2 3
アメ リカにおける民間医療保険の料率規制
中 浜 隆
1. は じめ に
アメ リカでは,保 険業はお もに州政府が監督規制 を行 っている。州保険 局 (保険監督 当局)の長官である保 険監督官によって構成 され る仝米保険 監督官協会
( Na t i o nalAs s oc i at i onofI ns ur a nc eCommi s s i one r s:NA IC)
は,小雇用主医療保 険( s mal le mpl o ye rhe al t hi ns ur a nc e )
の改革 のために,1 9 9 0
年代初めにモデル法3
件 とモデル規則1
件 を制定 した。本 稿 では,3
件 のモデル法 を「 1 9 9 0
年 モデル法」( 1 9 9 0
年1 2
月制定),「 1 9 9 2
年 モデル法」( 1 9 9 1
年1 2
月制定,9 2
年1 2
月一部 改正),「 1 9 9 5
年 モデル法」( 1 9 9 1
年1 2
月制定,9 2
年1 2
月一部改正,9 5
年3
月大幅改正), モデル規則 を「 1 9 9 2
年 モデル規則」 ( 1 9 9 2
年1 2
月制定) と表記す る1)。 これ らは 「契約更 新保証」
「新契約加 入保証」
「契約前発病 の免責 に対す る制 限」
「契約 の携 行」「料率規制」「再保険プール」について定めている2)0本稿 は,上記の改革の手段 のなかで 「料率規制」 を取 り上 げ る3)
。1 9 9 0
年 モデル法 (第1
条) と1 9 9 2
年 モデル法 (第2
条)は, それぞれ5
つ と7
つの 目的のなかで,料率規制 に関す る目的 を 「弊害のある料率設定慣行 を1 )
これらについては,中浜( 2 0 0 3 a )
を参照。2 )
「契約更新保証」
「新契約加入保証」
「契約前発病の免責に対する制限」
「契 約の携行」については中浜( 2 0 0 3 b )
を,「再保険プール」については中浜( 2 0 0 3 C )
を参照。3 )
「料率規制」は,中浜( 2 0 0 3 C )
では概要の叙述にとどめているので,本稿 と次稿で詳 しく叙述する。防止す ること,購入者への料率設定方法の開示 を要求す ること」 と定めて いる。他方
,1 9 9 5
年 モデル法 (第2
条)は,同法の1 0
の 目的のなかで,料 率親制 に関す る目的 を 「弊害のある料率設定慣行 を防止す るこ と,医的 リ ス クに基づ いた医療保険市場の細分化 を防止す ること,医療保険 リスクを よ り広 く分散す ること,購入者への料率設定方法の開示 を要求す ること」と定めている。
本稿 の 目的は,お もにモデル法 とモデル規則が定め る料率規制の内容 に ついて考察 し,料率設定方式の基本的種類である料率幅方式,調整地域料 率方式,純粋地域料率方式の特徴 を提示す ることにある。
2.
料率 規制 と料率 設定 方式料率規制は,州政府が医療保険制度改革 として実施 している一連の手段 のなかでもっとも複雑 であ り,州によって もっとも大 きく異なる手段 であ る。
「新契約加入保証」 と 「契約更新保証」によって,保 険者 は新 契約 の加 入 と契約の更新 を小雇用主に保証 しなければならない。 しか し,保 険者が リスクを細分化 して料率 を設定す るならば, リスクの高い小雇用主の保 険 料 はかな り高 くなる。そのために小雇用主は,実際には新契約 に加入 し, 契約 を更新す ることはで きな くなる。 したが って料率規制は, リス ク細分 化 の防止 と料率格差の抑制 によって リス クの高い小雇用主の保険料負担可 能性 を改善す るとい う点において, もっとも重要 な手段 である。
料率規制 は,①保 険者が料率 を設定す るさいに基づかなければならない 料率設定方式の種類,②保険者が料率 を設定す るさいに使用できる危険要 因
( r i s kf a c t o r )
の制限,③個 々の (特定の)危険要 因または全危険要 因 の使用によって生 じる料率 の格差に対す る制限,④年間の料率 の引き上 げ に対す る制限,か らなっている。料率設定方式の基本的種類には,料率幅方式,調整地域料率方式,純粋 地域料率方式がある
。1 9 9 0
年モデル法 と1 9 9 2
年モデル法は料率幅方式 を採アメ リカにおける民間医療保険の料率規制
2 5
用 している。1 9 9 5
年 モデル法は,1 9 91
年1 2
月の制定 当初は料率幅方式 を採 用 したが,1 9 9 5
年3
月の改正 によって調整地域料率方式に変更 している。NA IC
が料率幅方式か ら調整地域料率方式に変更 したのは,料率幅方 式はきわめて複雑 であ り, また料率 の格差 に対す る制限がかな り緩いため である。そのために,1 9 9 5
年3
月の改正以前に調整地域料率方式 (または 純粋地域料率方式) を採用 している州 もあった。しか し,改正 モデル法案の審議過程 では,調整地域料率方式に対す る反 対論 もあった。 そこで,賛否両論 に対す る妥協策 として 「上記の保 険料率 の格差に対す る制限は,州が検討 して もよいであろうい くつかの実行可能 な方法の 1つ を示 してお り,勧告 された方法 とい うよ りはその ような方法 とみなされ るべ きである」 とい う
NA IC
の見解 を改正 モデル法案 で明示 す ることになった( 1 9 9 5
年 モデル法第5
条A
項Dr af t i ngNo t e
を参照)01 9 95
年3
月に開催 された執行委員会は,医療保険委員会 と州 ・連邦医療 保険立法政策専 門部会が1 9 9 4
年1 2
月に採択 した改正 モデル法案 を最終的に 審議 している。執行委月会で も,第5
条の規定 (調整地域料率方式による 料率規制)に対 して賛成意見 と反対意見が表明されている。エインズ保険監督官 (コロラ ド州)は 「改正案 は医療保険委員会 で全会 一致で採択 され,医療保険業界の代表者が提起 している問題 は規制枠組作 業部会 と州 ・連邦医療保険立法政策専 門部会 で 1年半にわたって充分に審 議 されている。 (中略) た とえば地域料率 の ような問題 は,医療保 険要点 会で再検討 され るべ きではない」 と述べ ている。 コスル保 険監督官 (バー モン ト州)は 「バーモン ト州 は
80%
