上越数学教育研究,第
13号
,上越教育大学数学教室,1
998年
,pp・13‑22・解決の進展を促すいくつかの活動 について
一解決者による行き詰ま, り箇所の考察をもとに‑
1 はじめに
「 問題場面の構造」(
Nunokawa,1994)を視 点 とした解決過程 の記述 ・分析を目指 し、筆 者は同一被験者に対 し9回の問題解決を行っ てもらった。そ してその第
2回
(Nunokawa,
1994)、第
3回(
Nunokawa,1997b)、第
5回
(Nunokawa,1997C)、第
7回
(Nunokawa, 1993)、第
8回 ( 布川,
1997)、第
9回 ( 布川,
1996)についての分析 を行い、解決過程に関 してい くつかの知見を得てきた。本稿ではこ の
9回のセ ッシ ョンの うちの第
6回目をとり あげ考察す る。 このセ ッシ ョンでは解決の途 中までは成功的に行われていたが、場合分け された
4つの場合の うち、
3番 目の場合で解 決が行き詰まって しまった。その行き詰ま り が生 じた原因を考察す る とともに、問題場面 の構造 を変化 させ るとい う立場や、他のセ ッ シ ョンか らの知見を参照 しなが ら、解決を促 進 させ る可能性のある活動について考察をし てい く。
2
データの収集および解決の概要
2.1データの収集
本稿で分析 される第
6回の解決では次のよ うな問題が扱われた。
問題 :(Xn),(Yn
)を次の式で定義される整数の 数列とする。
、Xo=1,Xl=1,Xn+1=Xn+2Xn‑1(n=1,2,3
, ・ ・ ・ )
Yo=1,Yl=7,Yr(+)=2Yn+3Yn‑∫(n=1,2,3, ‑)
布川 和彦
このとき、これらの数列の最初のいくつかの
項はX:1,1,3
,
5,ll,21,‑
Y:1,7,17,55,161,487
, ‑
となる。この
2つの数列両方に現れる数は、
1
以外にないことを証明せよ。
( クラムキン
,1991,p.8)解決者にはこれを発話思考法で解いてもらい、
また解決後 にはどのよ うにして考えたかにつ いてのインタビューを行った。それ らを
ATR と
Vm で記録 し、後にプ ロ トコルに変 換 した
(¢ Nunokawa,1994)。
2.2
解決の概要
第
6回のセ ッシ ョンでの解決は、おおよそ 以下のよ うな流れであった。
( i ) 与えられた漸化式を
Xn+1‑βXn= α(X'r βxn‑1)といった形 に直す ことを考え
αと
βの値 を求める。求めた値に従 って
Xnの方の 漸化式 を変形 しているが、 「 解答のように書
くことに して」 として、新 しい紙に変える。
その後、先ほどの
cLと βの値に従い
Xnの漸 化式 と与え られた初期値か ら、
xn+1+Xn=2n'1
ぉよび
xn.1‑2Xn =(
‑1)nl)を導 く。 さ らにこれ らを連立させて解き、
xn=(1/3)(2n+1+(‑1)A‑1)
を得ている
。n=1を代入
LXlの値が合わないことか ら式を見直 し、
xn=(1/3)(2n+1‑(
l
l)n‑1)に修正をする。修正 後
n=1,n=2の場合を代入 してチェックを し、
「 いいね、なってるね」 として
Xnの式を確
認 した。
(ii)Yn
の式を求めても 「 本当に一致 しないの は
1以外だってい うのを示すのは難 しいか な」 としなが らも、
xnの場合 と同じように
して
Ynの計算を始める。Yn
+1+Yn=
8・3nおよ び
Yn+1‑3Yn=
4・(‑1)nを導いた後、これ らを 連立させて解き、
Y乃=2・3n‑(‑1)nを求めてい る。これについてもn =0
,n=2,n=1
,n=3を代 入 して確かめをした。
(iii)
「 何が分かったかってい うと
」として求 めたxn とYn の式を上下にな らべて書いて四 角で囲った後、
Xn=Ynかつn= 1でない
nが存 在するか、 とい う形で問題を定式化 した。そ の途中では、Xn
,Ynが増加することから
、 nより大きければ
xn,Ynが1にな らないといっ た旨の発話が聞かれた。
(iv)
求めた
xnとYnの式が等 しい と置き、さ らに両辺に
3をかけて、2n
'1‑(‑1)A‑L式
・3n‑3(‑1)n
