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「少年非行問題」の拡大と縮小 : 新聞メディアによる影響に注目して

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(1)執筆. 「少年非行問題」の拡大と縮小. 縦 14. ―新聞メディアによる影響に注目して―. 教育デザインコース 教育学領域 平成 26 年度修了. 礒 崇仁 1.はじめに ―本研究の問題意識―. 図 1 少年非行は増加しているか. これまでに私たちは、世間を大きく騒がせて注目を 浴びてきた少年非行事件を何度もみてきた。例えば、 2014 年の「佐世保女子高生殺害事件」や 2015 年の「川 崎市中 1 男子生徒殺害事件」などの事件も記憶に新しい。 このように世間を騒がせた少年非行事件を挙げようとす るときりがなくなってしまうが、このような少年非行事 件に関する情報を得ることで人々は少年非行に対するイ. 図 1(縦 14 字×横 25 字). メージを構築していったであろう。 また、非行少年に対する処遇が 2000 年以降大きく見 直されてきた。非行少年に対する処遇の中心軸となって いる少年法は、これまで 2000 年・2007 年・2008 年・ 2014 年の 4 回にわたって改正されている。それぞれの 改正の目的や内容は異なるものの、そのいずれもが非行 少年の処遇を厳罰化するものであった。 しかし、少年非行に関する統計をみると、決して少年. 出典:内閣府「少年非行に関する世論調査」. 非行は増加しているわけではないことがわかる。公式統 計からみた少年非行の変化については後に詳しく説明. 事件が増えていると思いますか、減っていると思いま. するが、少年非行の検挙人員数をみると、2000 年代以. すか。この中から1つだけお答えください。 」という質. 降、特に 2003 年以降は一貫して減少傾向にあることが. 問の結果を示した (3)。この調査結果によると、 「増えてい. わかっている。このような統計をもとにして、主に教育. る(小計) 」は 2001 年から 2005 年にかけて微増してい. 社会学や犯罪社会学の分野において、少年非行の「凶悪. るのに対し、2005 年から 2010 年にかけて減少してい. (1). 化」言説を再検討する研究が進められてきた 。 さらに、 「凶悪化」言説の再検討に関する研究とともに、. ることがわかる。その中でも、特に「かなり増えている」 の回答率だけ取り上げたものを破線で示したが、2001. 「凶悪化」言説が拡大する要因について明らかにした研. 年から 2005 年にかけての増加と 2005 年から 2010 年. 究も進められてきた。それらの多くはマスメディアによ. にかけての減少の傾向がよりはっきりと表れていること. る報道の影響に着目しており、「凶悪化」言説の拡大と. が確認できる。一方、点線で示した「変わらない・減っ. (2). 少年非行報道の関係が明らかにされてきた 。 しかし、近年では、このように人々が「少年非行」を. ている」は 2001 年から 2005 年にかけて微減し、2005 年から 2010 年にかけて増加していることがわかる。. 社会問題と捉える問題意識、つまり「少年非行問題」意. また、図 2 では、Q2(回答票 2)の「あなたは、おお. 識が変容してきている。ここで、内閣府が実施した「少. むね 5 年前と比べて、少年非行はどのようなものが増え. 年非行に関する世論調査」 (2010)のデータを参照した. ていると思いますか。この中からいくつでもあげてくだ. い。まず、図 1 では、Q1(回答票 1)の「あなたの実. さい。 」という質問の複数回答率を示した (4)。この結果か. 感として、おおむね 5 年前と比べて、少年による重大な. らは、2005 年には回答者 1 人当たり約 3 個の選択肢を 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 23.

(2) 「少年非行問題」の拡大と縮小. 図 2 増加している少年非行(複数回答率). 図 2(縦 14 字×横 25 字). 出典:内閣府「少年非行に関する世論調査」. 図 3 治安に関する情報の入手方法. 図 3(縦 14 字×横 25 字). 出典:内閣府「治安に関する世論調査」. 回答しているにもかかわらず、2010 年には 1 人当. 「少年非行問題」がどのように語られているのかを比. たり約 2.5 個まで減少していることがわかる。つまり、. 較することで、その拡大と縮小の要因を明らかにする。. 2001 年から 2005 年にかけて複数回答率が増加してい るのに対し、2005 年から 2010 年にかけてそれが減少. 2.「少年非行問題」意識とマスメディア. している。特にこれらの世論調査の結果をみると、「少. では、マスメディアの分析を行う前に、まずは「少年非. 年非行事件が増加している」という意識、あるいは「少. 行問題」意識の拡大・縮小にマスメディアの報道が影響を. 年非行事件が質的に変容している」という意識について. 与えているということを改めて明らかにする。特に、内閣. は、2001 年から 2005 年にかけて拡大し、2005 年か. 府の実施した世論調査のデータを読み解くことで、人々が. ら 2010 年にかけて縮小していることがわかった。. 少年非行に対するイメージをマスメディアの報道をとおし. 以上のことから、「少年非行問題」意識の拡大だけで なく、その縮小についても注目する必要がある。しかし、. て構築していることを確認する。 まず初めに、内閣府によって 2004 年 7 月と 2006 年. これまでの先行研究において、「少年非行問題」に焦点. 12 月の 2 度にわたって実施された「治安に関する世論調. を当てて、その「問題」意識の縮小について分析した研. 査」のデータを読み取ることにする。図 3 は、Q7(回答. 究はみられない。そのため、「少年非行問題」意識はど. 票 8)に、 「あなたは、どのような方法で治安や犯罪に関. のようにして拡大するのか、という問いだけでなく、 「少. する情報を入手していますか。この中からいくつでもあげ. 年非行問題」意識はどのようにして縮小するのか、とい. てください。 」という質問の結果を示したものである。. う問いについても検討しなければならない。. このデータをみると、人々は治安に関する情報の多く. そこで、本研究では、「少年非行問題」意識の拡大だ. をマスメディア、特にテレビ・ラジオや新聞から入手し. けでなく縮小する要因について、マスメディアによる少. ているということが確認できる。 「テレビ・ラジオ」の項. 年非行報道を分析することで明らかにしていく。特に、. 目を選択した人は 2004 年調査で 95.7%、2006 年調査で. 図 1 と図 2 で明らかになったように、「少年非行問題」. 95.5% にものぼっており、ほとんどすべての人がテレビ・. が拡大した時期と縮小した時期の両方の傾向が見られる. ラジオを治安や犯罪に関する情報源としていることがわか. 2000 年代(2001 年~ 2010 年)における「少年非行問題」. る。また、 「新聞」についても、2004 年調査では 80.1%、. の語りに焦点を当てることにする。そこで、「少年非行. 2006 年では 81.1% の人が回答しているため、人々にとっ. 問題」意識が拡大している時期と縮小している時期で. て新聞も重要な情報源となっていることがわかる。そ. 24.

