審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 細永 真理 審査論文
題 名:Expression of CD24 is associated with HER2 expression and supports
HER2-Akt signaling in HER2-positive breast cancer cells (HER2陽性乳癌に おいてCD24の発現はHER2の発現と相関しかつHER2-Aktシグナルを 支持する)
著 者:Mari Hosonaga, Yoshimi Arima, Eiji Sugihara, Norio Kohno, Hideyuki Saya 掲載誌:Cancer Science 2014 Apr 23. Doi: 10.1111/cas.12427. (Epub ahead of print)
(審査論文要旨:日本語論文の場合1,000字以内・英語論文の場合500 words)
【背景と目的】
HER2陽性乳癌の治療には抗HER2薬剤が用いられ、これらトラスツズマブ・ラパチニブなど により細胞生存シグナルとして知られるPI3K-Akt-MAPK pathwayのシグナルを抑制すること ができる。しかしながら、治療中の抗 HER2 療法に対する耐性の出現が臨床上の問題点とな っている。一方、CD24の過剰発現は様々な癌腫で報告されており、乳癌においては予後不良 との関連も報告されている。またHER2陽乳癌ではCD24陽性の癌細胞が多いことがしられて おり、これらのことからHER2とCD24の発現には相関関係があることが示唆される。
【方法】
HER2とCD24の相関関係を明らかにするため、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレ セプター、HER2の発現を認めないトリプルネガティブ乳癌細胞231-LucにHER2遺伝子の導 入を行った。2種類の HER2陽性乳癌細胞株を樹立し、それぞれ 63.2%、92.4%のHER2 陽性 細胞を含むこれらの細胞株をHER2-60、HER2-90と命名し、HER2の発現およびHER2を介し た下流シグナルの活性化を評価した。
【結果】
HER2陽性乳癌細胞株のHER2-60、HER2-90において、トリプルネガティブ乳癌231-Lucと比 較しCD24の発現上昇がみられた。フローサイトメトリーを用いた解析では、CD24陽性細胞 の割合がHER2陽性細胞群において著しく高い傾向が、HER2陽性乳癌細胞株であるBT-474、
HCC202、SKBR3、HCC1569でみられた。BT-474細胞において、CD24の発現抑制を行ったと ころHER2の発現も同時に抑制された。一方、HER2の発現抑制に対してはCD24発現には変 化がみられなかった。CD24の発現抑制により、細胞生存シグナルとして知られるHER2-PI3K 経路の下流分子である Akt のリン酸化も抑制されていた。さらに、CD24 の発現抑制と
EGFR/HER2 阻害剤であるラパチニブ療法を併用することで、HER2 陽性乳癌の薬剤に対する
感受性を高めることができた。
【結論】
CD24はHER2の発現を安定化させ、下流シグナルであるPI3K-Akt経路の活性化を支持する。
さらに抗HER2療法の治療耐性にCD24が関与している可能性もあり、HER2陽性乳癌に対す る新たな治療戦略の標的となり得る。
東 京 医 科 大 学