はじめに
著者らは 2011(平成 23)年に日本理学療法士協会理 学診療ガイドライン・膝前十字靭帯(以下,ACL)損傷 理学療法ガイドラインを作成した。その後,ガイドライ ンをいかに臨床場面で活用できるかを考え,Q&A を作 成し以前より日本鋼管病院ホームページに公表している (http://www.koukankai.or.jp/site_data/nihonkoukan/ files/ACLGuideQ% 26A.pdf)。ACL 損傷は,所属する 施設により治療にあたる機会にばらつきがあると思われ る。そこで本稿は「年に数回程度のみ ACL 損傷の患者 を担当する機会のある」理学療法士と,「スポーツ現場 でのみ ACL 損傷とかかわる」理学療法士をおもな対象 とし,理学療法診療を進めていくうえで有用となるよう Q&A を抜粋・再編した。ACL 損傷について
膝関節は股関節のような骨自体の安定性は低く,靱 帯,半月板,筋や腱などの組織が安定性に大きく関与し ている。運動時には大きな可動性とともに安定性が要求 され,力学的ストレスにさらされる関節であり,スポー ツ傷害も多く発生する部位である。スポーツでの膝関 節靱帯損傷のほぼ半数は ACL 損傷といわれ,米国では ACL 損傷が年間 10 万件以上発生しているともいわれて いる。 ACL 損傷後に起こる臨床症状は膝くずれ(giving way)であり,スポーツ活動を大きく制限するだけでな く,それを放置することにより半月板損傷や関節軟骨損 傷などの二次的な関節内の損傷をきたす可能性が高い。 ACL は長さ約 35 mm,中央部の最大横径約 11 mm の関節内靱帯で,前内側線維(anteromedial band)と 後外側線維(posterolateral band)に分けられる。大腿 骨外顆内側後方より起こり,前内方に走行し,脛骨顆間 結節内側およびその前方に付着する。脛骨側の付着部は 30 mm 程度で縦長であり,大腿骨側の付着部は 23 mm 程度の円弧状である。ACL は膝関節伸展位において大 腿四頭筋を収縮させると,受動的な屈伸よりも明らかに 緊張が高まる。それに対してハムストリングスの収縮は ACL のストレスを減少させ,ハーフスクワットの様な closed kinetic chain(以下,CKC)では ACL の伸張は 少ないといわれている。このように ACL は一般の骨・ 関節疾患と異なり単純に荷重量に相応したストレスを受 けることはない反面,再建術後の理学療法においては各 種パフォーマンスによって ACL に加わるストレスを理 解する必要がある。靱帯損傷の受傷機転は,第三者によ る外力が直接靱帯へストレスを加えて受傷する接触型損 傷(contact injury)と活動中の身体の減・加速の慣性 力と筋力で受傷する非接触型損傷(non-contact injury) に大別される。ACL 損傷の受傷機転としては,スポー ツ種目により異なるが非接触型損傷が多く,カッティン グ(方向転換)動作,着地動作,ストップ(減速・停止) 動作を受傷機転として多く発生している。 このように ACL 損傷は非接触型損傷が多く,また受 傷時の動的アライメントや発生の内的・外的危険因子が 解明されてきている。その結果,いくつもの ACL 損傷 予防プログラムが開発され,疫学的にその効果も証明さ れてきている。(以上 ACL 損傷 理学療法診療ガイド ラインより引用)シリーズ 「エビデンスに基づく理学療法 ―理学療法診療ガイドラインを読み解く―」
連載第 10 回
膝前十字靭帯(ACL)損傷理学療法診療ガイドライン
*
長 妻 香 織
1)川 島 敏 生
1)大 見 頼 一
1)前田慎太郎
2)宮 本 謙 司
3)尹 成 祚
1)川 島 達 宏
1) *Tutorial: Guideline for Physical Therapy in Patients with Anterior Cruciate Ligament Injury
1) 日本鋼管病院リハビリテーション科
(〒 210–0852 神奈川県川崎市川崎区鋼管通 1–2–1)
Kaori Nagatsuma, PT, Toshio Kawashima, PT, PhD, Yorikatsu Ohmi, PT, MS, Songjo Yun, PT, Tatsuhiro Kawashima, PT: Department of Rehabilitation, Nippon Koukan Hospital
2) 佐々木病院 横浜鶴見スポーツ&膝関節センターリハビリテーショ ン部