(3) 縦 14 字×横 25 字. 図 4 「問題だと思うこと」の「特になし」の回答率. 図 4(縦 14 字×横 25 字). 図 5 「問題だと思うこと」の複数回答率. 図 5(縦 14 字×横 25 字). 出典:内閣府「少年非行に関する世論調査」 して、この「テレビ・ラジオ」と「新聞」の回答率は他 の選択肢と比べればはるかに高い水準となっており、そ. 出典:内閣府「少年非行に関する世論調査」 これら 2 つの質問について「特になし」と回答した 割合を示したのが図 4 である。. の次点である「家族や友人との会話など」の回答率はこ. このグラフをみると、2 つの質問項目の結果に大きな. れらの選択肢と比べると非常に低くなる。この結果から. 差があることを確認できる。まず、「(1)実際にあなた. 考えると、ほとんどの人々は治安や犯罪に関する情報を. の周囲で起こり問題となっていることを、この中からい. テレビやラジオ、あるいは新聞から情報を入手している. くつでもあげてください。」という問いについては、「特. ということがわかる。したがって、テレビ・ラジオ・新. になし」と答えた人が 3 分の 1 以上を占めている。つ. 聞といったマスメディアの影響力は、ほかの媒体の影響. まり、周囲で起こり問題となっている少年非行を特に選. 力に比べるとはるかに強く、治安や犯罪に関する報道の. 択しなかった人が多いということである。一方、「(2). 在り方がそれらのイメージ構築に大きな影響を与えてい. 広く社会的にみて問題だと思うことを、この中からいく. ると考えられる。. つでもあげてください。」という問いについては、「特に. また、少年非行について尋ねた世論調査の結果からも、. なし」と答えた人がほんの数パーセントしかいない。そ. 少年非行に対するイメージの構築にマスメディアの影響. のため、広く社会的にみて問題だと思う少年非行につい. があることを確認することができる。そこで、先に取り. てはほとんどの人が何らかの選択肢を選んでいるという. 上げた内閣府によって 2010 年に実施された「少年非行. ことになる。つまり、周囲で起こり問題となっている少. に関する世論調査」のデータを読み解くことにする。こ. 年非行は特にないと感じているのに、社会的にみて問題. の調査で設けられている質問項目のうち、Q4(回答票 4). だと思う少年非行は該当するものがあると感じていると. の「少年非行が問題となっていますが、 (1)実際にあな. いうことである。言い換えれば、周囲で起こり問題となっ. たの周囲で起こり問題となっていることを、この中から. ていること、つまり身近なレベルで起こっている少年非. いくつでもあげてください。 」という質問と、 「 (2)広く. 行についてはそれほど実感・関心がないのにもかかわら. 社会的にみて問題だと思うことを、この中からいくつで. ず、広く社会的に見て問題だと思うこと、つまり社会的. (5). もあげてください。 」という質問の結果を取り上げる 。. なレベルで起こっている少年非行については、実感を強. これらは複数回答式の質問であるため、さまざまな選択. く感じていて関心も高いということである。そのため、. 肢が設けられているが、まずは、これらの選択肢を選ぶ. 身近なレベルで起こる少年非行は人々のイメージ構築に. ことなく「特になし」を選択した人の割合に注目する。. それほど影響を与えていないが、社会的なレベルで起こ. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 25. 縦 14.

