緒 言
平成 28 年度国民健康・栄養調査*1によると,過去 1 年間に歯科検診を受診した者の割合(20 歳以上)は 52.9%であり,平成 21 年度調査時(34.1%)および平成 24 年度調査時(47.8%)よりも増加している.一方で, 健康日本 21(第二次)*2には,過去 1 年間に歯科検診を 受診した者の割合を 65%以上に増加させる目標が掲げ られているが,いまだ達成されていない. 定期的な歯科受診を行うことで歯の喪失をはじめとす る口腔衛生状態の改善が認められることがこれまでの多 くの研究で報告されている.Costa ら1)は 5 年間の,上 條ら2)は約 10 年間の,Axelsson ら3)は 30 年間の調査 を行い,長期の定期的なメインテナンス治療を受けた者 は歯の喪失が有意に減少していることを報告した.ま た,Thomson ら4)は,歯科検診を長期にわたって受け るほど口腔保健状態が良好でう蝕罹患が少ないことを報 告している.このような歯科定期受診の実現には,かか りつけ歯科医が大きな役割を果たしている. かかりつけ歯科医がいる人の割合は,日本歯科医師 会の全国 1 万人を対象とした調査*3で 67.0%,愛知県 の 65 歳以上の高齢者を対象とした Yamamoto ら5)の研 究では 85.1%,健康かごしま 21(平成 25 年度‒平成 34 年度)中間評価報告書*4では 74.9% という報告があり, 地域や年齢層でばらつきが認められる. 星ら6)はかかりつけ歯科医院を予防目的で定期的に受 1)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科発生発達成育学講座予防歯科学分野 2)鹿児島大学病院発達系歯科センター口腔保健科 *1 厚生労働省:平成 28 年度国民健康・栄養調査,https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h28-houkoku.pdf(2020 年 7 月 7 日アクセス). *2 厚生労働省:健康日本 21(第二次),https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html(2020 年 7 月 7 日アクセス). *3 日本歯科医師会:歯科医療に関する一般生活者意識調査,https://www.jda.or.jp/pdf/DentalMedicalAwarenessSurvey_h28.pdf(2020 年 9 月 10 日アクセス). *4 鹿児島県:「健康かごしま 21(平成 25 年度‒平成 34 年度)」中間評価報告書,http://www.pref.kagoshima.jp/ae06/kenko-fukushi/kenko-iryo/ kenko/kagoshima21/gaiyou/documents/70126_20190122141420-1.pdf(2020 年 9 月 10 日アクセス). 口腔衛生会誌 J Dent Hlth 71: 94‒101, 2021地域住民におけるかかりつけ歯科医による
定期検診の受診要因についての因子探索研究
基 敏裕
1)中野 由
2)西山 毅
1)長田 恵美
2)山口 泰平
1)於保 孝彦
1) 概要:平成 28 年度国民健康・栄養調査によると,過去 1 年間に歯科検診を受診した者の割合(20 歳以上)は 52.9%で ある.健康日本 21(第二次)には過去 1 年間に歯科検診を受診した者の割合を 65%以上に増加する目標を掲げているが, いまだ達成されていない.本研究では,平成 28〜29 年度の 2 年間に鹿児島県曽於郡大崎町で実施された成人歯科検診を 受診した 366 人(男性 183 人,女性 183 人,平均年齢 66.4 歳,年齢幅 27〜96 歳)を対象に,かかりつけ歯科医による定 期検診受診に関わる因子について探索を行った.かかりつけ歯科医による定期検診受診の有無に対して,自己記入式アン ケートおよび歯科医師による検診の結果をもとにデータマイニング手法である決定木分析を用いて因子の組み合わせやパ ターンを抽出し,それらの効果を χ2検定で評価した.