地域の健全な水環境の維持・保全に関する研究
―政策法務的な視点から―
2014年7月
長崎大学大学院生産科学研究科
広 瀬 創 一
目次
第1章 緒論 1
1.1 研究の背景と目的 1
1.2 政策法務に関する既往の研究 4
1.3 本論の構成 5
第2章 水質管理計画 8 2.1 熊本地域の水質保全対策の現状と課題 8
2.1.1 現行水質管理システム 8
2.1.2 熊本県水質環境の現状 11
2.1.3 現状を踏まえての評価 14
1)非点源(面源)汚染対策 14
2)生活排水対策 15
3)住民参加 16 4)干潟 18
第3章 地下水 20
3.1 はじめに 20 3.2 分析の対象と方法 20 3.3熊本地域の地下水対策の歴史 21
3.3.1 熊本地域の概要 21
3.3.2 地下水保全対策の展開過程 21
1)第一期(1960年~1969年) 22
2)第二期(1970年~1979年) 23
3)第三期(1980年~1989年) 25
4)第四期(1990年代) 30
3.4 熊本の取り組み 40
3.5 水循環基本法 42
3.6 地下水保全の問題点 43
3.6.1 地下水水量問題 44
3.6.2 地下水水質問題 46
3.7 おわりに 47
I
第4章 河川 49
4.1 はじめに 49
4.2 現行河川法による河川管理の問題点 49
4.2.1 中央集権的な河川管理体制 49
4.2.2 河川法における住民参加の欠如 50
4.3 新たな河川制度のあり方 51
4.4 地域環境活動 53
-熊本県上天草市教良木地区を事例に-
4.4.1 教良木地区の概要 53
4.4.2 環境活動の取り組み 54
4.5 考察 55 4.6 河川管理に関する計画 60
4.7 おわりに 62
第5章 地域開発・羊角湾 63
5.1 はじめに 63
5.2 分析の対象と方法 64
5.3 国営羊角湾総合開発事業の経緯 64
5.4 河浦町の歴史 67
5.4.1 炭坑依存の農業 67
5.4.2 みかん園依存農業 70
5.5漁民 71
5.5.1 法制度と課題 73
5.6 現状 74
5.7 問題点 75
5.8 羊角湾干拓計画と諫早湾干拓の比較 76
5.9 おわりに 78
5.9.1 公共事業撤退ルールの欠如 78
5.9.2 沿岸域環境保全の欠如 79
第6章 ダム問題 81
6.1 はじめに 81
II
6.2 川辺川ダム中止の経緯 84
6.3 荒瀬ダムの撤去の経緯 85
6.4 市房ダムと1965年水害 86
6.5 路木ダムの裁判 88
6.6 淀川水系流域委員会と淀川モデル 89
6.7 立野ダム 91
6.8 その他のダム 石木ダム・本明川ダム 93 1)石木ダム 94 2)本明川ダム 96 6.9 補論 揚水発電について 98
第7章 総括 101
註 113 引用・参考文献一覧 134 インターネット情報 144 謝辞
III
図表目次 第1章
なし 第2章
表2-1 熊本県の河川(BOD)及び(COD)の環境基準達成率の推移 11 図2-1 熊本県のCOD発生源別汚濁負荷量 13 第3章
表3-1 熊本地域における地下水質・水量保全対策の経緯(1970年代)24 図3-1 地下水採取量の経年変化(工場・建築物等) 26 表3-2 熊本地域における地下水・水量保全対策の経緯(1980年代) 26 表3-3 熊本地域における地下水量保全対策の経緯(1980年代) 29 表3-4 熊本地域における地下水質保全対策の経緯(1990年代) 31 表3-5 熊本地域における地下水量保全対策の経緯(1990年代) 34 表3-6 公益財団法人くまもと地下水財団の事業実績 41 第4章
図4-1 教良木地区の地理的位置 54 表4-1 教良木川の水質(BOD・DO)経年変化 54 表4-2 天草地域の人口・就業者数・完全失業者の推移 59 表4-3 天草地域の第一次産業就業者数の推移 60 第5章
図5-1 熊本県天草市河浦町羊角湾位置図 66 表5-1 羊角湾問題関連年表 66 表5-2 河浦町人口・農家戸数の動向 70 第6章
なし 第 7章
表 7-1 国 内 外 の主 要 公 共 プロジェクト評 価 1 1 1
IV
第 1 章 緒 論
1 . 1 研 究 の 背 景 と 目 的
本 論 文 は 、 健 全 な 水 循 環 系 を 保 全 す る た め の 法 政 策 の 在 り 方 に つ い て 検 討 す る も の で あ る 。
水 は 、「 降 水 → 地 下 水 → 表 流 水 ( 河 川 )・ 海 洋 → 蒸 発 」 と い う 循 環 系 を 形 成 し て い る 。 こ の 水 循 環 は 、 太 陽 放 射 と 重 力 と い う 半 永 久 的 な 自 然 エ ネ ル ギ ー
( 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー ) に よ っ て 駆 動 さ れ て い る 。 こ の よ う な 水 循 環 の 影 響 を う け る 地 域 が 「 流 域 」 で あ り 、 社 会 経 済 活 動 や 環 境 保 全 に 重 要 な 要 素 を な す の が 、 流 域 を 単 位 と し た 健 全 な 水 循 環 系 で あ る 。
し か し な が ら 、 経 済 活 動 の 急 激 な 発 展 に 伴 う 都 市 的 土 地 利 用 の 拡 大 、 過 疎 化 ・ 高 齢 化 の 進 行 及 び 都 市 化 ・ 混 住 化 の 進 展 に 伴 う 農 地 の 減 少 、 農 地 の 耕 作 放 棄 の 増 大 、 及 び 流 域 の 経 済 活 動 等 に よ る 汚 濁 負 荷 流 出 の 増 大 、 沿 岸 域 に お け る 藻 場 ・ 干 潟 の 減 少 な ど 、 流 域 を 取 り 巻 く 状 況 が 大 き く 変 化 し て い る 。 そ の た め 、 自 然 の 水 循 環 が 部 分 的 に 損 な わ れ 、 水 資 源 ・ 水 源 涵 養 機 能 の 低 下 、 地 下 水 の 過 剰 揚 水 に よ る 地 下 水 位 の 低 下 や 生 物 多 様 性 に 富 む 水 辺 環 境 の 喪 失 な ど さ ま ざ ま な 弊 害 が 生 じ 、 自 然 環 境 が も つ 浄 化 能 力 を 大 き く 超 え て い る 、 と 指 摘 さ れ て い る( 1 )。 こ の よ う な 健 全 な 水 循 環 系 の 回 復 や 水 環 境 保 全 と い っ た 水 環 境 に 関 わ る 諸 課 題 に 適 切 に 対 応 し て い く た め に は 、 法 制 度 も こ う し た 水 循 環 に 着 目 し 、 流 域 を 一 体 的 に 管 理 す る も の で な け れ ば な ら な い 。 沖 大 幹 も 同 様 に 「 流 域 と は 分 水 嶺 に 囲 ま れ た 領 域 で 、 そ の 中 で は 上 流 か ら 下 流 へ と 重 力 で 水 が 流 れ る の で 、 流 域 内 で は 水 は 共 有 財 産 と し て の 性 格 が 強 い 。 そ の た め 、 水 は 行 政 区 画 単 位 で は な く 、 流 域 単 位 で 計 画 、 マ ネ ジ メ ン ト さ れ る べ き で あ る 。」 と し て い る( 2 )。
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し か し 、 わ が 国 の 法 制 度 は 、 国 土 開 発 を 基 調 と す る 縦 割 型 立 法 で あ り 、 公 共 事 業 の 分 配 等 を 基 軸 と し 、 地 域 の 課 題 に 必 ず し も 答 え な い 中 央 集 権 的 な し く み で で き て い る 。 そ の 結 果 、 水 の 循 環 、 流 域 一 体 的 管 理 の 要 請 な ど お よ そ 考 慮 さ れ て い な い 。 こ れ が 水 問 題 に 適 切 に 対 応 で き な い 大 き な 法 的 要 因 で あ る 。
こ の 点 に 関 連 し て 、国 の 第 4 次 環 境 基 本 計 画 で は 、( 1 )政 策 領 域 の 統 合 に よ る 持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 、( 2 )国 際 情 勢 に 的 確 に 対 応 し た 戦 略 を も っ た 取 り 組 み の 強 化 、( 3 ) 持 続 可 能 な 社 会 の 基 盤 と な る 国 土 、 自 然 の 維 持 、 形 成 、
( 4 ) 地 域 を は じ め 様 々 な 場 に お け る 主 体 に よ る 参 画 、 協 働 の 推 進 を す る こ と と し て い る 。
以 上 の よ う な 状 況 を 踏 ま え 、 今 後 、 水 環 境 に 関 わ る さ ま ざ ま な 問 題 を 解 決 す る た め に は 、 ① 流 域 と い う 視 野 で の 管 理 、 ② 多 様 な 生 物 の 生 息 ・ 生 育 環 境 の 確 保 、 ③ 連 携 重 視 ( 市 民 、 行 政 、 企 業 及 び 行 政 機 関 相 互 間 な ど の 連 携 と 情 報 公 開 )、④ 健 全 な 水 環 境 系 の 構 築 に よ り 健 全 な 水 循 環 を 回 復 し て い く 必 要 が あ る 。
本 論 文 は 、 熊 本 の 水 環 境 の 課 題 と し て 、 熊 本 の 地 下 水 ・ 羊 角 湾 干 拓 事 業 ・ ダ ム 問 題 を と り あ げ る が 、 そ れ に は 以 下 の 理 由 が あ る 。
一 つ め の 熊 本 の 地 下 水 は 、 熊 本 の 生 活 用 水 は 地 下 水 に よ る 寄 与 が き わ め て 大 き い 。 そ れ ゆ え 、 わ が 国 に お け る 地 下 水 統 一 法 令 が な い 中 、 早 く か ら 地 下 水 の 保 全 に 向 け て 、 環 境 の 予 防 原 則 を 基 本 に 自 治 体 自 ら の 創 意 工 夫 で シ ス テ ム を 整 備 し 、 取 組 を 進 め て き た 地 域 で あ り 、 格 好 の 研 究 材 料 を 提 供 で き る も の と 思 わ れ る 。二 つ め の 羊 角 湾 干 拓 事 業 は1997年 国 営 干 拓 事 業 と し て は 我 が 国 で 初 め て 中 止 に な っ た 先 駆 的 事 例 で あ る ( 混 迷 を 深 め る 諫 早 湾 干 拓 と は 対 照 的 ) 。 し か し 、 い っ た ん 工 事 が 施 行 さ れ た ら 、 事 業 実 施 に 伴 う 被 害 が 重 大 で あ っ た と し て も 、 事 業 中 止 が 現 行 法 上 は 困 難 で あ る こ と を 改 め て 浮 き 彫 り
