本研究では,児童・生徒の「受容性」に影響を与えている要因を明らかにすること,そしてモデル 図を作成し,受容性と排他性の関係について明らかにすることを目的とした。受容性に影響を与え ている要因として「他者との関わりの経験」,「幅広い興味・関心」,「幅広い知識」を検討した。小学 5年生103名,中学2年生112名を対象に分析を行った結果,「他者との関わりの経験」が多い児童・ 生徒の方が受容性が高いこと,「幅広い興味・関心」を持っている児童・生徒の方が受容性が高いこと, 「幅広い知識」を持っている児童・生徒の方が受容性が高い傾向にあることが示された。受容性と排 他性の関係については,モデル図の適合度が低く,関係性を明らかにすることができなかったが,2 つの要因が単なる一次元の対の関係ではないことが示唆された。 キーワード:受容性,排他性,友人関係,児童,生徒
1. 問題と目的
児童期後期頃から,児童は少人数で構成される明確な仲間集団を形成するようになる。多くの時 間を共有し,多くの活動を共にする仲間集団が心のよりどころとして重要な意味を持つようになり, 仲間集団に所属できるかどうかが,児童にとって大きな関心事となってくる(石田・小島,2009)。 仲間集団を形成すると,特定の友人との親密度が高まる一方で,自集団以外の他者や他集団を寄せ 付けない強固な排他性を持つようになり,他集団との差を明確にし,自集団の基準に合わない他者 や,少しでも異質な部分が感じられる個人を排除するようになると言われている(石田・小島, 2009;黒沢,2011)。集団からの排除は,関係性攻撃の一つであり,それが継続すると,子どもは不 安や孤独感,憂うつ感などが強くなり深刻なダメージを受けるとされている。(Gazelle & Ladd, 2003;佐藤・佐藤・高山,1990;前田,1995)。排他性とは,集団や関係において,「自分の仲間であ るかどうかによって相手に対する態度を変えたり,自分の仲間と活動することに比べ,仲間以外の 児童と活動することを楽しくないと感じたりする強さ」であると定義されており,(三島,2004),児 童期のいじめや仲間外れといった友人関係におけるトラブルの原因の一つとして,多くの先行研究 で取り上げられてきている(竹川,1993;黒川・三島・吉田,2006;石田・小島,2009;三島2013)。児童期と青年期における対人受容性に関する研究
松 本 恵 美
* *教育学研究科 博士課程後期竹川(1993)による小学生を対象としたいじめと友人関係に関する調査では,いじめのない学級に比 べて,いじめのある学級では友人関係がより親密であり,友人でない者同士の関係はより排他的で あることが示されており,排他性の高さがいじめにつながる可能性が示唆されている。また,三島 (2013)の仲間集団の排他性と学級雰囲気の関連について検討した研究において,排他的考えや行動 が強い拡散的な雰囲気の強い学級では,一つひとつの仲間集団の独立性が強く,仲間集団相互の交 流が乏しい状況になることが示されている。しかし一方で,排他性が低く,誰とでも自由に話がで きる開放的・親和的な雰囲気の学級においては,自集団以外の児童とも関わりやすく,学級全体の 交流が活発であることが示されており,排他性の高い学級では仲間集団に所属できない児童や仲間 集団から排斥されてしまった児童が孤立しやすいが,排他性の低い学級では孤立する児童や孤独を 感じる児童が少ないことが示唆されていた。このように,友人関係におけるいじめや仲間外れといっ た問題を解決する上で,排他性に着目することは重要であるといえる。しかし,友人関係における 問題を解決する上で,他者を仲間集団から排除しようとする排他性だけではなく,自集団以外の他 者や異質な特徴を持つ他者であっても受け入れようとする「受容性」に着目することも重要である と考えられる。「排他性」を抑制する要因を検討するだけでなく,相手を受け入れる「受容性」を高め る要因を検討することにより,友人関係におけるトラブルを減少させることにつながるのではない かと考え,本研究では「受容性」に着目し検討を行った。 他者の「受け入れ」に着目した先行研究として,Killen らの研究があげられる。Killen らは,集団 からの排除と受け入れ判断の発達的変化を検討し,判断基準として社会的カテゴリー(性別や人種 など)をとりあげて研究を行った。結果,児童においても青年においても,社会的カテゴリーが他者 の受け入れと排除の判断,特に受け入れの判断に影響を与えていることや,道徳的に問題があると 感じた特徴(暴力をふるうなど)に対して排除を認める傾向があること,青年期になると仲間集団が 上手く機能するために他者を排除することは許される行為であると判断するようになることを明ら かにしている(Killen et al.,2001;Park & Kiilen,2010)。