の料率格差 を認めてお り,保険者が予 想 した問題 は生 じていない」 と述べ,料率規制はバー モン ト州で実行可能 であることがわか ったので,改正案 を支持 している。セン保険監督官 (ワ シン トン州)は 「モデル法案は,異なっている市場 に対応す るための柔軟 性 を各州 に付与 しているであろ う。 ワシン トン州の保 険者が提起 した同州 の料率規制の内容 に関す る問題 は生 じていない」 と述べ,改正案 を支持 し ている。2 6
他方, ラングル氏 (オ‑ イオ州) は 「第
5
条改正案 の地域料率方式の規 定 は,大部分 の州 で受 け入れ られないであろ う。 この料率 設定方式はオ‑イオ州 で提案 されたが, オ‑ イオ州 の医療保 険市場 では機能 しないであろ うと考 え られたため に否決 された」 と述べ てい る。 フィックス氏 (ニュー メキシコ州)は 「ニュー メキシコ州議会 は,調整地域料率方式 を採用 し, 性別 に基づ く料率 の格差 を制 限す る州規制‑ の変更 を最近,採択 した。 そ の変更 はニュー メキシコ州 の市場 に混乱 を引 き起 こ した。 (中略) モデル 法案 の第
5
条の規定 は,各州 の市場 に大 きな問題 を生 じさせ るか もしれ な い」 と述べ てい る。 ウィ リアムズ保 険監督官 (デ ラウェア州) は 「モデル 法の第5
条 (料率規定) には,や は り問題があ る。私 と私 の代理 人は改正 案 の作成 に参加 したが,私 はこれ らの規定 につ いて懸念 してい る。 モデル 法 を制定す る場合,NAIC
は基本的に全 国的基準 を設定 している。 この モデル法 の改正案 を採択す るこ とは,NA iC
は純粋地域料率方式の基準 を設定す るであろ うとい うこ とを示す こ とになるであろ う。私 はその よう な基準 を支持す る用意はない」 と述べ, 医療保 険改革が各州 の市場 に与 え る影響 につ いて分析 す るよう委員に求めてい る。そ して, こ うした審議 を経 て改正 モデル法案 を採決 し, 「賛成11,反対 4,棄権 1 (1委員 は投票時に不在)」で採択 してい る4)0
NA IC
は,連邦法の1 9 9 6
年HIPA
法 の要件 を盛 り込むため に,2 0 0 0
年1 2
月 に1 9 9 5
年 モデ ル法 を改正 して い る5)。 しか し,1 9 9 0
年 モデ ル法 と4 ) NAI C,1 9 9 4 Pr o c e e di n g s , Fo u r t hQu a r t e r , p p . 2 6 ‑ 3 0 .
なお,コスル保険監 督官 (バーモン ト州) とフィックス氏 (ニュ‑メキシコ州)の発言内容 (そ れぞれ「 8 0 %の料率格差」 と 「
調整地域料率方式の採用」)
については,吹 稿で補足説明する。5 ) 1 9 9 6
年HIPA
法( He a l t hI n s u r a n c ePo r t a b i l i t ya n dAc c o u n t a b i l i t y Ac to f1 9 9 6 )
は,小雇用主医療保険の 「契約更新保証」「新契約加入保証」「契約前発病の免責に対する制限」「契約の携行」について,州政府が実施 し なければならない最低限の基準を定めている。 しかし 「料率規制」 と 「再保 険プール」についてはほとんど定めていない
( NAIC
モデル法のような包 括的規定は存在 しない)。1 9 9 6
年HIPA
法については,中浜( 2 0 0 3 a )
をア メ リカにおけ る民間医療保 険の料率規制
2 7 1 9 9 2
年 モデル法 は もはや支持 していないため に,改正 していない6)。 なお,1 9 9 6
年H IPA
法は料率規制 につ いてほ とん ど定めていない (モデル法の よ うな包括的規定 は存在 しない) ために,1 99 5
年 モデル法の改正 にあたっ て料率規制 に関す る規定 はほ とん どまった く変更 していない。1 9 9 5
年 モデル法 は制定 当初,料率幅方式 を採用 した。1 9 9 2
年 モデル法 と1 9 9 5
年 モデル法の主要 な相違 は, リス クの高い小雇用主に対す る保険者 間 の リス ク調 整 手 段 と して,1 9 9 2
年 モ デ ル 法 は 割 当 方 式( al l ocat i on me t hod)
を,1 9 9 5
年 モデル法 は再保 険方式( r e i ns ur anc eme t hod)
を採 用 してい るこ とにあ る。 しか し, これ までに割 当方式 を採用 してい る州 は1
州 (アラバマ州)のみである。 また,NA IC
は料率幅方式におけ る契 約 クラスの規定 (次章 で叙述) をもはや支持 していない。 そのために, 医 療保 険 ・マネジ ドケア委員会規制枠組専 門部会 は1 9 9 2
年 モデル法 を公式の「 NA IC
モデル法 ・規則 ・ガ イ ドライン( NAI C ModelLaws ,Re gul a‑
t i onsandGui de l i ne s )
」の リス トか ら削除す るこ とを2 0 0 4
年3
月に医療保 険 ・マネジ ドケア委月会 に勧告 した。規制枠組専 門部会の勧告 を受 けて,2 0 0 4
年 中に医療保険 ・マネ ジ ドケア委員会 は1 9 9 2
年 モデル法の削除につ い て審議 ・採決 し, その後,執行委員会 はそれ を議題 に取 り上 げ る予定 であ る7)0
また
,1 99 2
年 モデル規則 も料率幅方式 を採用 して きた。 しか し,1 9 9 6
年H iPA
法の要件 を盛 り込み,調整地域料率方式に変更す るために,規制 枠組専 門部会 は20 01
年3
月に1 9 9 2
年 モデル規則の改正案 を起草 した。改正参照。
6 ) NAI C( 2 0 0 2 ) ,p. 9 ,p. 2 2 .
7 ) NAI C( 2 0 0 4 a ) ,p.
1.
なおNA IC
は,各種委員会 ・専門部会が2 0 0 4
年に果 たすべ き任務 を策定 している.そのなかで,医療保険 ・マネジ ドケア委具合 と規制枠組専門部会の任務の1
つに「 1 9 8 9
年から1 9 9 3
年までに制定され,そ れ以来改正されていないモデル法を再検討する。2 0 0 4
年冬季全国大全 までに 報告する。最重要事項。」があげられている( NAI C,2 0 0 4 b,p. 1 0 ,p. 1 2 )
。 したがって
,1 9 9 0
年モデル法 も再検討の対象になっていると考えられる。案は2004年
8月時点で審議 中であ り,規制枠組専 門部会 は2004
年冬季全国 大会 までに報告す る予定である8)0この ように
NA IC
は現在,小雇用主医療保険におけ る料率幅方式は支 持 していない9)03.
