製品計画システムにおける
マーケテイング機能の参加の過程と統合機構の発達について−
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製品計画システムにおける,マーケテイング機能の 参加の過程と統合機構の発達について
梶 原 祓 夫
企業の生存と成長は消費者の必要や要求をよりよく溝たす新製品の絶え間 のない流れに依存することが多い。既存技術がより優れた製品を生む新技術 に置き換えられる技術進歩が急速になったことと,個人所得の増加や豊かな 生活への衝動が強くなったことにより新製品の消費者受容が促進され,一般 に製品の市場生命がますます短かくなりつつある。首尾よく舷続的に製品革 新のできない企業は果てしない価格切り下げのうちに敗退しがちである。し かしアイディア創造から市場導入までを成功裡に完了し新製品を得ることが できるかどうかの危険は極めて高い。企業が利用可能な資源の下で消費者受 容の機会と競争力を持ち企業成長に貢献する新しい製品明細を所定のプログ ラムに沿って創造すること,つまり製品計画または製品決定過程は現代の企 業の基本機能である。
本稿の目的は,まず現代の企業の製品計画システムを概観した後,製品計 画システムの中核である「研究開発機能の確立」,製品計画システムにおけ る「マーケテイング機能や製造技術の参加の経緯」や「トップ・マネジメン トの役割の変化」等をたどりながら,製品計画システムにおける「しだいに 多様化する専門機能を統合する機構」の発達過程を追跡することである。
製品決定へのマーケティングの参加については既に多くの研究成果が報告 されているが,しかしその殆んどは,現代の企業における製品決定は基本過 程として研究開発を含み,研究開発を指導または補正するためのマーケテイ
ングや.製造技術との複雑なネットワーク構造から成るという認識に欠け,製 品計画システムの入口に近い,韮礎的製品政策の構成,型品種期の選択,製 品評価へのマーケティング機能の参加の過程,榊1−1等,意義について分析を試
みてきたに過ぎない。このため,マーケテイングと研究開発,マーケテイン グと製造技術の問の交渉局面については殆んど分析されず,製品決定へのマ ーケティングの貢献の範囲は正当に評価されないままであった。本稿は製品 計画システムを全企業的基礎で把握することから出発するD
( 一 )
製品計画 (productplanning)とは特定消費者屈の必要に応え,競争力に 富み,経済的に製造可能な新しい製品明細(product specifications)の創造 であるOこの新しい製品明細に従って新製品が製作され,市坊に導入されるO
一般に製品の新しさの程度は,販売促進のための製品外殺の修正から,新 しい需要居に到達するための製品の技術構造の修正,更に新しい市場要求lこ 応ずるための新技術による製品草新に至るまでひろがる。このような製品明 細の新しさは技術的新しさと市場的新しさの結合を基礎として成立している
O つまり,製品は技術と市場の二つの次元で「新しく」なりうるD 製品の変 (1)
更の程度が新しさの次元のどちらか一方または両方にそって進行するならば 企業利得への衝撃はますます強力になり,製品の市場生命も比較的長くなる が,一方不確実性は高まり,開発と市場導入l乙要する時間と資源は増加す る。例えば,新技術に基づく新製品で新市場に進出することは新技術と現在 の技術との背離,新市場と現在の市場との状況の背離があるので改善された 技術に基づく新製品を既存市場に販売するよりも開発と市場導入に要する費 用と時間はより多く,技術と市場の不確実性はより大きい。しかし一方,新 技術に基づく製品による新市場への進出は,もしそれが適切な時期に首尾よ く達成されるなら利得は大きいであろうo新顧客への平新的新製品の販売で あることと競争関係、にある他企業の追従が容易に行なわれ難いことにより製 品の市場生命は比較的長く,より長期にわたる利得を保証するからである。
新製品についての利得,不確実性,費用を均衡させることは製品計画の基本 目標である。
更に新製品の成功と失敗はその導入時期にかかっていることが多い。同程
製品計画システムにおける 121 マーケテイング機能の参加の過程と統合機構の発達についてー
