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青年海外協力隊体育隊員経験者の帰国後における社会還元に関する研究 ―質的研究法を用いた分析を手掛かりに―

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1.はじめに

⑴ 国際ボランティア経験の「社会還元」に関す る議論

我が国で最も実績があるといわれる国際ボラン ティア、青年海外協力隊(Japan Overseas Coop-eration Volunteers:以下、JOCV とする)は、50 年以上の歴史を有する(岡部2018a)。JOCV は、 国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:以下、JICA とする)が実施す る ボ ラ ンティア事業の1つであり、以下の3点を目的と して掲げている(JICA 2015、p. 8)。 1)開発途上国の経済・社会の発展、復興への 寄与 2)友好親善・相互理解の深化 3)国際的視野の涵養と経験の社会還元 本研究では、この中でも近年注目が集まってい る(King 2018;佐藤2012;佐藤・上山2018)目 的の3)に着目する。白井(2010)の「豊かな国 から貧しい国への援助という古典的な国際ボラン ティアの発想を転換する時期にきている」(p. 15) という指摘からも窺える通り、この目的の3)に 関心が向けられている理由としては、時代の流れ とともに国際ボランティアの在り方が大きく変容 していることが挙げられる。具体的には、先進国 と呼ばれる国々から開発途上国(以下、途上国と する)と呼ばれる国々に対して行う垂直的なアプ ローチであった従来の国際ボランティアに関する 考え方が、支援国も被支援国も恩恵を享受できる 水平的な関係に変わってきているということであ ろう。ここで、上記の目的3)を、「国際的視野 の涵養」と「経験の社会還元」に分けて考えてみ たとき、途上国における国際ボランティア経験を 通じて、従事者の意識はどのように変容したの か、加えて、どのような技能や知識を習得したの かという、いわば前者に関しては、JOCV のみな らず、世界中の国際ボランティア事業においても 活発に議論されている(例えば、Grusky 2000; Jones 2005;小野ほか2014;Sekine 2016;Sher-raden et al. 2008)。 では、もう一方の「経験の社会還元」に関する 議論は如何なものか。「帰国後の社会還元とは、 協力隊活動を通じた国際的視野の涵養、つまり人 材育成の結果として期待される成果だと考えら れ」(岡部2018a、p. 9)ており、あまり研 究 は 蓄 積されていないという。そもそも「還元」とは、 「根源に復帰させること」(新村2018、p. 654) という意味を持ち、社会還元という言葉は、享受 した恩恵を社会に返すという意味合いで用いられ ることが一般的である。そのような広義の意味で

青年海外協力隊体育隊員経験者の帰国後における

社会還元に関する研究

―質的研究法を用いた分析を手掛かりに―

白石 智也

広島文化学園大学 E-mail:t-shiraishi@hbg.ac.jp

齊藤 一彦

広島大学 E-mail:saitoh@hiroshima-u.ac.jp

山平 芳美

国際武道大学 E-mail:yamahira-y@budo-u.ac.jp 国際開発研究 第29巻第2号(2020)

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捉えたとしても、JOCV の「経験の社会還元」に 関する研究は、佐藤(2012)が、アンケートを通 して帰国後における JOCV 経験の活用方法を検 討したものや、野末ほか(2013)が、職種を絞っ た上で、JOCV 経験を通した成長と帰国後の就業 率を調査したものなど、量的な研究のみである。 それらの先行研究において、多くの JOCV 経験者 は、JOCV 経験を通して成長したと実感しており (野末ほか2013)、その経験を活かして、積極的に 社会還元活動に参加していることが明らかになっ て い る(藤 掛2011;佐 藤2012;Onuki and Xiao 2020)。 他方、Blanton(2016)は、国際ボランティア 分野における質的研究の少なさを指摘しており、 国際ボランティアが今後更に発展していくために は、プロセスの解明を目的とする質的研究の増加 が不可欠であると述べている。質的研究について メリアム(2004)は、「すべての部分が、いかに 連携してあるひとつの全体像を形成するのかを明 らかにする」(p. 9)ことであると定義している。 JOCV 経験の社会還元というテーマに照らし合わ せて解釈すると、JOCV として経験した種々の出 来事が、帰国後における自身の生活や仕事、ま た、社会への働きかけに対して、どのように影響 しているのかについて総合的に明らかにする、と いうことであろう。 ⑵ 途上国における学校体育の実態と体育隊員の 役割 本研究では、JOCV の中でも、「体育」という 職種で途上国に派遣された隊員(以下、体育隊員 とする)経験者に着目する。以下は、本研究が体 育隊員に焦点を当てる理由である。 1978年、パ リ で 行 わ れ た UNESCO 総 会 で の 「体育・スポーツ国際憲章」採択によって、体 育・スポーツに参加することは基本的人権である と宣言され、その37年後の2015年には、これが 「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」 に改名、継承された。この新たな憲章において も、世界中のすべての人が、人種や社会的地位、 また、性別、年齢、宗教などに関わらず、体育・ 身体活動・スポーツを行う機会が保障されなけれ ばならないと主張されている(UNESCO 1978; 2015)。他方、2016年に取り決められた「持続可 能な開発目標(Sustainable Development Goals:

以下、SDGs とする)」において、「目標4:質の高い 教育をみんなに」という目標が定められているよ うに、公教育の充実が開発課題の1つとして捉え られている。この成果として、世界中、とりわけ 途上国において、就学率は劇的に改善されている ( 田 2018;World Bank Group 2018)。これら から窺えることは、学校において身体活動やス ポーツを扱う体育授業を受けることも、世界中の 子どもたちが有する権利であるということであろ う。 しかし、途上国における体育授業の実施状況は 芳しくない。Hardman(2014)によると、学校にお いて教科として体育を法的に必修としている国の 割合は全世界で97% であり、途上国が多いとさ れるアフリカにおいても93% と非常に高いもの の、実施率は全世界で71%、アフリカでは62% であるという。先で述べた「体育・身体活動・ス ポーツに関する国際憲章」や SDGs が採択される 前のデータではあるものの、政府が打ち出す施策 と、学校現場における実態に乖離がみられる。 体育隊員は、このような体育授業の実態の改善 も含め、途上国における学校体育を推進すべく派 遣されてきた。2020年東京オリンピック・パラ リンピック競技大会(以下、2020東京オリ・パ ラとする)招致の際に、安倍首相が、体育隊員を 含む体育・スポーツ分野の JOCV の実績を全世 界に宣伝したことも記憶に新しい(齊藤2018)。 また、2020東京オリ・パラに向けた官民連携の スポーツ国際貢献事業「スポーツ・フォー・トゥ モ ロ ー(Sport for Tomorrow:以 下、SFT と す る)」(1) を主導している大学や民間企業なども、体 育・スポーツ分野の JOCV と連携することが求 められた(JICA 2018)。それに伴い、ポスト2020 東京オリ・パラにおける有形無形のレガシーとし て、体育・スポーツ分野の JOCV が有する途上 国での経験が注目されている。さらに、この体育・ スポーツ分野の JOCV に関する研究は散見され、 体育・スポーツ隊員の派遣動向を概観した研究 (例えば、小栗2001;齊藤2006)をはじめ、体育 隊員を対象とした技術補完研修(2) に焦点を当てた 研究(例えば、川口ほか2018;白石ほか2020) なども存在する。そして、派遣される体育隊員が 途上国からの要請に見合っていないという選考に 対する指摘(小栗2001)や、量及び質を向上さ せる必要があるという研修に対する指摘(川口ほ か2018)などが先行研究で挙げられており、体

