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シアノバクテリアにおけるDNA複製制御機構の解析

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東京農業大学

シアノバクテリアにおける

DNA 複製制御機構の解析

平成

25 年度 修了

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目次 序章 4 第一章 DNA 複製開始制御機構の解析 第一節 序 15 第二節 材料と方法 16 第三節 結果と考察 19 第四節 まとめ 26 第二章 DNA 複製進行制御機構の解析 第一節 序 27 第二節 材料と方法 29 第三節 結果と考察 32 第四節 まとめ 42 第三章 DNA 複製開始点の同定 第一節 序 44 第二節 材料と方法 46 第三節 結果と考察 55 第四節 まとめ 62 第四章 DnaA 非依存型 DNA 複製開始機構の解明 第一節 序 63 第二節 材料と方法 64 第三節 結果と考察 67 第四節 まとめ 81 第五章 総合討論 83

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巻末 95

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序章 細胞増殖は真核、原核細胞問わず、それら個体を維持するために必須のプロ セスであり、生命維持の根幹である。細胞増殖(細胞周期)はゲノム複製、ゲ ノム分配、細胞分裂の 3 つの段階があり、各段階で厳密に制御されている。そ の中でもゲノム複製は増殖の第一段階であり、子孫へと遺伝情報を受け継ぐ上 で必須のプロセスである。 1. DNA 複製 染色体の複製は真核生物、原核生物問わず、細胞が増殖するうえで第一に必 須のプロセスである。このプロセスは、一回の細胞周期につき一度と厳密に制 御されている。DNA 複製制御機構は複数存在するが、大部分が複製開始段階で の制御である。原核生物、古細菌、真核生物において同様の制御機構がみられ、 より洗練された複製開始制御機構へと進化を遂げてきた12。 複製開始には、複製起点での DNA とタンパク質の複合体形成が必要である。 これらの複合体形成は原核生物ではDnaA、真核生物では ORC (origin recognition complex)などにより誘導される12,3。その後、これらの複合体が活性化すること により、コンフォメーションが変わりDNA の二重らせんが解離される。この解 離こそが複製開始の合図である。そのため、原核生物ではDnaA はイニシエータ ーと呼ばれており、複製開始に最も重要な因子の一つである。二重らせんの解 離に引き続き DNA ヘリカーゼ (DnaB)が DnaC (helicase-loader)により一本鎖 DNA 上にリクルートされる4,5。こうして複製開始複合体が形成され、複製が開 始する。伸長反応時にはDnaB が先頭にたち、二重鎖を解離し、それに続き DNA ポリメラーゼなどの働きでDNA 合成が進んでいく6。 伸長反応の主要な因子はプライマーゼ (DnaG) 6、DNA ポリメラーゼ Ⅲ ホロ酵 素である 7,8。この複合体は DnaB のリクルートに引き続き DNA 上に導かれる。 これらの複合体はレプリソーム (複製複合体)と呼ばれ、プライマーRNA と相補 鎖の合成を触媒する。

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こうして複製終結点 (Ter)まで複製が進行し、この地点で複製が完了し二つの ゲノムになるのである 9-12。この一連の流れを1ラウンドの複製といい、通常 DNA 複製は 1 ラウンド毎で制御されている。

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図I-1 原核生物の DNA 複製複合体 http://www.genome.jp/kegg/pathway/ko/ko03030.html

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Katayama T et al., 2010. Nat. Rev. Microbiol. 図I-2 大腸菌の複製開始様式

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Katayama T et al., 2010. Nat. Rev. Microbiol. 図I-3 原核生物の複製開始制御機構

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2. シアノバクテリア シアノバクテリアとは高等植物と同様な酸素発生型の光合成を行うグラム陰 性原核生物の一群である。過去には、菌体が藍色を呈するために、藻類の一分 類群として扱われており『ラン藻』と呼ばれていた。その後、1970 年代になり 『シアノバクテリア』という新しい分類概念が提唱された。シアノバクテリア は約28〜17 億年前に地球上で大繁栄し、光合成を行なう事で、それまで還元的 であった地球に酸素をもたらしたと考えられている。シアノバクテリアは光独 立栄養条件で生育する事ができるため、光と水があれば淡水、海水、温泉から 岩場、砂漠に至まで、地球上のあらゆる場所で見つけることができる。形態的 にも遺伝学的にも多様な生物であり、単細胞性、多細胞性、糸状性、好熱性の ものなどが存在する。またヘテロシスト (異質細胞)、アキネート (休眠胞子)、 ホルモゴニア (運動性の連鎖体)に細胞分化する種も存在する。チラコイド膜を 持たなく、細胞膜に光化学系が存在する種 (Gleobactor violaceus)、運動性や走光 性を持つ種も存在する。

本研究に用いたSynechococcus elongates PCC 7942 (以下 S. 7942)、Synechocystis

sp. PCC 6803(以下 S. 6803)、Anabaena sp. PCC 7120(A. 7120)は淡水性のシア ノバクテリアであり、代表的なモデル生物である。 S. 7942 のゲノムサイズは、約 2.7MB で、Synechococcus sp. PCC 6301 株とは非 常に近縁であり、200Kbp の逆位を持つ。6301 株では、2,525 個のタンパク質を コードする遺伝子があると推定されている。また自然形質転換能を持つため、 遺伝子破壊、外来遺伝子の発現が容易であり、分子遺伝学的研究に非常に適し た株である。そのため、光合成研究のモデル生物として電子伝達系や光化学系

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に研究が行われてきた。しかし、S. 6803 には走光性のある PCC-P と走光性が失 われたPCC-N 株21、またグルコース耐性株22など、標準株であっても固有の変 異を持つことが示されていた。近年、次世代シーケンサーの普及により、それ ぞれの固有変異が決められつつあり23-25、標準株の見直しが議論されている。 A. 7120 は糸状性のシアノバクテリアであり、ヘテロシスト細胞に分化し、そ の細胞でのみ窒素固定を行うという特徴がある。全塩基配列は解読済みであり 26、ゲノムサイズは約 6.4MB である。古くから、細胞分化、窒素固定の分子機 構について研究が行われてきた27-29。 2-1. シアノバクテリアにおける、細胞周期研究の歴史 先に述べたように、シアノバクテリアは光合成を行なう生物である。その為 光に依存した生育曲線を示す。明所では生育するものの暗所では全く生育しな いことは古くから知られている 30-32。1970 年代から、シアノバクテリア(現在の

Synechococcus PCC 6301)における cell cycle と光との関係について報告がある

30-32。このときすでに、光の遮断により同調培養できることが示されている。ま た 1980 年代には光によりタンパク質、RNA、DNA 合成というほとんどの細胞 活動が誘導されることも示されている 32。その後、海洋性シアノバクテリアで も細胞周期の研究が始められた33。1990 年代にはフローサイトメトリー (FACS) を用いて、シアノバクテリアは細胞内に複数コピーゲノムを保持することも示 され、このゲノムは暗所において同調することも S. 6301 において示された 34。 2000 年代に入ると、細胞周期もサーカディアンリズムの制御下にあるという説 が提唱されはじめ35 36、DNA 複製、細胞分裂までもがサーカディアンリズムと 同調していると示唆された。さらに近年マイクロアレイ解析などでシアノバク テリアの遺伝子発現においても、光は大きく影響していることが証明され 37、 大部分の遺伝子は暗所では発現しておらず、明所でのみ発現することが明らか となっている。このことからもシアノバクテリアは、細胞活動のほとんどを光 に依存していることが分かる。

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2-2. 細胞分裂 Ⅰ で述べたように、シアノバクテリアの生育には、光が必須である。暗所で生 育しないということは、暗所では細胞分裂が起こらないということである。そ の理由の一つとして概日リズムがあげられる。シアノバクテリアの概日リズム はKaiA、KaiB、KaiC というタンパク質により制御されている。さらには、KaiC のリン酸化リズムにより周期は刻まれ、KaiA、KaiB がこのリン酸化状態を正負 に制御していることも分かっている。KaiC のリン酸化レベルは light/dark サイク ルにより制御されており、つまりは光依存的なのである。このサーカディアン リズムがシアノバクテリアの細胞周期にも関与しているということは1990 年代 後半から森らにより提唱されている3536。さらにS. 7942 の分裂に関わる因子を 網羅的に同定した際、サーカディアン関連因子も含まれていたこと 38、KaiC の ATP 加水分解能の増減が FtsZ という分裂因子の局在に影響されているという報 告もあり3940、サーカディアンリズムと細胞分裂との密接な関係性が伺える。し かし他にも主要な制御機構が存在することも合わせて示唆されており、まだま だ謎は多い。 2-3. DNA 複製 シアノバクテリアのDNA 複製は過去にほとんど知見がない。他のバクテリア 同様、分裂とDNA 複製がカップルしているだろうという報告はあるが、詳しい 解析はされていない。またほとんどのシアノバクテリアにおいて、dnaN 遺伝子 上流には、DnaA box が保存されていることから、この領域が複製開始点である と示唆されているが 41、実験的に証明された例はない (図 I-5)。また DnaA box

