学生 の多文化共生意識 の育成 に向けて
一小学校におけるクラブ活動への参加から一
林 朝 子
Fort heDevel op‑ entofSt udents'M ul t i cul t uralCoexi st enceConsci ousness:
Through Part l Cl pat i on i n Cl ubAct i vi t yofEl e‑ ent arySchool Asako H AYASHI
要 旨
現在、 日本国内は多文化多言語な空間 とな りつつあ り、学校現場 にも外国人の子 どもたちが多 く在籍 し、教 育上の問題点は多岐に渡 っている。本稿 では、学校現場 において 「 多文化共生」意識を持つ ことが教育上の問 題解決の支えの一つ となると考え、小学校のクラブ参加 と振 り返 りを繰 り返す ことで、教員志望の学生 に対す
る 「 多文化共生」意識 の育成 を試みた。
は じめ に
本稿では、教員 を 目指す学生 が 「 多文化共生 」 1 )の意識 を持つための試 み としての‑活動 の提示 と共 に、活動の意義 につ いて述べ る。 出入国管理及 び難民認定法 ( 入管法)が 1 98 9 年 に改訂 ・1 990 年 に施 行 され、 日系人の就労の 自由が認 め られたために、 日本への定住が増え始 めた。 その結果、現在 の 日本 には多様な言語 や文化を背景 に持つ外国人市民
2)と日本人市民が共 に生 きる環境、つ ま り 「 多文化共生」
が広 が りつつ あ り、 その中で我 々は 日常生活を送 っている。 しか し、実際 に我 々が本当の意味での 「 多 文化共生」 を捉えた上で、外国人市民 と共 に生活を行えているかは疑 わ しい。
さらに、学校 の教育現場では年 々外国人 の子 どもたち
3)が増加 し、教育保障の観点か らも外国人 の子 どもたちに対す る教育 は非常 に大 きな問題 とな っている。 日本語指導 が必要 な子 どもたち も多 く存在 し ている4 )が、 そのような子 どもが少人数 しかいない学校 には 日本語指導 のための専任教員が特別 に加配
され ることはない。 しか し、た とえ 日本語指導 が十分 に行え る環境があった として も、教科学習への移 行がスムーズに進むわけではない。生活言語能力 と学習言語能力が異 なる言語能力であるためであるが、
学習言語能力 までを十分身 に付 け られず、全 く教科学習 につ いていけない子 どもたちが看過 されている ことも多 い。 そ して、外国人の子 どもや 日本の子 どもの間には、言語 や文化 における相互 の誤解 に端を 発 し、偏見やい じめが生 じているケース も少な くない。 しか し、 このような 「 多文化共生」が急速 に進 む学校現場 の多岐 に渡 る問題 に対 して、 日本語指導 の専任教員や一部 の国際担当教員だけではとて も対 応がで きない。学校現場 を本当の意味での 「 多文化共生」空間 にで きれば、 自然 と学校 内での全教員 ・ 全子 どもが協力 し合 う気持 ちが生 まれ、学校 を協働の場所へ と導 けるはずである5 ) 。
以上 の点か ら、教員を志望 している学生 ( 以下、学生)が 「 多文化共生」意識 を持つ ことは非常 に意 義 のあることで あ り、今後 の学校現場 においては必須 の認識 であ ると言 え る。 しか し、実 際 に学生 に
「 多文化共生 とは何か ?」 と質問を してみ ると、「 表現 その ものを初めて聞いた」 とい う反応が多 く、地
域、特 に学校現場 の多文化共生 を考えた ことがない学生が大半 を占めていた。そ こで、学生 に小学校 の クラブ活動への参加 を通 し、 「 多文化共生」 とは何かを考 え、意識づ けさせ るために本取 り組 みを行 っ た。以下では、 クラブ参加 と振 り返 りを繰 り返す ことで、学生が どのように多文化共生 につ いて考えを め ぐらせ、深め られたか について提示 を行 う。 なお、今 回の取 り組 みでは、省察的実践の考え
6)に基づ き、 クラブという実践 に参加 し、 レポー トと大学授業 内での振 り返 りにおいて、考えを言葉で表現 して い く方法を取 り入れ、学生 の気づ きの変化 を促 した。
1.取 り組み方法