(4) 「少年非行問題」の拡大と縮小. る少年非行は人々のイメージ構築に十分な影響を与えて. 行問題」意識が拡大したり縮小したりするということで. いると考えられる。. ある。. また、これら 2 つの質問に対する複数回答率につい. では、次にどのような少年非行報道が「少年非行問題」. ても分析した。この数値を分析することで、複数回答式. 意識を拡大させ、どのような少年非行報道が「少年非行. の質問に 1 人当たり何項目ずつ回答しているのかを明. 問題」意識を縮小させるかということを、少年非行報道. らかにすることができる。その数値を示したのが、図 5. を分析することで、明らかにしていく。. である。 このグラフからも、2 つの傾向がはっきりとわかる。 まず、「(1)実際にあなたの周囲で起こり問題となって いることを、この中からいくつでもあげてください。」. 3.少年非行報道の量的変容と「少年非行問題」意識の 拡大・縮小 3-1.分析方法. という問いに対する複数回答率は 200% 前後である。こ. 本研究では、新聞メディアによる少年非行に関する記. のことから、1 人当たり平均 2 項目程度の選択肢を選ん. 事を分析対象として、検討を行うことにした。大きな理. だということがわかる。それに対して、「(2)広く社. 由は次の 2 つである。第一に、新聞はさまざまなマス. 会的にみて問題だと思うことを、この中からいくつで. メディアの中で最もデータの収集が容易であり、かつ十. もあげてください。」という問いに対する複数回答率は. 分な影響力をもつ媒体であるという点で分析しやすい媒. 400% ~ 500% であり、先の質問項目に対する回答率の. 体であると考えたからである。各新聞社は、新聞記事を. 2 倍以上の数値となっている。つまり、1 人当たり平均. データベース化しており、それを参照することで容易に. 4 ~ 5 項目もの選択肢を選んだということである。この. マスメディアの報道を分析することが可能である。第二. 結果からも、身近なレベルでは少年非行に対する実感・. に、「凶悪化」言説の拡大と少年非行報道の関係を明ら. 関心が薄いのに対して、社会的なレベルでは少年非行に. かにしてきた先行研究も、同様に新聞メディアを分析対. 対する実感が強く、関心も高いということがわかる。. 象としていたからである (6)。そのため、「少年非行問題」. これらのことから、第一に、身近に起こっている少年. 意識の縮小期について分析する本研究でも、妥当な結果. 非行は、少年非行に関するイメージ構築に大きな影響を. を得られると考えた。そこで、今回は朝日新聞のデータ. 与えていないということがわかる。この結果は、実際に. ベース「聞蔵ビジュアルⅡ」を使用することにした。朝. それぞれの地域で発生した少年非行が現在どのような状. 日新聞のデータベースでは、記事を整理するために「分. 況にあるかどうかは、その地域に住む人々には関係ない. 類」という項目が設けられており容易に分類項目ごとに. ということを示している。あるいは、人々が実際に少年. 記事の検索を行うことが可能であるが、そのなかのひと. 非行を目撃したりそれが耳に届いたりする機会、あるい. つに「青少年犯罪」という分類項目が設けられている。. は加害少年の関係者や被害者などの当事者になる機会が. つまり、この検索システムを利用して「青少年犯罪」の. ほとんどないということである。. 分類項目の記事を検索機能で取り出すことによって、記. 第二に、少年非行に関する世論形成に大きな影響を与. 事の制作者が「青少年犯罪」に関する記事であるとみな. えているのは、社会的なレベルで発生している少年非行. して「青少年犯罪」の分類項目を付した記事を容易に抽. だということである。社会でどのような少年非行が起. 出することができる。この「青少年犯罪」という分類項. こっているのか、どのような少年非行が問題となってい. 目が設けられたのは 1999 年以降であるため、本研究が. るのか、ということが人々の関心になっている。つまり、. 対象としている 2000 年代における前半期と後半期の新. 社会的なレベルで発生した少年非行が、少年非行を問題. 聞メディアの分析を十分に行うことできると考えた。. 視するようなイメージ構築に大きな影響を与えていると. ただし、今回の分析において、地域面に掲載されてい. いうことである。そして、社会的なレベルで発生した少. る「青少年犯罪」記事は対象外とすることにした。本研究. 年非行を人々が入手し認知するのはマスメディアの報道. は世論調査からみた「少年非行問題」意識を前提にして. をとおしてである。したがって、マスメディアの報道に. いるため、地域ごとに取り上げられた少年非行に関する. よって人々が得た少年非行に関する報道が、少年非行に. 記事ではなく、社会的なレベルで取り上げられた少年非. 対するイメージの構築に影響を与え、その結果「少年非. 行に関する記事を対象としたいからである。また、前章. 26.

(5) 縦 14 字×横 25 字. 図 6 分類「青少年犯罪」の記事数. 3-2.記事数の推移と「少年非行問題」意識の拡大・縮小 まずは、「少年非行問題」意識の拡大期と縮小期にお ける少年非行報道の量の違いに注目して分析を行うこと にした。そこで、「青少年犯罪」の分類項目が付されて いる記事数を数え、1 年ごとの記事数の推移を単純に集 計した。それをグラフにまとめたものが図 6 である。 このグラフのなかで棒グラフを用いて示してあるの. 図 6(縦 14 字×横 25 字). が、それぞれの年ごとで本紙に掲載された「青少年犯罪」 の記事数である。また、グラフをわかりやすく読み取れ るように、前章で確認した「少年非行に関する世論調査」 の数値を折れ線グラフで示した。実線で表されているの が、少年非行が 5 年前と比べて「かなり増えている」 「あ る程度増えている」と答えた人の割合の合計であり、破 線で表されているのが、そのうち「かなり増えている」 と答えた人の割合である。 このグラフをみると、折れ線グラフの変化と棒グラフ. 出典:朝日新聞データベース『聞蔵ビジュアルⅡ』. の変化はおおむね同じ動きをしていることがわかる。記. 内閣府「少年非行に関する世論調査」. 