量詞と形容詞の共起関係について
― 描写対象の認知体系に着目して
井 出 克 子
(大阪市立大学・院) 提要 关于量词和形容词的搭配问题,有的学者已经做过了详细的研究, 如邢福义1965、刘焱 1999 等。但这些研究只涉及到句子里的量词和形容 词,并未着眼于形容词所描写的对象。我们说“一片漆黑”时,联想到的 描写对象就是夜色,而不是涂满墨汁的纸。那么,这里有什么样的规则 呢? 本文试图以视觉描写为中心,探究描写对象的认知过程,指出“量词 +形容词”结构的一个成立条件,即描写对象不具有明确的轮廓(=“界”), 而且无论从平面还是空间角度来讲,都具有无限性。此外,还对五感描写 中除视觉以外的听觉、味觉等进行了简单的考察,比较了各种感觉的量词 和形容词的搭配情况,从中看出了通感现象的影响。 关键词 量词 形容词 认知 界 通感 0.はじめに 人や動物、乗り物、机などは、いずれも個体数としての数量を持つ。ま た、個体として一定の量は持たなくても、水のような液体も、コップで一 杯、二杯、……と、その数量を量ることができ、さらには、「ひと蹴りする」、 「二往復する」など、具体的な物質ではない動作も回数として数えること が可能である。このように、量詞が名詞や動詞と共起することは言語現象 としてごく普遍的に見られるのだが、中国語では、量詞と名詞或いは動詞 との共起だけでなく、さらに“一片漆黑”、“一脸红”の“漆黑”、“红”と いった形容詞との共起も確認することができる。しかし、このように言語 現象として「数詞+量詞+形容詞」構造が成立しているにもかかわらず、 文法書等でこの構造が一項目として取りあげられてはいない。これは、名 詞や動詞と異なり、形容詞が明確な数量を持つ具体的な概念として見なさ れにくいことが大きな要因の一つであると考えられる。 そこで本稿では、認知の視点から、量詞と形容詞の間に見られる選択関係を分析・検討し、中国語では形容詞をどのように捉えその量を見いだし ているのか、また、その認知過程にはどのような特徴が見られるのかにつ いて考察する。 量詞と形容詞の共起は描写性の強い表現に多く用いられるため、口語表 現においては、かなり固定した表現以外は使用頻度が下がる傾向が見られ る。そのため、ネイティブチェック1)による許容度の判断にも個人差が見 られ、そこに明確な線引きを行うことは困難である。そこで今回は、ネイ ティブチェックで揺れのある用例も含め、主に小説データで確認できるも のを取り上げて検討を進めていくこととする。 また、用例中の量詞には囲みをつけ、共起する形容詞はアンダーライン を付し、必要の際には、描写対象を波線で示す。 1.先行研究 量詞と形容詞の共起関係については、早期の研究として邢福义 1965 が 挙げられる。その内容を簡潔にまとめると、“一丈长―”、“八公斤重―”の“丈”、 “公斤”といった、度量衡に関する量詞が形容詞を修飾できるという立場 から、その文法構造上の特徴を述べているに過ぎない。 これに対し、刘焱 1999補注 )は、度量衡に関するもの以外でも形容詞を 修飾できるとし、形容詞との共起が確認できる量詞を、度量量词、比況量 词(“一巴掌大 ―”)、摹状量词(“一片漆――黑”)、空间量词(“一脸红―”)、时间 量词(“一阵漆 ――黑”)、其他量词(“一些自――卑”)の 6 つの小グループに分類 している。 [表 1] 度量量词∶丈、尺、寸、斤、米…… 比况量词∶人、脚、指、搂、抱、步、巴掌、竹竿 …… 摹状量词∶片、团、丝、线、缕、股、抹、点2、星 …… 空间量词∶脸、身、腔、肚子…… 时间量词∶阵…… 其他量词∶点1、些、分、份…… (刘1999)
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[表 2]2) (刘1999) 度量量词─量度形容词 比况量词─量度形容词 颜色形容词=
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片类─ 氛围形容词 摹状量词 性情形容词 颜色形容词=
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丝类─ 心里状态形容词 表情形容词 空间量词─ 脸色形容词=
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心里状态形容词 时间量词─ 脸色形容词=
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{