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育隊員の派遣に関する実態や課題が明らかになっ ている。 他方、多くの国で実施されている国際ボラン ティア事業において、教育全般やスポーツ指導を 担当するセクターは存在するものの、学校体育の 推進を目的に、2年間という長期間のボランティ アを派遣する機関は、管見の限り JICA 以外には 無く、日本固有の職種であることが窺える(JICA 2018;岡部2018b)。また、1965年に JOCV 事業 が開始した当時から、「体育」が職種として存在 し、体育隊員が途上国に派遣されていることを鑑 みると、体育隊員は JOCV 事業の中核を担って きた職種であるといえる(齊藤2006)。さらに近 年でも、「日本型体育科教育の世界への展開」が 文部科学省のパイロット事業として実施されるな ど、日本の学校体育は世界的に注目されている (文部科学省2019)。そのため、このような学校 体育に関する知見を途上国で広める体育隊員の存 在意義は、今後益々大きくなるであろう。 ⑶ 本研究の目的 以上の通り、世界中の国際ボランティアの中で も、途上国の学校体育の推進に携わるという特異 性のある活動を行う体育隊員に関する研究は、国 際教育協力における学校体育支援の発展のため に、重要な役割を果たすと考えられる。また、体 育隊員経験者の帰国後の社会還元について調査す ることは、言い換えると、日本の若者が途上国の 学校体育に携わることで、日本社会にどのような メリットがもたらされるのか検討することである といえる。さらに、このようなテーマの研究を通 して、今後の体育隊員の派遣における選考や研修 などの在り方についても、より活発に議論するこ とができよう。 そこで、本研究の目的は、体育隊員の経験者 が、自らの体育隊員経験をどのように捉え、それ をどのように社会に還元したと自覚しているか、 または還元しようとしているかについて、質的研 究法を用いて明らかにすることである。

2.理論的検討

いくつかの国々でも、JOCV と類似する目的を 掲げた国際ボランティア事業が存在しており、そ れらに関する研究は蓄積されている(例えば、

Lough and Tiessen 2018;Lough and Xiang 2016;Perold et al. 2013)。その中でも近年、世 界中の国際ボランティアの様々な側面におけるイ ンパクトが注目されている(Bentall et al. 2010)。 UN Volunteers(2015)は、国連ボランティアに 関するレポートの中で、ローカルレベル、ナショ ナルレベル、さらに、グローバルレベルと、それ ぞれのレベルにおける国連ボランティアがもたら したインパクトについて、事例を挙げながら紹介 して い る。ま た、JOCV に つ い て は、Onuki(2018) によって、JOCV が有する資質能力と、途上国に おいて JOCV が発揮するパフォーマンスの関係 について調査されている。この研究では、「挑戦的 自発性」、「異文化交渉力」、「抗ストレスプロジェ クトマネージメント力」という3つの潜在因子が 抽出され、これらは派遣中に高まったり低まった りしながら、JOCV の任国でのパフォーマンスに 影響を与えているということが示唆された。これ も1つのインパクト研究であるといえよう。 他方、Sherraden et al.(2008)は、国際ボラン ティアのインパクトについて、最終的に、“Host Community Outcomes”、“Volunteer Outcomes”、 “Sending Community Outcomes”という3つ の視点における成果から捉えるべきであるという 概念モデルを提唱している。この3つの視点の中 でも、本研究の目的と合致する“Sending Commu-nity Outcomes”に関する研究は、未だ少ないと いわれている(Sherraden et al. 2008)。一方、こ の“Sending Community Outcomes”の テ ー マ に即した研究を行った Machin(2008)は、国際 ボランティアに関する文献のレビューを実施し、 イギリスの VSO(Voluntary Service Overseas) を通じて海外でボランティアを行った若者の変容 について検討していることに加え、イギリスに帰 国後、彼らのコミュニティに対して与えたインパ クトについてまとめてい る。こ の 中 で Machin (2008)は、以下の4点を軸として文献を整理し、 論を展開している。

1)Developing professional and personal skills and knowledge(個人が有する専門的技能や 知識の習得)

2)Influencing employment, career progression and workplace practice(自身の職業やキャ リア、また、職場における実践に対する影響) 3)Raising development awareness and

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意識の向上と社会的な団結の促進)

4)Increasing civic participation(市民・国民と しての行動の変化) 本研究のテーマである、体育隊員経験者の社会 還元についても、社会に対するインパクトと同義 なものとして捉えられると考えた。したがって、 Machin(2008)が示すこれら4点を、本研究の 「分析的枠組み」(大谷 2019、pp. 166―168)とし て調査及び分析に用いることとした。

3.方法

⑴ 調査対象 調査対象者(以下、対象者とする)は、過去に 体育隊員として途上国におけるボランティアを経 験したことがある20代∼50代の男女12名であ り、各対象者の概要は、表1に示した通りであ る。なお、個人が特定されないように、派遣国に ついては明記せず、派遣地域のみ記している。ま た、使用言語で国が特定できると判断した場合に 関しては、「現地語」と記載している。 表1 調査対象者(3) 対象者 年齢 (出生年) 性別 派遣地域 派遣国での 使用言語 派遣時期 派遣前の 教員経験 現在の職業 OV1 26歳 (1993年) 女性 アフリカ 英語 2015年6月∼ 2017年6月 × 民間企業 (旅行会社) OV2 51歳 (1968年) 男性 アフリカ 英語 1992年7月∼ 1995年9月(5) × 大学教員 (体育教員養成) OV3 33歳 (1986年) 女性 中 南 米 西語 2009年6月∼ 2011年6月 × 民間企業 (事務) OV4 27歳 (1992年) 女性 ア ジ ア 主に現地語 (英語も使用) 2015年6月∼ 2017年6月 × 民間企業 (児童療育) OV5 33歳 (1986年) 男性 大 洋 州 主に現地語 (英語も使用) 2011年1月∼ 2013年1月 × 高等学校教員 (保健体育科) OV6 40歳 (1979年) 女性 中 南 米 英語 2008年6月∼ 2010年3月(5) ○ 自営業 (国際協力関係) OV7 32歳 (1989年) 男性 アフリカ 英語 2015年1月∼ 2017年4月(4) × 研究員 (スポーツ・国際協力関係) OV8 27歳 (1992年) 男性 ア ジ ア 主に現地語 (英語も使用) 2015年6月∼ 2017年6月 × 地方公務員 (警察) OV9 46歳 (1974年) 男性 大 洋 州 主に現地語 (英語も使用) 2007年1月∼ 2009年1月 × 独立行政法人 (スポーツ・国際協力関係) OV10 27歳 (1992年) 男性 ア ジ ア 現地語 2016年1月∼ 2018年1月 × 地方公務員 (市役所) OV11 36歳 (1983年) 女性 アフリカ 英語 2016年6月∼ 2018年3月(5) ○ 中学校教員 (保健体育科) OV12 49歳 (1970年) 女性 大 洋 州 主に英語 (仏語も使用) 2006年6月∼ 2008年3月(5) ○ 中学校教員 (保健体育科) (出所)筆者作成。