その結果,「この 1 年間の口腔衛生処置の受療経験」「性別」「歯間 清掃用具の使用経験」の 3 つが受診に関わる重要な要因であることが示された.歯科医療従事者は,少なくとも 1 年に 1 回は歯科医院で歯石除去等を受けて,週に 3 日以上の歯間清掃用具を使用するように指導することにより,定期歯科検診 の受診率が向上する可能性が示唆された.また,性別については男性への受診勧奨がより有効と考えられた. 索引用語:かかりつけ歯科医,定期歯科検診,データマイニング,決定木分析 口腔衛生会誌 71:94-101, 2021 (受付:令和 2 年 9 月 30 日/受理:令和 3 年 1 月 7 日)原 著
診する行動は,口腔衛生状態を良好にし,主観的健康観 や生活満足度と関連する QOL を維持増進させる可能性 を示した.また,田野ら7)は,都市部在住の 65 歳以上 高齢者の調査を行い,かかりつけ歯科医をもつ群は生活 満足感や外出頻度が高く趣味活動が活発となるなど良好 な生活を送っていることを報告している.このようにか かりつけ歯科医による定期検診は,口腔衛生を推進する ことで人々の健康や生活に寄与している.これらの研究 は都市部の住民を対象としているが,地方在住者を対象 とした報告は少ない.小宮山ら8)は,仙台市在住の 70 歳以上の地域高齢者を対象に調査を行い,かかりつけ歯 科医の有無と要介護認定とが関連していることを報告し たが,定期検診との関連についての報告はこれまでに認 められない. 健康かごしま 21(平成 25 年度‒平成 34 年度)中間評 価報告書*4によると,平成 29 年度の鹿児島県における 過去 1 年間に歯科検診を受診した者の割合は 32.7%であ り,平成 28 年度の全国平均 52.9%を大きく下回る.健 康日本 21 の目標値達成には都市部在住者のみならず本 県のような地方在住者における受診率向上が必要であ る.本研究の目的は,地方在住者のかかりつけ歯科医に よる定期検診受診に関連する要因を分析し,定期検診受 診率の更なる向上に寄与することである.データマイニ ング手法を用いて,定期検診受診の有無に対して,自己 記入式アンケート票の質問項目および歯科医師による検 診結果から因子の組み合わせやパターンを抽出したうえ で,それらの効果を統計解析した.
対象および方法
1.対象 平成 28〜29 年度の 2 年間に鹿児島県曽於郡大崎町で 実施された成人歯科検診を受診した 397 人に対して,歯 科検診前に行ったアンケート調査時に文書によって研究 の主旨を説明し,署名により研究への参加意思について 尋ねた.その結果,研究に対する同意を得られなかっ た 6 人を除く 391 人を対象とした.このうちアンケート の回答に不備のあった 25 名を除く 366 人(男性 183 人, 女性 183 人,平均年齢 66.4 歳,年齢幅 27〜96 歳)を解 析対象とした. 本研究は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科疫学研究 等倫理委員会の承認を得て行われた(受付番号 614). 2.方法 アンケート票は歯科検診時に受診者自身に回答して もらい,その質問項目の中から,表 1 に示す 11 項目を 因子として用いた.歯科検診は,あらかじめ基準を統 一した 10 人の歯科医師が行った.診査項目は歯と歯 周組織の状態,歯石沈着,舌苔付着,口臭の程度とし た.歯周組織状態は歯周病検診マニュアル 2015*5に基 づいて CPI(Community Periodontal Index)コードを 測定した.舌苔については付着している舌苔の舌背に 占める面積の割合(0,無;1,<1/3;2,1/3 ≤ <2/3; 3,2/3 ≤),舌苔の厚み(0,無;1,薄い;2,厚い)を 評価し,付着範囲と厚みのスコアを乗じて舌苔スコア9) とした.口臭の程度はハリメーター®(Interscan Corp., Chatworth, CA. USA)を用いて揮発性硫黄化合物の濃 度(ppb)を測定した.検診結果から現在歯数,歯肉出 血の有無,CPI コード最大値,歯石沈着の有無,舌苔ス コア,口臭測定値の 6 項目を因子として用いた. 3.