事数の変化をみると、2003 年までは増加傾向、2003 年から 2006 年までは高止まり傾向にあることがわか. で「少年非行に関する世論調査」のデータを確認した通. る。また、2006 年以降は、記事数の減少傾向がみられる。. り、人々は身近なレベルで発生した少年非行事件より社. 2012 年には記事数が少し増加するものの、2003 年か. 会的なレベルで発生した少年非行事件のほうにより敏感. ら 2006 年にかけての記事数に比べればそれほど大きく. であることがわかっている。そのことからも、地域面で. 増加しているわけではない。. 取り上げられるような地域レベルでの少年非行に関する. このように、おおむね 2000 年代の前半期と後半期で. 報道が少年非行のイメージ構築にあまり影響を与えてい. は異なる傾向を確認することができる。つまり、「少年. ないと考えられるからである。. 非行問題」意識が拡大した 2000 年代の前半期は、少年. 以上のことから、本研究における少年非行に関する記. 非行に関する報道量が増加傾向にあった一方で、「少年. 事とは、朝日新聞データベース「聞蔵ビジュアルⅡ」に. 非行問題」意識が縮小した 2000 年代の後半期は、少年. 収録されている記事のうち「青少年犯罪」の分類項目を. 非行に関する報道が減少していたということである。し. 付された記事を指すことにする。また、それは本紙に掲. たがって、 「少年非行問題」意識の拡大・縮小と少年非行. 載された記事のことであり、地域面に書かれたものは除. に関する記事数の増減に連動性を見出すことができた。. 外して分析していく。対象期間は、「青少年犯罪」の分 類項目が設けられた 1999 年から最新の 2014 年までと し、その期間に掲載された記事すべてを分析対象とする。. 3-3.同一事件の報道回数と「少年非行問題」意識の拡大・ 縮小. これらの記事を、特に 2000 年代の前半期と後半期で. ただし、 図6は単純に「青少年犯罪」 の記事数を分析しただけ. どのような変化があるのかという点に注目して、比較し. であるが、 こうした記事のなかには重大事件と呼ばれる事件を. ながら分析していく。「少年非行問題」意識が拡大した. 取り上げたものだけでなく、 軽微な少年非行事件を取り上げた. 2000 年代前半から、それが縮小した 2000 年代後半に. ものもある。 また、 何度も報道された事件もあれば、 一度きりの. かけて、少年非行報道の量がどのように変化していった. 報道で終わった事件もある。 そこで、 繰り返し報道されるような. のか、あるいは、その報道の言及内容にはどのような変. 重大事件も増減が「少年非行問題」 の拡大・縮小に影響を与え. 化がみられるのかについて分析したいと思う。. ると考え、 同一事件の報道回数について分析を行うことにした。 では、まず2000 年代の前半期において、同一事 件が. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 27.

(6) 「少年非行問題」の拡大と縮小. 表 1 2003 年における同一事件の報道回数 上位 5 事件 事件名 ①長崎県長崎市・男児誘拐殺人事件. 表 3 2008 年における同一事件の報道回数 上位 5 事件. 記事数. 事件名. 134. ①岡山県岡山市・JR 岡山駅ホーム突き落とし. ②大阪府河内長野市・両親兄弟殺傷事件. 44. ③沖縄県北谷町・友人集団暴行死事件. 32. ④兵庫県神戸市・連続児童殺傷事件(1997). 18. ⑤愛知県名古屋市・男児暴行殺害事件. 17. 表 2 2004 年における同一事件の報道回数 上位 5 事件 事件名. 記事数. ①長崎県佐世保市・小 6 女児同級生殺害事件. 120. ②兵庫県神戸市・連続児童殺傷事件(1997). 31. ③東京都新宿区・男児突き落とし事件. 22. ④長崎県長崎市・男児誘拐殺人事件(2003). 13. ⑤愛知県西尾市・集団暴行事件. 13. 事件. 記事数 27. ②愛知県岡崎市・東海バス乗っ取り事件. 21. ③青森県八戸市・母子 3 人殺害事件. 20. ④山口県光市・母子殺害事件(1999). 19. ⑤鹿児島県姶良町・タクシー運転手刺殺事件. 18. 表 4 2009 年における同一事件の報道回数 上位 5 事件 事件名. 記事数. ①大阪府富田林市・高 1 殺害事件. 15. ②島根県出雲市・中 2 父親殺害事件. 14. ③沖縄県うるま市・男子中学生暴行死事件. 13. ④北海道札幌市・教室爆破計画事件. 12. ⑤奈良県桜井市・駅ホーム高 3 刺殺事件. 11. どれほど繰り返して報道されていたのかについて分析し. ことがわかる。また、この事件において、全 120 記事. た。特に、2005 年 1 月に実施された「少年非行等に関. のうち、事件の発生した 2004 年 6 月の間に書かれた. する世論調査」で人々の「少年非行問題」意識が拡大し. のは 80 記事にものぼっていた。. たということと関連させて分析するため、この調査が行. さらに、もうひとつ注目すべき点は、2003 年に発生. われた直近の 2 年間にあたる 2003 年と 2004 年の記事. した長崎男児誘拐殺人事件に関する記事が、2003 年に. を対象として分析することにした。各年に掲載された記. 引き続き 13 記事にわたって報道されていたということ. 事の見出しや本文から事件名を特定した上で、それぞれ. である。2004 年において長崎男児誘拐殺人事件につい. の事件の報道回数を数えた。表 1 では、2003 年におい. て言及した記事のうち、最後に書かれた記事は 2004 年. て繰り返して報道された事件のうち上位 5 件を示した。. 9 月 28 日の朝刊の記事である。つまり、2003 年 7 月. まず、この結果において最も明らかなことは、長崎. の事件発生から 1 年間以上にわたってこの事件が注目. 市の男児誘拐殺人事件について書かれた記事が非常に 多いということである。この事件に関する記事だけで. されてきたということである。 以上の結果から明らかとなったのは、「少年非行問題」. 2003 年に 134 もの記事が書かれていた。さらに、その. 意識が拡大していた 2003 年と 2004 年において、1 事. 134 記事のうち 85 記事が事件の発生した 2003 年 7 月. 