音楽科教師の力量形成に関する一考察 : 意思決定を中心に
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(2) . 平成4年7月. 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第43巻 第1号 l 43 1 Sec ionIC) Vo lofHokkai do Un i i ion( t jouma tyof 政iuca t ver s . . ,No. ly ju ,1992. 音楽科教師の力量形成に関する一考察 --意思決定を中心に--. 篠. 1. 原. 秀. 夫. は じめ に. 2 ) )教員養成・免許制度, 採用の改善, ( 1 1 9 87 ) は 「教員の資質向上」 に関し,( 臨時教育審議会 ( ( 1 3 )現職研修の体 系化を提言している ) 初任者研修制度の創設,( .教員にとっ ては全教職生活を通して. の体系的な研修が必要なのであり, 臨教審はそれを初任者研修-現職研修 (校内研修, 一定年限ご との研修, 自己啓発的研修) として組織することを提言したのである. 学校教育の成否は, これを担う教員の資質能力に負うことが極めて大きく, 現職教育の充実を図 ることは重要な課題と言える. 確かに毎年のように, 各地で教科教育に関わるさ まざまな研究大会, 公開授業研究, 研修会が目 白押しに開かれる. 音楽教育界においても同様の傾向が見られる. ところが, こうした大会が多くの時間と費用をかけて行われるわりには, 現職教育としての研究 成果を上げていないというのが現状ではなかろうか. 言いかえれば, 研究会が参加者の力量形成に つ ながるものとはなりえていないように思われるのである. 2 ) 筆者はかつて, 研究会で取り上げられるテーマや授業検討会のマンネリ化を指摘した( . 「 生き生きと自ら学ぶ 研究会で取り上 げられるテーマは,「豊かな情操を養う音楽教育は………」 , 「 子どもたちを育てるには………」 , 創造的な表現力を生かすには………」 に代表されるように, も っ ともつぶしのきく, つ まり どのような解釈でも成り立つような適応 生の あ る も の が 多 い. こ れ ら は, 年を追う ごとに積み重ねられ, 深められていくというよりは, その場限りの体裁を整えるため に設定されること が多いのである. また授業検討会においては, 授業事実から離れた ところで指導理念や目標論に関すること力増幅論 されたり, 発言が印象批評的なものになりがちである. しかも最後は, 参観者の感想の後, 司会者 や助言者のおきまりの抽象的な言葉でまとめられることが多いと言える. このように, 研究会の内容やスタイ ルに関する問題点はあげられる. しかし, 問題はそれだけで はない. 筆者は, 研究成果があがらない理由として, 音楽科教師の次のような力量に関する誤っ た 捉え方にも原因の一端 があると考えている. ・「音楽的な力量 (器楽や声楽の技量など) こそが授業を 左右する」 ・「指導力というものは, 経験をつめ ば自然に身についてくるもの」 このような捉え方をする音楽科教師が意外に多いのである. 勿論, 音楽的な力量は大切である. また指導力は, 経験をつむことにより身につく ものもある. しかしながら, このような力量に関す る捉え方は, 明らかに偏 ったものと言える. そこで本稿では, 音楽科教師に望まれる力量とはどのよう なものなのか, またその中で何が授業 333.
(3) . 篠 原 秀 夫. 実践では重要な ポイ ントとなるか, 明らかにしたい. さらにその力量を高めるために, 授業研究で はどこに注目し, しかもどのような研究を進めていっ たらよいか, これらを考察する.. 1 1 音楽科教師に望まれる力量 一般に, 教育実践において教師に求められる力量とは何であろうか. 昭和46年の中教審答申にお いては, 望ましい教師像が 「教育者の基本的資質の上に, 教職や教科の専門性を備えた教師」 とし 3 ) また 教育職員養成審議会の答申には次のようにある 「専門職としての教師 て捉えられている( , . . には, 教育者としての使命感, 人間の成長・発達についての深い理解, 幼児・児童・生徒に対する 教育的愛情, 教科等に関する専門的知識, 広く豊かな教養, そしてこれらを基盤とした実践的指導 4 ) 力 が 必 要 で あ る」( .. これらの答申に見られるように, 教師に求められるものは, 実践的な力量のみでなく, 基本的な 資質に関わるものも含まれるのである. ところが, この資質や力量の概念の捉え方は, 学問的に必ずしも一定したものとはなっ ていない. なぜならば, 教育実践場面では, 教師の人間的資質と教育上の力量とを切り離して考えることが極 めて難しいからである. それでは次に, 教師に求められる資質・力量に関する研究をいくつか取り上げてみる.. 5 ) 津布楽喜代治は, 教師に求められるものを人間的な資質と専門的な力量に分けて考察している( . 「 人間的な資質としては, ①子どもへの愛情, ②若さと公平さ (若さとは 子どもの立場に立っ て考. え, 子どもとともに生活する」の意味である) , ③絶え ざる探究心, をあげ, 専門的な力量としては, ①教科に関する知識, ②子どもの成長発達についての知識と理解, ③教育内容の編成と指導の技能, をあげている. また岸本幸次郎は, 教師に求められるものを, 専門職たるべ き教職の職務場面で要求される 「教 育的資質」 (狭義の パー ソナリティ ー) に限定し, これを 「資質・能力」 とは区別して, 力量という 6 } この力量概念として ①人格性 ②生徒把握能力 ③生徒指導能力 ④教授展 概念で捉えている( , , , , . 開能力, ⑤経営能力, の5項目をあげている. 7 ) 「まず さらに安彦忠彦は, 授業における教師の力量に関して次のようなモデルを提示している( . 動力=情熱としての バースナリティ があり, それに一定の方向と断取りを与えるストラテジーがあ り, その構想の個別場面で用いられるテクニッ クがあり, そして, これら三つを絶えず吟味し改善 しようとするア プレイザルがあっ て, これら四つの力によっ て 『教師の力量』 は構成されている」 と いう モ デ ル で あ る.. 8 } 四つの力とは, それぞれ次のような意味である( . ① バースナリティ 主として, 「教育にかけるその先生の姿勢」のようなものを指す. 特にその中に, 昔から言われた 「教育愛」 というような その先生の教育活動にエネルギーを与える情熱が含まれる それは 「子 , . どもへの愛」 と不可分なものである. ② ストラテジー 教育内容に関する一定の方向づけと子どもに対応して作られるそれを基にした段取りの力, いう ならば 「構想力」 に当たる. 留意するべき事は, 一定の教育理念, 教育目的がなければ, それは立 てようがないことと, 子どもという相手のあることから柔軟性が必要なこと, さらにある程度の 時 間の長さ, 見通しを伴うという点である. 334.
