動的モード分解におけるモード数低減手法の実験的比較
A comparative study on sparse mode selection methods
in dynamic mode decomposition
草場 彰
1∗久保山 哲二
1Akira Kusaba
1Tetsuji Kuboyama
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学習院大学 計算機センター
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Computer Centre, Gakushuin University
Abstract: Dynamic mode decomposition (DMD) is a data-driven approach for extracting oscil-latory spacial patterns from spatio-temporal data. The extracted patterns can be very useful to have an insight into the underlying mechanism of a phenomenon observed as data. However, the interpretation of the patterns becomes more difficult as the number of patterns becomes larger. In this paper, we focus on two approaches for sparse mode selection to obtain a small number of pat-terns, which are based on singular value decomposition (SVD) or L1-regularization. We compared these approaches by applying them to a real-world data set of physical phenomenon to investigate which approaches are more suitable.
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はじめに
時空間データである流体流れの解析手法として知られ る「動的モード分解(Dynamic Mode Decomposition; DMD)」は時間的に繰り返す空間パターンのセットを データ駆動で見出し,それらで流れ場を展開する手法 である.各空間パターンは一定の振動数と増幅/減衰 率をもって時間変化する.現象を反映していない空間 パターン(正弦波基底)で展開する Fourier 解析と比較 して,DMD には物理的解釈を行い易いという利点があ る.しかしながら,時空間データから抽出される空間 パターン数が多くなるにつれて,データの物理的解釈 は難しくなる.空間パターン数は時空間データ行列の ランク数だけあり,解析対象によっては,膨大な数に なり得る.空間パターン数を低減するためには,特異 値分解に基づいて低次元空間へデータを射影する手法 と,L1 正則化により少数の空間パターンを選択する手 法がある.本研究では,これら2つの手法を実際の物 理現象データに適用し,実験的な比較を行った.DMD は 2008 年に Schmid と Sesterhenn によって提案され て以来 [1, 2],流体流れ解析の研究領域 [3, 4] を越えて, 神経科学 [5],画像処理 [6, 7],電力システム解析 [8], スポーツ科学 [9] 等の様々な分野において活用されて いる.本研究では,プラズマ乱流実験において計測さ れた電流値の時空間データ [10] を解析対象とした. ∗連絡先: 学習院大学計算機センター 〒 171-8588 東京都豊島区目白 1-5-1 E-mail: [email protected]
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動的モード分解
解析対象の時空間データから,データ行列は次のよ うに定義される. Ψ0:= [ ψ0 ψ1 . . . ψN−1 ] ∈ CM×N (1) Ψ1:= [ ψ1 ψ2 . . . ψN ] ∈ CM×N (2) ここで,ψt∈ CM は時刻 t における観測ベクトルであ り,M は観測点の数,N は時間ステップの数である. 時不変な線形システムを仮定すると,次式が成り立つ. ψt+1≈ Aψt (t = 0, . . . , N− 1) (3) 観測された時系列に最も合う行列 A は,Ψ1− AΨ0の Frobenius ノルムを最小にするものとして,次式で計算 できる. A := Ψ1Ψ+0 (4) ここで,Ψ+ 0 は Ψ0の擬似逆行列であり,特異値分解 Ψ0 = U ΣV∗から,Ψ+0 = V Σ−1U∗ と計算される. 時刻 t における観測値は,初期観測値および行列 A を 用いた計算値で近似することができる.さらに行列 A の固有分解から,次のように展開される. ψt≈ Atψ0= M ∑ i=1 ϕiµtiαi (5) 人工知能学会研究会資料 SIG-FPAI-B901-01ここで,ϕiと µiは行列 A の固有ベクトルと固有値で ある.それぞれ,DMD モードおよび DMD 固有値と呼 ばれ,空間パターンおよび時間発展を表している.特 に複素固有値の場合,対応するモードは振動特性を示 す.αiは初期観測値を反映した重ね合わせの係数(寄 与率)である.データ再現の起点として初期観測値を 使うことに意味はないので,最終的に寄与率は,観測 された時系列と計算された時系列との差の Frobenius ノルムを最小化するように決定される.