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対象者については、まず、「目的的サンプリン グ」(メリアム2004、p. 89)によって10名を選 定した(表1中、OV1∼OV10)。目的的サンプリ ングでは、「研究の目的を直接反映し、情報量豊 かなケースの確認」(メリアム2004、p. 91)を行 うことが必要であるとされているため、年齢や男 女比、派遣地域や現在の職業について偏りが出な いよう配慮した。そして、OV10まで10名の分析 を終えた後、「理論的サンプリング」(木下2007、 p. 51)によって、OV11と OV12の計2名を追加 で選定した。この理論的サンプリングについて は、分析方法の一部でもあるため、詳細は「⑶ 分析方法」に示すこととする。 ⑵ 調査方法及び調査内容 調査では、各対象者に対して半構造化インタ ビュー(メリアム2004)が行われた。調査方法 としてインタビューを採用した理由は、インタ ビューが、「語りを通して、その人が自分の経験 をどう捉え、 どう行動しているのか」(戈木2008、 p. 120)を調査するのに適しているとされており、 本研究の目的と合致すると考えたからである。 調査時 期 は、2019年12月 か ら2020年2月 ま でであった。インタビューの前に、研究目的や研 究内容、成果公表時の留意事項などについて詳細 に説明した。また、インタビュー内容を録音する ことに関しても説明し、これら全ての事項に対し て同意を得た。 インタビューは、質問項目が記されたインタ ビュー・ガイドを参照しながら進行した。インタ ビュー・ガイドは、分析的枠組みとして採用した Machin(2008)を参考にして、著者の3名で協議を 重ね作成した。この3名は、全員 JOCV 経験者で あり、国際教育協力及び体育科教育に関する研究 に従事している大学教員である。なお、表2は、 本研究で用いたインタビュー・ガイドである。 インタビューを実施する際には、会話の内容に よって、質問の順序や内容を変更した。また、対 象者の回答に対して、評価や批判をしないよう心 がけた。さらに、各項目で体育隊員としての経験 と結び付けながらインタビューを展開できるよう に努めた。インタビューの時間は計7時間35分 (1人平均約38分)であり、インタビュー内容は SONY の IC レコーダーに録音した。 ⑶ 分析方法 本 研 究 で は、修 正 版 グ ラ ウ ン デ ッ ド・セ オ リー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach:以下、M-GTA とする)(木下2007) を用いて分析を行った。この方法は、教育や看 表2 インタビュー・ガイド 1.個人が有する専門的技能や知識の習得について ・体育隊員経験を通して、どのような技能や知識が向上した、もしくは身に付きましたか。 ・それらの技能や知識は、現在の生活や仕事とどのような関わりがあり、現在はどのように変化していますか。 ・それらの技能や知識は、周囲の人に対して、どの程度波及されるものですか。 2.自身の職業やキャリア、また、職場における実践に対する影響について ・体育隊員経験が、現在の職業やキャリア、職場における実践にどのように影響を及ぼしましたか。 ・その影響は、周囲の人、もしくは現在の職場に対して、どの程度波及されるものですか。 3.開発に対する意識の向上と社会的な団結の促進について ・体育隊員経験を通して、開発や国際協力に対する意識はどのように変化しましたか。 ・体育隊員経験を通して、社会との繋がりに対する意識はどのように変化しましたか。 ・それらの意識の変化は、周囲の人に対して、どの程度波及されるものですか。 4.市民・国民としての行動の変化について ・体育隊員経験を通して、市民、もしくは国民として、どのようなことに参加するようになりましたか。 ・体育隊員経験を通して、市民、もしくは国民として、どのようなことが気になるようになりましたか。 ・それらの行動や気付きの変化は、周囲の人に対して、どの程度波及されるものですか。 (出所)筆者作成。

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護、福祉や臨床心理などの諸分野で広く用いられ ており、木下(2007)は、「データの解釈から説 明力のある概念の生成を行い、そうした概念の関 連性を高め、まとまりのある理論を創る方法」(p. 35)であると述べている。多くの質的研究法の中 における M-GTA の特徴としては、独自の分析 ワークシートを用いながら、文脈の「意味の深い 解釈」(木下2007、p. 31)のために、得られたデー タを切片化することなくコーディングしていくこ とであろう。また、「M-GTA は研究対象がプロ セス的特性をもっている場合」(木下2007、p. 67) に適しているとされており、体育隊員経験者が、 その経験を通じた変化を、どのように社会に還元 したと捉えているか、または、還元しようとして いるかについて、限定的な範囲での応用性の高い 理論が生成されると考えた。さらに、「M-GTA はインタビュー調査に合致しやすい特徴」(木下 2007、p. 64)を備えているとされていることか ら、この M-GTA を分析方法として採用した。そ の中 で、本 研 究 に お け る「分 析 焦 点 者」(木 下 2007、p. 155)は「体育隊員経験者」であり、「分 析テーマ」(木下2007、p. 143)を「体育隊員経 験を通じた変化」と「体育隊員経験の帰国後にお ける社会還元」と設定した。本研究の目的に即し た「体育隊員経験の帰国後における社会還元」の 他に、「体育隊員経験を通じた変化」についても 設定した理由は、本研究の分析的枠組みの1)に このテーマが含まれていることに加え、このよう な変化について検討されなければ、体育隊員とし ての経験が反映しているか判断し得ないと考えた からである。詳細な手順は以下の通りである。 まず、 OV1のインタビューデータを逐語化し、 テクスト・データとした。そして、そのテクス ト・データを深く読み込み、分析テーマと関連が ある箇所を具体例として抽出した。その後、それ らの具体例を短い言葉で表す概念名と、それらの 具体例を簡潔な文章で表す定義を設定し、これら を分析ワークシートにまとめた。また、分析途中 で気付きや疑問が生じた場合は、理論的メモとし て記入した。表3は、分析ワークシートの一例で ある。 以上の分析を、OV10まで実施した。その後、 著者の3名の解釈を照らし合わせながら、「『デー タに向かって』確認作業」(木下2007、p. 51)を 行った結果、体育隊員としての経験が帰国後の進 路選択に大きく影響していると考えられた。した 表3 分析ワークシートの一例 ワークシート1 概念1:教材・教具を工夫する能力の向上または獲得 定義:体育隊員経験を通して、体育授業における教材や教具を工夫する能力が向上した、もしくは習得したこと。 具体例: ・「最初の方はめっちゃあたふたしてましたね。言ってることもわからないし、指示しても全然動いてくれな いし、何をしてほしいのか私も伝えられないし。だから…なんだろう…こう…相手の能力を見て、『これな らできるだろうな』っていうレベルの授業を考える」(OV1) ・「知識としては、なんだろう、体育教材に関して、何か工夫をすること、ぐらいかな。」(OV2) ・「もちろん途上国というところで、道具や施設が不足しているっていう授業を展開していくっていうところ とか、配属された小学校での授業で、生徒が60人以上いるっていうところの部分において、まぁ体育の授 業っていう部分に関しては、人の動かし方、と、道具や施設などを工夫するっていう部分の創造性っていう ところに関しては向上したかなっていう風には思っています。」(OV5) (他4事例省略) 理論的メモ: ・言語能力が向上したことで余裕が出てきたことが考えられる。(OV1) ・体育教材に関して工夫すること以外の知識は習得できなかったことが窺える。(OV2) ・教材と教具を区別して考えていく必要があるかもしれない。 (以下省略) (出所)筆者作成。