本取 り組 み には、 2008 年度後期開講授業 の一環 と して、学生 1 4 名 (1年生) が参加 した。 Ⅰ小学校
「 世界 を結 ぼ うクラブ」 ( 以下、 クラブ) に計 5 回の参加 とその前後 には レポー ト作成 と振 り返 りを行 っ た。以下で、詳 しく記す。
1‑1. Ⅰ小学校 「 世界を結ぼう」 クラブにつ いて
Ⅰ小学校 には常 に 20 名前後 の外 国人児童 が在籍 してお り、学校環境が多文化で ある。 その ような中 で多文化共生 の意識 を子 どもたちに自然 に持 って もらお うとい う考えの基、設 け られた クラブである。
クラブ担 当教員 は 2 名 で、 内 1名 はポル トガル語 での 日本語指導教員 S 先生 (日系 ブラジル人) であ る 。2008 年度 のクラブ参加児童 は 、4 年生 1 6 名で外国人児童 は 0名であ った。 クラブ活動 は 、 5‑ 7 月、
1 0月〜2 月 に各 1回ずつ、合計 8 回行 われた。
1‑2. クラブの 目的
【 図 1 :クラブの目的】
以前か ら、外国人 の子 どもたちの居場所作 りとい う活動 は多 く行 われている。 しか し 、 Ⅰ小学校 での クラブ活動 は、外国人 ・日本人 という枠組 みに関係な く、子 どもが積極的 に活動 に参加 し、 その活動を 通 し様 々な文化を知 り、認 め合 い、友達関係を築 くことまでを視野 に入れている点で注 目に値す るであ
ろ う
。1‑3. クラブの活動内容
以下 にクラブの活動内容 について簡単 に記す。 クラブでは Ⅰ小学校 の 2 名 の教員が中心 とな り、活動 を進 めた。 なお、2008 年度 はブラジルを中心 にとりあげた活動 内容である。
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【 表 1 :クラブ活動内容】
回 月 活動タイ トル 活 動 内
容学 生 の 参加方法
1 5 クラブ名を決めよう 子 どもたちが話 し合い、クラブ名を 「 う」クラブと決めた○ 世界を結ぼ /
2 6 ブラジルについて知ろう ブラジルの友達に手紙を書 く前に、ブラジルにつ いて知る○家族の人に聞いた り、本やニュースを /
見たり 、S 先生に問いた りした○
3 7 手紙を書 こう ブラジルの日本人学校の友達に日本の学校生活や / 習慣について手紙を書 く○( 後 日、ブラジルから
も返事が届 く)
4
10 日本を知 ってもらおう 夏休みの間に各 自インスタントカメラでブラジル 支援型 では珍 しいと思 うものを写真に取 り、それに説明 をつけてブラジルの友達に送る
○5 ll みんなで歌おう ブラジルの 「 ねこに棒をなげた」 という歌を歌 つ 協同参加型 た○ポル トガル語 も少 し体験 した○
6 1 2 S 先生 つてどんな先生 ? 先生からブラジルの話を聞き、それについて色々 観察型
質問をした○ 協同参加型
7 1 ダンスを踊ろう ブラジルの 「 POPPOP(ポピポピ ) 」 という楽 し 協同参加型 い曲に合わせて、皆で踊 った○
8 2 お菓子を作ろう ブラジルのお菓子 (ココナッツ味とチ ョコレー ト 協同参加型 味の団子のようなもの)を皆で作 って、食べた○
その他 クラブ活動の様子を紹介するポスターを作 り、小学校内の祭の時に掲示 した○
1‑4. 学生 のクラブ参加 の 目的 と意義 ・授業 の流れ
クラブ参加 目的 は学生 が 1 )外 国人 の子 どもた ちが学校現場 にた くさん い ることを知 り、2 ) こ ども た ちを取 り巻 く問題 を考 え、3 )問題解決 のための軸 とな る 「 多文化共生 とは何 か」 を認識す ることで あ る。意義 は学生 が実 際 に教員 にな った場合 に、 「 多文化共生」 の意識 を持 って い ることで、子 どもた ちの国籍 や言語 に とらわれず に全 ての子 どもた ちに接 し、 「 多文化共生」意識 を学級、学校 へ と広 げて い く基盤 を支 え る役割を担 え る点であ る
。クラブ参加前 には、教員か らの多文化共生 に関す る知識提供 は行 わず 、 5 回の クラブ参加 と振 り返 り を通 して、学生 自身 の 「 多文化共生 とは何 か」 を導 いた。
