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就 業 規 則 に 関 わ る 法 思 想 と 理 論 の 変 遷

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Academic year: 2021

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(1)

研 究 ノ ー

前 お よ び 戦 中 に お け る 就 業 規 則 法 制 の 法 史 的 研 究

就 業 規 則 に 関 わ る 法 思 想 と 理 論 の 変 遷

高 橋 賢 司 一

問 題 の 所 在 就

業 規 則 の 法 制 に つ い て は

︑ 戦 後 労 働 基 準 法

︑ 労 働 契 約 法 を 通 じ て

︑ 現 行 法 の 法 制 が と ら れ る よ う に な っ た が

︑ 戦 前 の 法 制 を 承 継 し て い る と い わ れ る

︒ 就 業 規 則 の 作 成 義 務 や 必 要 的 記 載 事 項

︑ 就 業 規 則 の 周 知 義 務 が

︑ い か な る 経 緯 で

︑ い か な る 立 法 趣 旨 の 下 で

︑ 戦 前 に お い て

︑ 法 制 度 化 さ れ て い っ た の か

︒ 法 史 が

︑ 単 な る 法 規 定 の 旧 法

・ 現 行 法 の 文 言 の 比 較

︑ 法 案 の 比 較 に と ど ま ら ず

︑ 法 の 精 神 と そ の 歴 史 を 明 ら か に す る の を 役 割 と す る と 考 え る

︒ 従 来 の 先 行

研 究 が あ る に も か か わ ら ず

︑ こ の テ ー マ を 研 究 す る の は

︑ 就 業 規 則 の 法 制 を め ぐ っ て も

︑ 立 法 趣 旨 の み な ら ず ︑ 法 の 性 格

︑ 歴 史 的 な 背 景 や 法 全 体 の 精 神 を 明 ら か に し つ つ

︑ 労 働 基 準 法 の 原 型 を な し た 戦 前 の 法 制 の 成 り 立 ち と 変 遷 を 明 ら か に し よ う と す る か ら で あ る

︒ と り わ け

︑ 国 家 総 動 員 法 の 下 で 制 定 さ れ て い っ た 勅 令 等 を 通 じ て

(2)

制 が 一 つ 一 つ 形 作 ら れ る が ︑ 単 な る 文 言 の 比 較 の み な ら ず

︑ 歴 史 的 な 経 緯 や そ の 法 体 系 全 体 を 検 討 し な が ら

︑ い か な る 意 味 が あ っ た の か の 考 察 が 不 可 欠 で あ る

︒ ま た

︑ こ う し た 法 史 的 な 発 展 は

︑ 理 論 の 歴 史 で も あ る は ず で あ る た め

︑ 就 業 規 則 を め ぐ る 法 制 に 対 す る 見 解 や こ の 問 題 に 関 す る 学 説 が 一 定 の 役 割 を 果 た し て い る と 思 わ れ る

︒ 先 行 研 究 は

︑ い ず れ も

︑ 就 業 規 則 法 制 の 法 規 定 の 文 言 上 の 比 較 を 中 心 に 研 究 が 行 わ れ て い る が

︑ 理 論 的 な 発 展 を た ど る こ と も

︑ 重 要 で は な い か と 思 わ れ る

︒ と り わ け ︑ 就 業 規 則 の 法 的 性 質 に 関 し て は

︑ 第 二 次 世 界 大 戦 後 に お い て

︑ 学 説 が 形 成 さ れ て い っ た が ︑ 戦 前 よ り い か な る 学 説 が 形 成 さ れ て い た か を 見 定 め る こ と は

︑ 重 要 で あ る ︒ 戦 前 の こ れ ら の 理 論 的 な 形 成 を た ど る こ と で

︑ 法 制 度 の 違 い に も か か わ ら ず ︑ い か な る 見 解 が 戦 後 の 労 働 法 の 学 説 に 継 承 さ れ て い っ た の か を 検 討 す る ︒ 戦 前 の 学 説 に つ い て は ︑ 従 来 一 定 の 検 討 が 行 わ れ て い

る が

︑ よ り 詳 細 に 検 討 ︑ 考 究 し よ う と 考 え る

︒ こ れ に よ り

︑ 戦 後 の 学 説 の 発 展 し た 点 も 明 ら か に な っ て い く

︒ さ ら に

︑ 法 史 的 な 考 察 が ︑ 単 な る 法 制 度 と 法 理 の 時 系 列 的 な 羅 列 で 終 わ ら な い た め に は ︑ 歴 史 的 な 起 源 か ら 明 ら か に な る

︑ 現 行 法 や 法 理 の 限 界 を あ ら わ に す る 作 業 が 必 要 で あ る ︒ 現 行 法 も 時 代 の 精 神 に よ る 制 約 を 受 け る に せ よ ︑ 現 代 の 精 神 や 法 制 か ら み て ︑ か つ て の 法 思 想 や 法 制 の 限 界 点 を 探 る と い う

︑ 法 史 的 な 考 察 を 行 う こ と に は

︑ 一 定 の 意 味 が あ る と 思 わ れ る

︒ 以 上 の よ う な 問 題 意 識 の 下 に

︑ 本 論 文 で は

︑ 1 戦 前 か ら 戦 中 に か け て の 就 業 規 則 法 制 を た ど り

︑ そ の 立 法 の 趣 旨 と 経 緯 を 明 ら か に す る

︒ そ し て

︑ 2 就 業 規 則 の 法 的 性 質 を め ぐ る 学 説 の 論 争 を 検 討 す る

︵ 戦 中 に は

︑労 働 法 理 論 の 形 成は 退 潮 傾 向を た ど るた め

と り わ け

︑ 工 場 法 施 行 令 が 改 正 さ れ た の ち の 大 正

・ 昭 和 初 期 に こ れ ら の 理 論 的 な 発 展 の 考 究 は 遡 る こ と に な る

︒ 3 さ ら に

︑ 戦 時 体 制 と 就 業 規 則 法 制 を 検 討 す る

︒ な か で も

総 動

(3)

