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楽しい理科授業への模索

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(1)

Bulletin of Faculty of Education,Nagasaki University:Curriculum and Teaching l989,No.13,43−61

楽しい理科授業への模索 一(II)理科学習におけるノートの役割

橋本 健夫*・黒岩 敏博**・大塚 博俊***

(平成元年4月5日受理)

Experiments for the Pleasant Science Teaching

(II)AStudyonRolesofNotesinScienceLeaming Tateo HASHIMOTO,Toshihiro KUROIWA

and Hirotoshi OHTSUKA

(Received,Apri15,1989)

はじめに

 児童・生徒が自主的にまた積極的に活動し,問題解決を図っていく理科学習,つまり児 童・生徒にとって非常に楽しい理科学習を成立させ,持続させるものは何であろうか。前 回は単元に焦点をあてて,児童の思考の流れや興味・関心に沿った学習を次々に展開する ことが非常に効果的であることを見出し,それに基づいた楽しく効果的な単元編成の一つ のあり方を提言した(1)。これを別の観点から言えば「よく理解できる授業」,「既習事項を確 実に身につけ,それを用いることのできる授業」の積み重ねが「楽しい理科学習の成立」

には欠かすことのできないものであると言うことができる。

 一方,広瀬と橋本は児童・生徒が学習内容を「理解する」ことは,ノートヘの記述,つ まりノートヘ自分の考えや学習内容を短文で明確に書けることと非常に関係があることを

「理科教育における学習方法」の中で明らかにしている(2)。これは「よく理解できる授業」

にはノートの活用が不可欠であるということを示唆していると考えられる。そこで今回は,

理科学習におけるノートの役割やその活用について追求してみたい。

 理科学習とノートの関係を考えた場合,まずどのような状況下で児童・生徒はノートを とるのだろうか,またどのような内容をどのような形態でノートに記載するのであろうか,

そしてどのように利用しているのだろうか,さらに教師はノートをどのようにとらえてい るのだろうかなどの問題点が浮かんでくる。これらの問題点の前半部は小川氏が,児童が ノートをとる状況をアンケート調査し,その分析結果を「小学校高学年児童の理科ノート 記載に関する実証的研究」の中で報告している(3)。

 そこで私達はまず,教師がノートをどのように学習の中に位置づけているか,また児童 のノートの記載の実態はどのようになっているのか,理科の学習成果とノート記載にはど

*長崎大学教育学部理科教育教室,**琴海町立長浦小学校,***本渡市立亀葉小学校

(2)

44

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

表1 調査した教諭の内訳

項 目 全体 性  別 勤務年数

担当学年

勤 務 地 理科に対する意識 男 女

1〜6年 7〜年

低学数 中学年 高学年 都市部 田園地 離島 得意 苦手 無意識

人数(人)

