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サブナノ秒パルスN_2レーザによる有機色素・葉緑体混合系の励起発光特性 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

サブナノ秒パルスN2レーザによる有機色素・

葉緑体混合系の励起発光特性

(昭和59年8月31日受理)

小岩井正浩

加瀬野雅隆 大堂伸介 武藤真三 伊藤千秋

Study of Excitation and Emission Processes

in Organic Dye-Chloroplast Mixture by

Using a N2 Laser with Subnanosecond Pulse

MasahiroKOIWAI MasatakaKASENO ShinsukeOHDO

ShinzoMUTO ChiakiITO Abstract   The excitation and emission processes in the mixture system of organic dye(coumarin−1) and spinach chloroplast have been studied. A simple N21aser which operates at atmosphere and generates a subnanosecond pulse was employed as the pumping optical source. On several samples in vivo and in vitro, the energy transfer from the excited coumarin−1dye to chloroplast occurred with a high transfer rate. The sensitized f玉uorescence of chloroplast was observed as aresult of this kinetics. 1. まえがき  最近,植物光合成の初期過程をモデルとした光エネ ルギー変換素子の動作開発1)や細胞内色素からの発光 を利用する医療診断2)など,生体色素の励起発光過程 を基礎とする研究・応用が注目をあびている。しかし, 一般にこれら生体色素からの発光は微弱であり,特に in vivo状態ではその観測がなかなか難しい。また,そ の際の光吸収と放出および分子間エネルギー移動など の過程は10−9秒以下と非常に短い時間内に生ずるの で3),その観測にはパルス幅の非常に短いレーザ励起 が必要となる。それゆえ,実用的な超短パルスレーザ の開発改良とそれを用いた生体色素発光の増感観測 は,上述のような研究・応用を進める上で有用な資料 を与えることになる。  その基礎研究の一つとして,本論文ではサブナノ秒 パルスの発生が可能な小型簡易の高気圧動作紫外N2 * 電気工学科,Department of Electrical Engineering レーザを製作し,またこの超短パルスレーザ光を用い て代表的な生体色素である葉緑体(Chloroplast)およ び有機色素・葉緑体混合系を励起した。その結果,こ れらのin vitroおよびin vivo状態における励起発光 過程がより明らかにされたので,その実験結果をここ に報告する。 2.小型簡易なサブナノ秒パルスN2レーザの製作  通常の2電極構造のブルームライン型N2レーザ装 置において,ナノ秒パルスレーザ光(波長337nm)を 得るのは比較的容易である。しかし,N2ガス圧を高く するとグm一放電が得られなくなって発振が停止す る。そこで,N2ガス圧が1atm付近でもグロー放電を 生ずるように自動的に予備電離動作する電極構造をも った図一1に示すようなN2レーザ装置を製作した。こ れは3電極ブルームライン型となっており,近接した 電極間の放電が予備電離作用をすることを期待したも のである。その動作特性は以下に述べる方法で測定し た。すなわち,高気圧動作時のN2レーザのパルス幅は

(2)

HV∼寸15kV

e_75。lff. ifV一

Ul 3 と ≧ ’巨2 ξ

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窪  0 10        PN2(O・7atm)

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  0       10 Distance X(cm) preioniZQtion eしectrode

       main discharge        eLectrode lzzzn Aし =コmylQr film    図一1N2レーザの構造図    Fig.1 Structure of N21aser 巴3 Σ ’2 2 £ こ1 窪  0 PN,(0・8。tm)

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    10       0       10          Distance X(cm) 図一3 T.P. Fパターンの観測例 Fig.3 T.P.F patterns observed at PN2ニO.7 atm    and O.8 atm.

口N・Lase「

CRT 200MHz       ,、ber 十       short PQss       fi lter<400 nm 図一2サブナノ秒パルスN2レーザ動作の測定系 Fig.2 Measurement system of N2 laser operation    with subnanosecond pulse width. 1ns以下となり得るので,通常の測定系では応答しな い。そのため,そのパルス幅の測定には非線形相関法 の一つである2光子けい光法(Two Photon Fluores・ cence:略してT.P.F.法)を用いた4)。ただし,紫外光 であるN2レーザ光のT.P.Fパターンを直接見ること はできないので,実験ではN2レーザ励起色素レーザ 光(色素としてはローダミン6Gを使用,波長約580 nm)のT.P.F.パターンを観測し,それからN2レーザ 光のパルス幅を見積もる。その実験系を図一2に示す。 T.P.F.セルは内径1mmφ,長さ12 cmの石英ガラス 製で,これにαNPO色素(1×10−2 mol/1)をシクロヘ キサンに溶かして入れ,一種の光導波路構造にし,2光 子励起されたαNPO色素のけい光を場所κの関数と して光ファイバーで受光している。このとき得たT.P. F.パターンの観測例を図一3に示す。同図より,N2ガス 10 ;