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がって、自由に進路選択ができない立場にある場 合の社会還元に関する要素を補完するために、現 職教員特別参加制度(5) によって派遣された体育隊 員(以下、現職体育隊員とする)経験者である OV11と OV12を、「理論的サンプリング」(木下 2007、p. 51)によって選定した。そして、OV10 までの対象者と同じ手順で分析を実施した。 分析ワークシートは概念ごとで作成し、継続的 に使用した。そのため、異なる対象者から抽出さ れた新たな具体例が既存の概念に加わる際には、 概念名と定義の再確認を行い、適宜修正を加え た。また、各対象者の分析が終了する度に、分析 ワークシートを見直し、概念の重複や統合可能な 部分について検討した。各概念は、概念同士の関 係性を協議した後、上位のサブカテゴリー、さら に上位のカテゴリーに整理した。その後、各カテ ゴリー、サブカテゴリー及び概念の関係について 図にまとめた。 なお、分析の内的妥当性を高めるために、著者 の3名で、分析結果が創出される度に意見を出し 合う「仲間同士での検証」(メリアム2004、p. 298) を実施した。また、それぞれのデータの分析終了 後、対象者に対して暫定的な解釈を明示し、妥当 なものかどうか訊ねる「メンバー・チェック」(メ リアム2004、p. 298)も行った。

4.結果

結果に関しては、分析テーマである「体育隊員 経験を通じた変化」と「体育隊員経験の帰国後の 社会還元」に分けて論述していく。以下の文中の 〈 〉は概念名を、[ ]はサブカテゴリー名を、 そして、【 】はカテゴリー名を示している。な お、紙幅の都合上、具体的な発言例に関する表や 記述は省略している。 ⑴ 体育隊員経験を通じた変化について 分析の結果、「体育隊員経験を通じた変化」に ついては、18個の概念と7個のサブカテゴリー、 また、3個のカテゴリーが生成された。概念とサ ブカテゴリー及びカテゴリーの関係は以下の通り である。 体育隊員の経験を通して習得した技能や知識が 含まれるカテゴリーを【技能・知識の習得】とし た。サブカテゴリーは、[体育教員として の 技 能・知識]と[体育に限定されない技能・知識] の2つであった。[体育教員としての技能・知識] は、体育教員として活動する中で身に付けたと考 えられる技能や知識を指し、〈教材・教具を工夫 する能力の習得〉、〈工夫して説明する能力の習 得〉、〈派遣国に適した体育授業の構成・運営方法 の習得〉という3つの概念が含まれる。また、[体 育に限定されない技能・知識]は、体育隊員とし ての活動の中だけでなく、途上国における生活全 般で身に付けたと考えられる技能や知識を指し、 〈言語能力の向上〉と〈コミュニケーション能力 の向上〉の2つの概念が含まれる。 体育隊員の経験を通して、変化した考え方や性 格、また、価値観が含まれるカテゴリーを【考え 方・性格・価値観の変化】とした。サブカテゴ リーは、[帰国後の進路の変化]、[性格の変化]、 [価値観の変化]の3つであった。[帰国後の進 路の変化]は、派遣前に考えていた進路が派遣中 に変わったことを指し、〈国際協力に携わった経 験または海外に住んだ経験による進路への影響〉、 〈体育・教育に携わった経験による進路への影 響〉、〈現職参加後に感じた 藤〉という3つの概 念が含まれる。また、[性格の変化]は、自身が 派遣前と帰国後で性格が変化したと感じたり、他 者から言われたりしたことを指し、〈行動力・積 極性の向上〉と〈社会や他者に対する寛容さの向 上〉の2つの概念が含まれる。さらに、[価値観 の変化]は、内在する価値観の変化やそれに伴う 言動の変化に関することを指し、〈開発や国際協 力に対する意識の変化〉、〈ボランティア活動に対 する意識及び行動の変化〉、〈社会の一員または国 民としての意識の芽生え〉という3つの概念が含 まれる。 体育隊員の経験を通して高まった関心が含まれ るカテゴリーを【関心の高まり】とした。サブカ テゴリーは、[日本に関する関心]と[世界に関 する関心]の2つであった。[日本に関する関心] は、日本の社会全般に対して関心が高まったこと を指し、〈日本の宗教や文化に対する関心の高ま り〉、〈日本の政治や情勢に対する関心の高まり〉、 〈日本や日本人の課題に対する関心の高まり〉と いう3つの概念が含まれる。また、[世界に関す る関心]は、日本以外の社会全般に対して関心が 高まったことを指し、〈派遣国やその他の国々の 宗教や文化に対する関心の高まり〉と〈派遣国や その他の国々の政治や情勢に対する関心の高ま

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り〉の2つの概念が含まれる。なお、表4は、「体 育隊員経験を通じた変化」に関する概念及びカテ ゴリーの一覧である。 ⑵ 体育隊員経験の帰国後における社会還元につ いて 分析の結果、「体育隊員経験の帰国後における 社会還元」については、22個の概念と8個のサ ブカテゴリー、また、3個のカテゴリーが生成さ れた。概念とサブカテゴリー及びカテゴリーの関 係は以下の通りである。 現在の仕事や職場に直接及んでいる影響が含ま れるカテゴリーを【現在の仕事に及ぼしている影 響】とした。サブカテゴリーは、[習得した技能・ 知識の活用]、[話の幅の広がり]、[職場でみられ 表4 「体育隊員経験を通じた変化」に関する概念及びカテゴリーの一覧 カテゴリー サブカテ ゴリー 概 念 対 象 者 該当対 象者数 OV1 OV2 OV3 OV4 OV5 OV6 OV7 OV8 OV9 OV10 OV11 OV12