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に な っ た も の と 言 え る 。 三 つ め は ダ ム 問 題 で あ る が 、 ダ ム 問 題 は 水 循 環 を 考 え る 上 で も 重 要 な も の で あ る 。 す な わ ち 、 河 川 に は 森 林 表 流 水 が 含 ま れ る 。 森 林 表 流 水 に は 生 物 の 栄 養 を 運 ん だ り 、 生 活 排 水 等 の 汚 濁 を 希 釈 し た り す る な ど の 働 き が あ る 。 ダ ム は こ の よ う な 水 循 環 を 遮 断 す る も の で あ り 川 に と っ て は 「 敵 対 物 」 で あ る 。 こ の よ う な 環 境 問 題 か ら 、 こ れ 以 上 ダ ム は 不 必 要 で は な い か と 誰 の 目 か ら も 明 ら か に な っ て き た( 4 )。熊 本 は 、川 辺 川 ダ ム( 国 営 事 業 の 中 止 ) 、 荒 瀬 ダ ム ( 全 国 初 の 本 格 的 撤 去 工 事 ) 、 路 木 ダ ム ( 住 民 一 部 勝 訴 の 判 決 ) な ど 、 日 本 の ダ ム 論 争 の 先 駆 的 、 中 心 的 位 置 を 占 め て い る 。 こ の 事 例 か ら 見 え て く る も の は 、 ダ ム に よ る 治 水 に は 限 界 が あ り 、 想 定 外 の 大 規 模 洪 水 で は 対 応 で き な い 。 従 っ て 、 ハ ー ド 面 ( 特 に 大 型 施 設 ) だ け に 頼 ら ず 、 堤 防 の 補 強 、 排 水 ポ ン プ の 増 設 、 避 難 訓 練 と い っ た 、 い わ ゆ る 流 域 治 水 の 重 視 と い っ た ソ フ ト 面 ( 中 小 型 施 設 の き め 細 か い 整 備 を 含 む ) へ の シ フ ト が 必 要 で あ る 、 と い う こ と で あ る 。 こ の よ う に 、 熊 本 の 水 環 境 問 題 は い わ ば 我 が 国 の 水 環 境 問 題 の 縮 図 で あ り 、 そ の 抱 え る 問 題 は 今 日 の 我 が 国 の 水 環 境 が 抱 え る 諸 問 題 そ の も の で あ っ て 、 新 た な 水 環 境 管 理 政 策 に よ っ て 解 決 を 必 要 と す る 喫 緊 の 課 題 を 内 包 し て い る 。
本 論 文 は 以 上 の よ う な 背 景 並 び に 現 状 認 識 に 立 脚 し て 、 熊 本 県 の 水 質 環 境 保 全 の 障 害 と な っ て い る 事 柄 と 今 後 の 課 題 を 明 ら か に し 、 今 後 の 法 政 策 と し て 工 夫 さ れ る べ き も の を 検 討 す る も の で あ る 。 本 論 文 の 独 自 性 は 、 従 来 の 水 環 境 保 全 に か か わ る 法 政 策 的 な 研 究 と 提 案 は 、 地 下 水 、 河 川 水 、 干 潟 な ど 個 別 の 局 面 に つ い て の も の が 多 か っ た 。 本 研 究 は 、 ひ と つ の 地 域 ( こ こ で は 熊 本 県 、 必 要 に 応 じ て 近 県 な ど と 対 比 ) に つ い て 水 循 環 の 全 体 を と ら え て 包 括 的( 河 川 、地 下 水 、海 )な 考 察 と 提 案 を 行 っ た と こ ろ に あ る 。水 質 管 理 計 画 、 地 下 水 の 保 全( 熊 本 地 域 は 地 下 水 依 存 度 が 高 い )、河 川 管 理 、地 域 開 発 と 羊 角 湾 干 拓 の 中 止 ( 諫 早 湾 干 拓 と 対 比 )、 ダ ム 問 題 ( 国 営 ダ ム の 中 止 、 ダ ム 撤 去 、
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既 存 ダ ム に よ る 水 害 激 化 、ダ ム 紛 争 )、淀 川 水 系 流 域 委 員 会 方 式 か ら の 示 唆 な ど に つ い て の 総 合 的 な 考 察 が そ の 成 果 で あ る 。
1 . 2 政 策 法 務 に 関 す る 既 往 の 研 究
本 節 で は 、タ イ ト ル に 「政 策 法 務 」的 な 視 点 か ら と 記 述 し て い る が 、こ の 「政 策 法 務 」と は い っ た い ど の よ う な も の か を 述 べ る 。
政 策 法 務 論 は 、 鈴 木 庸 夫 の 分 類 に よ る と 3 つ の 流 れ と し て 整 理 さ れ て い る
( 3 )。 第 一 の 流 れ は 、 松 下 圭 一 を 中 心 と す る 「武 蔵 野 学 派 」、 第 二 の 流 れ は 、 阿
部 泰 隆 提 唱 の 「政 策 法 学 派 」、第 三 の 流 れ は 、木 佐 茂 男 を 中 心 と す る 「研 修 学 派 」 で あ る 。 こ の 3 つ の 流 れ に よ り 研 究 が 進 め ら れ て き た と さ れ る 。
阿 部 泰 隆 の 提 唱 す る 「政 策 法 学 派 」に よ る 政 策 法 務 と は 、 政 策 を ど の よ う に 仕 組 め ば 合 憲 か 、既 存 の 法 体 系 と 整 合 す る か 、そ し て 、よ り 妥 当 か を 考 え る 。 つ ま り 、 政 策 を 法 政 度 と し て 設 計 す る の が 政 策 法 務 で あ る と す る( 5 )。
「武 蔵 野 学 派 」は 、 自 治 体 が 総 合 計 画 と い う 形 で 政 策 を 構 想 し 、 そ れ を 実 現 す る た め に 国 に 対 抗 す る 形 で 自 治 体 が 自 治 立 法 と 自 主 法 令 解 釈 を 展 開 す る と い う 政 策 実 現 型 の 自 治 体 法 務 を 志 向 す る も の で あ る( 6 )。
ま た 、「研 修 学 派 」に つ い て は 、木 佐 に よ れ ば 、「職 員 に ど れ ほ ど 市 民 に 奉 仕 す る 法 知 識 が あ る の か 、 ど れ ほ ど の 法 的 感 覚 が 備 わ っ て い る か を 吟 味 し 、 政 策 法 務 を 支 え る 法 務 の 組 織 や 人 材 が ど の よ う な 実 情 に あ る か を 問 題 に 」す る も の で あ る( 7 )。
ま た 、 当 時 か ら 相 当 の 期 間 が 経 過 し 、 今 日 、 そ の 体 系 化 や 分 類 に つ い て 、 さ ら に さ ま ざ ま な 諸 説 が 展 開 さ れ て い る 。 例 え ば 、 磯 崎 初 仁 は 、 政 策 法 務 を
「 法 を 政 策 実 現 の 手 段 と と ら え 、 そ の た め に ど の よ う な 立 法 ・ 法 執 行 ・ 争 訟 評 価 が 求 め ら れ る か を 検 討 し 、実 行 す る 、実 務 及 び 理 論 に お け る 取 り 組 み 」( 8 )
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と し 、 山 口 道 昭 は 、 政 策 法 務 「 法 を 政 策 実 現 の 手 段 と と ら え 、 そ の た め に ど の よ う な 立 法 ・ 法 執 行 ・ 評 価 が 求 め ら れ る か を 検 討 し よ う と す る 、 自 治 体 に お い て 主 と し て 自 治 体 職 員 が 行 う 実 務 及 び 理 論 に お け る 取 組 及 び 運 動 」 と し て い る( 9 )。 こ れ は 、 磯 崎 の 定 義 と 同 じ で あ る が 、 政 策 法 務 の 主 体 を 自 治 体 職 員 に 限 定 す る と こ ろ に 差 異 が あ る 。
さ ら に 、 天 野 巡 一 は 、 自 治 体 法 務 を 、 法 制 執 行 な ど 日 常 的 な 法 適 用 事 務 と し て の 「技 術 法 務 」、 自 治 体 政 策 を 法 務 の 視 点 か ら 創 造 的 に 展 開 す る 立 法 と し て の 「構 想 法 務 」、 係 争 予 防 と し て の 「訴 訟 法 務 」に 区 分 し て い る( 1 0 )。
そ し て 、田 中 孝 男 ら は 、自 治 体 法 務 を 「自 治 体 が 、住 民 福 祉 の 向 上 と そ の 人 権 ・ 権 利 の 実 現 を 図 る た め 、 す で に あ る 法 の 体 系 を も と に 、 よ り 地 域 の 行 政 ニ ー ズ に 即 し た 自 主 的 な 法 シ ス テ ム を 積 極 的 に 設 計・運 用 す る こ と 」と 定 義 し て い る( 1 1 )。
こ の よ う に 、 政 策 法 務 に 関 す る 研 究 は 少 な い よ う で 結 構 多 い 。 し か し 、 そ の 大 半 は 、 政 策 法 務 に 関 す る 制 度 的 な 動 向 の 把 握 に 焦 点 を 当 て て い る の で あ る 。 そ れ ゆ え 、 今 後 、 で き る だ け 地 域 レ ベ ル で の 実 証 分 析 を 通 じ た 政 策 提 案 を 法 制 度 化 す る 具 体 的 な 検 討 に 関 す る 研 究 が 重 要 に な っ て く る も の と み ら れ る 。
1 . 3 本 論 文 の 構 成