料率 幅 方式料率幅方式
( r a t i ng ba nds )
は,保 険契約 の クラス( c l a s s o f bus i ‑ ne s s:
以下 「契約 クラス」 と表記す る) を設定 し,契約 クラス内 と契約 クラス間の料率 の格差 を制限す る方式である。
伝統的に多 くの保 険者は,商品設計 ・料率設定 ・販売において,すべて の小雇用主医療保険 を単‑の契約 クラス として取 り扱 って きている。 しか し,医療保 険が別個 の営業職月 によって販売 され る場合,医療保 険が他の 保 険者か ら取得 された場合
,HMO
商品 とインデムニティ商品の ように商 品設計が大 き く異なる場合 には,別個 の契約 クラスを設定 している保 険者 もいる10)。 こうした保 険者の慣行 に したが って,料率幅方式は契約 クラス の設定 を認めている。1 992
年 モデル法は,契約 クラスを 「小雇用主のすべ て または別個 の グ ループ化」 と定義 している (第3
条 Ⅰ項 を参照)。保 険者 は,下記の理 由 に よって生 じる予定保 険金支払額 または予定事 業 費( e xpe c t e d c l ai ms e xpe r i e nc eo rad mi ni s t r a t i vec os t s )
の大 きな差異 を反映 させ るためにの み,別個 の契約 クラスを設定す ることがで きる。予定保険金支払額 と予定 事業費に大 きな差異が生 じる理 由 とは,①保 険者が小雇用主医療保 険の販 売 システムを2
種類以上採用 しているため,②保険者が他の保 険者か ら契 約 クラスを取得 したため,③保 険者が所定 の要件 を満 してい る協会 団体8 ) NAI C( 2 0 0 4 b) ,pJ2.
9)
しかし現在,多くの州は料率幅方式を採用 しているので,料率幅方式につ いて考察する必要がなくなったわけではない。1 0 ) I i a l l( 2 0 0 0 / 2 0 0
1) ,p. 37 7 .
ア メリカにおけ る民間医療保険の料率規制
2 9 ( as s oci at i ongr oup)
に医療保 険 を提供 しているため, であ る (第5
条A
項 を参照)ll)。 しか し,保 険者 は契約 クラスを設定す るための基準 として「団体規模」 を直接的 または間接的に使用す るこ とはで きない
( 1 9 92
年 モ デル規則第4
条B
項 を参照)。保険者は,上記の
3
つの理由に基づ いて,別個 の契約 クラスを9
つ まで 設定す るこ とができる。 しか し,保険監督官に申請があ り,契約 クラスの 追加設定が小雇用主市場の効率性 と公平性 を高め るであろ うとの結論 を保 険監督官が出 した場合 には,保険監督官は契約 クラスの追加設定 を認可す ることがで きる (第5
条B
項,D
項 を参照)。NA I
Cの医療保 険委員会 医療保 険入手作業部会が1 991
年9
月に起草 し たモデル法案( 1 99 2
年 モデル法の法案)は,上記の3
つの理由 (3
種類の 契約 クラス)それぞれについてさらに契約 クラスの数 を3つ まで,合計9 つ まで としてい た。 しか しそれは厳 しく, 多数の協会団体 の医療保険 を引 き受けている保険者 または他 の保 険者か ら契約 クラスを取得 した保 険者に は とくに大 きな負担にな りうるとの懸念が1 9 91
年1 2
月開催 の上記の作業部 会 で出された。 そこで作業部会 は,妥協策 として,契約 クラスの種類 ごと の制限 を撤廃 し,全体 で9
つ までの制限 とす る修正 を行 っている12)。なお1 99 0
年モデル法は,契約 クラスの設定理由 (種類) を4
つ定め, 4
つの理 由 (種類)それぞれについて契約 クラスの数 をさらに2
つ まで設定す ることを認めている (第
2
条E
項 を参照)13)0それぞれの契約 クラスにおいて, 同 じまたは類似 した医療保 険に加入 し,
l l )
協会 団体 の要件 は,NA IC
が1 9 8 2
年1 2
月に制定 したGr o up He al t h
l ns ur a nc eDe f i ni t i o na ndGr o upHe a l t hl ns ur a nc eSt a nda r dPr o vi s i o ns Mo de lAc t
第1
条E
項で定められている。1 2 ) NAI C,1 99 2 Py 1 0 C e e di n gs ,Vol . I B,p. 9 1 6 ,p. 9 1 9 .
1 3 ) 4
つの理由 (種類)のうちの3
つは,先に本文で叙述 した1 9 9 2
年モデル法 の3
つの理由 (種類) と同じである。 もう1つは,後に本文で叙述する 「契 約クラス間の指標料率の格差に対する制限」が通用されない医療保険に対 し て設定される契約 クラスである。 しか しこれは,1 9 9 2
年モデル法では削除さ れている。被保 険者の特性が類似 した小雇用主に料率期 間中に課 され る保 険料率 は, 指標料率 の25%を超 えるほ ど指標料率か ら索敵 してはならない
( 1 990
年 モ デル法第4
条A項(2)
と1992
年 モデル法第6
条A項(2)
を参照)。つ ま り,輿 約 クラス内の料率 の格差 を 「指標料率±25%」以内に制限 している0
「被保 険者 の特性
( c as ec har a c t e r i s t i c s )
」 とは,小雇用主 に対 して保 険料率 を設定す るさいに保 険者が考慮す る小雇用主の人 口統計的 またはそ の他 の客観 的特性 であ る。「料率期 間( r at i ngpe r i od)
」 とは,保 険者 に よって設定 され る保険料率が有効 であるとみなされ る期 間である。保険者 は,一般 に料率期 間 を1
年に設定 している。「指標料率( i nde xr at e )
」 と は, それぞれの契約 クラスにおいて,料率期 間に,被保 険者の特性が類似した小雇用主に適用 され る基礎料率 と最高料率 の算術平均 であ る。「基礎 料率
( ba s epr e mi um r at e )
」 とは, それぞれの契約 クラスにおいて,煤 障内容が同 じまたは類似 した医療保険に加入 し,被保 険者の特性が類似 し た小雇用主に課 され る最低料率 である14)。1 990
年 モデル法は,被保 険者の特性 を示す危険要 因の種類について定め ていない。1992