クラブ参加 と大学での授業 の関係であるが、 クラブ参加 の前週 には、 クラブ時の活動 内容 について確認 と参加方法 について話 し合 った。 クラブの翌週 には、毎 回、 レポー ト提 出 と振 り返 りの授業 を行 った ( 最 終 のクラブ後 は振 り返 り授業 は行 わなか った)。振 り返 りでは、各 自の意見や考えの交換 の場 とな った。
〔 参加⇒小 レポー ト⇒振 り返 り〕 というサイクルを 4 回繰 り返す (まとめ として最終 レポー トも課 した) こ とで、 自らの気づ きを言葉で表現 し、お互 いに伝え合 い、 さらに自身の考えを深める流れ とな った。
1‑ 5. 学生 のクラブ参加方法
表 1に学生 の参加方法 を示 した ように、 クラブの活動 内容 によって、参加 の形態 は次 の 3 パ ター ンに 分かれた。
1 )観察型 :教室 の先生 と子 どもた ちの様子 を見て学 ぶ
2)支援型 :子 どもた ちの学習作業 に対す る手助 けを しなか ら学 ぶ 3)協 同参加型 :子 どもとた ち と一緒 に活動 しなが ら学ぶ
クラブに参加 した学生 が 1年生 で小学校児童 と接す ることに慣れて いない者が多 く、学生 の振 り返 り
では、支援型での接触が最 も難 しか った ことが窺え る
。【 学生 Tl 】 全員 を見 るとい うことの大切 さと難 しさを痛感 した。児童一人一人 にペースがあ り、得 意不得意がある。 同 じ子 は一人 も居ない。その中でなかなか作業が進 まない児童 も出て
くる。そ うした時 に、 どういった指導 が適切 なのだろうか。
【 学生 T2 】 もっと積極的に子 どもたちに話 しかければよか った。
2. 振 り返 り内容の考察
クラブ活動後の レポー トと振 り返 り授業での発言を中心 に、学生 の多文化共生 に対す る意識や考え方 を詳 しく見てい く 。2 月のクラブ最終 回は レポー ト提 出 ・振 り返 り授業 を行 うことがで きなか ったため、
1 0‑ 1 月 の 4 回分 につ いて取 り上 げる
。【 1 0月 :日本 を知 って もらお う】
活動 内容 :
ブラジルの 日本語学校 の友達 に、 日本の様子を写真 とコメン トで伝え る活動。夏休 み前 にクラブ の児童全員 にイ ンスタ ン トカメラを配布 し、夏休 み中にブラジル に紹介 したい ものを撮 って くるよ うに指示 した。児童が撮 った ものは 、 Ⅰ小学校 の近 くにあるお寺 や学校 の中の様子 (げた箱や傘立 てな ど)であ った。子 どもたちの視点か らの伝えたい ものがわか る興味深い ものであ った。
学生 の参加 :
支援型であ ったが、写真へのコメ ン トが全 く書 けない児童 にどのように指導 していいのか、 どの 程度 まで教えていいのか苦心 したようである
。学生 の コメ ン ト:
【 学生 K 】 世界を知 ると同時に、 日本の文化 というもの も学んでほ しいと思 う。/子 どもたちがいっ たい外国の ことを どのように認識 しているのか興味があるので聞いてみたい。
【 学生 M 】 ある男 の子 の 「そ うか、 日本語 でいいのか。べつ に英語 で書 く必要 ないんやな ! 」 とい う発言 は私 を驚かせた。
【 学生 S】 ブラジルの 日本語学校 の子 どもに送 るということで、 それを書 いている子 の独 自の判断 で、難 しい と思 う漢字 には振 り仮名をふ っている子 もいた。
【 学生 H 】 小学生 は多文化理解や多文化共生 とい うことを考えているのではな く、単純 にブラジル の子 どもたちと仲良 くな りたい という気持 ちで取 り組んでいたのか もしれない。
[ 1 0月 :コメ ン トのま とめ]
①母国 ・母文化 (日本 ・日本文化) を知 る必要 :
子 どもたちには海外の ことを知 るだけな く、外 に発信す るには母国 ・母文化の ことを知 る必 要がある。
②母文化 を伝えたい気持 ちの 自然発生 :
子 どもたちは母文化を紹介す る意識を 自然 に持 っていた
。③歴史的背景 を知 る必要性 :
日本 に外国人の子 どもたちが増えた り、海外 に 日本語 を話す子 どもたちがいる歴史的な理 由 を知 る必要がある
。④友達関係作 りの意識 :
友達 として仲良 くな りたい気持 ち、友達 の苦手 な部分 を支援 したい気持 ちが必要である
。1 30
【 11 月 :みんなで歌 お う】