本 論 文 で は 、 流 域 の 健 全 な 水 循 環 を 維 持 ・ 保 全 に 資 す る 視 点 か ら 、 熊 本 県 の 環 境 法 政 策 の 環 境 保 全 の 障 害 と な っ て い る 事 柄 と 、 今 後 の 法 制 策 と し て 工 夫 さ れ る べ き も の を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。
本 論 文 の 構 成 は 以 下 の と お り で あ る 。
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第 2 章 で は 、 熊 本 地 域 の 水 質 環 境 の 現 状 と 水 質 保 全 に 係 る 法 制 度 を 整 理 す る と と も に 、 国 法 、 条 例 等 に 内 在 す る 問 題 点 を 明 ら か に し 、 新 た な 法 政 策 の 必 要 性 を 論 じ た 。
第 3 章 で は 、 熊 本 に お け る 地 下 水 保 全 を 進 め る う え で 、 水 質 ・ 水 量 の 保 全 の 障 害 と な っ て い る 事 柄 を 検 討 し た 。 水 量 に 関 し て は 、 白 川 中 流 域 に 地 下 水 涵 養 を 促 す 水 田 耕 作 、こ れ を 代 替 す る 土 地 利 用 が 保 障 さ れ る 必 要 が あ る た め 、 農 地 法 を 改 正 し 、「 水 循 環 の た め 重 要 な 機 能 を 有 す る 農 地 に つ い て は 原 則 と し て 転 用 を 禁 止 す る 」と い う 規 定 を 新 設 す る こ と を 提 案 し た 。水 質 に 関 し て は 、 熊 本 市 が 条 例 を 制 定 し て い る が 、 事 前 の 同 意 形 成 が 不 十 分 な た め 実 効 性 が な く 、 円 滑 に 機 能 し て い な い 。 そ こ で 、 ワ ー ク シ ョ ッ プ 方 式 で 熟 議 す る こ と 、 農 民 ・ 住 民 ・ 環 境 N P O な ど の 決 定 へ の 関 与 な ど を 提 案 し た 。
第 4 章 で は 、 河 川 に お け る 健 全 な 水 環 境 ( 近 い 水 ) の 回 復 、 保 全 と い う 視 点 か ら 、河 川 環 境 管 理 を 支 え る 、河 川 法 の 構 造 上 の 問 題 点 に つ い て 検 討 し た 。 そ の 上 で 、 そ れ を 補 完 す る 流 域 の 視 点 、 住 民 参 加 の 視 点 に 立 脚 し た 、 地 方 分 権 的 な 河 川 管 理 シ ス テ ム の 構 築 に よ り 、 住 民 が 河 川 管 理 に 主 体 的 に 参 加 で き る 望 ま し い 方 法 を 指 摘 し た 。
第 5 章 で は 、 干 潟 な ど 湿 地 は 、 陸 と 海 、 湖 な ど の 生 態 系 が 交 錯 す る 場 所 と し て 生 物 多 様 性 に 富 み 、 水 質 保 全 と 汚 染 の 緩 和 、 漁 場 の 提 供 な ど の 多 様 な 機 能 が あ る に も か か わ ら ず 、 無 益 で 非 生 産 的 な 場 所 と 考 え ら れ 、 公 共 事 業 な ど に よ っ て 破 壊 が 進 行 し て き た こ と へ の 対 応 を 考 え た 。
第 6 章 で は 、 熊 本 の ダ ム 問 題 を 検 討 し た 。 河 川 に 含 ま れ る 森 林 表 流 水 は 生
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物 の 栄 養 を 運 ん だ り 、 生 活 排 水 な ど の 汚 濁 を 希 釈 し た り す る な ど の 働 き が あ る が 、 ダ ム は こ の よ う な 水 循 環 を 遮 断 す る も の で あ り 、 川 に と っ て は 「 敵 対 物 」 で あ る 。 こ う し た こ と か ら 、 こ れ 以 上 の ダ ム 新 設 は 不 必 要 で あ る こ と が 明 ら か に な っ て き た 。熊 本 は 、川 辺 川 ダ ム( 国 営 事 業 の 中 止 )、荒 瀬 ダ ム( 全 国 初 の 本 格 的 撤 去 工 事 )、 路 木 ダ ム ( 住 民 一 部 勝 訴 の 判 決 )、 立 野 ダ ム 論 争 、 市 房 ダ ム に よ る 水 害 増 幅 事 例 の 聞 き 取 り な ど 、 日 本 の ダ ム 論 争 の 先 駆 的 、 中 心 的 位 置 を 占 め て い る 。 こ れ ら の 事 例 か ら 見 え て く る の は 、 利 水 面 で 状 況 の 変 化 を ふ ま え た 慎 重 な 検 討 が 必 要 で あ り 、 治 水 面 で は ダ ム よ る 治 水 に は 限 界 が あ り 、 想 定 外 の 大 規 模 洪 水 で は 対 応 で き な い こ と で あ る 。 し た が っ て 、 ハ ー ド 面 ( 特 に 大 型 施 設 ) だ け に 頼 ら ず 、 堤 防 の 補 強 、 排 水 ポ ン プ の 増 設 、 避 難 訓 練 、 都 市 計 画 の 見 直 し な ど 、 ソ フ ト 面 を 含 め た 総 合 的 な 流 域 治 水 の 重 視
( 中 小 型 施 設 の き め 細 か い 整 備 を 含 む ) へ の シ フ ト が 必 要 で あ る こ と を 論 じ た 。
最 後 に 第 7 章 で は 、 本 研 究 を 総 括 し 、 今 後 の 展 望 を 述 べ た 。
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第 2 章 水 質 管 理 計 画
熊 本 県 の 沿 岸 は 、 有 明 海 、 不 知 火 海 と い う 2 大 内 湾 と 東 シ ナ 海 に 面 し た 天 草 西 海 に 囲 ま れ 、 内 海 性 と 外 海 性 を 併 せ 持 つ 海 域 で あ る 。 し か し 、 近 年 、 沿 岸 域 で は 富 栄 養 化 が 急 速 に 進 み 、 赤 潮 に よ る 漁 業 被 害 、 干 潟 環 境 の 悪 化 等 が 顕 在 化 し て き た( 1 )。
こ の よ う な 状 況 に 対 応 す る た め 、 そ れ ま で の 水 質 汚 濁 防 止 法(1970年 12月 25日 法 律 第 138号)に 加 え 、2002年 11月 に 有 明 海 及 び 八 代 海 を 再 生 す る た め の 特 別 措 置 法(2002年 11月 29日 法 律 第 120号)が 制 定 さ れ 、そ の 後 地 方 自 治 体 で あ る 熊 本 県 で は 「有 明 海 ・ 八 代 海 に 向 け た 熊 本 県 計 画 」を 策 定 し 、 各 般 の 施 策 が 展 開 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 閉 鎖 性 水 域 を 中 心 と し て 、 水 質 改 善 対 策 の 効 果 が 依 然 と し て 現 れ て い な い 水 域 が み ら れ る こ と か ら 、 閉 鎖 性 水 域 の 水 質 汚 濁 メ カ ニ ズ ム の 解 明 に よ り 、 窒 素 、 リ ン に 係 る 水 質 浄 化 対 策 や 農 地 、 山 林 等 の 非 点 源 汚 染 源 へ の 対 策 が 重 要 な 課 題 と な っ て い る 。
一 方 、 近 年 、 環 境 に 対 す る 県 民 の 関 心 の 高 ま り を 受 け 、 こ れ を 良 好 な 形 で 保 全 し 、 次 世 代 に 継 承 し て い く こ と が 重 要 な 課 題 と な っ て い る 。
本 論 文 で は 、 熊 本 県 の 水 質 環 境 の 現 状 と 課 題 に つ い て 述 べ る と と も に 、 水 環 境 に 関 わ る 諸 課 題 に 適 切 に 対 応 し て い く た め に は 、 水 循 環 に 着 目 し 、 流 域 を 一 体 的 に 管 理 す る 水 環 境 管 理 の 構 築 が 不 可 欠 で あ り 、 そ の し く み を 下 支 え す る た め の 新 た な 法 制 度 の 構 築 の 必 要 性 に つ い て 検 討 す る 。
2 . 1 熊 本 地 域 の 水 質 保 全 対 策 の 現 状 と 課 題
2 . 1 .1 現 行 水 質 管 理 シ ス テ ム
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水 質 保 全 法 制 の 基 本 法 は 、1970年 に 制 定 さ れ た 水 質 汚 濁 防 止 法( 以 下「 水 濁 法 」 と い う ) で あ る 。 水 質 汚 濁 に 関 し て は 、 水 濁 法 の 下 で は 、 生 活 環 境 項 目 の 場 合 は 日 平 均 排 水 量5 0 ㎥以 上 の 排 水 を 公 共 用 水 域 に 流 し て い る 特 定 施 設 を 持 つ 工 場 ・ 事 業 所 全 体 か ら の 排 水 、 ま た は 、 人 の 健 康 に 有 害 な 物 質 を 含 む 排 水 を 公 共 用 水 域 に 流 し て い る 特 定 事 業 所 が 規 制 対 象 と な る (12条 ・2条 ・ 3条)。
水 濁 法 を は じ め と す る 水 質 管 理 シ ス テ ム に つ い て は 、 環 境 へ の イ ン パ ク ト か 大 き い と み ら れ る 部 分 に つ い て 集 中 的 な 規 制 を か け よ う と の 姿 勢 が み ら れ る 。 業 種 毎 に 一 定 規 模 以 上 の も の を 特 定 施 設 ・ 特 定 事 業 所 に 指 定 し 、 そ れ ら に つ い て 様 々 な 施 策 を 行 っ て い る 。 た だ 、 水 濁 法 を み る と 、 い く つ か の 問 題 点 が 内 在 し て い る 。