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合成によるエネルギー供給とは別に、光に依存したDNA 複製機構が考えられる。

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Liu Y et al., 1996 図I-5 S. 7942 において予測された複製開始点

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第一章 DNA 複製開始制御機構の解析 第一節 序 原核生物の場合、栄養飢餓、DNA ダメージストレスなどの環境変化を感知す ると、増殖を停止し、アミノ酸生産、DNA 修復など生命維持活動を始める。も し仮にこの制御がない場合、外界に栄養がないにも関わらず、細胞内のエネル ギーを増殖に費やしてしまうため、結果として細胞は死ぬ。したがって、自身 が増殖できる環境でのみ増殖をするという、当たり前に見える細胞内制御がな くなることは、細胞にとって死活問題である。この制御の一端を担っているの が、DNA 複製の開始制御である 44。多くの原核生物の場合、栄養飢餓などのス トレスシグナルは複製開始因子DnaA に集約され、発現制御45、不活性化するこ とによりDNA 複製開始を停止させる46。 シアノバクテリアの場合、独立栄養性物であるため、外界の栄養とは、すな わち光合成に必須な光を示す 47。この光がどのような経路を経て、DNA 複製開 始を制御しているかは全く分かっておらず、したがって光合成生物の増殖機構 を解明するうえで重要な課題である。

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第二節 材料と方法

(1)使用菌株

Synechococcus elongatus PCC 7942 野生株

Synechococcus elongatus PCC 7942 TK 導入株(第一章参照) Synechococcus elongatus PCC 7942 dnaB-FLAG 株

タンパク質精製用 大腸菌 Escherichia coli

・DH5α (プラスミド構築)

・Rosetta2 (DE3) pLys (抗原タンパク質精製)

※Rosetta2(Novagen)は大腸菌での使用頻度の少ない AUA, AGG, AGA, CUA, CCC, GGA コドンに対応する tRNA を供給する Chloramphenicol 耐性プラスミド (pRARE) を保持する。さらに大腸菌での使用頻度の少ない CGG コドンに対応 するtRNA を追加したプラスミド (pRARE2) を含んでいるため、CGG コドン使 用頻度に制約を受けていた遺伝子に対しても”Universal”な翻訳が可能となって いる。 (2)使用培地 BG-11 (3)使用阻害剤と調製法 ・ 3-(3,4-dichlorophenyl)-1,1-dimethylurea (DCMU)(ナカライテスク) Dimethyl sulfoxide により 50 mM に調整 ・ 2,5-dibromo-3-methyl-6-isopropyl-1,4-benzoquinone (DBMIB)(ALDRICH) Methanol により 50 mM に調整 ・ Chloramphenicol (Cm)(ナカライテスク)

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Ethanol により 100 mg/ml に調整

・ Rifampicin (Rif)(SIGMA)

Methanol により 200 mg/ml に調整

・ Nalidixic acid (NDX)(SIGMA-ALDRICH)

Ethanol により 3 mg/ml になるように調整。EtOH だけでは解けないので、10N のNaOH を 20µl 添加する。

・ Cefalexin (CEX)

Ethanol により 2.5 mg/ml に調整。

(4)使用プライマー

Primer name Sequence (5’ to 3’) a

Cloning of TK gene

TK-Bam-f GCGAATTCGAGCTCCACCGCGGTG

TK-Bgl-r GCAGATCTTCAGTTAGCCTCCCCCATCTCC

dnaB-FLAG 株作製

dnaB-F GGGCGGATCC GTGCAGGAACTTCGCTTCGA

dnaB-FLAG-R TCACTTGTCATCGTCATCCTTGTAATCGATGTCATGAT

CTTTATAATCTCCGTCATGGTCTTTGTAGTCACCCGTA GGCGCATG

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2. 方法 (1) dnaB 遺伝子への FLAG タグ付加 上記で示したプライマーを用いてPCR により FLAG タグを付加した dnaB 遺 伝子を増幅した。薬剤遺伝子と下流領域をリコンビナントPCR によりカセット を作り、S. 7942 野生株へ TF し形質転換体を得た。以下この株を DB-F として表 記する。 (2) 同調培養系 プレートから細胞をかき取り、80ml BG-11(spec)に植菌し OD750 = 4〜6 になる

まで(4〜7 日間) 2% CO2条件で培養した(preculture)。この preculture を O.D750 = 0.2

となるように40ml BG-11 に植菌し、暗所で 18 時間培養後明所に移行した。

(3) チミジンキナーゼ導入株の作製

HA タグ融合させた Herpes simplex virus 2 由来のチミジンキナーゼ(TK)を染 色体上に導入する為S. 7942 染色体上のニュートラルサイトを含む pNSHA にク ローニングした。プライマーTK-Bam-f と TK-Bgl-r を用いて TK 遺伝子を PCR により増幅し、PCR 産物および pNSHA を BamHI、BglII で処理した後、ライゲ ーションを行った。得られたプラスミドをS. 7942 に形質転換し、スペクチノマ イシン耐性の形質転換体を取得した。PCR でニュートラルサイトに導入されて いることを確認し、以後この株をS. 7942TKと呼ぶことにしする。

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第三節 結果、考察

1. BrdU を用いた新規合成 DNA の評価法確立

シアノバクテリアではBrdU による DNA 複製評価の前例がなく、さらに BrdU をゲノムに取り込むために必要な、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子を保持して いないため、S. 7942 のニュートラルサイトに HA タグを付加した TK 遺伝子を 組み込んだ株(以下S. 7942TK)を作製した。この株を用いて、BrdU による DNA 複製活性評価系の確率を目指した。TK は IPTG により誘導可能なコンストラク トになっているが、ウエスタン解析の結果、IPTG 非添加でも多少のリークがあ ることが分かった。そこでIPTG 添加、非添加により BrdU のゲノムへの取り込 み活性が変わるかどうかを調べた。その結果、添加、非添加によりTK の発現量 に差があるものの(Fig. 1-1B)、BrdU の取り込み活性はどちらも変わらなかった (Fig. 1-1C)。また、生育においても IPTG 添加、非添加において差は認められ なかった。したがってこれ以降の実験は、なるべく野生株と同じ条件で実験を するため、IPTG 非添加条件で行った。

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Fig. 1-1 TK 遺伝子導入と BrdU 取り込み評価 A) TK 遺伝子発現コンストラクトを示す. Ptrc プロモーター制御可のもと HA タ グを付加したTK 遺伝子を S. 7942 のニュートラルサイトに導入した. Spr, スペク チノマイシン耐性遺伝子、lacIq, Ptrc プロモーターのリプレッサー遺伝子. B) IPTG 非添加、添加条件における TK タンパクの発現量. 暗所で 18 時間培養後明 所に移行した時点を0 時間とする. IPTG は明所移行 1 時間前に添加した. 抽出さ れたタンパク質20µg(非添加)、5µg(添加)は抗 HA 抗体、抗 RpoD1 抗体を用 いてウエスタンブロッティングにより検出した. C) IPTG 非添加、添加での BrdU の取り込みを示す. 各時間 BrdU ラベルしたそれぞれの細胞からゲノムを抽出し、 100 ng をメンブレンにスポットし抗 BrdU 抗体を用いて検出した. D) S. 7942TK 株の生育曲線を示す. closed diamond, IPTG 非添加、open triangle, IPTG 添加.

