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Academic year: 2021

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(1)

八甲田山大岳周辺におけるアオモリトドマツの 発達状況と地形との対応関係

五 内 川 絵 美

.はじめに

八甲田山における植生の垂直分布は,標高約

1000m

以下ではブナ林を中心とした落葉広葉樹林,

1000'"''1200m

ではアオモリトドマツとブナの混交林 約

1200m

以高ではアオモリトドマツの純 林,約

1400m

の高所で、は風衝低木群落やハイマツ等の非森林植物群落が出現する(後藤・牧田,

1990)

八甲田山のアオモリトドマツの分布に関して 普照・牧田(1981)は 山体の東商に対し西面 で密度が高いこと,また低所では低密度でかつ樹高・胸高直径が大きく,高所では高密度で樹高・

胸高直径が小さいことを論じている。しかし 従来の八甲田山のアオモリトドマツに関する研究 では,アオモリトドマツの分布密度や樹高・胸高直径について,微地形単位での対応関係をみた 研究は少ない。また アオモリトドマツの分布について考察するには アオモリトドマツが分布 を拡大した当時の環境をも考慮する必要がある。

そこで本研究では,斜面の凹凸や緩急などといった地形単位と アオモリトドマツの分布との

, 固 ・ ・ ・

回 大 岳 火 砕 丘

E コ溶岩台地

E

ヨ上部谷壁斜面 匿罰下部谷壁斜面 図 凸 型 斜 面 図 凹 型 斜 面 図 小 扇 状 地

図1.地形分類図

(2)

対応関係をとりあげ,地形発達史的観点から微地形スケールで地形分類し,現在の地形環境と,

さらにアオモリトドマツが分布を拡大した当時の環境を土壌条件などから考察した。その結果か ら,それぞれの地形の違いが,アオモリトドマツの分布の拡大や 個体規模の相違にどのような 役割を果たしているのかを明らかにすることを目的とした。

II. 調査方法

地形とアオモリトドマツの分布との関係を考察するにあたって,まず空中写真判読,および八 甲田山の地質図(工藤.

1999)

をもとに,地形分類図を作成した(図

1

)。地形は,火砕丘,溶 岩台地,上部谷壁斜面,下部谷壁斜面 凸型斜面,凹型斜面 小扇状地の

7

つに分類した。さら に,地形図に

100m

の方眼メッシュをかけ,各メッシュ内においてアオモリトドマツの分布密度 を読みとった(図 2)。分布密度は,普照・牧田(1981)のアオモリトドマツの密度の分布図を もとに,同様の方法により,範囲を広げたものを新たに作成した。

現地調査では,各地点において,埋木調査ならびにアオモリトドマツの樹高と胸高直径を計測 すると共に,斜面測量を行い,地形断面図と植生分布を重ねた図を作成した(図 4) 。問時に,土 壌の観察を行い,土壌断面図で表した(図 3) 。

これらの資料を使用し,アオモリトドマツ林の発達が,地形や土壌条件によってどのような影

2.

アオモリトドマツの分布密度 固い

l

∞目

2

∞ 羽 図 批 辻 本 キ

(3)

響を受けているかを検討した。

本研究で調査地点とした範囲は,

中にパッチ状,

ブナ林の または小林分で アオモリトドマツが,

調査地点

⑪ 

⑨  ⑩ 

⑧ 

⑦ 

⑥ 

⑤ 

④ 

③ 

①  ② 

存在している酸ヶ湯温泉 毛無 (標高約

890""

アオモリトドマツが 岱 ま で の 範 囲

970m) , 

ダケカンパと混交低木林として 存 在 す る 赤 倉 岳 中 腹 ( 標 高 約 凡 例

竪 雪 基 盤 岩

匿麹角楳

褐 色 森 林 土 (小楳まじり)

アオモリト

1200"" 1300m), 

ドマツの純林となっている大岳 . 黒 色 度

防 雪 十 和 田

a

テフラ

~褐色森林土 匿璽大岳起源の

水蒸気爆発堆積物

50 

亜 高 山 帯 上 限 付 近 (標高約 である。

1270"" 1430m) 

土壌断面図

3.