第 1 に 、 一 定 規 模 以 上 の 特 定 経 済 主 体 に 対 す る 規 制 を 中 心 と し て お り 、 多 様 化 し た 人 間 活 動 に よ る イ ン パ ク ト 増 加 に は 対 応 で き て い な い こ と 。例 え ば 、 先 述 し た よ う に 家 庭 排 水 や 農 地 か ら の 流 出 す る 雨 水 に よ る 水 質 汚 濁 が 問 題 に な っ て い る 熊 本 県 で は 、家 庭 排 水 等 は 、環 境 負 荷 が 少 な い と 考 え ら れ た の か 、 規 制 対 象 か ら は じ め か ら 除 外 さ れ る 傾 向 に あ っ た た め 、 管 理 を 行 う こ と が 難 し く な っ て い る 。 第 2 に 、 因 果 関 係 の 十 分 な 把 握 を 前 提 と し た 政 策 体 系 に な っ て い る た め 、 そ れ が 難 し い 現 状 で は 機 動 的 な 策 が 打 ち 出 せ な い こ と 。 す な わ ち 、 因 果 関 係 が あ る 程 度 は っ き り し た 目 に み え る 被 害 が 起 こ っ た 場 合 に は 迅 速 な 対 処 が 行 わ れ る 場 合 が 多 い が 、 そ れ 以 外 の 場 合 に は 効 果 的 な 策 が と ら れ る こ と は 希 で あ る 。
2000年 代 に 有 明 海 で は ノ リ が 不 作 、ま た 、八 代 海 で は 赤 潮 が 多 発 し 漁 業 等 に 大 き な 打 撃 を 与 え て い た 。 そ こ で 、 水 濁 法 を 補 完 す べ く 、2000年 に 、「 有 明 海 及 び 八 代 海 を 再 生 す る た め の 特 別 措 置 に 関 す る 法 律 」(2002年11月 29 日法 律 第120号)( 以 下 、「 有 明 海 ・ 八 代 海 再 生 特 別 措 置 法 」 と い う ) が 制 定
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さ れ 、2002年 11月 に 施 行 さ れ た 。
こ の 法 律 は 、「 有 明 海 及 び 八 代 海 を 豊 か な 海 と し て 再 生 す る 」 と い う 項 目 を 挙 げ 、「 環 境 の 保 全 及 び 改 善 」 と 「 水 産 資 源 の 回 復 に よ る 漁 業 の 振 興 」 を 図 る た め の 各 種 施 策 の 推 進 が 図 ら れ て い る 。 手 法 は 、 主 務 大 臣 が 基 本 方 針 を 定 め 、 県 が 環 境 保 全 及 び 漁 業 振 興 策 に 関 す る 計 画 を 策 定 す る と 特 定 事 業 に 係 わ る 国 の 補 助 割 合 を 嵩 上 げ す る と い う 、 補 助 手 法 で あ る( 2 )。 こ の 有 明 海 ・ 八 代 海 再 生 特 別 措 置 法 に は 、 従 来 の 水 環 境 政 策 に は な か っ た 新 し い 視 点 が 盛 り 込 ま れ て い る 。 第 1 に は 、「 再 生 」 と い う 環 境 修 復 よ り 踏 み 込 ん だ 概 念 を 導 入 し た こ と 。 第 2 に は 、 海 域 だ け で は な く 、 森 林 と 河 川 の 流 域 圏 単 位 で の 一 体 的 管 理 を 中 心 と す る 水 循 環 の 視 点 を 強 く 打 ち 出 し た こ と 、 で あ る 。
そ れ で は 、 こ う し た 斬 新 な 内 容 を 盛 り 込 ん だ 有 明 海 ・ 八 代 海 再 生 特 別 措 置 法 が 、従 来 の 水 質 環 境 政 策 と 比 べ て 全 く 異 質 な も の か と い う と そ う で は な い 。
① 瀬 戸 内 海 環 境 保 全 特 別 措 置 法 と 比 較 し た 場 合 、 本 法 に は 埋 立 て 抑 制 等 の 規 制 措 置 が な い こ と 。 ② 汚 染 対 策 を 名 目 に 漁 港 の 整 備 等 の 開 発 事 業 を 推 進 す る 仕 組 み で あ る こ と 、 な ど 従 来 型 の 水 産 公 共 土 木 事 業 の 発 想 の 域 を で て い な い も の が 含 ま れ て い る 、 と の 指 摘 が な さ れ て い る( 3 )。 自 然 の 再 生 に 影 響 の あ る 埋 立 て ・ 砂 の 採 取 等 に 規 制 を か け る こ と が 必 要 で あ る 。 熊 本 県 で は 、2003 年 3月、「 有 明 海 ・ 八 代 海 再 生 特 別 措 置 法 」 に 基 づ く 「有 明 ・ 八 代 海 再 生 に 向 け た 熊 本 県 計 画 」を 策 定 し 、こ れ ら に 基 づ き 現 在 対 策 が 進 め ら れ て い る 。現 在 の 項 目 は 、 ① 生 活 排 水 対 策 ( 下 水 道 整 備 、 し 尿 処 理 施 設 整 備 、 合 併 処 理 浄 化 槽 )、② 工 場 ・事 業 所 の 排 水 対 策 、③ 農 業・ 畜 産・ 養 殖 漁 業 対 策( 土 づ く り 対 策 、 施 肥 方 法 の 改 善 、 水 路 等 の 自 然 浄 化 機 能 を 活 用 し た 農 業 用 水 路 整 備 、 家 畜 排 泄 物 処 理 施 設 整 備 、堆 肥 生 産 の 取 組 み 、適 切 な 給 餌 管 理 )、④ 水 質 保 全 の た め の 社 会 シ ス テ ム( 川・海 の 県 民 運 動 )⑤ 海 域 の 環 境(開 発 行 為 に 当 っ て の 配 慮 、自 然 公 園 の 保 全 、海 砂 利 採 取 に 当 っ て の 配 慮 )、⑥ 漁 業 の 振 興( 協 働 施
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設 の 整 備 、 生 活 環 境 の 整 備 、 漁 港 に お け る 遊 漁 船 等 の 対 策 、 赤 潮 被 害 に 伴 う 支 援 ) で あ る 。 で は 、 こ れ ら の 点 に つ い て 果 た し て ど こ ま で 実 現 が で き た の か 、 以 下 に い く つ か の 項 目 別 に 検 討 し て み た い 。 検 討 に 入 る 前 に 、 次 の 節 で 熊 本 県 に お け る 水 質 汚 濁 の 現 状 を 確 認 し て お こ う 。
2 . 1 . 2 熊 本 県 の 水 質 環 境 の 現 状
従 来 、 海 、 河 川 等 は 、 本 来 有 し て い る 水 質 浄 化 機 能 が 発 揮 さ れ 、 良 好 な 水 環 境 が 形 成 さ れ て き た 。 し か し 、 干 潟 の 減 少 、 沿 岸 域 の 開 発 、 流 域 の 都 市 化 や 農 薬 ・ 肥 料 使 用 に 伴 う 汚 染 物 質 の 流 入 に よ り 、 水 域 の 有 す る 自 然 浄 化 機 能 を 超 え る 汚 濁 負 荷 に よ り 、 物 質 循 環 の バ ラ ン ス が く ず れ て 水 質 悪 化 が 進 行 し て い る 。 熊 本 県 に お け る 河 川 、 海 域 の 水 質 の 現 状 を 表 2 - 1 に 示 す 。
表 2-1 熊 本 県 の河 川 (BOD)及 び海 域 (COD) の環 境 基 準 達 成 率 の推 移
年 / 項 目 河 川 海 域 全 窒 素 ・ 全 リ ン ( 海 域 )
2000年 81.3% 52.6% 42.9%
2001年 79.2% 84.2% 100%
2002年 85.4% 78.9% 85.7%
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2003年 93.8% 94.7% 100%
2004年 89.6% 73.7% 100%
2005年 89.6% 73.7% 100%
2006年 97.9% 73.7% 85.7%
2007年 93.8% 73.7% 71.4%
2008年 89.4% 89.5% 71.4%
2009年 91.5% 84.2% 57.1%
2010年 95.7% 73.7% 85.7%
資 料 : 熊 本 県 環 境 生 活 部 環 境 政 策 課 「 水 質 調 査 報 告 書 」( 各 年 次 ) 12
図 2 - 1 熊 本 県 の C O D 発 生 源 別 汚 濁 負 荷 量
資 料 : 環 境 省 「2008年 度 発 生 負 荷 量 等 算 定 調 査 報 告 書 」
河 川 の 水 質 の 推 移 を B O D の 環 境 基 準 の 達 成 率( 4 )で 見 る と 、全 般 に 改 善 が み ら れ80~90% の ほ ぼ 横 ば い 傾 向 を 示 し て い る 。一 方 、海 域 の 水 質 に つ い て C O D の 環 境 基 準 達 成 率 で み る と 、 改 善 は み ら れ る も の の な お 低 い 水 準 に あ る 。さ ら に 、全 窒 素 や 全 リ ン を 環 境 基 準 達 成 率 で み る と2005年 ま で100%
で 推 移 し て い た が2006年 に は57.1~85.7% で 推 移 し て い る 。
環 境 省 の 「2008年 度 発 生 負 荷 量 等 算 定 調 査 報 告 書 」( 図 2 - 1 ) に よ り C O D(35.8t/日)の 負 荷 量 を 発 生 源 別 に み て み る と 、生 活 系 が12.9t / 日 、 産 業 系 が10.6t / 日 、そ の 他 が12.3t / 日 で あ る 。ま た 、窒 素(41.8t / 日 ) の 負 荷 量 を 発 生 源 別 に 見 る と 、 生 活 系 が10.4t/日、 産 業 系 が3.7t / 日 、 産 業 系 が17t / 日 、 水 田 、 畑 な ど の 土 地 系 が11.1t / 日 で あ る 。
ま た 、 リ ン (2.37t ) の 負 荷 量 を 発 生 源 別 に み る と 、 生 活 系 が0.76t / 日 、産 業 系 が0.48t 、畜 産 系0.85t 、土 地 系( 山 林 、畑 等 )が0.22t で あ る 。
こ の よ う に 、 熊 本 の 海 域 に 流 入 す る 発 生 源 別 汚 濁 負 荷 量 を み る と 、 現 状 で は 、 雑 排 水 や 工 場 な ど の 家 庭 系 ・ 産 業 系 と い っ た 点 源 の 発 生 源 に よ る 負 荷 量 も さ る こ と な が ら 、 水 田 、 畑 な ど の 土 地 系 と い っ た 非 点 源 汚 染 源 に よ る 負 荷