データ分析 本研究ではデータマイニング手法で因子を抽出し,ク ロス集計による分析を行った.まず,データマイニング 手法の 1 つである決定木分析を実施することでかかりつ け歯科医による定期検診受診者の因子の特徴や規則性を 探った.決定木分析はターゲットとなる目的変数に関す る重要な因子(説明変数)をさまざまな基準に基づき分 類し自動抽出する方法であるが,本研究では,CHAID を基準として用いた.目的変数は,アンケート票の質問 項目「かかりつけ歯科医を決めており,かつ定期的に検 診や歯石除去,歯の清掃などを受けているか」の有無と した.説明変数は,目的変数を除くすべての因子とし た.次に決定木分析で分岐の要因となった項目の関連の 程度を評価するため,χ2検定を行って調整化残差を求 めた. 統計解析には SPSS Statistics ver.26.0, SPSS Decision Trees(IBM, 東京)を用い,統計学的有意水準を 5%に 設定した.結 果
表 1 にかかりつけ歯科医の有無と各項目との関係を示 す.かかりつけ歯科医あり群は,なし群と比較して,こ の 1 年間の口腔衛生処置の受療経験者が多く,性別では 女性が多かった.歯間清掃用具の使用経験者も多く,十 分な時間をかけて歯を磨く人,お口の体操や唾液腺マッ サージを行っている人も多かった.さらにこの群は,な し群と比較して,現在歯数が約 3 本多く,何でも嚙んで 食べることができ,口臭も少ないことが示された.その *5 厚生労働省:歯周病検診マニュアル 2015,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/manual2015.pdf(2020 年 7 月 7 日アクセス).一方で,可撤式義歯使用者が多く,喫煙者も有意に多い ことが示された. 決定木分析の結果を図 1 に示す.対象者は以下の 4 群 に分類され,①「この 1 年間の口腔衛生処置の受療経 験」ありの「女性」; 96 名,②「この 1 年間の口腔衛生 処置の受療経験」ありの「男性」;88 名,③「この 1 年 間の口腔衛生処置の受療経験」なしの「歯間清掃用具の 使用経験」ありの者 ; 63 名,④「この 1 年間の口腔衛生 処置の受療経験」なしの「歯間清掃用具の使用経験」な しの者 ; 119 名であった.また,「かかりつけ歯科医」を 口腔衛生会誌 J Dent Hlth 71(2), 2021 表 1 解析に用いた質問項目と診査項目 項目 あり(141 名) なし(225 名)かかりつけ歯科医 p 値 1.性別 男性 61 122 0.041 女性 80 103 2.年齢 (歳) 66.8 66.1 0.626 3.十分な時間をかけて歯を磨きますか ほぼ毎日 1 回以上 134 185 0.005 週に 3 〜 4 日 2 12 週に 1 〜 2 日 3 6 ほとんどない 1 16 4.デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシ を使っていますか ほぼ毎日週に 3 〜 4 日 5920 4516 <0.001 週に 1 〜 2 日 24 22 使っていない 36 127 5.取り外し式の入れ歯を使っていますか はい 108 139 0.002 いいえ 29 80 6.何でも嚙んで食べることができますか 何でもよく嚙める 121 152 <0.001 ある程度の硬さのものなら嚙める 19 54 ある程度軟らかくしないと嚙めない 1 9 柔らかいものしか嚙めない 0 6 7.食事のときにむせることがありますか よくむせる 1 3 0.792 時々むせる 18 32 あまりむせない 120 188 8.よく嚙んだり,スムーズな飲み込みなどの 口の機能を保つための「お口の体操」や 「唾液腺マッサージ」を知っていますか 実施している 24 13 <0.001 知っているが実施はしていない 41 55 知らない 74 153 9.現在(この1か月間)あなたはたばこを吸 っていますか 吸っていない吸っている 11920 20815 0.016 10.かかりつけの歯科医を決めていますか (1)決めている (2)決めていない ※ (1)の方,定期的に検診や歯石除去, 歯の清掃などを受けていますか (1)受けている (2)受けていない 11.