の 賃 金 統 制 令 な ど 勅 令 の 数 々 を 概 観 し つ つ

︑ い か な る 思 想 と 歴 史 的 な 背 景 の 下 に

︑ 就 業 規 則 法 制 が 形 作 ら れ て い っ た か を 検 討 す る ︒ 特 に

︑ こ の 過 程 は

︑ 議 会 の 協 賛 権 の 限 界 を 露 呈 し て い る と 思 わ れ る と と も に

︑ 労 働 者 の 自 由 が 国 家 に よ っ て 制 約 さ れ て い く 過 程 で も あ る ︒ 法 全 体 の 精 神 や 労 務 に 関 わ る 法 体 系 を 明 ら か に し な が ら

︑ 就 業 規 則 法 制 が 持 っ て い る 意 味 を 探 る こ と も 必 要 で あ る

︒ 4 そ の う え で

︑ 最 後 に

︑ 労 基 法 と 労 契 法 と 比 較 し つ つ ︑ 歴 史 的 な 起 源 か ら 明 ら か に な る

︑ 現 行 法 や 法 理 の 限 界 を 明 ら か に し よ う と 試

み る

︒ 二 戦 前 か ら 戦 中 に か け て の 就 業 規 則 法 制

鉱 業 法 上の 就 業 規 則

鉱 業 条 例

︵明 治 二 三年 九 月 二六 日 法 律第 八 七 号

に よ り

︑ 第 六 章 に ﹁ 鉱 夫

﹂ の 章 を 置 き

︑ 鉱 山 監 督 制 度 を 設 け た

︒ 賃 金 通 貨 払 原 則 を 定 め

︵六 九 条

﹁ 鉱 夫 自 己 ノ 過 失 ニ 非 ス シ テ 就 業 中

﹂ に 負 傷 し た 場 合 の 診 察 費 ・ 療 養 費 の 支 給

・ 日 給 の 支 払 い

・ 埋 葬 料

・ 遺 族 手 当 の 支 給 等 を 定 め た

︵ 七 二 条︶

︒ ま た

︑ 雇 用 契 約 の 解 約 時 の 一 四 日 以 前 の 予 告

︵六 五 条

鉱 夫 の 退 職 の 自 由

︑ 退 職 時 の 使 用 証 明 書

︵ 六八 条

を 定 め て い た

︒ さ ら に

︑ 明 治 三 八 年

︵一 九

〇 五 年︶

に 鉱 業 法 が 制 定 公 布 さ れ

︑ 施 行 さ れ た

︒ 鉱 業 法 に は

︑ 鉱 業 労 働 の 保 護 に 関 す る 規 定 が 盛 り 込 ま れ て い る ︒ 鉱 業 権 者 と 鉱 業 に 使 用 さ れ る 鉱 夫 と の 法 律 関 係 は

︑ 私 法 上 の 雇 用 契 約 と 捉 え ら

れ る

︒ 別 に 鉱 夫 労 役 扶 助 規 則 が 定 め ら れ て い た ︒ 農 商 務 大 臣 は ︑ 鉱 夫 の 年 齢 ︑ 就 業 時 間 ︑

﹁ 婦 女

︑ 幼 者 の 労 働 ノ 種 類 ヲ 制 限 ス ル コ ト ヲ 得

七 九 条

ま た ︑

﹁ 鉱 業 権 者 ハ 毎 日 一 回 以 上 期 日 ヲ 定 メ テ 通 貨 ヲ 以 テ 鉱 夫 ニ 其 ノ 賃 金 ヲ 支 払 フ へ シ ﹂

︵ 七 八 条︶

と 通 貨 払 原 則 を す で に 定 め て い る

︒ こ の ほ か

︑ 解 雇 に つ い て は

︑ ﹁

(4)

於 テ ハ 其 ノ 請 求 ニ 因 リ 雇 用 ノ 種 類

︑ 技 能 ︑ 賃 金 及 解 雇 ノ 事 由 ヲ 記 載 シ タ ル 証 明 書 ヲ 与 フ ヘ シ

﹂ と 解 雇 に あ た っ て の 証 明 書 の 交 付 も 義 務 づ け ら れ て い る

︵七 七 条

︒ 鉱 業 条 例 で は

︑ ﹁ 鉱 業 権 者 ト 鉱 夫 ト ノ 間 ニ 特 別 ノ 約 定 ナ キ 場 合 ニ 於 テ 双 方 ト モ 十 四 日 以 前 ニ 通 知 ス ル ト キ ハ 雇 役 ノ 解 約 ヲ ス ル コ ト ヲ 得

六 五 条︶

と 定 め ︑ ま た ︑ 鉱 業 権 者 が ﹁ 何 時 タ リ ト モ 鉱 夫 ヲ 解 雇 ス ル コ ト ヲ 得

︵ 六 六 条

︑ 鉱 業 権 者 が

﹁ 何 時 タ リ ト モ 其 ノ 雇 役 ヲ 罷 ム ル コ ト ヲ 得

﹂ と 定 め る

︵ 六 七 条︶

︒ 鉱 業 法 は

︑ 就 業 規 則 の 遵 守 義 務 を 採 掘 権 者 に 求 め て い る

︒ 鉱 業 法 七 五 条 に お い て

︑ ﹁ 採 掘 権 者 ハ 鉱 夫 ノ 雇 用 及 労 役 ニ 関 ス ル 規 則 ヲ 以 テ 定 メ 鉱 山 監 督 署 長 ノ 許 可 ヲ 受 ク ヘ シ ﹂ と 定 め る