86 57 29 52 34 14 30 23 39 31 16 20

11

51

のような関係があるのかを中心に調査し,その分析結果をもとに考察を加えたいと考えた。

調査は昭和61年の1学期から62年の2学期にかけて行った。

教師のノート指導の実態

表2 理科に対する意識

項  目 全体 性 別 勤務年数 担 当 学 年

1〜6年

7〜年

低学年 中学年 高学年

A

人数人

51 30 21 32 19

10 18

18

割合%

59 53 72 62 56 71 60 55

B

人数人

20 16 4 9 11 3 8 8

割合%

23 28 14 17 32 21 27 24

C

人数人

11 8 3 7 4 1 4 4

割合%

13 14 10

14

12 7 13 12 D

人数人

1 2 0 1 0 0 0 1

割合%

1 4 0 2 0 0 0 3 E

人数人

3 1 1 3 0 0 0 2

割合%

4 2 3 6 0 0 0 6

A:意識せずに行っている  D:その他 B:得意である       E:無回答 C l苦手である

表3 理科の授業形態

項  目

全体 性 別 勤務年数 担 当 学 年 理科に対する意識

1〜6年

7〜年

低学年 中学年 高学年 得意 苦手 無意識

A

人数人

58 38 20 34 24 11 21 20 14 9 32

割合%

58 57 61 59 57 65 62 51 56 64 56

B

人数人

23 17 6 14 9 2 7

11

5 1 16

割合%

23 25 18 24 21 12 21 28 20 7 28 C

人数人

13 9 4 6 7 4 5 4 6 1 6

割合%

13 13 12 10 17 24 15 10 24 7 11 D

人数人

1 0 1 1 0 0 0 1 0 1 0

割合%

1 0 3 2 0 0 0 3 0 7 0

E

人数人

4 3 1 3 1 0 1 2 0 2 2

割合%

4 5 3 5 2 0 3 5 0 14 4 F

人数人

1 0 1 0 1 0 0 1 0 0 1

割合%

1 0 3 0 2 0 0 3 0 0 2

ABCDEF 実験・観察が中心で教科書は確認のために用いる程度である。

教科書は中心ではあるが実験・観察をよく取り入れる。

児童の興味・関心を重視して授業を組み立てていく。

教科書を読んだり,説明することが中心で実験・観察はあまり取り入れない。

その他 無回答

 教師がノートを学習の中でどのよう に位置づけているかを分析するために 長崎県下の小学校の教諭を対象として アンケート調査を実施した(巻末資料 参照のこと)。

 調査は担当学年や勤務年数そして勤 務地を考慮しながら任意に抽出した 150人の教諭にアンケートを送付し,そ れを回収して分析することによって 行った(回収率57%)。調査に応じた教 諭の性別や勤務年数などの内訳は表1

として示す。

 次に各項目毎に分析した結果を表や 図で示し,現在行われている授業や     ノート指導の実態を明らかに     したい。

    ①理科の授業形態

     各教諭の理科に対する意識     と授業の形態を調査した結果     は表2,表3となり,それを     図示したのが図1,図2であ     る。これらからわかるように,

    この調査においては理科を得     意とする教諭は4人に1人,

    苦手としている教諭は5人に     1人の割合であり,男女を比     べた場合,男性の教諭の方が     得意とする割合が高くなって いる。そして理科の授業に関 しては男女や得意,不得意に 関係なく,実験観察をよくと

(3)

橋本・黒岩・大塚:楽しい理科授業への模索

45

      る  と

     A.意識せずに行っている      B.得意である

     C.苦手である      D.その他      E.無回答

     図1 理科に対する意識

り入れた展開を行っていることがわかる。こ のような授業の展開が多くなればなるほど,

教師と児童,児童と児童のコミュニケーショ ン,さらにそれを整理し記録する板書が非常 に重要になると考えられるが,板書の実態は どのようになっているのであろうか。

②板書に対する考え方とその内容

 板書の目的や板書計画のたて方,そしてそ の際に考慮することがらなどに関しての調査 結果は表4〜表6となり,それらを図示した のが図3〜5である。これらからわかるよう

性別

勤務年数別

・㊥

D6年未満      6年以上

謬)櫛

    低学年      中学年      高学年

一◎♂)酌

    得意       苦手    特に意識してない

 ㊥留)㊥

A.実験・観察が中心で教科書は確認のために用い  る程度である

B.教科書中心ではあるが実験・観察をよく取り入

 れる

C。児童の興味・関心を重視して授業を組み立てて

 いく

D.教科書を読んだり説明することが中心で実験・

 観察はあまり取り入れない

E.その他

F.無回答

   図2 理科の授業形態

に,板書は学習事項を明確に把握し理解させるためになされることが多く,コミュニケー ションの場としての役割は小さいようである。また子供の視覚に訴える工夫や発言内容を 簡潔な文章にまとめる工夫が全体としてなされているようである。しかし板書の目的達成 や留意点を明確にしていくために不可欠な板書計画がおろそかにされている傾向が強くみ られる。特に理科を苦手とする教諭にいたっては4人に1人しか板書計画を立てていない。

これらの結果から授業の中で板書は児童の理解を助けるために非常に重要なものであると 判断はしているものの,授業を細密に組み立てることなく実践に臨む教諭が多いことがわ かる。その板書の内容はどのようなものなのであろうか。板書の内容の全体的な傾向を示

したのが図6になる。

 これでわかるように,その時問の課題と予想,そして実験・観察の結果についてはほと んどの教諭が板書する。しかし実験観察の方法に関しては約60%の教諭しか板書せず,事 故防止の事項については,ほとんど板書されることはない。実験観察の方法については児 童・生徒の復習時に欠くことのできないものである。だから,それが十分板書されていな

(4)