この 1 年間に歯科医院等で歯石をとって もらったり,歯の汚れを取り除いてもら ったりしたことがありますか 受けた 122 62 <0.001 受けていない 18 160 現在歯数 (本) 24.3 21.1 <0.001 歯肉出血 あり 94 134 0.802 なし 47 71 CPI コード(最大値) 0 (所見なし) 47 46 0.075 1 (歯周ポケット深さ 4 〜 5 mm) 55 97 2 (歯周ポケット深さ 6 mm 以上) 39 62 歯石沈着 あり 73 128 0.088 なし 68 82 舌苔スコア 0 16 44 0.13 1 28 33 2 39 62 3 58 81 口臭測定値 (ppb) 142.6 189.3 0.045
決めている人の割合は,① 74.0%,② 58.0%,③ 20.6%, ④ 5.0% の順であった. 決定木は,目的変数に関連が最も強い説明変数から分 岐を開始するので,かかりつけ歯科医にとって,「この 1 年間の口腔衛生処置の受療経験」が最も重要な要因で あることが判明した.その後,「この 1 年間の口腔衛生 処置の受療経験」ありの者は「性別」,なしの者は「歯 間清掃用具の使用経験」で分岐した.決定木分析から, 「この 1 年間の口腔衛生処置の受療経験」「性別」「歯間 清掃用具の使用経験」の 3 つが「かかりつけ歯科医」の 有無に関わる要因であることが示された. 決定木分析の結果を踏まえて,目的変数と関連が強い 3 つの説明変数それぞれに対して χ2検定を実施し,調 整化残差を求めた(表 2).欠損値は除外して解析を行っ た.調整化残差は,その絶対値が 1.96 以上ならば両者 に高い関連があることを示す.説明変数「この 1 年間に 歯科医院等で歯石をとってもらったり,歯の汚れを取り 除いてもらったりしたことがありますか」および「性 別」の調整化残差の絶対値は各々 11.0(p<0.001),2.0 (p=0.041)であった.説明変数「デンタルフロス(糸よ うじ)や歯間ブラシを使っていますか」の項目のうち 「ほぼ毎日」と「週に 3 〜4 日」の調整化残差の絶対値 は各々 4.2,2.0(p<0.001)であったが,「週に 1〜2 日」 の調整化残差の絶対値は 1.8(p<0.001)であった.
考 察
本研究対象者の特徴を調べたところ,表 1 の結果か ら,かかりつけ歯科医あり群は,なし群と比較して,現 図 1 決定木分析の結果在歯数が多く口臭も少ないという良好な口腔衛生状態を 維持していることが示された.この結果は,定期的な メインテナンス治療による歯の喪失防止を報告した先 行研究1-3)を支持するものである.さらに,可撤式義歯 使用者が多い点は,かかりつけ歯科医の積極的な口腔管 理によると考えられる.かかりつけ歯科医が可及的に患 者の歯を残し,欠損部位に対しては補綴処置を行うこと によって,咬合機能の維持を図っていることが推測され る.歯間清掃用具の使用者や十分な時間をかけて歯磨き をしている人が多い点は,かかりつけ歯科医による口腔 衛生指導の成果であるといえる.その一方で,喫煙者が 多い点は,歯科医療従事者による禁煙指導の必要性を示 している.お口の体操や唾液腺マッサージといった口腔 機能に関する項目の実施状況もかかりつけ歯科医あり群 のほうが優れていたが,その実施者の割合は低かった. 禁煙指導とともに口腔機能についても更なる啓蒙活動が 必要であると考えられる. 従来の統計解析は,解決したい仮説に対してデータを 集め,その仮説を証明することを目的としている.これ に対して,データマイニング手法では,蓄積されたデー タを用いて仮説を発見することを目的としている10). データマイニング手法によって得られた結果は仮説であ るため,さらに従来の統計解析を行うことで,この仮説 の証明を行うことができる.本研究における決定木分析 と χ2検定から,「かかりつけの歯科医を決めており,か つ定期的に検診や歯石除去,歯の清掃などを受けている か」の有無については,「この 1 年間に歯科医院等で歯 石をとってもらったり,歯の汚れを取り除いてもらっ たりしたことがありますか」「デンタルフロス(糸よう じ)や歯間ブラシを使っていますか」「性別」の 3 つが 重要な受診要因であることが示された.