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「源氏」「夜の寝覚」の番いについて〈下〉 : 『物語後百番歌合』の配列から

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Academic year: 2021

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(1)(1). ︱︱ ﹃ 物 語後 百番 歌合 ﹄の配 列 から︱︱. ﹁ 源氏﹂ ﹁ 夜 の寝覚﹂の番 いに ついて ⇔. エ ハ ﹃ 後 百番 歌合﹄七番  左右 の歌は、. 修. 、 夕 立 の宵 に、 二人 の寝所 に忍び込ん で、 太刀を抜き騒ざ い老女 の源典侍 と戯 れる。 頭中将も競 い心を持 ち ︹一四︺. である。 左 は ﹃ 源氏物語﹄ 紅葉賀 の巻から源典侍 の歌。女遊 び に ついて、桐壷帝 の諫 言を受 けた源氏が、 六十歳近. つげ よなほまや のあまり の雨そそぎ我 たち ぬれて帰りわび ぬと. 右 嵯峨 にて、 宰相 の君が局 にて、女君 の琵琶 の音 を聞き て             入道右衛門督. 立ち ぬるる人しも あらじ東屋 にうたてもかかる雨そそざかな. 東屋 をし のび やか にう たひて、 立ち寄り給 へるに                 源  典 侍. 左 夕立 のな どり涼 しき宵 のまざれに、温明殿 のわたり をたたず み歩き給 ふに、琵琶 を いと面白く弾 けば、. 大.

(2) (2) 「夜 の寝覚」の番いについて 下 「 源氏」. 当時は中君と称する︶ 当時︶の歌。 物 語第 六年 、 寝 覚 の上 ︵ 右 は ﹃夜 の寝 覚 ﹄ 中 間 欠 巻 部 分 より、 式 部 卿 宮 の中 将 ︵. 嚇 す。 色 好 みな老 女 房 の風 流 滑 稽 諄。. 十 八歳 の頃 の八月 十 五夜 、 侍 女 宰 相 の君 の局 にし のんだ彼 は、 寝 覚 の上 の妙 な る琵 琶 の音 に心惹 か れ た。 あ と、 中.  な お、  色 好 み の彼  寝 覚 の上 に愛 情 を寄 せ る帝 の心 の導 火線 と な る。   以後 長 く、 将 は そ の旨 を帝 に奏 上、 そ れが、. 、 は、 か つて但 馬守 の三 女 に恋 文 を送 り、 ま た物 語 第 十 四年 、 彼 は故 老 関 白邸 にし のび込 み 時 に未 亡 人 の寝 覚 の上. 、 を盗 み出 そ う と し て、 間 違 え て故 老 関 自 の次 女 と契 る、 と いう エラ ーを行 う。 六番 左 と七番 左 と を対 比 す ると 一、 橘 の香 ・時 鳥 か ら 夕 立 へと、 季 節 の推 移 が 見 ら れ る。. 七 ・左︶ 一、 五 月 雨 の晴 れ間 の立 ち寄 り 盆→ 左︶に対 し て、 夕 立 の な ごり涼 し い宵 のま ざ れ ︵   あ て にら う たげ な﹂ る人 で、  宮 など も な  飽 く ま で用意 あり、  物 語 本 文 に ﹁ね び に た れど、 一、 麗 景 殿 女 御 は、 、 年 いたう老 いたる﹂ 女 で、 く、 故 院 のあ と、 淋 しく 源 氏 の庇 護 を受 け る身 で あり 盆→ 左︶ 対 す る源典 侍 も ま た ﹁ 。 七 ・左︶ ﹁人 も や む ごと なく、 心ば せ あり て、 あ て に お ぼ え高﹂ い人 柄 であ った ︵ と いう 共通 項 に近 い線 を考 え得 よ う。 六番 右 か ら七番 左 を考 え る と、. 寝 覚 物 語 絵 巻 ﹄ 詞書 に、 一、 ま さ こ君 が、 中 納 言 の君 を訪 問 し た帰 途、 宣 燿 殿 女 御 の邸 に立 ち寄 る条 を描 いた ﹃. 、 車 お し と ど めさ せ て見 入. 、 、 、 月 入 り 方 の明 け暗 れ の空 、 春 秋 の霞 o霧 にも 劣 ら ぬ気 色 な る に いと大 き な れど 木 立も の ふり いたく荒 れ た 、 る所 に、 散 り にし花 の木 末 ど も いと若 や か に青 み渡 れ る な か に、 松 の末 より木 高 く咲 き か かり た る藤 の いと な べてな らず 、 物 より こ と に面 白 し。 過 ぎ に し春 の夢 のま ど ひも 忘 れ ぬば かり見 ゆ れば る れば 、 等 の琴 の音 も 聞 こゆ なり。.

(3) 線 漢. 尿 ° 1冥. ∧六 番∨. 左︱︱← 右. 左︱︱← 右. ∧七 番∨. 以 上 を総 合 す ると、 上 図 のよ う に、 六番 左 か ら七番 左 への連 想 に加 え て、 六番 右 から 七番 左 へ. など 、 七 番 左 ︱← 七 番 右 と考 えら れ よう。. 好 色 宮 の中 将 の軽率 な 人柄 ︵ 七 ・右︶. 一、 色 好 みな老女 、 源 典 侍 の風 流 滑 稽 諄 ︵ 七 ・左︶に対 し て、 やが て人違 い事 件 を引 き起 こす. 一、 催 馬 楽 の ﹁ 東 屋﹂ の縁 。. 一、 とも に琵 琶 の音 に ひ か れ て の事 。. 世 上 一般 の風 流事 に見 ら れ る こと でも あ ろう。 最 後 に、 七番 の番 いに移 る。. 、、、 と、いわば両者とも ﹁ 玉ぼこの道ゅ訃ずり の便り﹂といえよう。ついては、六番右︱←七番左とも考えておきた. 一、 と も に楽 の音 に誘 い込 ま れ、 好 き 心 か ら し の び 入 る 男 君 。. し ま う。. 歩 み入 った、 と あ る。  一方 、  光 源氏も ま た、 ﹁夕 立 し て、 名 残 涼 し き宵 の紛 れ﹂ に、 行 き過 ぎが たく、 立 ち寄 って. 御 車 より 下 り て. も し見 つく る人 あらば 、 往 来 の道 にも 過 ぎが たく て、 など も いひ より、 さ らず ば 、 忍 び ても 出 でなむ、 と思 し て、. ま こと、 さ ぞ か し。 いで、 あ は れを添 ふ る ほど な め るを、 いま少 し近 く寄 り て、 花 をも見、 琴 の音 をも 聞 か む。. と あり 、 関 心 を持 った ま さ こ君 が、 随身 に よ って宣燿 殿 女 御 の住 ま いと知 り、. 部 字 日 は` を 本 あ 古 司 て 典 校 は 文 注 め`学 夜 全 半 句 集 の 読 司 寝 点`夜 の 覚 L濁 寝 付 点 覚 L 載 を の 設 付 石 け`載 の 川 徹 い 鈴 氏 わ 木 の ゆ 一 補 る雄 記 鑑 氏 に 賞 釈 拠 本 文 つ文 に ち Ъ 摯` 以 た° 下 適 槻. い。 六番 右 と七番右 と の関 連 は、 楽 の音 に魅 せら れ て の関 心事 と いう 共通 点 は あ るが 、 そ れ は. 修 大. (3).

(4) (4) 「 夜 の寝覚」の番いについて 下 「源氏 」. の対 応、 さ ら に七番 左 ︱← 右 と考 え ておき た い。 八番 の番 い に移 る。 左   紫 の上 か く れ給 ひ て つぎ の年 の秋 七 夕 の逢 ふ瀬 は雲 のよ そ に見 て別 れ の庭 に露 ぞ置 き そ ふ. 右   右 大 将 、 三 位 の中 将 と聞 こえし、 北 山 に こも り ゐ ぬと伝 へ聞 き て り 知 らざ り し 山 辺 の月 を 一人 見 て世 になき身 と や思 ひ 出づ ら む 。 左 は幻 の巻 か ら 源 氏 の詠 。 紫 の上 の 一周 忌 が近 づ き 、 夕霧 と諸 事 を打 ち合 わ せる源 氏 の心 は痛 ま し い 折 から時 鳥. 。 、 。 ほ のか に嗜 き 、 盛 夏 の風物 に つけ ても、 故 人 を恋 う 里 九︺ば かり 淋 し い七夕 長恨 歌 に思 いを寄 せ て涙 を流 す. 、 、 物 語 本 文 に、 ﹁七 月 七 日も 例 に か は り た る こと多 く 、 御 遊 など も し給 は で   つれづ れ に なが めく ら し給 ひ て 星 合 見 る人 も な し﹂ と あ る。. 、 いわ ゆ る 寝 覚 の上偽 死事 件 によ 年代 に異説あり︶ 一方 、 右 は末 尾 欠 巻 部 分 よ り 寝 覚 の上 の歌 。 物 語 第 十 八年 か ︵. 。こ し は、 冷 泉 院 を始 め関 係 者 たち皆 ま ったく 信 じ て疑 わ な い。 さ て、 彼 女 は っ 、 の 死 を 出 た 院 脱 得 は 白 河 て 彼 女 。 、 生存 を秘 し て某 所 に身 を隠 す が 、 ま さ こ君 の悲 嘆 ぶり、 そ の北 山籠 り を 伝 え聞 いて 秋 は 月 明 の夜 に 歌 を詠 む. 七〇︶に、  詞 書 ﹁世 にな き さ ま に聞 こえ て のち、 右 大将 、 北 山 に こも れり  雑 二 ︵〓 一 な お、 ﹃風 葉 和 歌 集 ﹄ 巻 十 七、 。 と伝 へ聞 き て、 月 の明 か り け る夜 。 なが む ら ん面 影 も見 る心 地 し て思 ひ やられけ れば ﹂ と し て入集 し て いる まず 七番 左 と 八番 左 の対 応 を見 る と、.  季節 の推 移 を追 って いる。 秋 ﹂ ﹁七 夕 の﹂ と、 一、 ﹁夕 立 の な ごり﹂ か ら ﹁ 、 東 屋﹂ ︱ ﹁我 立 ち濡 れ ぬ  殿 戸 開 か せと﹂ と ﹁お し開 いて来 ま せ  我 や人 妻﹂ と の 男 女 間 の掛 一、 催 馬 楽 の ﹁ 。 け 合 いは、 即 ﹁七 夕 の逢 ふ瀬 ﹂ へと、 連 想 が働 く と い って宜 し か ろ う.

