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雑誌名 明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review

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S.ゲルモン, B.A.ホランド, A.ドリスコル, A.

スプリング, S.ケリガン著 山田一隆監訳 市川 享子, 齋藤百合子, 福井里江, 村上徹也, 中原 美香訳 『社会参画する大学と市民学習―アセスメ ントの原理と技法―』 学文社, 2015年9月, 228

著者 吉井 淳

雑誌名 明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review

International & regional studies

巻 49

ページ 149‑151

発行年 2016‑03‑31

その他のタイトル Gelmon, S.B., Holland, B.A., Driscoll, A., Spring, A. and Kerrigan, S.(2001). Assessing Service‑Learning and Civic Engagement:

Principles and Techniques. translated by

Kazutaka Yamada, Kyoko Ichikawa, Yuriko Saito, Satoe Fukui,  Tetsuya Murakami and Mika

Nakahara, Gakubun‑sha,  2015, 228 pp.

URL http://hdl.handle.net/10723/2691

(2)

明治学院大学『国際学研究』第49号, 149-151, 2016年3月

【書 評】

S.ゲルモン,B.A.ホランド,A.ドリスコル,A.スプリング,S.ケリガン著 山田一隆監訳 市川享子,齋藤百合子,福井里江,村上徹也,中原美香訳

『社会参画する大学と市民学習 ―アセスメントの原理と技法― 』 

学文社,2015 年 9 月,228 頁

(Gelmon, S.B., Holland, B.A., Driscoll, A., Spring, A. and Kerrigan, S. (2001).

Assessing Service-Learning and Civic Engagement: Principles and Techniques.

吉 井 淳

本書の翻訳と出版は快挙である。

全く門外漢の私が本書の批評など出来るはずもな く,また原著を読む時間もなく本書を読み込む力 もない,誤読を含む表面的な内容の紹介であり,

小稿は素人が本書を読んだ感想文以上のものでは ないことを予めご承知頂きたい。

本書出版の目的は,訳者はしがきに明確に述べ られている。訳者はしがきに書かれているように,

近年「大学は,『指導の提供機能をもつ機関』から

『学びの創出をデザインする機関』へと変化が求 められており,知識は獲得から応用へ,指導法は 積み上げ型から共同型へ,学生の学びは受動的か ら能動的へ,」と促されて来ている。社会連携が大 学の存在意義の重要な要素となった今日,教育手 法の変化を内在するサービスラーニングや同様の プログラムにおける効果をアセスメント(評価)

するため,十分に検証された一連の方略を提供」

することを企図し,「わが国のサービスラーニング をはじめとした経験教育,実践知教育が前進し,

学生の学びと成長を増進することに,また,大学 の社会連携・地域連携が地域経済社会に果実をも たらすこと」に貢献したいという願望のもとに訳 された。

本書の構成は,序,アセスメント(評価)の原 則と方略:概説,学生への効果,大学教員への効 果,地域への効果,大学機関への効果,方法と分

析の7つの章と引用・参考文献により構成されて いる。

序では,主に本書の目的,対象及び援用可能性 及び本書の構成について触れられている。

本書の目標は「サービスラーニングをはじめ,

高等教育におけるシビックエンゲージメント(市 民的社会参画)に関する方略が持つ複雑さに対応 してアセスメント(評価)モデルを開発すること」

でありその対象は正課のサービスラーニングであ るが,そのアセスメントの取組みは別種の経験教 育や正課に並行して行われる教育活動や,教員の 職能開発の取組みなどにおいても援用可能である という。

アセスメント(評価)の原則と方略:概説では,

アセスメントの必要性,アセスメントのプロセス,

テーマと課題について解説されている。アセスメ ント(評価)とは,改善のための方略,つまり長 所及び改善すべき領域を見極め,将来のプログラ ム計画を支持するエビデンスを提供できるようデ ザインされた一連の活動であり,アセスメント自 体が価値を付加する日常業務として捉えられるべ きであり,関係者がプログラムの有用性に関する 知見を確認することを通じてプログラムの改善に 向けた多くの機会を見出すことが可能となる。

サービスラーニングの学生への効果を評価する 指標として,地域社会に対する気づき,地域社会

(3)

山田 一隆監訳 齋藤 百合子共訳著『社会参画する大学と市民学習―アセスメントの原理と技法―

への参画,貢献活動に関する関与,多様性に関す る感受性,キャリア開発,科目内容への理解,コ ミュニケーション,自己認識,独立心,多様な先 生の存在に価値をおくことが提案され,学生にも たらされた心理的変容という効果,学生のキャリ ア決定への影響,キャリアで必要となる技能向上 の機会となったかなど,学生の認知発達への効果,

学びの共同体の一員であるという学生自身の理解 を図る概念として提唱されている。これらの項目 についてアンケートやインタビューといった複数 の方法でデータを収集することにより校外学習の ダイナミクスを深く理解できるという。

サービスラーニングはカリキュラムに位置づけ られた科目主導で実施されるものであり,そこに おいては大学教員が重要な役割を果たすと同時 に,この教育手法が大学教員の役割を明確にし,