または類似の製品について他企業が強力な消費者愛顧を確立した後での市場 導入は先行商標に執着を持つ消費者の商標選択移行を促す特別の努力が必要 となる。また同様に他企業に遅れての市場導入は先行他企業が既に有力な経 路要員を確保しているため強力な流通経路組織の設定が困難となる。しか し,開発は先行企業の追随であり,開発の費用と時間は節約でき,危険も小 さい。一方競争企業に比較しての先行市場導入は,先行開発を行ない原始需 要を創造しなければならないという不利益を蒙むるo またあまりに尚早な市 場導入は開発不充分な製品を消費者に堤供するという誤りをおかし新製品に 対する消費者不信をつくりだすこともある。新製品の市場導入時期は新製品 の成功度を規定する重要な因子であるD 他企業とのわずかの導入時期の追い が成功か失敗かを決定することがあるo開発や市場導入の時聞についての決 定は製品計画の重要な局面をなす。
一般に技術的に新しい製品明細の創造は複雑なシステムである。技術的に 新しい製品明細の創造は基礎研先 (basicresearch) , 応 用 研 究 (applied research) ,開発 (development)の三の過程を経て行なわれるo基礎研究
(2)
は新しい事実,科学的な知識や理解を得るための活動で,好奇心,疑問等に より刺激される。研究結果は予測できず,研究が特別の製品開発に直接つな がることもまれであるo応用研究は基礎研究の結果から製品開発に応用でき る基礎知識を発見,分類,解釈することであるO 応用研究は特定目椋のため に行なわれるが,やはり未知のものを発見する努力を合むため目標達成の機 会は制限されるO 開発は既知の技術や物質を新製品の構成に適用すること で,製品のこれらの椛成要素の適正な配列が採求されるo
企業の製品計四システムは基本過程として基礎研究,応用研究,開発を合 みながら市場要求の識別や期待収益分析を含む複雑なネットワークとして杭 成されるO 一般に企業の製品計画システムは市場要求の識別,製品の一般明 細の概念構成と具体的なアイディアの創造,製品研究,製品開発,最終製品 設計および各計画段階での製品期待収益分析から構成され,そしてこれらの 聞には例えば図1‑1に示すようなシーケンス(主要情報と 活動の流れ)と フィードパック(補正行動のための情報の流れ)が確立されるO
(3)
図1‑1 製品計回システム
「ータ│製
市場機会の評価によ り企業が生存と成長の ための適正な利益を得 て充足することが可能 な市場要求がまず識別 されるo この市場要求 に沿って概括的な製品
し一一ーモ一一一一一一一一一一一一一一才 明細つまり製品概念が 創造されるD 次にこの
=シーケンス
一一一一→フィードバック 製品概念に従って具体 的製品アイディアが創造され,開発と製作の可能性,消資者の受容,収益性 等の面から選別されるO ここで製品概念の再構成が要求されることがあるo
具体的な製品アイディアにつづいて特別な基礎的製品研究つまり製品設計で の特別の問題を解決するための基礎的な情報や知識をみいだす努力が行なわ れるO これらの研究が終了すると製品の技術桔造の開発が行なわれるD
(4)
まず予備的技術明細が継続的な模型修正を経て製品原型で示される。予備 的技術明細の創造は製品の泊賀者受容を可能にする最低限度の水準への到達 を目標に行なわれるo製品開発には製品技術についての情報収集と問題解 析,製品構造の概念模型の製作,原材料や部品の開発と試験,模型試験,使 用試験模型の製作,模型による動作解析が含まれる。製品開発を試みた後製 品研究の再検討や製品の一般的明細の再構想が要求される乙とがあるo
(5)
製品開発が終了すれば製品の最終設計が行なわれるO 長柊設計lこは製品の 構造明細や特性だけでなく原材料や部品のリスト,部品の工作明細,組立の 作業明細等も含まれるO 最終設計段階では製品枯造について経済的に製作可 能な水準を確保することと製品の消費者受容を促進し競争に耐えるための特 性を登宮に組み込むととに努力が集中される口最終設計を試みた後製品開発 や製品研究への逆行が必要な場合があるoまた製品の一般明細の再構想さえ 必要なこともある。
(6)
企業ば以上のような直接新製品明細を創造する当面の製品計四システムの
製品計画システムにおける 123 マーケテイング機能の参加の過程と統合機桔の発遣について一