(5) 修. 槻 大. (5). 涙の︶露 ぞ置 き そ ふ﹂ の縁 も 通 じ合 う か。 一、 ﹁う た ても か か る 雨 そ そ ざ﹂ か ら ﹁︵. 1 右. 伊. 九番 の左 右 は次 の通 り で あ る。 左   芹 川 の大 将 のと ほ 君 の、秋 の夕 べに思 ひわ び た る と ころ書 き た る絵 を見 て 荻 の葉 に露 ふき 結 ぶ秋 風 も 夕 べぞ わき て身 には し みけ る 右   白 河 の院 に て、 身 の有 様思 し つづ く る夕暮 に し を れ び わが 故 里 の荻 の葉 に乱 る と つげ よ秋 の夕 風. 。 物 語 本 文 に、 ﹁芥  大 右 以来 の物 思 いに沈 む薫 ︹四四︺ か れ て、 妻 の女 二官 に交 際 を勧 め る。 女 一官 を恋 いなが ら、. 左 は、 蜻 蛉 の巻 か ら薫 の歌。 明 石 中宮 主催 の法 華 八講 の五 日日、 は か らず も 西 の渡 殿 に居 る女 一官 を見 た薫 は 心惹. 右 大将. 以 上 の諸 点 を整 理す る と、 上図 のよう な対 応 関 係 を見 る ことが でき る の では な か ろ う か。. を汲 み取 る ことが でき る。. ると いう こと だ ろう。 右 の歌 は、 ま さ こ君 の歌 では な いが 、 寝 覚 の上 の詠 を通 じ て、 そ の心情. 八 ・右︶に相 通 じ て い 生存 を知 らず 、 そ の死 を信 じ て悲 嘆 のあ ま り 北 山 に籠 ったま さ こ君 の心 ︵. 八 。左︶が 、 寝 覚 の上 て、 何 よ り 見 逃 し得 ぬのは、 亡き紫 の上 に寄 せ る光 源 氏 の尽 き せ ぬ慕 情 ︵.  八番 左 右 の 対 応 に つい な い。 ま た七番右 と八番 右 と の関連 も な いと い って 宜 し いであ ろう。. 八 ・左︶ と の連 関 を示 し得 るも の の、 さ ほど密 接 な対 応 は見 出 せ ﹁ 東 屋﹂ と ﹁七夕 の逢 ふ瀬 ﹂ ︵. 七 ・右︶ ︱ の諸 点 が 考 えら れ る。 つぎ に、 七番 右 か ら 八番 左 への対 応 だ が、  同 じく ﹁ま や のあまり の 雨 そ そ ぎ﹂ ︵. │ 右. 番∨. ∧ 八. 七. 左 左 ∧ 七.

(6) (6) 「源氏」 「夜 の寝覚」 の番 いについて 下.  女 一の官 思 ひ か け た る、 川 の大 将 のと ほ 君 の、  秋 の夕 ぐ れ に、  思 ひ わ び て出 で て行 き た る書、 を か しく 書 き た る を、 いと よ く 思 ひ寄 せら る。 し かば かり 思 し靡 く 人 のあ ら ま し かば 、 と、 思 ふ身 ぞ く ち を しき﹂ と あ る。. 右 は、 末 尾 欠 巻 部 分 か ら寝 覚 の上 の詠 。 譲 位後 の冷 泉 院 は、 寝 覚 の上 への果 た せ ぬ恋 に悩 み、 加 え て大 皇 の官 の. 奸 計 も あ ってか、 寝 覚 の上 は、 自 河 院 で全 く 身 を し の ぶ状 態 に あ ったら し い。 家 族 にも 逢 えず 、 わ が 身 の不幸 を嘆. 九︶に詞書 ﹁し のび て白 河 の院 に侍 り け る に、 も の思 ふ秋 は あ く秋 七 月 の頃 。 な お ﹃風葉 和 歌 集 ﹄ 巻 四、 秋 上 公 〓一. ま た あり し か ど 、 いと か う は あ らざ り き か し、 と な が めわ び て﹂ と し て入集 、 結 句 ﹁ 秋 の初 風﹂ とす る。 まず 八番 左 と 九 番 左 と を検 討 す る と、. 八 ・左︶に対 応 し て、 ﹁ 露 ﹂︵ 九 ・左︶と類 似 し て いる。 一、 ﹁ 秋 ﹂ ﹁七 夕 ﹂ ﹁ 露﹂ ﹁ 秋 の夕 べ﹂ ﹁ 秋 風﹂︵ 八 ・左︶に対 し て、 女 一官 を恋 慕 し つ つ、 遠 く 大 君等 に寄 せ てき た想 いを反 劉 す 一、 亡 き紫 の上 を偲 ぶ源 氏 の心 ︵ 。 九 ・左︶ る源 氏 ︵. と い った点 に気 付 く が 、 散 供 ﹃芹 川﹄ 物 語 の内 容 によ っては、 も っと近 し い共通 項 が見 出 せる のか も知 れ な い。. こ の作 品 は、 ﹁ 古典文学大系 ﹃ 芹 川 大 将 物 語 の主 人 公 た る、 芹 川 大 将 の息 男、 と ほ 君 が、 女 一官 に 心 を寄 せた﹂ ︵ 源氏. 物五置、山岸徳平氏︶とも、 ﹁ と ほ 君 物 語﹄ の女 一の宮 に ﹃せり 川 物 語 ﹄ の大将 が 思 いを か け た﹂ 翁源氏物語評釈﹄別巻. 一、昔物語 の構成、玉上琢弥氏注︶物 語 とも 考 えら れ、 定 か では な い。 そ の男女 の関 係 が、 あ る いは光 源 氏 ・紫 の上 と 相 似 た と ころ が あ った のかも 知 れ な い。. つぎ、 八番 右 と九 番 左 と の関 係 は、 ﹁ 秋 ﹂ と いう 季 節 の共通 性 の ほ か、 強 い関 連 は な いよう に思 わ れ る。  む し ろ 八番 右 と九 番 右 に つ いて みる と、 一、 とも に、 末 尾 欠 巻 より 寝 覚 の上 の歌。 一、 季 節 は秋 。.

(7) 修. 槻 大. (7). 九 ・右︶。 散 供 し た物 語 本 文 では そ の順 序 ず 、 ま さ こ君 ら家 族 への思 いに悲 し む寝 覚 の上 の心 ︵.  自 河院 を 脱 出 な ら 八 ・右︶に対 し て、  院 ・大 皇 の官 の 奸 計 によ ってか、 思 う寝 覚 の上 の心情 ︵. いわ ゆ る寝 覚 の上 偽 死事 件 によ って母 の死 を信 じ て疑 わず 、 悲 嘆 のあ ま り 北 山 に籠 ってし ま ったま さ こ君 を. 番∨. が 逆 であ った かも 知 れ な いが 、 とも に子 を思 う 母 の情 愛 。. と いう強 い共通 項 を持 って いる。 以 上 の点 か ら、 八番 右 ︱← 九 番 右 と いう こと は動 か しが た いで あろう。. 秋 風 も 夕 べぞ宍九 。左︶ 荻 の葉 ﹂ ﹁ 秋 の夕 べ﹂ ﹁思 ひ わ び た る﹂ ﹁ 最 後 に九 番 左右 に ついては、 ﹁. ︱ と 対 応 し て いる。 秋 の夕 風穴 九 ・右︶ 荻 の葉﹂ ﹁ 等 に対 し て、 ﹁夕暮 ﹂ ﹁し を れ わ び﹂ ﹁. 結 局、 八番 左 から 九番 左 への対 応 、 および 八番 右 か ら 九 番 右 への関連 が あ る よう に思 わ れ る。. や たち ま き る に、 人 やり ならず 涙 にく れ て                                            関   白. み果 つま じ き 契 り なり け む と聞 こえ し ほど、 別 れ給 ひし夜 の心 地 思 し出 でら れ て、 な か な か心 尽 く しも や. す ゝ た 虻の蔵もただ 部ががらの心かして、屁山にて、住 右 鏡だしく絶えてのち、めぐりかひ縦へる秋、月%均・. いたづ ら に分 け つる道 の露 しげ み昔 お ぼ ゆ る秋 の空 か な. か ら、 人 目 のあ いなき を 思 ひ か へし て、 立 ち 出 で て翌朝 に                                右 大 将. 忍 び あ へず 、 御簾 のそば より 袖 を引 き寄 せ て、 く やし と思 ひ わ た る心 の内 をも ら し出 で ても か ひ な き も の. 左   兵 部 卿 の官 、 右 の大 臣 に通 ひ給 ひ て のち、 上 に対 面 し て、 静 か な る夜 の気 色、 昔 に通 へる御 気 色 を、 え. つぎ に十 番 の番 い。. 一応 、 上掲 の構 図 にし ておき た い。. 番∨. 右 右. ∧ 九 左一一一一→ 左 ∧ 八.

(8) (8) 「源氏」 「 夜 の寝覚」の番 いについて 下. か ざ り と て命 をす てし 山里 の夜 半 の別 れ に似 た る空 か な. 左 は、 宿 木 の巻 か ら薫 の歌。 匂 官 が 夕 霧 右 大 臣 の六女 と結 ば れ、   一人寝 の続 く中 君 は、 宇 治 に戻 り た い由 を薫 に消. 五〇︺が強 いて自 制 、 早 暁 に帰 邸 す るも の 息 す る。 翌 夕 訪 ね た薫 は簾 中 に通 さ れ、 彼 女 の袖 を捉 え て苦 衷 を訴 え る ︹. の、 恋 情 に苦 し み、  中 君 のも と に 文 を通 わ せ る ︹≡ こ 条。  な お ﹃風葉 和歌 集 ﹄ 巻 十 六、 〇四︶に、 詞 書  雑 一︵I 一. ﹁う ち の中 の君 のも と に て、 暁 近 く な る ま で物 語 し 明 か し て、  あ し た に つか は しけ る﹂ と し て 入集 す る。 ﹃風葉. 集 ﹄ 詞 書 に比 べ て、 ﹃十 番﹄ 左 の場 合 は、 物 語 本 文 を み ごと に要 約 し て、 そ の情 感 を巧 みに際 立 た せ て いる。. 当時は大納一一 当時は中君の時代︶十 八歳 。 男 君 の こ の詠 。 物 語 第 六年 、 寝 覚 の上 ︵ 一方 、 右 は中 間 欠 巻 部 分 から男 君 ︵. のち老関白︶の求 婚 を受 け、 父 入道 の強 い意 志 を知 った彼 女 は絶 望 し、 叔 父 左 大将 ︵   一方 、 悲 嘆 に暮 れ た男 君 も、 西. 山︵ 詞書中の ﹁石山﹂は誤り︶の彼 女 のも と に忍 び、 よ ろず 訴 え て四、 五 日間 を 過 ごす。 九 月 末 、 有 明月 の残 る頃 の密. 会 だ った ろ う と推 測 す る向 きも あ る。 右 の詞書 の場 合 も、 今 は散供 し た物語 本 文 を み ごと に要 約 し、 男 女 の別 れ、 そ の 心情 を鮮 明 に表 出 さ せ たと い って宜 しか ろ う。 九 番 左 と十 番 左 と を対 比 し て みよ う。 一、 とも に薫 の歌。. 九 ・左︶に対応 す る ﹁ 十 ・左︶な る語 。 露 しげ み﹂ ﹁ 秋 の夕 べ﹂ ﹁露 ふき結 ぶ﹂ ﹁ 一、 ﹁ 秋 風 も 夕 べぞ﹂︵ 秋 の空﹂︵ 九 ・左︶と、 匂 宮 の妻 な る  女 一宮 に惹 か れ る薫 の心情 ︵  女 二宮 を 妻 と し な が ら、 一、 揺 れ る男 心 と いう べき か。. 十 ・左︶は、 とも に同 類 のも の であろう。 ただ そ の粘 着 度 には いさ さ か差 異 が あ る。 中 君 に、 な お執 着 す る彼 の心 ︵  九番 右 と 十 番 左 に関 し ては、 ﹁ と も あ れ九番 左 ︱← 十 番 左 への流 れ は 認 め て おき た い。 つぎ、 秋 ﹂ と いう 季 節 は. 十 o左︶と は、 さ ほど 深 い関 連 九 ・右︶と、 中 君 への思慕 に苦悩 す る薫 ︵ 共 通 す るが、 家 族 に逢 え ぬ嘆 き に沈 む女 君 ︵.  両 者 に流 れ る心情 は、 そ れぞ れ別 趣 のも は見 出 せな い。 同 じ く、 九 番右 と 十 番 右 に ついても 、 ﹁ 秋 ﹂ は同 じだ が 、.