年モデル法は,一般 に合理的 と認め られ る被保険者の特性 として,年齢 ・性別 ・産業 ・地域 ・家族構成 ・団体規模 を明示 し, これ ら 以外の危険要 因は保 険監督官の事前認可によって使用で きることとしてい る15)。大団体の医療保 険の場合,大団体 の被保 険者 (従業員 と扶養家族)は多 いために,保 険金支払実績
( c l ai mse xpe r i e nc e)
は毎年総 じて同 じであ る。 そこで保 険者は,大団体 の リスクを測定す る (保 険金支払額 を予定す る) さいに,当該団体 の保険金支払実績 を使用 して きた。つ ま り,保 険者1 4 )
「被保険者の特性」は1 9 9 0
年モデル法第2
条D項 ,1 9 9 2
年モデル法の第3
粂H項 と第 6
条A項( 9 ) ,
「料率期間」は19 9 0
年モデル法第2
条K項 と 1 9 9 2
年 モデル法第3条Y項,「
指標料率」は1 9 9 0
年モデル法第2
条B
項 と1 9 9 2
年モ デル法第3
条Q項,「
基礎料率」は19 9 0
年モデル法第2
条B
項 と1 9 9 2
年モデ ル法第3
条D
項を参照。1 5 ) NAI C,1992 Pr o c e e di n gs ,Vo l . I B ,p, 91 6 ,
アメ リカにおけ る民間医療保険の料率規制
3 1
はそれぞれの団体 の保 険金支払実績 によって料率 を設定す る経験料率方式( expe r i e ncer at i ng)
を採用 して きた。他 方,小雇用主医療保 険の場合 には,小雇用主の被保 険者は少 ないため に,小雇用主の保 険金支払実績 は毎年大 き く変動す る。 そこで保 険者 は, 小雇用主の リス クを測定 し,料率 を設定す るさいに,合理 的 ・客観 的な危 険要 因 を使用 して きた。つ ま り,保 険者 はい くつかの危険要 因 を組み合 わ せ て階層 を設定 し, それ ぞれの階層に多数 の小雇用主の平均的 な保 険金支 払実績 を割 り当て る階層料率方式
( t i e rr at i ng)
を採用 して きた。料率幅方式は階層料率方式 を認めている。 しか し,保 険者が さまざまな 危険要 因を使用す るこ とに よって生 じる リス ク細分化 を抑止す るために,
1 9 9 2
年 モデル法は保 険者が使用 で きる危険要 因の種類 を明示 してい る (明 示 していない危険要 因の使用 は保 険監督官の事前認可 を必要 としてい る)。そ して
1 99 2
年 モデル法は,保 険者が保 険料率 を設定す るさいに被保 険者 の特性 として 「産業」 を使用す る場合,最高の料率係数( r at ef act or )
を 最低 の料率係数 の1 5% ( 1. 1 5
倍)以下 に制限 してい る (第6
条A
項( 5 )
を参 顔)16)。 また1 9 9 2
年 モデル規則 は,保 険者が被保 険者 の特性 として 「団体 規模」 を使用す る場合,最 高の料率係数 を最低 の料率係数 の2 0% ( 1. 2
倍) 以下 に制 限 している (第6
条C
項 を参照)0また, いか なる契約 クラスの指標料率 も,料率期 間に,他 のいかなる契 約 クラスの指標料率 を
2 0%
超上 回ってはな らない( 1 9 9 0
年 モデル法第4
条A
項( 1 )
と1 9 9 2
年 モデル法第6
条A
項( 1 )
を参照)。つ ま り,契約 クラス間の 指標料率 の格差 を2 0%
以 内に制 限 している。先述の よ うに, モデル法 は
3
つの契約 クラスの設定理 由 (種類) を定め てい るが,保 険者が契約 クラスを設定す る標準的方法 は存在 していない17)01 6 ) 1 9 9 1
年1 2
月開催の医療保険委員会医療保険入手作業部会では,1 5 %
の制限 は厳 しく,保険業界はそれに反対 しているとの意見が保険会社 とアメリカ医 療保険協会( He al t hI ns ur an c eAs s o c i a t i o no fAme r i c a)
の代表者から出 ている。NAI C,1 99 2Pr o c e e di n
gs ,Vol JB,p. 9 1 6 ,p. 9 2 1
.1 7 ) Cur t i se tal . ( 1 9 9 9 ) ,p. 1 5 9 .
3 2
モデル法が契約 クラス間の指標料率 の格差 を制 限 しているのは,保 険者が 契約 クラス内の料率 の格差 に対す る制 限 を回避す るために,契約 クラスの 設定 を改変す る (リス クの高い小雇用主 とリス クの低 い小雇用主 を異な る 契約 クラスに区分す る) こ とを防止す るためである18)0
モデル法は, 同 じまたは類似 した医療保 険に加 入 し,被保険者の特性が 類似 した小雇用主に課 され る料率 について,契約 クラス内の料率 の格差 を
「指標料率
±2 5%
」以 内に,契約 クラス間の指標料率 の格 差 を2 0%
以 内に 制 限 してい る。 ここで,NA IC
が最初 に制定 した1 9 90
年 モデル法の審議 過程 につ いて叙述 してお きたい。NA IC
の医療保 険委員会 が組織 した団体 医療保 険料率審査諮問委員会 は,1 9 89
年1 2
月に医療保 険委員会 団体 医療保 険料率審査作業部会 に報告書 を提 出 し,保 険者のすべ ての契約 (小雇用主医療保 険)に対す る料率 の格 差 を「 2. 5:1
」以 内に制 限す るこ とを勧告 した19)。つ ま りこの報告書 では, 契約 クラス内 と契約 クラス間の料率 の格差 を制 限す るとい う手法 は採用 さ れていない。諮問委員会 は,最大 限の格差
「 2. 5:1
」 は大 きす ぎるとい う懸念 につ い て議論 してい る。 その結果,① この制 限は保 険者が引 き受 けてい るすべ て の契約 に通用 され るo
Lたが って,②保 険者は一般 に 多様 な契約 クラス を 設定 してい るので, この制 限は リス クの特徴や事業費が異 なる契約 クラス を包含す るためには充分大 き くす る必要が ある. また,(卦この制 限はそれ ぞれの契約 クラスに対す る比較 的厳 しい制 限 よ りも 〔継続料率方式の〕悪 用 を防止 しやす い, と判断 してい る20)0その後, 医療保 険委員会 が上記の諮問委月会 を再任 して発足 させ た小雇 用主団体 医療保 険料率審査方法諮問委員会 は
,1 9 9 0
年6
月に上記の作業部1 8 ) Ha l l( 2 0 0 0 / 2 0 0
1) ,p. 3
77.
1 9 ) NAI C,1 990Pr o c e e di n gs ,Vol . I B,p. 4 8 8 .
20)
Z b i d. ,p. 4 8 8 .