技能・知 識の習得 体育教員 としての 技能・知 識 教材・教具を工夫する能力の 習得 ■ ■ ■ ■ ■ ■ 6 工夫して説明する能力の習得 ■ ■ ■ 3 派遣国に適した体育授業の構 成・運営方法の習得 ■ ■ ■ ■ 4 体育に限 定されな い技能・ 知識 言語能力の向上 ■ ■ ■ ■ ■ 5 コミュニケーション能力の向 上 ■ ■ ■ ■ 4 考え方・ 性格・価 値観の変 化 帰国後の 進路の変 化 国際協力に携わった経験また は海外に住んだ経験による進 路への影響 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 8 体育・教育に携わった経験に よる進路への影響 ■ ■ ■ ■ 4 現職参加後に感じた 藤 ■ ■ 2 性格の変 化 行動力・積極性の向上 ■ ■ ■ ■ ■ 5 社会や他者に対する寛容さの 向上 ■ ■ ■ ■ ■ 5 価値観の 変化 開発や国際協力に対する意識 の変化 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 8 ボランティア活動に対する意 識及び行動の変化 ■ ■ 2 社会の一員または一国民とし ての意識の芽生え ■ ■ ■ 3 関心の高 まり 日本に関 する関心 日本の宗教や文化に対する関 心の高まり ■ ■ ■ 3 日本の政治や情勢に対する関 心の高まり ■ ■ ■ ■ ■ 5 日本や日本人の課題に対する 関心の高まり ■ ■ ■ ■ 4 世界に関 する関心 派遣国やその他の国々の宗教 や文化に対する関心の高まり ■ ■ 2 派遣国やその他の国々の政治 や情勢に対する関心の高まり ■ ■ ■ ■ ■ ■ 6 概 念 数 8 9 8 6 9 4 6 7 7 7 6 3 (出所)筆者作成。

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る変化]の3つであった。[習得した技能・知識 の活用]は、現在の仕事において活用されている、 上述したような体育隊員の経験を通して習得した 技能や知識を指し、〈集団や自分自身に対するマ ネジメント能力の活用〉、〈体育・スポーツに関す る知識の活用〉、〈教材・教具を工夫する能力の活 用〉、〈工夫して説明する能力の活用〉、〈相手が求 めることを理解し応える能力の活用〉、〈言語能力 の活用〉、〈コミュニケーション能力の活用〉とい う7つの概念が含まれる。また、[話の幅の広が り]は、現在の仕事において、他者に対して話を する場面で、その話の幅が広がったことを指し、 〈教育活動における話の幅の広がり〉と〈保護者 や同僚との話の幅の広がり〉の2つの概念が含ま れる。さらに、[職場でみられる変化]は、対象 者の影響で、自然発生的に職場でみられた変化を 指し、〈明るくなった職場の雰囲気〉と〈職場が 実践する活動の変化〉の2つの概念が含まれる。 帰国後における周囲の人々との関わり方の変化 が含まれるカテゴリーを【周囲の人との関わり方 の変化】とした。サブカテゴリーは、[家族との 関わり方や家族自身の変化]、[家族以外の人との 関わり方の変化]、[人との繋がりに対する意識の 向上]の3つであった。[家族との関わり方や家 族自身の変化]は、家族との関わり合いや家族そ のものの変化を指し、〈家族との関わり方の変化〉 と〈家族にみられる変化〉の2つの概念が含まれ る。また、[家族以外の人との関わり方の変化] は、家族以外の周囲の人々との関わり方の変化を 指し、〈友人や仕事で関わる人との関わり方の変 化〉、〈外国人との関わり方の変化〉、〈社会との関 わり方の変化〉という3つの概念が含まれる。さ らに、[人との繋がりに対する意識の向上]は、 周囲の人々との繋がりを大切にしようとする意識 が向上したことを指し、〈人に情報を提供するこ とに感じる喜び〉と〈周囲の人が有する国際協力 や開発に対する意識の高まり〉の2つの概念が含 まれる。 何らかの行事に参加するようになったことが含 まれるカテゴリーを【多様な行事への参加】とし た。サブカテゴリーは、[国際協力に関する行事 への参加]と[社会の一員としての行事への参加] の2つであった。[国際協力に関する行事への参 加]は、学校や地方自治体、また、国際協力機関 などが開催する国際協力関係の行事に参加するこ とを指し、[出前講座への参加]と[シンポジウ ムやフェスティバルへの参加]の2つの概念が含 まれる。また、[社会の一員としての行事への参 加]は、社会を構成する一員として行事に参加し ていることを指し、〈募金への積極的な参加〉と 〈選挙への積極的な参加〉の2つの概念が含まれ る。なお、表5は、「体育隊員経験の帰国後にお ける社会還元」に関する概念及びカテゴリーの一 覧である。また、図1は、分析の結果から考えら れるそれぞれのカテゴリー、サブカテゴリー及び 概念の関連を描いた関係図である。図中にも記し ている通り、それぞれの矢印は、本研究における 分析的枠組みに対応している。

5.考察

本研究の分析的枠組みとして設定した4つの観 点から論述していく。 ⑴ 個人が有する専門的技能や知識の習得 この項目に関しては、2つの「分析テーマ」(木 下2007、p. 143)の中でも、「体育隊員経験を通 じた変化」に着目する。JOCV のみに留まらず、 国際ボランティア経験を通じた個人の成長や変化 に関しては、多くの先行研究でも議論がされてい る。本研究でも、図1において、この観点に関す る矢印は多く示されており、経験の社会還元とい う視座からも検討されるべきテーマであるといえ よう。本研究の対象者は、【技能・知識の習得】 内のサブカテゴリーにもある通り、[体育教員と しての技能・知識]と[体育に限定されない技能・ 知識]という大きく2つの視点から、この項目に ついて言及している。 まず、体育教員としての技能や知識について、 12名中8名の対象者が、何らかの技能・知識を 習得することができたと述べている。一方で、現 職体育隊員の中で、3名中2名(OV6及び OV11) からは、このテーマに関する概念が生成されてお らず、また、残りの1名(OV12)からも1つの 概念しか生成されていない。このことを踏まえる と、派遣前に教員経験を有している体育隊員は、 体育の教員としての技能や知識について、派遣中 に学んでいることは少ないのかもしれない。その 理由に関することとして、OV6はインタビュー の中で以下のように述べている。

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「私現職派遣だったんですけど、その後戻って 2年続けて辞めたんですよ。なので、どっち かっていうと、体育隊員っていうことでいう と、私はある程度完成された状態で派遣されて いるんですよね。もう現場経験6年あったの で。」(OV6) さらに、OV10は新卒での派遣であったが、イ ンタビューの中で以下のように言及している。 表5 体育隊員経験の帰国後における社会還元」に関する概念及びカテゴリーの一覧 カテゴリー サブカテゴリー 概 念 対 象 者 該当対 象者数 OV1 OV2 OV3 OV4 OV5 OV6 OV7 OV8 OV9 OV10 OV11 OV12