(9) 修 槻 大. (9). のが あ ろ う。 十 番 左右 に ついて見 ると、 一、 折 から秋 の風物 は、 こよ なく 共通 し て いる。. 明 け暗 れ の空 にう き 身 はき えな な む夢 なり け り と見 ても やむ べく. し. 二 品内 親 王 朱雀院第二. 十 一番 の番 いは、 次 の通り である。 、 左 柏木 の権大納言、起き てゆく 空も知られ ぬ 東雲 に 喰つこの露 の か か る袖 なり  とう れ へ聞 こえけ る返. 八. 以上十番左 ︱← 十番右 と考 えた い。. よ う。.   み ごと に 対 応 さ せら れ た と いえ  す ぐ れ た 詞書 の要 約 をも って、 す だ く虫 の音 に綾 な さ れ て、. 十 o右︶の性 格。 得 な い男 君 ︵ 、 と い った対 応 が著 し い。 碩 唐 詩 人 の定 家 が 決 し て見 逃 さ な い思慕 と別 離 の シー ンは 月 光 と. 、 十 ・左︶  同 じく、 強 引 に略 奪 結婚 ま では成 し た。 結 局、 お のが 本 性 か ら、 自 制 す る に終 る薫 ︵. 一、 こ の夜 の出逢 いが 、 いわば 二人 の男 の、 人 生 を切 り 換 え得 る 一つの チ ャン スでも あり得. いな い。. 十 ・右︶ 十 ・左︶は、中 君 結婚 を前 に、男 君 の恋 慕 や別離 の悲 傷 ︵ 一、 中 君 に寄 せ る薫 の切 な い慕 情 と別 れ の淋 しさ ︵ 夜 の寝 覚﹄ 中 間 欠 巻 の該 当 部 分   ハイ ライ ト oシー ンの 一つであ った。 想 像 す る に、 ﹃ と相 通 じ、 両 物 語 の中 で は、 では、 十 番 左 に相 当 す る物 語 本 文 のよ う に、 景 情 一致、 情 趣 纏綿 た る名 文 が綴 ら れ て いた に違. 10 31. 左今 全左.

(10) (10) 「夜 の寝覚」の番 いについて 下 「源氏」. 右   寝 覚 のなげ き のは じ め、 暁 の別 れ に、 世 に知 ら ぬ つゆけ さ なり や別 る れど ま た いと か か る暁 ぞ なき、. と侍 り け る返 し                                                                    民部卿 室 白 露 のか か る契 り を見 る人 も き え てわ び しき暁 の空. 左 は若 菜 下 の巻 、 女 三 官 の歌。 紫 の上 の病 い篤 く、 源 氏 の憂 慮 深 ま る中、 柏 木 中 納 言 は彼 女 女 三官 に愁 訴 、 激 情 の. 果 て理 性 を失 う。 思 わ ぬ過 失 に悩 む女 三 宮 、 あ わ ただ し く 別 れ を告げ る柏木 、 時 に四月 十 余 日ば かり の こと。 物 語. 本 文 に、 ﹁のど か な らず 立 ち 出づ る、  明 け ぐ れ、  秋 の空 よ り も 心づ く し なり。 おき て行 く 空 も 知 ら れ ぬあ け ぐ れ に. いづ く の露 のか か るそ で な り、 と、 ひき 出 で て憂 へ聞 ゆ れば 、 出 でな む とす る にす こし慰 め給 ひ て﹂ とあ る。 柏 木 の歌 の第 三 ・四 句 に異 同 が 見 ら れ る。. 当時︶ の詠 。  九条 で の 一夜、 婚 約 者 の妹 中 君 と契 った男 一方 、 右 は巻 一か ら対 の君 ︵  但 馬守 の三女 と誤 認 し て、 一 当時は権中納一 こ は、  中 君 の侍 女 対 の君 と歌 を交 わす。 多 分、 三女 の姉 だ ろ う 君︵  有 明 け月 にま ざ れ て立 ち去 る折 、.   なげ き やす ら は る と思 い、 今 後 の交 渉 を う な が す 条。 時 に七 月 十 七 日 の早 暁 、 物 語 本 文 には、 ﹁たち か へり つ ゝ、. ゝほど 、 月 も いり ぬ べし。 よ にし ら ぬ露 け さ なり や別 る れど ま た いと か ゝる暁 ぞ な き、 いたく 思 ひ乱 れ、 独 り ごち た るけ は ひ の、 な の め な らず な ま めか し き も ﹂ と あ る。 いま 十 番 左 と十 一番 左 と を 比 べる と、. 、﹁ 十 ・左は秋 の空、十 一・左は四月中旬︶ 一、 季 節 こそ違 え ︵ 露﹂ ﹁ 袖 ﹂ の共通 語 が 見 ら れ、 折 か ら の 時 間帯 も ﹁ 夜. 。 なお十 一番左に関する物語本文に ﹁ 明けぐれ、秋 の空よりも心づくしなり﹂とある︶ 深 き 朝 ﹂ で あ った ︵. 一、 と も に暁 の別 れ で あ った。 十 ・左︶は、 不慮 の過 失 を悔 いる女 一、 中 君 への恋 情 も だ しが たく、 よ う やく 理 性 に支 えら れ た薫 の揺 れ る心情 ︵. 十 一・左︶に、 よく対 応 し て いる。 三官 と、 自 責 の念 に か ら れ なが ら官 を恋 う 柏 木 の心情 ︵.

(11) 修 槻 大. (11). 一、 とも に両 者 は不 倫 の恋 で あ った。  薫 の歌 に対 し て、 ﹁承 り ぬ。 いと な やま し く て、 えき こえさ せず ﹂ 一、 十 番 左 の場 合、 歌 の贈 答 には至ら ぬが、. 詞書の中にある︶ と柏 木 の詠  贈 歌 ﹁起 き て ゆく︱ ﹂ ︵  女 三 官 の歌 の前 に、 と、 中 君 は 返 事 を し て いる。 十 一番左 は、 が あ る。.  一方、 十番 右 と十 一番 左 の関 係 は、 など の諸 条 件 が 対 応 し て おり 、 十番 左 ︱← 十 一番 左 と考 えら れよ う。. 十 一・左︶と は、 ﹁ 十 ・右︶と ﹁ 涙 の別 れ﹂ の情 一、 季 節 こそ異 な れ、 コ択にく れ て﹂ ﹁空﹂︵ 露 のか か る袖﹂ ﹁空﹂︵ で照応 し て いる。. 一、 ﹁か ざ り と て︱ 宍 十 ・右︶な る男 君 に対 し て、 改 作 本 ﹁夜 の寝 覚 ﹂ のよう に、 こ の個 所 には中 君 の歌 も 当 然 あ った と覚 しく 、 つ いては、 十 一番 左 の贈答 歌 の構 成 と 一致 す る。. 一、 老 関 自 の存 在 を前 に、 義 兄 の男 君 と悲 痛 な 別 れ を嘆 く 中 粛︱︱ この男 女 の構 図 は、 源 氏 の厳 たる存 在 を恐 れ なが ら、 不 倫 の恋 に苦 悩 す る柏 木 ・女 三宮 の仲 に通 じ合 う。. 以 上 の対 応 を見 る に、 十 番 右 ︱← 十 一番 左 の関 連 も 無 視 し得 な いであろう。 つぎ、 十 番 右 と十 一番 右 を みると、 一、 とも に秋 の早 暁 の別 れ。 一、 ﹁別 れ﹂ ﹁一 俣﹂ ﹁白露 ﹂ ﹁空﹂ など、 同 傾 向 の語 が見 ら れ る。.  或 いは 定 家 の錯 覚 で、 ﹁石 一、 十 番 右 の詞 書 ﹁石 山 に て︱ ﹂ は、  考 証 の末 、 ﹁西 山﹂ の誤 写 であろう とす るが、. 山﹂ の連 想 か ら、 即 そ れ は男 君 と中君 と の最 初 の出 逢 い︱ 九条 の 一夜 の ことが 脳一 暴 に浮 か び、 十 一番 右 へ結 び つ い たも のか。. など の関 連 が見 ら れ よう。 十 番 左 と十 一番 右 と の対 比 では、 ﹁暁 の別 れ﹂ ﹁空﹂ など 類 似 し て いるが、 場面 描 写. 十 ・左︶と男 君 ︵ 歌は対の君のも のだが︶の心情 ︵ 十 一・右︶と の間 には異 差 が あ って、 両首 の関係 は、 に おけ る薫 の心情 ︵.