調査結果 IV. 

アオモリトドマツの分布がどのように異なっ 地形分類図で分類したそれぞれの地形によって,

調査地域ごとに検討した。

ているか,

地形とアオモリトドマツの分布 1 .  

大岳火砕丘・大岳溶岩台地・上部谷壁斜面・下部 地形を,

では 作成した地形分類図(図 1) 

大岳溶岩台地につい 谷壁斜面・凹型斜面・凸型斜面・小扇状地の

7

つに分類した。大岳火砕丘,

+ r

トドマツ オモリ 'ミヤマナラ

小 扇 状 叫

' 下 部 : 目下部 i

谷壁斜面 省壁斜面 小扇状地

E

面 ︐

E

部 斜

‑ 下 壁

E

ち ' ﹄

200m 

nHV IllinU 

EE

11lO 

地形断面図および植生分布図

4.

(4)

に能った。上部・下部谷壁斜面については,

とし,上部谷援斜面と谷底面との間に出現 斜面地形の分類として, 上部谷壁斜面の中 した。これ以外の車線型斜面は上部谷瞭斜 ては,工藤(1

999)

による北八申

穣線上にみられる比較的緩頬斜の部分を

し,最も急傾斜な部分を下部谷壁斜諾とした

a

ま でも,斜面の形状によって回型斜面,

面に区分した。小扇状地については 背後の山地斜詣かち運ばれた土砂が堆捜したことによって 形成され,さらに下刻によって段丘化したものだと考えられる。

ブナ林内におけるアオモリトドマツの分布は 上部在援斜面上では ブナ林に議じってパッチ 状に分布していた。また 図

4

で示した範囲は南北を上部谷壁斜語に境された幅

200m

の担増状 の地形となっている(以下問地とする)。この凹地の中には小扇状地が発達しているが,

布しておらず,アオモリトドマツの低木林となっている。ここにみられる下部谷壁斜面にはア モワトドマツも分在していなかった(図

4)

ダケカンパ・アオモワトドマツ混交林では,混交林となっている中にも,ダケカ

ずアオモワトドマツの純耕となっているところがみられた。アオモリトドマツの純林となってい るところは上部谷壁斜語であったむ混交林となっているところは,凸型・凹型斜面,

語であったが,その中でも出型斜額上には夕、ケカンパがより密生して分布していた。

大岳亜高山帯上限付近の標高

1400m

以上では,主に凸型斜面においてハイマツ,

アオモリトドマツと,

2.

地形とアオモリトドマツ

ブナ林内におけるアオモリトドマツの密度は 小扇状地上において法

100'"''200

/ha

であ いによって分おの違いが見られた。

その他の地形においては

1'"''100

/ha

であった。これより小扇状地上でなアオモリトドマツの 密度が高くなっている ということが言える。

ダケカンパ・アオモリトドマツ混交林内では,下部谷壁斜面において,

"'100

/ha

と少なくなっているということが言える

o

その他の地形においては

100'"''200

本 で あ り 季 地形ごとのアオモリトドマツの相違は見られなかった。

アオモリトドマツ林では 大岳西側斜面の傾斜が急なところでは アオモリトドマツ

1300

/ha

以上と,高くなっているところが多い。

3.

アオモリトドマツの分布と胸高鹿径・樹高

ブナ林内のアオモワトドマツについては ブナ林の中にパッチ状に分布しているア マツと,問地に小林分

ナ林の申にパッ だ

10

本につ

オモリトドマツ低木林は,

しているアオモリトドマツの胸高直話骨樹高につし しているアオモワトドマツは 登山道沿いに約 l

そ計瀕し,一方,出地の中の段丘イヒし について計溺し,平均語をもとめた。こ

に z

︑ フ

kg  

・ ‑

に選ん

訴者は樹高が

10m

,胸高直径が

40cm

であり,護者は樹高が

5m

,胸高富径が

24m

であり, さい

(5)