とする。左辺を移項 し、
6を
2・3と 読み替えて2n
+1‑2.3n+1‑(‑1)n‑1‑3(‑i)nj)となるか どうかを考えようとする。 しか し
「 指数方程式解 くのは難 しそ うだか らグラフ で考えてみよう」 として、それ以上の式の変 形は しない。
(V)Xn=(2B)2n+(‑1)n
とし、
Yn=2・3n‑(‑1)Aも改めて書 くが、何かのグラフをか くことは な く、Yn の方が増加率が大きいので 「どん どん離れてい く
」とすればよい と発話 した。
その後、 「 両方に現れる数ってことは、番号 が一致 しな くてもいい」 「とい うことは条件 がきつい」 「 同じ番号 じゃな くてもいいって ところが ミソなんだ」 と発話 した。ここでは 両者の増加率より、同じ番号で一致 しないこ とは自明であ り、それ より番号が一致する必 要がない とい う題意が把握されてお り、問題 の難易度を見なが ら問題文の解釈を調整する 様子 (
Nunokawa,1993b)が見 られる。
勢の系列だけを 「 比べるよりほかない」 と し、両方の数列に現れるとい うことを 「
jp,qs
・
t・Xp=YqJと定式化 した。3Xp=2・
2P+(‑1y'
と3
Yq式 ・3q‑3(‑1)qを比べるようにし、こ のとき
(p,q)=(0,0), (
1,0)だけは除くとした。
しか し特にアイデアはな く 「 一般項求めた方 が有利だ と思ったけどそ うでもない」 と発話 した。3Xpと3
Yqが ともに
3の倍数になる ことに一旦疑問を感ずるが、 「とび とびだっ た らおんなじにな らない可能性ある
」として 納得 した。
(vi)3Xpと3Yq
が等 しい として式をたて、さ らに3Xp か ら3
Yqを引いた ものが 0になる として矛盾を導こうとした。その際
、p,qが ともに偶数の場合をまず考えようとした。こ の場合に式を変形 し、2(
2P‑3・3q‑1)=0とし ( 計算 ミスを含む) 、2
P‑3・3q‑1 が 0になるか を調べ ようとした。その中で 「 偶奇性 くらい じやダメ
」との発話があった。
(vii)y=
2
P‑1とy =
3q')のグラフを図
1のよう にかき、矢印の部分を指 しなが ら
「1離れて いるかもしんない」ので、 「 ダメだ」 とした ( 2 Pと
3q')の差が
1になるか、 とい うことと 混同 していると思われる) 。
図
1 (vi i i )数学的帰納法を 「 ダブルで使 う
」のかとして、 2
P‑3q+1‑1<0を示そ うとするが、
「 正なった り負なった りする 」 のでダメだ と す る。さらに2
P‑3q+1‑1≠0および
2P‑3q'1=1 かどうかに言及するが、特に変形はしな かつた。途中で今考えている式で
p,qが とも に
0のときの数値が合わないことに気づき、
そこか ら( Ⅵ)での計算 ミスに気づいた。
( i x)
(viii)でのミスを直 し、p,
qが ともに偶数のときの式 として、2
P‑3・3q+2を得て、
2
P‑3・3q+2≠0を示せばよい とする。このと きす ぐに 2
P‑3・3q+2=2(2P ‑
1+I)‑3.3qと変形 し、
2・
(2p‑
)+1)が 2を因数に合むのに対 し、
3
・3qは 2 を因数に含まないことより、先の 式が 0にな らないことが証明できた とした。
同様に
p,qが奇数の場合にも
3Xp‑3Yqの式 か ら 2
P‑3・3q‑2の式を得て、これを
2(2P
l1‑1)‑3.3q
と変形することで証明をしている。さ らに
pが奇数
、qが偶数の場合についても念 頭で予想 し、 「 出来た」 と琴話 した。 しか し 実際に式を書いてみると、 2
P‑3・3q+1とな り、
同様の変形ができないことに気づいた。
(Ⅹ)
先の式について、 「 2
P+1が3 で割れるか」
を考える。その際にフェルマーの小定理に言 及するが、具体的に適用することはなかった。
p=3
のとき 2
P+1が
3で割れることに気づき、
3
で割れるか とい う 「 条件が強すぎ」 と発話 した。その後、 2
Pl3・3q+1を 2
P‑3・3q13+4、
2(2P+2)‑3(3q+1)と変形 し( 正 しくは 2 P
l1)、 す ぐに 「 これゼ ロじゃない」 として