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[表 1]はそれぞれの小グループに属する代表的な量詞、[表 2]は分析 の結果導き出された各小グループの量詞と共起する形容詞の属性である。 形容詞の具体例については紙面の都合上省略するが、刘 1999 はその意味 特性に着目して形容詞のグループ化を行っており、量詞と形容詞の共起関 係について詳細な検討が行われているといえよう。しかし筆者は、さらに 以下の点について再検討を行う必要があるのではないかと考える。 まず、6 つの小グループに見られる共起関係の特徴を比較してみると、 これらは大きく 2 類に分かれる。すなわち“度量量词”、“比况量词”と“摹 状量词”、“空间量词”、“时间量词”、“其他量词”の 2 類である。この一つ の理由として、まず共起可能な数詞の性質が関与していよう。先にいくつ か挙げた例はいずれも数詞“一”と共起したものであったが、以下の例か らもわかるように、“度量量词”、“比况量词”は“一”以外の具体的な数 詞と共起可能である。これに対し、他の小グループではその数詞を“一” 以外には置き換えることはできない3)。 A:三米高―(度量量词)、五巴掌大 ―(比况量词) B:* 两片漆――黑(摹状量词)、* 四脸枯 ――黄(空间量词)、* 一阵漆――黑(时 间量词) さらに、“度量量词”、“比况量词”は、程度を表す形容詞“高、远、长、 厚、宽、深、重”などとは共起可能であるのに対し、その反義語対である “矮、近、短、薄、窄、浅、轻”とは共起しない。 * 三米矮―、*五巴掌小 ― 以上の 2 点から、筆者は“度量量词”、“比况量词”と共起する形容詞は すでに、「高さ」、「距離」といった一定の数量を持つ概念として捉えられ ており、邢 1965 も示したように構造上は形容詞であっても、認識として は名詞的成分として捉えられていると理解すべきだと考える。これについ ては、筆者が行ったネイティブチェックにおいても同様の回答が多く得ら れている。そのため本稿では、“度量量词”、“比况量词”に属する量詞に ついては検討対象外とした。 次に、“空间量词”について、刘 1999 のいう“空间量词”をみると、確 かに“腔”、“肚子”は容器としての一定の空間的広がりを持っているのだ が、“脸”、“身”は容器としてではなくあくまでもそのものの表面が描写
対象であり、これらを“空间量词”というグループにまとめてしまうのは いささか無理があるように思われる。 最後に、[表 2]にアンダーラインで示したように、量詞と共起可能な 色彩形容詞は複数の小グループにまたがって分布している。刘 1999 では、 その色彩形容詞間に見られる傾向、例えば形容詞の描写対象の特徴による 共起関係の差異などについては特に触れていないが、量詞の選択は、描写 対象の特徴によっても大きく左右されるものであり、量詞と形容詞だけに 着目するのではなく、やはりその描写対象を含めた検討が必要なのではな いかと考える。 以上のことから、本稿では主に刘 1999 のいう“摹状量词”、“空间量词” を取り上げ、形容詞の描写対象の分析を通して、認知の視点からそこにみ られる規則性を確認する4)。また、「数詞+量詞+形容詞」の共起関係は、“一 丝不 ――安”のように抽象物を描写対象とする場合にも多く確認できるのだ が、今回は、描写対象が比較的イメージしやすい視覚的描写を検討対象の 中心とし、最後に視覚以外の感覚描写、すなわち、聴覚、味覚、嗅覚、触 覚の描写について補足的に取り上げる。ただし、刘 1999 のいう“时间量词” も視覚を描写対象としているが、この場合、描写対象は視覚そのものでは なく時間量であるため、これについても本稿では検討対象外とする。 2.視覚描写 視覚描写は大きく「色彩」と「明暗」に分けることができるが、「数詞 +量詞+形容詞」構造が確認できるもののほとんどは色彩描写である。そ こで、ここでは色彩描写についてその描写対象を「平面的広がり」、「空間 的広がり」、「個体の表面全体を覆う色」、「線的広がり」に分けて検討を進 めていく。 2.1. 平面的広がり 平面的広がりは、共起する量詞が持つ特徴からさらに「視界全体」への 広がりと、ある平面上の「部分」を占める広がりという 2 類に分類するこ とができる。 2.1.1. 視界全体 まず、用例を見ていただきたい。
(1) 走到窗前,外面一片雪――白,昨夜竟然悄无声息的下了一场雪,……。 (窓の前まで行くと、外は一面真っ白で、昨晩なんと音もなく雪が 降ったようで、……。) (2) 平静无波的大海表面,一眼望去,除了一片深――蓝,根本看不到任何 的事物。 (静まりかえった大海原の表面は、一望すると、一面の深い青色以 外、まったくもって何も目にすることができなかった。) (3) 雨后的草原更加是一片葱――绿,空气清新。 (雨が降ったあとの草原は、さらに一面の緑が加わり、空気は新鮮 だった。) この例から、「視界全体」の広がりとは具体的に、窓前に広がる景色、 大海原、草原といった、その輪郭をつかめないほどの果てしない平面的広 がりを指すことが明らかである。この場合、量詞は“片”のみが選択され るのだが、これについては“片”が名詞と共起する場合に、“一片大〰〰海”、“一 片草 〰〰原”のように果てしなく広い平面を描写対象とすることからも理解 しやすい5)。 