なお,継続料率方式( dur a t i o na lr a t i n g)
については後に本 章で叙述する。アメ リカにおける民間医療保険の料率規制
3 3
会 に最終 報告 書 を提 出 し,契約 クラス内の料率 の格 差 を 「平均 料 率 ±3 0%
」以内に,契約 クラス間の平均料率 の格差 を20%
以内に制 限す ること を勧告 した2
1)。 この最終報告書では,契約 クラス内 と契約 クラス間の料率 の格差 を制 限す るとい う手法が採用 されている。 しか し,契約 クラス内の 料率の格差に対す る制限は1 9 9 0
年 モデル法 と異なっている。 なお, ここで は 「平均料率( ave r ager at e )
」 と表記 されてい るが,モデル法の 「指標 料率」 と同義 である。諮問委月会 は,三段階料率規制
( t hr e et i e rr at i ngr e s t r i c t i on:
①契約 クラス間の料率 の格差に対す る制限,②契約 クラス内の料率 の格差に対す る制 限,③年間の料率 の引 き上げに対す る制限)は複雑す ぎるとい う懸念 について議論 しているOその結果,(丑それぞれの契約 クラスに対 して比較 的厳 しい制限 を行 うこと,②保 険者は契約 クラス内では同 じ人 口統計的特 性 と料率係数 を使用 しているので, それぞれの契約 クラスについて審査す るほ うがずっと容易 であ り,信頼性が よ り高いこと, を主要 な理 由 として 三階層料率規制 を勧告 している。諮問委員会 は,三段階料率規制 と二段階料率規制 ((∋契約 クラス全体の 料率 の格差 に対す る制限,②年間の料率の引 き上げに対す る制限)の最終 的な選択は作業部会 にゆだねているが,二段階料率規制 よ りも包括的な三 段階料率規制のほ うが厳 しくかつ適切 な規制方法であると判断 している
22) 0
作業部会 は, こうした諮問委員会の勧告 を受けて
,1 9 9 0
年9
月にモデル 法案 を起草 した。 その後,プ リンシパル生命保険相互会社,アメ リカ医師 会,アメ リカ団体 医療制度協会( Gr oup He al t h As s oc i at i on ofAme r ‑ i ca:GHAA)
,ブルー クロス ・ブルー シール ド協会がモデル法案 に対 し てい くつかの コメン トを行 った23)。作業部会 は, それ らに基づ いてモデル2 1 ) NAI C ,1 990Pr o c e e di n gs ,Vol .
II ,p. 6 0 9 . 2 2 ) I b i d. ,p. 6 1 0 .
2 3 ) GHAA
はグループ診療型HMO
の業界団体である。なお,GHAA
とAme r i c a nMa na ge dCa r ea ndRe vi e wAs s o c i a t i o n
(マネジ ドケア組織の業 界団体)が1 9 9 5
年11月に合併 してAme r i c a nAs s o c i a t i o no fHe a l t hPl a n
3 4
法案 を修正 し
,1 9 9 0
年1 2
月に採択 した24)
。作業部会 は,1
99 0
年9
月に起草 したモデル法案 において,契約 クラス内 の料率 の格差 を 「指標料率±2 5%」以 内に制 限 している (
つ ま り諮問委月 会が勧告 した 「平均料率±3 0%」 を修正 している)
。 それは, 「平均料率 ±3 0%」以内の制 限では緩 い と判断 したため と思 われ る。 しか し, この点 に
関す るモデル法案の主 旨説明 または審議 内容 が19 9 0
年9
月開催 の作業部会 の議事録 に記載 されていないために不明であ る。以上 の よ うに,NA ICは1
9 9 0
年 モデル法の審議過程 において,契約 ク ラス内 と契約 クラス間の料率 の格差 に対 して, よ り厳 しい制 限に修正 して いる。モデル法が定め る料率幅方式では,保 険者は まず, た とえば 「従業月給 付管理業務代行会社」 と 「自社 の営業職月」 の よ うに異なる販売 システム
を採用 してい る場合,別個 の契約 クラスを設定す る25)0
次 に,保 険者はそれぞれの契約 クラスにおいて 「被保 険者の特性」 であ る年齢 ・性別 ・産業 ・地域 ・家族構成 ・団体規模 を使用 して料率 を算定す る。 それぞれの契約 クラスにおいて,被保険者の特性 に基づ いて算定す る 料率 が 「マニュアル料率
( manualr at e)
」 であ る。マ ニュアル料率 は, 多数 の小雇用主の平均的な保 険金支払実績に基づ いて算定 され る標準料率 であ る。 多数 の小雇用主医療保 険 を引 き受けてい る保 険者は, 自社 の保 険( AAHP)が設立され,さらにAAHPとHe al t hl ns ur a nc eAs s oc i a t i o n o fAme r i c a(
民間保険会社の業界団体)が20 0 3
年12
月に合併 しているQマ ネジ ドケア (管理医療),マネジ ドケア組織,HMOについては,中浜 ・バ ンクス( 1 9 9
7)を参照02 4 ) NAI C,1 991 Pr o c e e d i n g s ,Vol . I B,pp. 6 2 8 1 6 3 3 .