pが奇数 で
qが偶数の場合ができた とした
。pが偶数 で
qが奇数の場合にも
、3Xp‑3Yqか ら得 られ る 2
P‑3・3qllの式を
2(2P‑2)‑3(3711)と変形
し、これがゼ ロにな らない として証明を終え た。ここまでで約
82分であった。
(
Ⅹ i )ここでインタビュアーか ら被験者に自分 の解決を説明するよう求めた
。(冗)の箇所を 説明する途中で、その場合には 「 かたっばは
3
の因数だけを含む
」とい う議論が使えない ことに気づき、 「 早 とち りでこれはダメ
」と した。その後
、89分過ぎか ら被験者の方か ら 解決を再開 した。
(Ⅹ益) 「2
の
p乗たす
1が
3を因数に含まないっ てことが言えりやいい」 と言ってす ぐに 「 言 えない」 と発話 した。その後
p奇数
、qが偶 数の場合を計算 し、再び 2
P‑3・3q+1 = 0を得 るが、次に指数
p=2p‑+1,q=2q'とおいて変形 をし
、2.4Pf‑3・9q'+1=0 とした。その後
、pと
qが ともに偶数の場合、および ともに奇数
の場合を見直 した。さらに〆 の範囲を気に するが、 「 整数にする範囲な らいい」
「1は いい」 として
(x i i )前半で書いた式にバツをつ ける。
( x i i i )2
P+1が
3q')と書けないことが言えれば いいとした後で、フェルマーの小定理に言及 しこれを書き下す。しかし 「 使えそ うもない」
として、特に適用することはなかった。
2
P+1の式のあた りを指 しなが ら 「3 の累乗 にこの形がな りそ うもねえ」 と発話 した。こ の時点でインタビュアーが介入 し、解決を終 了させた。所要時間は約
10扮
40秒であった。
2.3
解決過程における問題場面の構造の変化
第6回のセ ッションの問題における問題場 面は、与えられた漸化式で定義 される二つの 数列である。この場面の中に解決者が見てい る要素、要素間の関係、それ らに対 して解決 者が与えている意味が、ここでの問題場面の 構造 となる
(¢ Nunokawa,1994)。
(a)
解決の概要の ( i )と( i i )では、問題文の字 義通 りの構造、つま り与えられた漸化式によ
り定義される数列、というところか ら出発し、
一般項がそれぞれ
xn=(lB)(2n十1‑(‑1)n‑1)、
Yn=2・3n‑(‑1)nとなる数列 とい う構造‑ と変 化 している。
(b)
基本的には
(a)と同じだが、二つの数列 が増加する
、 nが大きい ときには
1とい う値 には戻 らない とい う情報が付加されている。
(C)(iv)
では、二つの数列の
3倍どうしの差 である
2n+1‑2・3n+1‑(‑1)A‑1‑3(‑1)nj)とい う 要素が付加されている。またグラフ‑の言及
より、
Xn,Ynを
nの関数 として意味づけてい る。
(d)(V)
ではそれぞれの数列の増加率 とい う要 素が付加され、
Ynの方が増加率が大きい、
それ故両者は 「どんどん離れてい く 」 とい う 情報が付加されている。また
3Xp,3Yqはと
もに3 の倍数であるが、互いに 「とび とび」
になっているとい う情報 も付加 されいてる。
(e)(
v i)では、それぞれの数列の
3倍の差の 計算 より、 2
P‑3・3q‑1とい う要素を付加 して いる。計算の途 中での(
‑1y'や (
‑1)qの扱い か ら、問題場面に対 して
p,qの偶数、奇数に 応 じた場合分けが考慮 されるようになってい る。
(
i)(e)で現れた 2
P‑3・3q‑1の式の うち、( vi i ) では 2
P‑1と
3.3qの部分が要素 として取 り出 され、さらにそれ らが関数 として意味づけら れている。それ らの関数について
、p,qが実 数を動 くときには、値の差が
1になる箇所が 存在するとい う情報が付加 されている。
(g)
( v ii i )では数学的帰納法を二重に使 うこと より
、p,qに関 しての配列が
(e)とは異なってきている。つま り、特定の
qに対 して全部 の
pを考えるような配列になっている。
(h)(ix)
では、数列の
3倍の差を 2
P‑3・3q+2b
,qは偶数)と意味づけ、さらにその中か ら