これに対し、同様に量詞“片”と共起して平面全体への広がりを描写し ていても、用例 (4)、(5) の画面や写真のように、その描写対象の輪郭がはっ きりと認識できる場合も確認することができる。 (4) 那窃录机只有小米颗粒大小,接收机略大一些,也只有一个手掌大。 ……突然,接收器上的屏 〰〰幕一片漆――黑,接着耳机里传来竺斐的一阵 可怕的吼叫声。 (あの盗撮機はたった米粒ぐらいの大きさしかなく、受信機はやや 大きめだが、それでも手のひらサイズしかなかった。……突然、 受信機の画面が一面真っ黒になり、続けてイヤホンから竺斐の恐 ろしい叫び声が聞こえてきた。) (5) 这种情况多发生在二手数码相机,……有时由于 CCD 损坏但在拍摄 时一切正常,直到电脑下载照片时才发现照 〰〰片一片漆――黑,……。 (このような状況は中古のデジタルカメラによく起こることで、 ……ある時は、CCD が故障していても撮影時にはすべて正常だっ たため、パソコンに写真をダウンロードした時に初めて写真が一
面真っ黒であることに気が付き、……。) このようなケースで確認できる描写対象は、ほぼ画面や写真に限られ る。では、画面や写真と、先に見た大海原や草原にはどのような共通点が あるのだろうか。 そこで、[図 1]を見てみよう。 画面や写真は、カメラのレンズを通して切り取られた平面である。しか し、発話者の目に映っているのはその枠中に写し出された情景であり、画 面や写真の枠は発話者の意識内には含まれていない。すなわち、このとき 我々は「カメラのレンズ」=「人間の目」を通して対象物を認識している のであり、本来限られた平面上に存在しているその情景は、発話者のイ メージの中で眼前に広がる平面的広がりを展開しているのである。そのた め、画面や写真は結果として用例(1) ∼ (3) と同様の認識過程を経ている と考えられ、「数詞+量詞+形容詞」構造が許容されるのである。逆に、 このようなイメージが喚起されない描写対象、たとえば[図 2]のように、 単に一面真っ黒な紙を描写する場合には“* 那张纸〰一片漆 ――黑”と表現する ことはできない。この点からも、量詞と形容詞の共起には、その描写対象 が「際限なく広がる視界全体への広がり」という成立条件が必要であるこ とを裏付けることができるだろう。 さらに、用例(4)、(5) でそれぞれ“突然”、“才”が用いられていること からもわかるように、描写対象となる画面や写真は最初からある色を呈し ているのではなく、その色が突然出現する、あるいは突如認識されるケー スがほとんどである。逆に、例えば写真が最初から一面真っ黒であった場 合、それは先に挙げた一面真っ黒な紙と変わらない。そのため、「数詞+ 量詞+形容詞」構造の許容度がやや下がる傾向があり、ここでもやはり、
画面や写真がレンズという目によって実際の情景から切り取られた平面で ある、という性質を指摘することができる。 ただし、同様に視界全体への平面的広がりを描写対象としていても、用 例(6)“一片花――――花绿绿的世 〰〰界”の描写対象を省略してしまうと、落ち着き の悪い表現となる。これは、“在”に導かれることでその描写対象が明確 に「場所」として認識されるためであり、この場合はやはり、“世界”の ような描写対象を明示する必要があると考えられる。 (6) 圣诞节的购物人潮比往常的假日更多,一下子那白色的身影就淹没 在一片花 ――――花绿绿的世〰〰界里。 (クリスマスの買い物に来た人波は、いつもの休日より更に多く、 すぐさま白い姿は一面の色とりどりの世界に埋もれてしまった。) (6)' ?? 淹没在一片花――――花绿绿里 2.1.2. 部分 次に、平面上の「部分」を占める広がりについてであるが、ここで確認 できる量詞の主なものとしては“抹”、“片”、“丝”が挙げられる。 (7) 天色已经蒙蒙亮了,远方的天空出现一抹鱼―――肚白,……。 (空の色はすでにぼんやりと明るくなって、遠くの空にはひとすじ の青白い色が現れ、……。) (8) 萧青峰苍白的脸上泛起一片微――红,心道: (蕭青峰は青白い顔に一片の薄紅色を浮かべ、心の中で言った。) (9) 鲁先生正在书案上写着什么,见如雪进来,便含笑点了点头,如雪 脸上莫名地涌上一丝微 ――红,忙低头行了行礼,至对面书案前缓缓坐 下。 (魯さんはちょうど書斎机で何かを書いており、如雪が入ってくる のを見ると、微笑みながら少しうなずいた。如雪の顔には、なぜ だかわからないがひとすじの薄紅色が浮かび、慌てて頭をさげ ちょっと挨拶をして、向かいの書斎机の前にゆっくりと座った。) 用例 (7) の明け方の空の色には“抹”が、用例 (8)、(9) の頬がほんのり 赤くなる様子にはそれぞれ“片”、“丝”が用いられているのだが、各量詞 のイメージを図示すると[表 3]の各図のようになる。