︒ こ れ に よ り

︑ 採 掘 権 者 は

︑ 就 業 規 則 の 作 成 義 務 を 負 う と と も に

︑ 鉱 業 開 始 前 に ︑ 鉱 山 監 督 局 長 に 許 可 を 申 請 す る こ と が 必 要 と な る ︒ 鉱 業 法 施 行 細 則 六 四 条 で は

︑ ﹁ 鉱 業 法 第 七 十 五 条 ノ 規 定 ニ 依 リ テ 定 ム ヘ キ 鉱 夫 ノ 雇 用 及 労 役 ニ 関 ス ル 規 則 ニ ハ 左 ニ 掲 ケ ル 事 項 又 ハ 之 ニ 相 当 ス ヘ キ 事 項 ヲ 定 メ 鉱 業 ニ 着 手 ノ 日 ヨ リ 三 十 日 以 前 ニ 差 出 シ テ 許 可 ヲ 受 ク ヘ シ 其 ノ 之 ヲ 変 更 シ タ ル ト キ 亦 同 シ 一 業 務 ノ 種 類

解 雇

及 各

於 ケ

払 期

ノ 就

並 其

方 法

其 ノ

ニ 関

(5)

七 年 令 及 婦 女

︑ 幼 者 ノ 労 役 ニ 関 ス ル 制 限 八 賞 罰 ノ 定 メ ア ル ト キ ハ 其 ノ 事 項

﹂ と 定 め ら れ る

︒ 同 六 七 条 に お い て は

︑ ﹁ 鉱 業 権 者 ハ 便 宜 ノ 方 法 ヲ 以 テ 鉱 業 法 中 鉱 夫 ニ 関 ス ル 規 定

︑ 鉱 夫 ノ 雇 用 労 役 ニ 関 ス ル 規 則 及 扶 助 規 則 ヲ 鉱 夫 ニ 告 知 ス ベ シ

﹂ と 規 定 さ れ る

︒ 就 業 規 則 の 作 成 義 務

︑ 告 知 義 務 等 を 定 め て お り

︑ の ち の 就 業 規 則 法 制 の 原 型 を な し て い る

︒ 許 可 制 を 採 用 し て い る 点 も 特 徴 的 で あ る

︒ こ う し た 就 業 規 則 の 法 的 性 質 に つ い て は

︑ 美 濃 部 教 授 は

︑ 鉱 業 権 者 が 就 業 規 則 を 定 め る の は

︑ 国 家 か ら 興 え ら れ た 自 治 権 に 基 づ く も の で は な く

︑ ま た

︑ ﹁ 国 家 的 高 権 の 作 用 で は な く

︑ 私 の 事 業 主 と し て の 私 権 の 作 用

で あ

﹂ る

︒ こ れ は

︑ 単 独 行 為 と い う 私 法 上 の 法 律 行 為 で あ る と 説 い て

い る

︒ こ れ に 対 し て ︑ 規 則 の 法 的 性 質 は

︑ 契 約 で あ る と 捉 え る 見 解 は ︑ 当 時 か ら 存 在 し て

い た ︒ 一 方 の 当 事 者 が 他 方 当 事 者 に 服 す る の は

︑ そ の 承 諾 に よ る 外 は な い と い う も の で

あ る

︒ 美 濃 部 教 授 は ︑ こ う し た 契 約 の 約 款 と 捉 え る 説 の よ う に 契 約 と 捉 え る 説 に 対 し て は

︑ ﹁ 人 格 者 相 互 の 関 係 で あ る と の 思 想 に 拘 泥 し て

﹂ ︑ 事 実 を か え り み な い 見 解 で

あ る と 批 判 し て い る

︒ 採 掘 権 者 が 相 手 方 の 同 意 な く 変 更 で き る と い う 性 格 が

︑ 契 約 の 性 質 と は 相 い れ な い と し て

10

い る

2 工 場 法 下の 就 業 規 則法 制

明 治 二

〇 年

︵ 一 八 八七 年

に 職 工 条 例 案 を 脱 稿 し た が 発 表 に 至 ら ず

︑ 明 治 三

〇 年

︵ 一 八 九七 年

の 職 工 法 案 を 修 正 し た 明 治 三 一 年

︵ 一 八九 八 年

の 工 場 法 案 が 明 ら か に な る ︒ し か し

︑ 工 場 法 は

︑ 後 退 を 余 儀 な く さ れ

︑ ﹁ 法 案 要 領

﹂ 策 定 を 経 て

︑ 明 治 四 二 年

︵ 一 九

〇九 年

に 帝 国 議 会 に 提 出 さ れ た

(6)