2 5 )
従業貞給付管理業務代行会社( Thi r dPa r t yAdmi ni s t r a t o r )とは,保険
料 の徴収や給付金 の支 払 いな ど,従業貞給付 制 度( e mpl o ye e be ne f i t
pl an)の管理業務 を提供する第三者機関である。同社の生成 ・発展 と業務内
容については,Har ke r( 2 0 0 3 )の第1
1章を参照。NA ICは,Thir dPa r t y
Ad mi ni s t r a t o rSt a t ut e
を1 9 7 6
年12
月に制定 し,9 0
年12
月に大幅に改正 して いる。アメ リカにおける民間医療保険の料率規制
3 5
金支払デー タに基づ いてマニュアル料率 を算定 している。他方,そ うでな い保険者は, 多数の保険者の保 険金支払デー タに基づ いてマニュアル料率 を算定 しているo 多数の保険者の保険金支払デー タは,ア クチュア リー会( Soc i e t yofAc t uar i e s )
などの専 門機関によって作成 されている。保 険者は, それぞれの契約 クラスに対 して,別個 のマニュアル料率 を設 定 しなければな らない
( 1 9 9 2
年 モデル規則第6
条A
項( 1 )
を参照)。 また, ある契約 クラスにおいて, それぞれの医療保険につ いて料率 を算定す るさ いに, 同 じ 「被保 険者の特性」 を使用 し, 同 じ方法で 「被保 険者の特性」を適用 しなければならない
( 1 9 9 2
年 モデル規則第6
条B
項( 3)
を参照)0 そして,保 険者は 「健康状態」「保険金支払実績」「契約 の継続期 間」 を 使用 し,マニュアル料率 を割 り増 しまたは割 り引 きす ることによってそれ ぞれの小雇用主の料率 を決定す る。健康状態 ・保険金支払実績 ・契約の継 続期 間による料率 の調整は,個々の従業員 または扶養家族に対 して行 うこ とはで きない。つ まり,料率 の調整 は小雇用主のすべての従業員 と扶養家 族に対 して均一に通用 されなければな らない( 1 9 9 2
年モデル法第6
条A
項( 4 )
を参照)0健康状態 ・保 険金支払実績 ・契約の継続期 間は,被保 険者の特性には含 まれない。小雇用主団体 の 「健康状態」「保険金支払実績」「契約の継続期 間」「これ らに類似 した,健康状態 または保 険金支払実績に関わ るすべ て の特性」 は 「危険特性
( r i s kc har ac t e r i s t i c)
」 と呼ばれる( 1 9 9 2
年 モデル 規則第2
条A
項 を参照)。被保 険者の特性 は,小雇用主の危険特性 に関わ りな く使用 されなければな らない( 1 9 9 2
年 モデル規則第6
条B
項( 3 )
を参 照)0団体 医療保険の保 険期 間は一般 に
1
年 であ り,小雇用主は医療保 険 を毎 年更新す る。「契約の継続期 間( dur at i onofcove r age)
」 とは,新契約加 入時か らそれぞれの契約更新時 までの期 間である。契約の継続期 間の使用 を認めていることは,継続料率方式 を認めていることを意味す る。継続料 率方式( dur at i onalr at i ng)
とは,新契約加入時に料率 を低 く設定 し,契約更新時に料率 を引 き上げる手法である。保 険者が新契約の料率 を低 く設 定す るのは,新契約の引受競争は比較的激 しいためであ り,新契約 に対 し て 「契約前発病の免責」 を適用す ることによって保 険金支払額 を抑制 しう るためである26)。 しか し,保険者が継続料率方式 を悪用す るこ ともあった。
継続料率方式の悪用 とは,契約更新時に リス クが高 くなっている小雇用主 の料率 を大幅に引 き上げ,実質的に契約の更新 を拒否す ることである。
契約 クラス内 と契約 クラス間の料率 の格差に対す る制限および年間の料 率 の引 き上 げに対す る制限 (本章 で後述)は,継続料率方式の悪用 を防止 す ることにある。つ ま り,健康状態 と保 険金支払実績の使用によって生 じ る料率の格差 を抑制す ることによって,新契約に加入す る リス クの低 い小 雇用主 と契約 を更新す る リスクの高い小雇用主 とのあいだで リスクの分散 をはか るこ とにある
。1 9 9 0
年 モデル法 と1 9 9 2
年 モデル法の料率規制に関す る目的の1
つである 「弊害のある料率設定慣行 を防止す ること」 とは, こ のこ とを意味 している。保 険者は,一被保 険者の特性 を使用 してマニュアル料率 を算定す る. モデ ル法は,「産業」 と 「団体規模」以外 の 「被保 険者の特性」の使用 に よっ て生 じる料率 の格差は制限 していない。そ して保険者は, それぞれの小雇 用主の 「危険特性」 を考慮 し,マニュアル料率 を割 り増 しまたは割 り引 き す ることによって料率 を決定す る。モデル法は,同 じまたは類似 した医療 保 険に加入 し,被保 険者の特性が類似 した小雇用主の料率 について,契約 クラス内の最高料率 と最低料率の格差 を 「指標料率
±2 5%
」以 内に,契約 クラス間の指標料率 の格差 を2 0%
以内に制限 している。つ ま り, モデル法 は 「危険特性」の使用によって生 じる料率 の格差 を制限 している。モデル法が許容す る契約 クラス内 と契約 クラス間の最大限の料率格差 を 単純化 した事例 で示す と以下の ようになる。
保険者が設定 しているい くつかの契約 クラスのなかで
, 2
つの契約 タラ2 6 )
「契約前発病の免責( pr e e xi s t i ngc o nd i t i o ne xc l us i o ns )
」については,中浜
( 2 0 0 3 b)
を参照。アメ リカにおける民間医療保 険の料率規制
3 7
スをそれぞれ 「クラスA
」「クラスB
」 とす る。 そ して 「同 じまたは類似 した医療保 険」に加入 し,「被保 険者の特性」が類似 した小雇用主 に対す る 「クラスA
」 と 「クラスB
」のマニュアル料率 (月払保 険料) をそれぞ れ $1 0 0 0 , $1 2 0 0
とす る。 また 「クラスA
」「クラスB
」 ともに,マニュ アル料率 に対す る最大割増率 と最大割引率 を2 5 %
とす る。この場合,「クラス
A
」 と 「クラスB
」の最 高料率 ・最低料率 (‑基礎 料率)・指標料率 は以下の ようになる。クラス
A
最高料率 最低料率 指標料率 クラスB
最高料率 最低料率 指標料率$1 0 0 0 × 1. 2 5‑ $1 2 5 0
$1 0 0 0×0. 7 5‑ $7 5 0 ($1 2 5 0
+ $7 5 0 )÷2‑ $1 0 0 0
$1 2 0 0 × 1. 2 5‑ $1 5 0 0
$1 2 0 0×0. 7 5‑ $9 0 0 ($1 5 0 0+$9 0 0 )÷2‑ $1 2 0 0
したがって,「ク ラス
A
」の最 高 料 率 と最 低 料 率 の格 差 は$1 2 5 0÷
$7 5 0 ≒ 1. 6 7
となる。「クラスB
」の場合 も同 じである。「クラス
A
」 と 「クラスB
」の指標料率 の格差 は$1 2 0 0÷$1 0 0 0 ‑ 1. 2
である。つ ま り, 2
つの契約 クラスの指標料率 の格差は,最大限の2 0%
で ある。 したがって 「クラスA
の最低料率」は全 クラスの料率 のなかで最低 の料率 であ り,「クラスB
の最高料率」 は仝 クラスの料率 のなかで最高の 料率 である。「クラスB
の最高料率」 と 「クラスA
の最低料率」の格差 は$1 5 0 0÷$7 5 0‑2
となる (以上,図1
を参照)0つ ま り, モデル法 は 「同 じまたは類似 した医療保 険」に加 入 し,「被保 険者の特性」が類似 した小雇用主 に対す る契約 クラス内の料率 の格差 を
「 1. 6 7:1
」以 内に,契約 クラス間 (全契約 クラス)の料率 の格差 を「 2:
1
」以内に制限 している。上記の事例 では,マニュアル料率 に対す る最大割増率 と最大割引率 は同 じである。最大割増率 と最大割引率が異なる場合,マニュアル料率 と指標 料率 は一致 しない
。1 9 9 2
年 モデル法 と1 9 9 2
年モデル規則は,マニュアル料2 重
図 1 最大限の料率格差
$1 5 0 0(
最高料率)1 2 5 0(
最高料率)5%
[至 可1 0 0 0
(指標料率)%
7 5 0(
最低料率) クラスA
2 50 / .