(4) . 音楽科教師の力量形成に関する-考察. ③. テクニッ ク. 構想の見通しの中で出会う, 個々の場面 ごとに発揮される 「指導技術」 である. これは, 色々な 場面, 様々の見通しによって使い分けれるよう, できるだけ多くもっ ていることが望 ましい. また 同時に, 個々の教材, 個々の子どもによっ て異なるものとして身につけられなければならない. ④. アプレイ ザル. 他の三つの要素の妥当性を絶えず吟味する 「自省力」 のことである. そして, 単にそれだけにと どまらず, 妥当でなければ自分自身のありよう, つまり バースナリティ の部分まで含めて常に改善 しようとする 「自己革新力」 が伴わなければならない. また安彦は, 「『アビコ・モデル』 の四つの部分の力量は, それぞれに 『一般的力量』 と 『個人的 力量』 とに分けられ, さらにこの二つの力 量がそれぞれ 『子どもに対する対応能力』 と 『教育内容, 9 ) 教材に対する能力』 とに分けられる」 というアビコ・モデルの構造を明らかにして いる( . 「 「 例えば, ス トラテジー」に関する力量で言え ば, この力量は, 子どもに対する対応能力」と「教 育内容, 教材に対する能力」 の両方を踏まえた力量であり, マネのできる (共有財産化できる) - 般的力量と, マネのできない (個性的で独自の) 個人的力量に分けられるというものである. ところで, 音楽教育界においては, 次のような捉え方が一般的 である. 0 1 } 真篠将は, 音楽担当教師に必要な資質として, 次の五つをあげている( . ① 教師としての態度と 技術とを身につけていること. 抽象的な表現ではある が, これに関して 真篠は,「教師として成功するためには, 個人および集団 としての人間をじょ うずに扱うこと, そのためには 彼らの持っ ている問題を熟知していることが必 要である. 人間を理解し, じょ うずに扱うことを可能にする科学としての教育心理学や, 学校経営, = )と述べている 学級経営の技術としての学校管理といっ たものを学ことが必要である」( . ② 教材つまり音楽そのものをできる だけ広くわがものにしておくこと. ③. 学校で望ましい音楽の 指導をするための演奏技能. c. 創作の技能 b. 楽器の演奏技能 a. 歌唱技能. d. 読譜・記譜の能力. ④ 音楽教育に関連する理論的研究やその知識. 美しさを求めてやまないという意欲, 音楽を感覚的にすみやかに捉えて, それを味わい感動す る心, それらを日常生活に生かしていこうとする積極的な態度.. ⑤. この見解に見られるように, これまで音楽担当教師に必要な資質・力量というものが, 音楽その ものの理解や, 演奏に関する力量が中心に考えられること が多かっ たと言える. そこには, 子ども への対応能力 や授業の構想力に関わる考察が欠落しがちなのである‐ そこで次に, 先ほどのアビコ・モデルを踏まえながら, 音楽科教師に望まれる力量に関して, 私 見を述べてみたい. まず, 人間的な資質に関わる次のよう なものを根底として考える. すなわち, 児童・生徒への愛 情, 情熱や意欲, 絶えざる探究心, などである. これらを基盤として, その上に力量の構成要素と して, 次の四つを考えている. 音楽に対する姿勢, 態度. ①. これは, 根底にある人間的な資質にも関わっ てくるものであるが, 感受性にとんだ美意識, 常に 美しい音楽を追求して いこうとする意欲, 音楽を味わい感動する心, など音楽科教師の音楽に対す る姿勢, 態度といっ たものである.. ② 音楽的な力量 これに関して 「どの程度の力量が必要か」 という基準をもう けることは難しいことであるが, 教 335.