Shintaro Maeda, PT, PhD: Department of Rehabilitation, Yokohama Tsurumi Sports and Knee Joint Center, Sasaki Hospital 3) 青葉さわい病院リハビリテーション科
Kenji Miyamoto, PT, MS: Department of Rehabilitation, Aoba Sawai Hospital
キーワード:ACL 損傷,スポーツ傷害,再建術
本ガイドライン作成過程と項目
文献検索には,電子データベースの Pubmed,Ovid MEDLINE を用いた。和文文献は医学中央雑誌を用い て検索した。また,「ACL 損傷診療ガイドライン」1), 「ACL 損傷予防プログラムの科学的基礎」2)を参考とし た。文献採用期間は 1984 ~ 2010 年とした。以下に「理 学療法評価(指標)の推奨グレード」と「理学療法介入」 の推奨グレードとエビデンスレベルについて述べる。な お,ある程度共通する Q&A のある場合はまとめて記載 している。理学療法評価(指標)の推奨グレード(病態・
経過・疫学を含む)
本ガイドラインでは理学療法評価(指標)を,病態・ 経過(二次的損傷),疫学,客観的評価の大項目に分類 した。疫学は,受傷機転,性差,リスクファクター(解 剖,動作),社会的・経済学的損失,スポーツ種目・レ ベル,客観的評価は理学的検査,画像診断の中項目に分 類した。推奨グレードは「Minds 診療ガイドライン作 成の手引き 2007」3)に記載されている「推奨の決定」を 参考とし,表 1,表 2 のごとく社団法人日本理学療法士 協会ガイドライン特別委員会理学療法診療ガイドライン 部会にて策定した基準4)にしたがって決定した。 Q1:ACL 損傷を放置すると二次的損傷がみられるか? A1:ACL 損傷後時間の経過とともに,内側半月板損傷 や軟骨損傷が認められることがある(グレード A)。 <関連するおもな文献の要約> ・ACL 損傷後 98 例中 34 例(34.7%)に半月板損傷や 関節軟骨損傷などの二次的損傷が認められた5)。 ・ACL 以外の重篤な靭帯損傷を認めない 135 例を対象 とし,ACL 損傷日から初診日までの日数により半月 板損傷率に差があるか検討した。その結果,内側半月 板に関しては受傷日から 1 年以上経過した群で有意に 損傷率が高く,外側半月板に関しては有意差がなかっ た6)。 ・ACL 損傷から手術までの待機期間と活動性および装 具装着の有無が関節軟骨と半月板損傷に与える影響を 調査した。対象は,ACL 損傷後 1 週間以内に ACL 損 傷と診断された 51 例とした。結果,手術待機期間と 軟骨・半月板損傷との間に相関を認めなかったが,活 動性と軟骨損傷との間に相関を認め,また特に装具を 装着していなかった群で活動性と軟骨損傷との間に強 い相関を認めた。活動レベルが高い症例では二次的な 軟骨損傷を合併しやすく,また装具装着していないこ とは,より二次的な軟骨損傷が生じやすいことがわ かった7)。 Q2:ACL 損傷を引き起こしやすい肢位はあるか? A2:ACL 損傷のおもなメカニズムは,足底面接地にお けるカッティング動作,急激なストップ動作やジャンプ 着地動作等である。損傷肢位の特徴として,膝関節軽度 屈曲位,外反位による受傷肢位が多い。下腿の回旋は一 定の見解は得られていない(グレード A)。 Q3:ACL 損傷を引き起こしやすい動作はあるか? A3:非接触型損傷では,急激な減速,カッティング動 作,ジャンプ着地で起こりやすく,接触型損傷は強制的 な膝関節外反等下肢への直接的外力が誘引となる(グ レード B)。 表 1 「理学療法評価(指標)」の推奨グレード分類 推奨グレードGrades of recommendations Type of recommendations 内容 A 信頼性,妥当性のあるもの
B 信頼性,妥当性が一部あるもの
C (ただし,信頼性,妥当性は不明確であるが,一般的に使用されているもの 「一般的」には学会,委員会等で推奨されているものも含む)
表 2 「理学療法介入」の推奨グレード分類
推奨グレード
Grades of recommendations Type of recommendations 内容 A 行うように勧められる強い科学的根拠がある B 行うように勧められる科学的根拠がある C1 行うように勧められる科学的根拠がない C2 行わないように勧められる科学的根拠がない