現在の 仕事に 及ぼし ている 影響 習 得 し た 技 能・知識の活 用 集団や自分自身に対するマ ネジメント能力の活用 ■ ■ ■ 3 体育・スポーツに関する知 識の活用 ■ ■ ■ ■ ■ 5 教材・教具を工夫する能力 の活用 ■ ■ ■ 3 工夫して説明する能力の活 用 ■ ■ 2 相手が求めることを理解し 応える能力の活用 ■ ■ 2 言語能力の活用 ■ ■ ■ ■ ■ 5 コミュニケーション能力の 活用 ■ ■ 2 話の幅の広がり 教育活動における話の幅の 広がり ■ ■ ■ 3 保護者や同僚との話の幅の 広がり ■ ■ 2 職場でみられ る変化 明るくなった職場の雰囲気 ■ ■ ■ 3 職場が実践する活動の変化 ■ ■ ■ 3 周囲の 人との 関わり 方の変 化 家族との関わ り方や家族自 身の変化 家族との関わり方の変化 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 8 家族にみられる変化 ■ ■ ■ 3 家族以外の人 との関わり方 の変化 友人や仕事で関わる人との 関わり方の変化 ■ ■ ■ ■ ■ 5 外国人との関わり方の変化 ■ ■ ■ 3 社会との関わり方の変化 ■ ■ 2 人との繋がり に対する意識 の向上 人に情報を提供することに 感じる喜び ■ ■ ■ 3 周囲の人が有する開発や国 際協力に対する意識の高ま り ■ ■ ■ ■ 4 多様な 行事へ の参加 国際協力に関 する行事への 参加 出前講座への参加 ■ ■ ■ ■ ■ ■ 6 シンポジウムやフェスティ バルへの参加 ■ ■ ■ ■ ■ 5 社会の一員と しての行事へ の参加 募金への積極的な参加 ■ ■ 2 選挙への積極的な参加 ■ ■ ■ 3 概 念 数 6 8 2 9 7 5 8 9 5 8 4 6 (出所)筆者作成。

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分析から考察されるカテゴリー・サブカテゴリー・概念の関係

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「派遣国の体育のレベルは、正直なところ日本 の体育のレベルと比べると数ステップ下のとこ ろからっていうところだったので、日本にいる ときに体育の免許を取るにあたって得た知識と かがさらに深まったりとか、さらに向上した技 術を手に入れたとかっていうことは、正直無 い。どちらかというと、現地の人にわかりやす いように、現地の人に噛み砕いて、簡単なメ ニューで体育の授業のプランの提案っていうの はありましたけど。なので、技術力が日本で働 いている体育の先生と比べて上がったかという と、残念ながらそれは無いかなと思います。」 (OV10) 小 栗(2001)は、他 の 職 種 の JOCV と 比 べ、 体育隊員は「特に、指導実績と指導力が問われる」 (p. 65)と述べている。その理由として、体育隊 員は、派遣国の省庁や派遣地域の地方自治体にお ける教育機関と連携したり、教員の養成・研修に 携わったりすることを挙げている。そのため、現 職体育隊員は、日本で得た教育経験を十分に発揮 しながら派遣国での活動に従事できると考えられ る。一方で、現職教員特別参加制度で派遣された JOCV(以下、現職隊員とする)に対してアンケー ト調査を行っている先行研究の結果として、派遣 された教員が JOCV 経験を通して得られたと感 じていることは、教科に関する技能や知識より も、コミュニケーション能力や課題解決能力、概 念化能力や異文化理解などであるという(佐藤 2010)。以上のことから、先行研究の結果と同様 に、現職体育隊員に関しても、体育教員としての 技能・知識について学ぶことは少ない可能性が高 いといえよう。 他方、[体育教員としての技能・知識]に含ま れる概念が、12名中8名生成されたことについ ても言及されなければならない。上述した現職体 育隊員を除くと、9名中7名と、この割合はさら に高まる。木原(2004)によると、日本において、 教員としての1年目は、授業づくりに悩む時期で あるという。日本での教育経験が乏しい体育隊員 にとっては、途上国における生活や活動の中で も、授業づくり、つまり、体育科教育に関する技 能や知識に思い悩むことが考えられ、それに対す る成長を感じるのではなかろうか。また、これは 同時に、派遣前における研修等にも還元できる概 念であると考えられる。体育隊員に関しては、教 育経験が乏しい候補生を対象として技術補完研修 が実施されているが、その量的及び質的な改善に ついても、今後議論されなければならないといえ よう。 次に、体育だけに限らない技能や知識について である。これに関しては、〈言語能力の向上〉と 〈コミュニケーション能力の向上〉という2つの 概念が生成された。前者に関して、後述する職業 やキャリアとも関連があるが、帰国後の進路とし て海外と関わる仕事を選択した対象者の多くは、 現在の職において、体育隊員経験を通して向上さ せた言語能力を活用しているという。また、使用 言語が異なる中でも相手の求めることを理解する という経験から、相手が伝えたいことを察する能 力が、現在でも活きていると述べる対象者もいた。 佐藤(2012)は、JOCV 経験者に対して実施し た調査の結果において、JOCV 参加により成長し た能力として、「柔軟性」、「異文化理解」、「語学 力」、「コミュニケーション能力」を、上位4つに 挙げている(p. 8)。本研究においても同様のこ とがいえ、これに関しては、JOCV を通した成長や 変化に関する先行研究を補完する結果となった。 ⑵ 自身の職業やキャリア、また、職場における 実践に対する影響 まず、職業やキャリア選択について論述する。 本研究の結果として、体育隊員としての経験は、 帰国後の職業選択に、大きく影響を与えているこ とが明らかになった。その中でも、〈体育・教育 に携わった経験による進路への影響〉が強い対象 者は、保健体育科教員やスポーツに関する国際協 力の仕事など、体育・スポーツに携わる仕事を選 択する傾向がみられた。また、〈国際協力 に 携 わった経験または海外に住んだ経験による進路へ の影響〉が強い対象者は、海外と関わる仕事を選 択している傾向がみられた。 一方で、具体的にどのような経験がその選択を 促したのか、概念として生成されることはなかっ た。Hutchings and Smart(2007)は、国際ボラ ンティア経験そのものは、進路選択に対して大き な影響を及ぼしておらず、むしろ、国際ボラン ティアに従事するために約2年間という期間が提 供されていることのほうが、キャリアプランの決 定に強い影響を及ぼすと述べている。要するに、 国際ボランティアとして活動に従事する中で、自