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      OO.5       1 N2 gQs pressure(Qtm) 3て〕  $

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 = 2亘  …  $  言  止 図一4N2ガス圧に対するN2レーザ出力とパルス幅 Fig.4 Peak power and pulse width of N21aser vs.    N2 gaS Pressure. 圧がO.8 atm付近で約200 psの超短パルスレーザ動 作していることがわかる。これに対して,予備電離用 電極をはずして通常の2電極ブルームライン型N2レ ーザとして動作させると,N,ガス圧が0.5 atm以上で は発振が停止した。このことから,図一1の3電極ブル ームライン型では自動予備電離効果が働いていること は明白で,これによってN2ガス圧が1atm以上でも 安定なレーザ発振が得られた。種々のN2ガス圧に対 するその動作特性の測定結果を図一4に示す。  このように,製作したN、レーザは小型簡易でかつ 高気圧動作が可能であり5),安定にサブナノ秒パルス レーザ光が得られることが明らかとなった。

(3)

3.有機色素・葉緑体混合系の サブナノ秒パルスレーザ励起  葉緑体は生体色素細胞の代表的なものの一つであ る。そのソレー帯の吸収域は有機色素クマリン1(以後 C1色素と略す)のけい光帯とちょうど重なる(図一5)。 それゆえこの混合系を光励起すると,励起エネルギー 移動によって葉緑体は効率よく励起されてそのけい光 強度が増加する,すなわち微弱な発光の増感観測など が可能になると考えられる。葉緑体から光合成色素を 分離抽出した場合のin vitro状態における同様の現象 についてはすでに報告したが6・7),本研究ではさらに, 沈励o状態を中心に葉緑体お」び有機色素・葉緑体混 合系の励起発光過程を,2章で製作したサブナノ秒パ ルスN2レーザを用いて調べた。試料は通常の方法8)で ホウレン草から抽出した。その際,tris−HCI緩衝液中 に抽出した懸濁液(in vivo状態)と可熱処理して80% アセトン中に抽出したもの(in vitro状態)を用意し た。  3.1 in vivo葉緑体のけい光特性  実験に用いた測定系は図一6のようである。このとき オシロスコープ上で観測される波形は試料の真のけい 光波形を表わさないが,測定系(光電管R617+200 MHzオシロスコープ)の応答が既知であれば,そのけ い光寿命を求めることはできる。  さて,N2ガス圧を1atm以上で動作させた図一1の N2レーザの超短パルス光(パルス幅≦150 ps)の測定 系を通して観測される波形は,その系のインパルス応 答とほぼみなせる。それゆえ,図一7の観測波形によく 合う次式の関数をもって測定系の応答関数とみなして き

璽3

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11

< 0   30C  400 500  6∞  700 Wave(ength(nm) 図一5 クマリン1色素(C1)とホウレン草葉緑体の吸   収およびけい光スペクトル Fig.5 Absorption and fluorescence spectra of    Coumarin−1 dye and spinach chloroplast cetL

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monochromQtor        高『7

 subnQnosecond  putse N2 taser 図一6 けい光特性の測定系 Fig.6 Experimental setup of    meaSUrement

■薩麺■■

隔厭輔隔隔

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C.R.0 200 MHz fluorescence i…       t=0       10n5/dlv       10ns/div (Q) N2 taser wGveform   (b)responce f(t)   o∩C.R.()(N2=1Qtrn) 図一7サブナノ秒N2レーザパルスのオシロスコープ   上の観測波形と測定系の応答関数の近似波形 Fig.7 0bserved waveforms on CRO of N21aser    with 150 ps pulse witdth(a)and responce    of measurement system(b). よいであろう。 ゾ(t)一…〔一(1[ゴ)2),・〈t〈3・・       (1)    一・ech2(t−31.5),3・・〈t  ただし,tはナノ秒で表わした時間である。  一方,励起状態色素分子密度nに対するレート方程 式は,励起が弱いときには

禦一・…(t)N一考    (2)