“抹”は、名詞と共起する場合と同様に長くたなびくイメージが伴うた め、描写の焦点が「帯状の広がり」とまとめられるのは理解しやすい。こ れに対し“片”、“丝”は、用例(8)、(9) で同じ描写対象について用いられ ていることからも推測できるように、[図 4]、[図 5]はいずれも類似した イメージ図となっており、両者は一見ほとんど区別がないかのようにも思 われる。しかし実際には、それぞれの量詞から受け取られるイメージは異 なり、“片”は[図 4]に点線で示したようにその色の広がり、すなわち その色が存在している範囲を表し、“丝”は、ほんのりと浮かび上がるよ うな色彩に焦点があり、範囲の広がりは意識されていない。そのため、“片” の描写の焦点は「一定範囲の広がり」とまとめることができるのに対し、 “丝”で表される描写対象は、“片”と同様に一定範囲の広がりを持つ色で あっても、強調されているのはその色のかすかさ、すなわち程度であり、 その描写の焦点は「かすかさ」と表すことができるのである。 以上、各量詞の描写の焦点を確認したが、ここで重要なのは、それぞれ の描写対象となる「部分」がいずれも明確な輪郭をもたない、或いは意識 されていないという点である。そこで、次の用例を見てみよう。 (10) 在飞行表演中,飞机有时会拉出一条彩〰〰〰〰色烟带,有时是红色的,有 时是蓝色或黄色的,……。 (演技飛行中、飛行機はある時はひとすじの色の付いた煙を出し、 それはある時は赤色、ある時は青色、或いは黄色をしており、 ……。) (11) 在脸颊上圆………圆 地 涂 上 粉 红 色可以变得很可爱。 [表 3] [図 3]“抹” [図 4]“片” [図 5]“丝” 描写の 焦点 帯状の広がり 一定範囲の広がり かすかさ 範囲 程度
(頬にまん丸くピンク色を塗ると、とてもかわいらしくなる。) 用例 (10) は空に映えるカラフルな煙幕、用例 (11) は頬にまん丸く塗ら れた化粧品が描写対象であり、それらはいずれも背景から際立っているこ とが前提となっている。このように描写対象が明確な輪郭を持つ場合、用 例 (10) の“一条彩〰〰〰〰色烟带”のように、「細長いもの」という形状が明確に イメージされる量詞“条”が選択され「数詞+量詞+名詞」の形式が用い られたり、用例 (11) に点線で示したように、数量構造ではない別の表現 形式が選ばれる傾向が強くなる。これは、描写対象と背景との境界線が強 く意識されることで、その対象が一個体として認識されてしまうためであ り、「数詞+量詞+形容詞」では落ち着きが悪くなるのである。 では、次のような場合はどうであろうか。 (12) 她的脚顺便朝桌上一放,茶壶踢得滚下来了。小莺立刻翻起来,面 孔是土色。……整个的土色添了颊上一块红 ―,两个指头掐的。 (彼女が足をなにげなくふと机の上になげだすと、その勢いで急須 が転がり落ちてきた。小鴬はすぐに飛び上がり、顔は土気色をし ていた。……顔一面の土気色に、頬の一片の赤色が添えられ、そ れは二本の指でつねった迹だった。) 用例 (12) は量詞“块”と形容詞との共起例である。“块”は“一块 面 〰〰包”のように、聞き手にその形状を比較的はっきりとイメージさせうる 量詞であり、これまでの分析結果に照らせば、この時点ですでに成立条件 を満たしていないことになるだろう。しかし、これはネイティブチェック でも定着度が高いことが確認できており、該当する量詞はほぼ“块”に限 られることから、これはある平面上の部分的な色を強調する場合に用いら れるやや特殊なケースと思われる。 また、同様に描写対象の輪郭がはっきりとしているケースとしては、次 例 (13) の“一抹乌――黑”が確認できた。 (13) 龙行风冷静的微笑,抹去她眼下的一抹乌――黑,“你的脸脏了。” (龍行風は冷静にほほえみ、彼女の目の下にあるひとすじの黒色を ぬぐい去った。「君の顔が汚れているよ。」) 肌の上に黒い汚れがついていれば、用例 (11) でみた化粧品と同様に、 その色は際立ったものであるといえるだろう。しかしここでポイントとな
るのは、量詞“抹”が筆で線を引くような動作を痕跡として強く意識して いる点である。すなわち、確かにその痕跡は帯状の広がりを呈してはいる が、あくまでもその動作の結果としてある色が平面上の一部分に広がって いることを描写しているのであり、やはり境界線は意識されていないので ある。 2.2. 空間的広がり 以上、平面的広がりについてその共起関係を観察したが、次に空間的広 がりを描写する場合について考えてみる。そこでまず、用例を見ていただ きたい。 (14)“我知道了,医院里到处是一片白―,又单调又无聊,……。” (「俺はわかったよ、病院の中は至る所一面が白で、単調でつまら ない、……。」) (15) 晚上十一点多钟看到有两个到大坨沙的人下了车,也跟着下了。下 了车四周一团漆 ――黑,并没有车站,近处连房子也没有,……。 (夜 11 時過ぎに大坨沙に向かう 2 人の人が車から降りるのを見て、 一緒に降りた。