が Spouse の為の集まりを色々と提供してくれたのは,本 当にラッキーであったと思う。 3.サザンプトン大学 サザンプトン大学では,マイクロストラクチ ャーファイバ(いわゆる穴あきファイバ)の研 究と言うテーマで,高非線形性を有する穴あき ファイバと低非線形性を有する穴あきファイバ の研究を行なわせて頂いた。ご存知の方も多い と思うが,光ファイバの特性を制御する技術と しては,従来,ガラスドーパントによる屈折率 構造の制御が用いられていたが,最近,屈折率 が1.0である空孔をファイバ構造に設ける事に より,ダイナミックに特性を変化させる技術 が,盛んに検討されている。通常,大学の場合 は,コンピューター上の設計は出来ても,ファ イバの試作などは出来ない場合が多いが,サザ ンプトン大学は,小規模な装置ながら,シミュ レーションで設計した光ファイバを試作,評価 する装置まで揃っている。もちろん,全ての工 程を自分で行なわなくてはならず,会社とはま た勝手が違って,最初は戸惑いもあったが,筆 者も,シミュレーションから試作にいたる全て の工程を自分で経験させて頂き,また,幸いに も留学中に3件の学会投稿をする機会にも恵ま れ,本当に充実した研究生活となった。 訪問研究員と言う立場ながら,ホーリーファ イバ Gr.の一員に入れて頂き,ややもすれば1 人で黙々と研究をする事になりがちな研究生活 の中で,週1回の進捗報告会にも参加をさせて 写真 1 学会出発前に何とか見つけた家。MTB の置 かれた部屋が我が家となった。 写真 2 サザンプトン大学で試作した穴あきファイバの断面写真例(左:3つ穴高非線形型,右:Aeff 拡大低非線形型) NEW GLASS Vol.22 No.22007

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頂き,先生や Gr 員に色々とご指導やアドバイ スをもらえたのも,充実した研究生活の大きな 助けになったと思う。また,大学では,様々な パーティーや催し物,および外部からの講師を 招いての勉強会なども数多く行なわれ,私は, そのあらゆる催し物に積極的に参加をさせて頂 き,研究以外でも本当に楽しい時間を送る事が 出来た。 4.サザンプトンでの生活 生活環境や研究体制も整い,落ち着いて見る と,サザンプトンは中世の城壁と近代的なショ ッピングセンターなどの混在する非常に爽やか な港街であり,とても楽しい日々を送る事がで きた。比較的よく整備された便利な都市であり ながら,公園やキャンパスではあちこちでリス を見かけ,少し郊外に行けば,鹿なども見られ ると言う自然も豊かな環境である。ただし,物 価は高い。ざっくり言って日本の2倍であり, ガソリンを満タンにすると1万円以上かかる事 などに,最初はショックを受けた。さらに,サー ビスは遅く,かつ一般的に悪い為,日本の過剰 とも言えるサービスに慣れている我々からすれ ば閉口してしまうような経験を何度もする事と なった。例えば,イギリスの外食などは高くて まずいと有名だが,それはまぎれもない事実で ある。また,医療の質はイギリス人の非難の対 象にもなっている様にひどく,私も,散々待た されたあげく,家に帰って寝ていて下さいとだ け言われて帰されたり,何度か苦い経験をして いる。それでも,こうした経験も含めて,イギ リスらしさを徐々に楽しめる様になって来るも ので,逆に日本が消費者にとって本当に暮らし やすい国である事と引き換えに,日本人が失っ ているものもあるのかとも思う。いずれにせ よ,日本とは違ったイギリスの,のんびりとし ていながら,個人と伝統を重んじる生活環境 は,筆者にとっては,本当に新鮮で貴重な経験 であった。 5.1年後に待っていた難題 さて,1年もたち,研究も私生活も充実して 来た頃,まさに思いも寄らなかった問題にぶつ かる事となった。それはビザ更新の問題と,住 居の契約延長の問題である。ビザの方は,アカ デミックビジターと言う種類のビザで来ていた のだが,その更新を最近は基本的に認めていな いと言う事で,他のビザに切り替える必要があ った。しかしながら,ちょうどテロ事件なども あり,更新が非常に厳しい時期だったので,筆 者も大いに苦戦をした。Home―Office のホーム ページを読み漁り,どうやら Working Visa の Sponsored Researcher と言うカテゴリーで申 請するのが最も良さそうである,と言う事が分 かり,大学から Working Permit を取得しても らい,その後,VISA を申請して,何とか更新 する事が出来た。また,住居も気に入っていた ので,当然,そこに2年間住むつもりでいたの だが,先ほど述べた様に,現在,イギリスが住 宅バブルの状態にある事から,高い値段で物件 を売りたいと言う大家が増えており,私たちの フラットも売却に出される事となり,かつ基本 的に契約は1年なので,引越しを余儀なくされ た。その結果,1年前と同じ経験をまたする事 になり,予測していなかっただけに,こちらも 家を見つけるまでに非常に苦労をした。しか し,それらの問題も吹き飛ぶような大事件が,2 写真 3 サザンプトン市街地の街並み。近代的デパー トと中世の城壁が混在している。 NEW GLASS Vol.22 No.22007

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年目の11月に待っていた。日曜日の早朝,ORC のクリーンルームで爆発火災事故が起き,ファ イバ試作設備が全焼してしまったのである。水 素ガスのリークが原因で爆発が起きたのであろ うと言う事だったが,消防車が何十台と並ぶ先 に,一昨日までファイバの試作検討を行なって いたクリーンルームの焼け跡を見た時には,本 当に立ち尽くしたまま,言葉も出なかった。し かし,日曜日の早朝と言う事もあり,これだけ の規模の爆発で,けが人が一人も出なかったの が,本当に不幸中の幸いであったと思う。また, もちろん多くの研究者にとってショックな出来 事ではあったが,その後も,文字通り焼け跡か ら立ち上がろうと言う前向きな姿勢は,皆変わ るところがなく,方向転換や工夫をしながら, 早い段階で研究を再開していく姿から学ぶ所は 大きかったと思う。私も,David Richardson 先生に,本当にお忙しい中,色々と相談をさせ て頂いて,光伝送シミュレーションやファイバ の応用実験などの新たな研究を行わせて頂く事 となり,最後まで充実した研究生活を送る事が 出来た。 6.終わりに この2年間は,日本にいては見えない事も色々 とあって,私の人生で本当に貴重な経験の連続 であったと思う。それを経験する機会を下さ り,かつ様々なご助力を頂いた古河電工の関係 者の皆様と,本当に親身に指導して下さった Richardson 先生をはじめとするサザンプトン 大学の関係者の皆様には,本当に感謝しても仕 切れないほどである。これからの人生に今回の 経験を活かしていく事で,そのご恩を少しでも 返していければと考えている。最後に,つたな い文章であったにも関わらず,この文章を読ん で頂いた皆様に感謝をして,この滞在記を終わ らせて頂きたいと思う。 写真 4 ORC クリーンルーム爆発火災事故写真

NEW GLASS Vol.22 No.22007

参照

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