で与えられる。ここで,∼Vは色素濃度,σaは励起波長 における吸収断面積,およびτノはけい光寿命である。 lp(t)は励起割合で,サブナノ秒パルスN2レーザの波 形をガウス型と仮定すれば

・p(t)一…x・〔一(÷)2]  (3)

 ただし,τ1=τp/2Vfill,τp:N,レーザのパルス幅 と表わせる。1。は励起割合の最大値である。  式(3)を式(2)に代入し,1=0でn=0の初期条件の

(4)

もとで解くと,n(1)は形式的に次式のようになる。 〃・(1):= ・…N・x・(一〃・・)f.‘ex・

     〔ξ一(/÷‡レ  (4)

 けい光強度はこのn(t)に比例する。オシロスコー プ上のけい光波形F(t)は,測定系の応答ノ(t)とこの ノ∼(/)のたたみ込み積分として F(t)一叫㌔一・)n(・)d・ (5) で与えられることになる。ここで,F』は定数である。  図一8には,τゾをパラメータとして,式(4)から得られ る真のけい光波形と式(5)から得られるオシロスコープ 上の波形を計算して示した。また,同図にはτプ=1.6 11sと既知のジメチルPOPOP色素を用いて観測した 実験波形も示してある。式(5)の計算では,応答関数が 約0.15nsのN2レーザパルス幅を含むことになるの で±0.15ns程度の誤差が入るが,τf=1.5 ns付近の 計算波形は実験結果とよく一致していることがわか る。また,in vivo葉緑体のけい光観測波形も同様に図 一8に併せて示したが,この結果と計算に含まれる誤差 を考慮すると,in vivo葉緑体のけい光寿命は350 ps 以下と見積もれる。  3.2C1色素・葉緑体混合系のエネルギー移動     と発光  つぎに,有機色素Clと葉緑体混合系の励起発光過程 を研究した。サブナノ秒パルスレーザ励起を行ってい るので,ナノ秒単位での時間分解分光は可能である9)。 in vitro状態で観測したドナー色素Clのけい光帯域 1.e 二 9 二 ・6 ‘ 三z.5 巴 8 8 9 8 〔   z 1いい いい 5 τf=00nsec   O2   05   10   1.5   2,0 におけるそのスペクトル変化を図一9に示した。同図で はけい光強度がピークとなる時間をt=0とし,それ 以後の変化が示されている。Cl色素のみ(a)のときと比 較すると,葉緑体との混合系(b)において,エネルギー 移動に起因するけい光減衰時間の変化が明らかに見ら れる。また,葉緑体は数種類の光合成色素の混合系で あるが,仮にその濃度をNaとすると,このCl色素・ 葉緑体混合系でのCl色素けい光寿命τdはStern・ Volmerの関係式1°)  τd。/τ。=1+んN。τ。。        (6)

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12

‖ 皇  0 (b)Cl−chloropla与t      mixture Time(nsec) ll 図一8 試料けい光の真の波形とオシロスープ上の波形   計算結果と実験結果 Fig.8 Calculated fluorescence waveforms of    samples(…true and−on C.R.0)and    experimental results(O dimethyl・POPOP    and●chloroPlast). 15 400    450    500   550400   450    500    550         Wqvelength(nm) 図一9C1一葉緑体混合系(80%アセクトン中)における   C1色素けい光の時間分解分光 Fig.9 Time−resolved fluorescence spectra of    Coumarin−1 as a donor. Coumarin−1    concentration is 1×10−4 mol/l in 80%    acetone. (a)Coumarin−1 alone and(b)    Coumarin−1−chloroplast mixture. 1.5

B

さ β 1.0 Nc1=3x1σ4 rnol/1 Cl−ch(oroplast mixtu陀   0      (ユ5x108      10x1 08          kNq(sec−|) 図一10 C1一葉緑体混合系におけるC1色素のけい光寿    命変化とエネルギー移動による遷移確率の間    の関係 Fig.10 Fluorescence lifetime of Coumarin−1 dye    in C1−chloroplast mixture as a function of    kNa, where k三s energy transfer rate and    Na is chloroplast concentration.