活動 内容 :
ポル トガル語 に接す ることを中心 に取 り上 げた活動 。 S先生 にポル トガル語 での挨拶 と自己紹介 を教えていただき、 それ らを全員で覚えた後、 クラブに参加 している全員でお互 いに挨拶 と自己紹 介 を行 った。 その後、今回のメイ ン活動であるブラジルの歌 「 猫 に棒 を投 げた」の導入 として、 ま ず、動物 の鳴き声紹介があ り、 ブラジル と日本の動物の鳴き声が異な ることを知 る。 そ して、歌の 導入後、全員で輪 にな って踊 りなが ら歌を歌 った。 クラブの最後 の方 には口ず さめ るようにな って
いた児童 もいた。 ブラジル人児童 2 名 も参加7 ) 。 学生 の参加 :
協同参加型で、児童 とポル トガル語 で直接 自己紹介を した り、一緒 に手 をつないで踊 った りした。
ポル トガル語 や歌の予習 は していたが、学生 にとって も新 しい もので、新 しいことを一緒 に行 うこ とで、児童 との距離 が縮 ま り、 よ り感 じた ことも多か ったようである
。学生 の コメ ン ト:
【 学 生 Ⅰ】 子 どもたち もポル トガル語 に興味 を持 って 「や ろう! 」 とい う気 が窺 えた。 ポル トガル 語、つ ま り、新 しく接す る異文化 に興味を持 って いた。/異文化 に接 し、 日本語つ ま り
自分 の国の言葉 との違 う点を (ブラジル国籍 の子 も自主的 に参加 し)一緒 に交 じって、
お互 いの文化を認 め合 う心 を子 どもたち も学んだ と思 う。 ブラジルの文化 に接す ること で、子 どもたちはブラジルのことを身近 に感 じることにな ると思 った。
【 学生 K 】 男 の子が立 ち歩 いていろいろな人 に聞 きに行 っていたのには驚 いた 。 / (ポル トガル と日
本 の動物 の鳴き声 の比較 について)何かを比較 してい くことで、楽 しく知 らない文化を 理解できるか もしれない。
【 学生 T2 】 (ブラジル と日本 の子 どもたちが)何 か もっとお互 い分か り合え るよ うな改善策 はない か と考えたが、やは り今 回の授業 のように少 しずつ ブラジルのことを学 び、体で ブラジ ルの文化 を体感す るとい うのが一番良 い と思 う
。【 学生 Hl 】 実際 にポル トガル語 を話 してみた り、聞いた りす ることに対 して、子 どもたちは興味を 持 った表情で活動 しているように思 った。やは り、今 まで知 らなか った ことを知 るとい
うことは、子 どもたちにとって新鮮で よい刺激 にな るだろう
。【 学生 H2 】 今後 も五感や体全体を使 って異文化を理解 し、実際 に楽 しむ活動ができれば良い と思 っ
た 。
[11 月 :コメ ン トのま とめ]
主体的な異文化体験 の大切 さ :
文化が異 な ることを楽 しく体験で きれば、異文化を身近 に感 じ、 お互 いが分か り合え るきっ かけとなる
。【 1 2 月 : S先生 って どんな先生 ?】
活動 内容 :
今 までの活動 を皆で思 い出 しなが らお さらい し、児童の意識 をブラジル に向けた。 その後、S 先
生か ら自身 の歴史、 ブラジルの話 ( 食文化、学校 の様子 な ど)、 ブラジルか ら来てい る子 どもたち
の問題 な どを聞 き、 その内容や浮かんだ疑 問点 を S 先生 に児童が質 問 した。児童 の質 問を更 に深
め る形で、学生か らも質問を した。
学生 の参加 :
前半 は児童 と S 先生 のや りと りを見 てい る観察型で あ ったが、後半 は児童 と共 に質 問を行 い、
協 同参加型 といえ る
。学生 の コメ ン ト:
【 学生 Tl 】 ブラジル についての理解が中心で、机 に座 っている時間だ ったに もかかわ らず、子 ども たちは比較的生 き生 き してみえた。やは り、未知の ものを知 る楽 しさは年齢 に関係 ない のだろう 。 / S先生 の 「どんな顔を している ?」 とい う質問 に、「 何 を もって 日本人 とす るのか」 という疑問が生 まれた。/人種や国籍 につ いて考え させ られた。
【 学生 K 】 みんな予想以上 に興味津 々で、机 に座 る授業形式であ ったが、 ある程度集 中できていた ように思 う