(5) . 篠 原 秀 夫. 師の意図する範唱ができるく らいの歌唱技能, また教師の意図する範奏・伴奏ができるくらいの楽 器の演奏技能は, 最低限必要である‐ また, 創作の技能や読譜・記譜の能力も必要なものと言える. ③ 子どもに対する対応能力 これは, 一人一人違っ た背景を持っ ている児童・生徒の固有の考えや能力を把握し, それを踏ま え, 授業の中で指導のねらいに対照させながら, 児童・生徒に対応していく力である. また, 学年 ごとの児童・生徒の発達に見合う対応力も必要である. ④. 教育内容・教材に対する能力. これは, 学年の発達段階を踏まえ, 適切な教育内容を設定し, それにふさわしい教材を選択した り構成したりする力, また教材を分析し適切なポイントを見つけたり, それを選別 していく力, な どである. さらに, これら四つの構成要素を基盤に, 次の段階として授業を構成していく力, あるいは教授 行為を組織していく力, を考えている. すなわち, 児童・生徒の実態を踏まえながら, 一時間の授 業の流れを構想し, しかも個々の場面 ごとに具体的にどのように児童・生徒に働きかけていくかを .力である 構想していく . 以上を図式化すると, 図1のようになる. 図1. 音楽科教師の力量モデル. 撰. 的. 授 業 を構成 して いく 力. 教授行為を組織していく力. 長. 定留. 音. 音. 姿. 楽. 楽. 製. 寿. 暮. . . ず る. h . 度. 児童・生徒への愛情. 量. 雲 対. を. 琶 寿 . 情熱と意欲. . に. 即時的. 意. 意思決定. 計 画. 馨. 対. 内. す. 容. 能. 教. 力. 材. る .. 絶え ざる研究心. 旧 教師の力量形成と意思決定 前章では, 授業を構成していく力量, 教授行為を組織していく力量を上位レベルの力量として捉 えた. それでは, これらの力量形成を考えていく場合, 授業研究においては授業のどこに注目して いけばよいであろうか. 結論から先に述べれば, これらの力量は, 教師の意思決定場面に凝縮した形であらわれるのであ 336.
(6) . 音楽科教師の力量形成に関する一考察. る. 例えば, 次のような実践場面である. ある教材曲の教材解釈が行われ, 指導上のポイ ントがA, B, Cの三つに絞られたとする. 経験 豊富な教師は, Aから順番にやっ ていくとは限らない. あるポイ ントから指導を進める ことにより, その曲を短時間で見事に仕上 げていくことがある. また, あの教材曲を歌わせた後, 改善していかなければならない点がいくつか考えられたとする. 経験豊富な教師は, 気づいた改善点から ズル ズル直していくのではなく, ある改善点から指導を行 うことにより, 曲全体の表現を劇的に変えてしまうこと がある. じられる. 教師は, 不確 このような授業を参観すると, 授業が躍動し, まるで生き物のように感. 実性の高い決定場面で, 臨機応変な意思決定を行っ ているのである. 教師の意思決定が授業を左右するとさえ言っ てもよいであろう. つまり, 教師の力量が問われる のは, まさにこのような意思決定場面なのである. 筆者は, 教師の力量形成において, 意思決定の 研究が重要な ポイ ントであると考えている.. ここで言う教 師の意思決定とは次のような意味である. 「狭義の)教師の意思決定とは, 各代替策 (対応策) の中から, それぞれの代替策 が子どもにあたえる影響を予想しながら, 教師自身が設定. した評価基準にもとづいて, そのうちの最良のもの (または, 満足できるもの) を選択することで ある. また広義には, 問題状況 (授業場面) の知覚・判 断, 代替策の創出, 代替策の決定といっ た 2 1 ) 一連の過程を意味している」( 吉崎静夫は, 教師の意思決定を, 授業設計段階と授業実施段階との二つに大きく分けて次のよう 3 1 ) 「まず授業設計段階では, 授業目標, 授業内容, 教材, 学習指導法 (教授法) に考察している( , . 学習活動, 学習形態 (一斉, 小集団, 個別など) , メディ ア, 学習場所, 評価, 学習時間 (配分) と いった授業システムの各構成 要素を, 授業目標とのかかわりの中で, 一つ一つ意思決定していかな ければならない. その特徴は, 思慮深さ, 冷静さ, 確信といっ た教師の心的状態に支えられながら, 授業全体の計画性や見通しを重視する点である. 次に, 授業実施段階では, 教師はたえず教授行動 や学習活動につ いて意思決定しなければならない. ここでは特に, 授業計画 (予想していた子ども の反応) と授業実態 (現実の子どもの反応) との間に ズレがあるときに, 当初の授業計画をそのま ま実行すべきか, それとも変更すべきか どうかを決定すること がポイ ントとなる. つまり, どのよ うな授業場面において授業案 (指導案) の見切りを行うのかが教師にとっ ては大変難しく, 授業に とっては決定的に重要になる. その特徴は, 柔らかさ, おおらかさといっ た教師の心的状態に支え られながら, 授業場面における子どもの反 応を臨機応変に授業の中に取り入れることを重視する点 で あ る.」. 教師は, この授業設計段階から授業実施段階まで, 絶えず多くの意思決定を行っ ている. しかも 授業実施段階では, 教師の意図する働きかけの効果が見られない時は, 次から次へと新たな手立て 1 4 )である がとられるのが普通である. これは近藤次郎のいう 「多段式 (動的) 決定」( . 近藤によれば, 一段式 (静的) 決定とは, 一つの決定が行われると, それで課題が解決してしま う場合である. それに対して多段式決定とは, 一つの決定によっ て局面が展開し, その環境のもと ある‐ 授業時間における教師 で新しい意思決定に迫られ, 次々に意思決定を積み重ねていく場合で. の意思決定の多くは, 多段式決定と言える. ところで授業時間における教師の 意思決定は, 野球, 将棋, 囲碁などの勝負士の意思決定とよく 似た特徴を持っ ている. 広岡達郎 (西武ライオン ズの前監督)は, 「監督の用兵や, 選手育成法には, それほど特異なもの はない. ゲームを勝利に導くにはどうすればいいか‐ それは, 選手の技術的レベ ルや試合の展開し 337.