46

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

表4 板書の目的

項  目 性 別 勤務年数 担 当 学 年 理科に対する意識 全体

1〜6年

7〜年

低学年 中学年 高学年 得 意 苦 手 無意識

A

人数人

67 42 25 43 24 10 22 28 14 7 43

割合%

28 27 30 27 29 28 25 31 29 23 28

B

人数人

58 38 20 40 18 12 23 20 11 6 38

割合%

24 24 24 25 22 29 26 22 22 20 25

C

人数人

33 22 11 24 9 6 7

16

7 5 19

割合%

14 14 13 15 11 15 8 18 14 17 13 D

人数人

31 21 10 19 12 4 14 10 7 4 18

割合%

13 13 12 12 15 10 16

11

14 13 12

E

人数人

28 18 10 18 10 5 11 9 7 5 15

割合%

12 11 12 11

12

12 12 10 14 17 10

F

人数人

20 14 6 11 9 3 11 5 2 3 15

割合%

8 9 7 7 11 7 12 6 4 10 10 G

人数人

4 3 1 4 0 1 1 2 1 0 3

割合%

2 2 1 3 0 2 1 2 2 0 2 H

人数人

1 0 1 0 1 0 0 1 0 0 1

割合%

0.4 0 1 0 1 0 0 1 0 0 1

A:学習事項を明確に認識させるた

 め

B:留意させたいことを印象づける

 ため

C l学習内容を正確に理解させるた

 め

D:考えの対立点を浮き出させ,思  考すべきことをはっきりさせる

 ため

E:これからの学習を方向づけたり,

 学習の課題をつかませるため F:学習したことのまとめ方やノー   トのとり方の参考のため

G:その他

H:無回答

表5 板書計画

項  目 全体 性 別 勤務年数 担 当 学 年 理科に対する意識

1〜6年

7〜年

低学年 中学年 高学年 得 意 苦 手 無意識

A

人数人

48 31 17 28 20 9 15 21 15 3 30

割合%

56 54 59 54 59 64 50 64 75 27 59

B

人数人

35 24 11 23 12 5 14

11

4 8 19

割合%

41 42 38 44 35 36 47 33 20 73 37

C

人数人 割合%

1 1 01 0 1 0 0 0 1 0 0 2 0 0 3 0 0 0 5 0 0 D

人数人

1 1 0 1 0 0 1 0 0 0 2

割合%

1 2 0 2 0 0 3 0 0 0 4

E

人数人

1 0 1 0 1 0 0 1 0 0 2

割合%

1 0 3 0 3 0 0 3 0 0 4

A:おおまかに立てている B:立てないことが多い C:いつも詳しく立てている

D:その他

E:無回答

表6 板書の留意点

項  目 全体 性 別 勤務年数 担 当 学 年 理科に対する意識

1〜6年

7〜年

低学年 中学年 高学年 得 意 苦 手 無意識

A

人数人

54 39 15 34 20 11 19 21 13 6 31

割合%

38 40 34 39 37 44 40 37 42 38 36

B

人数人

53 36 17 31 22 11 19 18 8 7 36

割合%

37 37 39 35 41 44 40 32 26 44 42

C

人数人

15 8 7 10 5 2 3 7 4 0 9

割合%

11 8 16 11 9 8 6

12

13 0 11 D

人数人

12 10 2 7 5 0 6 5 3 3 6

割合%

9 10 5 8 9 0 13 8 10 19 7 E

人数人

5 4 1 4 1 1 0 3 2 0 2

割合%

4 4 2 5 2 4 0 5 7 0 3

F

人数人

3 1 2 2 1 0 1 2 1 0 2

割合%

2 1 5 2 2 0 2 4 3 0 3

A:子供の視覚に訴えるように文字  の大きさ,位置,色などを工夫   し,変化をつけている。

B:子供の発言を大切にしながら最  終的には簡潔な文に整理する。

C:残すものと消すものを区別し,

 ノートとの関連を図る。

D:板書のタイミングを考慮し,書

  く過程を大切にする。

E:その他 F:無回答

(5)

  橋本・黒岩・大塚:楽しい理科授業への模索

      

         と       と

       

ロ       に  してない      に  してない

(A〜Hについては表4を参照のこと)      (A〜Eについては表5を参照のこと)

     ぎのヨ      き  

      のまとめ

(A〜Fについては表6を参照のこと)

 図5 板書の留意点      図6 板書の内容

(6)

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長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

A.視点の焦点化  E.記憶力の補助 B.思考する場   F.評価の資料 C.問題発見の場  G.変容課程の認識 D.子供のつまずき H.その他   発見     1.無回答

図7 理科学習におけるノートの役割 いことは注目すべきことである。

③ノートに対する認識

 板書は児童・生徒のノートにど のように記載されているのであろ うか。また各教諭はノートの役割 をどのようにとらえているのであ ろうか。各教諭のノートの役割に 対する認識と使用しているノート