件あたりの記事数が多い事件が複数あったということで. の間に掲載された記事であることがわかった。つまり、. ある。2003 年において 30 記事以上にわたって報道さ. 2003 年 7 月には、この長崎男児誘拐殺人事件に関する. れた事件は 3 つ、2004 年では 2 つあった。したがって、. 記事が平均して毎日約 3 記事ずつ掲載されていたとい. 同じ事件が繰り返し報道され、より詳細に事件に関する. うことになる。また、2 番目に多かった大阪府河内長野. 情報を入手できるような状態にあることが、「少年非行. 市の両親兄弟殺傷事件や、3 番目に多かった沖縄県北谷. 問題」意識が拡大させる要因のひとつになっている。. 町の友人集団暴行死事件も、それぞれ 44 記事と 32 記 事にわたって報道されている。. では、次に、2000 年代後半期における同一事件の記 事数を分析した。特に、2010 年 11 月に実施された「少. 同様に「少年非行問題」意識の拡大期である 2004 年. 年非行に関する世論調査」で確認された「少年非行問. の事件についても分析の結果を示したものが表 2 であ. 題」意識の縮小と関連させて分析するため、その直近の. る。この結果をみると、長崎県佐世保市の小 6 女児同. 2 年間にあたる 2008 年と 2009 年の記事を対象に分析. 級生殺害事件が 120 記事と非常に多く報道されている. を行った。これらの分析方法も、先に行った 2003 年と. 28.

(7) 2004 年の分析方法と同様である。. 縮小との関係を明らかにしていくということである。分. 表 3 は 2008 年の分析を行った結果である。この結. 析対象とする記事は、前章で扱った 2003 年・2004 年・. 果をみると、1 事件の報道回数が非常に少ないことがわ. 2008 年・2009 年のそれぞれ記事数上位 5 事件に関す. かる。一番繰り返しの報道回数が多かった JR 岡山駅ホー. る記事とすることにした。なぜなら、一度きりしか扱われ. ム突き落とし事件でも 27 回の報道でとどまっており、. ていない事件や繰り返し報道されている回数が少ない事. それ以下の事件はほとんど 20 記事以下となっている。. 件は、その事件について人々が入手する情報量が少なく、. これは 2003 年と 2004 年の分析結果と比べると、明ら. 読み手に与える影響があまりないということが考えられ. かに少ない。. るからである。そのため、繰り返し報道された事件にお. また、1 事件を繰り返して報道する回数が少ないとい う傾向は 2009 年における少年非行事件の報道におい. いて、少年非行がどのように語られているのかについて 分析することにした。. て、より顕著に表れていた。表 4 は 2009 年における 同一事件の報道回数を、その数が多い順に示したもので ある。この結果を 2008 年のものと比べると、1 事件の 繰り返し報道回数がさらに少なくなっているということ がわかった。最も報道回数の多かった大阪府富田林市の 高 1 殺害事件でも 15 記事の報道でとどまっており、20 記事以上にわたって記事となった事件はなかった。 以上のことから、「少年非行問題」意識が縮小してい た 2000 年代の後半期、特に 2008 年と 2009 年に取り 上げられた事件は、その報道回数が少なかったというこ とがわかった。最も報道回数の多かった事件でも 30 記 事には満たず、ほとんどが 20 記事以下しか報道されて いなかった。 ただし、2000 年代前半期に発生した事件と比べて、 2008 年や 2009 年に発生した事件が繰り返し報道され るほどの重大事件ではなかったと言い切ることはできな い。事件自体が重大であるかどうかにかかわらず、少年 非行に関する報道の量が「少年非行問題」意識の拡大・ 縮小に影響を与えているのである。つまり、繰り返し報 道する回数が増加している時期と「少年非行問題」意識 が拡大している時期が重なっており、またその逆も同様 であることが確認された。したがって、同一事件の繰り 返し報道の増加が「少年非行問題」意識の拡大に影響を 与え、同一事件の繰り返し報道の減少が、 「少年非行問題」 意識の縮小に影響を与えるということがわかった。 4.少年非行報道の量的変容と「少年非行問題」意識の 拡大・縮小 続いて、少年非行報道の質的な変化に注目してメディ ア分析を行うことにした。つまり、新聞記事において少 年非行がどのように語られているのかということを分析 した上で、その語りの変化と「少年非行問題」の拡大・. 表 5 2003 年・2004 年における記事の見出し 【長崎県長崎市・男児誘拐殺人事件】(2003) ・「少年の言葉、言い訳としか」 長崎幼児殺害で父親 が心境つづる (2003/07/23 朝刊) ・12歳両親の手紙、遺族受け取らず 長崎園児殺害 (2003/08/19 夕刊) ・「極刑以外納得できぬ」両親、遺影胸に意見陳述 長 崎園児殺害事件 (2003/09/25 朝刊) ・「遅きに失した。一切の謝罪受けない」長崎園児殺害 遺族が文章公表 (2004/05/25 朝刊) 【沖縄県北谷町・友人集団暴行死事件】(2003) ・座喜味君の無念、真剣に考えて 沖縄、殺害中2の 学校集会 (2003/07/07 夕刊) 【長崎県佐世保市・小 6 女児同級生殺害事件】(2004) ・女児両親、謝罪の手紙 被害者の父「まだ読めない」 長崎小6事件 (2004/06/13 朝刊) ・「心のスイッチ切り替わらず」怜美さんの父手記 佐 世保・小6殺人 (2004/06/27 朝刊) ・苦しんでいたんだね… 御手洗さん、亡き娘へ手紙 佐世保小6事件 (2004/09/16 朝刊). まずは「少年非行問題」意識が拡大した2000 年代前 半期のうち、2003 年・2004 年の記事の分析を行った。 その結果、この2000 年代前半期における少年非行事件 の語られ方にはある特徴があることがわかった。それは、 被害者の声を取り上げたような記事が多くみられたとい うことである。言い換えれば、被害者の視点に立って書か れた記事が多かったということである。このことについ て、いくつか記事の例を示しながら検討をしていきたい と思う。. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 29.