車を降りると辺り一面真っ暗で、停留所もなく、 近くには家さえもない、……。) (16) 那天晚上汤潘回家挺晚。打开门,客厅里一团漆――黑。 (その夜湯潘は家に帰るのがとても遅かった。ドアを開けると、客 間中真っ暗であった。) これらはいずれも、建物中が真っ白である、辺り一面または部屋中が 真っ暗である、といった、ある空間全体を占める色彩の描写であり、平面 的広がりを描写対象とする場合と同様に、その空間は境界線が意識されな い果てしない広がりとして認識されている。用例 (14)、(16) は部屋の中の 描写であり、実際には区切られた空間であるが、例えば用例 (16) での発 話者は視界のきかない暗闇の中におり、まるで闇夜の中にいるかのような イメージがなされていると考えられ、認識としては用例 (15) と共通して いると考えるべきである。 また、その空間は「果てしない広がり」という条件を持つことから、さ らに発話者がその空間の中に存在している、或いは存在可能であることが 必要条件となる。そのため、その空間の占める範囲が狭まればその許容度
は下がり、[図 6]の小箱のように人 間がその中に存在できないほどの狭 い空間の描写にはこの共起関係は許 容されにくい。 さらにここで興味深いのは、“一 屋子 人 ―”のように、名詞を伴う場合 には頻繁に用いられる借用量詞と共 起した「数詞+借用量詞+形容詞」の 許容度が低い、という点である。そこで、用例 (17)、(18) を比較していた だきたい。 (17) 后来他关掉了灯 , 屋子里一片漆――黑 ,……。 (その後彼が明かりを消すと、部屋の中は真っ暗になり、……。) (18) 推开门的一瞬间 , 看到的却是一屋子漆――黑。 (扉を開けた瞬間、目に入ったのは部屋全体に広がる真っ暗闇で あった。) これらはいずれも室内が真っ暗な様子を描写しているのだが、ネイティ ブチェックの結果では、用例 (18) のように借用量詞“屋子”を用いた場合、 用例 (17) の“片”、或いは“团”を用いた場合より許容度が下がるという 回答が多く得られている。 そこで、それぞれの認識方法をイメージ化すると[図 7]、[図 8]のよ うになる。 [図 7]は借用量詞を用いない場合のイメージであるが、描写対象とな る空間を点線で示したことからもわかるように、描写の着眼点はその対象 となる空間そのものにあり、その周囲を取り巻く空間との境界線(ここで
は部屋の壁や天井)が全く、或いはほとんど意識されていない。逆に、[図 8]“一屋子漆――黑”のように借用量詞が用いられた場合には、まず喚起さ れるのは外界と明確に区切られた「部屋」という空間であり、「果てしな い広がりを持つ空間」という条件が満たされない。そのため、借用量詞と 形容詞との許容度は低くなると考えられ、これは、2.1 で述べたように、 平面的広がりについて「背景との境界線が意識されるかされないか」がポ イントとなっていたこととも共通する点である。 一 屋子 绿―――幽幽的月〰〰色/白―――茫茫的光〰/黑〰〰暗 一 屋子* 绿 ―――幽幽 / * 白―――茫茫 / ? 漆――黑6) 2.3. 個体の表面全体を覆う色 2.2 では空間的広がりについて触れたが、ここでは描写対象は同じく三 次元的広がりを持っているが、描写の焦点がその空間ではなくある個体の 表面にある場合について考えてみる。 (19) 这有什么好害羞的,她居然一脸通――红。 (何が恥ずかしいというのか、彼女は意外にも顔一面が真っ赤に なった。) (20) 喜庆的日子,二姐自然是穿了一身红―,红棉袄,红棉裤,……。 (おめでたい日に、二番目の姉は当然のように全身赤いものを身に つけ、赤い綿入れや、赤い綿入りズボン、……。) 用例 (19)、(20) では量詞“脸”、“身”が用いられているが、この共起関 係は身体部位を借用量詞とし、且つ皮膚のようにその部位全体を覆ってい る場合に限られる。しかし、たとえ身体部位であっても、鼻・耳・てのひ らなど表面積の狭いものは単体ではなく顔や身体の一部分として認識され るため、“* 一鼻子/巴掌红―”などは許容されないようである。 ただし、単体と見なしうる描写対象の表面がいくら同じ色で覆われてい たとしても、ひげや髪の毛など、何かの集合体によってその表面全体が埋 め尽くされてその色を呈している場合、次例 (21)、(22) のように、量詞の 後にはその描写対象が現れてくる。これは、描写の焦点が表面全体から表 面全体を埋め尽くしているものへと移行し、その形態が意識されてしまう ためであろう。 (21)“他有胡子没有?”春儿还是问。“一脸黑―胡 〰〰〰〰子碴儿。”芒种说。