い ︑ い っ た ん は 撤 回 を 余 儀 な く さ れ た

︒ 工 場 法 が 制 定 さ れ た の は ︑ 明 治 四 四 年

︵ 一 九 一 一 年

で あ

11

っ た ︒ 施 行 は 大 正 五 年

︵ 一九 一 六 年︶

で あ る

︒ 同 年 に は

︑ 工 場 法 施 行 令

︑ 工 場 法 施 行 細 則 等 が 公 布 さ れ る

︒ 工 場 法 の 制 定 理 由 と し て ︑ 立 法 作 業 に 直 接 携 わ っ た 農 商 務 省 参 事 官 工 務 局 長

12

岡 実 氏 は ﹁

﹁ 工 場 設 備 ノ 不 完 全 ニ 基 ク

13

モ ノ

﹂ ︑

﹁ 職 工 ノ 不 当 使 役 ニ 基 ク モ ノ

﹂ ︑

㈢ ﹁ 身 体 生 命 及 幸 福 ヲ 保 全 セ シ ム ル ヨ リ 生 ス ル 社 会 上 及 政 治 上 ノ 利 益 ハ 茲 ニ

︵コ コ ニ

言 ス ル ヲ 須 ヰ サ ル 所 ナ リ

﹂ と 述 べ て い る

︵ 筆者 が 一 部仮 名 を ふっ て

14

い る︶

︒ 内 務 省 社 会 局 に お い て 労 働 行 政 に 関 わ っ た と さ れ る 北 岡 氏 は

︑ 制 定 の 諸 理 由 を 説 明 し て い る

︒ 第 一 に

︑ ﹁ 人 道 的 感 情

﹂ と

﹁ 憐 愍 の 情

﹂ か ら ︑ 労 働 者 の 境 遇 の 向 上 を 希 っ た と 述 べ て

15

い る

︒ 職 工 事 情 に お い て 織 物 工 場 に お け る 女 工 の 労 働 状 況 が 世 論 の 同 情 を 招 い た と さ れ る

︒ 第 二 に

︑ 労 働 者 の 幸 福 そ の も の を 目 的 と す る

﹁ 社 会 公 正 の

16

思 想 ﹂ で あ る と 説 く

︒ 生 産 技 術 が 進 化 し ︑ 富 の 生 産 力 を 増 し て い る 状 況 の な か で ︑ 労 働 者 の 境 遇 が 劣 悪 で あ る の は

︑ 社 会 公 正 の 原 理 に 反 す る と 述

17

べ る

︒ 工 場 法 が 労 働 条 件 の 最 低 限 度 を 定 め

︑ 労 働 者 の 労 働 条 件 が 最 低 限 を 下 回 る の を 防 ご う と す る も の で

18

あ る

︒ 工 場 法 は

︑ 常 時 一 五 人 以 上 の

19

職 工 を 使 用 す る 工 場

︵ 大 正 一 二 年 の 改 正 に よ り 一

〇 人 以 上 に 拡 張

お よ び 一 五 歳 未 満 の 年 少 者 と 女 子

︵ こ の両 者 を 保護 職 工 と い う

と 職 工 と を 対 象 と し ︑ 保 護 職 工 に 対 し て

︑ 最 長 労 働 時 間

︵拘 束 一 二 時 間

︑ 大 正 一 二 年 の

20

改 正 に よ り 一 一 時 間 に

︑ 深 夜 業

21

禁 止

︵午 後 一

〇 時

〜 午 前 四 時

︑ 大 正 一 二 年 の 改 正 に よ り 五 時 ま で と 改 正

危 険 有 害 業 務 へ の 就 労 禁 止 等 の 規 制 が 導 入 さ れ て い た ︒ 労 働 契 約 規 制 に 関 し て は

︑ 雇 入 の 際 に 工 業 主 と 職 工 が 交 わ す

﹁ 契 約 書

﹂ に 関 し て

︑ ﹁ 如 何 ナ ル 条 件 ノ 契 約 書 ニ モ 所 謂 ﹃ 盲 判

﹄ ヲ 捺 ス

﹂ ﹁ 不 当 ノ 条 件 ヲ 列 記 シ テ 之 ヲ 約 諾 セ シ ム ル ノ 形 式 ニ 甘 ン セ ン ト ス

﹂ と 指 摘 さ れ て

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い る ︒ し か る に

︑ 工 場 法 案 が 策 定 さ れ た が

︑ 就 業 規 則 に 関 す る 規 定 は 盛 り 込 ま れ な か

23

っ た

政 府

政 策

け ︑

(7)

こ れ に 対 す る 国 民 の 不 満 を 工 場 法 な ど の 労 働 保 護 立 法 に よ っ て 吸 収 し て い

24

っ た

︒ 労 働 問 題 に 対 し て

︑ ア メ と ム チ の 規 制 手 法 を と っ て い た と い え る

︒ 鉱 業 条 例 六 四 条 二 項

︑ 鉱 業 法 七 五 条

︑ 鉱 業 法 施 行 細 則 六 四 条 を 経 て

︑ 大 正 一 五 年 の 工 場 法 施 行 令

︵大 正 一 五 年 六 月 五 日 勅令 一 五 三 号︶

︑ 就 業 規 則 に 対 し て 国 家 的 な 介 入 を 行 っ て

25

い く

︒ 同 施 行 令 で は 次 の よ う に 規 定 さ れ て い る

︒ 工 場 法 施 行 令 第 二 十 七 条 ノ 四 常 時 五 十 人 以 上 ノ 職 工 ヲ 使 用 ス ル 工 場 ノ 工 業 主 ハ 遅 滞 ナ ク 就 業 規 則 ヲ 作 成 シ 之 ヲ 地 方 長 官 ニ 届 出 ツ ヘ シ 就 業 規 則 ヲ 変 更 シ タ ル ト キ 亦 同 シ 就 業 規 則 ニ 定 ム ヘ キ 事 項 左 ノ 如 シ 一 始 業 終 業 ノ 時 刻