。【 学生 M 】 他国の文化 を知 ることは 自国の ことを再認識す る良 いきっか けとな る。
【 学生 Hl 】 ブラジル という日本か ら遠 い国 について新 しいことを学ぶ ことは、子 どもたちにとって 新鮮で刺激的な ことなのだ と思 った 。 / ( 学校 でのブラジルの子 どもたちの様子 は)子 ど もたち も 、 S 先生 の話 を聞いて驚 いている様子であ った。子 どもたちにとって、そ うい う現状 を知 るとい うことはす ご く重要 な ことだ と思 う 。S 先生 の話 を聞いて、今、 同 じ 小学校 にいる外国の子 どもたちが どのような状況で授業を受 けているのか分か ったに違
いない。 また、 こうい うことを知 っているか知 らないかで、 クラブ活動 に対す る意識 も また変わ って くるか もしれない。
【 学 生 S】 S先生 か ら、 「 何故 ブラジル に 日本語学校 があ るのか ?」 な どとい う日本 とブラジルの 関係 につ いて質問が出された とき、子 どもたち同士で、理 由を考えてお互 いに議論 して い
た 。[ 1 2 月 :コメ ン トのま とめ]
見えない部分 を理解す ることの大切 さ :
外見、国籍、〜人、普段 の様子 ( 例えば、学校 で楽 しそ うに しているな ど)では分か らない 潜在的な部分が多 い。
【1月 :ダ ンスを踊 ろう】
活動 内容 :
ブラジル文化 の明 るさに触 れ ることを中心 に取 り上 げた活動 。 11 月 の活動で 「 猫 に棒 を投 げた」
とい う歌を歌 ったが、今 回は、 よ り楽 しくブラジルを感 じて もらお うと、「 POP POP (ポ ピポ ピ )」
を取 り上 げ、歌、楽器、ダ ンスを楽 しんだ。 ブラジル人児童 2 名 も参加。
学生 の参加 :
協同参加型で、児童 も学生 に慣れて きたようで、児童か ら学生 に 「 一緒 に踊 ろう」 と声をか ける 様子 も見 られた。
学生 の コメ ン ト:
【 学生 H2 】 ( 特別参加 の) ブラジル出身 の二人が踊 っていた姿 な どを見て、母 国愛 とい うような ち のを強 く感 じた。「日本 の文化」「日本人 らしさ」を彼女たちに押 し付 ける教育 はよ くな い と思 った 。 / (日本語 がで きないことは)問題視 されている。 日本で生活 してい くな ら 克服 して もらいたい問題 だが、 そ うな ると 「日本語使用」 を強要 しているのではないか
とも考え られ難 しい。/ 日本 もブラジル も彼女 たちに とって、両方母 国のように愛着 を
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持 って もらいたい し、理解 して もらいたい。 だか らこそ、 このクラブでた くさんの 日本 人 の子 どもたちと触れ合 ってほ しいなあ と改 めて感 じた。
【 学生 Tl 】 他文化を知 るゲス トがただ他文化 を披露す るだけでは、相互理解 につなが らない という 意見 もあ った。 しか し、果 た してそ うだろうか。確か に、他文化 を教え る側 と教 わ る側 との関わ りが一過性 とな って しまえば、相互 の理解 に繋が らない。 しか し、他文化 を知 るきっか けにはな るだろう。 これか ら考えていかなければな らないのは、 どのように し て一過性 に留めないか とい う事 だろう 。 / ( 一過性 に しないために)音楽 をは じめ とした ツールを利用 して児童 たちが一丸 とな って楽 しめ る活動 にす る必要が ある。/他文化 と している時点で、 それ 自体 を 自分 たちの もの とは違 う、 いわゆる ̀ ̀ 特別" な もの として 意識 しているといえ る。 それは決 して悪 い事 ではないはずだ。 自分ではない他を認識 し なければ、相互理解な どあ り得 ない。他文化であるという前提か ら、相互 の文化理解が 始 まるのである
。【 学 生 Ⅰ】 「 多文化共生」 に至 るには、 その人 の属す る集 団共通 の文化 を理解す る以前 に、 その人 個人 の特性 を知 る ( 個人 の持つ異文化 を互 いに理解す る) こと、受 け容れ ることが重要
にな るとい うことを理解 した。
【 学生 K 】 異文化を知 るには、 自分 の文化 を しっか り知 ることが大切 だ と思 う。教え合 いを提案 し た い。