組織的な支援の必要を洗い出すためにも大学教員 への効果のアセスメントは必要であり,それは大 学教員の動機付けを高めたり専門能力の開発,教 授法の改善などに応用される。

サービスラーニングは地域の参画がなければ成 り立たない。しかし地域への効果のアセスメント には「地域」の意味が多様であることから,政治 的,知的,実践的な特有の困難が存在するが,地 域との互恵的な関係を構築するためには地域が サービスラーニングの効果をどのように認識して いるかを理解することが最も重要なことである。

大学機関への効果をアセスメント(評価)する 理由は,学内での障害を見極め,組織変革の必要 な分野を見定め,大学の関与を促進する手段とな りうるからである。

最後の方法と分析の章では,高等教育における アセスメント(評価)プログラムに共通して用い られる様々な手法,質問紙調査,インタビュー,

フォーカスグループ,観察,刊行物・記録,クリ ティカル・インシデント・リポート,日報につい ての設計,使用,分析について詳細な指針が提供 されている。

本書を読む上で引用・参考文献の後についてい る,訳者解説も大変有益である。

本書を一読して分かることは,本論のすべての

記述がいわば理論と実践の二部により構成されて いて,学生への効果の方略と方法の章で質問紙調 査の雛形が提示されていたり,大学教員への効果 の方略と方法の章でインタビューの手順や授業観 察シート,評価尺度分析手法,質問紙の雛形,地 域への効果では地域における観察の方法,フォー カスグループの手法,インタビューの手順,質問 紙,大学機関への効果の章でも同様の関連した情 報が提供されていることなどが見られるように,

現実の経験・実践に基づいて極めて実践的・実用 的に記述されているように思える。本書の価値は むしろ各章の後半で説明されている方略と方法に あるというべきで,従来評価の対象ではなくまた 評価自体が難しい項目について,それらの効果を 作業の性格に即して評価尺度を提示していること が本書の価値であり,実践を基礎にその経験を理 論化する試みとしては成功しているように思え,

サービスラーニングのアセスメント(評価)に対 する関心の高さに呼応して本書がいまだにその分 野でのベストセラーであることの理由ではないか と思う。

社会貢献が善意によって行われるもので,そこ に評価や,まして単位認定を絡ませるなどもって のほかという社会通念が未だに根強い現在におい て,大学のプログラムとしてサービスラーニング を組織化し,そこに客観的な評価指標を導入する ことはボランティア活動を含むサービスラーニン グに客観性,信頼性を組み込み,カリキュラムと して定着させる有効な方法であると思われる。

米国の書物であることから日本の社会関係にそ のまま応用可能かという観点から読みすすめた が,提案されている方略は優れて汎用性の高い手 法であるように思え,サービスラーニングの包括 的な評価において有効であり,特に大学における 様々な活動,特に経験教育全般に応用が可能であ るように思える。

専門外なので十分には理解できない部分もあ り,例えば「本書におけるキーワード解説」での

「Assessment」についての説明の「本書における

Assessmentは,個人評価ではなく,学習者,教員,

地域,大学が水平的に成果を評価し合うプログラ

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山田 一隆監訳 齋藤 百合子共訳著『社会参画する大学と市民学習―アセスメントの原理と技法―

ム評価を意味している。」とか「形成的で水平的な 作業が発展的に行われる」というところは,私に とっては一度読んだだけではすぐには理解できな い言葉となっている。

読後いくつか考えた点がある。本書で提示され ている評価基準や手法は,評価する主体が既に明 確な評価基準・目的・作業の意義の理解が無けれ ば,素人がこの本を読んでも直ぐに使えるもので はなく,一定の訓練や研修を通して初めて有効な 成果を生み出せるのではないか。また,従来は見 えなかったものを「見える化」する形での評価は,

絶え間のない評価の渦中に大学における高等教育 が晒される危険があり,今後の高等教育が従来の ような長い目で見た目に見えない成果に期待する ことが許されず,より教育産業として資源の有効 活用,目に見える成果の実現を迫られ,このよう な有用なアセスメントの方略の普及が,1991年の

「大綱化」以降の文科省の方針,GP 事業での地 域活性化の重視や COC 事業に対応した教室外活 動の成果の「見せる化」に沿った形で普及してい く可能性を考えると,いささかの危惧を持たざる を得ない。ただ本書の意図はどこまでも前向きで あり,アセスメント(評価)の適切な導入により 学生の学びの向上のみならず,教員,大学,地域 を含む関連主体の改善が意図され期待されてい る。

また,本書は本学関係者である中原美香先生,

市川享子先生,齋藤百合子先生が企画に参画して いる。本学としてこの分野の研究に具体的に貢献 していることの証左であり大変喜ばしいことであ る。

本書はその具体性・実践性から,サービスラー ニングに関わる全ての人に勧めたい書物であり,

本書が提唱する評価手法の導入によりさらに充実 したサービスラーニングを含む各種授業の展開が 期待できるのではないか。

(5)

山田 一隆監訳 齋藤 百合子共訳著『社会参画する大学と市民学習―アセスメントの原理と技法―

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