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terC

Fig. 3-2 ゲノムコピー数の違いを利用した複製開始点の同定

定常期、対数増殖期における細胞を回収し、ゲノムを抽出後、次世代シーケン サーによりリファレンスゲノムへマッピングした結果を示す. A, B) 枯草菌にお ける定常期の細胞(A)と対数増殖期における細胞(B)であり、既知の複製開 始点(oriC)と複製終結点(terC)を図中に示す. C, D) S. 7942における暗所で 18 時間培養後の細胞(C)と明所に移行後 22 時間後の細胞(D)であり、ゲノ ム上のdnaN遺伝子の位置を図中に示す. 左図と右図は縦軸の幅を変えて示して ある.

C

D B

A

Location in B. subtilis genome (Mbp)!

5!

! 4!

! 3!

! 2!

! 1!

! -4Ratio of read depth (10)! 0!

0 1 2 3 4!

Location in B. subtilis genome (Mbp)!

0 1 2 3 4!

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0! 0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

oriC oriC

oriC oriC

5!

! 4.5!

! 4!

! 3.5!

! 3!

5!

! 4.5!

! 4!

! 3.5!

! 3!

dnaN

dnaN

dnaN

dnaN 5!

! 4!

! 3!

! 2!

! 1!

! -4Ratio of read depth (10)! 0!

8!

! 6!

! 4!

! 2!

! -4-4Ratio of read depth (10)!Ratio of read depth (10)! 0!

8!

! 6!

! 4!

! 2!

! 0!

* *

* *

terC terC

第三節 結果と考察

1. 複製開始点の同定

先行研究において、BrdU ラベルされた DNA の定量的シーケンス解析

(Repli-seq)により複製開始点の同定を行ったという報告がある 100。原理とし ては、BrdUにより始めに合成されるゲノム上の領域、すなわち複製開始点をラ ベルし、このラベルされたDNA領域だけを精製した後、次世代シーケンサーに て解析するという方法である。こうすることで、最も多くリードが検出された 領域が複製開始点として同定できるのである。S. 7942においても同様の方法で の複製開始点の同定を試みた。

同調培養後、明所に移行する 1 時間前(dark)、明所に移行後 0.5、1、2 時間 とそれぞれBrdUによるパルスラベルを行い、抗BrdU抗体を用いた免疫沈降法 により精製した。この精製DNAからライブラリー調整を行い、次世代シーケン サーによる解析を行った(Fig. 3-3)。その結果、暗所と明所移行後0.5時間でラ ベルしたサンプルでは顕著なピークは検出できなかった(Fig. 3-3A and B)。し かし明所移行後1時間ラベルしたサンプルにおいてdnaN遺伝子周辺にはっきり としたピークを確認することができた(Fig. 3-3C)。BrdUが初めにより多く取り 込まれている領域ということは、ここが複製開始点であることを示している。

さらにこのピークは 2 時間ラベルしたサンプルでは多少ブロードになっていた

(Fig. 3-3D)。このことから、dnaN遺伝子周辺から複製開始していることが示さ

れた。

Fig. 3-3 Repli-seqによる複製起点の同定

A-D) 精製した BrdU ラベル DNA から作製したライブラリーを次世代シーケン

サー(GAII, Illumina Co.)によって解析した結果である. シーケンスリードはS.

7942 のリファレンスゲノムにマップした. ゲノムは明所に移行する 1 時間前の 暗所で 1 時間(A)、明所移行後0.5時間(B)、1時間(C)2 時間(D)それぞ れBrdUラベルした細胞から調整した. S. 7942ゲノム上のdnaN遺伝子の位置を 矢印で示す.

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0!

4!

! 3!

! 2!

! 1!

! 0!

0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

Ratio of read depth!

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0!

4!

! 3!

! 2!

! 1!

! 0!

0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

Ratio of read depth!

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0!

4!

! 3!

! 2!

! 1!

! 0!

0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

Ratio of read depth!

Location in S. 7942 genome (Mbp)!

0!

4!

! 3!

! 2!

! 1!

! 0!

0.5! 1! 1.5! 2! 2.5!

Ratio of read depth!

dnaN

dnaN

dnaN

dnaN

* *

* *

C

D B

A

3. 複製進行様式の解析

次に複製進行様式を調べるために明所に移行前後の 30分毎にBrdU によるパ ルスラベルを継続的に行った(Fig. 3-4)。BrdUラベルされたDNAを免疫沈降法 により精製し、ゲノム上の各位置特異的なプライマーを用いてqPCRによって解 析した。その結果、qPCR によるシグナルはdnaN遺伝子上流領域から初めに検 出された。このことよりRepli-seqの結果同様に、dnaN遺伝子周辺が複製開始点 であることが分かった。また次に検出されたのはdnaN遺伝子から両側にほぼ等 距離の領域であった(Fig. 3-4, Synpcc7942_2328 and Synpcc7942_0302)。一方、

dnaN 遺伝子の反対側に位置する領域(Synpcc7942_1001, Synpcc7942_1294, and

Synpcc7942_1595)では明所に移行後3時間半後に検出された。これらの結果よ

り、DNA複製は明所に移行し0.5〜1時間の間に開始していること、また複製は 両方向のシータ型複製機構であることが明らかとなった。

以上の結果より、S. 7942は他のバクテリア同様、dnaN遺伝子上流の oriC領 域から複製を開始しており、シータ型に進行することが初めて実験的に証明さ れた。