(12) (12) 「夜 の寝覚」の番いについて 下 「源氏」. :. 露 の か か る袖﹂ ﹁明 け暗 れ の空﹂ ﹁う き 身 はき えな な む﹂︵ 一、 ﹁ 十 一・左︶に対 し て、 ﹁なげ. 十 一・右︶など、 同 趣 の感 情 が 流 れ て き﹂ ﹁暁 の空﹂ ﹁白露 のか か る契 ﹂ ﹁き え てわ び しき﹂︵ いる。 一、 と も に贈 答 を詞書 の中 に取 り 込 ん で いる と い った対 応 を見 出 せよ う。. 以 上 の こ と か ら、 上 図 のよ う な複 雑 な対 応 を考 え ておき た い。 と も あ れ、 十 番 左右 から十 一. 番 左 右 に か け て、 物 語 に対 す る定 家 ら し い志 向 の温 れ出 た 一面 を感 得 せし めら れ、 詞 書 の作 り. 一方 の匂 官 は、 中 君 に残 る薫 の移 り 香 を怪 し み、 二人 の仲 を 疑 って中 君 重 貝め る ︹五七︺条。 物 語 本 文 に、 ﹁いと ね ,. 左 の歌 は宿 木 の巻 に あり 、 中 君 のも の。 十 番 左 の場 面 に続 く。 中 蒋 への情炎 に苦 しむ薫 は匂 官 を羨 ま しく 思 うが、. た え ぬ べき 契 り にそ へて惜 し から ぬ命 を け ふ にか ざ り てしが な. を 命 の み こそ さ だ めが たけ れ、 と侍 り け れば                                             姉   上. 右   関 白、   一品官 に参 り そ め給 ひけ る 日、 思 ひ なげ き 給 へる を な ぐさ め て、 よ し や君 なが き契 り は絶 え せじ. 見 な れ ぬる中 の衣 と頼 みし を かば かり に て や か け は な れ な む. 左   な れ け る袖 の移 り 香 を、 と侍 り け る御 返 し                                    兵 部 卿 の官 の上. つ いで十 二番 の番 い。. 方 ひ と つにも 神 経 の細 や か さが 注 目 さ れ る。. :. 一、 季 節 こそ違 え、 早 暁 の別 れ。. さ ほど 積 極 的 なも のは な いと いえ よう。 最 後 に、 十 一番 の番 いに触 れ よう。. ∧ ∧.

(13) 槻 大. (13). 、 、 たく て、 ﹃ま た人 に馴 れけ る 袖 のう つりが を わが 身 に し め てう ら み つる か な﹄ 女 は  あ さ ま し く のたま ひ続 く る. 。 、 に、 言 ふ べき方 も な き を、 いかが は、 と て﹂ と あり 中 君 の歌 に続 く 、 。 、 右 は中 間 欠 巻 か ら 大 君 の歌。 物 語 第 九年 か 時 に大 君 二十 六歳 ほど 老 関 白 は中 君 を熱 愛 次 第 に姉 妹 の仲 は回 、 、 っ 、 復 し てゆく。 翌 々年 の夏 は 五月 雨 の頃 か 男 君 は満 た さ れ ぬ心 を 慰 めよう と  故 中 務 卿 の 姫 君 に 言 い寄 たり. 。 秋 、 ついに淋 し さ に堪 え か ね て、 朱 雀院 の女 一官 の降 嫁 を願 い出 て許 さ れ る 時 に懐 妊 の妻 大 君 は深 い憂 いに沈 ん 、 、 で しま う。 男 君 と妻 大 君 と の贈 答 を めぐ る この場 面 の背 景 には ﹃源 氏 物 語﹄ 須磨 の巻 に て  源 氏 が 紫 の上 と訣 別 す る折 の ﹁いけ る世 の別 れ を知 ら で契 り つつ命 を人 にか ざり け るか な は か な し﹂ など浅 は か に聞 え な し給 へば. 惜 し か ら ぬ命 に か へて目 の前 の別 れを しば し とど め てしが な 、 。 、 げ にさ ぞ思 さ るら む、 と、 いと見 棄 て難 け れば 明 け は てなば は し たな か る べき により いそ ざ出 で給 ひ ぬ 、 、 無 名 草 子 ﹄ 本 文 に、 ﹁大 将、 女 一の官 へ参 り 給 ふ折 姉 上 絶 え ぬべき な る情 感 が こ めら れ て いる で あ ろう。 な お ﹃ 、 と て、 とど めも あ へぬ涙 の気 色 など こそ、 いと ほ しけ れ﹂. 契 り に代 へて惜 し か ら ぬ い のち を今 日 に限 り てしが な. 、 共通 し た語 を含 む。. 。 、 無名草子﹄=桑原博史氏に拠る。以下同然︶と あり 第 二句 に異 同 が 見 え る ︵ 引用は新潮日本古典集成 ﹃ 十 一番 左 か ら 十 二番 左 へ。 ﹁ 袖﹂ ﹁か け は な れ なむ﹂ ﹁うき身 はさ え な な む﹂ など 。 とも に詞 書 に贈 歌 を記 し、 そ の返 し の歌 で あ る. 十 一・左︶に対 し て、 薫 と の仲 を疑 う 匂 官 の責 め に苦 し む中 柏木 と の不 慮 の過 失 を悔 やむ女 三官 の心 の痛 み ︵.

(14) 。 と も に共 通 し て女 君 たち の心 は痛 ま し い。 十二 ・左︶ 君 の心 ︵. 十 一番 右 と十 二番 左 と の関 係 は、 詞 書 に贈 歌 を含 む点 は 共通 す るが、 本質 にか かわ る深 い対 応 は見 ら れ な い。 十. 1言 右. を持 つが、 物 語 展 開 の上 で、 より 密 接 な困 果 関 係 は な い。 十 二番 の左 右 に つい ては、. 一、 とも に詞 書 に贈 歌 を含 む。 一、 薫 の存 在 が 災 いし て、  夫 匂 宮 の猜 疑 心 に責 めら れ、  夫婦 の仲 の 危 機 を愁 う る 中 君 の心. 十一一・左︶に対 応 し て、 女 一官 に嫉 妬 し て 夫 と の仲 に絶望 す る大 君 の心情 ︵ ︵ 十二 ・右︶は悲 惨 で. あ る。 ﹁かば かり に てやか け は な れ な む﹂ ︵ 左︶・﹁命 をけ ふにかざ り てし が な宍 右︶ と、 二人 の 心 の叫 び は いた ま し い。. と の照応 を見 出 し得 よう。 十 二番 左 ︱← 十 二番 右 の対 応 と みた い。. 以 上、 十 一番 か ら 十 二番 にか け て の対 応 関 係 は 上掲 のよう にな る の で は な か ろう か。. ちがだ 離臨 浄 配嚇く潔茅 の の えかへりてもいつか詳れむ. いづ れぞ と露 の宿 り を わ か む 間 に小 笹 が原 に風 も こ そ吹 け っ 右   院 の御 気 色 よ ろ し か ら で、 女 宮 具 し 理 り てヽ 冷 泉 院 に渡 ら せ給 ひにけ る のち、 右 大 将、 自 河 の院 に参 し り て、 空 し く たち か へる と て、 穫 にだ に詳 れ給 ふな よ、 と侍 り け れば             女 三宮 の中 納 言. 左  尚 侍 、 やが てき え なば たづ ね ても、 と侍 り け れば. 九. 31. 十 三番 は. 右. 一番 右 と十 二番 右 と の対 応 も、 両 者 の間 に、 ﹁なげ き ﹁契 り など﹂ の共通 し た 語 が見 え、  ま た、 とも に詞書 に贈 歌. ∧. 十. 左一一一一 → 左 十. ∧. (14) 「 源氏」 「 夜 の寝覚」の番いについて 下.

(15) 修 槻 大. (15). と な って いる。 左 は、 花 の宴 の巻 から源氏 の歌。 二月 二十 日余 り の 日、 観 桜 の御宴 が 催 さ れ、 源 氏 o頭 中 将 たちが. 舞 を奏 し詩 の披 講 が あ る。 そ の夜 半、 源氏 は弘徽 殿 の細 殿 で朧 月 夜 の君 と逢 う 曇 百。 女 の歌 ﹁う き身 世 に やが て消. え なば 尋 ね ても 草 の原 をば 間 は じ と や思 ふ﹂ に対 す る返 し。 こ の後 の展 開 は、 五番 左 の場 面 と な る。. 右 は、 末 尾 欠 巻 か ら、 女 三 官 の侍 女 中納 言 の君 の歌。 三位 中 将 に昇 進 のま さ こ君 は、 承 香 殿 女 御 腹 の女 三官 と相. 愛 の仲。 そ れ を察 知 し た冷 泉 院 は、 立腹 し てま さ こを勘 当 、 急 ざ 白 河院 から 官 を引 き 取 ってし ま う。 事 情 を知 ら. ず 、 自 河院 に女 三官 を訪 ね たま さ こ君 は、 侍 女 の中 納 言 の君 から、 そ の訳 を教 えら れ悲 嘆 にく れ る。 ﹃風葉 和 歌集﹄. 巻 十 七、 雑 二 ︵三二〇九︶に、 詞 書 ﹁ 右 大将、 冷 泉 院 にか し こま る こと侍 り て、 出 で来 にけ る に、 忘 る な、 と申 しけ れば ﹂ と し て入集 し て いる。 ま た ﹃ 無 名草 子﹄ に、. 何 事 より も い みじ き こと は、 ま さ こと女 三 の官 と の御 間 と こそ。 院 の勘 当 に て いと は し た なき 折、 中 納 言 の君 に逢 ひ て、 吹 き払 ふ嵐 に わ び て浅 茅 生 に露 残 ら じ と君 に つた へよ と宣 へば 、 中 納 言 の君 嵐 吹 く 浅 茅 が 末 に置 く露 の消 え か へり ても い つか 忘 れむ など 言 ふ ほど の ことま で。. 十四番右を参照︶が、 ﹃ と あり、 歌 の順 序 が 逆 転 し て いる ︵ 無 名草 子﹄ 作 者 の誤 り であ ろう。 な お石 川徹 氏 は、 こ の 一 件 に ついて、. お そら く院 は真 砂 君 に、 女 主 人 公 と の仲 の執 り持 ち を強 く要請 さ れ た のであ ろう が、 母 の苦 悩 を見 ては、 真 砂 君. は、 院 のお い い つけ に従 え な か った に違 いな い。 幼 な いう ち は やむ を得 な いと 思 ってお許 し にな って いた 帝 だ. が、 も は や成 人 し た真 砂 に対 し ては厳 しく、 遂 に目通 り を許 さ れず 、 御所 への出 入り を お差 し止 め に な った ので.