(7) . 篠 原 秀 夫 1 5 { )と 述 べ て い る , だ い で 幾 通 り も の 方 法 が あ る. か と い っ て, 千 変 万 化 と い う ほ ど の も の で は な い.」 .. 広岡は, 具体例として 「一死走者が一塁にいる」 場合をあげているが, ここでは 「一死 で走者が 三塁」 という場面を設定し考えてみる. このチャ ンスを生かし何とか得点するためには, どのよう な方法があるであろうか. 無限にあるわけではない. たとえ誰が監督であっ ても, 考えられる方法 は次のようなものである. ①スクイ ズバントを指示する (この場合, セイフティ ・スクイ ズも考え られる) , ②打者に外野フライ を狙えと指示する, ③打者に右方向を狙えと指示する, ④打者に自由 に打たせる, ⑤ホームスティ ール. 広岡によれば, 監督は, これらの中から戦局に応じて, もっ とも成功の確率が高いと判断した方 法を選 び出して, 選手に指示するだけであるという. その際の判断基準は, ①相手投手の状態, ② 味方選手 (走者と打者) の能力, ③味方の次打者の能力, ④予想される相手の救援投手の能力, ⑤ 得点差, ⑥回数 (試合の序盤か中盤か終盤か) などであるという. 問題は, これらの判断基準を踏まえ, 瞬時のうちに成功へ導ける選択ができるかどうかである. 試合の勝敗を分けるくらい重要な場面での意思決定もある. 名監督といわれるか否かは, どうやら このような場面での意思決定に基づく采配にあると言える. 授業実践においても, 同じようなことが言えるのである. すなわち, 教師が自ら意思決定を行い, 教授行為に及ぶ際の代替策は無数にあるのではなく, あ る程度代替策は限定されるということ. その中から, 教師は最適と思われるものを選んでいくので ある. もちろん, その代替策は, 経験豊富な教師と初心者とでは, 質・量ともに異なっ ていると言 える. また教師は, 一時間の授業の中で数多くの意思決定を行うのであるが (通常, 教師は授業におい 1 6 )テポイントとなる意思決定は て約2分間に1回の割合で意思決定をしていると言われている)( , 数回ある程度であり, これらの意思決定が授業の成否をにぎるといっ ても過言ではない. それでは次に, 音楽授業の中ではどのような意思決定場面と代替策が見られるか, 一例を取り上 げてみる. 1 7 }の合唱の授業の指導案 北海道教育大学附属釧路中学校の桜井敬一氏に協力をいただき, 資料1( (細案) を作成した. 資料 (1-1) は一時間の授業の大まかな流れであり, 資料 (1-2) は単 元の目標や本時の目標に大きく関わり, しかも本時の山場ともいえる下位目標の5. の部分の細案 である. つまり5. の部分は, この 時間のポイントともいえる部分であり, 教師の意思決定が重要 な場面と言える. 資料 (1-2) の細案には, あらか じめ予想される意思決定場面の教授行為 (代替策) があげて ある. この授業の場合, 授業を支える内容を表現内容と表現技術に大別し, それぞれの内容にせま る教師の働きか け (教授行為) を指導細案項目とした. その具体的な項目として, 表現内容に関わ 1 8 )を そして表現技術は分けることな るものでは, イメージ言語, 音楽言語, ボディ ーランゲージ{ , くそのまま用いた. これらの項目そして教授行為 (代替策) は, あくまで桜井氏の意思決定に基づく働きかけ (教授 行為) の例である. 授業内容によっ ては, あるいは教師によっ ては, 伴奏, 範唱, 板書, 等に関わ 目が考えられるであろう. また, 同じイメージ言語, 音楽言語, ボディ ーランゲー るさま ざまな項・ ジであっ ても, 異なる代替策 (働きかけ) が考えられるであろう. なお桜井氏の場合, 次のような基本的な授業方針があり, 意思決定の基盤となっ ている. イメー ジ言語やボディ ーランゲージを中心に働きかけをし, これらを支えるものとして表現技術に関する ものを取り入れる. さらにイメージ言語やボディ ーランゲージがだめなら, 音楽言語も使っ ていく 3 38.