他にその基礎として長期の製品計画システムを維持するであろう口長期製品 計回システムは基礎研究と技術予測,経済や生活慣習の研究と市場予測から なるo図1‑2は長期製品計画システムの事例である。製品のライフサイク ノレが有限であるという認識が将来の製品アイディアの創造の動力である。将 来の製品についての決定は技術と経済の二つの流れに依存して行なわれるo
技術と経済についての基礎的研究と予測から市場の必要と技術的可能性が予 測され,新製品のアイディアが創造されると,長期製品計画システムは先に
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図1‑2 長期製品計悶システム
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マーケティング
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述べた直接新製品明細の 創造を行なうシステムに 接続されるD
(7)
一般に企業組織では研 究開発,製造,マーケテ イング,財務等について 専門的機能単位が確立さ れており,製品計画に合
一一一一一〉与←ケンメ
まれる以上のような 諸活動は各活動につ 一一ー←テブィードハ,/‑7いて特別の熟達を持 つ専門の機能単位で,必要に応じて他単位を参加させながら遂行される。例 えば市場要求の識別,市場からの製品アイディアの収集,機能的製品概念の 椛成, Tlr1易実験や使用試験による製品の消白者受容の枚百,製品特徴の決 定,販売量予測,市場導入時期等はマーケティング単位で,技術的製品概念,
開発可能性の評価,製品開発,製品試験,最終設計は研究開発単位や設計技 術単位で,経済的製造の可能性は製造単位で,製品の収益性評価,開発の順 位や規模の選択についてはマーケティングや財務の半位でそれぞれ最も適切 に遂行される。従って一般に製品計四過程は研究開発,設計技術,製造,マ ーケティング,財務等にわたる広範な活劫となるD 企業の多数の組織単位を 通じて遂行される製品計四に合まれる諸活動はそれぞれの間に先行後続,並 行,交渉の関係を基礎とするネットワーク椛造を持ち,また製品計四lこ充当
される時間と資源の利用について相互依存関係を持っているO 各機能単位で 個別に遂行される諸活動は相互に調整され一つの製品革新活動に統合され るO つまり製品計画過程では製品革新についての統一的なプログラムと制 御,プログラムの実施に必要な組織単位間の緊密で迅速な情報伝達と調整が 必要になる。
以上のような現代の企業の製品計画システムは,例えば米国の場合につい てみると, 1900,.......20年代に製品草新が非系統的に主として製品技術領域で行 なわたるようになってから, 1930年代になっての開発の組織化や製品政策構 成へのマーケティング機能の参加, 1940‑‑‑50年代になってからの,技術改善 や技術突破による市場浸透や市場開発のための研究開発機能の強化,製造へ の移行や製品原価削減のための製造技術の参加, 1950年代後半になってから の市場危険の圧縮や市場導入準備のための,製品明細決定と開発へのマーケ ティング機能の参加等を経て発達してきたものある口
(1) Samuel C. ]ohnson and Conrad ]ones, How to organize for New products, Harvard Business Review, May‑]une, 1957, p.52, (2) R.E. Gibson, A systems Approach to Research Management
in ]ames R. Bright, Research Development, and Technological Innovation (1964) pp. 35""42.
(3) Lewis N. Gos1in, The Product Planning System (1967) p. 7 (4) Lewis N. Gos1in, op. cit., p. 7
(5) Ibid.
]ames R. Bright, Research, Development, and Technological Innovation (1964) pp. 41""42.