また渡辺らの研究では,仲間集団への「受 け入れ」とそこからの排除を決定する基準として個人レベルの否定的特徴を6つ取り上げ検討を行っ ており,暴力的な特徴や特異な外見の子どもへの受け入れが困難であり,性格が暗いことや異性の ように振る舞うといった特徴を持つ子どもへの受容が容易であることを明らかにしている(渡辺・ Chrystal・Killen,2001;渡辺・渡邉・Crystal,2004)。 これらの先行研究では,仲間集団への「受け入れ」や「排除」を決定する基準については検討をし ているものの,相手を受け入れようとする個人の「受容性」自体に焦点をあて,受容性の規定要因を 検討した研究はみられない。そこで本研究では,「受容性」自体に重点をあて,どのような要因が「受 容性」に影響を与えるのかを検討することを目的とした。受容性に影響を与える要因としてまず, 多様な特徴を持つ「他者との関わりの経験」が考えられる。 先行研究において,McGlothlin& Killen(2010)は,人種が均一的な学校(全体の85%以上がヨーロッパ系アメリカ人)に通う生徒た ちと,アフリカ系アメリカ人など多様な人種の子ども達が通っている(ヨーロッパ系アメリカ人は 65%以下)学校の生徒たちの人種を超えた友情についての考え方について研究し,人種が均一的な
学校に通う生徒は人種に対して差別的考えを持っていたが,多様な人種の児童と関わる機会の多い 人種が均一的でない学校の生徒は,人種に対しての差別が少なく,他人種の生徒に対して受容的で あることを示した。この先行研究から,自分と異なった特徴を持った相手であっても,その相手と 実際に話したり遊んだりすることによって,相手の特徴に対する差別や否定的なイメージが減少し, 相手を受け入れようとする気持ちが芽生えるのではないかと推測し,「他者との関わりの経験」を要 因として取り入れた。 その他の要因として,「幅広い興味・関心」を持っていることや,「幅広い知識」を持っていること が考えられる。色々なものに興味や関心がある生徒は,新しいものや変わったものに対しても開放 的であるため,変わった特徴をもった他者であっても受け入れることができるのではないかと推測 する。また,知識が多い生徒は,自分と異なる特性を持つ他者に対して理解が深く,積極的に関わっ てけるのではないかと考えた。生川(1995)の健常者の障害児に対する態度を検討した研究において, 障害に対する知識を持っている人の方が障害者に対して好意度が高く障害者との交流を推進する気 持ちが強かったことが示されており,様々な事柄に対して正しい知識を持っていることも,受容性 を高める要因の一つではないかと考えられる。また,障害を持つ人との接触経験があり,障害に対 する知識を持っていることが障害を持つ人々に対する態度を好転させるとする研究が多いことから も(川間,1996),様々な他者との関わりの経験や関心,興味の広さが他者を受け入れる気持ちに影 響を与えていることが推測できる。これらの理由から,受容性に影響を与える要因として「他者と の関わりの経験」,「幅広い関心」,「幅広い知識」の3つを取り上げ検討を行うこととした。 また,2つ目の目的として,受容性と排他性の関係についての検討も行った。受容性は,排他性が 高ければ低くなり,排他性が低ければ高くなるという様な,一次元の両端の関係であると考えられ やすいが,先行研究において,排他性も受容性も男子より女子の方が高いということが示されてお り,排他性も受容性も高い生徒がいることが考えられる。よって排他性と受容性は単純な1次元の 対の関係ではないと考えられる。そこで,受容性と排他性の関係性を明らかにするために要因間の 関係についてモデル(Figure 1)を作成し,モデルの適合性についての検討も行った。 Figure 1 受容性と排他性,その他の要因の関係図
2. 方法
対象児 富山県内の公立小学校2校に通う小学5年生103名と,富山県内の公立中学校1校に通う中学2年 生112名,合計215名を対象に調査を実施した。そのうち欠損値を含む生徒を除いた181名を分析の 対象とした。(有効回答率は84.2%) 調査実施時期・調査方法 調査は小・中学校ともに,12月の上旬に実施した。小学校の校長先生に依頼し,クラスごとに各 担任教師に実施してもらった。実施に当たっては,生徒が問題を理解しやすいように,注意点など を担任が説明してからアンケートを始めるようにお願いした。 調査内容 ①フェイスシート 性別・きょうだいの有無・習い事をしているか,を記入してもらった。 ②他者との関わりの経験尺度 松本(2013)の他者との関わり経験尺度参考に,個人のそれまでの経験として,どのような他者と どれだけ多く関わったことがあるかに関する7項目を作成した。「全然ない⑴」から「たくさんある ⑷」の4件法で回答を求めた。 ③興味・関心の広さに関する項目 個人の興味や関心の広さを測定するために,経済・国際関係・スポーツ・科学・災害の5領域に関 する事柄にどのくらい興味があるかを「興味がない⑴」から「とても興味がある⑸」の5件法で回答 を求めた。 ④友人などに対する重要度について聞いた項目 友人・一人の時間・友人といる時間・勉強・先生がどのくらい個人にとって重要かを測定するため に,「あなたの学校生活において,友だちがいること(一人で過ごす時間・友だちといる時間・勉強・ 先生との関係)はどのくらい大切ですか」と教示し,「大切でない⑴」から「とても大切⑸」の5件法で 回答を求めた。 ⑤知識の広さに関する項目 個人の知識の深さについて測定するために,2014年の8月~ 11月に起こった主なニュースに関す る問題を5問作成した。問題は,経済・国際関係・スポーツ・科学・災害の5領域におけるニュース に関して聞いた。まず,そのニュースのことを知っているかについて「はい⑴」と「いいえ⑵」から 選んでもらい,その後そのニュースの詳細についての問題を出し,5つある選択肢の中から回答を 求めた。 ⑥個人の一般的な対人関係における受容性尺度 田場・倉戸(1995)や高井(1999)を参考に,個人の受容性に関する10項目を作成した。「そう思わない⑴」から「そう思う⑸」の5件法で回答を求めた。また,本研究の受容性尺度では,友人関係に限 定した受容性ではなく,一般的な対人関係における受容性を測定することを目的として作成した。 ⑦個人の友人における排他性 三島(2010)による友人関係の排他性の下位尺度 “ 独占的な親密関係指向 ” と “ 固定的な集団指向 ” の項目の中から3項目ずつと,高坂(2010)による異質拒否傾向項目の中から3項目の計9項目を用 いた。また,受容性尺度とは異なり,排他性は友人関係における排他性を測定することを目的とし ていた。
3. 結果
⑴ 尺度の検討 まず,本研究で使用した尺度について内的整合性の検討を行い,性別と学年ごとの平均と標準偏 差を求めた。他者との関わりの経験尺度は,主成分分析の結果,第1主成分のみ検出され,第一主成 分の因子寄与率は45.89%であり7項目のすべてが0.4以上の性の負荷量を示した。よって第一主成 分が「他者との関わりの経験」を表す主成分であると解釈した。また,7項目の信頼性はα =.80であっ た。興味・関心の広さに関する尺度は,主成分分析の結果,第1主成分のみ検出され因子寄与率は, 49.91%であり5項目のすべてが,0.5以上の正の負荷量を示した。よって,この主成分が「興味・関 心の広さ」を表す主成分であると解釈した。知識に関する5項目に関しては,一つひとつの項目を異 なる領域について聞いた,独立した知識の問題として取り扱ったため,尺度としての信頼性は求め なかった。得点化に際しては,回答が正解だった場合を1点,不正解の場合を0点とし,5項目の合 計点を分析に用いた(得点範囲は0点から5点)。また,「そのニュースを知っているか」という一つ 目の質問において,「2. いいえ」を選んだ場合はその問題に対する答えを知らないものと見なし, その項目の得点は0点とした。友人などに対する重要度について聞いた項目については,5項目を 合わせて一つの尺度とは考えず,一つひとつの項目を「友だち・一人で過ごす時間・友だちといる時 間・勉強・先生」に対する重要度の指標とし,回答値をそのまま分析に用いた。一般的な対人関係に おける受容性尺度は,主成分分析の結果第4主成分まで示された。第1主成分はすべての項目にお いて正の負荷量を示していたことから,「対人関係における受容性」を表す主成分であると解釈した。 因子寄与率は24.32%であった。10項目の信頼性はα=.65であり,十分な信頼性とは言い難かったが, 10項目の加算平均を「受容性得点」として分析を進めることとした。友人関係における排他性尺度 は,主成分分析の結果第3主成分まで抽出された。第1主成分において,9項目すべてが正の負荷量 をとっていることから,この主成分が「友人関係における排他性」を表すと解釈した。第1主成分の 因子寄与率は35.07%であった。9項目の信頼性はα= .73で高いとは言い難いが,十分な信頼性が 得られたものと考え,9項目すべてを採用し,分析を行った。各尺度の得点化に際しては,加算得点 を項目数で割ったものを各尺度得点とした。各尺度の分析対象人数および平均得点と標準偏差を Table1に示す。