(8) . 音楽科教師の力量形成に関する一考察 と いう も の で あ る.. したがっ て, この資料 (1-2) では横を基準に教授行為 (代替策) を捉え, どの部分から入っ ていくかは, その時の生徒の実態を踏まえながら教師の意思決定により判断される. すべての働き かけを使っ ていくという ものではない. )42~46小節の部分で具体的に述べてみる. 1 例えば, 主な働きかけ( Coda からの三部の響きを大切にするために, 生徒の実態を踏まえながら, イメージ言語であれ ば, 「床から天井までみん なの出す音でぎっ しりと詰め込まれるように」 のよう な指導言を使うか, 「小さな波の後からどん どんと大きな波が押し寄せて来るように」 のよう な指導言を使うか, 意思 決定が行われる. また, 実態に応じては, 資料にあるよう なボディ ーランゲージが共に使われたり, あるいは最初からボ ディ ーランゲージだ けで働きかけが行われる場合もある. さらに, これらでは なかなか教師のねらいが達成されないような場合は,音楽言語の「フォ ルテから cresc ‐し て フ ォ ル テ 「 ィ シモまで気持ちを大きくして」 のような指導言を使っ たり, 表現技術の 体を開いて どん どん前 に持っ て来るように一 が使われたりすることも考えられる‐ もちろん, これらの代替策 がすべてではなく, 教師の判断により臨機応変に, 別の代替策が取り 入れられることも当然考えられる. また, このようなレベ ルの意思決定 だけでなく, 次のようなレベ ルの意思決定もある. 本時案の 主な働きかけの 「6. 全体で後半部分を中心に全体合唱しよう」 は, 次の三つの ポイントに分けら れて い る.. 42~46小節) Q) Coda からの三部の響きを大切にして合唱しよう. ( 6小節) づくりをしよう 1 4~1 ( 2 } デュ ナーミクを参考に しながら合唱 .( 28~37小節) ( 3 ) 歌詞を大切にした表現を心がけて歌おう. ( ) 1 ) ( 2 ( 3 )の順番に指導することを計画しているが, 生徒の学習 この授業の 設計段階では, これらを( )の指導を行っ た方が合唱の仕上が 2 3 )の指導へ行き, そして次に( 1 )の次は( 能力や実態によっ ては,( )の順番にやるこ とが成功につながっ たり, 状況に ) ( ) ( 1 2 3 りがよくなることも考えられる. あるいは( よっ てはある部分をカッ トして先に進むことも考えられる. このようなレベ ルでの意思決定も, 授業の成否をにぎる大切なものと言える.. W 教師の力量形成につながる意思決定研究 それでは, 教師の力量形成につな がる意思決定の研究をどのように進めていっ たらよいであろう か.. 確かに最近の授業研究において, 意思決定研究の重要性が広く認識されるようになり, 急速に進 1 9 ) 西 之 園 春 夫(1981) )の 研 究( l みつ つ あ る と 言 え る. こ れ ら の 研 究 と して, Shave son & Stem(1981 , 2 ( 1 ) な どが ある 2 0 ) 吉 崎 静 夫 (1983 究 ) 研 の の 研 究( , . ,. しかしながら, 教師の意思決定の研究は, 教師の内面的な過程を授業という複雑な文脈の中で問 題とするだけに, 教師の意思決定そのものをとらえる方法に関して, 充分な研究が行われて いない というのが現状である. こう した中で吉崎静夫は, 「VTR中断法」 という 「教師の意思決定研究法」 を開発し, 興味深い 2 2 ) 研究報告を行っ ている( . その研究法とは, 録画された授業の ポイ ント場面でVTRをいっ たん停止させて,「もしあなたが この授業者であっ たら, 次にどのよう な教授行動 (手立て) をとるつもりですか」 というように, 視聴者に教授行動の 意思決定を求める方法である. 意思決定場面としては, 授業展開上の ポイント 339.
(9) . 篠 原 秀 夫. 資料 (1ー1). 音楽科学習指導案 日. 時. 平成3年1 0月1 8日. 生. 徒. 2年C組. 授業者 1. 単元名 V. 本時案. 男子21名. 女子21名. 計42名. 桜 井 敬 一 「夢は大空を駈ける」. 1. 目標 ( 1 ) 充実した合唱の響きを得るために積極的に練習をして成就感を味わうことができる. ( 2 ) 楽曲全体の構造をつかみ, それにふさわしい表現を工夫することができる. ( 3 ) ソルフェージュ 教材の中から教材曲の基本的要素を身につ けることが できる. 2. 授業過程 過程 塾 礎 基. 本. 練 習. 批 正. 下 位 目 標 主 な 働 き か け 備 考 1. 「He l l ・Cdurの 1度の和音を重 ね l l o He o 」 を合唱してて四声体の 1. Cdurの響きを作りだそう‐ 2. 「楽しい発声の ドリ ル①③」 (岩河三郎 響きを感じながら表現できる‐ ながらCdurの響きを感得 2‐ ソルフェージュ 学習を通して 「夢は大 する. 作詩・作曲) を喉や腹筋を意識しながら ・毎時間歌わせることで呼吸 歌ってみよう. 空を駈ける」 の基本要素を学ぶことがで きる. 法の基本を身につける. 3‐ 「 ノ・レルヤのカノン」 (アメリカ曲) を ・Cdur・4/4拍子を終止和 輪唱してみよう‐ 音の響きに注意して歌う. 3‐ 「夢は大空を駈ける」の後半部分をパー 4‐ 「夢は大空を駈ける」の後半をパートで ・パート練習からペアー練習 トを中心に練習できる. 練習し, ペアー で確認しよう‐ , の動きをつくることにより ( )アウフタクトで入るフレーズに気を付け 1 確実に 「基礎・基本」 事項 て練習しよう. を身につける. ( 2 )Coda からのフレーズの派生音を正確に つかんで練習しよう. ( 3 )シンコペーショ ンのリズムを弾むように 歌っ てみよう‐ 4. 自分で練習の成果を確認して発表でき 5. 今日の時間の練習の成果を確認して発 ・自己評価 表しよう. る.. 5. 全体練習の中でねらいに近づいた表現 6. 全体で後半部分を中心に全体合唱しよ .相互評価する場面を設定し ができる‐. 表 現. 展 望. ながら展開する‐ つ- ( 1 )Codaからの三部の響きを大切にして合 唱しよう. 2 { )ディ ナミークを参考冠こしながら合唱づく りをしよう・ ( 3 )歌詞を大切に した表 現を心 がけて歌お フ. 6‐ 本時を振り返り, 次時の改善点を発見 7‐ 今日の学習に集中し, 意欲を持って パ ・次時への意欲づけ, 方向づ けを狙った補足をする. し, 合唱時の留意点を発表できる. ート練習や全体練習に参加できたか発表 しなさい‐. ‐W 評 価 . ( ) 積極的に練習に参加 して合唱を作るための成就感を得ることができたか. 1 ( 2 ) それぞれの声部の役割を生かした表現を工夫することができたか. { 3 ) ソルフェ ージュ 教材を活用することで 「夢は大空を駈ける」 の基本的な要素を身に付けるこ と が で き た か.. 340.