︑ 休 憩 時 間

︑ 休 日 及 職 工 ヲ 二 組 以 上 ニ 分 チ 交 替 ニ 就 業 セ シ ム ル ト キ ハ 就 業 時 転 換 ニ 関 ス ル 事 項 二 賃 金 支 払 ノ 方 法 及 時 期 ニ 関 ス ル 事 項 三 職 工 ニ 食 費 其 ノ 他 ノ 負 担 ヲ 為 サ シ ム ル ト キ ハ 之 ニ 関 ス ル 事 項 四 制 裁 ノ 定 ア ル ト キ ハ 之 ニ 関 ス ル 事 項 五 解 雇 ニ 関 ス ル 事 項 地 方 長 官 必 要 ト 認 ム ル ト キ ハ 就 業 規 則 ノ 変 更 ヲ 命 ス ル コ ト ヲ 得

﹂ 工 場 法 施 行 規 則 に お い て ︑ 周 知 に 関 す る 条 文 が 置 か れ て い る

︒ 一 二 条 工 業 主 ハ 就 業 規 則 ヲ 適 宜 ノ 方 法 ヲ 以 テ 職 工 ニ 周 知 セ シ ム ベ シ 工 場 主 ハ 始 業 及 終 業 ノ 時 刻 並 休 憩 及 休 日 ニ 関 す る 事 項 ヲ 各 作 業 場 ノ 見 易 キ 場 所 ヘ 掲 示 ス ヘ シ

(8)

就 業 規 則 の 作 成 義 務

︑ 行 政 官 庁 へ の 届 出 義 務

︑ 必 要 的 記 載 事 項 の 法 定

︑ ﹁ 地 方 長 官 必 要 ト 認 メ ル ト キ ﹂ の 変 更 命 令 ︑ 使 用 者 の 周 知 義 務 を 課 し て い た

︒ こ の 理 由 に つ き

︑ 工 場 法 施 行 令

︑ 同 施 行 規 則 改 正 案

26

要 綱 で は

︑ 次 の よ う に 説 明 さ れ て い る

︒ 就 業 規 則 ヲ 制 定 セ シ ム ル ハ 職 工 ノ 就 業 ニ 関 ス ル 諸 条 件 及 之 ニ 伴 フ 規 律 ノ 内 容 ヲ 明 ニ シ 之 ヲ 職 工 ニ 了 知 セ シ メ 工 場 作 業 ノ 進 行 ノ 円 満 ヲ 期 セ シ ム ト ス ル モ ノ ナ リ

﹂ と ︒ 北 岡 氏 は

︑ ﹁ 労 働 者 の 権 利 義 務 を 確 定 し 雇 用 契 約 の 不 完 全 不 明 瞭 よ り 来 る 多 く の 争 を 除 か ん

27

と す

﹂ と 提 案 理 由 を 説 明 し て い る

︒ 江 藤 氏 は

︑ こ う し た 規 定 に つ い て 次 の よ う に 述 べ て い る

︒ 労 働 者 ハ 一 般 ニ 無 知 ニ シ テ 労 働 契 約 ニ 際 シ 特 ニ 如 何 ナ ル 事 項 ヲ 明 確 ニ ス ヘ キ ヲ 知 ラ サ ル モ ノ 多 シ

﹂ ︑

﹁ 賃 金 及 業 務 ノ 種 類 ノ 外 何 事 ヲ モ 顧 ル コ ト ナ ク

︑ 軽 々 ニ 雇 用 ヲ 諾 ス ル ヲ 通 常

28

ト ス

﹂ ﹁ 労 働 契 約 事 項 ノ 脱 漏

︑ 不 明 確 及 不 当 ヲ 防 キ ︑ 因 テ 以 テ 雇 用 者 労 働 者 間 ノ 紛 議 ヲ 除 キ

︑ 労 働 者 ノ 利 益 ヲ 保 護 ス ル ノ 必 要

29

ア リ

﹂ と 捉 え る

︒ 労 働 条 件 と 規 律 内 容 を 明 ら か に す る た め に こ の よ う な 規 定 が 置 か れ た こ と が 説 か れ て い る 点 は 重 要 で あ る

︒ 北 岡 氏 に よ れ ば

︑ 就 業 規 則 の 監 督 方 法 と し て

︑ 行 政 官 庁 が 監 督 す る 方 法 と 職 工 が 関 与 し 意 見 陳 述 さ せ る 方 法

︑ 協 議 す る 方 法 が あ る が

︑ ﹁ 意 見 を 開 陳 す る の 機 会 を 興 ふ べ き の 規 定 を 設 く べ し と は 社 会 局 の 内 外 に 於 て 相 当 主 張 せ ら れ た 所 で あ る が ︑ 未 だ 其 の 時 期 に 非 ず と し て 規 定 す る に 至 ら な か つ た と

30

聞 く ﹂ と 述 べ て い る

︒ 意 見 聴 取 義 務 等 労 働 者 側 の 参 加 を 促 す 法 制 を と る こ と ま で は で き な か

31

っ た

︒ 一 九 一 九 年

︵ 大 正 八年

に は

︑ 改 正 工 場 法 施 行 令 に お い て

︑ 常 時 五

〇 人 以 上 の 職 工 を 使 用 す る 工 場 主 に 対 し て 工 場 委 員 会 の 設 置 を 義 務 づ け る 労 働 委 員 会 制 度 が 内 務 省 社 会 局 に よ っ て 提 案 さ れ て い る

︒ 労 働 委 員 会 要 綱 を 策 定 し

(9)