の形式をまとめたのが図7と図8 になる。図7からわかるように,

ノートは主に視点の焦点化,思考 する場,問題発見の場として機能 すると考えられている。さらに評 価の材料としてもよく用いられて いる。一方ノートの形式をみると 低学年,中学年,高学年で差が見 られるものの市販のワークノート や方眼ノートなどがよく用いられ ている。この分析結果からいえる

ことは,課題を明瞭にしたり学習 をまとめたりという役割が大きい 板書に比べて,ノートは児童自身 が思考するのを助ける,あるいは 自分の意見を整理するのを助ける 場としての役割を与えられている ようである。このためたくさんの

    低学年

A.市販のワークノート B.方眼ノート C.大学ノート D.特に指定してない

幣①

クラスの予想・仮設

他の人の 発表の要点

 中学年     高学年

   C

E.上半分白紙で下半分罫紙のノート F.学校側で作成したワークノート G.白紙のノート

H.その他 1.無回答

図8 使用しているノートの形態

 の

 ∞

騰①

A:記載させる

 図9 ノートに記載される事項      B:記載の指示は出さない

自分の予想・仮設

  

翻①

授業の感想

文や図がかける,あるいはそれらが書きやすいワークノートや方眼ノートを使用させてい るのであろう。それでは児童たちは,教師の意図するようなノート記載をし,それを利用 しているのであろうか。まずノート記載をさせるための教師の指示に着目して分析した。

(7)

橋本・黒岩・大塚:楽しい理科授業への模索

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④ノートに記載されている事項

 児童がノートに記載する事項を図9にまとめた。これは教師が指示をして児童が記載す る事項の全体的な傾向を示したものである。この図からわかるように,単元名やその時問 の課題については約半数の教師が書くように指示をしている。また教師の大半がノートに 記載させる事項としては児童自身の予想や実験観察の結果そして学習のまとめなどがあり,

実験観察の方法はこれらに比べて低い割合でしか指示されていない。ほとんど記載されな い事項としては,クラス全体の予想や事故防止の注意,そして教師の説明の要点,さらに 他人の意見の要点などであり,授業に対する感想も記載されることは少ない。図9の各項

目について教諭の性別や勤務年数などの内訳をもとにした分析も行ったが,全体的な傾向 と余り差が見られなかった。ただ実験観察の方法の記載に関しては,低学年ではほとんど ノートに記載されず,高学年ではその傾向が幾分改善されているといった差が見られたの みである。これらの記載事項の傾向は教師がノートに何を書かせるか,ノートの役割をど のように考えるかによって決定されていくものである。この点からいえば③で述べた教師 のノートに対する認識に沿った指示が行われていると考えられる。そこで次にどのような 事を重視してノートヘの記載事項や記載方法

を指導しているかを分析してみた。

⑤ ノート指導にあたっての留意点

 まず板書とノート記載をどのように関連さ せているかをまとめたのが図10である。そし てノート記載にあたって,どのようなことに 重点をおいて指導しているかをまとめたのが 図11になる。さらにノート指導を行うにあ たっての問題点を表したのが図12である。こ れらの結果からわかるようにほとんどの教師 が板書事項を中心にノート指導をしている。

そしてできるだけ自分の考えや疑問点を書き 加えさせようとしている。しかし板書とノー ト指導のための計画を立てて授業に臨む教師 は5%にも充たない。また友達の意見を書き 留めることもほとんど指導していない。

 一方,ノート指導を行うにあたっての問題 点としては,ノート記載の時間が充分にとれ ないことや,板書を写すだけのノートになり がちなこと,さらに児童が自分の考えを書か ないこと,そしてノートを点検する余裕がも てないことなどが挙がっている。

 これらをもとに教師のノート指導を要約す れば次のようになる。まずノートを児童一人 一人の問題発見や意見をまとめる場としてと らえていること。そして実際には,板書を中

性別

勤務年数別

        

︐男㊧

F6年未満  E F G6年以上

閤)響

低学年

中学年     高学年

一⑤蓉)蕊

    得意       苦手    特に意識してない

鷲騨馨㊧酌

A.板書事項を中心に自分の考えも記載させる B,必要なことだけを記載させる

C.板書事項は必ず記載させる

D。自分なりのノートの作成を心がけさせる E,板書・ノート指導計画を立てている

F.その他

G.無回答

  図10 板書とノート記載

(8)