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身の関心や適正を見いだす時間があることによ り、進路選択に影響が出ているということであろ う。結果だけをみると、本研究の対象者もその可 能性は否めず、また、他の職種の JOCV 経験者 に関しても同様のことがいえると考えられる。 他方、現職体育隊員の中には、体育隊員経験を 通して、教育の在り方を考え直し、校種を変える という選択をしたり、さらには、自己のキャリア を見つめ直し、退職して国際協力に携わる職に転 職するという選択をしたりした対象者もいた。元 来は、途上国からの要請に応えるべく、教育経験 豊かな教員を派遣するために始まった現職教員特 別参加制度であるが、帰国後も教員として復帰 し、その経験を日本の教育現場で活かすことも期 待されている(斉藤2010)。しかしながら、現状 では、教育現場への還元というよりも、現職隊員 の多様なキャリア形成の場になっている可能性が 高い。したがって、JICA、もしくは地方自治体の 教育委員会の中で、現職隊員の復帰時における何 らかの取り決めがあっても良いのかもしれない。 続いて、職場における実践に対する影響につい て論考する。実践とは少し意味合いが異なるが、 職場に関わる気付きとして、職場が明るくなった と同僚に言われた経験がある対象者が多くみられ た。Onuki and Xiao(2020)は、外向的な人、 また、協調性に優れている人がボランティアに参 加することが多いと述べている。さらに、古くか ら、運動経験が豊富な人や体育専攻の学生は外向 的であるといわれている(久米ほか2014;鈴木 1962)。以上のことから、体育隊員経験を得ずと も、対象者は職場を明るくする存在であった可能 性は高いものの、図1からもわかる通り、〈行動 力・積極性の向上〉や〈社会や他者に対する寛容 さの向上〉なども含めた[性格の変化]が、それ に寄与していると捉えることもできる。学校体育 が軽視されている途上国において、2年間、現地 の人々とともにその普及に携わった経験は、彼ら 自身の性格に大いに影響を与えていると考えら れ、それが職場の雰囲気に波及している可能性は 十分にあるといえよう。 また、斉藤(2010)によると、現職隊員の帰国 後の社会還元方法として、「『国際理解教育』の教 材作りに自己の経験を活かすといったことでの還 元」(p. 28)を挙げている。実際に、教員として 働いている本研究の対象者の中でも、体育に関し て還元しているというよりは、勤務先の教え子や 同僚、また、保護者に対して JOCV として体験 したことや感じたことを話し、その経験を還元し ていることが窺えた。⑴で述べた示唆と合わせて 考えると、教科教育に関する知見を還元している というよりは、このように、周囲への国際理解に 関する啓蒙を通して還元していると捉えるほうが 妥当であろう。 以上のことは、教育に関わる JOCV 全般で表 出されそうな理論であるが、体育隊員特有の事柄 でいうと、〈体育・スポーツに関する知識の活用〉 の概念が生成されており、該当対象者数は12名 中5名であった。これについては、帰国後、保健 体育科教員としてだけでなく、スポーツに携わる 職業で活かされていることを鑑みると、対象者が 派遣国において、学校体育だけでなく、スポーツ 全般に関わった結果であるといえる。OV7は、 このことに関して、インタビューの中で以下のよ うに述べている。 「まぁ向こうで体育をやっていたのと一緒に サッカーも、サッカーの指導も体育教員として できていたっていうのがあって。っていうので 体育よりもスポーツのほうが関わり方が広い、 多いのかなって。」(OV7) 以上のことから、体育隊員に必要な資質能力と して、体育科教育に関する技能や知識だけでな く、スポーツに関する技能や知識も挙げることが できる。木村(2015)によると、途上国では、娯 楽が限られているが故に、スポーツを楽しみにし ている人が多く、それに伴い、部活動が盛んに行 われている国が多くあるという。そのため、体育 隊員の選考の際には、部活動の指導も見据え、専 門とする種目の指導経験や指導技術なども考慮さ れるべき事項であるといえよう。 ⑶ 開発や国際協力に対する意識の向上と社会的 な団結の促進 「体育隊員経験を通じた変化」の中で生成され たカテゴリー【関心の高まり】に着目すると、日 本のことに関して関心が高まったということと、 日本以外の国に関して関心が高まったということ に二分された。アメリカやイギリスの先行研究で も、国際ボランティアを経験すると、異文化理解 も含めた海外に対する関心は高まるとされている

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(Bentall et al. 2010;Rieffel and Zalud 2006)。ま た、Schulz and Kelly(2007)は、国際ボランティ アを通して得られる最も重要な変化は、国際的視 点の広がりであると述べている。 この関心の高まりは、日本社会にどのような影 響をもたらしているのか。それに関係することと して、ほとんどの対象者が〈開発や国際協力に対 する意識の変化〉を感じており、それに言及して いる。また、その中で特筆すべき点として、帰国 後に教員として勤務している、もしくは勤務して いた対象者は、教え子や同僚が国際協力に興味を 持ったことを実感していることが挙げられる。こ れは、社会還元の結果の1つであるといえよう。 一方で、数人の対象者、とりわけ帰国後の進路 として警察官や市役所勤務などの公務員を選択し た対象者は、インタビューの中で、[日本に関す る関心]が高まったと述べていた。海外の先行研 究において、国内のことに対する関心が高まった という結果が出ているものは管見の限りみられな い。これは体育隊員というよりも、JOCV 全般に いえることだと考えられるが、この海外との差異 の原因は何であろうか。 これに関して、日本人の自国に対する関心の低 さに着目したい。OV3は、インタビューの中で 以下のような発言をしている。 「外にでると、自分が日本のことを知らなすぎ て、現地の人に聞かれる質問に答えられないこ とが多かったんですね。政治のこととか、宗教 のこととか。(中略)文化とかも、逆に向こう の人の方が知ってるっていうケースもあって。 その人たちって、私が行ってた国なのか、まあ 全体的なんかはわからないですけど、やっぱり そういうの大切にしてる人たちで、なんか自分 の国のことをもうすごく熱く語ってくるんです よね。」(OV3) この発言は、自国に対する関心の低さを顕著に 表しているといえる。日本人の愛国心は、他国と 比べても決して低いわけではなく(村田2014)、 自国の政治や宗教に関する教育の乏しさや、英語 教育の質の低さなどが原因であると考えられる。 インターネットの普及や、在留外国人の増加な ど、時代の変化に伴いこの課題も改善されている と推察されるものの、派遣中、体育隊員がこのよ うな悩みを持っていたことは事実であり、これは 訓練や研修等に還元されるべき結果であろう。 他 方、OV7や OV9は、帰 国 後 も 途 上 国 の 体 育・スポーツの推進に携わる仕事に就いているこ とから、体育隊員としての経験は、途上国の体 育・スポーツへの興味・関心に、少なからず影響 を及ぼしていると考えられる。しかしながら、対 象者へのインタビューの中で、【関心の高まり】 に含まれる発言が、体育隊員特有の事項にまで発 展することはなかった。したがって、【関心の高 まり】については、体育隊員として活動した経験 よりも、途上国で現地の人々とともに生活をした 経験のほうが、強く影響を及ぼしていると捉えら れる結果となった。 ⑷ 市民・国民としての行動の変化 [社会の一員としての行事への参加]に関して は、〈募金への積極的な参加〉や〈選挙への積極 的な参加〉が概念として生成された。これは、⑶ で述べた自国に対する関心の高まりが関わってい るといえよう。 また、各種の学校や JICA が主催する出前講座 に参加し、その経験を子どもたちに対して還元し ている対象者が多くみられた。出前講座に関して は、佐藤(2012)が帰国後の JOCV 経験者に対 して実施したアンケート調査の中でも、最も多く の対象者が実施している社会還元方法として挙げ ている。さらに、体育隊員は、派遣国の学校現場 で活動する隊員が多く、その学校事情を話すこと ができ、子どもを対象とした出前講座のような場 で経験を還元しやすいと考えられる。実際に、OV4 はインタビュー中で以下のように述べている。 「中学校に5回くらい行きましたけど、それに 行ったら自分も[派遣国]のこと忘れないでい られるし、特に体育って子どもたちにとって近 い、他の職種よりも。だからこっちの子どもた ちにもわかりやすいかなと思ってるし、あとは イスラム教について知らないから。やっぱり日 本人の人って身近じゃないから。」(OV4) このことに関しては、⑶で述べたこととも多少 重複するが、図1でも示されているように、〈周 囲の人が有する開発や国際協力に対する意識の高 まり〉にも貢献しているものと推察される。 一方で、これらのような社会還元はみられたも