2(2P ‑
1+1)と
3・3qという要素が得 られている。この前者は
2を因数に合むが後者は
2を因数 に含まない とい う情報が付加 されいてる。同 様に 2
P‑3・3q‑2(p,qは奇数)とい う意味づけ をし、この中か ら
2(2p ‑
1‑1)と3
・3qの要素 を得ている。 さらに 2
P‑3・3q+I(pは奇数、qは偶数)とい う意味づけを与えている。 この ようにこの段階では、問題場面はpとq が奇 数か偶数かで場合分けされて捉えられている。
(
i)(x)では先の式か ら 2
P+1とい う要素が得 ら れ、これが
3で割 り切れるとい う情報が付加
されている。また 2
p‑3.3q+1の
"+1"を
‑3+4と意味づけ、そこか ら今の式に対 して
2(2P+2)‑3(3q+1)とい う意味づけを与え、
2(2P+2)
と
3(3q+1)とい う要素を得ている。 こ の とき後者について
3だけを因数に合む とい う( 誤った)情報が付加 されていた と思われ る
d同様 に、 2
P‑3・3q‑1( pは偶数
、qは奇数)
に対 して2(
2P‑2)‑3(3q‑1)とい う意味づけを 与え、そ こか ら
2(2P‑2)と
3(3q‑1)とい う要素
を得ている
。(X i )での問題場面の構造は
(x)と同じもの と考えられる。
O')(
x i i )では 2
P+1とい う要素が考えられてい るが、これについての情報は特に付加されて いない。また
pが奇数
qが偶数の場合の式に
2.4P'‑3.9q‑+1=0とい う意味づけが与えられ ている。( x i i i )でも、 2
P+1と
3q+)とい う要素 が考えられているが、特に情報は付加されて いない。
以上より、第
6回のセ ッシ ョンでは、基 本的には、数列が一般項の式により与えられ るとい う情報、お よびそれ らの差 とい う要素 が付加された構造が問題場面に与えられてい る。 これに他の付加的情報が加わって、各時 点での問題場面の構造が構成されている。
3
既有の解法に対する操作 ・修正に基 づく解決促進の可能性
3.1
解決の可能性 と文脈の影響
本稿で取 り上げた事例では、解決者は二つ の数列の奇数番 目の項、偶数番 目の項の組み 合わせにより4 つの場合を区別 し、その うち の二つの場合については、適当な式変形によ りその証明を構成 している。その部分の発話 を見ると、示すべき式を書いた後、3 0 秒ほど 黙って何 もせずにいた後、 「 出来たあ
」とし てす ぐに証明を完成 させている。 これ より、
ここでは、示すべき式 2
P‑3・3q+2に現れている
2カ所の
2を括ることで証明が得 られた も の と考えられる。
p
と
qの一方が奇数で他方が偶数の場合は この方法が使えず、結局証明は完了 していな い。 しか し、クラムキン (
1991)による解答 を参考にす るな らば、彼 の解答を次のように 続けることにより、証明を完了させることが できる。まず
pが奇数、q が偶数の場合に被 験者は、
21
2p‑6・3q +(
‑1yl+3(‑1)q=2・
2p ‑
6・3q+2=2
(
2P‑3・3q+I)とし、 2
P‑3・3q+1が
0になるかを詞べ ようとして行き詰まってい
る。 この とき、 2 P =
o(mod4)、3・3q‑1=‑2 (mod4)( ただ し
p≧2の とき)であること使 えば、● 先の式が 0にな らない ことがわかる。
同様 に、pが偶数、q が寄 数の場合 も、 2
P‑3・3q‑
1が 0にな らない ことが示 され、証明が 完成する。
さらに彼 の解決過程 を見る と、この考え方 に彼が気づ くことのできた契機があった こと がわかる。解決過程の
(x i i )ではp が奇数、
qが偶数 とい う条件を式の中に取 り入れ るため に
、p=2p‑+1,q=2q'を代入 し
、2・ 4
P'‑3・9q'+1=
10としている。一方
、(vi i i )では 2
P‑3q'1‑1≠O
の中の
2Pと
3q+)をそれぞれ指 して
「2の 倍数
3の倍数
」と発話 してお り、また ( i x)で は、 2
P‑3・3q+2=2(2P ‑
1+1)‑3・3qの中の
2(2P ‑
1+l)が
2を因数に合むのに対 し