(10) . . 音楽科教師の力量形成に関する一考察 過. 資料(1ー2) 程. 下 位 目 標 主な働きかけ. 指 表 イメージ言語. 5. 全体練 6‐ 全斡ぐ俊 半部分を中心 に全体合唱し. 導 現. 細. 案. 内. 音 楽 言 語. 項 容 ボディーランゲージ. 目. 表 現 技 術 (歌唱領域). 教 授 行 為 の 応. 用. \欲望半閲凶ン R 3イ代‘ ~. よう。 ( )C daから 1 o. 授業者. の三部の響 きを大切に して合唱し よう。. ’ ー ー 2不節 4 表. ・床から天井まで ・最後の和音は みんなの出す音で Cdurの1度の和音 ぎっしりと詰め込 で落ち着かせよ まれるように‐. 習の中でね 46小節. つ.. /. ‐ 「かけるょ か * a息の量を数字 けるよ」 の最後の で意 識させ 「よ」 の時は息を コント ルさせる ロー 7割は残しておい ことで呼吸法 「 よ に入る粗 て の転移力を付 」 けさせる.. .小さな波の後か .フ ォ ル テ か ら ・ 「かけるよ」 と ・体を開いてどん * b音の方向を手 らどんどんと大き c の平で弓竪け止 e s c 「 .してフォル 「かけるよ」 は音 どん前に持って来 めることで声 な波が押し寄せて ティシモまで蜘 1持 を集める場所を変 るように. えていく b 来るように. * ちを大きくして. の方向性を示 しながら音を 空間に置かせ 音楽を立体的. ( 2 ) 楽譜に書 かれている. デ クを参 ュトミ 考にして合 唱作りをし ・. よう-. らいに近づ. r五木節. に感じさせる. ことが大切で ある. ・ 「お」 と 「お」. ・ここのアウフタ. 移って下さい*c. 歌おう.. ・体を固くしない 和音と音の間を 意識させるこ で充分に息を吸い 入んで. 込 とで音の方向 性と同時にそ. の間にとっても大 クトから1拍目に 切なものがあるの 入る時は1拍目の で大事に次の音に 音に重心をかけて. こに置かれて. ・どんよりとした ・次の音を準備じ ・ 「おおぞらを」 空にしないで大き ておいてから移る の 「を」 を引っ張 るために後ろに移 な青空にして下さ こと‐ い・ ら音を引 動しなが‐ っ張っていく‐. ・腕を下げたら息. いる昔の質ま でも掴ませる. をはいて上げたら. ことになる‐. 吸って‐ 腕の速さ に合わせて÷緒に 動いて下さい‐ こ. この場所は素早く 吸わないと間に合. 「. いませんよ‐. ・お腹で支えなが ら体ごとこっちに. ・ソプラノは鷲が .次の音でC es C r ・. いた表現が 16小節. 大空に舞い上がる するように膨らま ように音を出して せて歌おう.. 持ってくる‐. 下さい.. ・ 歌詞を大 { 3 ) 切にした表. 現を心がけ て歌おう. 現. ・ ”g小節 2. できる。. ・二つのパートの ・ポリフオニック 「ゆめ」 と 「きぼ な構造になってい. *d. ▼ う」 がはっきりと る箇所なので三つ A 主張されるよう のパートそれぞれ ・ に, 三 つ の 「に がはっきりと出る じ」 がみんなの音 こと‐ ・ 「夢」 と 「虹」 で目の前に現れる ように‐. のフレーズは声の. 方向を変えるよう ・絹の織物を三色 ・ 「YU」 の前に にすることで満ト色 の糸で織り合わせ 「1」 を付けて発 を変えることがで るような音楽にし 音するつもりで準 きる. て下さい* 備して下さい‐ e 37小節. ・前のパートを受 槌教師が音を受 け止めながら けて出るのでさき 体を動かすこ に出るパートを心 とで譜 色を変 の中で歌って出ま えることがで す. ですから息は きる‐ 素早くとらないと なりません‐. ・ 「ゆめがきぼう * e歌詞の内容を が」 のフレーズは 使いながら歌. 「ゆめ」 の方で三 割しか息を使って はいけません. 残 りを 「きぼう」 で 使うようにして下 さい‐. 詞からもこと ばの方向性を 掴ませること が大切であ る.. 341.