S. 7942TK ! genome Spr lacIq TK Ptrc HA tag × 2 A B TK RpoD1 IPTG- IPTG+ -1 0 1 2 -1 0 1 2 α-BrdU IPTG- IPTG+ -1-0 0-1 1-2 2-3 -1-0 0-1 1-2 2-3 0.1! 1! 10! 0! 50! 100! 150! Time (hr) D C Labeling! time (h) Time (hr) DNA: 100 ng! Ab so rb a n ce a t 7 5 0 n m

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2. DNA 複製開始への各種阻害剤の影響

2-1. 阻害剤の濃度検定

シアノバクテリアにおいて各種阻害剤の生育への影響を検証した報告はない ため、まず初めに濃度検定を行った。ここで基準として生育は止まるが、2 時間 後では死なない程度の濃度を検証した。同調培養後、明所移行と同時に各種阻 害剤を添加し、O. D750による測定、また2 時間後の viability test を行った(Fig. 1-2A,

B)。その結果、DCMU; 5µM、DBMIB; 5µM、Cm; 100µg/ml、Rif; 200µg/ml、NDX; 3µg/ml、CEX; 2.5µg/ml に決定した。また Rif、NDX においては 3、6、9 時間後 のviability test も行ったが、どの時間においても生存率は非添加のものと比べ変 わらなかった(Fig. 1-2C)。 2-2. 阻害剤の DNA 複製への影響評価 まず初めに、一般的にバクテリアにおいて複製の開始のみを阻害すると言わ れているRif 48と複製の進行を阻害するNDX(DNA ジャイレース阻害剤)49 50 がシアノバクテリアにおいても同様の効果を示すかどうかを検証した。暗所で の同調培養後、明所に移行すると同時にBrdU を添加し一時間ラベルした後、Rif またはNDX を添加しその後の BrdU の取り込みを比較した(Fig. 1-3A)。その結 果、非添加では1 時間での BrdU の取り込みに比べ 3、6、9 時間と取り込みは増 加し続けたが(Fig. 1-3B and C, Control)、Rif 存在下では 3 時間まで増加し、そ れ以降は取り込みが見られなかった(Fig. 1-3B and C, Rif)。これは 1 時間目まで に複製開始したものは終結するまで複製しているため BrdU の取り込みは増加

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Fig. 1-2 各阻害剤における生育と viability test A) 各種阻害剤を添加した際の生育を示す. 同調培養後明所に移行すると同時に 阻害剤を添加し経時的に濁度を測定した. B) 阻害剤添加し 2 時間後の viability test の結果を示す。C) 明所に移行したあと 1 時間目で阻害剤を添加し、その後 のviability を検証した. 時間は添加後の時間ではなく、明所に移行後を 0 時間と した際の時間である. 100 10-1 10-2 10-3 10-4 dilution ratio Control Rif NDX 3 h! Post-transfer Cm Rif DCMU DBMIB 100 10-1 10-2 10-3 10-4 NDX A! B! Control CEX dilution ratio Time (hr) 0.1! 1! 10! 0! 10! 20! 30! 40! 50! 60! Control! Rif! Cm! NDX! CEX! DCMU! DBMIB! Ab s. C! Control Rif NDX 6 h! Post-transfer Control Rif NDX 9 h! Post-transfer

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Fig. 1-3 S. 7942 における DNA 複製に対する Rif と NDX の効果の検証 A) 培養条件と BrdU によるラベル時間を示す. 同調培養後明所に移行すると同 時にBrdU を添加した. その後 1 時間培養した後阻害剤を添加し、各時間まで培 養し続けた. B) BrdU イムノブロットの結果を示す. 各時間 BrdU ラベルしたそれ ぞれの細胞からゲノムを抽出し、100 ng をメンブレンにスポットし抗 BrdU 抗体 0! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 9! 10! 11! 12! (hr) inhibitor addition A! Light Dark 18 h 1 3 6 9 BrdU-labeling! time 0-1 0-3 0-6 0-9 Control Rif NDX (hr) B C 0! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 1! 3! 6! 9! Control! Rif! NDX! 5! 25! 45! 65! 85! 105! 125! Sp o t in te n si ty (AU ) X 1 0 5 10

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2-3. 各種阻害剤の複製開始への影響 各種阻害剤のDNA 複製開始への影響を検証した。暗所で同調培養後、明所以 降と同時に阻害剤を添加し、0-1、1-2 時間でそれぞれ BrdU によるパルスラベル を行った(Fig. 1-4A)。あらかじめ各種阻害剤の溶媒(DMSO、EtOH、MtOH、) のみを添加した際の複製活性への影響を検証した結果、コントロール(非添加) のものと同等の活性を示したため、ここでは非添加のもののみをコントロール として示す(Fig. 1-4B Control)。その結果、非添加のものは 0-1、1-2 で BrdU の 取り込み活性を示した。しかしCEX を除くすべての阻害剤において取り込み活 性は見られなかった(Fig. 1-4)。CEX は分裂の阻害剤(FtsI を阻害)であるため

51DNA 複製には影響がないことが分かり、さらに Synechococcus においても細 胞分裂より先にDNA 複製を行う一般的な細胞周期であることが示された。光合 成電子伝達阻害剤により阻害されたことから、複製開始には光合成が必須であ ることも分かった。また転写、翻訳阻害によりDNA 複製開始が阻害されたこと から、遺伝子発現も必須であることが分かった。 次に DNA 複製開始を阻害した遺伝子発現と光合成は直列の関係にあるのか、 並列の関係にあるのかを検証する為に複製因子として知られる DnaB ヘリカー ゼのタンパク量を解析した。その結果、明所に移行後 2 時間において阻害剤非 添加のものはタンパク量の増加が見られたが、Rif、Cm、DCMU、DBMIB 存在 下では発現量の増加は認められなかった。このことより、光化学系電子伝達の 活性化による複製開始への影響は遺伝子発現を介した間接的な制御であること が分かった(Fig. 1-4C)。

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Fig. 1-4 DNA 複製開始に対する各種阻害剤の影響 A) 培養条件と BrdU ラベリング時間を示す。明所に移行すると同時に阻害剤を 添加し、0-1、1-2 時間と BrdU によりパルスラベルを行った. B) BrdU イムノブロ ットの結果を示す. 各時間 BrdU ラベルしたそれぞれの細胞からゲノムを抽出し、 0! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 9! 10! 11! 12! inhibitor addition A! Light Dark 18 h (hr) Cm! Control! Rif! DCMU DBMIB NDX! 0-1 1-2 CEX! 0-1 1-2 0-1 1-2 BrdU-labeling! time BrdU-labeling time B (hr) Inhibitor 0 2 2 2 2 2 Time - - Cm ! Rif! DCMU DBMI B C α-FLAG CBB

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第四節 まとめ シアノバクテリアにおいてDNA 複製は、光により厳密に制御されていること を初めて示した。さらに、光シグナルは光化学系全体の活性化を介して、複製 開始を制御していることも明らかとなった。光化学系の活性化の下流には、複 製開始複合体因子であるDnaB の遺伝子発現を誘導する経路の存在が分かった。 しかし、DnaB だけでなく、主要シグマ因子である RpoD1 の発現も、各阻害剤 添加で阻害されることから、複製因子以外の遺伝子発現制御も関与していると 考えられる。光合成生物では、光化学系を介する遺伝子発現制御機構は多くの 遺伝子においてよく知られており52-55、複製因子もこの制御下にあることが予測 できる。 しかし、DNA 複製開始には様々な物質が必要であり、おそらく遺伝子発現だ けではなく、代謝物質などの他の要因も考えられる。光合成を阻害するとアミ ノ酸やエネルギーの生産も行われず、結果としてDNA 複製は開始できないのだ ろう。したがって、複製開始制御には光合成活性化からなる複数の要因によっ て、厳密に制御されていることが示唆される。また、他のバクテリア同様、栄 養状態(シアノバクテリアは光合成)とDNA 複製開始制御は密接に関係してい ることを初めて示した。

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第二章 DNA 複製進行制御機構の解析 第一節 序 原核生物のゲノム DNA 複製は主に、DNA ポリメラーゼ複合体、プライマー ゼ、ヘリカーゼなどの複製複合体によって行われている 56-58。まず初めに DNA ジャイレースがDNA のねじれをほどき正の超らせんを解消し、その後に複製複 合体の先頭に立つヘリカーゼがDNA の二本鎖を解離することにより、リーディ ング、ラギング鎖の合成が進む。 これまで複製進行の制御機構はいくつか報告がある。一つは SOS 応答に対す る複製進行制御である。DNA 複製進行中に DNA 障害などが生じると、一旦 DNA 複製をやめ、進行複合体はDNA からはがされ、修復後再びヘリカーゼなどがリ クルートされ、DNA 複製は再開する59-62。もう一つは緊縮応答時の制御であり、 栄養飢餓などを感知すると、ppGpp という物質を介し、プライマーゼを直接制 御することでDNA 複製進行を停止させることが知られている63,64 65 66,67。この ことから、複製開始だけでなく、進行においても栄養状態との密接な関係が伺 える。 シアノバクテリアは光存在下では光合成を行うことは周知の事実であり、こ れにより細胞維持に必須なエネルギーを作り出している。しかし、暗所では光 合成を行えないため、呼吸により ATP などのエネルギーを生産している 68-70。 これは光合成原核生物特有であり、光合成電子伝達鎖と呼吸鎖は一部(PQ → シ トクロムb6f → PC)共有していることが知られている68,71,72(図2-1)。このよう に最低限細胞維持に必要なエネルギー生産は暗所でも行っていると考えられる。

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Conrad W. Mullineaux, 2013, Biochim Biophys Acta.