(6) Lewis N. Goslin, op. cit., pp. 12""13
Thomas T. Woodson, Engineering Design (1966) (7) Lewis N. Gos1in, op. cit., p. 26
製品計回システムにおける 125 マーケテイング機能の参加の過程と統合機構の発達についてー
( 二 )
すでに1900年代初期において,化学や物理学の製品への応用領域を持つ製 品分野の企業では原始的水準ではあっても研究開発を組織し,製品草新努力 を行なうようになった。しかしまだこの時代では科学や技術の進歩は緩慢で 一度達成された新技術に基ずく製品の市場生命は比較的長かった。企業合同
(1)
や工程革新により供給能力を拡大した企業は輸送や通信の発達もあって,販 売組織を拡充し,全国市場へ浸透する政策をとるようになった。市場支配の全
(2)
国化と共に強力な企業問で激しい価格競争の危険があったが,むしろ製品の 特徴や外様を市場要求に沿って競争製品から差別化し,乙れを包装,商標,ラ ベソレ等で消費者や販売業者に識別容易にし,強力な広告とセーノレスマンシッ プで広範囲の市場に浸透する政策がとられた。製造部門の下にあった販売単
(3)
位は広告単位や市場調査単位を追加して,製造部門や財務部門と同一組織水 準に置かれるようになった。製品決定はもっぱら製造技術領域の問題とされ
(4)
ていたが,製品差別化のための製品の特徴や外様の市場要求への適合の問題 を中心に製品決定に販売単位が関係するようになった。
(5)
1900年代初期も経過すると,過剰能力の吸収と都市市場から発展し始めた 新需要の吸収のために,新製品を追加する政策や製品の競争力強化と新用途 開拓のために製品を技術的に改普・し特殊化する政策がとられるようになっ た。科学や一般技術水準の向上で新製品開発の可能性が高められたこともあ って,多くの企業で当時製造技術の領域で確立されていた製品設計クソレープ の技術者 (productengineer)が,技術的に新しい製品の開発と製品改善 を促進するようになった。企業の投資能力や危険負担能力の増加と共にしだ
(6)
いに製品開発に特別の資源,技術者,科学者が配分されるようになり,進ん だ企業では研究開発単位が確立され,個々の技術者や科学者の孤立的で非系 統的なものからチーム・アプローチが適用されるようになり,開発成果は飛 躍的に向上した。また,製品の機能,外様,原材料の充当性,製造資輸送費
(7)
等を考慮する製品政策(productpolicy)が製品設計クゃループや後に述べる製 品委員会により構成されるようになった。技術的に異なる新製品追加や製品
(8)
の技術的改善により製品種類が自然多様化されるようになったD また先l乙述 べた製品差別化政策と関辿して,市場浸透や市場地位の確立のために同一製 品程類についても外様,サイズ,品質等について多核化されるようになった。
しかし,同一製品種類についてのバラエテイ数の多さに必ずしも売上拡大 につながっていないことが認識されると,むしろ生産の機械化促進,効率化,
高速化等のために椋準化 (standardization)が辺入され,自然にバラエテイ 数の圧縮が行なわれるようになった。
(9)
第一次世界大戦とその後の十年間を通じての企栄の製造能力の拡大は過剰 生産能力を生み,売上拡大による投資余力の増加と相まって技術的に具なる 製品の追加による多様化(diversification)への圧力を高めた。企業は過剰生
( 1 日
産能力吸収のため,都市人口の増加による大量市場の出現を背影に広告,セー ノレスマンシップ,信用販売等の改善と強化によって需要を創造したが,さらに 需要の多様化と新需要の発展に応じ新市場開拓のために技術的に新しい製品 の創造や製品改善にも努力を集中すようになるった。乙のようにして現われ
(11)
た新製品は関連製品や新原材料の市場を創出し,企業にまた新しい製品追加 の機会を与えた。乙の時代の多椋化はその主な基盤が過剰生産能力であった ため製品追加に当っては,製造設備との適合性や既存製品の生産的利用が霊 視された。また一方,新製品が既存製品に代替し,その販売を不能にする場合 には製造企業はディラーとの協力関係、やディラーの好ましい態度を維持する ため,既存製品の価格切下げやデイラーへ特別の販売援助をするか,または 回収するという在庫処理の重要な問題があり,このため新製品の導入が践踏 されることがあった。新製品迫入や製品変更より経路システムの方が重要杭
(l2}
され,製品草新の必要性の認識が経路要員にまで浸透していなかったのであ る。また同じく既存製品に代替する新製品を導入した場合, r自賀者lと対して は旧製品のための取替部品の供給や旧製品との部品交換性の維持の必要性も あり,このためにも製品革新が制約された。この時代ではまだ泊資者の新製
(13)