Q4:ACL 損傷は接触型損傷と非接触型損傷のどちらが 多いか? A4:女性スポーツ選手では,非接触型 ACL 損傷が多い。 男性スポーツ選手も非接触型損傷が多いという報告が多 いが,必ずしも多いとはいえない(グレード B)。 <関連するおもな文献の要約> ・ ACL 損傷既往選手,女性 10 名,男性 7 名,コントロー ルの女性 6 名の前額面,矢状面での着地およびカッ ティング動作に類似した運動中の体幹側屈角度,膝関 節外反角度を検討した。体幹側屈,膝関節外反角度は, 女性の ACL 受傷群が男性と比較して大きく,また, 女性コントロール群より大きい傾向にあった8)。 ・ 1988 ~ 2000 年に収集された 20 人の ACL 損傷ビデオ テープを解析した。ハンドボールにおける ACL 損傷 のおもなメカニズムは,足底面接地におけるカッティ ング動作と片脚でのジャンプショットの着地動作であ り,受傷時の膝関節は 5 ~ 25 度屈曲位で,5 ~ 20 度 膝関節外反位であった。さらに,12 例(60%)が膝 関節外旋位で,7 例(35%)が内旋位による受傷であっ た9)。 ・女性アスリート 205 人を前向き調査し 9 名に ACL 損 傷が発生し,その運動力学を調査した。ACL 損傷群 は着地動作のイニシャルコンタクト(初期接地時)で の最大床反力が大きく,最大膝関節外反角度,膝関節 外反モーメントの増大がみられた10)。 ・スキー損傷膝を除く 89 選手(100 膝)の受傷機転を 質問紙方法で行った。その結果,損傷のほとんどが膝 関節完全伸展位であると報告した。非接触型損傷の機 序は急速な減速,方向転換,ジャンプ着地で起こり, 接触型損傷は強制的な膝関節外反で起きていた11)。 Q5:ACL 損傷はどのような競技に発生しやすいか? A5:バスケットボール,サッカー,ハンドボール,ア メリカンフットボール,ラクロス,スキー等で発生率が 高いとされる(グレード B)。 Q6:ACL 損傷の発生頻度と競技レベルに関係はある か? A6:サッカー,バスケットボールは,競技レベルによっ て ACL 損傷の発生頻度は変わらない。一方,アルペン スキーでは競技選手よりレクリエーションレベルの選手 が損傷率は高い(グレード C)。 <関連するおもな文献の要約>
・NCAA(National Collegiate Athletic Association) ディビジョンⅠ,Ⅱ,Ⅲに所属の男女バスケットボー ルおよびサッカー選手の ACL 損傷を調査した。男女 間の発生率に差を認めるが,大学のディビジョン間の 差は認めなかった12)。 ・NCAA のデータベースを用い 15 歳以上のバスケット ボール,ラクロス,サッカー選手の男女をデータ分析 した。各 ACL 損傷率は,1,000 選手あたり,女性バ スケットボール 0.28,サッカー 0.32,男性バスケット ボール 0.03 ~ 0.13 であった。男性ラクロスは男性バ スケットボール,サッカーより高値を示し,女性ラク ロスは女性バスケットボール,サッカーより低かっ た13)。
・6 シーズンの NBA(National Basketball Association) プレーヤー 702 名,WNBA(Women’s National Bas-ketball Association)プレーヤー 443 名より 4,446 件 の怪我の報告があり,そのうち 0.8%が ACL 損傷で あった。NBA は,22 名で 0.8%,WNBA は 14 名で 0.9%であった14)。 ・アルペンスキーでは,競技選手と比較しレクリエー ションレベルの選手発生率が高値であった。なお, サッカーやバスケットボールの女性アスリートの年間 ACL 損傷発生率は 5%であった15)。 Q7:ACL 損傷の診断における有用な徒手的検査はなに か? A7:Lachman test を用いて,膝関節屈曲 20°で放射線 撮影し評価した場合,ACL 損傷の診断における高いエ ビデンスが得られている(グレード B)。 <関連するおもな文献の要約>
・Lachman test を用いて,健常な 563 膝と ACL 損傷者 487 膝の下腿前方・後方の移動量を測定した。方法は 簡単な器具一式を使用し,膝関節屈曲 20 度で 9 kg を かけて前方後方移動量を放射線撮影し測定した。後方 への移動と ACL 損傷に相関はみられなかった。一方, 前方への移動においては膝関節屈曲 20 度で放射線撮 影し評価した場合,ACL 損傷の診断における高いエ ビデンスを得られた結果であった16)。
・20 名の ACL 完全断裂者を対象に,Lachman test と KT-1000 の信頼性を調査した。Lachman test の検者 内信頼性と検者間信頼性は高く,KT-1000 は低かっ た。Lachman test がよい結果であった17)。
Q8:ACL 再 建 術 後 の 競 技 復 帰 の 指 標 に な る よ い パ フォーマンステストはあるか?