、3.3qが
2を因数 に含まない ことに言及 している。
この議論 を
2. 4
p‑‑3.9q‑+1=0の式に適用す れば、 「4の倍数 9の倍数
」を考え、 この式 のある部分は
4を因数 に合むが、残 りの部分 は
4を因数 に含まない ことを示そ うとす るこ
とになる。 これはち ょうど上で示 した
mod4に着 目した解決にな り、 この意味で、本稿の 被験者は解決を完遂す る可能性 を持 っていた
と言える。
布川 (
1996)の事例では、解決を完遂する だけの情報や論理の進め方が被験者自身によっ て言及されていなが ら、その時点で解決者が
目指 していた下位 目標 により作 られる文脈の 影響で、それ らが適切 に組み合わされず、解 決に到達できない とい う過程が示されていた。
ここでの考察によれば、本稿の事例において も、同様 のことが生 じていた ことになる。で は今の事例で、適切な組み合わせを阻害 した 原因はどこに求め られ るであろ うか。
先にも述べたよ うに、( i x )で
pと
qが とも に偶数の ときの証明を書 く際には、
「2(2
P ‑
1+
1)は
2を因数に含む
」 「3・3qは
2を因数に含 まない
」としていた。 ところが
(X i )で解決を説明 して もらう際には、次のよ
うに発話 している。
[86:51】‑・2
の倍数引く
3の倍数、って形になるか らこれは絶対にならない、ああ3 の倍数って いうよりももっと、もっと言えば
2の、倍、
2
の倍数引く、
3の何とか乗、だからかたっ ばは
2の、
2を因数に含むんですけど、かたっ ばは
3に因数に含む、
3を、
3だけを因数に 含む、だからこれイコールになるはずない、
ここでは
、3.3qが単に
2を因数に含 まない とい うことだけにとどま らず、それが 「3だ けを因数に含む
」とい う言い方に移行 してい る。確かに 「3だけを因数に含む」 ことは
2を因数に含まない ことの理由にな っている。
しか し
(Xii)で解決を再開 した後では、
2 P‑
1+1が
3を因数に含まない ことを示そ う とし、す ぐに 2 P
l1+1が
3を因数に含み うる ことに気づき、この試みを止めている。さら に( x i i i )では、 2
P+1が
3q+) の形 に書けない と い う言い方に変わ り、終了直前には
「3の累 乗にこの形 【 2
P+1のあた りを指 しなが ら】が な りそ うもねえもんな」 とい う発話 もなされ ている。
つま りここには、式の一部がある特定の因 数 を含 ま● ない とい う条件か ら、式の一部が特 定の数を底 とす る累乗の形に書けない とい う 条件‑の移行が見 られる。このために、
2の 累乗や
3の累乗の形 に書けるか とい う探求‑
と移行す ることとな り、 4や 9といった 2と
3以外の因数に関 してそれを合むか、 とい う 方向‑探求が向か うことが妨げ られた と考え
られる。
さらに先に示 した解答 と比べた ときに、示 された解答では
13・3q+1(qは偶数)が
4を因 数に含 まない とい う性質を用いていたのに対
し、本稿の解決者は
2P‑3・3q+1の式を 2
P+1と
‑3q+
1とい う組み合わせで考察 している。 こ れは、pとq が ともに偶数の ときの証明で、
2
P‑3・3q+2の式の 2
P+2を‑ま とま りとし、こ
れ と
3.3qを対比させ ることで証明が成功 した
ことによるもの と思われる。つま り、以前の
成功 した証明のや り方によ り文脈が作 られ、
それが後の問題場面の意味づけの仕方を固定 して しまっている。
3.2
既有の解法 に対する操作
この文脈か ら逃れることは、新 しい視点で 眺めることで構 えをブレイクす る ( 今井,
1997)こととは異なる と思われる。それは、
当該の式を二つの部分にわけ、それ らに共通 には含まれない因数があることを示す、 とい う解決者が採 っていた方針は、前項で示 し元 よ うに妥当性を持 っているか らである。 しか し一方で、 2
P+1牲p=
3kの ときは
9の倍数に なって しま うので、 2
P+1をひ とまとま りと
して調べ、 これが
9を因数に含 まない とい う ことは言えず、‑3.