⑵ 受容性と排他性の学年差および性差について 一般的な対人関係における受容性を従属変数とする2(小学5年生・中学2年生)×2(男子・女子) の2要因分散分析を行ったところ,性別の主効果のみが示された(F=8.85,df=1/177,p<.01)。小 学5年生においても,中学2年生においても,女子の方が男子より受容性得点が有意に高いことが明 らかとなった(Figure2)。学年の主効果および交互作用は見られなかった。 一方で,友人関係にける排他性尺度においては,学年と性別の主効果,交互作用のどれも認めら れなかった。また,補足的分析として,受容性と排他性の相関関係を分析したところ,中程度の負 の相関が示された(r=-.47,p<.01)。 ⑶ 受容性と他者との関わりの経験について 個人の一般的な対人関係における受容性が過去の様々な他者との関わりの経験によって変化する かを検討するために,受容性得点を従属変数とする,2(小5・中2)×2(男子・女子)×2(他者との 関わりの経験得点の高群・低群)の3要因分散分析を行った。他者との関わりの経験得点によって生 徒を高群と低群に分ける際には,5段階評定値の中央値である3を基準として,平均得点が3より上 の生徒を高群,3以下の生徒を低群とした。その結果,性別の主効果(F =9.75, df=1/173, p<.01), Figure 2 受容性の男女差と学年差 Figure 3 他者と経験による受容性差 Table 1 各尺度得点と標準偏差 小学5年生 中学2年生 全体 男子 女子 全体 男子 女子 全体 男子 女子 全体 他者との関わり経験 3.22(.47) 3.27(.48) 3.25(.47) 3.19(.56) 3.20(.60 3.20(.58) 3.20(.51) 3.23(.55) 3.22(.53) 興味・関心 3.53(.76) 3.73(.68) 3.63(.72) 3.45(.82) 3.29(.77) 3.37(.79) 3.50(.78) 3.49(.76) 3.49(.77) 知識 3.81(1.12) 3.70(1.23) 3.76(1.17) 3.62(1.34) 3.43(1.08) 3.52(1.20) 3.72(1.23) 3.55(1.15) 3.63(1.19) 友人重要度 4.79(.47) 4.67(.68) 4.73(.58) 4.45(.86) 4.79(.41) 4.64(.67) 4.62(.71) 4.74(.55) 4.69(.63) 一人の時間重要度 2.93(.99) 3.40(.98) 3.16(1.00) 3.50(1.01) 3.58(.97) 3.55(1.02) 3.21(1.07) 3.50(.97) 3.36(1.03) 友人時間重要度 4.58(.59) 4.65(.69) 4.62(.64) 4.36(.82) 4.72(.53) 4.56(.70) 4.47(.72) 4.69(.60) 4.59(.67) 勉強重要度 4.12(.93) 4.21(1.01) 4.16(.97) 3.88(1.02) 4.36(.79) 4.15(.92) 4.00(.98) 4.29(.89) 4.15(.94) 先生重要度 3.70(1.04) 3.86(1.15) 3.78(1.09) 3.69(.87) 3.62(.95) 3.65(.91) 3.69(.95) 3.73(1.04) 3.71(1.00) 受容性 3.56(.46) 3.90(.67) 3.73(.60) 3.62(.51) 3.75(.48) 3.70(.49) 3.59(.49) 3.82(.57) 3.71(.54) 排他性 2.67(.66) 2.57(.74) 2.62(.70) 2.49(.64) 2.64(.58) 2.58(.61) 2.58(.65) 2.61(.66) 2.60(.65)
他者との関わり経験の主効果(F =7.89, df=1/173, p<.01)および学年と他者との関わりの経験の交 互作用が示された。よって,経験得点高群の受容性の方が低群よりも優位に受容性得点が高いこと, 女子の方が男子より受容性得点が有意に高いことが示された。また交互作用から,他者との関わり 低群においては小学5年生の方が中学2年生よりも有意に受容性が高いこと(F =4.74, df=1/173, p<.05),中学2年生においては,関わり経験高群の方が関わり経験低群より受容性が高いこと(F = 15.51, df=1/173, p<.01)が明らかとなった(Figure3)。 また,補足的分析として,受容性と排他性の違いについて検討を行うために,他者との関わりの 経験が排他性にも影響を与えるかについて分析を行った。排他性得点を従属変数,他者との関わり の経験得点の高群・低群を独立変数とする t 検定を行なった結果,受容性とは異なり,排他性にお いては他者との経験の高群と低群の間で有意な差は見られなかった。 ⑷ 受容性と興味・関心の広さについて 個人の興味・関心の広さが個人の受容性に影響を与えているか検討するために,受容性得点を従 属変数とする2(小5・中2)×2(男子・女子)×2(興味関心得点の高群・低群)の3要因分散分析を行っ た。分析にあたって,興味・関心の得点が3より上の生徒を高群,3以下の生徒を低群とした。その 結果,性別の主効果(F =4.65, df=1/173, p<.05)と興味・関心の広さの主効果(F =32.72, df=1/173, p<.01)が示された。よって,女子の方が男子より有意に受容性が高いことと,興味・関心の幅が広 い児童 / 生徒の方が狭い生徒より有意に受容性が高いことが明らかとなった(Figure 4)。 また,受容性と排他性の違いについて整理を行うために,興味関心の広さが受容性同様に,排他 性にも影響を与えているかどうかについて検討を行った。興味・関心の広さ得点の高群・低群に分け, これらを独立変数,排他性得点を従属変数とした t 検定を行った。その結果,排他性においては, 興味関心の高群・低群間において,有意な差は認められなかった。 ⑸ 受容性と知識の広さについて 幅広い知識を持っていることが,個人の受容性に影響を与えているかを検討するために,受容性 得点を従属変数とする2(小5・中2)×2(男子・女子)×2(知識得点の高群・低群)の3要因分散分析 を行った。群分けについては,知識問題において正答数が3以下の生徒を低群,4以上だった生徒を Figure 4 興味・関心による受容性差 Figure 5 知識の広さによる受容性差
高群とした。結果,性別の主効果が示された(F=9.26,df=1/173,p<.05)。知識の広さの影響は, 有意傾向のみが示された(F=3.78,df=1/173,p<.10)。よって,男子より女子の方が受容性が有意 に高いことと,知識の広さが受容性に影響を与える傾向があることが明らかとなった(Figure 5)。 続いて,知識が排他性に与える影響について検討をするために,排他性を従属変数とし知識得点 の高群・低群を独立変数とする t 検定を行ったところ,排他性においては高群と低群間で有意な差 は認められなかった。 ⑹ モデル図の検証 Figure1に示したモデルを検討するために,共分散構造分析を行った。仮説モデルの適合度の指 標を算出したところ,適合度が低く,モデルとして採用するには適切とは言えなかったため,今後 更なる検討が必要であると考えられた。
3. 考察
受容性の得点については,性差のみ示され,小学5年生,中学2年生どちらの学年においても女子 の方が男子よりも受容性が高いことが示された。この結果は,武ら(2003)の,女子の方が男子より も否定的な特徴に対して寛容であり,相手を排除しない判断を多くするという結果を支持するもの であった。落合・佐藤(1996)の友人関係の男女差について検討を行った先行研究においても,女子 は男子に比べて「誰とでも仲良くしていたいという付き合い方」や「みんなから好かれることを願っ ている付き合い方」が多いことが示されており,女子の方が誰とでも仲良くしようとする意識が高 いため,受容性が高かったと考えられる。 一方,排他性については,学年差も性別差も認められなかった。学年差も性差が認められなかっ たことから,仲間集団を作るようになると,学年や性別にかかわらず児童・生徒は一定の排他性を 持つようになることが示唆された。 次に,他者との関わりの経験と受容性について検討した結果,他者との関わりの経験高群と低群 の間に有意な差が認められ,過去に様々な他者と関わったことのある児童・生徒の方が相手を受け 入れる気持ちが強いことが示された。McGlothlin & Killen(2010)の研究において,多様な人種の 生徒と関わる機会がある生徒は他人種に対して受容的になることが示唆されていたように,過去に 様々な特徴を持った他者と関わりを持つ機会が多くあった児童・生徒はその特徴に対して寛容的に なり,その特徴を受け入れやすくなるのではないかと推測できる。 また,興味・関心の広さと受容性の関係について検討したところ,「興味・関心の広さ」の高群と 低群との間に有意な差が見られ,興味・関心が広い児童・生徒の方が,受容性が有意に高いことが示 された。よって様々なことに興味や関心を持っている児童生徒の方が,自分と異なる特徴を持った 他者であっても受け入れようとする気持ちが高いことが明らかとなった。児童・生徒の興味・関心 が広がるように促すことが,受容性を高める上で重要であることが示唆された。 