品需要がそれ程強力で大規模でなかったからであるo これは新製品の広告に 当って旧製品の信頼性を損わないような注怠が払われなけばならなかったこ (14) とでも容易に理解できることである。
製品計画システムにおける 127 マーケテイング機能の参加の過程と統合機構の発達についてー
一方,同一種類の製品ノてラエテイについては,第一次世界大戦を通じて政 府機関により,労働力,資材,生産施設を戦争目的に有効に利用するため に,単純化 (simplification)政策が推進されたが,戦後も単純化による生 産費や在庫費の節約の利益を認識した多くの企業の支持lとより,単純化政策 は継続された口個々の企業で単純化を推進することは競争的地位の低下に至 る危険があり践活される傾向もあったが,しかしやがて,関連製品の売上も 含めて,売上減への効果が単純化の利益に対しそれ程大きくないものの排除 やその製品種類の総売上を減少させない程度にバラエテイを削減する方法の 採用により,個々の企業でも単純化が促進されるようになった。
( 1 日
この時代でも同一製品種類についての多松化による市場浸透政策を積極的 に行ない成功する企業もあったが,まだ一般には無統制の中に多様化した製 品種類を単純化し,製造賀や販売買を節約する努力が行なわれたのであるo
これは市場の製品多様化に対する反応が多様化政策を強制する程強力でな く,個々の製品種類についての市場が小規杭でJ恒常的製造ラインを維持でき ず,操業皮が低いことや生産種類転換の賀用と時間の浪貨が大きかったこと によるo
さて,製品変更や新製品追加が行なわれるようになると,まずマーケティ ング単位は製品外様の決定,市場の規模と特性,競争関係,販売組紋との適 合性,販売質等の評価を通じて製品政策の椛成を援助した。さらに製品の多
聞
様化や単純化が問題になるとマーケティング単位は市場需要や競争について の情報の面から最適バラエティの決定に貢献するようになった。製品ノマラ
( 1 百
エティの決定には原材料から完成品に至るまでのー述の選択過程が含まれ,
この選択には市場需要,販売過程,製品原価,工程等についての情報が必要 であった。乙のように,マーケティング・マネジャーは製品政策にも関係す るようになっかが,しかしまだ企業の総合的な計四と統制には参加しておら ず,主な関心は販売と販売促進であり,その他の機能はまだ補助的なものと
( 18)
しか考えられなかったロ製品政策設定へ参加するようになったとはいえ,製 品決定への貢献はまだ低い水準にとどまった。つまり決定への参加は製品外 様,製造数量,製品/~ラエティ等の決定のための情報供給に止まり,決定そ
のものへの参加は限定されていたo まだ市場需要は規定要因が単純で予測が 容易であり,販売の危険がそれ程大きくなかったからである。
製品決定に直接参加する機能が製造,技術開発,販売としだいに多核化す るようになった。多くの組織単位の貢献を調整し統合する機能はまず企業の 首脳管理者により遂行されてきたが, しだいにトップ・マネジメント・レベル の製品委員会(productcommittee)や生産委員会(productioncommittee) に依存するようになった。これらの委員会は販売,財務,製造,技術等の最 高管理者から構成され,製品政策や製品決定に責任を持った。機能間の調整
凶
作業量の増加と複雑化のため,特別の調整単位の必要性や調整者と製造,技 術開発,マーケティング等の単位の問で自由で直接的な情報交流の必要が認 められ, 1950年代になってから一般化する製品計画単位の確立への別芳三的椛 想がみられるが,まだ製品計画は製造技術志向的に考えられ調整単位は製造 部門の下部組織として確立するのが適当とされていた。しかしまれに企業に
間
よっては製品計画がマーケティング志向的に管理され,調整単位をマーチャ ンダイジング (merchandising)部門としてマーケティング部門の下に確 立し,製品決定を殆んど最終的にマーケティング・マネジャーが承認する企 業も現われた。。1)
1930年代末から1940年代前半までの第二次世界大戦の問および戦後しばら くは消費財の供給能力が制約され,企業による市場維持のための製品草新の 必要性を減ずるが,戦後消費経済の回復に伴い,戦時中における軍事的要求 のための技術革新の成果を吸収しながら,企業は再び市場開発のための製品 草新競争に向かうようになった。戦争中,企業は国家の戦争遂行のために技 術的に経験の少ない分野の製品を製作することや研究開発機能の強化を余儀 なくされたが,乙れは戦後研究開発を強化し企業が新しい製品分野に進出す る基盤となった。
(221
さて第二次世界大戦後,企業は国民総生産の拡大による所得上昇と消費者 要求の多様化,技術草新の進行,生活習慣の変化,企業問競争の激化,外国 企業との競争等に直面し,新製品の継続的創造の重要性を認識するようにな るO 製品は物財としての概念から消費者の必要や要求を満たす効用として認
凶)