Fig. 3-4 精製したBrdUラベルDNAの定量PCRによる解析

同調培養後、明所に移行する前後において 0.5 時間 BrdU でパルスラベルした. BrdUラベルされたDNAは抗BrdU抗体を用いて免疫沈降を行い、これにより精 製された DNA を qPCR の鋳型として用いた. グラフに示す値は Dark(暗所で BrdUラベル)サンプルの値との差で示す. BrdUラベリング時間はそれぞれ: -0.5 - 0 h(Dark)、0 - 0.5 h(0.5)、0.5 - 1 h(1)、1 - 1.5 h(1.5)、2 - 2.5 h(2.5)、3 - 3.5 h(3.5)、4 - 4.5 h(4.5)、5 - 5.5 h(5.5)、6 - 6.5 h(6.5)、7 - 7.5 h(7.5).

0!

1!

2!

3!

Synpcc7942_1294

0!

0.2!

0.4!

0.6!

0.8!

1!

dnaN

0!

0.2!

0.4!

0.6!

0.8!

1!

Synpcc7942_0302

0!

0.2!

0.4!

0.6!

0.8!

1!

Synpcc7942_1001

0!

0.2!

0.4!

0.6!

0.8!

1!

Synpcc7942_1595

0!

0.2!

0.4!

0.6!

0.8!

1!

Synpcc7942_2328

Molecule number (x 108) Molecule number (x 108) Molecule number (x 108)

0680!

1943!

dnaN!

S. 7942 ! genome!

(2.7 Mbp)

0302!

2328!

1001!

1595!

1294!

Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5

Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5 Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5

0!

0.2!

0.4!

0.6!

0.8!

1!

Synpcc7942_1943

Molecule number (x 108) Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5

0!

0.2!

0.4!

0.6!

0.8!

1!

Synpcc7942_0680

Molecule number (x 108) Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5

Molecule number (x 107) Molecule number (x 107) Molecule number (x 107)

Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5

Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5 Dark! 0.5! 1! 1.5! 2.5! 3.5! 4.5! 5.5! 6.5! 7.5

4. DnaAによるDNA複製開始制御

上述したように多くのバクテリアにおいて DnaA というイニシエータータン パク質は複製開始制御の主要な因子である。そこでSynechococcusにおいてもそ の発現量、機能、さらにはその制御機構の解析を行った(Fig. 3-5、Fig. 3-6)。 はじめに作製した抗DnaA抗体を用いてDnaAの発現量の解析を行った。暗所 で同調後、明所に移行し6時間培養後再び暗所に移行しDnaAの細胞内存在量を ウエスタンブロッティングにて解析した。その結果、明所、暗所ともにDnaAの 発現量に変化は見られなかった(Fig. 3-5B)。そこで次に同様の培養条件下で DnaAのoriCへの結合能をChIP-qPCRにより解析した。プライマーにはoriCと その反対側に位置する領域特的なプライマーを用いて評価した。予想通り明所 において DnaAはoriC 特異的に結合することがわかった。驚いたことに、暗所 に移行するとこの結合能が顕著に低下することも示された(Fig. 3-5C)。この結

果より、Synechococcus において DnaA は量的制御ではなく、質的に制御されて

いることが分かった。光による制御が明らかとなったため、次にDCMU、DBMIB 添加による結合能の変化を検証した。その結果、DCMU、DBMIBどちらを添加 した条件においても、添加後30分で結合能の減少が見られた(Fig. 3-6C)。この ことから、光化学系電子伝達の活性化により、DnaAの結合能をコントロールす るという質的な制御の存在も明らかとなった。

Fig. 3-5 光によるDnaAのDNA結合能への影響

A) サンプリング時間を示す. 同調培養後、明所に移行し6 時間培養したのち、

暗所に移行した. B) ウエスタン解析の結果である. 明所、暗所におけるDnaA細 胞 内 タ ン パ ク 質 レ ベ ル を 検 証 し た. C) DnaA の oriC へ の 結 合 能 を 示 す.

ChIP-qPCRでのoriCでの値をter領域の値で割った値をグラフに示す.

DnaA

0 0.5 1 2 3 0.5 1 2 3

Light Dark

(h) CBB

Dark 0 1 2 3 Light 6h

Dark 18 h light

0!

10!

20!

30!

40!

50!

60!

70!

80!

0! 0.5! 1!

Light!

Dark!

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