[1 月 :コメン トのま とめ]
①文化 に違 いはあるが差 はない :
自文化 と他文化 に違 いがあるのは当然 だが、 どちらかを一方的に受容 させ るべ きではない。
②一過性 に しない :真 の相互理解 には一過性 の活動 だけでは不十分である。
③個人 と個人 の関係作 り :
一個人が持 っている文化 を相互 に理解す ることが、全体的な多文化共生 につなが る
。【 2 月 :お菓子を作 ろう】
活動 内容 :
お菓子作 りで ブラジルの食文化 を体験 し、食文化 の違 いを考え る活動。 も参加。材料 はブラジル か ら輸入 された ものを使 ったので、入 っていた容器 な どか らも異国を感 じていたようである。 ブラ ジル人児童 2 名 も参加。
学生 の参加 :
協同参加型で、一緒 にお菓子を作 るとい う作業で とて も楽 しく行えていたようである
。学生 の コメ ン ト:
【 学生 M l 】 「や りた い 」授業 は彼 らに興味を抱かせ ることがで きる。 そ こか ら 「 知 りた い 」 と思 う のはす ぐだ。 お菓子作 りの ときにお菓子 の上 に乗せ る植物 の ことは、児童 が真 っ先 に
「これなに」 と質問 していた。実際は食べな くていい らしいが全員食べた。 とて も苦か っ た。おそ らく児童たちは一生忘れないだろう。 自分か ら 「 知 りたい」 、「 や りたい」 と思 っ た ことによる体験 は、彼 らの心 に残 り続 ける 。 「や りたい」 と思 え る授業 には このよう な機会が多 くある。積極的な姿勢がそのまま 「 知 りた い 」 とな りいつのまにか 「 多文化」
の ことを理解 している。 この前 向きな姿勢が 「 共生」 だ と私 は考え る。
[ 2 月 :コメ ン トのま とめ]
知 りたい という気持 ちが大切 :知 りたい と思 わなければ、理解 につなが らない。
3. 学生の 「 多文化共生」 に対する意識
前述 したように、S 小学校 での クラブ活動参加 の最終的な 目的は、学生各 自が 「 多文化共生」 につ い て考え ることであ った。 ここでは、計 5 回のクラブ活動参加 と 4 回の レポー ト提 出 と振 り返 り授業 を通
し、最終的 に学生が 「 多文化共生」 につ いて どのような意識 を持 ったかにつ いて触 れたい。
3‑ 1.学生の考える 「 多文化共生」
最終 レポー トでは、学生 自身が一連の活動 を通 して考えた 「 多文化共生」 につ いて記述 して もらった。
その中で、彼 らが考え る 「 多文化共生」 について端的 にまとめ られている部分を紹介す る
。【 学生 H2 】 「 多文化共生」 とは、 さまざまな国の子 どもたちがお互 いにそれぞれの文化 ・慣習 な ど を尊重 しあい、 同 じ空間の中でおのおのが心 よ く共存 しあえ ることだ と私 は考えます。
【 学生 T2 】 私 は 「 多文化共生教育」 とは 「 互 いの国の文化 を知 る」 とい うだけでな く、 「 互 いの国 の文化 において共存 し、理解す る」 とい うことが大事 なのではないだろうか と思 う。 し か し、 「 理解」 とい って もどこか らが 「 理解」 なのか とい う範囲を決 め るのはあいまい で難 しい。 しか し、「 共存」な らそれ よ りも容易 にで きるのではないだろうか。つ ま り、
この クラブのようにまず 1つの文化 (このクラブの場合 ブラジルの文化) に一方 の文化 を持つ者が触れ、そ してそれを共有す る。そこか ら自分 にはルーツのない文化を実感 し、
その文化 について考え る。 そこか ら 「 理解」 というものが初 めて生 まれて くるのではな いだろうか と思 う。/私 の考え る 「 多文化共生教育」 は、 まず 「お互 いの国の文化 を知 りたい」 という意思 をお互 いが持つ ことか ら始 まる。それか らその文化 において 「 共存」
す る。そ こか ら 「 理解」が生 まれ るとい うものである
。【 学生 T l】 多文化共生 とは、多 くの異 なる文化 と、「 共 に生 きる」事であると、私 は考えている。