(16) (16) 「 夜 の寝覚」 の番いについて 下 「 源氏」. あ ろ う。 そ の た め、 院 と同 じ御 所 に生 活 し て居 ら れ る女 三官 と は会 え な い仕儀 と な った。 結 果 的 に偶 然真 砂 と女. 三 宮 と の恋 愛 は仲 を引 き割 か れ る こと にな ったと思 わ れ る。 院 が 二 人 の関 係 を憤 ら れ た とす る 旧説 は、 事 実 と相 違 し て いたよ う に思 う。. と注 し てお ら れ る 電 今 後 、 改 め て検 討 し て みた い。 さ て、 十 二番 左 と十 三番 左 と の対 応 を見 る と、 一、 とも に詞 書 に贈 歌 の 一部 を含 む。 らヽ 二 人 の仲 の絶 え る を恐 れ る 心情 。 と い った共通 性 を見 出 し得 る。 つぎ に、 十 二番 右 か ら 十 二番 左 への方 向 を見 ると、 またはその 一部︶ を含 ん で いる。 一、 とも に詞 書 に贈 歌 ︵. 十二 ・右︶に対 し て、 ﹁やが てき え なば﹂ 一、 ﹁命 の み こそ さ だ めが たけ れ﹂ ﹁惜 し か ら ぬ命 ﹂ ﹁か ざ り てしが な﹂︵ 土 二・左︶など、 命 は か な さ を 示 す語 の類 似 性 。 ﹁ 露 の宿 り﹂︵. 入集 の詞書 にも ﹁ 忘るな﹂とあり、 何か本来 のそれに 類似した歌の 一部であ つたのかも知れない︶を受 け. o左︶の に対 し て、 同 じく 詞書 の、 ﹁私 にだ に忘 れ給 ふな よ﹂︵ 贈歌の 一部ではないが、﹁ 風葉和歌集﹄. 語 が 示 さ れ る。 一、 詞 書 に ﹁やが てき えなば ︱ ﹂ と 贈 歌 の 一部 を含 み、 ﹁と侍 り け れば ﹂ で受 け て いる ︵ ±二. 十三 ・左︶に対 す る ﹁ 風﹂︵ 露 ﹂ ﹁小 笹 が 原 ﹂ ﹁ 一、 ﹁ 白露 ﹂ ﹁ 浅茅 が 末﹂ ﹁ 嵐宍 十三 ・右︶の. れ な い。 十 二番 左 右 の対 応 は、. 土一   とり た て て の 対応 は認 めら ・右︶に対 し て、 ま さ こ君 を励 ま す 中 納 言 の君 の詠 ︵ 丁 右︶で、.  十 二番 右 と十 三番 右 を比 べる と、 大 君 の絶 望 の叫 び ︵ に、 そ れぞ れ対 応 性 を見 出 し た い。 士 一. 一、 二 人 の仲 のは か なき縁 の途 絶 え を嘆 く 心情。. ∧十 二番 ∨ 左 ︱︱← 右. 左︱ ︱← 右 ∧十 二番∨.

(17) 1多. 槻 大. (17). て ﹁と侍 り け れば ﹂︵ 十三 ・右︶と あ る。. 一、 仲 の途 絶 えを恐 れ る朧 月夜 の君 を支 えよう とす る源 氏 の姿 勢 ︵ 十三 ・左︶に対 し て、 絶 望 す る ま さ こ君 を 励 ま 十三 ・右︶は、 よ く 対 応 し て いる。 す 中 納 言 の君 の態度 ︵. │ゴ. 露 の宿 り﹂ ﹁小 笹 が ︵ 原ど   ﹁ 一、 ﹁ 十三 o左︶に対 す る ﹁ 風﹂︵ 露 ふき む す ぶ﹂ ﹁ 木枯 ら し﹂ ﹁ 荒 き 風﹂ ﹁ 小萩 が. 順 序 に従 って、 十 三番 左 と十 四番 左 と を 比 べると、. へし﹂ と し て入集 、 ただ し第 三句 ﹁つれ て﹂ とす る。 ま た ﹃ 無 名 草 子﹄ 評 言 に ついても前 述 の通 り で あ る。. 右 は末 尾 欠 巻 から、 ま さ こ君 の歌。 十 三番 右 の受 け で あり、 ﹃風 葉 和 歌集 ﹄ 巻 十 七、 雑 二 ︵≡ 〓 ○︶に、 詞書 ﹁か. 九︺条。 母 君 の文 を見 て悲 嘆 す る帝 を描 いた ︹. に ﹁ 官 城 野 の露 吹 き む す ぶ風 の音 に小 萩 が も と を思 ひ こそ や れ﹂︵ 第三句に異同がある︶と あ つた。 命 婦 が持 ち帰 った. 。 帝 の詠 左 は桐 壷 の巻 から、 桐 壺 更 衣 の母 の歌 。 秋 の 一夜、 靭 負 命 婦 が 勅 旨 を奉 じ て、 亡き更 衣 の母 を訪 ね る ︹八︺. ふ ち生 ふ臨 部だわびて潔茅 吹きはらぶ の のこらじと君に解へよ. 右   中 納 言 の君 、 き え か へり ても い つか忘 れむ、 と聞 こ え け る返 し                          右 大将. 桐 壺 更 衣母. と 仰言 せ 言[ あ り け ■ オ. 以 上 の こと から、 十 三番 左 ︱← 十 三番 右 と考 え て問題 は な か ろ う。 結 局 、 十 二番 ・十 三番 の関連 は、 前 頁 の図 の. 官亀 城木 野の のゝ 露 ふ き む す ぶ 木こ 枯か ら し に. よ う に み て おき た い。. 内 よ り. 十 四番 の番 いに移 る。 御宮 フ 急万 所 力> く れ て の み. 荒 き 風 ふ せざ し かげ の枯 れ し より 小 萩 が 上 ぞ しづ 心 なき. 左.

(18) (18) 「夜 の寝覚」 の番いについて 下 「源氏」. 十四 。左︶など、 同 趣 の語 が見 ら れ る。 ︵ 上と ︵ 一、 とも に詞 書 に贈 歌 の 一部 を含 む。. 十三 o左︶に対 し、 更 衣 亡 き あ と、 若 宮 を思 う 帝 と母 君 と 一、 仲 の途 絶 えを恐 れ る朧 月 夜 の君 を支 え る源 氏 の詠 ︵ 。 十四 ・左︶ の心 の交 流 ︵ と い った対 応 が見 ら れ る。 十 三番 右 と十 四番 左 に関 し ては、. 十四 ・左︶など、 露 ﹂︵ 十三 ・右︶に対 す る ﹁荒 き 風﹂ ﹁ 枯 れ し より﹂ ﹁ 嵐 吹 く﹂ ﹁白露 ﹂ ﹁消 えか へり ても﹂︵ 一、 ﹁ 同 類 語 が 見 ら れ る。. 十三 ・右︶に応 じ た歌 の構 成 と、 同 じく贈 歌 の 一部 を詞書 に含 ん だ ︵一四 ・左︶歌 の 一、 ﹁私 にだ に忘 れ給 ふな よ﹂︵. 構 成。 十三 o右︶に対 す る、 更 衣 亡 き あ 一、 女 三 官 と の縁 切 れを憂 う ま さ こ君 を支 え よ う とす る侍 女 中 納 言 の君 の心情 ︵. 。 十四 ・左︶ と、 若 官 を め ぐ る帝 と母 君 と の心 の交 流 ︵ 。 と、 よ く 対 応 関 係 に あ る と いえよ う。 十 三番 右 と十 四番 右 に つ い ては贅 言 を要 す ま い 既述 し た よ う に完 全 な贈 答 歌 で あ る。 十 四番 左 右 の関 係 は、. 嵐﹂ 露 ﹂ ﹁吹 き は ら ふ﹂ ﹁ 十四 ・左︶に対 し て、 ﹁ 露 ﹂ ﹁ふき むす ぶ﹂ ﹁木 枯 ら し﹂ ﹁荒 き 風 ﹂ ﹁かげ の枯 れ し﹂︵ 一、 ﹁ 十四 ・右︶など の語 。 ﹁ 露 の こら じ﹂︵ 一、 と も に詞 書 に贈 歌 の 一部 を含 む。. 十四 ・左︶と、 女 三官 に対 す る仲 の途 絶 えを、 絶 望 一、 桐 壷 帝 に対 し て、 若 官 の将来 を訴 え る母 君 の切 な る心情 ︵. 十四 ・右︶と の間 には通 じ 合 うも のが あ ろう。 的 に中 納 言 の君 に訴 え るま さ こ君 の心 ︵ 、 、 など の諸 点 を見 出 す ことが でき よう。 十 三番 と十 四番 と の対 応 関 係 を総 合 す る に 何 と い っても強 力 な のは 十.

(19) 修 槻 大. (19). 、 三番 右 と十 四番 右 と が、  物 語 本 文 の上 か らも ︵ 末尾欠巻 の部分であり、物語上に現存本文はないけれども︶  完 全 な 贈 答. 露 の こら じ﹂ ﹁ へり ても ﹂ ﹁ 十四 。右︶と いう対 応 が見 ら れ る。 浅 茅 生﹂ ﹁吹 き は ら ふ嵐 ﹂︵. 一、 ﹁き え なば ﹂ ﹁ 露 の宿 り﹂ ﹁ 土一 小 笹 が原 ﹂ ﹁風 も こそ吹 け﹂︵ 丁 左︶に対 し て、 ﹁き えか. 対 応 に限 っては、. 後 番 右 への連 関 は、 まず 問題 にす べき 対 応 関 係 が見 ら れ か か った。 ただ十 三番 左 と十 四番 右 の. く ことは、 今 更 いう ま でも な い。 さ て、 過 去、   一番 か ら十 二番 ま で の ケー スでも、 前 番 左 から. な お、 十 三番 左 と十 四番 右 と の対 応 に触 れ て おき た い。   一般 に歌 合 の場 合、 左 方 を 上 位 に置. 得 ま い。. 歌 の関 係 に あ る こと だ ろう。  ただ し、   ま た十 三番 右 ︱← 十 四番 左 の対 応 も や は り 無 視 し  十 三番 左 ︱← 十 四番 左、. ∧十 四番 ∨ 左 →︱← 右. 左︱ ︱← 右 ∧十 二番 ∨. 一、 詞 書 に贈 歌 の 一部 を含 む。. 一、 朧 月 夜 の君 と の仲 を結 び 続 け よ う と す る源 氏 の願 い ︵ 十三 ・左︶と、 女 三官 と の縁 を途 絶 えさ せま いと悲 願 す 。 十四 ・右︶ るま さ こ君 の心情 ︵. 一〇. 前坊御息所. と い った共 通 性 を見 出 し得 る。 当 然 なが ら十 四番 右 は、 十 三番 右 か ら、 より 直 接 的 に引 き出 さ れき たも の では あ るが、 結 果 的 に、 そ れ は十 二番 左 とも 、 よ く 照 応 し て いた、 と いう こ と に な る ので あ ろう か。. 十 五番 は 左   葵 の上 か く れ給 ひ に し、 九 月 九 日、 菊 に つけ てさ し置 か せ給 ひ け る 人 の世 を あ は れ と聞 くも つゆ け き におく る る袖 を思 ひ こそ や れ.