3q+1をひ とま とま りに し て考えるよ うに式の捉 え方 を変 える必要があ り、上述のよ うな文脈 の中で考えていること は不適切である。
ところで
C血 relli(inpress)は類似 した一連 の問題に対す る二人の解決者の活動を調べ る ことによ り、解決活動の三つの水準を見出 し ている。それは、課題の類似性 を認識 し適切 な行為の とれ る水準、その適切な行為を新た な場面に適用 した際の困難点が予想できる水 準、そ して予想 される行為 に対 して操作 を施 しそ こか ら推論を導 くことのできる水準 ( 棉 造的抽象)である。
本稿での事例 において
4つの場合のそれぞ れの証明を一連の問題 と見な した とき、
3番
目の場合の証明を考えるにあた り、解決の ( i x)では実行す る以前 に適 当な行為を ( 誤 り なが らも)念頭で予想 した り、あるいは
(Ⅹ)においては、2
p‑3.3q+1を2
p‑3.3q‑3一 山 と読 み替えることを行 ってお り、構造的抽象の水 準を解決者は示 している。 ここではむ しろ、
構造的抽象の水準で、 どの程度 自由な操作が 可能であったかが、問題 となる と考 えられる。
すなわち、式の 2
P+1と3・
3qのそれぞれの部 分が
2や
3を因数 に合むかを考 えることに留
ま らず、式の他のまとめ方を した り、調べる 因数 として他の数を選ぶな どの修正を、
1番 目、
2番 目の場合の証明か ら抽 出されていた と思われる解決活動に施す必要があった。解 法を全 くブレイクす る必要はないが、 しか し そ こに十分な操作が施 される必要はあった と い うことである。
このことは、
1番 目と
2番 目の場合の証明 方法‑の意味づけの仕方にも関係 してい よう。
これ らの証明を、式を二つの部分 に分け、あ る因数が一方には含まれ るが他方には含まれ ないことを示 した、として意味づけるな らば、
証明方法に対 して柔軟に操作 を施 し、二つの わけ方を変えた り、別の因数で試みるな どの 修正の余地があろ う。 しか し証 明方法 を、式 を 2 P+定数 と
3.3qに分け、後者が
3の累乗 であることより前者 と一致 しない ことを示 し た、 として意味づけるな らば、前者が
3や
32を因数に含み うることよ り、前者が後者
と同 じ
3の累乗の形 にな らない ことを示す こ とが 目指 さ̲ れることになる。つま り、式の一 定のわけ方や累乗 とい う観点の制約 の下での 解法の修正 となって しま う。
このことは単にモニタ リングの欠如に帰着 させることはできない。本稿 の被験者である 解決者は、他のセ ッシ ョンで も適度にモニタ リングを行っている ( 例 えば布
川,1997)が、
この第
6回のセ ッシ ョンでも、解決の
(vi )で の計算 ミスについて、( v ii i )ではわか ってい る項の数値 と対比させ ることで 自分の ミスを 見つけている。また、解決の
(x i i )の
95分過 ぎの ところで、
3番 目の場合の証明に行き詰 まった際に、
1番 目お よび
2番 目の証明を振
り返ることを実行 している。
この
(Xii)での振 り返 りは、上で述べた証 明方法‑の新たな意味づ けの機会 とな りうる
ものであった
(1)。しか し、その振 り返 りの
中で確認 している事項は、必ず しも適切 とは
青いがたい。振 り返 りの中では例 えば次のよ
うな発話があった ; 「 分数にな っちやった ら
意味ねえ」 「 整数になるときだけ
」「 整数な るよね、そ、だか らいいんだ」
rpダッシュ の範囲を考える、‑整数にする範囲だった ら いいのか」。これ らより、この振 り返 りにお いては、解決者は式の指数の範囲、特に指数 が負にな らないような範囲に注意を向けてい る。その結果、
1番 目および
2番目の証明の 方針やそのアイデアを反省することは行われ ていない。
なお
、蛭立)で解決を再開 し ,
T 2分ほどして、
p
が奇数