(「彼はひげを生やしていましたか?」春児はやはり尋ねた。「顔一 面黒いひげでした。」芒種は言った。) (22) 商正顺着他指的方向看去,只见那人有着一头乌――黑的短 〰〰发,……。 (商正は彼の指す方向を見やると、ただその人の頭一面が黒い短髪 であることを見てとれた。) 集合体が呈する表面色の描写について言えば、借用量詞以外にも次例 (23)、(24) のように“团”を量詞とした「数詞+量詞+形容詞」を確認す ることができる7)。 (23) 远远望去,岛上郁郁葱葱,一团绿―、一团红 ―、一团黄―、一团紫―,端 的是野花似锦。 (遥か遠くを見やると、島は草木が青々と茂っており、一群の緑、 一群の赤、一群の黄色、一群の紫と、確かに草花が錦のようであ る。) (24) 母亲将苞谷放到锅子里猛火爆炒,……把锅盖揭开,只见朵朵“小 棉花”堆在锅里,一团雪 ――白。 (母親はトウモロコシを鍋に入れて強火で炒め、……鍋のふたを開 けると、一つ一つの「小さな綿花」が鍋の中に積まれており、一 群の白色をなしていた。) ただし、これらはあくまでも集合体の描写に限られる。そのため、例え ば「トーストがまる焦げになった」状態を“* 面〰〰包烤成一块黑 ―”とは描写 できず、“面包”のような独立した単体の表面を描写するには、やはり「数 詞+量詞+形容詞」構造を用いることはできないのである。 2.4. 線的広がり 以上、平面的広がりと空間的広がり、すなわち、二次元的広がりと三次 元的広がりを持つ描写対象について、量詞と形容詞の共起傾向を確認して きたが、両者に共通する特徴は、いずれも一定範囲の広がりを持ち、且つ 背景もしくは周囲との境界線が意識されていない、という点であった。で は、平面や空間のような広がりを持たない線的広がり、すなわち一次元的 広がりについては、この構造は許容されないのであろうか。そこで次の例 を見てみよう。 (25) 那圣剑剑身墨黑,锋面一线白―。
(その聖剣の刀身は墨のように真っ黒で、峰はひとすじの白色をし ていた。) 用例 (25) で量詞“线”が用いられていることからもわかるように、あ る平面上の一次元的広がりを描写する“线”も形容詞との共起関係が確認 できた。“线”の描写対象はそもそも背景から切り取られるだけの一定面 積を持たず、背景との境界線が認識できないため、背景と描写対象との色 彩コントラストの強弱による影響も多分に受けていると考えられる。しか し、やはり境界線が意識外にある点では共通しており、同様に細長いもの を描写していても、それが明確な幅をもち“线”ではなく用例 (25)' のよ うに“条”で描写されるようになると「数詞+量詞+形容詞」構造は許容 されなくなることからも、境界線の認知が重要なポイントとなっているこ とが証明できる8)。 (25)' *锋面一条白― 3.視覚以外の感覚的描写 2 章では、視覚描写において確認できる「数詞+量詞+形容詞」構造に ついて考察を加えた。実際、量詞と形容詞の共起が見られるのは、五感表 現においてはほとんどが視覚描写であるが、他の感覚、すなわち聴覚、味 覚/嗅覚9)、触覚についても、かなり制限が見られるものの「数詞+量詞 +形容詞」の使用例が確認できる。そこでここでは、視覚描写について確 認できた共起関係と比較しながら、それぞれの描写対象について簡単にそ の傾向を確認することとする。 3.1. 聴覚 聴覚描写において「数詞+量詞+形容詞」構造が確認できた量詞は“片” のみであった。視覚描写において“片”が果てしない平面的、或いは空間 的広がりを描写する際に用いられることはすでに確認したが、ここではま ず、聴覚と視覚の類似性を簡単に確認しておく。 聴覚描写では、“很大―的笑 〰〰声”、“他的声〰〰音很粗―”の“大”、“粗”ように 空間的広がりが喚起されるものが多く、さらに“响――亮的歌 〰〰声”、“回答得很 洪 ――亮”の“响亮”、“洪亮”で明るさを描写する“亮”が用いられるなど、 視覚的イメージを用いた表現が多く用いられる。これらの点は、井出
2001a、2001b で共感覚現象について考察した際にも確認できた傾向であ るが、このような類似性から、聴覚描写では視覚的イメージを喚起させる 場合、すなわち視覚描写と同様の認識過程を経ていると想定できる場合に は、「数詞+量詞+形容詞」構造が許容されると考えられる。 (26) 我和毛雅秀交谈的时候,男教师宿舍里一片吵――闹。 (私と毛雅秀が語り合っている時、男性教師が宿舎で騒いでいた。) (27) 船篷上刹喇喇一片 响――亮, 大 雨 洒 将 下 来, 跟 着 一 阵 狂 风 刮 到, ……。 (マストの上ではバラバラと一面に鳴り渡り、大雨が降ってきて、 続けて一陣の強風が吹き、……。) しかし、同様に空間的イメージが喚起されても、“歌〰〰声很小 ―”、“她的 声 〰〰音很细―”の“小”、“细”のように広がりとは反対ベクトルである範囲の 狭さ、或いはかすかさのイメージを伴う聴覚描写には名詞成分が必要とな る。例えば、聴覚描写において名詞との共起が確認できる量詞“丝”は、 形容詞との共起関係は確認できない。“丝”は視覚描写では平面の部分を 描写する際に形容詞との共起が確認できたのだが、これに対し音声は色の ようにある一部分だけを切り取って捉えることは難しい。