A8:one leg hop test はほぼ左右差なく,よい指標と なっている(グレード C)。
<関連するおもな文献の要約>
と CKC の下肢筋力をみた。OKC では再建術後,下肢 筋力は対称的であった。CKC では下肢筋力パフォーマ
ンスに左右差はあまりなかった18)。
・骨付き膝蓋腱(以下,BTB)法を用いた ACL 再建術 後,36 ヵ月以内の 45 名を対象に臥位,座位,立位の 再現角度と one leg hop test を用いて評価した。座位 での自動再現角度に再建膝と正常膝に有意差が認めら れた。座位と臥位の他動的調整能力と自動的立位肢位 において固有受容能力の差はなかった。one leg hop test において,「よい~とてもよい」という結果は全 体の 95%であった19)。
・ACL 再建術後のサッカー選手を対象に等速性テスト と自動的・他動的固有受容テスト,one leg hop test を用いて評価した。患側のハムストリングス筋力は 16%低下していた。また膝関節 60 度屈曲と完全伸展 で正常な固有感覚であったが,膝関節 15 度屈曲で固 有感覚は患側に低下がみられた。one leg hop test で
はほぼ対称であった20)。
・ACL 再建術後の 15 ~ 45 歳までの 42 人を対象に, 術 後 22 週 以 内 に 4 回 に 分 け single hop distance, 6m-time hop,triple hop distance,cross over hop distance を測定した。hop test の変化は非術側より術 側の方が有意に大きかった。hop のパフォーマンスの 変化と自己評価の相関は 0.26 ~ 0.58 であった21)。 Q9:膝関節屈伸筋の収縮は ACL へのストレスとなる か? A9:膝関節屈曲 0 ~ 45 度での大腿四頭筋の収縮は ACL の張力を増加させ,膝関節屈曲 60 度以上での収縮 では ACL の張力は変化しない。一方,ハムストリング スの収縮により ACL の張力は減少する。また同時収縮 では ACL の張力は,完全伸展から 30 度の屈曲角度で 他動時の張力より有意に高いことが報告されている(グ レード A)。 Q10:各種の運動形態が ACL へ与えるストレスはどの 程度か? A10:CKC 運動での脛骨の前方移動量は,OKC に比べ 少ないが認められる。CKC 運動では膝屈曲位から伸展 する際に張力が増加する。ヒールレイズ,片脚スクワッ ト,チェアースクワットは ACL に同等の張力を与える。 サイクリングは他のリハビリテーションに比べ,比較的 ACL への張力が少ない(グレード A)。 <関連するおもな文献の要約> ・ Lachman test は,前方引きだしテストでの前方剪断 力と比較して有意に大きな緊張が生じた。大腿四頭筋 の等尺性収縮は,膝関節 30 度屈曲位で ACL 前内側 線維の緊張に有意な増加を生む一方,膝関節 90 度屈 曲位では有意な変化がなかった。自動運動では 10 ~ 48 度間で ACL 前内側線維の緊張がみられ,48 ~ 110 度間では緊張がみられなかった。他動運動では関節が 伸展域になるまでは緊張がないままであった。10 度, 20 度,30 度,40 度の屈曲角度では,自動運動と他動 運動の間の緊張に有意に相違がみられる一方,50 ~ 110 度では有意な相違がみられなかった22)。 ・ 膝関節屈曲 30 度の前方引きだし時に ACL の張力は 下腿中間位が最大であり,内旋位の張力は外旋位よ り大きくなった。屈曲 90 度の前方引きだし時に ACL の張力は中間位が最大であり,内旋位ではその張力は 小さかった。内反ストレス時には屈曲 0 度,30 度と も明らかに ACL の張力が増加した。外反ストレス時, 屈曲 0 度では ACL の張力は増加したが,屈曲 30 度 ではほとんど増加せず小さかった。膝関節の非荷重屈 伸時には屈曲 0 度で ACL は最大張力を示し,屈曲が 増すにしたがって急激に張力は減少し,45 ~ 120 度 の間は 1 kgf 以下であり,150 度で再び増加した23)。 ・ 膝関節他動運動時の移植腱張力は伸展に伴い増加し た。自動運動時の移植腱張力は全屈曲角度において他 動運動時の張力より有意に増加した24)。 ・ 他動的膝関節伸展は最後の伸展 10 度の間だけ,ACL に張力を生じた。過伸展 5 度では,ACL にかかる張 力は 50 ~ 240 N(平均 118 N)まで変化した。大腿 四頭筋腱を 200 N の牽引力にてゆっくりと膝関節を 伸展させると,靭帯の力はすべての膝関節屈曲角度で 増加した。925 N の脛骨大腿関節の接触力は,200 N の脛骨前方引きだし力によって生じた靭帯にかかる力 を,平均して完全伸展位で 36%,20 度屈曲位で 20% ずつ減少させた25)。 ・ ハムストリングスの活動により,ACL の緊張は他 動時の緊張より減少した。大腿四頭筋の活動により, ACL の緊張は 0 ~ 45 度の屈曲角度で,他動時の緊張 より有意に増加した。同時収縮では,ACL の緊張は 他動完全伸展から 30 度の屈曲角度で,他動時の緊張 より有意に高かった26)。 ・ 10 度と 20 度の膝関節屈曲位において,負荷のない自 動運動より 45 N の負荷が与えられた方が靭帯の緊張 は有意に大きかった。等尺性大腿四頭筋収縮での緊張 は,60 度と 90 度の膝関節屈曲位では安静時と変化は なかったが,15 度と 30 度では有意に増加した。15 度 での大腿四頭筋とハムストリングスの同時収縮は安静 時と比べ緊張が有意に増加したが,30 度,60 度,90 度の膝関節屈曲位では靭帯は緊張しなかった。等尺性 のハムストリングスの収縮ではどんな屈曲角度でも靭 帯の緊張に変化はなかった27)。 ・ 膝関節の屈曲位から伸展位への動きは,他動的であっ
