• 検索結果がありません。

日本と世界的な安定 : 一人の海外在住ベトナム人 の視点から

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本と世界的な安定 : 一人の海外在住ベトナム人 の視点から"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本と世界的な安定 : 一人の海外在住ベトナム人 の視点から

著者 高崎 ミー・ドゥアン

雑誌名 PRIME = プライム

号 26

ページ 17‑19

発行年 2007‑11

URL http://hdl.handle.net/10723/658

(2)

「冷戦は終わりましたが、 次の戦争はさらに厳 しく、 血は流れなくとも心血を注ぐものになるで しょう。 それは経済競争です。 日本は小さな国で すが、 科学技術と経済開発の力で世界を制覇する ことでしょう。」 ダラ大学を訪れた欧米のエリー ト学者であるカナダ人から、 私が初めてそんな話 を聞いたのは1990年代の初め、 ソ連と東欧陣営が 崩壊し、 ベトナムではドイモイ政策の効果が出始 めた頃だった。 それ以来ずっと、 私は、 アジアの 国でありながら、 経済的に優れたモデルという点 で近隣諸国や世界中の国々が簡単には追いつけな いほど引き離した国として、 日本に賞賛と敬意を 持ち続けている。

1956年以後、 米国がベトナム戦争に力を注いで いた時期に、 日本は憲法第9条のおかげで経済開 発に集中することができた。 憲法第9条は、 第2 次世界大戦後の日本が戦争と関わり合うことを避 けるための保証とも口実ともなっていた。 しかし 残念ながら、 フランスやイタリアなどNATO 盟国の一部が、 9.11攻撃以降アフガニスタンとイ ラクへの派兵を控えたのに対して、 日本は自衛隊 をイラクに派遣した。 これは日本国内においても 国際的に見ても憲法に違反する行動とみられた。

イラクでは人道的活動や復興支援活動にしか携わ らないとしても、 日本政府は戦争を起こす国、 米 国の後方支援を行うことを世界に示した。 イラク 人は、 日本部隊の専門家たちの高度な建設技術や 緊急避難援助の技術を高く評価しても、 武器を手

に自国に入ってくる者に対しては誰も歓迎せず拒 否したいと思っていることだろう。 現在日本の部 隊は帰国しつつあるが、 武器を持つ者すべてに対 するイラク人の恐怖は決して消えていない。 日本 の自衛隊はよく働いたように見えるが、 それでも 自衛隊はイラク市民から、 世界の安定に日本が果 たす役割に対してほとんどあるいはまったく感謝 を受けなかった。 イラクにおける人道援助の任務 は、 疑問符のままである。 2003年の開戦以来、 死 と破壊の恐怖から、 4年間で400万人以上のイラ ク人が生命を守るために隣国に逃げ込んだ。 私は 戦争に苦しめられた国、 ベトナムの一犠牲者とし て、 500人以上の武器を手にした日本の部隊が、

イラク各地の他の連合国部隊と平行してサマーワ で地域的な任務を果たすよりも、 イラク人はむし ろ、 日本からの資金や食料、 医療、 医薬品、 復興 などの支援を望んでいると思う。 米国部隊の存在 と、 イスラエルを通じた米国勢力が中東に存在す ることで、 激しい暴力が続いてきた。 イラク人の 3分の1 (2,600万人) 以上が貧困に苦しみ、 イ ラク人の5%が極貧の状態にあり、 イスラエルの 事実上のジェノサイド政策によってパレスチナ人 が死にかけているのを見れば、 中東に民主主義や 安定があるなどと誰が言えるだろう? そこでの 米国の任務は 「地域の安定」 のためだけだという が、 よく見ればその 「安定」 もしくは混乱が大量 の 「アメリカ製」 兵器によってもたらされたこと がわかる。 中東における米国製兵器の市場は、 ロ

― 17 ―

特集:世界の中の憲法9条

日本と世界的な安定

一人の海外在住ベトナム人の視点から

ミー・ドゥアン・高崎

(国際平和研究所研究員)

(3)

シア製の6倍におよび、 この地域の石油製品を市 場に送り出しているのはほとんどが米国企業であ る。

この60年間、 憲法第9条のおかげで、 日本は他 の先進国と一線を画してきた。 日本のアイデンティ ティーは平和と豊かさである。 コスタリカも、

1949年以来、 日本と同様の戦争を放棄する憲法を 持っている。 これまでのところ経済的には中程度 の成果しか上げていないが、 コスタリカの人々は、

極めて民主的で平和的な環境で、 完全な市民権や 人権を享受し幸福に暮らしている。 これと対照的 に日本の状況は悪い方に向かっている。 日本の人々 は北朝鮮によるミサイル実験の脅威以来、 ジレン マに陥っている。 2006年10月に行われた大規模な 調査によれば、 60%以上の人が、 第9条第2項の 見直しに賛成している。 特に、 1945年以来米軍基 地の駐留により苦しんできた沖縄の住民に顕著で ある。 もしも日本が、 本土や沖縄の問題や外交問 題に対処するために 「戦争の放棄というIDカー ド」 を失ったら、 国際的な安定という意味でこの 地域だけでなく全世界にとって大変不幸なことに なるだろう。 第9条の見直しによって、 麻生太郎 外相が可能性に言及したとおり、 日本が自衛のた めに 「少量の」 核兵器を製造できるようにするこ とも可能である。 日本と同じく、 米国とその同盟 国は、 テロリズムに対する戦争は善であることを 証明しようと試みている。 実際には、 イラク侵攻 は状況を最悪にし、 最近ではアメリカ人も認める ようにこの戦争は米国史上最悪の外交上の失策と なっている。 日本の政府指導者たちは、 なぜ経験 から学び平和を維持しようとしないのか?