このため、量詞 と形容詞の共起が許容されるのは、視覚的イメージを喚起させる聴覚描写 の中でも、さらに視界全体への広がりをイメージさせる場合のみに限られ ると考えられる。 一丝吵――闹声〰/响――亮的掌〰〰声/洪――亮的笑〰〰声 *一丝吵――闹 /响 ――亮 /洪――亮 3.2. 味覚/嗅覚・触覚 まず次の例を見ていただきたい。(28)、(29) は味覚/嗅覚、(30) は触覚 の例である。 (28) 宋嫂鱼羹酸溜溜的,带一丝微――辣,很开胃。 (宋嫂魚の羹は酸っぱくて、かすかにピリッとして、とても食欲が 出る。) (29) 圆圆的罗汉果和枸杞子冲泡在一起,飘出一丝甜――蜜。 (丸々としたラカンカとクコの実を一緒に浸すと、かすかに甘い香 りが漂ってくる。)
(30) 高原的冬天太阳走得很快,……噶尔丹反而不再着急,裹得紧的翻 毛棉大衣使他身上觉不出一丝冷 ―来,……。 (高原の冬は大陽が沈むのがとても早く、……噶尔丹はしかしもう 焦ることはなく、起毛のオーバーでしっかりと身体を包み込む と、ほんのわずかな寒さも感じられず、……。) 以上の例からもわかるように、味覚/嗅覚、触覚描写では視覚描写と同 様に、程度がかすかであることを強調する場合には量詞“丝”との共起が 確認できた。逆に、名詞とはしばしば共起する“股”、“抹”、“团”である が、これらは「かすかさ」を強調する働きを持たないため、「数詞+量詞 +形容詞」構造は許容されない。 【味覚/嗅覚】 一股辛――辣的味道� �/臭 〰〰味 一抹甜――蜜的香〰〰味/臭――腥的肉〰〰味 *一股辛――辣 /臭 ― *一抹甜――蜜 /臭――腥 【触覚】 一股凉―风 〰/暖――和的西〰〰风 一团冰――冷的空〰〰气/热―气〰 *一股凉― /暖 ――和 *一团冰――冷 /热― また、例えば、ある空間全体に熱・味・においが充満していたとしても、 聴覚描写のように量詞“片”を用いた「数詞+量詞+形容詞」の表現形式 は用いられない。これは、味覚/嗅覚、触覚は聴覚のように視覚的広がり のイメージを喚起させないためであると考えられる。 以上のように、視覚的イメージの有無によって、共起する量詞が明確に 区別される結果となったが、この要因の一つとしては、味覚/嗅覚、触覚 が直接感覚、視覚、聴覚が間接感覚であるという性質の違いも指摘するこ とができる10)。 4.まとめ 以上、視覚描写を中心に、中国語五感表現における「数詞+量詞+形容 詞」構造について観察してきた。そこで、各描写対象ごとに、その描写の 焦点と共起関係が見られた量詞について次項[表 4]にまとめておく。 この表からもわかるように、「数詞+量詞+形容詞」構造の描写の焦点 は「広がり」と「かすかさ」に大きく分かれ、「広がり」を代表する量詞 は“片”、「かすかさ」を代表する量詞は“丝”である。また、量詞につい ては、身体の表面を覆い尽くす場合を除けば、借用量詞は許容されないこ
とが見てとれるだろう。言い換えれば、この構造が許容される描写対象 は、背景との境界線が明確に認識できない、もしくは意識されない平面、 或いは空間的広がりであり、描写対象の形態的イメージをはっきりと喚起 させうる個体量詞や、容器となるものからの借用量詞は許容されにくい、 ということが確認できた。 しかし、最初にも触れたように、今回の検討では“一片辉――煌”や“一 丝不 ――安”のように、より抽象度の高い描写対象の検討には及んでいない。 さらに、「量詞+形容詞」と共起する数詞がほぼ“一”に限定されている ことについては、“满屋子人〰”の“满”との関係もあわせて検討する必要 がある問題であり、今後はこれらも含めたより全般的な傾向の把握が課題 となる。 [表 4] 描写対象 描写の焦点 共起可能な量詞 個体量詞 借用量詞 視界全体 広がり 片 平 面 平面の一部分 抹、片、块 視覚(色彩) かすかさ 丝 空間全体 片、团 * 屋子 個体の表面全体 広がり 团[集合体] 脸、身、* 鼻子[単体] 線 线 聴覚 一面に広がる音声 広がり 片 * 屋子 触覚(温感) かすかな温度 かすかさ 丝 * 脸、* 身、* 屋子 味覚/嗅覚 かすかな味・におい * 口、* 碗、* 身、* 屋子 <注> 1) 協力してくれたネイティブスピーカーは、20 代から 30 代にかけての中国東北地方 出身の女性数名で、大学院在籍もしくは修了者である。ネイティブチェックを進める にあたっては、各人の語感に基づいてその許容度を判定してもらい、許容度が高いと の判定が半数以上得られたものを中心に検討を進め、用例が見つかっていてもネイ ティブチェックで全員が許容されないと判定したものについては採用しなかった。