労 働 委 員 会 法 案 を 作 成 し

︑ 非 公 式 に 発 表 し た

︒ 次 の よ う な 内 容 で あ る

︒ 労 働 委 員 会 法 案 要 綱 常 時 五 十 人 以 上 ノ 労 働 者 ヲ 使 用 ス ル 事 業 ニ 在 リ テ 一 企 業 組 織 ニ 於 テ 本 法 ニ 依 リ 労 働 委 員 会 ヲ 設 置 ス ル コ ト ヲ 得 労 働 委 員 会 ノ 区 域 共 通 ノ 利 害 ニ 関 ス ル 左 記 事 項 ニ 関 シ 企 業 者 ニ 其 ノ 提 議 ヲ 為 ス モ ノ ト ス 賃 金 就 業 時 間 及 休 憩 ニ 関 ス ル 事 項 作 業 規 則 ニ 関 ス ル 事 項 危 険 防 止 及 傷 害 ニ 関 ス ル 事 項 保 険 衛 生 及 風 紀 ニ 関 ス ル 事 項 教 育 及 慰 安 ニ 関 ス ル 事 項 互 助 及 救 済 ニ 関 ス ル 事 項 能 率 増 進 ニ 関 ス ル 事 項 其 他 労 働 者 ノ 福 利 増 進 ニ 関 ス ル 事 項 労 働 委 員 会 ノ 労 働 者 ノ 選 挙 ニ 依 ル 五 人 以 上 十 五 人 以 下 ノ 選 出 委 員 ト 其 ノ 数 ヲ 超 エ ザ ル 指 名 委 員 ニ 依 リ 組 織 ス ル モ ノ ト ス

﹂ ︒ こ れ を 受 け て ︑ 九 年 三 月 に は

︑ 東 京 府 工 場 懇 話 会 が 工 場 協 議 会 を 設 置 し

︑ 鉄 道 院 に 国 有 鉄 道 現 業 委 員 会 が 設 立 さ れ た

︒ ほ か に

︑ 八 幡 製 鉄 所 を は じ め と し て 民 営 企 業 に 二 一 の 委 員 会 が 設 置 さ

32

れ た

︒ し か し ︑ 労 働 組 合 が な い な か

︑ 労 使 の 争 議 を 防 ぐ た め 労 使 協 議 の 場 が 設 け ら れ た こ と を 意 味 し て い る

︒ 団 結 権 を 否 定 す る た め に 設 け ら れ た こ と に

33

な る

︒ と こ ろ が ︑ 労 働 省 編 ﹃ 労 働 行 政 史 第 一 巻

﹄ に よ れ ば

︑ 労 使 の 平 和 で は 満 足 せ ず

︑ 労

使

立 が

(10)

っ た

︒ こ の た め ︑ 一 一 年 に 四 件 の 新 設 を 見 た が

︑ こ れ 以 上 に は 発 展 し な か

34

っ た

3 就 業 規 則の 法 的 性 質︵ 大 正

・昭 和 初 期︶

就 業 規 則 の 法 的 性 質 に つ い て は

︑ 数 多 く の 学 説 が 存 在 し て い る ︒ 工 場 法 施 行 令 第 二 十 七 条 ノ 四 が 施 行 さ れ る 頃 か ら ︑ 就 業 規 則 の 法 的 性 質 を め ぐ る 議 論 が 盛 ん に お こ な わ れ て い る ︒ こ の 時 期 に お け る 就 業 規 則 の 法 的 性 質 に つ い て 以 下 検 討 し て い く

⒜ 法 例 二 条 説 社 会 規 範 と み て 法 例 第 二 条 に 基 づ い て 法 規 範 性 を 認 め る 末 弘

35

教 授 の 学 説 は ︑ 使 用 者 の 一 方 的 作 成 変 更 に 関 す る 権 限 に 理 論 的 な 基 礎 を 与 え る も の と な っ て い る

︒ こ の 見 解 は

︑ 法 例 二 条

﹁ 公 ノ 秩 序 又 ハ 善 良 ノ 風 俗 に 反 セ ザ ル 慣 習 ハ 法 令 ノ 規 定 ニ 拠 リ テ 認 メ タ ル モ ノ 及 ビ 法 令 ノ 規 定 ナ キ 事 項 ニ 関 ス ル モ ノ ニ 限 リ 法 律 ト 同 一 ノ 効 力 ヲ 有 ス

﹂ と い う 規 定 に 根 拠 を 求 め る

︒ 末 弘 教 授 は

︑ ﹁ 本 条 は 実 に 裁 判 所 が 社 会 的 規 範 の 一 種 で あ る

﹃ 慣 習

﹄ に 国 家 的 な S a n ct io n

を 興 え

﹂ た も の で あ り

︑ 慣 習 や 慣 習 法 と 呼 ば れ る も の の 中 に は

︑ ﹁

﹃ 社 会 的 規 範 と し て の 法

﹄ が

⁝ 含 ま れ

﹂ る と 説 か

36

れ る

︒ こ れ は

︑ 社 会 的 な 規 範 と い う の に す ぎ ず

︑ 国 家 的 な

﹁ 法 規 ﹂ と い う も の と は 異 な っ て

37

い る

︒ こ の 見 解 は

︑ 戦 前 に お い て

︑ 就 業 規 則 に 関 す る 法 制 度 が 十 分 で は な か っ た 時 代 に

︑ 社 会 的 規 範 と し て の 性 格 と 慣 習 と い う 側 面 に 着 目 し

︑ 就 業 規 則 に 法 的 な 拘 束 力 を 認 め さ せ よ う と し た も の で あ る

︒ し か し

︑ 国 家 が 法 律 に よ っ て 制 定 手 続 に 干 渉 し た と し て も

︑ そ の 制 定 機 関 が 国 家 機 関 の 一 種 で は な い な ら ば

︑ 就 業 規 則 は

︑ ﹁ 社 会 的 な 規 範

﹂ に す ぎ な い と 強 調

38

す る

︒ 就 業 規 則 に 裁 判 上 拘 束 力 が あ る と さ れ る の は

︑ ﹁ 社 会 的 規 範 と し て の 拘 束 力 が 国 家 に 依 っ て

S a n ct io n

﹂ を 与 え る の に す ぎ な い と

39

説 く

︒ こ の 拘 束 力 の 根 拠 を

︑ 職 工 の

﹁ 知 乃 至 承 認

﹂ に 求 め る べ き で は

40

な く

︑ そ れ は

承 認

す る

(11)