ても下肢筋の収縮によってでも ACL にかかる張力が 増大した。膝関節 50 度屈曲位から伸展位までの間, もっとも優位に働く大腿四頭筋を個別に収縮させるこ とで相当な張力が生じた。それに対してハムストリン グスの収縮は,どの角度においても張力を増大させな かった28)。 ・ ACL の張力は,膝関節屈曲角度に依存し,また大腿 四頭筋の収縮によって変化した。膝関節包は ACL 伸 張ストレスの保護のために重要であった。60 度以上 の屈曲位では,健常 ACL・再建後 ACL ともに大腿四 頭筋が収縮しても ACL は伸張されないが,0 ~ 45 度 では有意に伸張された。固定位でも大腿四頭筋訓練は ACL を保護することにはならなかった29)。 ・ 前方引きだしの増大は大腿四頭筋が生じる剪断力の レベルに密接に関連した。ハムストリングスの活動 は ACL 不全膝の前方引きだしを健常範囲まで戻し, その活動の減少は前方引きだしの増加の原因となっ た30)。 ・ サイクリングは,80 ポンドでの Lachman test 時に ACL 前内側線維に生じる伸長の 7%,片脚ハーフス クワットはその 21%に等しい伸張を生じた。20 ポン ドのウエイトブーツに抗して完全伸展~屈曲 22°の範 囲での膝伸展による大腿四頭筋訓練は,80 ポンドで の Lachman test の 87 ~ 121%の ACL 前内側線維の
最大伸張を生じた31)。 ・ OKC 膝関節伸展は脛骨の大きな前方移動を認めた。 CKC 運動は OKC 運動に比べ前方移動は半減するが 認められた。ヒールレイズ,片脚スクワット,チェ アースクワットの前方移動量は同等くらいで,サイク リングがもっとも少なかった32)。 ・ 健常者のスクワットでの脛骨移動量は負荷が増すほ ど移動量が増加した。leg extension では,遠心性収 縮中に大きな移動量を示した。ACL損傷膝のスクワッ トでの脛骨移動量は,leg extension と比較すると有 意に小さかった。大腿四頭筋と下腿三頭筋の同時収縮 は,膝関節の安定性を保つための重要な要素であっ た。一方で,ハムストリングスとの同時収縮に関して はそれほどではなかった33)。 ・ スクワッティング中の最大 ACL 緊張値は,自動屈曲 伸展運動でのものと異ならなかったが,筋活動を増加 させることによる緊張の増加はなかった34)。 ・ ACL の 張 力 の ピ ー ク 値 は,step-up,step-down, lunge,one-legged sit to stand の 4 つのエクササイズ 間で有意な差はみられなかった。膝関節屈曲角度によ る ACL 張力パターンでも有意な差はみられなかった。 ACL の張力はそれぞれのエクササイズで,膝関節伸 展時に有意に増加した。CKC エクササイズ時の ACL の張力は,他の運動(スクワット,自動膝関節伸展運 動)と類似していた35)。 ・ エルゴメーターでは,各パワーレベル・ケーデンス における ACL のピーク緊張値に有意な差は見られな かった。平均ピーク緊張値は 1.7%で,他のリハビリ テーション活動と比べて,比較的低い値であった36)。 ・ 階段昇段運動では,膝関節屈曲位から伸展位に動く 際に ACL に対する張力が増大した。ACL 前内側線維 のピーク張力は毎分 80 回と 112 回のケーデンスでは それぞれ 2.69%,2.76%で有意な差はみられなかった。 他のリハビリテーション時にかかる ACL 前内側線維 の張力と比べ,階段昇段時の張力は対象者により大き なばらつきがみられた37)。 ・ 15 分間のトレッドミルによる運動前後での脛骨前 方移動は,正常膝で平均 0.75 mm,不全膝で平均 0.62 mm,再建膝で平均 0.25 mm の増加がみられ,再 建膝の前方移動が正常膝や不全膝より有意に少なかっ た38)。 ・ 片脚着地での大腿四頭筋の筋力の増加と膝関節屈曲 角度の増加が ACL 前内側線維の張力を増加させ,衝 撃力とは相関がなかった39)。 ・ 減速課題(1.5 m 先へホップし,片脚着地)での ACL 平均最大緊張は 5.47 ± 0.28%であり,ラックマ ンテストの ACL 平均最大緊張は 2.00 ± 0.17%であっ た。また,緊張は着地前の跳躍期間に増加しはじめ, 最大床反力に一致して最大値に達した40)。
理学療法介入の推奨グレードとエビデンスレ
ベル