2) 刘 1999 の分析では“时间量词”と共起する形容詞に“脸色形容词”が挙げられて いたが、まとめ部分では欠落していたので、[表 2]中で筆者が補足した。“其他量词” と共起する形容詞については刘 1999 でも詳細な検討がなされていないので、表中に は示されていない。また、アンダーラインは筆者によるものである。 3) ただし、抽象物を対象物とする場合には、不定量を表す数詞との共起も確認するこ とができ、刘 1999 の“其他量词”の用例中にも“几分剽――悍”という例が見られる。 4) 名詞と量詞の共起における量詞選択の規則性については、杨达 1995 が視覚的認知 に着目した検証を行っている。また、石毓智 2001 でも量詞の認知システムについて 次元という視点から論じており、各量詞の特徴が詳細に論じられている。 5) “片”と同様に平面的広がりを表す量詞として“派”(“一片/派好 〰〰〰风光”)が挙げら れるが、『现代汉语量词用法词典』に以下のような記述が見られるように、描写対象 のほとんどが抽象物であるため、本稿での検討対象とはしなかった。ただし、『现代 汉语量词用法词典』では、名詞との共起において確認できる両者の振る舞いの違いに ついても指摘しており、“片”と“派”との比較は、今後抽象的な描写対象を含めた 検討を行う際の一つの課題である。 “派”与“片”都可与“一”构成数量词“一派”与“一片”,修饰景色、气象、声音、 语言等。……“片”修饰景色、气象时,重在视觉,不重气势;“派”则重在内心的 感受。(『现代汉语量词用法词典』107-108 頁) 6) 色彩形容詞の中でも、“漆黑”は暗闇を描写する表現としてかなり定着しており、 借用量詞“屋子”を用いた場合もその許容度が高くなっている。これは「黒」という 色が人の視界を遮るものであり、境界線を認識させにくいこととも関係があると思わ れ、実際、空間描写において量詞と共起する色彩形容詞には透明度の低いものが多 い。逆に、たとえ空間がある色で埋め尽くされていたとしても、本文中の例にも挙げ
たように、その透明度が高い場合にはこの共起関係はほぼ許容されない。 7) さらに用例 (23) については、量詞を“片”に置き換えるとその描写対象は視界の所々 にかたまって咲いているさまざまな色の草花([図 i])から、視界全体に広がる同じ 色の草花の広がりが多方面に存在している景色([図 ii])へと描写の焦点が移行する。 また、用例 (24) では、一つ一つの“小棉花”は“朵”で数えられている([図 iii])の に対し、それが固まって一つになれば“团”を用いて表現されている([図 iv])点な ど、それぞれの量詞の捉え方の違いがよく現れているおもしろい例である。 8) 零次元である「点」についてもわずかならが用例が確認できたが、「点」も「線」 と同様に背景から切り取られる境界線を持たず、色彩コントラストの強弱による影響 が大きいと思われる。 (i) 到春时,番薯的颈部猛丁生出新芽,是一些紫红的嫩芽,顶尖衔着一星绿―,……。 (春になると、サツマイモの首の部分に突然新芽が出てきて、これは紫がかった深 紅の数枚の若芽で、先端は一点の緑があり、……。) ただし、ミクロ的視点でみれば、これらも一定量の広がりを持つと捉えることも可 能である。石 2001 では“条”を二次元量詞であると指摘しているなど、この点につ いてはさらに検討が必要である。 9) 味覚と嗅覚は同時に認識されることが多いため、ここではまとめて取り扱う。 10)井出 2001a は、その修飾関係に直接感覚・間接感覚の影響があることを確認している。 <補注> 脱稿後、刘 2004『现代汉语比较范畴的语义认知基础』の巻末の付に「“数+量+形” 结构的语义认知基础」(275-317 頁)があるとのご指摘を頂いた。刘 2004 では、刘 1999 での検討内容に加え、統語関係など新たな視点から考察が行われており、今後の検討に おいて大いに参考となるものである。第三節「量词与形容词的相互选择」が刘 1999 に 該当し、両者では用語の違いなども確認できるが、本稿では刘 1999 に基づき検討を進 めている。 <参照文献> 井出克子 2001a.「中国語五感表現に見られる共感覚に基づく比喩について」,『中国語学』 248:213-227 頁。 井出克子 2001b.「五感における程度表現―形容詞の一側面―」,『中国学志』豫号(第 16 号):1-18 頁。 郭先珍2002.『现代汉语量词用法词典』。北京:语文出版社。 刘 焱 1999.「量词与形容词的搭配问题探讨」,『汉语学习』1999 年第 5 期:60-63 頁。
刘 焱 2004.『现代汉语比较范畴的语义认知基础』,(上海财经大学国际文化交流学院学 术丛书)。上海:学林出版社。 石毓智2001.「表物体形状的量词的认知基础」,『语言教学与研究』2001 年第 1 期:34-41 頁。 邢福义1965.「谈“数量结构+形容词”」,『中国语文』1965 年第 1 期:34-36 頁。 杨 达 1995.「量詞の形態的な意味特徴について―視知覚機能による認知と関連して―」, 『中国語学』242:46-55 頁。