(11) . 篠 原 秀 夫 、‐. で, しかも教師にとっては予期しない応答 が生徒からあった場面の中から, 次の二つの場面が用い ー られている. 場面Aは, 教師が予想していたよりも早い時期に, トッ プクラスの成績の生徒より; と期待していた 本時のねらいに直結した応答が出た場面であり, 場面Bは,、教師が当然正答が出る- のに, 成績上位の生徒より思わぬ誤答が出た場面である. その結果, 二つの場面における意思決定は, それぞれ六個程度の代替策に集約されることが報告 されている. また次のような考察が行われている. ① 授業場面での教師の意思決定は, 「もどる」 「とどまる」 「すすむ」といっ た三つのカテ ゴリー にまとめられる. 「もどる」 とは, 現在の授業内容より以前 (既習) の内容にもどる, つまり復 習 することを意味している.「とどまる」とは, 現在の授業内容にとどまることを意味している. 「すすむ」 とは より先 (未習) の授業内容にすすむことを意味している. , ②. 教職経験や題材経験の多い教師は, 少ない教師よりもリスキーな (危険性の高い) 意思決定 を して いる.. ③ ④. 男性教師は, 女性教師よりもリスキーな意思決定を している. 教職経験や題材経験の多い教師が主に授業目標に注目して意思決定しているのに対して, 経. ・ 験の少ない教師は主に児童に注目して意思決定している. 吉崎の考察によれば, 教職経験 (さらに付け加えれば, ある教材を教えた経験)の違いによっ て, 授業実施過程における教師の 意思決定に違いが見られるということである. しかし問題は, そこか ら先である. 教職経験を積んだ教師が, 授業実施過程のいくつかの場面において 意思決定する場合, どのような要因が意思決定に影響を与えているのか. また経験豊富な教師は, 意思決定する際に, 何を基盤に行っ ているのか. これらを明らかにしていかなければ, 教師の力量形成につながる意思 決定研究にはならないであろう. 吉崎の開発した 「VTR中断法」 は確かに有効な意思決定研究法の 一つである. しかしこの研究 法は, 教育工学的研究のスタイ ルをなし, あくまで研究者側の研究と言える. それに対し, 同じV TRを使う研究法であるが, 教育現場の教師自身の授業研究のために考え出され使われている研究 2 3 }が あ る 法 と して 「ス ト ッ プモ ー シ ョ ン 方 式」( .. 2 4 ) こ 筆者は, この数年来, 「ストッ プモーショ ン方式」の授業研究の意義や重要性を述べてきた{ . の方式は, 授業ビデオの再生をしばしばとめながら, 授業方針, 授業構成, 教師の授業行為の細か な検討, 児童・生徒の発言・活動の解釈, その他教材と授業のあらゆる側面について集団の 中で議 論するというやり方である. 議論は終始, 授業の事実に密着して行われ, 質問, 疑問, 思いつき, 批判, 代案, 分析, 等を中心に行われる. これは, 意思決定研究を直接の目的とする研究方法ではないが, この方式でも ・ , 参加者の意思決 定を問うことがしばしば行われる. 経験豊富な教師と初心者などが, 意思決定に関して意見が分か れるような場合は, あくまで教材や授業の文脈に即 して議論が行われる. 例えば 「どうしてこの場 面で, このような働きかけをしたのか」 その意味と妥当性を議論するのである. したがっ て参加者は, 多くの意思決定場面にお いて, さま ざまな参加者の異なっ た考え方や働き かけを学ぶことができる. これにより, 自分自身の考え方を吟味し, 授業を見ていく視点や考え方 を広げたり豊かにしていくこと ができる. こちらの方が, 個々の教師の力量形成につながる意思決 定の研究ができるのでは なかろうか. このストッ プモーショ ン方式を応用し, 筆者は次のような意思決定場面の検討法を考えて いる. 特にここでは, 意思決定場面での教師の働きか け (教授行為) を中心とした検討法を述べてみる. 先ず経験豊富な教師 (実践家) の授業をビデオに収録 する. できれば二台のカメラで撮影しゞ{編‐ 3 42.
(12) . 音楽科教師の力量形成に関する‐考察. 集を行う (一台は教師の働きかけ を中心に, もう一台は児童・生徒の学習活動を中心に撮影する) . 研究者は, そのビデオを再生・視聴し, あらかじめ実践者の意思決定場面と考えられる箇所を確認 しておくのである. 例えば, 次のような場面である. ( 1 ) 指導案や予め準備した指導計画とは異なる働きかけをしている場面. ( 2 ) 児童・生徒の演奏の後, 実践者が評価表現を発したり, その後, 新たな指導言を発している 場面. ( 3 ) 指揮をしながら, 途中で移動したり, 顔の表情を微妙に変えている場面. ( 4 ) この場所でどうしてこのような指導言を発したのか, また指導言の組み立て方をしたのか, さらにどうしてそのタイミン グで指導言を発したのか, 疑問に思われる場面. ( 5 ) ある生徒の発言を取り上げて, ある生徒の発言を取り上げなかった場面.. この作業の後, できる限り早い 時期に実践者と共にビデオ・テープを再生・視聴する. 実践者が働きかけをするまさにその瞬間に (意思決定場面と考えられる箇所で) ビデオを一時停 止し, その意思決定場面において実践者の内部で何 が起こっ ているのか, あるいは起こっ てきたの か, 可能な限り詳しく聞き出すのである. すなわちその意思決定場面において, どのような葛藤の 過程があり, 瞬間的な意思決定にいたっ たのか, また何を基盤に意思決定を行っ たのか, などを率 直に述べてもらうのである. したがっ て, 実践者と共にビデオテー プを再生・視聴するのは, 前述したようにできる限り早い 時期が草1まれる. テー プの編集が必要でなければ, 授業実践後直ちに視聴・検討するのが理想であ る. 