北朝鮮による日本人拉致問題への日本国内の関 心が高まる中、 日本政府を無視して米国は6ヶ国 協議を通じて、 北朝鮮の核の脅威と引き換えとな るエネルギー支援プログラムに関して先月までに 第一段階で成功を納め、 韓国は北への支援プログ ラムを再開した。 アジア地域と世界はほっと息を

ついた。 今こそ、 交渉が安全と安定をもたらし、

軍隊と兵器がもたらすのは破壊と死と後悔ばかり であることを証明するときである。 それは多くの 戦争、 とくにベトナムと現在の中東諸国の経験か ら学んできたことである。 ベトナム戦争の時と同 じように、 米国市民の60%以上がこの戦争とブッ シュ政権の政策に反対している。 米国各地で行わ れた、 数多くの平和を愛する人々によるイラク戦 争反対のデモは、 地域の安定に部外者が手を出す 必要がないことを示している。

アメリカ人が、 他国に恐怖をもたらすばかりで、

国家権力の善良さが失われたことを悔やんでいる 一方で、 日本の国家権力の善良さは、 防衛庁の防 衛省への昇格によって評価を落とした。 この展開 によって、 日本の防衛政策は、 専守防衛という姿 勢から国際的な先制攻撃防衛へと変化していくこ とも可能になる。 この動きはまた、 「国威」 を発 揚するように憲法を変え、 軍隊による国際的な安 全や安定に対してこの国が世界で果たす役割を高 めていくための最初の一歩である。 もし日本がそ うなれば、 非常に危険である。 今こそ、 憲法第9 条が真に価値のある平和のメッセージであること を証明してみせるときである。 ピースボートによ る、 NGOの世界的な活動では、 憲法第9条は日 本の宝であり資産であると高く評価された。 憲法 9条のメッセージは、 北朝鮮や中国においてさえ 大いに歓迎されている。 今こそ、 信頼の構築を通 じて国家権力の善良さが平和の支えとなりうるこ とを証明する時である。

最近では多くのアメリカ人が、 若者の暴力的行 動や質の悪いメディアを抱えた自分たちのライフ スタイルは、 宗教の教えを傷付け、 イスラム諸国 にアメリカへの敵意を植えつけるのではないかと 疑問を感じており、 米国ではアラブの言葉を学ぶ 人が増えている。 また世界的な傾向として、 将来 の戦争防止に向けて、 学校で平和教育のカリキュ ラムを作ることが進められている。

日本と世界的な安定 一人の海外在住ベトナム人の視点から

― 18 ―

(4)

メディアは、 事実の情報を与えることで重要な 役割を果たしうる。 また、 紛争の状況を改善して 交渉に向かわせ、 世界的な安全と安定を効率的に 維持する力を持っている。

私自身は、 日本を平和と繁栄と豊かさに導いた のは、 企業と勤勉な人々が力を合わせた平和的な 力であって、 かつて耳にしたように、 他の国々が 日本と 「経済競争の戦争」 をする必要はないこと に気がついた。 日本はこの地域で、 特にASEAN などアジア各地で、 教育や経済の開発面で、 安定 をもたらすために重要な役を果たしてきた。 日本 政府は、 ベトナムだけで、 これまでにODA資金 を通じて、 ベトナムのGDPの1/6に当たる100億 米ドルの支援を行ってきた。 私たちはWTOに沿っ

て経済競争を活性化するために、 兵力や脅威では なく、 高度な技術と質の高い製品がもたらす地域 内や国際的な安定を必要としている。 私たちは、

経済開発について日本をはじめとする先進国のリー ダーシップを必要としているが、 歴史が示すとお り、 外国の兵器や軍を伴う援助や支援は、 決して 受け入れない。

憲法に関する国民投票法案が試行されるまでの 3年の間に、 日本の人々が戦争放棄をしている憲 法9条をひっくり返すようなことをしないことを 願っている。 憲法9条は、 戦争に引き裂かれた国々 を慰め、 全世界の平和を維持するものだからであ る。

日本と世界的な安定 一人の海外在住ベトナム人の視点から

― 19 ―

参照

関連したドキュメント

著者の根本利通氏は、当初は留学生として、のちには旅行会社の経営者として、 2017 年に急逝

休み時間は教室に戻すことを原則としている。 学校での指導は、 2

量子力学の非局所性について議論する際、二重スリット実験とベルの思考実験がし

先進国内での工事などでは労働組合の活動が強

送電線の容量を満足させながら 、工 場や病院などの全てに必要な電力を どの発電所からどの送電線を通して

 それからもう一つは,これはちょっとコントラバーシャルな問題ですが,民主化による不安定化

(以上本号) ベトナム戦費の増大とアメリカ経済 四三二一 、、、、 資本主義の不均等発展

このような状況で、ニューカマーが社会参加す