本ガイドラインでは理学療法の介入方法を,保存療 法,手術療法(一次縫合,再建術),再建術後の二次的 変化(合併症),装具療法,物理療法,運動療法,そし て予防という大項目に分類した。運動療法は筋力強化 (筋力評価,トレーニング介入),固有受容器トレーニン グ,加速的リハビリテーション,スポーツ復帰と,さ らに小項目に分類した。介入方法(各項目)別にその 推奨度について検討した。推奨グレードは先に示した 表 2 にしたがって推奨度を決定した。エビデンスレベル は表 3 にしたがい「Minds 診療ガイドライン作成の手 引き 2007」3)に記載されている「エビデンスレベルの分 類」に準じて決定した。なお,本稿に取り上げている Q&A にはエビデンスレベルは記載していないため,ガ イドライン本文を参考にしていただきたい。 Q11:保存療法で満足のいく日常生活は送れるようにな れるか? A11:多くの場合,支障なく日常生活を送れるようにな るが,giving way,疼痛が残存する場合もあるため一定 の見解は得られていない(グレード C)。<関連するおもな文献の要約> ・ 新鮮 ACL 損傷と診断され,Kyuro 膝装具を用い保存 療法を受けた症例 9 膝を対象とした。原則的に Kyuro 膝装具を 3 ヵ月間装着し,受傷後平均約 5 ヵ月間観察 した。脛骨プラトー粉砕骨折の 1 例を除く ACL 損傷 8 膝では受傷後 2 ~ 6 ヵ月で膝関節の不安定性は消失 した41)。 ・ ACL 損傷 18 例に対し保存療法を行った。結果的にこ のうち 6 例は再建術を必要とし,実際に再建術を行っ た。これらの 6 例では 4 例で内側半月板損傷を,1 例 で外側半月板損傷を合併していた。これら 6 例を含め た保存療法の成績は,ほとんどの症例で giving way, 全例で疼痛があった。また,Lysholm score も 64.3 / 100 点と低く,徒手検査も含めて満足できるものでは なかった42)。 ・ 陳旧性 ACL 損傷に対し半月板切除のみ行った 43 例 を対象とし,膝関節不安定性と患者の満足度を検討し た。前方引きだしテストは内側半月板切除により有意 に増加し,Lachman test,N test は変化がなかった。 半数以上は術後日常生活に支障がなく,ほとんどの症 例で結果に満足していた43)。 Q12:ACL 損傷後,保存療法でスポーツ復帰は可能か? A12:レクリエーションレベルであれば可能な場合もあ る(グレード C)。 <関連するおもな文献の要約> ・新鮮 ACL 損傷 56 例に対して関節鏡施行後 2 ~ 4 週 間のブレースまたはギプス固定を行い,その後慎重 な筋力トレーニングを励行させた。結果,Functional Score は概ね良好であり,スポーツ活動はほとんどの 症例で可能となったが,大半はレクリエーションス ポーツレベルだった。前後動揺に関しては,7 割以上 の症例で満足のいく結果は得られなかった43)。 Q13:膝屈筋腱による ACL 再建術において,解剖学的 2 重束再建術と 1 重束再建術では成績に違いがあるか? A13:解剖学的 2 重束再建術の方が成績は良好である (グレード B)。 <関連するおもな文献の要約> ・膝屈筋腱による ACL 再建術を行った 70 例を 1 重 束 再 建 例 と 2 重 束 再 建 例 の 2 群 に 分 け,visual analog scale(以下,VAS),IKDC, knee injury and osteoarthritis outcome score(KOOS),KT-1000 を 用いて臨床成績を評価した。1 重束再建より 2 重束再 建の方が VAS,KT-1000,final objective IKDC にお
いて優れていることが明らかとなった44)。 Q14:膝屈筋腱による ACL 再建術を施行した際,膝蓋 大腿関節に変形や疼痛などの症状がみられるか? A14:ACL 再建術後,膝蓋大腿関節の変形は 4 ~ 5%に 認められる。よって膝蓋大腿関節障害由来の疼痛も出現 する可能性がある。(グレード B) <関連するおもな文献の要約> ・ 内側ハムストリング筋腱を用いた ACL 再建術後,再 鏡視を施行した 494 例を調査し,膝蓋大腿関節軟骨所 見が再鏡視時に増悪していた 21 例(21/494,4.3%) を対象とした。また,膝蓋大腿関節の軟骨損傷がない 85 例を対照群とした。結果,膝蓋大腿関節の疼痛は 認めず,雑音は 1 例に認めた。ROM,KT-2000 患健 差,Biodex による筋力測定,JOA に有意差はなかっ た45)。 Q15:ACL 再建術後の理学療法において,装具は使用 すべきか? A15:装具を装着して理学療法を行っても,非装着で 行っても臨床成績に影響はないと考えられる(グレード C)。 <関連するおもな文献の要約> ・ACL 再建術後患者を装具装着群・非装着群の 2 群に 分け,同一の PT プロトコルを実施し 2 年間フォロー 表 3 「理学療法介入」のエビデンスレベル分類 エビデンスレベル
Level of evidence Type of evidence 内容
1 システマティック・レビュー /RCT のメタアナリシス 2 ひとつ以上のランダム化比較試験による 3 非ランダム化比較試験による 4a 分析疫学的研究(コホート研究) 4b 分析疫学的研究(症例対照研究,横断研究) 5 記述研究(症例報告やケース・シリーズ) 6 患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見
した結果,機能的テストで両群間に有意差はなかっ た46)。