図2-1 シアノバクテリアにおける電子伝達経路

矢印はそれぞれ電子の流れを示す. 丸または四角で囲われたものはタンパク質、 またはタンパク質複合体を示す. 囲われていないものは低分子を示す.

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第二節 材料と方法 1. 材料 (1)使用菌株 Synechococcus elongatus PCC 7942TK (第一章参照) Synechocystis sp. PCC 6803TK Anabaena sp. PCC 7120TK (2)使用培地 BG-11 2. 方法

(1) Low-temperature (77K) fluorescence emission spectra of cells using spectrofluorometer (RF-5300PC; Shimadzu)による測定

通常光、PSI 光(λmax of 700 nm and 20 nm half-bandwidth at 30 µmol m-2 s-1)とPSII

光(λmax of 610 nm and 20 nm half-band width at 30 µmol m-2 s-1)の各光条件下で5

日間培養した細胞を回収し、5µg chlorophyll mL-1となるように調整後、スペクト ルメーターに供した。詳細な方法は以前の論文73を参考に行った。

(2) 呼吸活性測定法 呼吸活性 測定法

(30)

(3) グリコーゲンの定量法 試薬 glucoamylase 反応液 100 mM Na-acetate (pH 5.0) 5µl (2.5 mM) H2O 195 µl glucoamylase 0.1 mg S1 solution 1 M HEPES-NaOH (pH 7.5) 100 µl (400 mM) 1 M MgSO4 2.5 µl (10 mM) 30 mM NADP+ 25 µl (3 mM) 500 mM ATP 5 µl (10 mM) H2O 89.5 µl Total 222 µl 抽出法 O. D750 = 0.2 の培養液を 25 ml 回収 ↓→上清 1 ml の H2O で懸濁 ↓ 15000 rpm、 10 min ↓→上清 100 %メタノール 1.5 ml で懸濁 ↓ -20℃ O/N ↓ 15000 rpm、10 min ↓→上清 Dry up

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↓ 1 ml の H2O に懸濁 ↓ 100℃、40 min ↓ 懸濁液400 µl に glucoamylase 反応液を 200 µl を加える ↓ 40℃, 1h ↓ 15000 rpm, 5 min ↓ 上清を回収(サンプル) 測定法 スターラーを入れたキュベットにH2O と S1 solution 混合液(H2O : S1 sol = 900 : 222)112µl とサンプル 35µl を加え 400 rpm で混和 ↓

15 mg / ml に調整された Hexokinase / Glucose-6-phosphate dehydrogenase (Roche) を2.8 µl 添加し、ピペッティング

(32)

第三節 結果と考察

1. 複製進行制御機構の解析 複製進行への光の影響

同調培養後、0、5、8、11 時間それぞれ明所で培養し、各時間で暗所に移行後 した際のBrdU 取り込み活性を検証した(Fig. 2-1A)。0、5、8、11 時間での明所 の複製活性には違いが見られ、時間を追うごとにBrdU 取り込み活性は上昇した。 しかし驚いたことに、どの時間で暗所に以降した際にもほとんどBrdU は取り込 まれておらず、定量値もほとんど変わらなかった。この結果はRif により複製開 始のみを阻害した際の複製活性よりも低く、NDX で阻害した際の複製活性と同 等の値を示したことから(Fig. 2-3B and C)、暗所では DNA 複製開始だけでなく 進行も停止している可能性が示唆された。

そこでより詳細に解析するために、暗所で BrdU ラベルした細胞から、DNA を抽出し、抗BrdU 抗体により免疫沈降を行い、新規合成された DNA のみを精 製した。Fig. 2-2 で示すように複製開始のみ停止していれば ter まで進行するは ずなので、暗所で合成されたBrdU を含む DNA は ter に近づくほど増加する(B)。 またゲノム上で停止位置が厳密に決まっている場合は、その領域まで進行した のちに停止するので、停止したゲノム上での領域が他の領域に比べ最も多く BrdU が取り込まれる(C)。一方、ランダムにどの領域でも進行停止しうるので あれば、BrdU が取り込まれる領域に偏りはなく、特定のピークは確認できない はずである(D)。この予想のもと精製された BrdU ラベルされた DNA を定量 PCR で測定した結果、予想された(D)の結果とほぼ等しくなった(Fig. 2-2E)。 このことから暗所においてDNA 複製進行は、ゲノム中のどの領域でも停止しう ることが示され、光によりDNA 複製進行までもが制御されていることが分かっ た。

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Fig. 2-1 暗所以降による DNA 複製進行への影響 A) 培養条件と BrdU ラベリング期間を示す。同調培養後、0、5、8、11 時間そ れぞれ明所で培養し、各時間で暗所に移行後すると同時にBrdU を添加し 1 時間 パルスラベルを行った. B) BrdU イムノブロットの結果を示す. 各時間 BrdU ラベ ルしたそれぞれの細胞からゲノムを抽出し、100 ng をメンブレンにスポットし 抗BrdU 抗体を用いて検出した. C) B で検出したスポットを定量した結果をしめ 0! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 9! 10! 11! 12! A! Light Dark 18 h BrdU-labeling! time (hr) Light Dark 0-1 5-6 8-9 11-12 C! BrdU-labeling time (hr) 5"6 8"9 11"12 L D 0"1 B BrdU-labeling time (hr) 0! 50! 100! 150! 200! 250! L D L D L D Sp o t in te n si ty (AU ) X 1 0 5

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Fig. 2-2 複製進行停止位置の同定

A) S. 7942 のゲノムを示す. 数字は各ゲノム中の遺伝子番号とその位置をしめす. B-C) 暗所で BrdU が取り込まれた領域の予想図を示す. B) DNA 複製がワンラウ ンド進行した際はter まで進行するはずなので、BrdU は ter 領域に最も多く取り 込まれる. C) DNA 複製がある決まった領域で停止している場合、その領域で最 も多くBrdU が取り込まれる. D) DNA 複製がゲノム上のどの領域においても停 止する場合、特定にピークは見られない. E) 実際の実験結果である. 同調培養後、 明所で6 時間培養し、再び暗所に移行すると同時に BrdU を添加し、6 時間暗所 でラベルした. この細胞から DNA 抽出し、BrdU 抗体を用いて免疫沈降した. 免 疫沈降により精製したDNA を各領域特異的なプライマーを用いて q-PCR により 定量した. 縦軸は回収した DNA 分子量を示す. oriC ter ter

ter ter ter

ter 0302 1001 2328 1564 S. 7942! genome oriC ter 0680 1943 A! B! oriC oriC D! C! E! 0! 5E-10! 1E-09! 1.5E-09! 2E-09!