、qが偶数の場合の式を計算 しなお しているが、これはこの場合にも以前の証明 方法が適用できるとい う期待を表す ものであ り、反駁が証明方法ではな く、むしろ式の方 に向けられたものと考えることができよう。
これ も、証明方法 自体を反省の対象 としてい ないことの現れ と考えることができる。
第
3回のセ ッションでは、以前の解決‑の 不適切な意味づけか ら出発 しながらも、問題 場面の表面的な特徴により、意味づけの移行 が起 こっていた
(Nunokawa,1997b)。本稿の 事例でも
、3.1で示 したように、この振 り返
りの時点で扱われていた
2.4P'‑3.9q'+1=0 の式の表面的な特徴に着 目すれば、
4や
9な どの因数に新たな意味づけ‑ と移行できた可 能性はある。 しか し振 り返 りの際の解決者の 注意がこの式の指数にのみ向けられていたこ とが、意味づけの移行を妨げた と思われる。
3.1
で示 したような文脈
から逃れるためには、
既有の解法を振 り返 りの対象にするなど、モ ニタリングの内容が問題 となるが、既有の解 決にどの程度一般的な意味づけをするかの判 断は、実際には容易ではない と予想される。
4
発見法に基づく解決促進の可能性
2. 3のO)か らわかるように
、(xii)で解決 が再開されて以降、そこで問題 となっている 2
p‑3.3q
+1とい う式に関 して、 2
P+1とい う部 分が取 り出される他は、特に新 しい情報は付 加されていない。そこで、ここで解決を促進
するために、この式についての新たな情報を 得るべくその探求を行 うことが考えられるが、
「 考え方」 としてのス トラテジーを試みるこ とは、問題場面の構造の変化を促す可能性が ある( 布川
,1995)。
今の式の中には整数のパラメータが含まれ ていることから、このパラメータに値を代入 して、そこからパタンを見つけるといった発 見法
(schoenfeld,1985)を採用することが考 えられる。実際、本稿の解決者は第
8回のセ ッ ションでは、一般式を扱って解決が進展 しな い場合に、このような発見法を( 成功的 とは 言えないなが らも)用いていた ( 布川 , 1
997) 。
例えば、解決者が最後のところで行き詰まっ た箇所で考えていた 2
P十1と
3.3qについて、
p(
奇数)と
q(偶数)にい くつかの値を入れて みると次のようになる
(2)。
2
P+I:3,9,33,129,513,2049,8193, ・ ・ ・
3・3q:3,27,243,2187,19683,・ ・ ・ これを見ると、共通の
3(これは
p‑1
,q=0の場合で除外されている)以外は、前者は
4の倍数 より
1大きく、後者は
4の倍数より
1小さい数であることがわかる。 しかも後者が
4
の倍数より1 小さい数であることも、数学 的帰納法により証明することができる
(3)。 また、ここで両者が
4の倍数により特徴づけ
られていることか ら、 「4の倍数」を問題場 面の重要な要素 として捉え、それが現れるよ うな式変形を試みる
(¢ Nunokawa,1997b)な らば、例えば、
2・4P'‑3・9qr+1
=
2・4P.‑3・(2・ 4
+1)q'+1とすることで、この式を4 で割った ときの余 りが常に
2になることを示す ことができる。
つま り、具体的な値を生成 しパタンを見つけ ることは、当該の場面において重要な要素に ついての情報を与え、式変形の方向性を示す 可能性 も持っていた と言える。
もしも‑
3.3q+lの部分を考えることができ
たな らば、パタンは一層見やす くなる。今、
3.3qll
の値をい くつか具体的に求めてみると 次のようになる。
3・3q‑1:2,26,242,2186,19682,.・・
これを見ると
、(3・3q‑1)÷2が奇数になるこ とがわか り、 2の累乗の形にはな らないこと がわかるとともに、その
1の位が
1と3 の繰 り返 しになることにも気づ く。さらに、これ が
3.3qの
1の位が
3と7の繰 り返 しになる ことによることがわか り、解決に至ることが できる。
2P+
1をまとまりと見るか