35.90%
29.70%
27.20%
7.10%
0.00%
5.00%
10.00%
15.00%
20.00%
25.00%
30.00%
35.00%
40.00%
生活系 産業系 農業系 自然系
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量 が 大 き い こ と が わ か る( 5 )。
海 域 の 一 部 に は 栄 養 塩 類 の 流 入 等 に よ る 富 栄 養 化 が 進 ん だ 結 果 、 赤 潮 等 の 発 生 し 、 漁 業 被 害 等 の 問 題 が 生 じ て い る 。 ま た 、 都 市 用 水 の 水 源 の100% を 占 め る 地 下 水 は 、従 来 、良 質 の 水 源 と さ れ て き た が 、近 年 、そ の 一 部 で 農 薬 、 肥 料 等 に よ る 硝 酸 性 窒 素 に よ る 地 下 水 汚 染 の 拡 大 が 懸 念 さ れ て い る 。 こ の よ う な 事 態 は 、 点 源 中 心 の 規 制 と 管 理 の 仕 組 み に 限 界 が あ る こ と と 、 非 点 源 汚 染 源 対 策 が 早 急 に 構 成 さ れ る 必 要 が あ る こ と と 同 時 に 、 流 域 全 体 を 視 野 に い れ た 「健 全 な 水 循 環 」の 確 保 の た め 施 策 を 緊 急 に 進 め て い く 必 要 が あ る と い え る 。
2 . 1 . 3 現 状 を 踏 ま え て の 評 価
調 査 の 結 果 を み る と 、 有 明 海 ・ 八 代 海 再 生 特 別 措 置 法 の も と で 水 質 保 全 の 取 組 み を し て い る け れ ど も 現 実 に は そ れ ほ ど の 効 果 が あ が っ て い る わ け で も な く 、 有 明 海 ・ 八 代 海 再 生 特 別 措 置 法 の 現 在 の 内 容 は 効 果 的 な 法 政 策 と は い え な い よ う に 思 わ れ る 。そ れ は ま た 、熊 本 県 の 河 川( B O D )・海 域( C O D ) の 環 境 基 準 達 成 率 ( 表 2 - 1 ) か ら も み て と る こ と が で き る 。 以 下 で は 、 水 質 環 境 保 全 の 観 点 か ら 今 後 、ど の よ う な 点 に 施 策 が 求 め ら れ る か を 整 理 す る 。
1 ) 非 点 源 ( 面 源 ) 汚 染 源 対 策
現 行 有 明 海 ・ 八 代 海 再 生 特 別 措 置 法 に お い て は 、 点 源 汚 染 源 と し て の 畜 産 に つ い て の 規 制 は あ る が 、 農 地 自 体 に 起 因 す る 非 点 源 汚 染 源 に つ い て は 、 特 段 の 措 置 を 規 定 し て い な い 。 水 田 等 か ら の 肥 料 成 分 の 流 出 と い っ た 営 農 事 業 に 起 因 す る 水 質 汚 濁 の 影 響 は 、例 え ば 熊 本 地 域 に お い て は 、ハ マ グ リ の 被 害 、
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地 下 水 汚 染 等 が 農 業 地 域 と か さ な っ て い る こ と か ら 、 か ね て よ り 課 題 と し て 指 摘 さ れ て き た( 6 )。
し か し 、 非 点 源 汚 染 源 か ら の 汚 染 に つ い て は 、 汚 濁 負 荷 の 実 態 把 握 が 十 分 に な さ れ て お ら ず 、 人 為 的 な 制 御 が 容 易 で は な い こ と も あ っ て こ れ ま で 特 段 の 措 置 を 講 じ る こ と な く 放 置 さ れ て き た 。 農 業 系 の 農 薬 ・ 肥 料 に つ い て は 、 行 政 指 導 を 通 じ て そ の 適 正 使 用 を も と め て い る が 、 現 場 担 当 官 は 限 界 を 感 じ て い る よ う で あ る( 7 )。
近 年 、 非 点 源 汚 染 源 排 出 負 荷 の 抑 制 対 策 に 事 前 に 汚 濁 が 発 生 し な い よ う に 経 済 的 手 法 が 提 唱 さ れ て き て い る 。 こ れ ま で に も 、 さ ま ざ ま な 目 的 の た め に 環 境 税 ・ 課 徴 金 を 課 す 方 法 な ど の 制 度 が 提 唱 さ れ て き て い る 。
一 方 、 我 が 国 で は 、 使 用 さ れ る 肥 料 の 価 格 を 操 作 し て 、 抑 制 的 使 用 へ の 行 動 を と る よ う 誘 導 す べ き と の 議 論 が あ る が 、 今 後 の 課 題 と な っ て い る 。
2 ) 生 活 排 水 対 策
熊 本 県 で は 生 活 排 水 の 処 理 率 が81% と 全 国 平 均 に 比 べ て も 低 く 、2022年 度 に は90% ま で あ げ る こ と を 目 標 に 整 備 が 進 め ら れ て い る( 8 )。そ れ に よ れ ば 、 現 状 よ り も 下 水 道 等 の 集 合 処 理 施 設 を 増 や し て い く 計 画 と な っ て い る 。 一 般 に 、 人 口 密 度 の 高 い 地 域 が 広 が っ て い る ほ ど 集 合 処 理 施 設 が 効 率 的 で あ る と い わ れ て い る が 、 熊 本 県 で は 合 意 形 成 等 の 問 題 で 整 備 が 遅 れ て い る よ う で あ る 。人 口 密 度 の 低 い 地 域( 9 )で は 、下 水 道 に 比 べ 合 併 処 理 浄 化 槽 の 方 が 費 用 と 時 間 を 考 慮 し た 効 率 的 な 排 水 処 理 シ ス テ ム で あ る こ と か ら 政 策 的 に も 推 進 さ れ て き た 。 し か し 、 熊 本 県 に お い て は 、 水 質 環 境 の 現 状 ( 2 章 の 1 . 1 ) で み た よ う に 、 T - N と T - P な ど の 有 機 物 質 に よ る 汚 濁 が 漸 増 傾 向 に あ る 状 況 で は 、 従 来 の 合 併 処 理 浄 化 槽 の 施 設 の み に よ る 水 質 浄 化 で は 栄 養 塩 を 含
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め た 熊 本 地 域 の 海 域 の 水 質 問 題 の 解 決 に は な っ て い な い の で は な い か と 思 わ れ る 。
従 っ て 、 今 後 、 生 活 排 水 に 関 し て は 、 窒 素 ・ リ ン の 除 去 で き る 高 度 な 合 併 処 理 浄 化 槽 を 導 入 し て い く こ と が 必 要 と な っ て い る 。 ま た 、 合 併 処 理 浄 化 槽 は 設 置 後 の メ ン テ ナ ン ス が 性 能 を 保 つ た め に 重 要 だ が 、 熊 本 県 の 設 置 後 の 法 定 検 査 受 検 率(11条 検 査 )は2010年 度 で49.2%と 低 い 状 況 で あ る( 1 0 )。今 後 、 メ ン テ ナ ン ス を ど の よ う に し て い く か に つ い て も 検 討 が 必 要 で あ ろ う 。
3 ) 住 民 参 加
熊 本 県 の 水 質 環 境 の 現 状 ( 2 章 の 1 . 2 ) で み た よ う に 、 と り わ け 、 水 田 な ど の 農 地 系 の 面 源 か ら の 負 荷 割 合 が 相 対 的 に 大 き い 非 点 源 汚 染 源 対 策 の た め に は 、 農 民 等 の 積 極 的 な 協 力 な し に は 環 境 負 荷 を 低 減 さ せ る こ と は 不 可 能 に な っ て き て い る 。農 薬 制 限 等 は「 言 う は 易 し・行 う は 難 し 」の 典 型 で あ る 。 た だ 、 良 好 な 水 質 環 境 保 全 の た め に そ れ が 必 要 で あ る な ら ば 、 そ の 必 要 性 を 認 識 さ せ る た め に も 、 政 策 過 程 へ の 市 民 参 加 を 求 め る べ き で あ ろ う 。 環 境 基 本 法25条 に お い て 、啓 発・教 育 は 、環 境 施 策 の 一 つ と し て 認 識 さ れ て い る が 、 政 策 形 成 過 程 に 参 加 し て 議 論 を す る こ と に よ っ て 、 そ れ が 効 果 的 に 実 現 で き る 。 住 民 参 加 に つ い て の 論 稿 は 、 こ れ ま で に も 多 く あ り 、 多 岐 に わ た る 論 点 に つ い て 議 論 が 展 開 さ れ て い る 。例 え ば 、ハ バ ー マ ス(11)は 、意 思 決 定 に お け る 形 成 過 程 こ そ が 重 要 で あ る と し 、 さ ら に 、 社 会 の 意 思 決 定 に お い て 、 形 成 過 程 を 重 要 視 す る 民 主 主 義 の 実 現 に お い て は 、 議 会 の 決 定 と い う 制 度 的 な 取 り 決 め だ け で な く 、 さ ま ざ ま な 立 場 か ら の 意 見 形 成 に よ っ て よ り よ い 結 論 や 行 動 指 標 を 導 き 出 せ る と い う こ と で あ り 、 そ れ は 、 基 本 的 な 権 利 で あ る 、 と し て い る 。松 下 圭 一(12)は 、官 治・ 集 権 か ら 市 民 参 加 や 情 報 公 開 な ど を 基