1595! 1943!us300! ori! ds300!0680! 1001! ter!2328 oriC 0302

Mo le cu le n u mb e r

(35)

2. 複製進行への阻害剤の影響

暗所において複製進行停止が認められたので、上流シグナルを探索するため 阻害剤による影響の検証を行った。同調培養後、明所に移行し5 時間目または 8 時間目でそれぞれ各阻害剤と BrdU を同時に添加し、取り込み活性を測定した (Fig. 2-3A)。複製進行阻害のコントロールである NDX 添加時は、BrdU の取り 込みは検出されなかった(Fig. 2-3B NDX)。次に複製開始のみを阻害する Rif、 Cm を添加条件ではどちらも非添加のものと比べると若干取り込み活性は低下 するものの、完全な低下は見られなかった(Fig. 2-3B Rif, Cm)。最後に電子伝達 阻害剤であるDCMU、DBMIB 添加での影響を検証したところ、DCMU では Rif、 Cm 同様完全には阻害されないものの、DBMIB では完全に阻害された(Fig. 2-3B)。 DCMU は Rif と DBMIB は NDX と同様の効果が見られたため、FACS によりさ らに詳細に解析した。同調培養後、明所に移行し8 時間目に各阻害剤を添加し、 さらに9 時間培養したのちの細胞を解析した。大腸菌など原核生物は、Rif など で複製開始のみを阻害するとFACS はいくつかのピークとして検出される48 74。 これは複製中間体がなくなり、すべてのゲノムが同じ大きさにそろうためであ る。同じようにS. 7942 においても Rif 添加条件では、いくつかのピークを観察

できた(Fig. 2-3B, Rif)。DCMU 存在下でも Rif 添加時同様、いくつかのピーク を確認した。一方、NDX、DBMIB では、添加前と後で FACS の波形にほとんど 差は認められなかった。これらの結果より、DCMU は複製開始のみを阻害し、 DBMIB は複製進行を阻害することが明らかとなり、同じ電子伝達阻害剤にも関 わらず別々の影響が観察されて。このことより、複製の「開始」と「進行」と では、別々の経路で制御していることが示された。

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Fig. 2-3 複製進行における各種阻害剤の影響 A) 培養条件と BrdU によるラベル期間を示す。同調培養後、明所に移行し 5 時 間または8 時間培養したものに阻害剤と BrdU を同時に添加し、パルスラベルを 行った. B) BrdU イムノブロットの結果を示す. 各時間 BrdU ラベルしたそれぞれ の細胞からゲノムを抽出し、100 ng をメンブレンにスポットし抗 BrdU 抗体を用 いて検出した. C) B で検出した 8-9 時間のスポットを定量した結果を示す. 縦軸 の値は、非添加であるControl の値を 1 とした際の割合として示す. D) FACS の 結果を示す. 明所 8 時間培養後に各種阻害剤を添加しさらに明所で 9 時間培養し た. 明所に移行した際の時間を 0 時間として示す. 0! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 9! 10! 11! 12! A! Light Inhibitor! addition Inhibitor! addition Dark 18 h BrdU-labeling! time (hr) 5-6 8-9 Cm Rif DCMU DBMIB NDX BrdU-labeling time B Control CEX Dark D 0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 10 Number of chromosomes 0 200 400 600 800 1000 FL1-H -9.071 0 200 400 600 800 1000 FL1-H DCMU-0.091 C e ll n u mb e r Control 8 h 17 h C R a tio o f sp o t in te n si ty 0 200 400 600 800 1000 FL1-H NDX-9.128 NDX 17 h 0 2 4 6 8 10 0 200 400 600 800 1000 FL1-H Rif2-9.150 Rif 17 h 0 200 400 600 800 1000 FL1-H DBMIB-9.104 DBMIB 17 h 0 200 400 600 800 1000 FL1-H DCMU-9.096 DCMU 17 h 5-6 8-9 5-6 8-9 5-6 8-9 (hr) 0! 0.1! 0.2! 0.3! 0.4! 0.5! 0.6! 0.7! 0.8! Rif! Cm ! NDX ! CEX ! DCMU ! DBMI B! Dark !

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3. 複製進行への far-red light の影響 DCMU と DBMIB の効果としては、プラストキノン(PQ)プールの酸化還元 バランスが異なることがあげられる 75。DCMU 添加時は PQ プールが酸化状態 になり、DBMIB 添加時は PQ プールは還元状態である。PQ の酸化還元バランス が遺伝子発現など様々なシグナルとなっているという主張は古くから提唱され てきた。そこでPQ の酸化還元バランスを光により調節し、複製への影響を検証 した。PSI-light は PSI を励起し PSII/PSI の割合が上昇する(Fig. 2-4C)76。その 際、PQ プールは酸化型になる。一方、PSII-light は PSII を励起するため、効果 は通常光と同様でPQ プールは還元状態である。 同調培養後、明所で 5 時間または 8 時間培養しそれぞれの時間で PSI-light ま たは PSII-light 下に移行し BrdU ラベルを行った。通常光をコントロールとして 取り込み活性を比較した。その結果、どの波長の光条件かにおいても、大きな 差は見られなかった(Fig. 2-4B)。このことから、PQ プールの酸化還元状態は DNA 複製進行には影響していないことが分かった。 DCMU で阻害した際の PQ 以降の電子伝達鎖は、PS-I からのサイクリック電 子伝達系路が働くため、多少の還元状態が保たれると考えられる。しかし、 DBMIB による阻害は、このサイクリック電子伝達までも阻害してしまうため、 PQ 以降の電子伝達鎖は完全に酸化状態になる。このことから、DNA 複製の進 行においては、PQ 以降の電子伝達鎖の酸化還元状態がシグナルとなっている可 能性が示唆された。

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Fig. 2-4 Far-red 光による複製への影響

A) 同調培養後、通常光(WL)、PSI 光(PSI-light)、PSII 光(PSII-light)条件下 に移行し0-1、1-2 時間で BrdU によるパルスラベルを行った(上図)。BrdU イム ノブロットの結果を示す. 各時間 BrdU ラベルしたそれぞれの細胞からゲノムを 抽出し、100 ng をメンブレンにスポットし抗 BrdU 抗体を用いて検出した(下図). B) 同調培養後、5 または 8 時間通常光で培養したのち、WL、PSI-light、PSII-light 下に移行しBrdU によるパルスラベルを行った(上図). BrdU イムノブロットの 結果を示す. 各時間 BrdU ラベルしたそれぞれの細胞からゲノムを抽出し、100 ng をメンブレンにスポットし抗 BrdU 抗体を用いて検出した(下図). C) Low-temperature (77K) fluorescence emission spectra の結果を示す. I、II はそれぞれ 光化学系I、II の特異的波長である. WL 0-1 1-2 (time)� PSI-light 0 1 2 Dark 18h WL or FR 5-6 8-9 (time)� WL 0 5 6 8 9

Change the light

Dark 18h Light PSII-light PSII-light 0! 20! 40! 60! 80! 100! 120! 600! 650! 700! 750! 800! White-light! PSI-light! PSII-light! F lu o re sce n ce (re l. unitt ) Wavelength (nm) PSI-light II I A! C! B!

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4. シアノバクテリア内での保存性 S. 7942 において複製進行までも光により制御されていることが分かったので、 同じ淡水性シアノバクテリアであり球菌のS. 6803 と糸状性の A. 7120 において 同様の検証を行った。 同調培養後、明所に移行し 6 時間培養ししたのち、再び暗所に移行し各時間 で1 時間 BrdU ラベルを行った。その結果、S. 7942 とは違い、他の 2 種は、暗 所に移行しても複製活性が急激に低下しないどころか、18 時間後においても多 少の複製活性を示した(Fig. 2-5)。S. 7942 では暗所において電子伝達系が酸化 型に傾くことにより、DNA 複製の進行までもが停止することが示唆されたため、 S. 6803、A. 7120 は暗所においても、電子伝達鎖は多少の還元状態にある可能性 が考えられた。 シアノバクテリアは明所では主に光合成を、暗所では呼吸により、電子伝達 系が働いている。そこで、次に 3 種における呼吸活性の比較を行った。その結

果、S. 6803、A. 7120 は S. 7942 よりも高い呼吸活性を示した(Fig. 2-6A)。この

値はO. D750の値を合わせて測定しており、細胞の大きさはS. 7942 < S. 6803 < A. 7120 であるので、O.D750あたりの細胞数はS. 7942 が最も多くなる。したがって、 細胞あたりの呼吸活性はS. 6803、A. 7120 の方がさらに高くなると考えられる。 さらに呼吸活性の違いは、どこに由来するのかを調べるため、呼吸鎖の上流 である解糖系の出発点であるグリコーゲン量を定量した。その結果、S. 7942 は 暗所においてほとんど減少していないのに対し、S. 6803、A. 7120 は暗所での培 養時間に応じて顕著に減少した。このことからS. 7942 は光合成により生産した グリコーゲンを暗所ではあまり代謝していないが、S. 6803、A. 7120 は積極的に

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Fig. 2-5 暗所における DNA 複製活性の比較 A) 培養条件と BrdU ラベル時間を示す. 同調培養後、明所に移行し 6 時間培養 したのち、再び暗所に移行し 18 時間培養した. 暗所に移行する時点を 0 時間と し、それぞれ示した時間において BrdU ラベルした. □の中の数字は B の横軸に 対応する. B) 複製活性を示す. グラフは抗 BrdU 抗体により検出したスポットを 定量し、0 時間の値を 100 %活性とした際の割合を示す. A! Light 6 h Dark 18 h (hr) B rd U i n c o rp o ra ti o n a c ti v ity ! (s p o t in te n s ity ) (% ) 0 1 2 3 4 6 12 18 S. 7942 S. 6803 A. 7120 0! 20! 40! 60! 80! 100! 120! Dark 0 1 2 3 4 5 6 11 12 17 18 -1 0 1 2 3 4 6 12 18 0 1 2 3 4 6 12 18 0 1 2 3 4 6 12 18 B! (hr)

(41)

nmol (O 2 ) / m in 1 2 3 4 6 12 16 24 S. 7942 S. 6803 A. 7120 0! 1! 2! 3! 4! 5! 6! μ g / ml 0! 20! 40! 60! 80! 100! 120! 140! 0 3 6 12 16 24 1 2 3 4 6 12 16 24 1 2 3 4 6 12 16 24 0 3 6 12 16 24 0 3 6 12 16 24 S. 7942 S. 6803 A. 7120 A! Light 6 h Dark 18 h (hr) Dark 0 1 2 3 4 5 6 12 16 24 B! C!