と 契 約 説 を 批 判

41

す る

︒ 実 際 問 題 と し て は ︑

﹁ 工 場 主 の 専 権

﹂ に 基 づ い て 成 立 し た 就 業 規 則 は

︑ ﹁ 立 派 に 強 行 さ れ て い る ﹂ と 捉 え ら れ る か ら で

42

あ る

︒ 就 業 規 則 が 工 場 事 業 場 に お い て 長 期 継 続 し て 妥 当 し て い る の で あ れ ば

︑ 慣 習 を 通 じ て 社 会 規 範 と な っ て い る と い う の は 理 解 で き る も の で あ る

︒ ま た

︑ 法 規 制 の な い 中 で 規 範 的 な 拘 束 力 を 認 め さ せ よ う と す る と い う ︑ 工 夫 を め ぐ ら せ た 見 解 で あ る と 思 わ れ る

︒ し か し

︑ 就 業 規 則 上 の 規 定 が 初 め て 労 働 者 に 対 し て 適 用 さ れ る 場 合 に は

︑ 拘 束 力 が 生 じ な い の だ ろ う か

︑ と い う 問 題 点 は あ り う る

︒ ま た

︑ 就 業 規 則 を 変 更 し た 場 合 に も

︑ 同 様 で ︑ 変 更 後 た だ ち に

︑ そ の 拘 束 力 が 生 じ う る の か

︑ と い う 疑 問 が 生 じ る

︒ ま た

︑ 就 業 規 則 の 変 更 が ︑ 使 用 者 の 意 の ま ま に 可 能 に な り

︑ 裁 判 所 す ら

︑ 何 も か か る 変 更 に 対 し て 干 渉 し え な い こ と に な る

︒ ま さ に

︑ 一 方 的 な 決 定 と い う 性 格 を そ の ま ま 反 映 さ せ て し ま う ︑ と い う 問 題 点 が あ る

⒝ 法 規 説 平 野 教 授 は

︑ ﹁ 従 業 規 則 は 近 世 法 に 於 け る 意 味 の ﹃ 身 分 関 係

﹄ を 生 ず べ き 法 律 規 範 で あ る

﹂ と

43

説 く ︒ 企 業 の 労 働 組 織 に つ い て

︑ 集 団 が 自 ら 律 す る よ う な 統 制 を 行 う ︒ 一 定 の 権 利 義 務 を 生 じ さ せ る が 故 に ︑ か か る 規 則 は

︑ 法 律 的 規 範 で あ る と 説 か

44

れ る

︒ 当 時 の 法 制 で は

︑ 地 方 長 官 の 変 更 権 が あ る の を 考 え る と

︑ ﹁ 国 法 た る の 性 質 ﹂ を 有 し て い る と 指 摘 さ

45

れ る

︒ 規 則 の 本 質 に 合 致 す る 最 も 妥 当 な 見 解 で あ る と こ れ を 支 持 す る 見 解 も

46

あ る ︒ 契 約 説 に 対 し て は

︑ 従 業 規 則 の 内 容 に つ い て 意 思 の 合 致 が あ っ た と い う が ︑ 実 際 上 は

︑ そ の よ う な 合 意 が あ る の は ︑ ほ と ん ど 皆 無 で あ る と 批 判 す る

︒ 雇 入 れ 後 に 初 め て 内 容 を 知 る の が 通 常 で あ る し

規 則

を 知

(12)

働 す る 場 合 も あ る と

47

い う

︒ こ れ に 対 し て も

︑ 就 業 規 則 の 変 更 が

︑ 使 用 者 の 意 思 通 り に 実 現 し て し ま う こ と に な り

︑ 裁 判 所 が

︑ か か る 変 更 に 対 し て 干 渉 し え な い こ と に な り

︑ 一 方 的 な 決 定 と い う 性 格 を そ の ま ま 反 映 さ せ て し ま う

︑ と い う 問 題 点 が あ る

︒ こ の 点 は 社 会 規 範 と 考 え る 説 と 同 様 で あ る ︒

⒞ 契 約 説 附 合 契 約 で あ る と す る 説 が 存 在 し て

48

い た

︒ 杉 山 教 授 は

︑ 附 合 契 約 の 特 徴 と し て は

︑ ﹁ 有 償

49

契 約

﹂ で あ り

︑ 特 段 の 信 義 を 要 す る

50

契 約

︑ 権 力 へ の

51

従 属 で あ り ︑

﹁ 定 型

52

取 引 ﹂

︑ ﹁ 多 数

53

取 引

﹂ ︑

﹁ 非 集 団

54

契 約

﹂ で あ る と 説 く

︒ こ れ に よ れ ば ︑ 附 合 契 約 で は

︑ 公 衆 は 素 人 で あ り

︑ 無 抵 抗 で あ り

︑ ﹁ 劣 弱 者

﹂ と

55

な る ︒ そ の 場 合

︑ 組 織 の 支 配 的 な 権 力 が 強 く

︑ 濫 用 と な る 危 険 性 が 伴 う た め

︑ 信 義 誠 実 の 責 務 の 実 現 と な る 所 と

56

す る

︒ 附 合 者 は

︑ 組 織 の 業 務 の 本 旨 遂 行 に 必 要 な 範 囲 に お い て 服 従 す る 義 務 が あ る と す る

︒ そ し て

︑ 不 特 定 人 に 対 す る 提 供 行 為 と な る と 説 く

︒ ﹁ 支 配 権 力 に 相 応 す る 水 準 以 上 の 信 義 の 責 務

︵ 但 し 此 決 定 は 具 体 的 妥 当 性 に 依 る 外 は な い

の 遵 奉 を 要 求 し ︑ 其 責 務 背 反 の 場 合 に は 之 に 因 て 生 じ た る 不 均 衡 を 平 衡 の 正 常 状 態 に 回 復 す る を 要