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調 と し た 自 治 分 権 へ の 転 換 が 緊 急 の 課 題 で あ る と し て い る 。坂 本 義 和(13)は 、 権 力 が 相 対 化 さ れ て し ま っ た 時 代 に は 参 加 に よ り 多 様 な 意 見 を 尊 重 し あ う こ と に メ リ ッ ト が あ る こ と を あ げ て い る 。今 井 弘 道(14)は 、戦 後 社 会 で 専 門 家 と 一 般 市 民 、 生 産 者 と 消 費 者 等 の 間 で 拡 大 し た 情 報 格 差 の 解 消 が 今 後 の 大 き な 課 題 で あ る と 指 摘 し 、参 加 に よ り( 1 )情 情 報 の 交 換 を 活 発 に し 、( 2 )自 分 自 身 の 利 益 を 守 り 、( 3 )地 域 の 個 性 や 自 律 性 を 養 成 す る 、と し て い る 。井 上 達 夫(15)は 、参 加 に よ り 、他 者 を 受 容 で き 個 人 権 が 確 立 さ れ 情 報 交 換 が 活 発 す る こ と を 指 摘 し て い る 。
以 上 の 参 加 に つ い て の 議 論 を 踏 ま え る と 、 環 境 問 題 に お け る 市 民 参 加 の 意 義 な い し 効 果 は 次 の よ う に 整 理 で き よ う 。
第 一 に 、人 々 の 学 び と 自 己 開 発 の 機 会 を 提 供 す る 。学 習 過 程 の 創 出 で あ る 。 政 策 提 案 が な さ れ る の は 、 多 く の 場 合 、 行 政 の 側 か ら 提 案 さ れ る の が ほ と ん ど で あ る 。 こ の 場 合 に は 、 参 加 を 得 な け れ ば 、 行 政 側 の 施 策 に 対 す る 関 心 が 高 ま る は ず も な い 。 参 加 の 過 程 を つ う じ て 、 政 策 ・ 施 策 に 対 す る 関 心 ・ 理 解 が 深 ま っ て い く と 思 わ れ る 。 ま た 、 事 業 者 も 含 め て 市 民 も 環 境 負 荷 の 発 生 者 で あ る 。 環 境 政 策 ・ 施 策 は 環 境 負 荷 を コ ン ト ロ ー ル す る 目 的 が あ る か ら 、 参 加 に よ っ て 、 ラ イ フ ス タ イ ル の 転 換 と い っ た 、 自 ら の 行 動 を 見 直 す と い う 効 果 が あ る だ ろ う 。
第 二 に 、 社 会 で の 中 で の 信 頼 関 係 を 強 化 す る 機 会 を 提 供 す る 。 行 政 や 利 害 関 係 者 等 へ の 信 頼 あ る い は 連 帯 感 を 育 成 し 、 環 境 問 題 の 解 決 に も 寄 与 す る 。 第 三 に 、 参 加 は 主 権 者 で あ る あ ら ゆ る 市 民 ・ 国 民 の 意 見 を 意 思 決 定 に 反 映 す る 機 会 を 実 質 化 し 、 人 々 が 直 接 政 治 に 関 る こ と に よ り 価 値 観 や 嗜 好 を 表 現 す る と と も に 権 利 利 益 を 保 護 す る 機 会 を 提 供 す る 。 行 政 は 、 住 民 の 健 康 、 安 全 等 の 基 本 的 人 権 を 擁 護 す る こ と に あ り 、 住 民 の 基 本 的 人 権 に 影 響 を 及 ぼ す 行 政 作 用 に つ い て 、 住 民 が そ の 環 境 政 策 ・ 施 策 の 段 階 に 参 加 し て 、 発 言 、 意
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見 反 映 す る 権 利 を 有 す る の は 当 然 と い え る 。 住 民 参 加 は 、 民 主 主 義 お よ び 憲 法 上 の 国 民 主 権 、 住 民 自 治 に 基 づ く 住 民 の 基 本 的 な 権 利 を 実 質 的 に 確 保 す る 制 度 で あ る 、 と 考 え ら れ る(1 6)。
4 ) 干 潟
干 潟 は 、 潮 間 帯 の 一 部 で 通 常 、 最 高 高 潮 時 海 域 線 か ら 最 低 低 潮 時 海 岸 線 ま で を 指 す 。 満 潮 時 に は 海 水 中 に な り 、 干 潮 時 に は 陸 の よ う な 干 出 す る 場 所 で あ る 。
今 日 、 水 質 保 全 の 見 地 か ら 干 潟 を 保 全 し て い く こ と が 重 要 課 題 と な っ て い る
( 1 7 )。通 常 指 摘 さ れ て い る 干 潟 の 機 能 と し て は 、例 え ば 、水 質 の 浄 化 、漁 業 生
産 の 場 ( 動 物 の 生 息 ・ 産 卵 地 等 ) が あ る 。 ま た こ う し た 機 能 の 他 に も 、 干 潟 は 潮 干 狩 り の 場 と し て 古 く か ら 親 し ま れ て い る 。 さ ら に 最 近 で は 、 野 鳥 を 観 察 す る バ ー ド ウ ォ ッ チ ン グ に 通 じ た 場 所 と し て も 認 め ら れ て い る 。 こ の よ う な レ ク レ ー シ ョ ン の 場 か ら と い っ て 干 潟 は 保 全 の 対 象 と さ れ て い た わ け で は な く 、 む し ろ 、 そ の 価 値 は 沼 地 や 泥 炭 地 な ど の 湿 地 と 同 様 に 、 無 益 で 非 生 産 的 な 空 間 と 考 え ら れ 、 実 際 、 深 刻 な 破 壊 が 進 行 し て い た の で あ る 。
こ れ に つ い て 阿 部 泰 隆 は 、① 可 住 面 積 が 国 土 の20% し か な く 陸 上 に 広 大 な 土 地 が 入 手 し に く い 、 ② 埋 立 地 の 造 成 コ ス ト は ゼ ロ に 近 く 、 社 会 的 費 用 が 資 産 さ れ て い な い 、 ③ 日 本 は 第 二 次 世 界 大 戦 後 、 加 工 貿 易 を 続 け て き た の で 沿 岸 域 に 工 場 立 地 し た 方 が 有 利 、 と 理 由 を 3 点 に 整 理 さ れ る 。 ま た 、 宮 本 も 土 地 の 私 有 の 結 果 、 土 地 の 流 動 性 が 乏 し く 、 工 業 用 地 政 策 は い き お い 埋 立 て に 頼 る よ う に な っ た と 述 べ て い る(1 8)。
今 日 、 干 潟 の 減 少 の 状 況 は 、 環 境 省 の 調 査 (1978年 度 か ら1996年 度 ) に よ れ ば 、1996年 度 に お け る 現 存 の 有 明 海 の 干 潟 は 、20,391haで あ り 、こ の
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直 近 の 調 査 の 面 積 は、1978年に 比 較 し て 、1,835haの 減 少 で あ る 。 さ ら に 、 1945年 の 干 潟 現 存 面 積 の26,609haと 比 較 す れ ば 、戦 後 の 経 済 成 長 期 に 日 本 が ど れ だ け 多 く の 干 潟 を 失 っ た が わ か る 。 ま た 、 こ の 調 査 で は 比 較 的 大 き な 干 潟 し か 把 握 し て い な い の で 規 模 の ご く 小 さ な 干 潟 の 減 少 は も っ と 進 ん で い る も の と 思 わ れ る 。
以 上 の よ う な 新 た な 水 質 環 境 保 全 の 必 要 性 を 踏 ま え 、第 3 章( 地 下 水 )、第 4 章 ( 川 )、 第 5 章 ( 海 )、 第 6 章 ( ダ ム 問 題 ) に お い て 、 具 体 的 な 事 例 を 通 じ て 、 水 質 環 境 保 全 の た め 具 体 的 な 方 法 に つ い て 考 察 す る 。
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第 3 章 地 下 水
3 . 1 は じ め に
熊 本 市 は 、 約100万 の 人 口 の 飲 料 水 を す べ て 地 下 水 で 賄 わ れ て い る 地 下 水 流 域 圏 で あ る 。 し か し 、 水 量 が 豊 富 で 水 質 が 良 好 と い わ れ て き た 熊 本 の 地 下 水 も 、 経 済 社 会 活 動 の 急 激 な 発 達 に 伴 う 地 下 水 の 過 剰 使 用 、 都 市 化 等 に よ る 水 源 涵 養 機 能 の 低 下 な ど さ ま ざ ま な 弊 害 を 生 じ さ せ て い る 。 熊 本 市 に お い て は 地 下 水 保 全 条 例 な ど 制 定 さ れ 、 熊 本 の 地 下 水 の 環 境 改 善 の 努 力 が 続 け ら れ て き た 。 し か し 、 そ の 環 境 の 改 善 に は 至 っ て い な い 。
こ の よ う な 現 状 を 踏 ま え て 、 本 論 文 で は 地 下 水 の 環 境 政 策 、 特 に 熊 本 市 の 地 下 水 保 全 条 例 等 に 焦 点 を 当 て 、 現 在 の 条 例 等 に 内 在 す る 問 題 点 を 明 ら か に し 、 今 後 の 環 境 政 策 と し て 工 夫 さ れ る べ き も の を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。本 論 文 で 取 り 上 げ る 熊 本 地 域 で は 、統 一 し た 地 下 水 管 理 法 の な い 現 在 、 独 自 の 条 例 等 に よ り 、 自 然 法 則 に 従 っ て 、 流 域 の 水 循 環 を 適 切 に コ ン ト ロ ー ル す る 取 り 組 み が 行 わ れ て い る 。 縦 割 り 行 政 か ら 総 合 行 政 へ 、 中 央 集 権 か ら 地 方 分 権 に 向 け た 地 方 レ ベ ル に お け る 地 下 水 管 理 を 検 討 す る 格 好 の 事 例 で あ る 。
3 . 2 分 析 の 対 象 と 方 法
熊 本 地 域 に お け る 地 下 水 行 政 を 対 象 と し 、 調 査 方 法 と し て は 、 熊 本 市 、 熊 本 県 の 行 政 関 係 者 、 農 業 者 等 へ の 聞 き 取 り 調 査( 1 )及 び 、 資 料 収 集 を も と に 分 析 し 、 研 究 を 進 め た 。