$9 0 0(
最低料率)クラスB
率 と指標料率 との轟離幅お よび最大割増率 と最大割引率 については定めて いない (制限 していない)0
「マニュアル料率 ‑ 指標料率」 でなければならないな らば,保 険者が危 険特性 を考慮 して, リスクの高い小雇用主の料率 をマニュアル料率に対 し てかな り高 く設定 しようとして も,「緒標料率
±25%」以内の制 限があ る
ので, リスクの高い小雇用主の料率 をマニュアル料率 の25%超に設定す る ことはで きない。 しか し 「マニュアル料率 ≠指標料率」であるならば, リ スクの高い小雇用主の料率 をマニュアル料率 の25%超に設定す ることがで きる (しか しそのために, リスクの低 い小雇用主の料率 をそれほ ど低 く設 定す るこ とはで きな くなる)。 したが って 「マニュアル料率 ≠指標料率」の場合, リスクの高い小雇用主の料率 をマニュアル料率 に対 して比較的高 く設定 しうるとい う点に保 険者の料率決定の裁量性がある。
た とえば, ある契約 クラスにおいて 「同 じまたは類似 した医療保険」に 加入 し,「被保 険者の特性」が類似 した小雇用主に対す るマニュアル料率
アメ リカにおけ る民間医療保 険の料率規制
3 9
(月払保 険料) を$10 0 0
とす る。 そ して,保 険者はそれぞれの小雇用主の「危険特性」 を考慮 し,マニュアル料率 に対す る最大割増率 を
3 0%,最大
割引率 を10%に設定 した とす るC
この場合,最高料率 ・最低料率 (‑ 基礎料率)・指標料率 は以下のよう になる。
最高料率
$1 0 00 × 1. 3‑ $1 3 0 0
最低料率$1 0 0 0×0. 9‑ $90 0
指標料率
($1 3 0 0+$90 0 )÷2‑ $1 1 0 0
この事例 では, $1
3 0 0÷ $1 1 0 0 ≒ 1. 1 8
,つ ま り最高料率 と最低料率 の格 差 ‑ 指標料率±1 8%とな り,モデル法の要件 を満 た している。
新契約の引受競争は比較的激 しいために,一般に保 険者は新契約の料率 に基礎料率 を通用 している。 なお上記の事例において,保 険者が まず基礎 料率 を$
9 00
(マニュアル料率 に対す る最大割 引率 を10%)に設定 した場
令, モデル法の要件 を満 たす最大限の最高料率 は$1 5 0 0
(マニュアル料率 に対す る最大割増率 は50%)となる。つ ま り保 険者は, リス クの高い小雇 用主の料率 を$15 0 0
まで引 き上 げ る (マニュアル料率 を5 0%まで割 り増
す) ことができる。指標料率 は 「同 じまたは類似 した医療保 険」に加 入 し,「被保 険者 の特 性」が類似 した小雇用主に課 され る料率 について計算 され る料率 である。
したが って,医療保険の種類 と被保 険者の特性が異なるな らば
, 1
つの契 約 クラスにおいてい くつ もの指標料率が存在す る。 さらに, い くつかの契 約 クラスにおいて医療保険の種類 と被保険者の特性が類似 した小雇用主が 存在す る場合,指標料率の格差は20%以内でなければならない。
この ように, モデル法が定め る料率幅方式は きわめて複雑 である。 そこ で, モデル法の要件 (契約 クラス間の指標料率の格差の制限) を満 た して いるか どうか を検査す る場合,州保 険局 (保 険監督 当局)は代替的手法 を 採用 している。すなわち,保 険者はまず, それぞれの契約 クラスか らサ ン プル として最低1
0 0
の小雇用主団体 を無作為 に抽 出す る。次に, それぞれ4 0
表1 契約クラスの事例
クラスA クラスB
地域係数 団体数 指標料率 地域係数 団体数 指標料率
地域
2 1. 0 1 5 $1 0 0 0 0. 9 4 0 $9 0 0
(出典)
NAI C( 2 0 0 2 )
,pA3 .
の契約 クラスの 「総指標料率
( a gg r e ga t ei nde xr at e )
」 を算 出す る。絵 指標料率 は, 当該契約 クラスの仝小雇用主団体 の指標料率 の総和 として算 出され る。そ して, それぞれの総括標料率 の格差は2 0 %
以内でなければな らない。州保険局の検査官は, こうした保険者の 自己検査が適正 に行われ ているか どうか を検査 している。表
1
は,NA iC
が稔措標料率 の検査のために単純化 して示 している契 約 ク ラ ス の 事 例 で あ る。「ク ラ スA
の 総 指 標 料 率」は$1 1 0 0×8 0+
$1 0 0 0×1 5+$9 0 0×5‑ $1 0 7 5 0 0
,「クラスB
の捻指標料率」は$1 2 0 0×
2 0
+ $9 0 0×4 0+$7 0 0×4 0‑ $8 8 0 0 0
である。 したがって,契約 クラス間 の稔指標料率 の格差は$1 0 7 5 0 0÷$8 8 0 0 0
‑1. 2 2( 2 2%)
とな り, モデル 法が定め る2 0%
以内の制 限を満た していないことになる。しか し,「地域」に よる団体 の分布 は, クラス
A
とクラスB
では異 なっ ている。そのために, クラスA
の団体 の絵指標料率 は, クラスB
の指標 料率 によって算 出されなければな らない。「クラスB
の据標料率 によるクラ ス
A
の 団 体 の 捻 指 標 料 率」は $1 2 0 0×8 0+$9 0 0×1 5+$7 0 0×5
‑$1 1 3 0 0 0
であ るo Lたが って 「クラスA
の捻指標料率」 と 「クラスB
の 指 標 料 率 に よ る ク ラ スA
の 団体 の捻 指 標 料 率」の格 差 は$1 1 3 0 0 0
÷$1 0 7 5 0 0‑1. 0 5
とな り,モデル法が定め る2 0 %
以内の制 限 を満 た してい る。アメリカにおけ る民間医療保険の料率規制
4 1
同様 に 「クラスA
の指標料率 に よる クラスB
の団体 の総指標料率」 は$1 1 0 0×2 0+$1 0 0 0×4 0+$9 0 0×4 0‑ $9 8 0 0 0
で あ るo Lた が って 「ク ラスB
の稔指標料率」 と 「クラスA
の指標料率 によるクラスB
の団体 の絵 指標料率」の格 差 は $9 8 0 0 0÷$8 8 0 0 0 ‑ 1.