・ACL 再建術後の装具の使用について,疼痛,ROM, 移植腱の安定性等の項目を改善するのか否かを 12 の Randomized Controlled Trial(RCT)を用いて検討
した結果,有効性は示されなかった47)。 ・BTB を使用した ACL 再建術を施行した症例を装具群 と非装具群に分け,Lysholm score,等速性筋力など を比較した結果,両群間で有意差はなかった48)。 ・BTB を使用した ACL 再建術を施行した症例を装具使 用群,未使用群に分け,術前,術後 6 週,3・6 ヵ月, 1・2 年に評価を実施した結果,使用群は CT 上有意 に筋萎縮がみられたが,その他の項目では有意差はな かった49)。 ・BTB を使用した ACL 再建術を施行した症例を装具 使用群と未使用群に分け,術後 2 年間にわたってフォ ローし,各項目を検討した結果,術後 2 年間の膝関節 機能に対して術後の装具装着は有益なことはなかっ た50)。 ・膝屈筋腱を使用した ACL 再建術患者を対象に装具装 着群,非装着群に分け術後 8 ヵ月において両群の成績 を比較した結果,KT-2000,Lysholm scores,等速性 膝関節伸展筋力,pivot shift test 陽性率に有意差はな かった51)。 Q16:ACL 再建術の移植材の違いにより筋力の回復に 差があるか? A16:BTB を用いた場合大腿四頭筋筋力の低下,半腱 様筋(以下,ST)を用いた場合ハムストリングスの筋 力低下がみられることが多い(グレード B ~ C)。 <関連するおもな文献の要約> ・ACL 再建後平均 3 年において,ハムストリングスを 用いた群はハムストリングス筋力の左右差が大きく, 健側に対し術側の H/Q 比が低かった52)。 ・ST,薄筋(以下,ST-G)における ACL 再建術後の 患者は BTB における再建術後の患者と比較し,術後 3 ~ 12 ヵ月の間,膝関節屈曲筋力の患健比は低く, 60%に達していなかった53)。 ・Leeds-Keio(以下,L-K)による ACL 再建術後,大 腿四頭筋は 12 ヵ月,ハムストリングスは 3 ヵ月で術 前の健側と同程度の回復が見られた54)。 ・BTB,ST,ST-GによるACL再建術後6ヵ月において, 大腿四頭筋,ハムストリングスの等速性筋力はどの移 植材においても有意差はなかった55)。 Q17:ACL 再建術後の筋力強化には OKC と CKC のど ちらが効果的か? A17:機能的には有意差はないようである(グレード C) <関連するおもな文献の要約> ・ACL 再建術後,1 週間に 3 回,OKC か CKC の膝関 節と股関節の抵抗運動を一般的な理学療法の一部とし て行ったが,関節弛緩性と機能に有意な差は見られな かった56)。 Q18:ACL 再建術後,元のスポーツレベルに復帰でき る確率はどの位か? A18:再建術後 50 ~ 60%が元のスポーツレベルに復帰 するが,術前のスポーツレベルが高いほどその割合は高 い(グレード B ~ C)。 Q19:ACL 再建術後,元のスポーツに復帰するにはど の位の期間が必要か? A19:おおよそ 12 ヵ月後でのスポーツ復帰に関する調 査が多く,その時点で 50 ~ 60%の割合で復帰している が競技レベルが高いほどその割合は高い。移植材による 違いでは,L-K を用いた再建術ではスポーツ復帰が早い (グレード C)。 <関連するおもな文献の要約> ・BTB による ACL 再建患者は術後 12 ヵ月で 56.6%, ハムストリングスによる ACL 再建患者は 53%が術前 レベルのスポーツ復帰をしていた57)。 ・ACL 再建術後,スポーツ復帰した 45 人の患者のう ち 62.2%が同レベルのスポーツに復帰した。しかし, 20%が再受傷の恐怖により,17.8%が膝関節の不安定 性と痛みにより同レベルには復帰しなかった58)。 ・ACL 再建術後のスポーツ復帰には心理的要因が大き く影響していた59)。 ・ACL 再建術後 2 年以上経過した 100 例のうち,受傷 前のレベルのスポーツに復帰した者は約 47%で阻害 要因は膝関節の不安定感がもっとも多かった60)。 ・ACL 再建術後 1 年では,競技レベルで 82%,レク リエーションレベルで 56%がスポーツ復帰してい た61)。 ・L-K による ACL 再建術後,ゲーム復帰は平均 6.4 ヵ 月であった62)。 ・ACL 再建術後の患者は機能的装具をつけた状態では 平均 6 ~ 7 ヵ月でスポーツ復帰し,膝蓋腱による再建 患者がもっとも早く full activity に戻ることを許可さ れていた63)。 ・競技レベルの選手で ACL 再建術を行った患者 77 名 のうち,術後 12 ヵ月以内に 62 名が受傷前と同じレベ ルかそれ以上復帰したとし,予後調査ではそのうちの 30 名がそのレベルを維持していた64)。