ということがわかった。

ダケカンパとアオモリトドマツの混交林内では,全

5

地点において任意に選んだ

S

本について し,ダケカンバとアオモリトドマツが混交林を成しているところと,ダケカンパが生育せず アオモリトドマツの純林となっているところの胸高誼径・樹高を比較した。その結果,前者は樹

10m

,胸高直径が

45cm

であり,後者は樹高が

5 m

,胸高直径が

30cm

であり,後者むア

J)

トドマツの方が小さかった。また アオモリトドマツとダケカンパの器交林となっている地点 の中でも特に回型斜謹上のアオモリトドマツは 砲の地形と比較すると腕高直径・樹高がI

J

、ざかっ た 。

アオモワトドマツ林においては 上部谷壁斜面のアオモリトドマツは 倒体規模が比較的大き かった。これは,ブナ林の中や,ダケカンパ・ア

いても,同じ結果であった。従来の研究では,

リトドマツ混交林のアオモリトドマツにお くなるむつれて{礎体議模がI

J

、さくなると の報告があるが,アオモリトドマツの錨体規模の差異は,察高によるもの以外にも,地形の違い によるものがあると考えられる。

4 土壌条件

らびに過去の土壌条件を検討するため それぞれの調査地域において,土壌新語の観察 を行い,土壌断面図でこれを表した(図的。

また.各地点の土壌新面中立は, 5  ' " ' ‑ ' 1   フラが混在していた。このテフラについ て は , 正 確 に 対 比 ・ 同 るために,弘前大 学 部 所 有 の 波 長 分 散 型 EPMA JXA 

8800RL 

(B 本電子製〉を用い 火山ガラスの主成分化学組織の測定を行った。表

1

は火山ガラ スの分析憾である。表

1

には分析備のほかに 柴

(2000)

青木・薪井

(2000)

の分析謹もあわ せて引用した。分析値は,指標となる既存のヂータと抵ぽ閉じ績を示していたので, 十和田 aテ

フラ a ) に対比・ れた。

表1.謂査培域におけるテフラの化学組成火山ガラス主成分

Si02  Ti02  AI03  FeO  MnO MgO CaO 

I¥'

a20 K 之

o

n  Total  EPMA  十和田 a テフう

青木・新井

(2000) 77.75  0.36  12.73 

1 .

62  0.09  0.38 

1 .

81  3.9

む 1 .

37  98

. 4

WDS  柴ほか

(2001) 77.95  0.28  12.59 

1 .

54  0.09  0.35 

1 .

88  3.92 

1 .

40 

1 1  

97

. l

WDS  地点

3 77.038  0.345  12.552 

1 .

968  0.093  0.37

1 .

913  4.323 

1 .

373  10  100.000 

WDS 

ブナ林内むおいては,ア リトドマツがブナ林の中にパッチ状で分有している上部谷壁斜麗 上の

2

ヶ所(図

1

①・②)において,アオモリトドマツが小林分を或している宮地において誌,

小扇状地となっている地点(図

1

延長)と下部谷壁斜面上〈留

1

一③)において土壌断面を観察し

た(図

3)

。アオモリトドマツ低木林内の土壌と 混交林内の土壌を比較すると 前者ではTo‑a

(6)

の直ドに腐楠燭が庫く堆積しているのが見られるが〈図 3

‑@. 

@),後者ではそれが見られず,

褐色森林土となっていた(図

3‑

① ) 。

アオモリトドマツとダケカンパの混交林においては,アオモリトドマツの純林となっている控 ( 図

1

ぐかと,混交林となっている地点(悶

1

⑤・⑥),その中でもダケカンパが搭生して いる地点{関

l‑@)

においての土壌断閣を観察した。アオモリトドマツの純林となっている地

To‑a

テフラの亘

F'

こは腐楠騒が堆積しているが(図

3‑

⑦),その他の

3

地点において

l

え腐金属は見られなかった〈国

3

出帯上摂付近では,アオモワトドマツの緯林となっている地点(図 1φ) ,ダケカン パなどの広葉樹との混交林となっている地点〈関

1‑@)) 

ハイマツ抵木林の地点(関

1

⑧)に おいて土横断聞を観察した(図

3)0To‑a

の誼下に克られる窓種襲安比較すると,アオモ

1)

トド マツ林では

10cm

,ハイマツ林では

5cm

であった。還交林の土壊では,

To‑a

が不明擦であるが,

角撲を多く含む層淳

8cm

の黒色土がマあった。

V.