11とな り, この場合 もモデル 法が定め る2 0 %
以 内の制 限 を満 た してい る。新料率期 間
( n e w r a t i n gp e r i o d )
におけ る料率 の引 き上 げ率 (年 間の 料率 の引 き上 げ率)は,① 前料率期 間の初 日か ら新料率期 間の初 日までの 新 契約 の料率 の変化率,②小雇用主の従業員 または扶養家族の保 険金支払 実績 ・健康状態 ・契約の継続期 間に よる,年 間1 5 %
を上 回 らない調整,③ 医療保 険の変更 または被保 険者 の特性 の変化 に よる調整, の合計 を上 回っ てはな らない( 1 9 9 0
年 モデル法第4
条A
項( 3 )
と1 9 9 2
年 モデル法第6
条A
項 (3)を参照)。つ ま り,更新 す る医療保 険に変更が な く, また被保 険者 の特 性 に変化が ない場合,新料率期 間におけ る料率 の引 き上 げ率 は 「新料率期 間の新 契約 の料 率 × (前科率 期 間 に小 雇 用 主 に通 用 され た危 険割 増 +1 5 %)
」以 内でなければな らない( 1 9 9 2
年 モデル規則第6
条E
項(1)を参照)0しか しこ うした規定 にかかわ らず,引 き上 げ られ る料率 は契約 クラス内の 料率 の格差 に対す る制 限 (「指標料率
±2 5 %
」以 内) を満 た さなければ ならない
( 1 9 9 2
年 モデル規則第6
条E
項( 4 )
を参照)0「新契約 の料率
( n e wbu s i n e s sp r e mi u m r a t e )
」 とは, それぞれの契約 クラスにおいて,料率期 間に,保 障内容 が 同 じまたは類似 した医療保 険に 新規加入 し,被保 険者の特性が類似 した小雇用主 に課 され る保 険料率 であ る( 1 9 9 0
年 モデル法第2
条J
項 と1 9 9 2
年 モデル法第3
条S
項 を参 照)。新 契約 の引受競争 は比較 的激 しいために,一般に保 険者 は新契約 の料率 に基 礎料率 を適用 している。保 険者が新契約 をもはや 引 き受けていない医療保 険の場合,上記の 「(》新契約 の料率 の変化率」は 「当該 医療保 険の保有契 約 の基礎料率 の変化率」 と 「当該 医療保 険に もっ とも類似 した医療保 険の 新契約 の料率 の変化率」 の うちの小 さいほ うとなる( 1 9 9 2
年 モデル規則第6
条E
項( 2 )
を参牌)0「
危険割増( r i s kl o a d )
」 とは,小雇用主 団体 の危険特性 を反映 させ るために小雇用主 に課 され る,基礎料率 に対す る割増率 で ある
( 1 992
年 モデル規則第2
条C項 を参照)。
なお
,NA I
Cは1990
年 モデル法の審議過程 において,前出の団体 医療 保 険料率 審査諮問委貞会 は,19 89
年12
月の報告書 において,年 間の料率の 引 き上 げ率 を 「新 契 約 の料 率+35%」以 内 (
つ ま り 「新 契 約 の料 率 ×1. 35
」以内)に制 限す るこ とを勧告 した27)。 そ して小雇用主団体 医療保 険 料率 審査方法諮問委月会 は,1990
年6月の最終報告書 において,1 990
年 モ デル法 と同 じ 「新 契約 の料率+1 5%」以 内に制 限す るこ とを勧 告 して い
る28)0NA IC
は,年 間の料率 の引 き上 げに対す る制 限につ いて も, よ り 厳 しい制 限に修正 してい る。た とえば, あ る契約 クラスにお いて,前料率期 間に,「同 じまたは類似 した医療保 険」 に加 入 し, 「被保 険者 の特性」が類似 した小 雇用主に対 す るマニュアル料率 (月払保 険料) を
$1 000
とし,保 険者はマニュアル料率 に対す る最大割 引率 を10%,あ る小雇用主に対す る危険割増 を 25%に設定
して い た とす る。 この場 合,基礎 料 率 (‑ 新 契約 の料 率) は$1 000×
0. 9‑ $90 0
, 当該小雇用主の料率 は $9 00 × 1. 25‑ $11 25
となる。そ して,新料率期 間に,保 険者は市場全体 の医療 費上昇 のためにマニュ アル料率 を10%引 き上 げ,マニュアル料率 に対す る最大割 引率 を前料率期 間 と同 じ
1 0%に決定 した とす る。 この場合,基礎料率 (‑ 新 契約 の料率)
は $1 000 × 1. 1×0. 9‑ $990
となる。 そ して, 当該小雇用主 に課 され る最 大 限の危険割増 は,前料率期 間に課 され た危 険割増25%+15% ‑ 40%で
あ る。 したが って保 険者 は, 当該小雇用主 の料率 を $990 × 1. 4‑ $1 386
まで引 き上げ るこ とがで きる。換言す ると, $1 386÷ $11 25 ‑ 1. 232
,つ ま り23. 2%
まで引 き上 げ るこ とがで きる (以上, 図2を参 照 ) 0 1 992
年 モ デル法 と1 992
年 モデル規則は,マニュアル料率 の引 き上 げ率 については定 めていない (制限 していない)02 7 ) NAI C,1 990Pr o c e e di n gs ,Vo l JB ,p . 4 8 8.
2 8 ) NAI C,1 990Pr o c e e d i n gs ,Vol
.II,pp. 6 0 5 1 6 0 6 .
ア メ リカにおけ る民間医療保険の料率規制
4 3
図2
料率の引き上げ23.2%引き
̲
市 子
1 1 2 5( 当該小雇用 の料率)
1 0 %引き上げ 1 0 0 0( マニュアル料率) 0 %
9 0 0(
基礎料率) 前料率期間1 3 8 6
(当該小雇用主の 最高料率)‑2 5 %+1 5 %) 1 1 0 0(
マニュアル料率)0 %
9 9 0(
基礎料率)新料率期間 (注)「最高料率」 と 「指標料率」の記述は省略 している。
上記の事例 では,マニュアル料率 と基礎料率 の引 き上げ率 は ともに1
0%
である。 しか し,新契約の引受競争は比較的激 しいために,保険者は料率 を改定す るさいに基礎料率 の引 き上 げ率 をマニュアル料率のそれ以下に抑 制す ることもある。
保 険者は,別個 の契約 クラスを設定 し,危険特性 (健康状態 ・保 険金支 払実績 ・契約の継続期 間) を使用 し,階層 ・継続料率方式