50

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

性別

勤務年数別

     ギ        ギ        ギ

   D得意E      苦手     特に意識してない

性別

勤務年数別

    だ        と

 E

   別    年    学    当    担

    得意        苦手     特に意識してない

A 実験・観察で気付いたことや疑問点は必ず書か

 せる

B 自分の考えを必ず書かせる C 板書事項は必ず書かせる D 他の人の発表は必ず書かせる

E その他

F 無回答

図11 ノート記載にあたっての留意点

A.ノートに書かせる時間が充分とれない B.板書を写すだけのノートになりがちである C.ノートを点検する時間的余裕がない D.子供の発達に応じた指導が難しい E.子供がおっくうがって自分の考えを書かない G.何を書かせてよいかわからない

G.その他 H.無回答

 図12 ノート指導における問題点 心にして自分の予想や意見をノートに書くように指導していること。このため板書では,

その時問の課題や予想や仮説を書くことによって学習の目標を明らかにしたり,実験観察 の結果を書くことによってその時問をまとめたりしていること。

 このように理科授業を実験観察中心に編成しようという考え方に合せて,板書やノート 指導も探究的な面に重点を置こうという試みが伝わってくる。

個別指導とノート

 最近,児童一人一人に対する適切な学習指導の必要性が強調されているが,教授方法の 決定や評価にノートがどのような役割を果しているのかを調べた結果が図13〜図15である。

これらの結果,ノートを最終的な評価の資料とすると答えた教師は約70%に達っしている が,ノートを使用して理解の進展を図っている教師は約15%に過ぎず,さらにノートを点 検することによってつまづきを発見したり,指導指画の改善を行う教師も合わせて15%に しかすぎない。ではどのようなことが評価の対象になっているのであろうか。推測するに 評価に加味される点は板書を正確に記載しているか,指示した時に自分の考えを書いてい

(9)

橋本・黒岩・大塚:楽しい理科授業への模索

51

性別

勤務年数別

      

   まニ

斜)愈

      

  ギ         ギ

        

一噛類)E醗

      に  してない    こ      

縄)斜)鄭

ABCD EFG

机間巡視により理解できてない児童を指導する 理解できてない児童には発問をして補う

ノート指導によって理解の進展を図る 全ての児童が理解できるまで時間をかけて指導 する

宿題や補習で理解の進展を図る

その他

無回答

  図13 個に対する指導

性別

勤務年数別

   F低学年      中学年      高学年

一㊥藝)馨

    ぼ        ぜ      に  してない

A.学習事項が正確に書かれているか B.自分なりの考えが書かれているか C.理科に対する関心・態度はどうか D.評価の資料とする

E.どこでつまずいているか

F.指導計画を改善するための資料にする

G.無回答

 図14 ノートを点検するときの視点

るかなどといった非常に表面的な点になっているのではなかろうか。それは,他の質問事 項の分析からノートの点検は机問巡視のわずかな時間に行っているという答が半数を占め ることにもあらわれている。この点からいえばノートは評点の際の資料には役立っている ものの,教師が指導の手だてを考えていくという評価本来のシステムの中に充分に組み込 まれていないと考えられる。

 これまで教師を対象としてノートの役割に対する考え方を中心に調査結果を述べてきた が,このような教師の意図に沿った形で児童はノートヘの記載を行っているのだろうか。

我々は児童のノートの記載状況を実際のノートを調査することによって分析してみる必要 があると考えた。

(10)

52

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

児童のノート記載状況

 我々は児童がノートに何を,そしてどのよ うに記載しているかを調査するために,上述 のようなノート指導を行っている教師が担当 している長崎市内とその近郊の小学校の5年 生と6年生の3学級(5年生2学級(42名,

20名),6年生1学級(37名))を選んだ。そ してそれらの児童が理科の授業中にどのよう なノート記載を行っているかを,小単元が終 了する毎に児童にノートを提出させ,それら を分析した。調査期問は昭和62年9月〜12月 である。

 分析にあたっては児童のノートが非常に 種々雑多であること,担任の教授方法や学習 テンポが異なることから,単純に各学級間を 比較することはせず,各学級における児童の ノートの記載のようすとテストの得点などを 関連させながら検討を加えた。

 5年生と6年生の間にはノート記載の全体 的な傾向について極端な差は見られないこと からここでは6年生のB領域の2つの単元に おける児童のノート記載についての調査結果

を述べる。

①児童がノートに記載する事項

性別

勤務年数別

・の︶

      