Q20:ACL 損傷は予防可能か,可能であればどのよう な方法があるか? A20:ある程度,予防は可能だと考えられる。ジャンプ, バランス,筋力,アジリティ,動作指導等の複数の要素 を組み合わせたプログラムが ACL 損傷発生率を減少さ せる(グレード B)。 <関連するおもな文献の要約> ・サッカー,バレーボール,バスケットボール選手を対 象に女子 366 名を介入群,女子 463 名,男子 434 名 を非介入群とした。介入群は,神経筋トレーニング を行った結果,非介入群(女子)と比較して有意に ACL 損傷発生率が減少した65)。 ・女子ハンドボール選手を対象にコントロール期を 1 年 間,介入期を 2 年間とし介入期は 15 分間の予防プロ グラムを実施した。ACL損傷率に有意な変化はなかっ たが,上位リーグでは予防プログラムを完了した選手 は未完了の選手と比較して有意に減少した66)。 ・ユース年代女子サッカー選手を対象に,介入群は神経 筋トレーニング(教育,ストレッチ,筋力,プライ オメトリック,アジリティ)を 2 年間実施した結果, ACL 損傷発生率は有意に減少した67)。 ・ハンドボール選手を対象に,介入群はカッティング, 着地動作の改善,バランス,筋力トレーニングから構 成されたプログラムを 1 シーズン実施した。下肢外傷 発生率は,介入群が非介入群と比較して有意に減少し た68)。 ・男子サッカー選手を対象に,バランスボードを使用し たトレーニングを実施した結果,介入群の ACL 損傷 発生率は有意に減少した69)。 ・高校女子サッカー,バスケットボール,バレーボー ル 選 手 を 対 象 に, 介 入 群 は knee ligament injury prevention program を実施した。ACL 損傷発生率に
有意な差はなかった70)。 Q21:ACL 損傷の予防トレーニングにはどのようなト レーニング効果があるか? A21:明確なトレーニング効果はまだわかっていない が,実施によって下肢関節角度やモーメントに前向きな 効果がみられている。ただし,研究によってプログラム 内容や効果を判定する評価が異なるので一定の見解は得 られていない(グレード B)。 <関連するおもな文献の要約> ・高校女子バスケットボール選手を対象に,トレーニン グ群はスポーツ傷害予防プログラムを,コントロール 群は普段のプログラムを 8 週間実施した。トレーニン グ群はリバウンドジャンプにおいて膝関節屈曲角度, 膝関節間距離が増加した71)。 ・大学女子選手を対象に神経筋プログラムを 6 週間実施 し,実施前後に三次元解析によるジャンプ測定を行っ た。stop jump では膝関節外反モーメントが有意に低 下し,drop jump では膝関節屈曲角度が有意に増加し た72)。 ・女子サッカー選手を対象に ACL 損傷予防プログラム を 1 シーズン実施した結果,実施前後で drop jump にて股関節内転・内旋が有意に減少した73)。 ・男女選手を対象に drop jump をデジタルビデオにて 動作解析を実施した。一部の女子選手は神経筋トレー ニングを行わせた。女性トレーニング群は有意に膝関 節間距離が向上した74)。
・女子選手を対象に Knee ligament injury prevention プログラムを実施した結果,トレーニング群は着地時 の床反力が有意に低下した75)。 ・女子高校選手を対象にプライオメトリックプログラム (筋力,柔軟性を含む)を実施した結果,ブロックジャ ンプにて膝関節内反・外反モーメント,床反力が減少 した76)。
本ガイドラインの到達点と問題点
ACL 損傷は再建術後の成績は良好でおおむね日常生 活や,スポーツへの復帰が可能となっている。しかし, スポーツ復帰した患者の中には再損傷・反対側損傷も生 じているのが現状であり,近年再発予防に関する研究も 散見される。本ガイドラインは ACL 損傷者の評価,治 療介入に関する文献だけでなく,前述の観点から ACL 損傷の受傷機転,性別の影響,発生率など疫学的な文献 についても検討し,掲載している。改訂版の際は ACL 損傷予防・再発予防に関する文献が増加すると考える。 本ガイドラインは日々臨床で ACL 損傷の患者を担当 している理学療法士によって作成されたため,専門用語 が多く,ACL 損傷の患者を担当する機会のない理学療 法士にとってはやや難解な点もあるかと思われる。本稿 をきっかけに Q&A やガイドラインを参考にされること で,より臨床での理学診療に活用されれば幸いである。 文 献 1) 日本整形外科診療ガイドライン委員会 /ACL 損傷ガイドラ イン策定委員会(編):ACL 損傷診療ガイドライン.南江 堂,東京,2006. 2) 福林 徹,蒲田和芳(監):ACL 損傷予防プログラムの科 学的基礎.NAP,東京,2008. 3) 福井次矢,山口直人,他(編):Minds 診療ガイドライン 作成の手引き 2007.医学書院,東京,2008. 4) 理学療法診療ガイドライン部会(編):理学療法診療ガイ ドライン 2011.(社)日本理学療法士協会,2011. 5) 安本正徳,菊川和彦,他:膝前十字靭帯断裂に伴った半月 板損傷,受傷時期と受傷後治療状況による検討.膝.2007; 32: 243–246.6) Finsterbush A, Frankle U, et al.: Secondary damage to the knee after isolated injury of the anterior cruciate ligament. Am J Sports Med. 1990; 18: 475–479.
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