製品計回システムにおける 129 マーケテイング機能の参加の過程と統合機構の発達についてー
識されるようになり,企業は特定の製品に固執することなく消費者要求の変 化や技術の進歩に応じ既に市場で販売している製品の破棄と新製品の市場導 入を繰り返すようになった。科学や一般技術水準の向上により企業の技術開 発能力は拡大され,新製品創造能力が高められた。また消費者の自由で豊か な生活を求める街勤の強化により市場の新製品受容も促進されたD このため 製品の市場生命は次第に短縮され,市場の必要に沿った製品革新は企業の市 場維持にとっての重要性を増加した。
新製品の継続的追加を通じて製品多様化が促進されるようになった。製品 多様化の目的も過剰製造能力の吸収より,巾広い需要の吸収,総合競争力の 強化,一群の緊密な代替製品の供給による製品競争力の強化等を強調する企 業が成功するようになった。製品評価は製造設備との適合性よりも,企業経
凶)
路組織,販売力,市場地位,市場接触等の利用可能性が主視されるようにな った。この時代の企業にとって製造能力の創造は比較的容易で,製造系列は 必要に応じて新設または修正された。さらに進んで新市場や異なる市場周へ 進入するために新しい経路組織さえ創造されるようになるO しかし一般に製 品草新と併せてマーケティング革新が必須になるのは1960年代に入ってから であるD
さてこのように技術的に新しい製品の継続的創造と製品多様化の重要性を 認識した企業は製品の研究と開発のため特別の人員と資源を配分するように なり,企業のトップマネジメントに直接責任を持つ独立の部門として研究開 発部門 (researchand development department)を確立するようになっ たD 研究開発単位は科学者や開発・設計技術者を合み,長期的観点と巾広い
(25)
科学的基礎にたって新製品の技術的問題の解決に当った。
また,市場必要やマーケティング能力に沿った,製品草新や製品多様化を推 進するようになった企業はマーケティング・ミッションの領域を拡大した。
マーケティング・ミッションの拡大により市場調査,価格設定,広告に加 え,製品の外部属性や機能明細の決定を中心とする製品計画が製品の物的移 転とあわせてマーケティングの新しい中枢的機能領域とされるようになっ た。マーケティング・マネジャーは中府管理の水準から製造,財務の首脳管
(261
理者と同等の最高管理の水準に引き上げられ,企業の全般管理政能に参加す るようになった。より広いマーケティング機能領域についての認識,調査単
( 27)
位の拡充,マーケティング・マネジャーの地位の向上は製品政策や製品決定 へのマーケティング機能の参加を一挙に拡大した。
1950年代に入ると新しい消資者要求の発展と技術進歩はますます加速さ れ,企業の開発への投資余力と危険負担能力は拡大され,製品のライフサイ クノレは極端に短縮されるo企業は技術革新を基礎とする継続的製品草案rrを辺 じてのみ市場開発や市場維持が可能になる傾向が強くなり,研究開発は企栄 の生存し成長を支える基本機能にまで成長した。研究開発位は基礎研究まで 合め,企業組織で主要な地位を占めるようになる。
邸)
一般に1940年代までは,基礎研究は企業外の研究機関で行なわれ,企栄は 乙れらの成果を吸収しながら応用研究と製品開発に従事した。ところが1950 年代に入り新製品の継続的市場導入が企業の市場維持にとっての主要性を拡 大すると,企業は基礎研究までカバーし新製品創造のための技術革新の基盤 を拡充するようになった。基礎研究は研究領域を比較的限定したりまた研究
(29)
者に特定の必要を認識させることにより企業が主な関心を寄せる製品分野の 開発に関係づけられた。またかつては基礎研究から製品開発まで10年以上も 経過することが多かったが,この時の経過は著しく短縮され, 1960年代に入 ると基礎研究,開発に従事する科学者技術者が相互に緊密な情報交流を行な いながら新製品の創造に従事する乙とが可能になった。(図2‑1)
(30) 図2‑1 研究と開発の期間の推移
的wオ
一 手 臼
n u 戸 電m m
‑ 〆 手 口
ゾ 一6一
見 ノ 一 点 ノ 一 m L '
‑ 帰 / 一
1700 1800 1900 2000
製品計画システムにおける 131 マーケテイング機能の参加の過程と統合機構の発達についてー
更に巨大企業は継続的な製品草新を容易にするため,それまで維持してき た基礎研究を核に長期製品計画システムを確立するようになった。長期計画
(~1l
ジステムは市場と技術についての長期予測を基本要素とし,基礎研究を指導 し,技術進歩を吸収し,市場要求に沿った製品開発の継続的な涜れを保証す るものであったo
草新的l乙行動する研究開発単位の確立は,同時に,新製品創造に参加する 製造技術やマーケティング機能との複雑な調整問題を生んだ。製品の研究開 発機能ほ本来製造機詑,特にその中でも設計関係から分化したものであり,