決定木には,目 的変数に関連が最も強い説明変数から分岐を開始すると いう特徴がある.そのため,「過去 1 年間に歯科医院等 で歯石や歯の汚れの除去を受けたか」が,かかりつけ歯 科医の決定に対して最も関連があることがわかった.こ れまでに定期的な歯科受診の要因について報告された先 行研究では,口腔の主観的健康状態や社会経済的な要因 に着目しているものが多い.口腔の主観的健康状態は GOHAI(General Oral Health Assessment Index) な どの口腔健康関連 QOL を用いて評価されている.杉浦 ら11)はデータマイニング手法を用いて因子探索研究を 行い,GOHAI スコア 40 点以下の者が定期歯科受診を 中断していることを示した.同様に,藤井ら12)の職域 における口腔保健活動への参加状況と口腔関連 QOL と の関係についての研究では,GOHAI スコアは長期参加 者で高いことが報告されている.Afonso-Souza ら13)は POH(Perceived Oral Health)を用いた研究を行い, 定期歯科受診の頻度が少ない者ほど口腔の主観的健康状 態が悪いことを報告している.また,社会経済的な要因 についての研究として,岡崎ら14)は定期歯科受診の中 断要因として仕事や家庭の都合を報告し,Tamaki ら15) は,定期歯科受診の推進に歯科衛生士の技能と治療費が 関連することを報告している.本研究では,口腔保健行 動に着目して分析を行ったところ,「過去 1 年間に歯科 口腔衛生会誌 J Dent Hlth 71(2), 2021 表 2 各説明変数の調整化残差 説明変数 かかりつけ歯科医による定期検診 なし あり p 値 1 年以内に歯石除去等 なし 度数 160 18 <0.001 調整化残差 11.0 -11.0 あり 度数 62 122 調整化残差 -11.0 11.0 性別 女性 度数 103 80 0.041 調整化残差 -2.0 2.0 男性 度数 122 61 調整化残差 2.0 -2.0 フロス・歯間ブラシの使用頻度 ほぼ毎日 度数 45 59 <0.001 調整化残差 -4.2 4.2 週に 3 〜 4 日 度数 16 20 調整化残差 -2.0 2.0 週に 1 〜 2 日 度数 22 24 調整化残差 -1.8 1.8 使っていない 度数 127 36 調整化残差 6.3 -6.3
医院等で歯石や歯の汚れの除去を受けたか」という行動 が最も重要な要因であることが示された. また,かかりつけ歯科医による定期検診を受けている 人は週に 3 日以上デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブ ラシを使用している傾向があるが,「週に 1 〜2 日」の 頻度で歯間清掃用具を使用している人はこの定期検診 を受けている傾向は小さいことが示された(表 2).こ れまでに定期検診受診者は,口腔衛生のためにフロス や歯間ブラシを使用する傾向があることが報告されて おり16,17),本研究でも同様の結果が認められた.平成 28 年度歯科疾患実態調査*6では歯間清掃を行っている 人の割合は全体(1 歳以上)で 39.2%,55 〜 64 歳では 50%を超える.また,北迫ら18)によると,デンタルフ ロスと歯間ブラシの使用頻度はそれぞれ 60 代,50〜80 代で高く,歯間清掃を始めた要因は歯科受診時のスタッ フによる推奨と回答した者が半数以上を占めている.本 研究における対象者の平均年齢は 64.6 歳であり,これ らの報告と同年代であるため本研究結果の信頼性は高い と考えられる. かかりつけ歯科医による定期検診は,女性のほうが多 く受けていることが示された.平成 28 年度国民健康・ 栄養調査では女性のほうが過去 1 年間の歯科検診受診率 が高いことが報告されている*1.さらに,相田ら19)の 8020 推進財団の 2015 年全国データを用いた研究でも女 性のほうが定期歯科検診受診率が高いことが示されてい る.Benyamini ら20)は,女性の健康に関する自己評価 は、男性と比べてより広い範囲の健康関連および非関連 の要因に基づくと報告している.