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3 . 3 熊 本 地 域 の 地 下 水 保 全 対 策 の 歴 史
こ こ で は 熊 本 地 域 の 地 下 水 保 全 対 策 の 歴 史 を 概 観 す る 。 熊 本 地 域 に お け る 地 下 水 保 全 対 策 の 史 的 展 開 を た ど り 、 そ の 展 開 過 程 を 検 討 す る な か か ら 、 熊 本 地 域 に お け る 地 下 水 行 政 の 課 題 を み て み る こ と に す る 。
3 . 3 . 1 熊 本 地 域 の 概 要
熊 本 地 域 は 、 九 州 地 方 の 中 央 部 に 位 置 し 、 面 積 は 約390㎢ と な っ て い る 。 熊 本 市 の 人 口 は2011年 現 在 で 約73万を 数 え 、上 水 道 を ほ ぼ100% 天 然 地 下 水 で ま か な い 、 日 本 最 大 の 地 下 水 都 市 と な っ て い る 。
約408の 大 小 河 川 が 阿 蘇 山 系 や 九 州 中 央 山 地 か ら 西 方 向 に 流 れ 、 流 域 の 熊 本 平 野 等 の 耕 地 を 潤 し て い る 。 豊 か な 水 資 源 に 恵 ま れ る 熊 本 市 は 、 市 内 4 箇 所 の 湧 水 群 は 平 成 の 名 水 百 選 に お い て 選 定 さ れ 全 国 で も 有 数 の 名 水 県 と し て 知 ら れ て い る 。
3 . 3 . 2 地 下 水 保 全 対 策 の 展 開 過 程
戦 後 か ら 現 在 に 至 る ま で の 熊 本 の 地 下 水 政 策 の 歴 史 は 、 い く つ か の 時 期 に 分 け て 理 解 す る こ と が 可 能 で あ る 。 た と え ば 、 条 例 の 展 開 過 程 を 目 的 面 か ら 検 討 す る と 、 大 き く 次 の よ う な 4 つ の 段 階 を 抽 出 す る こ と が で き る 。
す な わ ち 第 1 に 、 地 盤 沈 下 を 防 止 す る こ と を 目 的 と し た 公 害 防 止 型 条 例 の 展 開 過 程(1960年 〜1969年)、第 2 に 、地 下 水 を 利 用 す る こ と を 前 提 に し て 適 正 化 を 図 る こ と を 目 的 と し た 水 量 資 源 保 全 型 条 例 の 展 開 過 程 (1970年 〜1 979年 )、第 3 に 、地 下 水 の 汚 染 防 止 を 目 的 と し た 水 質 保 全 型 条 例 の 展 開 過 程
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(1980年 〜1989年 )( 2 )、 第 4 に 、 水 量 ・ 水 質 ・ 涵 養 を 包 含 す る 総 合 型 条 例 の 展 開 過 程 (1990年 以 降 ) の 4 つ で あ る 。
1 ) 第 一 期(1960年 〜1969年)
こ こ で は 、 地 盤 沈 下 の 防 止 を 目 的 と し て 、 地 下 水 採 取 を 規 制 す る 法 制 度 と し て 、工 業 用 地 下 水 を 対 象 と す る「 工 業 用 水 法 」(1956年 法 律146号 )及 び 、 冷 房 用 等 の 建 築 物 用 水 を 対 象 と す る 「 建 築 物 用 地 下 水 の 採 取 に 関 す る 法 律 」
(1962年 法 律100号 )制 定 と い っ た 国 レ ベ ル で の 公 害 規 制 整 備 の 時 期 を 第 一 期 と い う こ と に す る 。 戦 後 、 ほ と ん ど 間 も な く 、 日 本 は 経 済 復 興 へ の 道 を 歩 き 出 し た 。そ の 歩 み は 次 第 に 速 度 を 増 し 、15年 程 で ト ッ プ ス ピ ー ド に 近 い 状 態 に な っ た 。 熊 本 も 例 外 で は な か っ た 。
1960年 代 に 入 る と 、地 域 開 発 政 策 を 背 景 に 、最 も 安 価 で 、な お か つ 、清 澄 で あ る 地 下 水 を 求 め て 熊 本 にIC企 業 が 進 出 す る よ う に な っ た 。こ の よ う な 企 業 集 積 を 背 景 に 、 熊 本 は 九 州 で も 有 数 の 半 導 体 産 業 の 拠 点 と し て 整 備 さ れ る よ う に な っ た 。
し か し な が ら 、 急 激 な 都 市 化 、 生 活 様 式 の 多 様 化 等 に よ り 地 下 水 を 取 り 巻 く 環 境 が 年 々 厳 し く な り 始 め た 。そ こ で 熊 本 市 は1966年 、第 三 次 水 道 事 業 拡 張 計 画 を 策 定 し 、 清 水 町 麻 生 田 、 清 水 町 新 地 、 秋 津 町 沼 山 津 に 新 た に 水 源 を 開 き 、 変 化 す る 生 活 様 式 、 急 激 な 人 口 増 に 対 処 し た 。 だ が 、 量 的 な 過 剰 な 揚 水 は 地 盤 沈 下 の 原 因 に つ な が っ た 。 公 害 が 激 化 の 兆 し を み せ は じ め た こ の 時 期 に は 、 環 境 汚 染 の 深 刻 な 地 域 を 抱 え る と 都 府 県 が 、 条 例 に よ っ て 独 自 の 対 応 を 模 索 し た 。1959年 制 定 の 大 阪 市 地 盤 沈 下 防 止 条 例 は 、そ う し た 対 応 の 先 駆 的 な 条 例 で あ る 。
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2 ) 第 二 期(1970年 〜1979年)
第 二 期( こ の 期 間 の 保 全 対 策 を ま と め た の が 、図 3 - 1 で あ る 。)は 、第 一 期 以 降1979年 までで あ る 。こ の 時 期 に 入 る と 、 い よ い よ 深 刻 化 す る 地 下 水 問 題 を 前 に し て 、熊 本 市 、熊 本 県 共 同 で 、1973年か ら1974年度 の2カ年に わ た り 、 熊 本 都 市 圏 の 地 下 水 の 現 状 を 探 る た め 「熊 本 市 及 び 周 辺 地 域 地 下 水 調 査 」が お こ な わ れ た 。 そ の 結 果 、 熊 本 市 で は 、 地 下 水 流 出 量 が 涵 養 量 を 上 回 っ て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 事 態 の 深 刻 さ を 危 惧 し た 熊 本 市 は1973年 3月 、公 害 を 発 生 す る お そ れ の あ る 事 業 活 動 を 営 む 企 業 と 公 害 防 止 協 定 が 導 入 さ れ る よ う に な っ た 。それは、当 時 の 環 境 関 連 法 で あ る 「 工 業 用 水 法 」(1956年 法 律1 46号 ) と 「 建 築 物 用 地 下 水 の 採 取 に 関 す る 法 律 」(1962年 法 律100号 ) の も と で は 、 指 定 地 域 と な っ て い な い 熊 本 市 は 、 公 害 規 制 を 行 う 権 限 を も ち あ わ せ て い な い か ら で あ る 。1975年、 日 本 住 宅 公 団 九 州 支 社 が 市 最 大 の 水 源 地 、 健 軍 水 源 地 の 隣 地 に 高 層 住 宅 団 地 の 建 設 を 計 画 し た 。 し か し 、 住 宅 団 地 の 基 礎 杭 が 水 道 水 源 の 主 要 帯 水 層 に 林 立 す る と 水 源 地 に 影 響 す る と し て 、 元 農 政 局 職 員 と 周 辺 住 民 ら に よ っ て 反 対 運 動(3)が 展 開 さ れ た 。 こ の 問 題 を 発 端 と し て 、 開 発 に よ る 環 境 へ の 影 響 に 社 会 が 敏 感 に な っ て き た 。 こ の よ う な 状 況 か ら 、1976年に 熊 本 市 議 会 で 「地 下 水 保 全 都 市 宣 言 」が 決 議 さ れ 、1977年 5月 熊 本 市 水 道 局 総 務 部 に 「地 下 水 保 全 対 策 室 」を 設 置 し 検 討 を 重 ね ,1977年 9月 に 地 下 水 量 保 全 を 目 的 と し た 「熊 本 市 地 下 水 保 全 条 例(1977年条 例42号 )」( 4 ) を 制 定 し た 。 さ ら に 、1978年 に熊 本 県 は、北 部 九 州 を お そ っ た 大 渇 水 を 契 機 に 「 熊 本 県 地 下 水 条 例 (1978年 条 例 52号)」 を 制 定 し た 。 条 例 に よ る 直 接 規 制 的 手 法 が 導 入 さ れ る よ う に な り 、 つ ま り 、 地 下 水 採 取 者 は 水 量 測 定 機 器 の 導 入 、再 生 利 用 設 備 の 設 置 、届 出 義 務(指 定 地 域 に お け る 地 下 水 採 取 を 知 事 へ の 届 出)、 報 告 義 務 等 な ど が 推 し 進 め ら れ る よ う に な っ た 。
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表 3-1 熊 本 地 域 における地 下 水 質 ・水 量 保 全 対 策 の経 緯 (1970年 代 )
年/項 目 熊 本 県 熊 本 市
1973年 市 お よ び 周 辺 地 域 の 地 下 水 調 査(市 ・ 県 共 同)
1976年 ・地 下 水 保 全 を 目 的 と し た
「 熊 本 市 地 下 水 保 全 条 例 」 を 制 定
・ 地 下 水 保 全 都 市 を 宣 言
1977年 主 と し て 地 下 水 量 保 全 に
主 眼 を お い た 「熊 本 市 地 下 水 保 全 条 例 」を 制 定
1978年 ・1978年 に 北 部 九 州 を 襲 っ た 大 渇 水 を 契 機 に 、 地 下 水 量 を 目 的 と し た 「 熊 本 県 地 下 水 条 例 」を 制 定
1979年 熊 本 市 上 水 道 事 業 研 究 会