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第四節 まとめ 本章では複製進行への光の影響、またこの制御のシアノバクテリアにおける 保存性を検証した。 1. 複製進行制御シグナル S. 7942 において複製進行においても光による厳密な制御の存在が明らかとな った。DCMU では阻害されず、DBMIB でのみ阻害されたことから、PQ 以降の 電子伝達が何らかのシグナルとなって、DNA 複製進行を制御していることは明 白である。しかし、それ以降の電子が流れることで、細胞内環境がどのように 変化し、何がシグナルとなっているかは未だに不明である。少なくともATP レ ベルの問題はではないだろう。なぜなら、明所と暗所ではATP レベルにあまり 変化がみられないためである69,70。暗所でも呼吸鎖による電子伝達によりプロト ン濃度勾配ができるため、ATP 量は暗所でも保たれる。候補としては、PQ の酸 化還元状態がシグナルとなっている可能性がある。DCMU と DBMIB により効 果の違いが見られた報告は多くあり、そのほとんどはPQ の酸化還元状態がシグ ナルであると結論づけており、この説は古くから指示されてきた68,77-84。このシ グナルを考えるうえで、最も重要なことは明暗でのPQ の状態であるが、未だに 明確な答えを示した論文はない。明所では光化学系が働くため、PC→PSI と電 子が伝達される。しかし、暗所では PSI への電子は伝達されず、Cyt/Oxidase へ の電子伝達のみである。そうすることで、PQ 以降の電子伝達の流れが悪くなり、 結果として PQ は電子を下流へ渡せないため、過還元状態になると考えられる。 DBMIB でも同様に PQ は下流に電子を渡せないため、過還元状態になる。もし PQ が暗所でも本当に過還元であれば、DNA 複製進行には PQ の酸化還元バラン スが直接的なシグナルとなっている可能性が十分考えられる。しかし、暗所で は明所に比べPQ は酸化状態であるという報告もあるため77、言い切ることはで きない。 しかし近年、PQ ではなく、電子伝達鎖もしくは PSI 以降の酸化還元バランス がシグナルであるという考えもあり 55,85-87、この結論に至るためにも、PQ また 電子伝達鎖の酸化還元バランスを正確に測定できる系の開発が急がれる。

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2. シアノバクテリアでの複製進行制御の保存性 S. 7942 では暗所において複製の進行までもが停止する。興味深いことに、S. 6803、A. 7120 においては、進行停止は認められなかった。この要因は、暗所に おいて呼吸により電子伝達鎖を還元的に保っているためだと考えられる。S. 7942 において、複製進行には PQ 以降の電子伝達鎖が還元的であることが重要 だと示した。また、S. 7942 は呼吸活性も低いことが示されたことから、暗所で は呼吸による電子伝達鎖を還元的に保てないため、DNA 複製進行までもが停止 してしまうことが考えられる。一方、S. 6803、A. 7120 は暗所における呼吸活性 が強く、これにより電子伝達鎖を還元的に保っているため、DNA 複製進行が停 止しないことが示唆される。以上の結果より、これら 3 種において電子伝達鎖 の還元力がシグナルとなる制御機構は同じだが、暗所での還元バランスが違う ため、複製進行における暗所での違いが観察されたと考えられる。また、シア ノバクテリアにおける暗所での代謝機構が種間で異なることを初めて見出した。 この成果は、今後シアノバクテリアにおけるバイオマス生産を考える上で、考 慮すべき重要な知見となるだろう。

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第三章 複製開始点の同定

第一節 序

多くの原核生物は複製開始点(oriC)がゲノム上に一つだけ存在し、そこから

のみ複製を開始する88。このoriC 領域には DnaA-box という DnaA が結合する配

列が存在し、その周辺はAT に富む配列である89。oriC 領域はほとんどのバクテ リアに保存されており、さらに周辺領域の遺伝子も保存性が高いことが知られ ている。またG / G+C(GC skew)で表される変異バイアスは、複製開始点と終 結点領域でシフトすることも知られている 90。これはリーディング鎖とラギン グ鎖とでGC の変異バイアスが変わるため、このような偏りが生まれると考えら れている。そのため、近年インフォマティクスの発展により、GC skew より容 易に複製開始点を予測することができるようになった91,92。 複製開始制御機構は大腸菌、枯草菌だけでなく、多くのバクテリアにおいて DnaA というイニシエータータンパク質の質的、または量的制御に集約されてい る5,93-95。大腸菌ではDnaA の活性制御が知られており、ATP 結合型では活性型 であり、ADP 結合型では不活性型である96。この場合、どちらもDNA への結合 能を有しているが、活性型でのみコンフォメーション変化を引き起こし、DNA の二本鎖を解離することができる。この制御機構は枯草菌などの多くのバクテ リアに保存されており、DnaA の活性化、不活性化は複数の経路により厳密に制 御されている 97。カウロバクターにおいては活性制御よりも、プロテアーゼに よるDnaA の分解制御という量的制御が主であることも報告されている98。この ことより、生活感などによりDnaA の制御機構には、種特異的な制御も存在しう ることが考えられる。 シアノバクテリアにおいても例外ではなく、一細胞あたり一つのゲノムを保 持する海洋性のシアノバクテリアSynechococcus sp. WH 8102 は、GC skew より 複製開始点の予測が可能である(Fig. 3-1)。しかし、淡水性のシアノバクテリア は例外であり、GC skew のシフトポイントが全くなく、ここから複製起点を予 測することは困難である(Fig. 3-1)。また近年、次世代シーケンサーの普及によ り、対数増殖期の細胞では ori と ter のゲノムコピー数の差を利用することで、

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複製開始点と終結点が明確にできることも分かった(Fig. 3-2)。しかしシアノバ クテリアS. 7942 においてはそのような差は見られなかった(Fig. 3-2)。S. 7942 においてはdnaN 遺伝子上流に DnaA-box クラスターが存在することから、複製 起点と予測されており41、その領域は弱いながらもGC skew のシフトも見られ る(Fig. 3-1)。しかし、インフォマティクス解析では複製起点を予測できないと いう報告もあり99、実験的証明が急務である。

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第二節 材料と方法 1. 材料 (1)使用菌株 Synechococcus elongatus PCC 7942 Synechococcus elongatus PCC 7942 TK 導入株 (2)使用培地 BG-11 (3)使用プライマー

Primer name Sequence (5’ to 3’) a

Quantitative real-time PCR dnaN-standard-f GACGCAGTTGCGCATAGTCACGCTC dnaN-standard-r CGGTTAAGCTCAGTCGTTGAGTACC dnaN-target-f GGGGTCGATCGCTGAAAGTCTTGC dnaN-target-r GGGGAGGCTGCCCGAGCCTTTG 0302-standard-f TCCAAGGCTCAATCCTCAGTTTCGGTTAAG 0302-standard-r CAAGCGATCGCCGATGTTTTAGAAGCGCG 0302-target-f GAAAGCGATCGGCCAAACTAGAGTCCTCG 0302-target-r CAAACAATCGCCCTTGGAGTAGTCCCCTC 0680-standard-f GACGGAGCTGAGTGGATGGGCCGAGGCCTC 0680-standard-r CTCCTGCGAGTAGATCGCTCTGCCAAAAAG 0680-target-f GAACCATTGCAAACATTCACTGAAATTTAA 0680-target-r AAGTGAGAGTACCGCTCTCTGTATAACGAC 1001-standard-f GCTCTGCTCTAGCAGCAAGTTCGAACAGAC 1001-standard-r GCCAGCCAAGCGGTTGAGGCTTTGCAAACC 1001-target-f GGGATTTCATTGAACGTCTAATGAACAG 1001-target-r GCCTCTTATCTTTTCGTTCCAGTTAGTTG 1294-standard-f GTAGGGCAGATATTGTTTCAGTTG 1294-standard-r CTAGCGTGCTAATTATCAACTAGC 1294-target-f CAGACGATCGCTATTTAGTCCAG 1294-target-r GGCGGAATTCTGAAACTCTTATC 1595-standard-f GTGAGCGGCCAAATTCAGCAACTGGAAGCC 1595-standard-r CGCCAATCACTGTGCAGAGAATCGGCACCG 1595-target-f GGATTGAATTACACGGCGATCGCAACGGTA