(20) 、 、 右   白 河 の院 より あ なが ち に逃 れ出 で給 へるを は じ め て聞 か せ給 ひ て つか は し け る御 文 に    中 官. 見 し ま ま の夢 のう ち にぞ ま ど は る る たち おく れ に し身 をう ら み つ つ 、 。 と な って いる。 左 は、 ﹃源氏 物 語 ﹄ 葵 の巻、 六条 御 息 所 の 歌 であ る 葵 の上 の 容 態 が 急 変 し て逝 去曇 〓 ︺ 悲 嘆 に. 、 物 語 本 文 に ﹁九 月 九 日﹂ と いう 日取 り は な い。. 、 、 、 く れ る源 氏 と左 大 臣 が、 続 経 す る ﹁深 き秋 の あ は れ勝 り 行 く 風 の音 身 にし みけ る﹂ 頃 六条 御息 所 か ら消 息 が 、 。 菊 の気 色ば め る枝 に、 濃 き青 鈍 の紙 な る文 つけ て﹂雪 天 ︺と記 さ れ て いる な お 八月 司 召除 あ る。 物 語 本 文 に、 ﹁ 日 の夜 に葵 の上 が 急 逝 、 二十 日余 日 の送葬 で あ るが. 、 ま た蘇 生 す る ︵ いわゅる寝覚 の上偽死事件︶と いう非 現 実 的 な秘 法 によ って、. もと石山の姫君︶ の歌。 九番 右 ﹁しを れわ び︱ ﹂ から の続 き。 窮 地 に陥 った 右 は ﹃夜 の寝 覚 ﹄ 末 尾 欠 巻 か ら 中 宮 ︵ 寝 覚 の上 は、 何 物 か の力 によ って急 死. 13. 一、 季節 は、 とも に秋 。. 十五 o左︶ と、  似 通 った表 十四 ・左︶と ﹁つゆ け き﹂ ﹁おく る る﹂︵ 露﹂ ﹁ 枯 れ し より﹂︵ 一、 ﹁ 現 が あ る。. 十四 ・左︶に対 し て、 葵 の上 の死 を悼 み、 源 一、 桐 壷 帝 に対 し て、 更 衣 の死 を歎 く母 君 の心 ︵. 。 十五 ・左︶ 氏 に同情 す る御 息 所 ︵ 、 など の共 通 点 を見 出 す ことが でき よ う。 っいで十 四番 右 と十 五番 左 と の場 合. まさこ勘当の時期について小松登美氏は、物語第二十二年晩秋とされる︶o 一、 とも に季 節 は秋。 ︵ 十五 ・左︶な る語 。 十四 ・右︶に対 し て、 ﹁つゆけ き﹂ ﹁おく る る﹂︵ 露 ﹂ ﹁の こら じ﹂︵ 一、 ﹁さ え か へり ても﹂ ﹁ 、 十四 ・右︶と、 葵 の など の共 通 項 は見 出 せ るが、 物 語 の展 開 の面 では 女 三官 と の仲 を断 た れ たま さ こ君 の悲 嘆 ︵. 31. て、 十 四番 左 と十 五番 左 とを 比 べ る と、. 。 、 自 河 院 か ら脱 出 す る を得 た。 四、 五句 は  石 川氏 注 に ﹁ヒ ロイ ンが す で に尼 にな って いた のだ ろう﹂o と あ る さ. 左傘 傘左. (20) 「源氏」 「夜 の寝覚」 の番いについて 下.

(21) 修 槻 大. (21). 十五 ・左︶と、 両 者 にそ れ ほど の緊密 性 は な か ろう。 十 四番 右 と十 五番 右 と の間 には対 応 上 の死 を悼 む御 息 所 の詠 ︵ 性 なく、 十 五番 左 右 を 比 べると、. 一、 とも に秋 の出来 事 。 十五 ・左︶に対 し て、 一、 葵 の上 の真 死 ︵   一時 は母 寝 覚 の上 の死 を信 じ て疑 わず 、 悲 嘆 にく れ た中 官 の心情 を付 度 十五 ・右︶ する ︵. と い った事 情 が あ る。  以 上 の 諸 条 件 を 総 合 的 に 判 断 す ると、 前 頁 の図 のよ う な対 応 を考 え て宜 し いの では な か ろ う か。. 十 六番 を み ると、. 左   桐 壺 の御 息 所 かく れ て のち                                                        故院 御 製 たづ ね ゆく 幻 も が な つてに ても魂 のあり か を そ こと知 る べく 右   中 官 より、 たち おく れ にし身 をう ら み つ つ、 と侍 り け る御 返 し 雲 の波 へだ つる空 に ただ よ へど 君 に伝 ふ る 幻 も な し と あ る。. 左 は 桐 壺 の巻 か ら 帝 の詠 。 靭 負 命 婦 の復 命 、 亡 き 更 衣 の母 君 の歌 ︵ 十四 ・左︶を 受 け て、 ﹁御 装 東 一領 、  御 髪 上 の. 調 度 めく物 ﹂ を手 に し た帝 は、 ﹁なき人 の住 処 尋 ね出 で たり け む、 し るし の 叙 な ら ま し かば 宍九︶と思 わ れ る。. び の歌 を贈 った 中 官 に対 す る ﹁返  母 君 生存 を知 って 宣目 右 は、 末 尾 欠 巻 か ら 寝 覚 の上 の歌。 十 五番 右 を受 け て、. し﹂。  そ の頃 、  寝 覚 の上 は世 間 には お のが 生存 を秘 し なが ら、 主 人公 関 白 や ま さ こ君 たち とも会 って、 心慰 めら れ. 幻 も な し﹂ は、 方 ± o幻 術 士 の居 な か った こと を指 す。 さ て十 五番 左 と十 六番 る 日 々を送 って いた か。 歌 の中 の ﹁.

(22) (22) 「源氏」 「夜 の寝覚」 の番 いについて 下. ∧十六 番∨ 左 →︱︱右. ∧十 五番 ∨.   む し ろ十 四番 左 と十 左 と を 比 べると、  死 別 を題 材 にし て いるが、  確 か に、 季 節 は とも に秋 。. 六番 左 とが 対 応 し て い ると いう べき で あ ろう。 十 五番右 と十 六番 左 と の対 応 は見 ら れず 、 十 五. 番 右 か ら、 十 六番 右 に対 す る関連 は、 相 互 の詞書 を読 む ま でも なく、 末 尾 欠 巻 におけ るそ の個.   ひ と え に ﹁幻﹂ ︵ 方士 ・幻術士︶ の発 所 の物 語 本 文 は 一貫 し て いた であ ろ う。  十 六番 の番 いは、. 想 に つなが るも の で あ ろ う。 白 河院 を脱 出 す るま で、 いか な る方 策 に ても、 お のが 生存 を中 宮. に知 ら せ得 な か った寝 覚 の上 の苦 衷 ︱︱ 楊 貴 妃 の魂 の在 拠 を求 め得 た方 士 の存 在。 ま こと長恨 歌 の話 は羨 し か った で あ ろう。 即 そ れ は 桐 壷 帝 の願 望 でも あ った。. こう し た見 地 か ら 、  十 五番 右 と 十 六番 右 と の 対 応 を第 一義 的 に捉 え る べく 。 上掲 図 のよう な 関 連 を考 え ておき た い。. 十 七 番 の番 いに移 る。 左   須磨 の浦 へ思 し たち し頃 、 院 の御 墓 に参 ら せ給 ひ て な き かげ も いか が 見 るら む よ そ へつ つな が む る月 も 雲 が く れ ぬる. 右 大将.   つぎ の年 の春 、 桜 に つけ て中 官 に 右   母 上 か く れ給 ひ ぬと 聞 こ え し時 より、  北 山 に こも り 居 て、. 知 らざ り し深 山 が く れ の花 の色 を あ は れ昔 と泣 く 泣 く ぞ見 る. 三月二十日余日︶ を前 に、  源 氏 は桐 壷院 の 御陵 に参 拝 す る。 物 語 本 文 は初 旬 左 は、 須 磨 の巻 か ら 源 氏 の歌。 退 京 ︵. 七八︶に、 詞 書 ﹁須磨 にう つろ は せ給 はん と て、 故 ﹁な き かげ や﹂ と す る。 な お ﹃風葉 和 歌 集 ﹄ 巻 十 七、 雑 二 ︵〓 一. 院 の御 墓 に詣 で給 へる に、 月 も 雲 が く れ て、 森 の木 立木 ぶか く、 帰 り 出 でん方 なく 思 さ れ て﹂ と し て入集 、 第 二句.

(23) ﹁いか に み るら ん﹂ とす る。. 右大将︶の歌 。 母寝 覚 の上 の死 を信 じ て疑 わ な いま さ こ君 は、 悲 嘆 のあまり 北 山 に 右 は末 尾 欠 巻 か ら。 ま さ こ君 ︵. 、 十五 ・右︶ 八番右 の場ハ じ が、 偽 死事 件 の あ と自 河院 を脱 出 し た寝 覚 の上 は、 そ の生 存 を中 官 に連 絡 ︵ 籠 ってし ま った ︵. 。   こう し て世 間 には 生存 を秘 しなが ら、 彼 女 は主 人公 関 白 と対 面、 泣 き み 十六 ・右︶ 即 そ れ は中 宮 の返 し と な った ︵.  中 官 を介 し て届 け ら れ た のでは な か ろ う   母 生存 の報 は、  北 山 に籠 って いた ま さ こ君 へも、 笑 い み の日 々。 時 に、. か。 季 節 は春 二月 ごろ の事 で あ ったか。 こ こ に、 十 五番 ︱ 十 六番 ︱ 十 七番 と、 定 家 は物 語 展 開 に即 し て、 歌 を選 ん. だ も の と 理 解 し た い。 ただ ﹃風葉 和歌 集 ﹄ には、 巻 九、 哀 傷 盆2 〓し に、 詞 書 ﹁母 の思 ひ に て、 北 山 に籠 り居 て侍. り け る ころ、 花 を 折 り て中 官 に 奉 ると て﹂ と し て入集 、 な お結 句 を ﹁な ほ そ み る﹂ と す る のは誤 脱 であ ろう。 十 六番 左 と十 七番 左 を比 べ る と、. 十六 o左︶と、 ﹁月 ま ち 出 で て﹂ 山陵 に詣 で、 終 夜 額 づ く 光 源 氏 。 折 から ﹁月 も 雲 隠 管弦 の宴 を 開 いて いた秋 の夜 ︵. 一、 季 節 こそ違 え、 ﹁月 は 入方 の空清 う 澄 み渡 れ る﹂ 頃 、 折 か ら弘徽 殿女 御 は、 ﹁月 の面 白 き に、 夜 更 く るま で﹂ 。 十七 ・左︶ れ て、 森 の木 立木 深 く 心 す ご﹂ き春 の夜 の思 い ︵. 十 六番 右 と十 七番 右 と の関 連 は、前 述 し た通 り、 いわ ゆ る偽 死事 件 のあ と、 自 河 院 を脱 出 し得 た寝 覚 の上が、 ま. ろう と判 断 す る。. 歓喜 の情 を 写 す 場 面 な の に対 し て、左 の歌 は源 氏 の沈 冷 に関 す る悲 嘆 の場 面 で あり、 そ の意 味 で強 い対応 性 は な か. と い った類 似 点 を見 出 す ことが でき よう。 十 六番 右 と十 七番 左 と の関係 は、 右 が 寝 覚 の上生存 に関 す る、 いわば. 十七 ・左︶の語 。 十六 ・左︶に対 す る ﹁なき かげ﹂ ﹁雲 が く れ ぬる﹂︵ 魂 のあり か﹂︵ 一、 ﹁か く れ て﹂ ﹁幻﹂ ﹁. 。 十七 ・左︶ 魂 を尋 ね た い源 氏 の心情 ︵. 十六 ・左︶に対 し て、 月 によ そ え つ つ、 亡 き 父桐 壷 帝 の 一、 亡 き 更 衣 を 尋 ね得 る手 立 てもが な と願 う 桐 壷 帝 の心 ︵. 槻. 修 大. (23).