2.1
モード数低減手法 1
ランクが r のデータ行列 Ψ0の特異値分解から求ま る行列 U ∈ CM×rによる次元削減近似を考える. F := U∗AU = U∗Ψ1V Σ−1 (6) の固有分解から固有ベクトル yiと固有値 µiを求めて, DMD モードを ϕi ≈ Uyi (7) と近似する.観測値は r 個の DMD モードの重ね合わ せで, ψt≈ r ∑ i=1 ϕiµtiαi (8) と表現される.十分小さな特異値をゼロとみなして,低 ランク近似を行うことで,モード数の低減を図ること ができる.以降,この手法を Truncated-DMD と呼ぶ.2.2
モード数低減手法 2
Sparsity-Promoting Dynamic Mode Decomposition (SP-DMD) [11] は,式 (8) において低ランク近似を行 わず,L1 正則化によって r 個の DMD モードから重要 度の高い少数のモードを選択する手法である.観測さ れた時系列と計算された時系列との差の Frobenius ノ ルムを最小化するための目的関数を J(α) と表記する. ここで α = (α1. . . αr) と表した.解くべき問題は次の 最適化問題である. minimize α J (α) + γ r ∑ i=1 |αi| (9)
文献 [11] では,Alternating Direction Method of Mul-tipliers (ADMM) による最適化手順が示されている.最 適化の結果,非ゼロ寄与率をもったモードが選択され たモードである.最終的な寄与率は,選択されなかっ たモードの寄与率をゼロとする拘束条件の下で,再び 正則化項を外した J(α) を最小化して決定する.
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時空間データ
熱核融合を行うには 1 億度以上の温度が必要であり, そのような高温環境下において物質はプラズマ状態を とっている.現状では,イオン温度と電子温度をとも に 1 億度まで加熱することは難しく,乱流によるエネ ルギーの漏れが原因と考えられている.このような背 景から,核融合プラズマの乱流特性が研究されている. 本研究では,直線型プラズマ生成装置において計測され たイオン飽和電流の時空間データ [10] を解析した.計 測点は周方向に 64 点あり,図 1 に示すように,1 番と 64 番の計測点は 1 周して隣り合っている.サンプリン グは 1 µs 間隔で行われ,410 ms にわたって計測されて いる.DMD による解析区間は 1 ms と設定した.図 2 は本研究で解析した或る 1 ms 区間のデータを,ヒート マップ可視化したものである.したがって,データ行 列のサイズは M = 64,N = 999 となる. 図 1: 直線型プラズマと計測システムの概略図0.0
0.5
1.0
Time (ms)
20
40
60
Observation point
0.05
0.10
0.15
図 2: イオン飽和電流 (A) の時空間データ4
実験
Truncated-DMD と SP-DMD によるモード数低減を 比較する.はじめに,データ行列 Ψ0の特異値を図 3 に示す.15 番目の特異値は 1 番目の特異値の 1%未満 であるので,Truncated-DMD においては,r≈ 15 と 低ランク近似を行う.一方 SP-DMD では,r = 64 で あり,パラメータ γ によって選択されるモード数が変 化する.図 4 は γ に対するモード数および誤差の程度 を表す最適化された目的関数値を示している.γ > 4 で は誤差が急激に増加していることがわかる.したがっ て,γ = 2 と設定した.このときの選択されたモード 数は 15 である. 0 10 20 30 40 50 60 103 101 101 Singular value 図 3: データ行列の特異値 図 4: SP-DMD におけるモード数と誤差のトレードオフ 図 5 は両手法における DMD 固有値を示している. DMD 固有値の絶対値はモードの増幅/減衰率に対応し ており,1 より大きくなるほど増幅率が増大し,1 より 小さくなるほど減衰率が増大する.SP-DMD によって 減衰率の小さな,単位円付近の固有値が選択されてい ることがわかる.一方で,DMD 固有値の偏角はモード の振動数に対応している.複素共役な固有値のペアは同 じ振動数のモードであり,実軸上の固有値は非振動モー ドである.したがって,観測データは 1 つの非振動モー ドと 7 つの振動モードに分解されている.Truncated-DMD 固有値は SP-つの振動モードに分解されている.Truncated-DMD 固有値と同様の領域に分布し ているが,絶対値は比較的大きい.このプロットから 両手法間のモードの対応関係をとることは難しい.そ こで,図 6 のようなスペクトル表現を用いる.振動数 において定量的な一致は見られないが,寄与率の増減 に関して両スペクトルは定性的には同様の傾向を示し ている.したがって,両手法間のモードの対応関係を とることが可能になった. 