(5)

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92

亘 看 ち ≧ ゆ s 互1 8 5 8 巴 8 己 Cl−chtoroplast mixture     o in 80『To acetone     ●in buffer solution 0       2x1 O一4      4x10−4   Coumarine 1 concentration(moUl) 図一11 葉緑体けい光強度のC1色素依存性 Fig. 11 Fluorescence intensity of chloroplast as a    function of Coumarin−1 dye concentration. に従って変化することが実験的に確認された。ただし, τd。はCl色素のみのときのけい光寿命, kはC1色素・ 葉緑体間の実効的エネルギー移動速度定数(ん1V。はそ の遷移確率を与える)とする。この式(6)に対応する実 験結果を示したのが図一10である。衝突移動による遷 移確率が普通∼107s−1程度であることと比較すると, 図一10のCl色素・葉緑体間エネルギー移動による遷移 確率は∼108 s’iで非常に大きいことがわかる。  上の結果は,葉緑体けい光強度の増加すなわち増感 けい光観測の可能性を与えた。そこで,680nm付近の 葉緑体けい光強度のCl色素濃度依存性を調べた。その 結果を図一11に示す。観測されたけい光増感はそれほ ど大きくないが,in vivo状態でもドナー色素濃度が(1 ∼2)×10−4 mol/1付近でその増加が明らかに見られ る。Cl色素濃度がさらに高くなるとけい光強度は減少 し始めたが,これはこの混合系において非励起Cl色素 による濃度消光や他の失活過程も同時に存在し,その 影響もまた相当に大きいことを表わしている。 4.む す び  励起準位寿命の短い生体色素などの励起発光過程を 調べるため,まず小型簡易で高気圧動作が可能なN2 レーザを製作した。その動作特性の測定から,本装置 はN2ガス圧が1atm付近でも安定に動作してサブナ ノ秒パルスレーザ光が得られることが示された。また この超短パルスレーザ光を励起光源として用い,葉緑 体および有機色素・葉緑体混合系の励起発光特性を研 究した。その結果,in vivo状態葉緑体のけい光寿命の 見積もりや,Cl色素・葉緑体混合系の時間分解スペク トル測定が可能となり,またこれらの混合系における エネルギー移動と発光の過程がより明らかにされた。 ここで得た以上の結果は,他の生体色素系の励起発光 過程の研究・応用に対しても有用な資料を与えると考 えられる。  終わりに,有益な助言を賜った本学電気工学科伊藤 洋教授,中川恭彦助教授,中沢章助手ならびに装置製 作に協力いただいた機械工場の方々に深謝する。 文 献 1)高分子錯体研究会(山田瑛他編):“光エネルギー変換”,第   5章,学会出版センター(1983) 2)B.R. Doiron, E. Profio, R.G. Vincent and TJ. Dougherty:   t’Fluorescence Brochoscopy for Detection of Lung Can−   cer”, Chest.,76, No.1, pp.27−32(1979) 3)W.Yu.F. Pellegrino and R.R. Alfano:ヒTime−Resolved   Fluorescence Spectroscopy of Spinach Chloroplast”,   Biochim. Biophys. Acta.,460, pp.171−181(1977) 4)日本化学会編:t’ナノ,ピコ秒の化学”,第3章,pp.41−68,   学会出版センター(1979) 5)小岩井,大堂,加瀬野,武藤,伊藤:”3電極ブルームライン   型の小型簡易な高気圧動作N2レーザとその応用”,第31回   応用物理学関係連合講演会予稿集,30a−L−1(1984) 6)小岩井,芝,武藤,伊藤:”ナノ秒レーザ光励起による有機   色素・光合成色素混合系のエネルギー移動発光(1)”,梨大工   学部研究報告,34,pp.63−68(1983) 7)武藤,小岩井,芝,伊藤:t’レーザ色素・光合成色素間エネ   ルギー移動と発光”,第30回応用物理学会連合講演会予稿   集,7a−Z−1(1983) 8)生物化学実験研究会編:“生物化学実験法”,pp.213−222,朝   倉書店(1964) 9)武藤,小岩井,大堂,加瀬野,伊藤:”有機色素葉緑体混合   系のエネルギー移動と発光”,応用物理,53,No. 10(1984)pp.  901−903 10)小岩井,大堂,加瀬野,武藤,伊藤:t’有機色素クロロプラ   スト混合系のN2レーザ励起とエネルギー移動発光”,第44   回応用物理学学術講演会予稿集,25a−D−10(1983) 11)C.Lin and A. Dienes:¶tStudy of excitation transfer in  laser dye mixtures by direct measurement of fluorescence  lifetime”, J. AppL Phys.,44, No.11,(1973)pp.5050−5052

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