知識の広さと受容性の関係については,「知識の広さ」の高群の方が低群より受容性が高い傾向にあることが示された。よって幅広い知識をもち,様々な事柄に対して理解が深い児童・生徒は,自 分と異なる特徴をもっている相手に対して見た目やイメージだけで排除するといった否定的な態度 を取らず,相手を正しく理解し,受け入れようとするのではないかと考えられた。しかし,結果が 有意傾向にとどまったため,「知識の広さ」と受容性の関係について今後再度検討することが必要で ある。 受容性と排他性の関係を示した Figure1については,適合度が低く,モデルとして採用するには 不適切であることが示され,関係性を明らかにすることはできなかった。「他者との関わりの経験」, 「興味・関心の広さ」,「知識の広さ」が受容性に影響を与えていることは明らかとなったたが,モデ ルの適応度が低かったことから,今後これらの要因の関係について整理する必要がある。特に,受 容性と排他性の関係において,「他者との関わり経験」「興味関心の広さ」「幅広い知識」の3要因が 受容性には影響を与えていたが排他性には影響を与えていないことが示されたことや,受容性と排 他性の間に中程度の相関しか示されなかったことから,受容性と排他性はある程度関連はしている が単なる1次元の対の関係ではないことが示唆された。よって受容性と排他性の関係に焦点を当て たモデル図の検討が今後の課題となる。また,その他の課題として受容性に影響を与える「他者と の関わりの経験」,「幅広い関心」,「幅広い知識」の3つの要因が直接的に影響を与えているのか,そ れとも間接的な影響なのかといった疑問や,「幅広い知識」というのが専門的な知識のことを指すの か,一般的な知識のことを指すのかといった疑問が残された。その他にも,使用した尺度において, 受容性尺度の信頼性と排他性尺度の信頼性と信頼性の高さが十分であるとは言えなかったため,尺 度の修正をして改めて受容性と排他性の関係を検討することも必要であると考えられる。今後は, これらの課題を改善し,受容性と排他性の関係を明らかにしつつ,それぞれの発達段階において受 容性に影響を与える要因について検討していく必要がある。 【引用文献】
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The purpose of this study was to examine the effect of “the experience of interaction of the with various people”, “individual’s interests”, and “individual’s knowledge” on 5th grade (n=103) and
8th grade (n=112) children’s interpersonal acceptability. Second purpose of this study was to
clarify the relation between acceptability and exclusivity among children. Findings indicated that children who had more experience of the interaction with various people possessed higher interpersonal acceptability. In addition, children who had wider interest possessed higher interpersonal acceptability. Also, children who had wider knowledge had tendency to possess higher interpersonal acceptability. Finally, the results indicated that acceptability and exclusivity was not a complete opposite concept. It was suggested that interpersonal acceptability was influenced by the experience of the interaction with various people, the width of individual’s interest, and the width of individual’s knowledge.
Keywords:Acceptability, Exclusivity, Peer relationship, Friendship