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Re 0.1 0.0 0.1 Im SP-DMD (not selected) SP-DMD (selected) 0.97 0.98 0.99 1.00 1.01 Re 0.05 0.00 0.05 Im Truncated-DMD SP-DMD (selected) 図 5: DMD 固有値 0 2 4 6 8 10 Frequency (kHz) 103 101 101 Amplitude Truncated-DMD SP-DMD (selected) 図 6: DMD スペクトル 図 7 は対応すると考えられる Truncated-DMD と SP-DMD のモードごとに時間発展を比較したものである. mode-2, 4, 5 の時空間パターンは両手法間で異なって見 えるが,mode-2, 5 は減衰の強いモードであり,影響は 小さいと考えられる.減衰の弱いモードを見ると,両手 法で同様な時空間パターンに分解されていることがわ かる.また,再構成された時空間パターンも両手法間で 良い一致が見られている.観測データ行列と再現デー タ行列の間で二乗平均平方根誤差(RMSE)を計算し たところ,Truncated-DMD では RSME = 0.020 (A), SP-DMD では RSME = 0.018 (A) であった.つまり, モードの時空間パターンから定性的に現象の物理的解釈を行うことを目的とした場合には,どちらの手法を 採用しても変わりないが,より定量的に現象のモデリ ングを行うことを目的とした場合には,SP-DMD の方 が適していることがわかった. 図 7: モードごとの時間発展(左:Truncated-DMD, 右:SP-DMD)
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むすび
本研究では,実際の物理現象データの具体例として プラズマ乱流データを取り上げて,Truncated-DMD と SP-DMD を適用し比較した.どちらの手法においても 物理的解釈が可能な範囲の少ないモード数で観測デー タを再構成することができた.また,僅かながら SP-DMD の方がより正確に再構成できることがわかった. 一方で Truncated-DMD には,解析時間区間をシフト する場合にモードを対応付けて推移を追い易いという 利点がある.今後は,Truncated-DMD における解析 時間区間シフトによって,より長時間のデータ解析を 進めていく.謝辞
本研究で用いたプラズマ乱流データは,九州大学応 用力学研究所 稲垣滋 教授から提供を受けたものです. 本研究は JSPS 科研費 JP19J00871, JP19K12125 の助 成を受けたものです.参考文献
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[3] Mezi´c, I.: Analysis of fluid flows via spectral properties of the koopman operator, Annual
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(2013)
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[5] Brunton, B. W., Johnson, L. A., Ojemann, J. G., Kutz, J. N.: Extracting spatial–temporal co-herent patterns in large-scale neural recordings using dynamic mode decomposition, Journal of
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[8] Susuki, Y., Mezic, I., Raak, F., Hikihara, T.: Ap-plied koopman operator theory for power systems technology, Nonlinear Theory and Its
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[9] Fujii, K., Inaba, Y., Kawahara, Y.: Koopman spectral kernels for comparing complex dynam-ics: Application to multiagent sport plays, In
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[10] Yamada, T., Itoh, S. I., Maruta, T., Kasuya, N., Nagashima, Y., Shinohara, S., Terasaka, K., Yagi, M., Inagaki, S., Kawai, Y., et al.: Anatomy of plasma turbulence, Nature Physics, Vol. 4, pp. 721–725 (2008)
[11] Jovanovi´c, M. R., Schmid, P. J., Nichols, J. W.: Sparsity-promoting dynamic mode decom-position, Physics of Fluids, Vol. 26, p. 024103 (2014)