は 、 「地 下 水 涵 養 域 で は 、 工 場 拡 大 、工 場 誘 致 は 、差 し 控 え る こ と が 望 ま し い 」 と 報 告
資 料:熊 本 県 環 境 白 書 ( 各 年 次 )、 熊 本 市 水 保 全 年 報 ( 各 年 次 )。
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3 ) 第 三 期 (1980年 〜1989年 )
第 三 期( こ の 期 間 の 保 全 対 策 を ま と め た の が 、表 3 - 2・表 3 - 3 で あ る 。)
は 、 第 二 期 以 降1989年 ま で で あ る 。
緊 急 の 対 策 が 必 要 な 地 下 水 量 保 全 に 対 し て 地 方 レ ベ ル で 厳 し い 規 制 を か け た の が 第 三 期 で あ っ た 。 そ の 効 果 を 図 3 - 1 の 工 場 等 の 地 下 水 採 取 量 の 推 移 で 確 認 し て み る と 、1985年か ら 採 取 量 が 減 少 し て い っ た の が わ か る 。熊 本 市 の 行 政 担 当 官 へ の 聞 き 取 り に よ れ ば 、 採 取 量 減 少 は 、 大 口 地 下 水 採 取 者 の 循 環 機 械 の 導 入 や 再 生 利 用 設 備 の 設 置 等 な ど 大 き な 要 因 と し て 指 摘 さ れ て い る
( 5 )。 こ の よ う に 、 第 三 期 に は そ の 効 果 が 現 れ る と 同 時 に 今 ま で の 条 例 で は カ
バ ー し き れ な い 環 境 へ の 負 荷 が 顕 在 化 す る に 至 る 。 そ れ は 、 伝 統 的 法 益 で あ る 生 命 ・ 健 康 に つ い て も 微 量 の 有 害 化 学 物 質 に 長 期 間 暴 露 す る こ と に よ り 不 可 逆 的 影 響 が 出 る 可 能 性 が あ る と い う リ ス ク 問 題 で 、 こ の 視 点 か ら 改 め て 保 護 の 対 象 と な っ て き て い る 。1982年 、環 境 庁 ( 現 環 境 省 ) が 、 熊 本 市 を 含 む 全 国 主 要15都 市 を 選 出 し 、地 下 水 汚 染 実 態 調 査 を 実 施 し た 。当 時 の 担 当 行 政 官 に よ れ ば 、「 ビ ン の 中 に 地 下 水 を 入 れ 環 境 庁 へ 送 っ た 。」 と い う 。 有 機 塩 素 系 化 合 物 と さ れ る ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン 等 が 検 出 さ れ た と い う 環 境 庁 の 情 報 に 、 市 の 担 当 行 政 官 に よ れ ば 、「 ま さ か 、熊 本 の 地 下 水 に 」と 全 員 の 職 員 が お ど ろ い た と い う 。発 生 源 に 対 し て は 、「 当 時 な ん ら 規 制 の な か っ た ク リ ー ニ ン グ 業 と 金 属 加 工 業 か ら の 汚 染 が 大 半 を 占 め る 」 と 指 摘 さ れ て い る( 6 )。 し か し 、 汚 染 経 路 が 十 分 に 解 明 さ れ た わ け で は な い 。 吉 田 文 和 は 、 ド ラ イ ク リ ー ニ ン グ 工 場 等 か ら の 汚 染 の 他 に 、 半 導 体 工 場 ら の 工 場 生 産 の 場 で ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン 等 が 使 用 さ れ 、 こ れ ら が 環 境 中 に 放 出 さ れ て 、 熊 本 地 域 の 地 下 水 汚 染 を 引 き 起 こ し た 事 例 を 報 告 し て い る( 7 )。1984年 に な る と W H O ( 世 界 保 健 機 構 ) が ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン 等 の 暫 定 基 準 を 発 表 し た 。わ が 国 に お い て は1984年 2
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月 に 水 道 水 の 暫 定 基 準 を 定 め た 。1987年 、熊 本 県 も 公 害 規 制 課 に お い て 検 討 が な さ れ 、1988年 3 月 に 地 下 水 保 全 目 標 を ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン 等 の 3 物 質 と し 、こ れ ら の 物 質 を 含 む 水 の 地 下 浸 透 処 理 を 禁 止 す る 「地 下 水 質 保 全 要 綱(19 88年 告 示 第276号 の 6)」を 制 定 し た 。 し か し 、 第 6 条 の 「 自 主 検 査 」 と い う 規 定 に み ら れ る よ う に 、 立 入 検 査 を は じ め 監 督 シ ス テ ム を 実 施 す る た め の 行 政 体 制 が 実 際 に は 整 備 さ れ て い な か っ た 。
図 3 - 1 地 下 水 採 取 量 の 経 年 変 化 ( 工 場 ・ 建 築 物 等 ) 単 位:㎥
資 料 :『2012年 熊 本 市 水 保 全 年 報 』、p.37。
表 3 - 2 熊 本 地 域 に お け る 地 下 水 質 保 全 対 策 の 経 緯 (1980年代 )
年 / 項 目 熊 本 県 熊 本 市
1983年 県 が 国 の 委 託 事 業 と し て
「地 下 水 汚 染 追 跡 調 査 」
地 下 水 汚 染 実 態 調 査( 有 機 塩 素 系 化 合 物 、環 境 庁 地 下 水 実 態 調 査 発 表 に 基 づ く も の )
0 10,000,000 20,000,000 30,000,000 40,000,000 50,000,000 60,000,000
1978年1979年1980年1981年1982年1983年1984年1985年1986年1987年1988年1989年1990年
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1984年 ・「 ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン 使 用 実 態 調 査 」
・ 「熊 本 地 域 の 地 下 水 調 査 」 (県 と 市 共 同)(1984年 ~ 1985年)
地 下 水 汚 染 実 態 調 査(1984年 ~19 85年 )(2 年 間 で250本 の 井 戸 調 査 の 結 果 、 テ ト ラ ク ロ ロ エ チ レ ン61 本 う ち 3 本 暫 定 基 準 超 過)
1985年 ・「 熊 本 地 域 地 下 水 調 査 」の 中 間 報 告 を ま と め る
( 県 ・ 市 共 同 )
・ 県 議 会 で 、 公 害 防 止 協 定 の 締 結 状 況 を 報 告( 県 内2 06件 の 締 結 )
・生 活 排 水 対 策 モ デ ル 地 区 実 践 活 動
( 堀 川 流 域366世 帯 )
・ 熊 本 市 水 源 地 調 査 (1984年 調 査 で 基 準 値 オ ー バ ー し た 井 戸 と 、周 辺 の 井 戸 を 調 査 )
1986年
~
1987年
・熊 本 県 及 び 熊 本 地 域 の16 市 町 村 に よ る 「 熊 本 地 域 水 保 全 策 会 議 」
・ 熊 本 地 域 の 事 業 所 の 井 戸 水 周 辺 井 戸 水 等 の 汚 染 実 態 調 査
・「 熊 本 県 地 下 水 質 保 全 要 綱 」 の 制 定
・ ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン 等 の 取 り 扱 い に 係 る 暫 定 指 導 要 領 を ま と め る
・生 活 排 水 対 策 モ デ ル 地 区 実 践 活 動
( 健 軍 川242世 帯 )
・ 地 下 水 汚 染 追 跡 調 査
・1958年 以 降 の 水 質 汚 染 調 査 を ま と め る
・ 企 業 と 熊 本 市 の 間 で 「公 害 防 止 協 定 」調 印
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1988年 ・1987年 ~1988年 ま で の 地 下 水 調 査 を 報 告
・ 地 下 水 質 実 態 調 査
・ 汚 染 井 戸 の 追 跡 調 査
・地 下 水 質 観 測 井 を 設 置( 春 竹 地 区 )
・熊 本 市 西 部 地 域 水 源 調 査 会( 諮 問 機 関 、熊 本 大 学 )が 熊 本 市 水 道 局 に 、将 来 の 水 質 悪 化 に 備 え 浄 化 処 理 施 設 の 設 置 を 検 討 段 階 に き て い る と の 内 容 の 熊 本 市 西 部 地 域 水 源 報 告 書 を 提 出
1989年 ・ 水 質 汚 濁 防 止 法 に 基 づ く 地 下 水 質 調 査 、 硝 酸 性 窒 素 に か か る メ ッ シ ュ 調 査
( 県 北 部 地 域 )、ヒ 素 実 態 調 査 ( 宇 土 市 、 富 合 町 )
・ ゴ ル フ 場 の 農 薬 汚 染 に 対 処 す る た め 、 排 水 の 検 査 等 を 義 務 づ け た 指 導 要 綱 を 実 施
・ 地 下 水 の 砒 素 汚 染 の 実 態 調 査
・熊 本 市 議 会 で 有 機 塩 素 系 化 合 物 に よ る 地 下 水 汚 染 が 依 然 続 い て い る こ と が 報 告 さ れ る
・1988年 に 行 な っ た 地 下 水 汚 染 の 追 跡 調 査 で 、有 機 塩 素 系 化 合 物 が 調 査 井 戸1 1 6本 の う ち5 0本 基 準 値 超 過 、依 然 地 下 水 の 汚 染 が 進 行 し て い る 、 こ と を 議 会 で 報 告
資 料:熊 本 県 環 境 白 書 ( 各 年 次 )、 熊 本 市 水 保 全 年 報 ( 各 年 次 )。
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