時間が経てば経つほ ど, 意思決定場面の微妙な葛藤の過程を明らかにするのが困難になっ てく るからである. その意思決定場面で教師は, 児童・生徒の活動 ・反応に対し, その 時々 の目標に合わせて評価を 行い, 指導のポイントをいくつか頭の中にえがくはずである. またその中から, 児童・生徒の実態 を踏まえながら, 即 時的に重要なポイ ントを選択し, 教師の働きかけ (教授行為) に結びつけてい るはずである. この意思決定場面にお ける教師の意思決定が, 何を基盤に’ しかもどのような内的 葛藤の過程を経て行われるかを明らかにしていくことが, 教師の力量形成につながると考えるので ある. 本稿は, 音楽科教師の力量に関する誤っ た捉え方を指摘し, 力量に関する私見を述べた. また, その力量形成において, 教師の意思決定が重要なポイ ントであることを指摘し, 意思決定の研究方 法として, ビデオを利用した検討法を提示する形となっ た. 今後は, この検討法により, 経験豊富な教師の授業を数多く検討し, 意思決定場面における教師 の意思決定に影響を及ぼす数々の要因, そして何を基盤に即 時的意思決定が行われるか, 具体的に 検討することを計画. している.. 〔注〕 87年8月 { ) 臨時教育審議会 第四次答申, 第三章第三節3, 19 1 2 ストップモーション方式による授業研究を中心に ( ) 拙稿 「音楽科教育における授業研究 1 4 9~1 50 学紀要 (第1部C) 第41巻第1号 pp . 3 971年の中教審答申を筆者が要約した. ( )1 9 87年1 2月1 8日 ( 4 ) 教育職員養成審議会 「教員の資質向上について」 (答申)1 「 日本教育行政学会年報 N 3 所収 87年 5 19 { ) 津布楽喜代治 求められる教師像」 Q1 9 86年 P. 36 ( ) 岸本幸次郎, 久高喜行編著 『教師の力量形成』 ぎようせい 1 6. 」 北海道教育大. 343.
(13) . 篠 原 秀 夫 7 ) ( ( ) 8 ( 9 ) ( ) l o ( I D ( 2 } 1. 安彦忠彦 安彦忠彦 安彦忠彦 真篠 将 真篠 将 吉崎静夫. 『現代授業論双書41 現代授業研究の批判と展望』 明治図書 1 3年 P. 7 4 98 7 2~7 4を筆者が要約した. 注( )の文献 pp 7 ‐ 注( 7 )の文献 P. 81 『音楽教育を語る』 音楽之友社 19 2 25~22 8 86年 pp . 2 5を筆者が要約した. 0 注( 1 )の文献 P. 2 「授業の設計と展開における教師の意思決定」『講座 教師の力量形成2 授業設計と展開の力量』 ぎ. ょ う せ い 1989年. P. 19. 「教師の意思決定と授業研究」 ぎようせい 1 9 91年 P‐ 4 ~ 5 「 9 86年 P‐ ( ) 吉崎静夫 教師の意思決定と授業行動との関係1 」鳴門教育大学研究紀要 教育科学編 第1巻 1. ( 3 ) 吉崎静夫 1 23. これらを筆者が要約してまとめた‐ 8 81年 pp 1 7~1 ( 1 4 ) 近藤次郎 『意思決定の方法』 日本放送出版協会 19 . 2 2 7 1 6 ~ 1 9 83年 pp ( 賜 広岡達郎 『意識革命のすすめ』 講談社 1 . ) t t tp rock(Ed ( 1 6 0 C1ark ter son roce轟Jn M. Wi . , Handbook of Research on ,P,L:Teacherthough ,C. M.& Pe l lan 1986 年 Teachi 3rded ) New York:Macmi ng( . ,. 255~296 PP .. 991年11月 2 { の 篠原秀夫 「音楽科の学習指導案に関する-考察」 (第22回日本音楽教育学会 口頭発表資料 1 1 日) より・ ( 1 8 ) ボディ ーランゲージとは, 指導言だけでは具体性に欠ける内容やイメージ化できない内容を, 教師の体の動き(身 振り, 体の移動, 手の動き, 等) を使って補おうとするものである‐ i ior i t lthought s ons ca s 1 9 t ( ) Shavelson,R.j :Res earchonteacherぎPedagogi em,P. . ,judgemen ,dec ,andbehav .&S 455~498 IRes 1981年, 51 Rev i i t earch ona ew o臼&iuca ‐ , pp ,. 981年 岡 西之園春夫 『授業の過程 (教育学大全集第30巻)』 第一法規 1 6 1~7 0 9 83年 pp ) 吉崎静夫 「授業実施過程における教師の意思決定」 日本教育工学雑誌 8巻 1 似 . 4 注 α の 6 ~ 6 の文献 1 吉崎静夫 回 pp . 鰐 ) ストップモーション方式とは, 藤岡信勝を代表とする授業づくりネットワーク運動の中から生まれた授業研究の 方法である. 詳しくは, つぎの文献を参照. 91年 藤岡信勝 『ストップモーション方式による授業研究の方法』 学事出版 19 図 拙稿‐「音楽科教育における授業研究 --ストップモーション方式による授業研究を中心に--」北海道教育大 学紀要 (第1部C) 第41巻第1号 拙稿・「音楽科教育における指示語に関する研究⑤ --授業構成に関わる指導言の問題を中心に--」 『季刊音 91年 楽教育研究 67号』 音楽之友社 19. 44 3.
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