(8) 「少年非行問題」の拡大と縮小. まず、2003 年・2004 年の事件のうち、被害者側の 視点に立って書かれた記事を抽出した上で、その一部を 表 5 で示した。このなかの見出しをみると、被害者遺 族の悲痛な思いや、怒り・悲しみなどに言及した記事が みられる。例えば、 「12歳両親の手紙、遺族受け取らず」 や「遅きに失した。一切の謝罪受けない」といった記述か らは、被害者遺族の加害少年に対する怒りの感情を読み 取ることができる。また、謝罪の手紙を「まだ読めない」 と見出しに書いてあることからも、被害者の悲痛な思い が感じられる。さらに、 「座喜味君の無念、真剣に考えて」 という見出しのように、学校の校長が述べた被害者への 無念さを記述したものもみられた。 したがって、2000 年代前半期の 2003 年・2004 年 には、被害者や遺族の声を取り上げるような記事が多く みられるということがわかった。このような記事を人々 が読むことで、被害者遺族に対する同情心を抱くととも に、少年非行事件に対する不安感を強めると考えられる。 そして、こうした記事が「少年非行問題」意識の拡大期 であった 2003 年・2004 年に多くみられたということ から考えると、被害者遺族に同情心を抱くような記事の 内容によって、人々は「少年非行問題」意識を拡大させ. 表 6 2008 年・2009 年における記事の見出し 【岡山県岡山市・岡山駅ホーム突き落とし事件】(2008) ・ 「進学断念し家出」少年供述 あてなく電車に 岡山・ 突き落とし (2008/03/27 朝刊) ・「父に見放され、死のうと家出」 JR岡山駅の突き 落とし (2008/04/29 朝刊) 【愛知県岡崎市・東海バス乗っ取り事件】(2008) ・ 「親にしかられ嫌がらせ」14 歳、バス乗っ取り容疑逮 捕 山口から家出中 (2008/07/17 朝刊) 【青森県八戸市・母子 3 人殺害事件】(2008) ・「母の異性関係不満」 殺害容疑の長男話す 八戸事 件 (2008/01/30 朝刊) 【大阪府富田林市・高 1 殺害事件】(2009) ・「当日交際断られ」と供述 容疑の高3家裁送致 富 田林の高1殺害 (2009/07/04 朝刊) 【島根県出雲市・中 2 父親殺害事件】(2009) ・父殺害「成績しかられた」 出雲市教委「次男が相談」 (2009/07/09 朝刊) ・「夏休みの勉強、嫌で殺害決意」 補導13歳、調べ に 出雲・父刺殺 (2009/08/01 朝刊). るということになる。したがって、こうした記事が、 「少. これらの記事の見出しをみると、加害少年の供述内容. 年非行問題」意識の拡大に影響を与える一要因となる。. を取り上げている記事が多いということがわかる。特に. 一方で、2000 年代の後半期、つまり「少年非行問題」. 犯行に至った原因や理由、言い分を記述したものが多く. 意識の縮小期における少年非行報道の質的分析を行っ. みられる。例えば、岡山県岡山市の JR 岡山駅ホーム突. た。前節と同様に、2008 年と 2009 年において報道回. き落とし事件や島根県出雲市の中 2 父親殺害事件では、. 数の上位 5 事件に当てはまる事件の新聞記事を読んで. 「父に見放され、死のうと家出」や「夏休みの勉強、嫌. 分析することにしたが、その結果、明らかとなったこと. で殺害決意」といった見出しからわかるように、父親に. が 2 点ある。第一に、2003 年・2004 年に目立った被. 対する言及について取り上げられていた。また、大阪府. 害者に関する言及は多くみられなかったということであ. 富田林市の高 1 殺害事件では、 「当日交際断られ」といっ. る。被害者や遺族の悲痛な思いや怒り、苦しみに訴えか. た男女関係に関する言及について取り上げられていた。. けるような記述は目立たず、そうして視点から事件の残. これらのように加害少年の声を取り上げた記事は、いず. 酷さや加害少年の異常性が強調されることはなかった。. れも加害少年の犯行に対する彼らの言い分が述べられて. 第二に、2008 年・2009 年の少年非行報道において明. おり、加害少年に同情心を抱く内容が含まれていること. らかとなった特徴は、加害少年の声について取り上げた. がわかった。. 記事が多かったということである。つまり、2000 年代. したがって、2008 年・2009 年の少年非行に関する. の前半期には被害者や遺族の視点で書かれた記事が多. 記事では、加害少年の供述や彼らの犯行に及んだ背景に. かったのに対して、2000 年代の後半期には加害少年の. 関する記述が多いことがわかった。また、それらの背景. 視点で書かれた記事が多かったということである。これ. には読み手に加害少年への同情心を抱かせるような不遇. らのことは報道回数上位 5 事件に関する記事の見出し. なものが多く、異常な加害少年像について語られたり残. を抽出することで、確認することができる。. 虐な犯行として語られたりすることはなかった。特に 2008 年・2009 年の少年非行に関する記事は記事数も. 30.