両者の聞には緊密な情報交流が行なわれていた。しかし1940年代から1950年 代にかけて研究開発機能がしだいに増殖し製造機能から独立化の方向に向か うに従い両者の間に特別の協力関係、の維持が必要になった。多くの賀用と時 間を消費して開発に成功した製品がその製造原価が過大なため市場への導入 が不成功になるのを防ぐため,開発段階の初期に製造技術が参加し,製造過 程を明らかにし経済的生産が不可能で市場で受容されない製品の排除を援助 したり,過大な製造原価を生む要素を識別し競争力のある製品の創造を援助 する必要が生まれた。 1950年代に入ると製造機能は価値分析を通じ改めて製 品計画システムへの参加が強化された。価値分析 (valueanalysis)は製品
(32)
設計の初期の段階から最終設計に至るまでのあらゆる設計段階で,製品の製 造工程を明らかにし,製品の機能や信頼性を低下させない経済的な材料や部 品,工作方法を開発したり,過剰な製品の明細や耐性を識別し乙れを排除す るのを援助するo また製品の技術構造が複雑になると,製品開発から製造へ のトランスファーが単に設計図や仕紋吉を製造単位に渡す手続では不充分に なり,また新製品の市場導入競争の圧力により製品開発から製造への迅速な トランスファーが必要になった乙とからも,製造技術が製品開発過程に参加 するようになったロ製品開発への製造技術の参加は製造単位の新製品への関
(33)
心と理解を深め,製品の閃発や設計と並行して製造工程計画,製造設仰の準 備,修正,開発が行なわれるため,製造へのトランスファーを容易にした。
1950年代に入ると企業によっては製品計四システムの全体がマーケティング 除穏により支日されるものが現われるが,このような企業では後に述べるよ
うに製造技術は製品の信頼性や耐久性を犠牲にした製品原価の削減に協力す ることが余儀なくされるようになるo
既に述べたように第二次世界大戦後,マーケテイング機能は企業組織での 地位を高め,製品外様や生産量だけでなく,製品の機能明細の決定にまで責 任を持つようになるが,特別のマーティング・プログラムを必ずしも必要と せず,技術突破が比較的容易に新市坊を開拓し,また既存市場での地位を強 化する製品分野の企業では製品計画システムは技術支配が行なわれ,マーケ テインク守の製品決定への参加は製品明細決定のための市場要求の識別,販売 量予測,市場導入を通じて収集された製品についての消費者反応資料の供給 等の程度に限定される傾向があったD しかし,技術突破による市場開発が可 能であるといっても,草新的技術によって創造可能になる製品種類は本来予 測不可能で,技術支配的な製品計画システムを持つ企業は未知の市場や新し い消費者要求に直面した場合問題解決能力を持たない危険があった。更に,
(34) 一般技術水準の向上や企業の技術開発能力の拡大により緊密な代替製品が多
くなるに従がい,また文化や生活様式の発展により消賀者行動の変化が多核 化しその予測が困難になるに伴ない,技術達成や技術突破だけで製品草新に 成功する機会が少なくなる傾向が現われはじめた。また,企業外で達成され た新技術を吸収消化しそれを利用または改善して市場要求に沿った製品を開 発することが可能な機会も多くなった。このような事情で, 1950年代も後半
(35)
になると製品計画システムへのマーケティング機能の参加が開発過程にま で強化されるようになった。既に述べたように,まずマーケテイング機能 は市場の必要調査を通じて製品概念,製品の機能明細の構成に強力に参加す るようになったが,次いで使用試験,消費者反応試験,市場実験等を通じて 消費者が要求するサービス水準を保ち競争力にも富む製品特性の決定に直接 貢献するようになった。さらにマーケティング機能は需要丑,競争の進展,
市場導入能力,流通組織等についての資料の面から開発プログラムの採用順 位,縮小,拡大,廃棄の決定に影響するようになった。またマーケティング
(36)
機能は,潜在競争企業に先行し技術危険や市場危険を冒してより大きな投資 を必要とする研究開発を行ない,高利潤が期待される時期に充分な市場地位
製品計画システムにおける 133 マーケティング機能の参加の過程と統合機構の発達についてー
を確保するか,外部の研究成果を待って急速な追随開発を行ない,市場が成 長段階に至る時に市場に侵入するか,または外部の開発の進行を待って,そ の成果を吸収し,特別の市場区分の必要に応ずる製品修正で成熟市場に割り 込むか等の選択を通じて,開発プログラムや開発投資の決定に影響した。
また市場導入の大規模化,容易に操作されない自主的に行動する消費者群 の出現,競争企業の多面化する反応,変動する流通機構等により新製品の市 場導入に当り価格,広告,流通等で特別の計画,特l乙草新的計画が必要にな ると,製造から市場導入への迅速な移行の必要もあって,マーケテイング単 位が開発過程に参加し,開発や製作と併行して市場導入準備を行なうように なった。同時に,市場導入の業績により製品設計,製品欠陥,製品原価と製