(24) (24) 「夜 の寝覚」の番いについて 下 「源氏」. 3 1. 1 3. に ﹁死﹂ に関 係 す る場 面 では あ るが、 そ れ ぞ れ十 六番左右 か ら の関 係 か ら 一応 の番 いにな った. 。  とも 十七 ・右︶と、 亡 き 桐 壷 院 の山陵 に額 づ く源 氏 の心 ︵ 十七 o左︶ わ な か った ま さ こ君 の心 ︵. 十 七番 の左 右 を見 ると、 季 節 は とも に春 三月 の頃、 ま た、 か ね て母寝 覚 の上 の死 を信 じ て疑. 。 右 の歌が、﹃ 風葉和歌集﹄ には哀傷 の部に入集されている点は少し気がかりではある︶. の第四部︶か ら計 十 首、   つま り 歌 の半 数 に及 ん だ と いう事 実 は十 分 注 目 に価 し よう ︵ ただ十七番. 物語   いわ ゆ る末 尾 欠 巻 に 該 当 す る個所 ︵ 合﹄ か ら ﹃夜 の寝 覚﹄ 二十 首 を抜 き 出 す 折 、 定 家 は、. 四部 の該 当 個 所 に、 相 当 の関 心 と興 味 を抱 いたも のと推 察 でき よ う。 考 え て みれば ﹃後 百番 歌. し た物 語 本 文 ︵ 散欠してはいるが︶の 一貫 性 を想 定 す る時、 定 家 は、 ﹃ 夜 の寝 覚 ﹄ 物 語 のう ち、 第. ず 中 官 にそ の秘 密 を 明 か し、 中 官 を通 じ てそ れ は、 母 の死 を歎 い て北 山 に籠 って いた ま さ こ君 に通 報 さ れ た。 こう. 左余 〓. と あ る。 左 は、 賢 木 の巻 か ら 六条 御 息所 の歌 。 伊 勢 に下 ろう と決 意 し た御息 所 は、 野 官 を訪 ね た源 氏 と和 歌 の贈 答. 百敷 を昔 なが ら に見 ま し かば と思 ふも か な し倭 文 の苧 環. の給 は せ た る御 返 し. 右   尚 侍 入内 の時 そ ひ 奉 り 給 へる に、 内 の上、 君 も も し 昔 忘 れ ぬも のなら ば 同 じ 心 に形 見 と も 思 へ、 と. そ のか みを け ふは か け じ と思 へども 心 のう ち にも のぞ か な しき. 左   斎 宮 群 行 日、 ま た百 敷 の内 を見 給 ひ て、 前 坊 の御 時 、 父 大 臣 のこと など 思 ひ出 で て    一 削坊 御 息 所. 十 八番 は. も のではなかろうか。 よ って上 図 のよう な対 応 関 係 を考 え ておく こと にす る。. 今左.

(25) 、 、 、 。 に 語 文 ど 量 物 本 無 九︶ 感 慨   臣 こ な こ 大 の と と 父 の 時 の の あ と斎 官 と参 内 、 時 に九 月 十 六 日の こと ︵ 前 坊 御 ざ 、 ﹁御 息 所 、 御 輿 に乗 り 給 へる に つけ ても、 父 大 臣 のかざ り なき筋 に思 し 黎¨ し てヽ い つき奉 り 給 ひ し有 様 か はり て.   二十 に て 後 れ奉 り給 末 の世 に内 裏 を見 給 ふにも、 物 の み つき せず あ は れ に思 さ る。 十 六 に て故 官 に 参 り 給 ひ て、. 帝  な お、  十 四歳 の斎 官 に対 し て、 ﹁ ふ。 三十 に てぞ、 今 日ま た九 重 を見給 ひけ る﹂ と、 御 息 所 の素 姓 が語 ら れ る。. 御 心動 き て、 別 れ の櫛 奉 り 給 ふ程 、 いとあは れ に て、 し ほ た れ さ せ給 ひ ぬ﹂ と あ る。 故老関自の長女︶の入内 、  翌 日帝 から 後 朝 の文 が あ る。 右 は、 巻 三 か ら帝 の歌 。 寝 覚 の上が 付 き添 って、 督 の君 ︵. 、 そ れは② 須磨 ・明. 、 そ の返 し。 十 七番 左 と十 八番 左 と を比 詞書 の中の歌︶ お気 に召 し て四夜 お側 に。 そ の間、帝 から寝 覚 の上 に文 あり ︵. べ ると、 ① と も に、 栄華 を尽 く し た過 去 の日 々 への回想 を感 慨 を述 べて いる点 が 対 応 し ており. 十八 ・左︶ 十七 ・左︶と、 娘 斎 官 とも ど も、 源 氏 とも 別 れ 伊 勢 下 向 の御 息 所 の心情 ︵ 石 沈 論 を 目前 にし た源氏 の心境 ︵. 十七 ・右︶と、 伊勢 下 向 の と の対 応 でも あ る。 十 七番 右 と十 八番 左 に つ いては、 母 の生存 を知 ったま さ こ君 の歓 び ︵. ∧. ↓│ │⇔ 右. 右. か な 共通 性 を持 って いよ う。 十八 ・左︶ 一、 ﹁そ のか みをけ ふは か け じ﹂ の思 い ︵ し︵ 十八 ・右︶の歎 き で あ ろう。. 倭 文 の苧 環﹂ 繰 り 返 換 言 す れば 即 ﹁. も のぞかなしき﹂ ﹁思 ふも かなし﹂ の共通語が ある。 一、 双方 の歌に、﹁. は. 十 ・右︶と、 二 人 の心情 には明 ら 老 関 白 存 命 の頃、 幸福 だ った お のが身 を懐 し く思 う寝 覚 の上 ︵. 十八 ・左︶と、 亡 き 一、 前 坊 の御時 、 父 大 臣 の こと など、 過 ぎ し幸 せ の頃 を 回想 す る御息 所 ︵. いで あ ろ う。 十 八番 の番 いを考 え ると、. 十 七番 右 と十 八番右 と の対 比 を見 る に、 これま た物 語 展 開 の上 から、 特 別 な照応 関係 には な. 十八 ・左︶と の間 に、 さ ほど 関連 し た対 応 は見 出 せな い、 御 息 所 の心情 ︵. 十. 左―一一一 → 左 十 ∧. 修 槻 大. (25).

(26) (26) 「源氏」 「夜 の寝覚」の番 いについて 下. など の対 応 が 考 えら れ る。 以 上 の点 か ら、 十 八番 左 ︱← 十 八番 右 と考 えら れ る の では な か ろう か。 こ のよう な対. 応 関 係 を総 合 し て み ると、 前 頁 の図 のよう な構 成 に な る の では な か ろう か。  な お 十 七番 右 の歌 を、 ﹃風葉 和 歌集﹄ 〓 が 哀 傷 の部 に 入集 せし め た よう に、 北 山籠 り のま さ こ君が 、 ま だ 母 寝 覚 の上 の生存 を知 り 得ず 、 中 官 に寄 せた哀 悼. の歌 と解 す れば 、 十 八番 右 の ﹁思 ふも か な し倭 文 の苧 環 ﹂ と、 あ る面 で対応 す る傾 向 も う かが え るが、 今 は 一応 、 十 七番 右 の歌 の解 釈 を、 前 述 のよ う な方 向 で考 え て おき た 、。. あ と 二番 で、 ﹃ 後 百番 歌 合﹄ の ﹁源 氏 ﹂ ﹁ 夜 の寝 覚 ﹂ の番 いは幕 を閉 じ る。 十 九番 に移 る こと にす る。. 冷 泉 院 御製. 左   八 の宮 、 宇 治 に こも り 居 て、 年 へて のち 、 右 大 将 、 宰 相 の中 将 と聞 こえ し を、 御 使 に て御 消 息 あり し. 世 を いと ふ心 は 山 にか よ へど も 八重 た つ雲 を 君 や へだ つる. 右   女 君 、 広 沢 にかき こも り ぬと 聞 か せ給 ひ て、 内 より 蔵 人 の少 将 を御使 に て                    院 何 事 を いか に恨 み て白 雲 の 八重 た つ峯 に思 ひ 入 るら む. 。五 左 は、 橋 姫 の巻 か ら冷 泉 院 の歌 。 宇 治 の阿閣 梨 が 、 八官 に仏 法 を説 き、 冷泉 院 にも 八官 の事 を 奏 上 す る ︹一五︺. 十 にも な ろ う と いう 冷 泉 院 は、 八官 の姫 君 たち に興 味 津 々だ が、 薫 ︵ 時に宰相中将であ った︶は聖 だ った生活 を送 る八.  阿閣 梨 に紹 介 を 依 頼 し た。  か く し て院 の 御 使 が、 官 に心 を引 か れ、   阿閣梨 ととも に 八官 を訪 ね る ︹一八︺条。 な お. ﹃風葉 和 歌 集 ﹄ 巻 十 八、 雑 三 ︵一四〇一し に、 詞 書 ﹁宇 治 八官 に つか は さ せ給 ひけ る﹂ と し て入集、  結 句 ﹁ 霧 や へだ つる﹂ とす る。. 当時は在位中︶ の歌。 いわ ゆ る寝 覚 の上 生 霊事 件 のあ と、 あら ぬ噂 に苦 悩 す る寝 覚 の上 は、 広 沢 右 は巻 四 か ら 院 ︵.