̀ ̀ 多 くの異 なる文化が 1つ にな る" とい う認識ではな く、文字通 り 「 共 に生 きる」、「 解 り合 う」 という認識が必要 なのである。異な るものが 1つ になろうとすれば、 どうして も障 りが生 じて しまう。 それ故 に、お互 いが認 め合 う事が何 よ り大切なのである。多 く の文化が認 め合 い共存す る、そ ういった世界 に欠かせない秩序を、多文化共生 と呼びた い。
【 学生 s l】 多文化共生 とは 「国籍 や民族の違 う人 々が、 お互 いの文化 を認め合 いなが ら、対等 な関 係で共 に生活 してい くこと」である。
【 学 生 K 】 この クラブに見学参加す るまで、 「 多文化共生」 とは 自分 たちの文化 を我慢 し合 うこと のように思 っていた。 しか し、確かに我慢す ることも時には必要 だ と思 うが、何 よ り認 め合 うことが大切 なのだ と今 は思 っている。 そのために私 たちは、 日本人 と外国人が互 いを認め合 い尊重 し合え る多文化共生教育を 目指すべ きなのではないか と思 う
。【 学生 H3 】 「 多文化共生」 は単 に普段 している共生 を文化 の違 い とい う点 まで視点を広 げた もので あると私 は考え る。そのため 「 多文化共生」 は別 に特別な ことを しようとしな くて もよ い と思 う。今 まで 自分が行 って きた人 と接す る方法 を、異 な る文化 を持つ人 たちに対 し
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て もそのまま実践すれ ばそれで よいので はないか。/ 同 じ日本人であ って も細 か く見て いけば地域 によって文化 の違 いはあるはずであ り、大学な ど様 々な地域か ら人が集 まっ て くるところでは気 に留 め ることは無 くて も常 に 「 多文化共生」が存在 しているといえ る。/外国の文化 との 「 多文化共生」 とな ると、言語 の違 いがあ るため困難 さが増すか もしれないが、人 と人 との関わ りの中での対話か ら生 まれ るとい う点では基本的 に同 じ であると思 う
。【 学生 S2 】 「 多文化共生」 とは、異国の文化 に触れ相互 に理解 し合 い、その上で個人 としてのアイデ ンティティーを認め付 き合 ってい くということだと考える 。 / 「 多文化共生」 とは教育す る べきことというよりも、 自然 と個人の間で行われてい くのか本来の姿なのではないか と私 は考える。 自然 と行われるはずの ものであるか らこそ、敢えて教育 となると難 しい。
【 学生 M l 】 「 多文化共生」 につ いて感 じた こと、 それは相手 の ことを 「 知 りたい」 と思 うことが大 切 だ とい うことだ。
【 学 生 o 】 「 多文化共生」 とは、 いろいろな国籍 ・文化 ・身体的な特徴 を もった人 々が、互 いに理 解 し合 いなが ら、共 に住 みよい社会をつ くっていこうとす る考え方 を表す言葉である。
【 学生 M2 】 「 多文化」 とは異 な る文化 を持つ グループが 「 対等 な」立場で構成、 もしくは許容 ・包 容 されている状態の ことであ り、 それを 「 共生」 とつなぎ合 わせ ると、 「国籍 や民族 な どの異 な るグループの人 々が、互 いの文化的違 いを認 め合 い、許容 し合 い、 「 対等 な」
関係を築 こうとしなが ら、地域社会 の構成員 として共 に生 きてい くこと」 と定義できる。
3‑2. 学生の考える多文化共生の図式化
最終 レポー トの多文化共生 につ いての記述 と計 4 回の クラブ毎の レポー トと振 り返 り授業での コメン ト内容か らキーワー ドを抜 き出 し、学生が考えた多文化共生 を総合 して図式化す る
。各学生 によって、多文化共生 に関す る考え方 は多様であ り、細かい点では差異がある。 しか し、彼 ら の考えた内容か らキーワー ドを抽 出 し、総合す ることで、今 回のクラブ参加 を通 した結果 の 「 多文化共 生」が提示で きると考えた。
【 図 2: 学生が考える多文化共生】
学生が考え る多文化共生 を総合 し、 図式化 したが、彼 らの考えによる多文化共生 は以下 のようにまと
め られ るであろう
。1 ) 「 主 体 的」 な 「 相 手 」 へ の関心 興 味 か ら出発 し、