(9) その文字数も全体的に少ないということから、このよう. る記事数が多いということがわかった。また、2000 年. な記述がその多くを占めていたということがわかる。. 代前半期のほうが 1 つの事件を繰り返し報道している. そして、こうした特徴がみられた記事が多くみられた. 数が非常に多かったが、2000 年代後半期のほうは 1 つ. 時期と、2010 年の世論調査からわかった「少年非行問. の事件の繰り返し報道回数は少ないことがわかった。つ. 題」意識の縮小期とがちょうど重なっていることがわ. まり、少年非行に関する報道の量が増加すれば「少年非. かった。こうした少年非行事件の異常性や残虐性が排除. 行問題」意識は拡大し、その量が減少すれば「少年非行. されながら事件が報道されることで、それまで人々が抱. 問題」意識は縮小するということである。したがって、. いていた非行少年に対する問題意識が縮小していると考. 少年非行に関する報道の量的変化が、 「少年非行問題」の. えられる。つまり、こうした加害少年の供述や不遇な環. 構築と解体に影響を与えているということがわかった。. 境について取り上げた記事を多く含んでいるという記述. 第二に、少年非行に関する新聞記事の質的な変化を. 内容の質的な変化が、「少年非行問題」意識の解体に影. 比較した。その結果、2000 年代前半期における少年. 響を与える一要因となったということである。. 非行報道と 2000 年代後半期における少年非行報道と. 以上のことから、2000 年代の少年非行事件に関する. の間に、対照的な特徴を見出すことができた。つまり、. 記事において、2000 年代前半から後半にかけて、被害. 2000 年代前半期における少年非行の記事では、被害者. 者遺族に焦点を当てて書かれた記述から加害少年に焦点. や遺族の怒りや苦しみなど悲痛な思いを取り上げたよう. を当てて書かれた記述へと記事の質が変化していったと. な語りが多くみられた。それに対して、2000 年代後半. いうことがわかった。そして、注目すべき点は、この被. 期における少年非行の記事では、加害少年の言い分や犯. 害者に関する言及から加害者に関する言及への質的な変. 行に及んでしまった背景を取り上げたような語りが多く. 化が「少年非行問題」意識の拡大と縮小の変化と重なっ. みられることがわかった。したがって、被害者や遺族の. ているということである。被害者に関する言及が多く、. 視点に立った少年非行報道の語りが増加することによっ. 加害者に関する言及が少ない 2000 年代前半期はちょう. て「少年非行問題」意識が拡大し、加害少年の視点に立っ. ど「少年非行問題」意識が拡大している時期と重なって. た少年非行報道の語りが増加することによって「少年非. おり、一方で、被害者に関する言及が少なく、加害者に. 行問題」意識が縮小することがわかった。. 関する言及が多い 2000 年代後半期はちょうど「少年非. このように、「少年非行問題」意識が拡大した 2000. 行問題」意識が縮小している時期と重なっている。つま. 年代前半期とそれが縮小した 2000 年代後半期の間に、. り、被害者について言及した記事と加害者について言及. 少年非行報道の在り方に対照的な違いがみられることが. した記事の増減が、「少年非行問題」意識の拡大と縮小. わかった。このことは、マスメディアによる少年非行報. に影響を与える要因のひとつとなっていることも、この. 道の在り方が「少年非行問題」意識の変化に影響を与え. データから確認することができた。. ているということを示している。また、先行研究ではみ られなかった「少年非行問題」意識の縮小にも注目した. 5.おわりに. ことで、その拡大だけでなく縮小についてもマスメディ. 本研究では、「少年非行問題」意識はどのようにして. アの影響がみられるとわかった。少年非行に関する情報. 拡大するのか、そして、「少年非行問題」意識はどのよ. がマスメディアによってどのように人々のもとへ届くの. うにして縮小するのか、という 2 つの問いについて明. かということが少年非行観や少年非行イメージを作り上. らかにしてきた。特に世論調査の結果から、人々の少年. げるということを念頭に置いて、今後も「少年非行問題」. 非行に対するイメージ構築に強く影響を与えているのは. について考えていかなければならないと筆者は考えてい. マスメディアの報道によって広く社会的に注目された事. る。. 件であることがわかった。そこで、新聞メディアが与え. 本研究では、「少年非行問題」意識の拡大・縮小の要. る影響に注目して、「少年非行問題」意識の拡大・縮小. 因について、マスメディアによる報道に注目して示す. の要因を明らかにしてきた。. ことができた。今後の展望としては、まず今回扱った. 第一に、量的な変化を比較したところ、2000 年代前. 2000 年代以外の「少年非行問題」意識とマスメディア. 半期のほうが 2000 年代後半期と比べて少年非行に関す. の関係を検討する必要がある。本研究で明らかとなった. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 31.