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1595-target-r CGATCGGCATGCTCCATCAAACGCAGTGCC 1943-standard-f GAGGAGTTGCCGCCGCGCCTGCAATGC 1943-standard-r GCGGCGGCGTTCCGGTGATAGAGCACG 1943-target-f GAACACCCACCAGATCCGGATCGCC 1943-target-r GGTCGAGTAACCGATCGCTGGGATAAG 2328-standard-f GCGTTAGAAATTACACCTCAGCGTCAGG 2328-standard-r GAGGTCAGTGCAGCTGCATACTGCCCGAGG 2328-target-f CATTGTCCTGCGTAAGCTGGGCCGACTAG 2328-target-r GCTGCCGCCAAGCACTGCTCTGATCAGGG (4) 使用プラスミド pCold-TF(invitrogen) 2. 方法 (1) BrdU-labelled DNA の免疫検出法 (巻末参照) (2) BrdU-labelled DNA の免疫沈降法 (巻末参照) (3) 次世代シーケンス用ライブラリー調整 (巻末参照) (4) 次世代シーケンスと解析 (巻末参照) (5) 定量 PCR (巻末参照)

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フィルター滅菌し、1 ml ずつ分注し-30 ℃保存 ・80%グリセロール Glycerol 80 ml (関東化学 試薬第1級) miliQ H2O 20 ml ↓ オートクレーブ ↓ 4℃保存 大量培養 LB 培地 100 ml(Amp 100 μg/ml, Cm 34 μg/ml)を 500 ml フラスコで作成す ↓ プレート上のコロニーを満遍なくエーゼでピックし、LB 培地に直接加える ↓ 37 ℃で OD600 = 0.4 になるまで培養 ↓ Time0 (IPTG-)として 1 ml サンプリング ↓ 4 ℃, 15000 rpm, 1 分間遠心 ↓ 上清を捨て、菌体を-20℃で保存 ↓ グリセロールストックとして500 μl サンプリング ↓ 80 %グリセロール 160 μl を加え、Vortex 後-80 ℃で保存 ↓ 1 M IPTG 1 ml を加え、20℃で一晩振盪培養

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発現チェック 試薬 ・8x Purification Buffer NaCl 233.76 g (関東化学) 1M-Tris HCl (pH 8.0) 20 ml miliQ H2O up to 1 L ・1x Purification Buffer 8x Purification Buffer 125 ml miliQ H2O 875 ml 培養液から1 ml サンプリングし、IPTG+とする ↓

残りのCulture を Beckman で 4℃, 6000 rpm, 1 min 遠心 ↓ 上清を捨て、-80℃で保存 ↓ サンプリング分を4℃, 15000 rpm, 1 分遠心 ↓ 上清を捨て、沈殿にPurification Buffer 150 μl を加える ↓

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SDS-PAGE で解析

タンパク質精製 試薬

・PBS

Phosphate buffered saline 100 g (Sigma-Aldrich Inc.)

miliQ H2O up to 1 L

・5x Elution Buffer(1M imidazol)

イミダゾール 3.4 g 関東化学株式会社 特級

1x Purification Buffer up to 50 ml

Elution Buffer と Wash Buffer 組成表 Concentration Buffer Type 5x

Elution Buffer 1x Purification Buffer 200mM Elution Buffer 2 10ml 40ml 100mM Elution Buffer 1 5ml 45ml 60mM Wash Buffer 4 3ml 47ml 40mM Wash Buffer 3 2ml 48ml 30mM Wash Buffer 2 1.5ml 48.5ml 20mM Wash Buffer 1 1ml 49ml

5mM Binding Buffer 250ul 49.75ml

・0.2M PMSF

ふっ化メチルフェニルスルホニル 0.0348 g ナカライテスク株式会社

エタノール 1 ml PMSF の半減期である 35 分以内に使い切る

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・Triton-X100(Sigma-Aldrich Inc.) ・Ni-NTA Resin (QIAGEN Inc.)

菌体にBinding Buffer 30 ml, PMSF 60 μl を加える ↓

Vortex で完全に懸濁させる ↓

Sonication(BRONSON, Duty 50%, Dial 6, 30 sec, 6 cycle)で菌体破砕 ↓

小遠心管に移し、Triton X-100 (SIGMA-Aldrich)を 30 μl 加える ↓

4℃, 15000 rpm, 30 min 遠心(Beckman JA-25.5) ↓ 上清をコーニングチューブに移し、前日に Binding Buffer で平衡化処理した Ni-NTA Resin(QIAGEN)2 ml を加える ↓ 4℃, 1 h, Rotate ↓ 軽くVortex しビーズを懸濁させ、オープンカラム(Bio-Rad)に加える ↓ オープンカラム、 オープンカラム

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ム内容液を全て排出し、フタ付き試験管(長)に受け、Flow Through Fraction 1 (ビーズに結合しなかったタンパク質)とする

コーニングチューブに残ったビーズをBinding Buffer 20 ml で洗い込み、ペリス タポンプで全て排出し、Flow Through Fraction 2 とする

Wash Buffer 10 ml で 5 回 Wash (Wash Fraction 1, 2 ,3, 4, 5) ↓

Elution Buffer 10 ml で Elute (Elute Fraction) ↓

各Fraction 30 μl に 4×Sample Buffer 10ml 加える ↓

37℃, 10 分 incubate ↓

直ちにSDS-PAGE で解析し、Bradford 法を用いてタンパク質定量を行った。 精製したDnaA タンパク質からの抗体作製はジャパンラムに委託した。

(53)

Bacillus subtilis Synechocystis sp. PCC 6803 Synechococcus sp. WH 8102 Synechococcus elongatus PCC 7942

oriC

Synechococcus elongatus PCC 6301 Escherichia coli K-12

oriC

dnaN

Deinococcus radiodurans

Chloroplast

Cyanidioschyzon merolae (Red algae)

dnaN

terC

terC

(54)

Fig. 3-2 ゲノムコピー数の違いを利用した複製開始点の同定 定常期、対数増殖期における細胞を回収し、ゲノムを抽出後、次世代シーケン サーによりリファレンスゲノムへマッピングした結果を示す. A, B) 枯草菌にお ける定常期の細胞(A)と対数増殖期における細胞(B)であり、既知の複製開 始点(oriC)と複製終結点(terC)を図中に示す. C, D) S. 7942 における暗所で 18 時間培養後の細胞(C)と明所に移行後 22 時間後の細胞(D)であり、ゲノ ム上のdnaN 遺伝子の位置を図中に示す. 左図と右図は縦軸の幅を変えて示して ある. C D B A

Location in B. subtilis genome (Mbp)! 5! ! 4! ! 3! ! 2! ! 1! ! 0! R a ti o o f re a d d e p th (1 0 -4)! 0 1 2 3 4!