検診の効果を単なる口 腔内診査だけでなく,より包括的に考える特徴をもつ女 性の受診率が高いのかもしれない. 本研究により歯科医療従事者は,「少なくとも 1 年に 1 回は歯科医院で歯石除去等を受けて,週に 3 日以上の 歯間清掃用具を使用するように指導する」ことにより, 定期検診の受診率が向上する可能性があることが示唆さ れた.また,性別については男性への受診勧奨がより有 効と考えられた. 本研究の限界として,単独の歯科検診結果を用いて いる点が挙げられる.対象者に偏りが認められる可能 性が高いので,本研究の対象者と健康かごしま 21(平 成 25 年度‒平成 34 年度)中間評価報告書*4の対象者と 比較した.まず,現在歯数について,前者では 22.3 本 (平均年齢 66.4 歳),後者では 18.2 本(対象年齢 65〜74 歳)であり,本研究の対象者のほうが多かった.過去 1 年間に歯科検診を受診した者の割合についても,前者は 50.8%,後者は 32.7%であった.つまり,本研究対象者 は定期的に歯科検診を受診することで,自身の歯を多く 残すことができている可能性が高い.その一方で,CPI 診査で健全と評価された者の割合は,前者が 26.9%,後 者が 30.8%(対象年齢 60〜69 歳)であり,歯肉出血な しの割合についても,前者が 34.1%,後者が 53.8%(対 象年齢 60 〜 69 歳)であった.また,本研究対象者の 46.7%は歯間清掃用具を使用しておらず,平成 29 年度 の健康かごしま 21 の対象者の 40.1%よりも高い割合を 示した.これらの結果から,本研究の対象者の歯周組織 状態は不良であると考えられる.歯周病治療は歯科医院 に通院するだけでなく,日常のセルフケアも重要であ る.本研究のかかりつけ歯科医なし群 225 名のうち 127 名が歯間清掃用具を使用していない.この点を踏まえる と,未使用者には歯間清掃用具の使用を促すことから始 めて,徐々に使用頻度を増やしていくといった段階的な 口腔衛生指導が有効ではないだろうか.歯間清掃用具を 使用している者に対しては,週に 3 日以上の使用を指導 することで本研究結果を生かすことができる.このよう に,個々人に対応した口腔衛生指導を行うことが重要と 考えられる. また,都市部で行われた研究17)と比較すると,都市 部在住者の歯間清掃用具の使用率は 69.5%,歯肉出血が ない者の割合は 54.0%であり,どちらの項目も本研究対 象者より高かった.また,都市部在住者の 70%が 25 歯 以上有すると報告されており,現在歯数も本研究対象者 よりも多いと推測される.先行研究の対象者の平均年齢 は 52.6 歳であり本研究対象者よりも低いことを踏まえ ても,都市部在住者は地域在住者に比べて良好な口腔状 態と高い口腔衛生意識を有していると考えられる. 本研究結果に基づく対策は,成人歯科検診を受診する ものの,かかりつけ歯科医を持たない対象者には有効で あると思われる.しかし,成人歯科検診を受診しない対 象者への効果は不明である.健康かごしま 21(平成 18 年度)中間評価報告書「歯の健康」*7によると,平成 12 年度の歯科検診のために定期的に歯科医を受診する成人 の割合は 7.7%であったが,平成 17 年度には 12.7%,平 成 29 年度には 32.7%に上昇した*4.これは,市町村の *6 厚生労働省:平成 28 年歯科疾患実態調査,https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450131&tstat=000001104615(2020 年 7 月 7 日アクセス). *7 鹿児島県:「健康かごしま 21(平成 18 年度)」中間評価報告書「歯の健康」,http://www.pref.kagoshima.jp/ae06/kenko-fukushi/kenko-iryo/ kenko/kagoshima21/gaiyou/documents/9hanokennkou.pdf(2020 年 11 月 26 日アクセス).