考 察

地形とアオモリトドマツの分布との関係について調査した結果 アオモリトドマツは地形によっ て分布状況が異なっていた。ブナやダケカンパなどの広葉樹と混交林となっているなかでも,凹 地となっているようなところでは,アオモワトドマツの純林となっていたのまた,そのようにア リトドマツの純林となっているところで誌樹高・鵠高謹窪が小ざかった。また,標高

1400m

以上の高山帯におけるアオモリトドマツの分布は,従来から言われているように,谷蔀において

している。これは尾根部では アオモリトドマツは強風や斜甑諜結によって生育することが できないが,谷部では積雪が保護要因となりアオモリトドマツが生背ずることが可能なためと えられる。

地形によるアオモリトドマツの分布の違いは,アオモリトドマツが分布を拡大したと考えられ

ている

To‑a

捧下当時の土壌条件にあると考えられる。八申田山における,黒色士や褐色森林土

等の土壌の成圏である給源植物については,黒色土の存機物は過去

4000

年間,おもにススキなど

の,森林下では生育できない革本から誤給されたものと考えられており,一方 褐色森林土はブ

ナ林下で生成され その有機物はブナなどの露木から扶給されたもめであると考えられている

塚ほか,

1999)

。黒色士については 人為的彰響で草原となった場所で生成される土壌とも

れているが,本調査地域では人為的影響があったとは考えられない。人為的彰警がない森林内で

黒色土が見られるのは 現交林の中で アオモリトドマツの純林となっているところが問地であっ

たことが要菌だと考えられる。山地では消雪時期が比較的運いので 土壌は過湿状態にある

謝できる。よって

To‑a

が蜂下した当時から 土壌は樹木の生背には不適切な状態にあったた

め,議生が草本で

3

ろったのではないかと考えられる。そして,

To‑a

降下後, この場所にア

(7)

リトドマツが侵入し 成長したのではないか られる。

VI.今後の課題

今後は,

To‑a

蜂下当時の植生を明らかにするために埋没腐植騒のフラントオパール等の土 壌分析を行うことにより 現地性の植生の変還を復元し,それらと地形および現在のアオモワト

ドマツの分事との対応関係を明らかにしていきたい。

【 謝 辞 】

本萌究をまとめるにあたり,指導教官である弘前大学教膏学部小岩直入場教授,並びに後藤建 二教授には終始ご揺導いただいた。現地調査においては.弘前大学教背学部地埋学教室の皆さん に手伝っていただいた。また 火山ガラスの北学組成分析には弘前大学理工学部の EPMAを長わ せていただき,関学部の柴正敏教授には,火山灰の分析についてご指導いただいた。以上の方々 に深く感謝します。

【参考文献】

若塚成宏・河室公麗・ 浩史(1

999)

:黒色土および褐色森林土壌棋の炭素安定関投体分析に よる給源植物の推定 一八申田山高山麓における事例へ第四紀研究,

38

, 

8592. 

崇(1

999)

:北八甲田火出群のマグマ供給系. 日本火

1999

年秋季大会講演予稿集,

後藤忠志・牧田 ( 1

990) 

:北八甲田山地の自然破壊と 持定研究「北八甲閉山地の自然 と開発J

141

ページ.

辻 誠一郎・宮地直道・吉)1[ ( 1

983)

北八甲田山における更新世末期以降の火山灰層序と 植生変選第四紀研究,

21

, 

301‑313. 

照 襲・牧田 肇

(198

1 ) :空中写真判読を主とした八甲田山地のアオモ1)トドマツ林の分布

アオモワトドマツ林の生態学的研究,東北大学八叩田山植物研究所,

6679.

参照

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