剛の

齢㊥

低学年 中学年     高学年

一 )のの

   得意       苦手    特に意識してない

A.最終的な評価にノートを加味している B.最終的な評価にノートは加味していない

C.無回答

   図15 評価とノート

 対象とした6年生の担任は在職年数が8年,理科の指導にも熱心であり,ノート指導に もかなりの時間を費している教師である。まず我々は,彼から理科学習にあたってはノー トを主として探究の場として使用しているとの方針を聞き,ノートに記載されている事項 が「問題提示」「予想,仮説」「実験方法」「実験結果」「結論」と分類されるだろうと予想 し,それらの事項が各小単元毎に記載されているかどうかを調べるとともに,その過程で 自分の考えや気づきを書き加えているかチェックした。また誤字や体裁も併せて調査した。

「ほのおを調べよう」と「もののあたたまり方」の単元における男子・女子各々10名づっ の各事項の記載状況を示したのが表7と表8である。これらの表を作成するにあたっては,

各事項にあたる記載(短文,図など)が何らかの形で見られる場合は,記載されていると 判断した。この場合表現上の誤りについても分析する予定であったが,非常に複雑になり,

完全な分析ができなかった。なおノートヘの記載状況と理解度を比較しやすいように,こ れらの表は5回行ったテストの得点の高い順にならべてある。

 また記載事項に板書事項,児童の気付き・考え,図がどの程度含まれているかを調べた のが図16である。図16からわかるように板書事項はほとんどノートに記載されており,図 も7〜8割の児童は予想や実験方法そして結果のところで記載していた。しかし図が記載

(11)

橋本・黒岩・大塚:楽しい理科授業への模索

53

表7 児童のノート記載のようす

出席番号

男 女 別

ほ  の  お  を  調  べ  よ  う

ア セ ト ン アルコールランプ 炎  の 

ろうそくの燃え方

木の燃え方

得点︵点︶ 順位︵番︶

問題 予想

方法 結果 結論

問題 予想

方法 結果 結論 問題

予想

方法 結果 結論

問題 予想

方法 結果 結論

問題 予想

方法 結果 結論

22 O O O O O O O 0 O O O 97 1

30 O × 0 × O 0 × × O 0 94 2

27 O O × O

X

× O × × 93 3 2 O O × × 0 O O 0 O × × O × × 97 4

17 O O O 0 0 O O 93 4 6 × × ×

O

× × 0 O × × O × 89 6

35 × × × O O × × × × × ○。 × × O 83 12

33 O O × × × O O 82 14

10 × ×

O

O O O

× O × × × × × 81 15

20

× ×

O

O × × 81 16 9 O 0 × O × O 0 × × O × × × 79 17

26 O O O × × × × ×

O O

× O 78 18

28 O O × × 0

0

×

O O

× X

O

× × 78 19

8 × O O O × × O × ×

O O

×

O

× 0 76 21 3 O O O O 0

X

70 24

16

O

× ×

O

× × × × × × ×

X ×

O

×

O O O

61 29

18

O

O

× × × × × × ×

O

0 O X 0 × × ×

× 58 30

29 O

0

X × × × × × ×

O

O

× ×

O O O

O O O

57 31

12 × × × × ×

× × × X × X × ×

× 53 33 25 O 0 O O

O

O O 0 0 52 34

O:記載あり  △:非常に不完全な記載  ×:記載なし  得点は平均点を示す

されている箇所では正確な文章が少なく,図を記載するのに時問がかかることを推測させ た。児童各自の気付きや考えがノートに記載されていれば,積極的にその学習に参加した という一つの証拠になると考えられるのであるが,板書事項などに比べて記載されている 割合が少なかった。記載されている場合も教師が指示した場合が多く,小川氏の指摘した 傾向と一致していた。

②ノートの記載とテストの得点

 楽しい理科学習は「よく理解できる授業」の積み重ねを考えること,そしてこの「よく 理解できる授業」にはノートが不可欠であるとの考えに従って学習内容のノートヘの記載

とテスト(5回)の得点との関係を示したのが表9と表10である。表9は2つの単元の男 女差をあらわしたものであり,表10は高得点者,中得点者,低得点者(各々5人)の差を 示したものである。ここでいう記載の割合は前述の各事項の全数に対する割合を示してお

り,得点は3回のテストの平均である。男子と女子のノート記載を比べると女子の方が記 載量も多く,字も比較的きれいである。そして得点の平均の差は「ほのおを調べよう」の 単元では5点,「もののあたたまり方」では2.5点となっている。この両平均の差をt検定

参照

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