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のの、体育隊員特有と考えられる概念は生成され なかったといえる。本節で設定されたテーマから、 体育隊員の活動というよりも、途上国で生活した 経験に焦点を当てた結果になったと考えられる。

6.おわりに

⑴ 本研究の成果 本研究は、体育隊員の経験者が、自らの体育隊 員経験をどのように捉え、それをどのように社会 に還元したと自覚しているか、または還元しよう としているかについて、質的研究法を用いて明ら かにすることを目的とした。本研究の成果とし て、大きく以下の3点にまとめる。 1)体育隊員経験者は、自らの経験を話すことを 通じて、周囲の人にその経験を還元している ことが窺えた。具体的な方法としては、出前 講座への参加や、教員として、教え子や同僚、 保護者などに対する話などが挙げられる。そ の結果として、周囲の人の開発や国際協力に 対する関心が引き出されている可能性が高い ことが明らかになった。 2)体育隊員経験者は、職場の雰囲気を明るくし ていることが窺えた。これに関しては、もと もと外向的であったり、協調性が高かったり する体育隊員は多いと考えられるものの、性 格の変化や、寛容さの向上なども相まった影 響である可能性が高いといえる。 3)体育隊員経験者は、体育隊員経験を通して得 た技能や知識を、現在の仕事において還元し ていることが明らかになった。具体的には、 「語学力」や「相手の伝えたいことを察する 能力」、また、「体育・スポーツに関する知識」 などである。一方で、体育隊員経験を通じて 得た体育科教育に関する技能や知識を活用し ている体育隊員経験者は少ないことが推察さ れた。 ⑵ 本研究の限界及び今後の課題 本研究の限界及び今後の課題として、大きく以 下の3点を挙げたい。 1)対象者数の限界である。本研究では、合計12 名という少人数の体育隊員経験者に対して調 査を実施したため、本研究の結果を一般化す るためには、より対象者数を増やした上での 検討が必要になると考えられる。 2)対象者の選定の限界である。本研究で得られ た結果は、あくまでも、対象者の主観的な考 えによるものである。体育隊員経験者の周囲 の人に対しても調査を行うことで、より精密 な理論を生み出すことが可能であろう。また、 任期短縮(6) をした人や、現在も海外で活動を している人など、一概に体育隊員経験者と いっても、様々なバックグラウンドを有する 人がいることが予想される。したがって、よ り幅を広げたサンプリングによる研究の蓄積 や、複数の観点から分析を行うために、デー タの「トライアンギュレーション」(メリアム 2004、pp. 297-298)も必要であるといえよう。 3)様々な観点からの比較が今後の課題といえる。 具体的には、本研究の中でも、保健体育科教 員になった人とそうでない人、派遣が終了し てから日が浅い人と日が経っている人など、 概念は生成されなかったものの、異なる傾向 がみられる観点があった。また、体育隊員特 有の概念の抽出が難しかったことも踏まえ、 他職種との比較も検討していく必要がある。 これらから得られた概念に関して、アンケー トでの調査・検討を行うことで、より客観性 の高い研究となり得るであろう。 異文化で得た技能や知識は、国を変えても社会 及び経済の発展に、広く貢献し得るといわれてい る(Bentall et al. 2010)。これは、グローバル化 が進む現代社会において、益々顕著になってくる であろう。また、かつては JOCV の社会還元に 関して、「帰国ボランティアによる国際理解教育 の促進を主に想定していた」ものの、現在ではよ り広義な意味を持つように、「日本社会を元気に するボランティア事業」と銘打って、JOCV 経験 者の社会還元を推進している(白井2010、 p. 16)。 今後も、このような JOCV 経験者の社会還元を 促進するべく、研究的なアプローチから支援して いきたい。 本研究では、体育隊員というよりも、教育に関 わる JOCV 全般にみられそうな理論も多かった。 JOCV の応募者数が減少している昨今、少しでも JOCV に関する議論が活性化されれば幸いである。

謝辞

本研究の調査に参加して頂いた対象者の皆様

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に、心より感謝致します。

注記

⑴ 2020東京オリ・パラに向けた気運を高めるため、 2014年から2020年までの7年間で、途上国を含 む世界100カ国・1000万人以上の人々に対し、 スポーツの価値や喜びを伝えるためのスポーツ 国際貢献事業のことである。 ⑵ 技術補完研修とは、JOCV 候補者が、専門分野 の技術・知識レベルは派遣されるレベルに達し ているものの、受け入れ国からの要請に的確に 応えるための実践的な技術や教授法等を事前に 学習する必要があると判断された場合に受講す る研修のことである。 ⑶ 表内における「年齢」及び「現在の職業」は、 インタビュー実施時のデータである。 ⑷ JOCV の一般的な派遣期間は2年間であるが、 当該 JOCV とその受け入れ先、また、JICA の現 地事務所が、その必要性を認めた場合に限り、1 年間まで任期を延長することができる。 ⑸ 現職教員特別参加制度とは、「各都道府県教育委 員会あるいは市町村教育委員会の協力と支援の 下に、 教員としての身分や給与を保障しながら、 2年間の期限で、現職教員を開発途上国に派遣 し、わが国での教職経験や専門的知識を活かし ながら、これらの国の教育発展を支援する活動 に従事できるようにする」(斉藤2010、p. 19)制 度のことである。一般的に、JOCV の派遣期間 は2年間であるが、教員の現職特別参加制度に おける派遣の場合は、派遣後の勤務に影響が少 ないように、4月から70日間の訓練を受けた後、 6月下旬もしくは7月上旬から2年後の3月まで の約1年9ヶ月間の派遣となっている。 ⑹ 任期短縮とは、任期終了を迎える前に、自己都 合、もしくは派遣先の都合により任期を終える ことである。

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参照

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