(10) 「少年非行問題」の拡大と縮小. 傾向が他の年代にも当てはまるのかを確認することで、. 万引き、 (ク)覚せい剤や大麻、合成麻薬、シンナー. より一般論として主張することができる。また、世論調. などの薬物の乱用、(ケ)暴走行為、(コ)いじめ、. 査から見た社会的なレベルでの「少年非行問題」意識の. (サ)援助交際などの性的な非行、 (シ)家庭内暴力、. 拡大・縮小ではなく、個人的な視点で少年非行に関す. (ス)校内暴力、(セ)喫煙や飲酒、家出や深夜はい. る「問題」意識が変容する過程を明らかにする必要があ. かいなどの不良行為、その他、特にない、わからな. る。マスメディアによる少年非行の報道を受け取った個. い、の 17 項目である。. 人一人ひとりが、どのように少年非行に対するイメージを. (6)浜井(2004)は、朝日新聞のデータベースにおいて、. 変容させるのかを示すことで、よりマスメディアによる影. 「凶悪」+「殺人」、 「犯罪」+「被害者」をキーワー. 響を明らかにすることができる。このようにまだ明らかに. ド検索した。その結果、これらの記事数が 2000. できていない課題を今後の展望とし、少年非行の実態とは. 年に急増していることを明らかにしている。牧野. 異なる形で拡大・縮小する「問題」意識を捉えていきたい。. (2006)は、朝日新聞の記事のうち殺人事件に絞っ て抽出した記事を分析した。その結果、記事数や報. [注]. 道期間が拡大したという量的変化や加害少年の「心」. (1)少年非行の「凶悪化」言説などの再検討を試みた. に着目するようになったという質的変化を明らかに. 先行研究として、広田(2001)、鮎川(2001)、土. した。. 井(2003)の研究が挙げられる。 (2)少年非行の「凶悪化」言説とメディアに関する先 行研究として、大庭(1990)、浜井(2004)、牧野 (2006)の研究が挙げられる。 (3)この質問には、「かなり増えている」「ある程度増 えている」「変わらない」「ある程度減っている」 「かなり減っている」という 5 段階の選択肢と「わ からない」という選択肢の 6 つが設けられている。 そして、図 1 のグラフにおいて、実線で示した「増 えている(小計)」とは、「かなり増えている」「あ. [文献] ・鮎川潤『少年犯罪―ほんとうに多発化・凶悪化してい るのか』、平凡社、2001 年。 ・大庭絵里「犯罪・非行の『凶悪』イメージの社会的構 成―『凶悪』事件ニュース報道をめぐって―」、『犯 罪社会学研究』第 15 号、1990 年、pp.18-33。 ・土井隆義「『少年犯罪の凶悪化』言説の妥当性」、『〈非 行少年〉の消滅―個性神話と少年犯罪―』、信山社、 2003 年。. る程度増えている」の 2 つの回答率を合わせたも. ・浜井浩一「日本の治安悪化神話はいかに作られたか―. のである。また、点線で示した「変わらない・減っ. 治安悪化の実態と背景要因(モラル・パニックを超. ている」は「変わらない」 「ある程度減っている」 「か. えて)―」、『犯罪社会学研究』第 29 号、2004 年、. なり減っている」の回答率を合計したものである。. pp.10-26。. (4)この質問の選択肢については、「凶悪・粗暴化した. ・広田照幸「〈青少年の凶悪化〉言説の再検討」、『教育. もの」 「低年齢層によるもの」 「集団によるもの」 「好. 言説の歴史社会学』、名古屋大学出版会、2001 年、. 奇心・スリルなど動機が短絡的なもの」「明確な動. pp.297-341。. 機がないもの」「周りから誘われたり強制されて行. ・牧野智和「少年犯罪報道に見る『不安』―『朝日新聞』. うもの」「自分の感情をコントロールできなくて行. 報道を例にして―」、『教育社会学研究』第 78 集、. うもの(突然キレて行うもの)」「増えているものは. 2006 年、pp.129-146。. ない」「その他」「わからない」の全 10 項目が設け られている。 (5)この質問項目の選択肢は、(ア)刃物などを使った. ・内閣府「少年非行に関する世論調査」、2010 年 11 月。. 殺傷事件、(イ)刃物類の持ち歩き、(ウ)ささいな. ・内閣府「治安に関する世論調査」、2006 年 12 月。. ことに腹を立てて暴力を振るう、(エ)強盗・恐喝. ・朝日新聞データベース「聞蔵ビジュアルⅡ」. 事件、(オ)バイクや自転車などを利用したひった くり、 (カ)バイクや自転車などの乗り物を盗む、 (キ). 32. [参考データ].

(11)

図 4 「問題だと思うこと」の「特になし」の回答率 図 4(縦 14 字×横 25 字) 出典:内閣府「少年非行に関する世論調査」 して、この「テレビ・ラジオ」と「新聞」の回答率は他 の選択肢と比べればはるかに高い水準となっており、そ の次点である「家族や友人との会話など」の回答率はこ れらの選択肢と比べると非常に低くなる。この結果から 考えると、ほとんどの人々は治安や犯罪に関する情報を テレビやラジオ、あるいは新聞から情報を入手している ということがわかる。したがって、テレビ・ラジオ・新 聞といったマスメ
図 6 分類「青少年犯罪」の記事数 図 6(縦 14 字×横 25 字) 出典:朝日新聞データベース『聞蔵ビジュアルⅡ』 内閣府「少年非行に関する世論調査」 で「少年非行に関する世論調査」のデータを確認した通 り、人々は身近なレベルで発生した少年非行事件より社 会的なレベルで発生した少年非行事件のほうにより敏感 であることがわかっている。そのことからも、地域面で 取り上げられるような地域レベルでの少年非行に関する 報道が少年非行のイメージ構築にあまり影響を与えてい ないと考えられるからである。 以上のことか

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