(27) 修 槻 大 ( 27 ). 、 に居 を移 す 決 心 を す る。 そ の間 も 、 ま さ こ君 は帝 の執 心 の文 を持 参 。 二児 を伴 って広 沢 入 り の彼 女 は 父 入道 やそ. 内大臣︶と は逢 おう と し な い。 そ の折 も 折 、 帝 から の文 、 たまら もとの斎官︶と対 面 す るが、  訪 ね てき た男 君 ︵ の妹 ︵.  この歌  結 句 ﹁ 思 ひ いり け ん﹂ と あ る。 ず 男 君が無 断 で開 封 す るく だ り 。 な お物 語 本 文 は第 四 句 ﹁八重 た つ山 に﹂、. は、 諸 註 ① の記 す 通 り、 ﹃源 氏 物 語 ﹄ 浮 舟 の巻 の 一節 ︹五八︺ の 、 あ や にく に の た ま ふ人 は た、 八重 た つ山 に こも るとも 、 か ならず たづ ね て、 わ れも 人 も いたづ ら に なり ぬべし な ほ心 やす く隠 れ な む こと を思 へ. ﹃夜. に見 ら れ る ﹃紫 明 抄 ﹄ ﹃花 鳥 余 情 ﹄ ﹃河海抄 ﹄ の引 く 注 と関 係 す るも のであ ろう。 即 ち ﹁白 雲 の八重 立 つ山 に こも. 出典未詳︶を本 歌 とす る見 方 であ る。 な お阪倉 篤義 氏 の補 注 のよう にR るとも 思 ひ 立 ち なば たづ ねざ ら め や﹂︵. 号 を踏 ん で いる のであ ろう﹂ と考 え た い。 ﹃風葉 和 歌集 ﹄ 巻 十 または浮舟の巻 の文ュ の寝 覚 ﹄ の該 当 場 面 は、 ﹁こ の歌 ︵. 一 生 こ に、 詞 書 ﹁山里 にま かり け ると聞 か せ給 ひけ る女 に給 は せけ る﹂ と し て入集 、 第 四 句 ﹁八重 立 八、 雑 三 ︵三一. つ山 に﹂ とす る。 、 例 によ って、 十 八番 左 と十 九 番 左 の対応 を見 ると、 まず 考 えら れ る のは 栄華 の夢 は か なく娘 の斎 官 と伊勢 下向. 段︶の絶 望感 から連 想 が 働 いて、 政 争 に破 れ た上 昔 を今 になす よしもが な﹂翁伊勢物五四 第三十一一 の御 息 所 の心情 ︱ ﹁.  寂 蓼 の日を送 る八 の官 が 導 き 出 さ れ た の では な い  姫 君 二人 とも ども 荒 廃 し た 宇 治 の邸 内 で、 に北 の方 を 亡 く し、. 、 か、 と いう こと であ る。 そう い った物 語 の基 盤 に流 れ る御息 所 と 八 の官 の位置 づ け の共 通 性 を踏 ま え て 十 八番 左 ︱← 十 九番 左 と見 ておき た い。. 倭 文 の苧 環﹂ の縁 に つなが るが、 両 者 の、 より密 接 な照 応 は見 出 せず 、 十 八番 右 と 十 八番 右 と十 九 番 左 も ま た ﹁. 。 、 十 九番 右 と の関連 も、 寝 覚 の上 に対 す る帝 の、 変 ら ぬ執 心 を 基 盤 にし ては いるが そ れ 以 上 の何 も の でも な い 十 九番 の番 いに つ い ては、.

(28) (28) 「夜 の寝覚」の番 いについて 下 「 源氏」. ∧十九番 ∨ 左︱︱← 右. 左︱︱← 右 ∧十 八番∨. 一、 ﹁宇治 に︶ こも り 居 て﹂ ﹁御 使 に て﹂ ﹁八重 た つ雲﹂︵ 十九 ・左︶に対 す る ﹁︵ 広沢に︶かき 十九 ・右︶の語。 こも り ぬ﹂ ﹁御 使 に て﹂ ﹁八重 た つ峯﹂︵. 右 の場合は在位中だが︶が、 御 使 を し て消 息 を つか わ し、 仏 道 に専 念 せん とす る 一、 と も に院 ︵. 者 への呼 び か け と な って いる。 一、 時 に、 八 の官 は阿閣 梨 の勧 め か ら佛 道 に心 を染 め、 濁 世離 脱 を願 い ︵ 十九 ・左︶、 寝 覚 の. 上も ま た、 帝 ・内 大 臣 と の愛 執 の俗 世 を捨 て て .父 入道 のも と、 清 澄 の 日を願 う ︵ 十九 ・右︶。. と い った 共 通 の心情 にあ る。 以 上 の こと から、 上 図 のよう な対 応 が 考 えら れ る の では なか ろ う か。. 最 後 に二十 番 に つ いて見 よ う。. 左   宇 治 に て身 をす てけ る頃                                                           浮 舟 の君 なげ き わ び身 をば す つと も な き かげ に浮 き名 な が さ む こと を こそ思 へ. 右   世 を そ む き て のち、 山 の帝 の御 文 に、 こ の世 にはう く て別 れ し仲 な るを いか に入り にし 一つ道 なり、 と の給 は せ た る御 返 し か ざり な く う き 身 を いと ひす てし間 に君 をも 世 を も そむ き にし か な. 左 は浮 舟 の巻 か ら、 浮 舟 の歌。 宇 治 で は、 薫 ・匂 官 の使 者 が 再 び来 合 わ せ 里雀 百、 秘 密 を知 った薫 は、 浮 舟 を諦 め. ず 、 警 固 す る。 身 の破 滅 迫 り 来 るを悟 った浮 舟 は、 苦 悩 の果 て、 時 に匂 官 を恋 い、 時 に薫 を想 って、 身 の処 理 は死 の みと決意 す る︹八〇︺く だ り。. 後百番歌︿ なお ﹃ 己 に、﹁ 右﹂ の表記なし。よ って0で囲む︶は末 尾 欠 巻 から寝覚 の上 の歌。 ま さ こ君勘 当 事 件 によ 右 ︵.

(29) 修 槻 大. ( 29 ). って、 意 を決 し た寝 覚 の上 は、 山 の座 主 に依 頼 し て院 に許 し を願 う。 寝 覚 の上出家 の由 が し た た めら れ た文 面 に触. 。 れ、 女 君安 産 の由 を も 聞 か れ た院 は、 結 局現 世 に ては寝 覚 の上 と ま ったく添 い得 な か った仲 であ ったと落 涙 す る. ﹃ 名草 子 ﹄ に、 無 そ の のち、 ま さ こ の こと に思 ひ余 り て、 院 に御 文奉 り た る ほど こそ、 さ すが あ は れ に侍 れ 類 なく憂 き身 を厭 ひ捨 てし間 に君 をも 世 をも そむ き に し か な と聞 え た る こそ、 い みじ け れ. 、 、 も   巻 に 絵 歌の初旬が異な っている︶ ﹃ 物 語 ﹄ 寝 覚 ま た と あり ︵ 、 。 忍 び や か な るさ ま に て、 たそが れ のほど にぞ参 り給 へる 事 の由 申 せば  我 は内 に て 御 簾 の前 に 召 し たり ⋮ ⋮.   一日 か、 御 消 息 聞 こゆ る心地 せしは、 確 か な る な めり な﹂ と問 は せ給 ふ。 ﹁し か さ ぶら ふ めり き﹂ と ﹁座 主 し て、.  とば か り 御 覧 ず る な る べ   こ の御 文 を引 き 出 で て 参 ら せたり。 て、 御簾 のも と近 く 参 り寄 り て、 ふと ころ より、 し。 いたく御声 う ち変 はり て 、 と、 該 当 場 面 を描 い て い る。 さ て、 十 九番 左 と 二十番 左 と を 比 べ て見 ると 一、 とも に舞 台 は宇 治 。 一、 こ の濁 世 を遁 れ ん とす る心. と い った共通 項 が 見 出 せ るも の の、 主 た る連 繋 は、 十 九番 右 に付 し て述 べた ﹃源氏 物 語 ﹄ 浮 舟 の巻 の 一節 ︱ ﹁八重. 、 た つ山 に こも ると も﹂ の連 想 が 、 十 九番 左 の ﹁八重 た つ雲 ﹂ に及 び そ の縁 から 二十番 左 の浮 舟 に及 ん だも の では 、 より密 接 であろう。 前 述 のよ う に、 十 九 な か ろ う か。 ただ 、 そ の意 味 では、 十 九番 右 と 二十番 左 と の関連 の方 が.   そ の連 想 が機 縁 源 氏 物 語 ﹄ 浮 舟 の巻 の文章 を 踏 ん で いると覚 しく 、 番 右 に見 ら れ る ﹃夜 の寝 覚 ﹄ の該 当 場 面 は、 ﹃ 。 、 、 後 百番 歌 合 ﹄ の と な って、 十 九番 右 ︱← 二十番 左 とな ったも のでは な か ろ う か  な お後 述 す るよう に 定 家 は ﹃.

(30) ﹃源 氏 ﹄ ﹃寝 覚 ﹄ の場 合 の ほ か に、 ﹃源 氏 ﹄ ﹃御 津 浜 松﹄ の ケ ー ス、 ﹃源 氏﹄ ﹃参 河爾 左 介留 ﹄ の結 番 、 ﹃源 氏 ﹄ ﹃海. 人苅 藻 ﹄ の結番 ︱︱ と 四 回 にわ た って、 結 番 の左方 に浮 舟 の歌 を持 ち 込 ん で いる こと は注 目 に価 し よ う。 ま た そ れ. は、 ﹃ 物 語 三百番 歌 合 ﹄ の左 方 に おけ る浮 舟 の巻 の比重 に係 わ る。 二十 番 左右 に ついては、 一、 ﹁浮 き 名﹂ ﹁う き 身 ﹂ の語 の共 通 は、 入水 ・出家 と いう 違 いこそ あれ、  わが身 の俗 世 に 対 す る精 算 を明 示 し て い る。. 一、 と も に物 語 の ヒ ロイ ンク 詠。 一、 後 日談 こそ あ れ、 浮 舟 にと って入 水自 殺 を願 う悲 痛 な 心情 ︱ そ の描 写 は物 語 の大 き な ヤ マ場 合一 十 ・左︶で あ. り、   一方 、 同 じく寝 覚 の上 にと っては、 出 家 によ って院 と 一つの決着 を つけ た︱ そ の記述 は末 尾 欠 巻 部 分 で の、 最 も 高 潮 し た場 面 公一 十 ・右︶で あ る。. : ;. 里 の名 を わ が 身 に知 れば 山城 の宇 治 のわ たり ぞ いとど 住 みう き. にか き く ら す ころ、 と侍 り け れば                                        浮 舟. 汁 五番   左   宇 治 に て長 雨 は れ ぬ頃 、 大 将 、 水 ま さ るをち の里 人 いか な ら む は れ ぬなが め. ﹃源 氏 ﹄ ﹃御 津 浜 松 ﹄ を番 え た全 十 五番 の結番 ょ、. の巻 か ら選 ば れ た点 に つ いて、 他 の ケ ー スを見 て おき た い。. な お、 ﹃ 後 百番 歌 合 ﹄ のう ち、 ﹃源 氏 ﹄ ﹃寝 覚 ﹄ の歌 を番 え た 全 二十 番 の結 番 で、 左 が 浮 舟. う に な る の では な か ろ う か。. 巻 ﹄ の第 四 図 は、 今 に そ の感 慨 の情 を 伝 え て いる。 こ こに、 十 九番 と の対 応 関 係 は、 上図 のよ. 以 上、 両 者 は見事 に対 応 し て いると いえよ う。 ﹃ 夜 の寝 覚 ﹄ の二十 番 右 の 該 当 場面 の直 前 、  山 の座 主 に書 を託 し て、 ま さ こ君 の勘 当 の お許 し を願 った寝 覚 の上。  そ の生存 を 知 って落 涙 す る冷 泉 院 の姿 ⋮ 残 さ れ た ﹃寝 覚 物 語 絵. ∧ ∧. (30) 「夜 の寝覚」 の 番いについて 下 「 源氏」.

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