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品明細の関係等の迅速な修正を容易にするため,製品の研究開発と市場導入 が補正情報経路のネットワークを持つ統一的システムとして管理される傾向
も強くなったD
企業により経過は様々であるが,このようにしだいに製品計画へのマーケ ティング機能の参加が強化され,製品政策の構成,製品評価をマーケティン グ部門中心で行なう企業も多くなった。更に進んで,既知の市場の必要を改 善された製品や販売方法で開拓することに主力を置く企業や外部技術を吸収 し市場必要に応じた製品の開発を重視する企業では,しばしば製品計画シス テムがマーケティグ支配で管理される傾向があった。しかしこのようなマー
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ケテイング支配の企業では利益ある新市場に至る,または既存の主力製品に 代替する製品の開発につながな主要な基礎技術や科学上の成果が見逃がさ れ,また他企業が技術的に先行することで支配している,拡大しつつある市 場への割り込みが時 ~E される危険があった。
製品計画システムが製造機能中心に管理され,生産施設の完全利用と高い 生産効率の維持のために消究者の新しい必要に沿った製品開発が抑圧される ことは現代の企業では少なくなりつつあるが,マーケテイング,研究開発,
製造技術の聞に適切な均衡が維持されている製品計画システムを持つ企業は 少ないo しかし同一産業における研究開発重視の企業とマーケテイング丞視 の企業の併存は相互に異なる競争局面でそれぞれの市場地位を維持する結果
に な り , 直 接 競 争 を 極 小 化 す る 効 果 が み ら れ る が , や が て 相 互 に 影 響 し 合 い 技 術 と マ ー ケ テ イ ン グ の 問 に 均 衡 あ る 企 業 を 生 み だ す で あ ろ うo
(1) 1900年代初期にも技術的に進んだ製品では設計過程で材質,型,規校,仕上,
特徴,色彩等が考慮されているが (A. H. Church, The Science and Practice of Management, 1914, p.28) ,政策的lと変草されたものは製 品特徴や色彩の部分で,これを販売に当つてのアピーノレ点として把え,商標 lとより製品識別を容易にして市場に浸透したと考えられる。なお, 1900年代 初期の製造企業のマーケテイング政策については次の文献にその概略がみら れる。 M. T. Copeland, Scope and Content of a Course in Marketing, Journal of Political Economy,XXVIII 1920, pp.396
" , ,397.
(2) Alfred D Chandler, The Beginnings of Big Business in American Industry, Business History Review, Spring 1959. p. 5. (3)荒川祐吉,現代配給論(1960)pp .18""19.
(4) Eugene J. Kelley, Marketing Strategy and Functions (1955) p.69
(5) Walter S. Hayward, Sales Administration (1926).p.439. (6) Ralph C. Davis, The Principles of Factory Organization and
Management (1928) pp.97""98.
(7) 1900年代初期から企業内の科学者や技術者の組織的努力によって新製品開発 が行なわれるようになり,工業の発達が促進された。
Lawrence L. Bethel, Franklin S. Atwater, George H. E.
Smith, Industrial Organization and Management (1956) pp .122
""123.
(8) Ralph C. Davis, op. cit., p.54, p.94
(9) Norris A. Brisco ,Economics of Business (1913), pp.175""176 日
目 Ernest Dale and Charles Meloy, Hami1ton MacFarland Bark‑
sdale and the Dupont Contributions to Systematic Management, Business History Review, Summer 1962, p.132
。1) John F. pyle, Marketing Principles, Organization and Policies