健康増進計画策定との関わりがあると思われる.市町 村の健康増進計画は,都道府県と異なり,努力義務で ある.そのため,平成 17 年度の鹿児島県では,計画を 策定している市町村は 17 しかなかったが*8,平成 29 年 度は 43 すべての市町村が策定している*4.このように, 行政が先頭に立って住民の健康に取り組む姿勢が重要で はないだろうか.健康増進計画を策定することにより, 健康づくり施策に関わる各課の連携が図られるようにな り,健康づくりの取組が活性化して住民の意識が高揚す る効果が認められている*4.その一方で,健康増進を推 進するうえでの課題として,更なる住民意識の向上が求 められており,健診や保健指導の受診率向上を目的とし た住民への個別支援強化が重要であるとのアンケート結 果が得られている*4.市町村の自己評価によるアンケー ト結果によると*4,社会資源の活用と健康づくり活動を サポートする地域資源の整備,具体的には,情報資源の 活用と情報発信への取り組みが不十分であることが挙げ られている.本研究成果を地域住民に周知することで, 歯科検診を受診しない人の受診勧奨にもつながることを 期待したい. 謝 辞 本調査研究にご協力をいただきました鹿児島県曽於郡大崎 町役場福祉課職員の皆様および住民の皆様に深く感謝いたし ます. 文 献
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Exploratory Factor Analysis of Factors Leading to Regular Checkups by Family Dentists among Community-dwelling Inhabitants
Toshihiro MOTOI1), Yu NAKANO2), Takeshi NISHIYAMA1), Emi NAGATA2),
Taihei YAMAGUCHI1) and Takahiko OHO1) 1)Department of Preventive Dentistry, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences 2)Division of Preventive Dentistry, Kagoshima University Hospital Abstract: According to the 2016 Japanese National Health and Nutrition Survey, 52.9% of people over 20 years of age attend dental checkups in the past year. The goal of the Second Health Japan 21 is to increase this rate to over 65%, but this goal has yet to be achieved. This study enrolled 366 people (183 males, 183 females; average age: 64.6 years) who underwent dental examinations in Osaki, Soo District, Kagoshima Prefecture during 2016–17. Exploratory factor analysis was performed to identify factors leading to regular checkups by family dentists. From the results of a self-completed questionnaire and dental examination, we extracted combinations of factors using decision tree analysis, a data mining method, and evaluated their effects using the χ2-test. This showed that oral hygiene treatment within a year, sex, and use of interdental cleaning adjuncts were three important factors influencing the decision to attend regular dental checkups. This suggests that dentists should instruct patients to visit a dental office for oral hygiene treatment at least once a year and to use interdental cleaning tools at least 3 days a week to improve the rate of dental checkups. Encouraging men to undergo regular dental checkups was suggested to be more effective. J Dent Hlth 71: 94-101, 2021
Key words: Family dentist, Dental checkup, Data mining, Decision tree analysis
Reprint requests to T. MOTOI, Department of Preventive Dentistry, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, 8-35-1 Sakuragaoka, Kagoshima 890-8544, Japan