2) お互 いの文 化 や習 慣 な どを知 ろ う と し、
3) お互 い に尊 重 し合 う ・認 め合 う ・理 解 し合 うよ うにな り、
4) 対等 な関係 作 りが で き、 共 存 につ なが り、
5) それ が社会 全 体 へ と広 が り、
6) 「 共 に 」 「 住 み よい社 会」 を作 る こ とで あ る。
これ まで の多 文化共生 に対 す る考 え方 は 、 2)〜 5) の考 え方 が主流 で あ ったが、今 回の取 り組 みを通 し、
国籍 や文化 には関係 な く、個 人 的 な相 手 へ の興 味 関心 に基 づ く 「 主 体 的」 な関 わ りか らス ター トし、最 終 的 に 「 住 み よい」 社会 を 「 共 に」形 成 して い くとい う統合 的 な意 識 が持 て た と言 え るだ ろ う
。4. まとめと今後の課題
本 稿 で は小 学校 で の クラ ブ参 加 を通 し、 多文 化 共生 に関す る知識 が ほ とん どな い学生 が多 文化 共 生 に つ いて どの よ うな考 え方 を兄 い 出せ るのか に注 目 した取 り組 み を取 り上 げた。本 取 り組 み を通 じ、 学生 自身 の 中か ら多文 化 共生 に対 す る統合 的 な認識 を得 られ た こ とが示 唆 で き るで あ ろ う。 多 文 化共 生 が進 む 中、 どの よ うな学校 現 場 で あ って も多 文 化多 言語 の背景 を持 った子 ど もた ちに出会 うはず で あ る。今 回の取 り組 み を通 し獲得 した多 文 化共 生 の考 え方 は、 教 育 活動 に携 わ ろ う と して い る学 生 に とって は必 須 の認 識 で あ ろ う。 しか し、今 回 の一 連 の取 り組 みの 中で は、 彼 らが捉 え た多文 化 共生 の意 識 を実 際 の 教育 上 で どの よ うに子 ど もた ち に伝 え られ るのか とい う実践 方 法 にまで はつ な げ られて いな い。 今 後 の 課題 と した い。
注
1 ) 「 多文化共生」 ということばの使用 は 、 1 985 年 に出版 された 『 多文化教育の比較研究』がきっかけとされる
。やがて 、90 年代 に入 り、外国籍住民が多 く居住す る自治体な どを中心 に 「 多文化共生」 とい うことばが使用 さ れ始め 、2005 年 に総務省が 「 多文化共生社会を目指 した取 り組み等を推進す るな ど、人 と自然 にやさしい地域 社会づ くりを推進す る」 と述べ、初めて 「 多文化共生」 ということばを公式 に用 いている 。 ( 2008 野 山) 2 )3 )本稿で使用す る 「 外国人」 は、国籍 に基づ く判断ではな く、「 外国に何 らかのつなが りを持つ人」 という意
味で使用す る。現在では、「 外国系市民 」 「 外国につながる子 どもたち 」 「 外国にルーツを持つ子 どもたち 」 「 移動 す る子 どもたち」な ど様 々な表現が用 いられている
。4) 日本国内の公立小 ・中 ・高等学校、中等教育学校及び特別支援学校 に在籍す る日本語指導が必要な外国人児童 生徒数 は 、2008 年 9 月 1 日現在 28, 575 人で、前年度比では 1 2. 5% 増加 している。( 文部科学省 HP:ht
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5)矢崎 ( 2 004) もクラス内において外国人児童 と 「日本人児童 との良好な交遊関係 (‑教室内ネ ットワーク)が 形成 されていけば、 日本語の習得 に限 らず、外国人児童の情緒の安定や学力の向上にも結び付いてい く」 と述べ ている
。6) ドナル ド ・A ・ショー ン 2007 『 省察的実践 とは何か‑プロフェッショナルの行為 と思考』柳沢呂一 ・三輪建二 ( 監訳)鳳書房 ( Donal dA.Sc hon1 98 4Th eRe jl e c t wePr a c わ如ne r :Ho wPr o fe s s 之 O nal sThmkZ nAc t wn. Bas i cBooks ) を 参照
7 ) 本来 はクラブ参加可能な学年ではないが 、3 年生のブラジル人児童 2 名が途中か ら自主的にクラブ参加 し始め
た 。