Location in B. subtilis genome (Mbp)! 0 1 2 3 4! Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! oriC oriC oriC oriC 5! ! 4.5! ! 4! ! 3.5! ! 3! 5! ! 4.5! ! 4! ! 3.5! ! 3! dnaN dnaN dnaN dnaN 5! ! 4! ! 3! ! 2! ! 1! ! 0! R a ti o o f re a d d e p th (1 0 -4)! 8! ! 6! ! 4! ! 2! ! 0! R a ti o o f re a d d e p th (1 0 -4)! R a ti o o f re a d d e p th (1 0 -4)! 8! ! 6! ! 4! ! 2! ! 0! * * * * terC terC

(55)

第三節 結果と考察 1. 複製開始点の同定 先行研究において、BrdU ラベルされた DNA の定量的シーケンス解析 (Repli-seq)により複製開始点の同定を行ったという報告がある 100。原理とし ては、BrdU により始めに合成されるゲノム上の領域、すなわち複製開始点をラ ベルし、このラベルされたDNA 領域だけを精製した後、次世代シーケンサーに て解析するという方法である。こうすることで、最も多くリードが検出された 領域が複製開始点として同定できるのである。S. 7942 においても同様の方法で の複製開始点の同定を試みた。 同調培養後、明所に移行する 1 時間前(dark)、明所に移行後 0.5、1、2 時間 とそれぞれBrdU によるパルスラベルを行い、抗 BrdU 抗体を用いた免疫沈降法 により精製した。この精製DNA からライブラリー調整を行い、次世代シーケン サーによる解析を行った(Fig. 3-3)。その結果、暗所と明所移行後 0.5 時間でラ ベルしたサンプルでは顕著なピークは検出できなかった(Fig. 3-3A and B)。し かし明所移行後1 時間ラベルしたサンプルにおいて dnaN 遺伝子周辺にはっきり としたピークを確認することができた(Fig. 3-3C)。BrdU が初めにより多く取り 込まれている領域ということは、ここが複製開始点であることを示している。 さらにこのピークは 2 時間ラベルしたサンプルでは多少ブロードになっていた (Fig. 3-3D)。このことから、dnaN 遺伝子周辺から複製開始していることが示さ れた。

(56)

Fig. 3-3 Repli-seq による複製起点の同定

A-D) 精製した BrdU ラベル DNA から作製したライブラリーを次世代シーケン サー(GAII, Illumina Co.)によって解析した結果である. シーケンスリードは S. 7942 のリファレンスゲノムにマップした. ゲノムは明所に移行する 1 時間前の 暗所で 1 時間(A)、明所移行後 0.5 時間(B)、1 時間(C)2 時間(D)それぞ れBrdU ラベルした細胞から調整した. S. 7942 ゲノム上の dnaN 遺伝子の位置を 矢印で示す. Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 4! ! 3! ! 2! ! 1! ! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! R a ti o o f re a d d e p th ! Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 4! ! 3! ! 2! ! 1! ! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! R a ti o o f re a d d e p th ! Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 4! ! 3! ! 2! ! 1! ! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! R a ti o o f re a d d e p th ! Location in S. 7942 genome (Mbp)! 0! 4! ! 3! ! 2! ! 1! ! 0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5! R a ti o o f re a d d e p th ! dnaN dnaN dnaN dnaN

*

*

*

*

C

D

B

A

(57)

3. 複製進行様式の解析

次に複製進行様式を調べるために明所に移行前後の 30 分毎に BrdU によるパ ルスラベルを継続的に行った(Fig. 3-4)。BrdU ラベルされた DNA を免疫沈降法 により精製し、ゲノム上の各位置特異的なプライマーを用いてqPCR によって解 析した。その結果、qPCR によるシグナルは dnaN 遺伝子上流領域から初めに検 出された。このことよりRepli-seq の結果同様に、dnaN 遺伝子周辺が複製開始点 であることが分かった。また次に検出されたのはdnaN 遺伝子から両側にほぼ等

距離の領域であった(Fig. 3-4, Synpcc7942_2328 and Synpcc7942_0302)。一方、

dnaN 遺伝子の反対側に位置する領域(Synpcc7942_1001, Synpcc7942_1294, and

Synpcc7942_1595)では明所に移行後 3 時間半後に検出された。これらの結果よ り、DNA 複製は明所に移行し 0.5〜1 時間の間に開始していること、また複製は 両方向のシータ型複製機構であることが明らかとなった。 以上の結果より、S. 7942 は他のバクテリア同様、dnaN 遺伝子上流の oriC 領 域から複製を開始しており、シータ型に進行することが初めて実験的に証明さ れた。

(58)

Fig. 3-4 精製した BrdU ラベル DNA の定量 PCR による解析

同調培養後、明所に移行する前後において 0.5 時間 BrdU でパルスラベルした. BrdU ラベルされた DNA は抗 BrdU 抗体を用いて免疫沈降を行い、これにより精 製された DNA を qPCR の鋳型として用いた. グラフに示す値は Dark(暗所で BrdU ラベル)サンプルの値との差で示す. BrdU ラベリング時間はそれぞれ: -0.5 - 0 h(Dark)、0 - 0.5 h(0.5)、0.5 - 1 h(1)、1 - 1.5 h(1.5)、2 - 2.5 h(2.5)、3 - 3.5 h(3.5)、4 - 4.5 h(4.5)、5 - 5.5 h(5.5)、6 - 6.5 h(6.5)、7 - 7.5 h(7.5). 0! 1! 2! 3! Synpcc7942_1294 0! 0.2! 0.4! 0.6! 0.8! 1! dnaN 0! 0.2! 0.4! 0.6! 0.8! 1! Synpcc7942_0302 0! 0.2! 0.4! 0.6! 0.8! 1! Synpcc7942_1001 0! 0.2! 0.4! 0.6! 0.8! 1! Synpcc7942_1595 0! 0.2! 0.4! 0.6! 0.8! 1! Synpcc7942_2328 Mo le cu le n u mb e r (x 10 8) Mo le cu le n u mb e r (x 10 8) Mo le cu le n u mb e r (x 10 8) 0680! 1943! dnaN! S. 7942 ! genome! (2.7 Mbp) 0302! 2328! 1001! 1595! 1294! Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5 Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5 Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5 0! 0.2! 0.4! 0.6! 0.8! 1! Synpcc7942_1943 Mo le cu le n u mb e r (x 10 8) Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5 0! 0.2! 0.4! 0.6! 0.8! 1! Synpcc7942_0680 Mo le cu le n u mb e r (x 10 8) Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5 Mo le cu le n u mb e r (x 10 7) Mo le cu le n u mb e r (x 10 7) Mo le cu le n u mb e r (x 10 7) Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5 Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5 Dark ! 0.5 ! 1! 1.5 ! 2.5 ! 3.5 ! 4.5 ! 5.5 ! 6.5 ! 7.5

(59)

4. DnaA による DNA 複製開始制御 上述したように多くのバクテリアにおいて DnaA というイニシエータータン パク質は複製開始制御の主要な因子である。そこでSynechococcus においてもそ の発現量、機能、さらにはその制御機構の解析を行った(Fig. 3-5、Fig. 3-6)。 はじめに作製した抗DnaA 抗体を用いて DnaA の発現量の解析を行った。暗所 で同調後、明所に移行し6 時間培養後再び暗所に移行し DnaA の細胞内存在量を ウエスタンブロッティングにて解析した。その結果、明所、暗所ともにDnaA の 発現量に変化は見られなかった(Fig. 3-5B)。そこで次に同様の培養条件下で DnaA の oriC への結合能を ChIP-qPCR により解析した。プライマーには oriC と その反対側に位置する領域特的なプライマーを用いて評価した。予想通り明所 において DnaA は oriC 特異的に結合することがわかった。驚いたことに、暗所 に移行するとこの結合能が顕著に低下することも示された(Fig. 3-5C)。この結 果より、Synechococcus において DnaA は量的制御ではなく、質的に制御されて いることが分かった。光による制御が明らかとなったため、次にDCMU、DBMIB 添加による結合能の変化を検証した。その結果、DCMU、DBMIB どちらを添加 した条件においても、添加後30 分で結合能の減少が見られた(Fig. 3-6C)。この ことから、光化学系電子伝達の活性化により、DnaA の結合能をコントロールす るという質的な制御の存在も明らかとなった。

(60)

Fig. 3-5 光による DnaA の DNA 結合能への影響

A) サンプリング時間を示す. 同調培養後、明所に移行し 6 時間培養したのち、 暗所に移行した. B) ウエスタン解析の結果である. 明所、暗所における DnaA 細 胞 内 タ ン パ ク 質 レ ベ ル を 検 証 し た. C) DnaA の oriC へ の 結 合 能 を 示 す . ChIP-qPCR での oriC での値を ter 領域の値で割った値をグラフに示す.

DnaA

0 0.5 1

2

3 0.5 1

2

3

Light

Dark

(h)

CBB

Dark

0 1 2 3

Light 6h

Dark 18 h

light

0!

10!

20!

30!

40!

50!

60!

70!

80!

0!

0.5!

1!

Light!

Dark!

Time (hr)!

ori

/

te

r

!

A. B. C.

(61)

0 1 2 3

Light 6h

Dark 18 h

light

DCMU or DBMIB

0 0.5 1 2 3 0.5 1 2 3

DCMU

DBMIB

(hr)

DnaA

CBB

0! 10! 20! 30! 40! 50! 60! 70! 80! 0! 0.5! 1!

Light!

DCMU!

DBMIB!

Time (hr)!

ori

/

te

r

!

A. B. C.

参照

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