、3・3q‑1をまと ま りと見るか ( あるいは2 Pや
3・3qだけで見 るか)により、数値の間のパタンの見出 し易 さには差が出て くる。またこうしたパタンを 必ず兄いだせるとい うわけではないが、 しか し上述のことより、第
6回のセ ッシ ョンにお いて解決者が行き詰まった際に、整数のパラ l ‑ メータに億を代入 し、数列を具体的に書いて パタンを探す ことは、解決を促進できた可能 性を持っていた と言えよう。またそれ らのパ タンは、式による証明 とは別の証明を与える だけでな く、解決者が考えていた式の変形の 方針をも示 しうるもt のであることがわかる。
5
問題場面の探求 による解決促進 の可 能性
本稿の事例では、二つの数列の一般式の差 がゼ ロにならないことを示すという下位目榛、
さらには差がゼ ロにな らないことを示すため に、式を二つの部分に分け因数の含み方の違 いを示す とい う下位 目榛で解決を進め、行き 詰ま りを見せている。布川 (
1996,1997)によ れば、こうした場合、問題場面 自体の探求に 戻ってみること、あるいは大局的再構成を生 じさせることが行き詰ま りの解消になる可能 性がある。そこで、本稿の事例についてもそ の可能性を考えてみる。
2. 3で述べた ように、第
6回のセ ッション の問題の問題場面は、与えられた漸化式で定
義 される二つの数列である。 これについて、
それぞれの数列の一般項が求められている。
一般項の式は問題場面に解決者が働きかけて 得 られた新たな情報であるが、これは自然に 問題場面自体を構成する原理 としても機能す るようになると考えられる。また、一般項の 差を調べる中で、(
‑1)nの項の扱いなどか ら、
項数が偶数か奇数かで二つの数列の関係に違 いがあることが、見出されてきていた。特に、
行き詰ま りが生じていた時点では、
Xnが奇 数番 目、
Ynが偶数番 目の場合が問題になっ ていた。そこで、一般項に基づき、かつ項が 奇数番 目か偶数番 目かに依 りなが ら、数列を 生成することは、解決の中で場面について得 られた情報を、逆に構成原理 として用いて問 題場面を再構成することになると考えられる。
実際に、
Xn=(1β)(2m+1‑(‑1)A‑1)と
Yn=2・ 3n‑(
ll)nの式を元に、
Xnの奇数番 目の項、
Yn
の偶数番 目の項を生成 してみると次のよ うになる。
Xn‑・.1,5,21,85,341,1365,・・・
Yn :1,17,161,1457,13121,・・・
これを見ると、例えば、いずれの数列も
4の 倍数 よりも
1だけ大きくなっていることに気 づ く。両者は一致する項がないことか ら、
4の倍数の位置に違いがあると考え、それぞれ どのような
4の倍数に
1を加えた ものかを探 ると、
xnの方が
4×(奇数) +
1の形である のに対 し、
Ynの方は
4×(偶数) +
1の形で ある( 4 ) ことがわか り、これは数学的帰納法 により証明される。
xnと
Ynがある数の倍 数 と同じ関係を持ちなが ら、かつその系列の
中で同じ位置には出現 しない とい うことは、
解決の
(V)で
3Xbと
3Yqが ともに3 の倍数 と な りなが ら、 「とび とび」に現れるので一致 しない と考えたことにより、支持 され うるで あろ う。同様に、
Xnの偶数番 目の項 と
Ynの 奇数番 目の項についても、前者が
4×(奇数)
‑1
、後者が
4×(偶数)
‑1の形 となること
がわかる。なお、言 うべき主張を数学的帰納
法で示す とい うアイデアは、2.
2の( v ii i )にお いて解決者 自身によっても言及されている。
なお上のことに従えば、Xn,
Ynはそれぞれ
4(2k+I)+1,
4(21)+1と書け、さらにこれは
8k+5,8l+1となることか ら、註
3に示すクラ
ムキン(
1991)による一つの解決に見える
一一8‑‑とい う数が現れることがわかる。 この
8によっ て解決者が考えていた
2.4P'‑3.9q'+1とい う 式を見直す と、
2.4P'‑3.9q‑+1=8
.4P.‑1‑3(8+1)q''