57

す る

﹂ と 述 べ る

︒ こ れ に よ り 利 害 の 調 整 が 図 ら れ る こ と に な り

︑ ﹁ 真 正 の 契 約 自 由 の 境 地 に 達

58

す る ﹂ と す る

︒ そ れ が

﹁ 提 供 組 織 其 も の の 繁 栄 の 唯 一 の

59

長 計

﹂ に 通 じ る と す る

︒ 契 約 条 件 の 規 制 が

︑ 契 約 上 の 合 意 に 基 づ く と み る こ と は 困 難 だ と し て も

︑ 附 合 の 必 要 は 否 定 で き な い と

60

す る

︒ 包 括 契 約 説 と し

︑ ﹁ 両 当 事 者 の 包 括 的 共 同

61

意 思

﹂ に 根 拠 を 求 め る

︒ そ し て

︑ 労 働 契 約 は

︑ 狭 義 の 附 合 契 約 で は な い が ︑ 広 義 の 附 合 契 約 で あ る と 指 摘

62

す る

︒ 美 濃 部 教 授 が 説 く 単 独 行 為 説 に 対 し て も ︑

﹁ 開 示 を 要 件 と す る

﹃ 不 可 動 条 項 の 提 供

﹄ に 対 す る 包 括

63

承 認

﹂ に よ り

(13)

と 述 べ る

︒ こ れ に 対 し て ︑ 北 岡 氏 は ︑ 就 業 規 則 を 契 約 の 約 款 と 捉 え て 意 思 表 示 と 捉 え る の は

︑ 事 実 に 反 す る し ︑ 規 則 が 工 場 主 の 一 方 的 意 思 表 示 に よ っ て 変 更 さ れ る と い う 事 実 を 説 明 で き な い と 批 判 し て

64

い る

︒ こ う し た 附 合 契 約 説 に 対 し て

︑ 同 じ 契 約 説 に 立 ち な が ら も

︑ 契 約 草 案 説 が 唱 え ら れ る

︒ 労 働 者 が 就 業 規 則 に 拘 束 せ ら れ る の は

︑ 明 示 又 は 暗 示 に て 之 に 同 意 し た る が た め で

65

あ る

﹂ ︒ つ ま り ︑ 使 用 者 が 就 業 規 則 を

﹁ 契 約 草 案 と し て 提 示 し て 雇 用 の 申 込 を

66

な す

﹂ ︒ こ れ に 対 し て

︑ 労 働 者 が

﹁ 之 に 対 し て 明 示 又 は 黙 示 の 承 諾 を 興 へ る

︒ そ こ に 契 約 が 成 立

67

す る

﹂ と 指 摘 さ れ て い る

︒ 自 ら

﹁ 契 約 草

68

案 説 ﹂ を 称 し て い る

︒ 就 業 規 則 の 提 示 を 使 用 者 が 怠 る と き が あ る の で あ る が

︑ 労 働 者 は

︑ ﹁ そ の 提 示 を 要 求 す べ き で も あ る が

︑ も し 要 求 せ ざ る に 於 て は

︑ 彼 は 包 括 的 に 承 認 し て 居 る も の と 解 せ ぬ ば な

69

ら ぬ

﹂ と 説 き

︑ ﹁ 雇 用 契 約 に 於 て 之 を 一 般 的 債 権 契 約 の 場 合 と 同 じ く

︑ 個 々 に つ い て 契 約 案 の 内 容 を 吟 味 す る こ と は

︑ 事 実 問 題 と し て 不 可 能 を 強 ふ る こ と で も

70

あ る

﹂ と し て い る

︒ 労 働 者 は

︑ 採 用 に あ た っ て 応 募 を 行 う が

︑ そ の 応 募

︑ つ ま り

︑ 雇 入 申 込 行 為 が

︑ ﹁ 工 場 の 契 約 条 件 を 包 括 的 に 承 認 し た と 解 す る が ゆ え に

︑ 之 を 提 示 し な い こ と を 以 て 違 法 と は 考 へ て 居

71

な い ﹂ と 述 べ て い る

︒ 行 政 の 許 可 が 必 要 と し ︑ そ の 違 反 に 対 し て 罰 則 が 適 用 さ れ る と い う の は ︑ 就 業 規 則 が 国 法 で あ る こ と の 証 で あ る と 述 べ て

72

い る

︒ こ の 説 で は

︑ 就 業 規 則 は 契 約 草 案 に す ぎ ず

︑ こ れ に 明 示 又 は 黙 示 の 承 諾 を 労 働 者 が 付 与 す る こ と に よ り

︑ 就 業 規 則 の 拘 束 力 が 生 じ る と す る ︒ 採 用 に あ た っ て の 応 募 が こ こ で い う 承 諾 に あ た る こ と に な る と す る

︒ こ れ に よ り

︑ 就 業 規 則 に お け る 契 約 条 件 に 包 括 的 に 承 諾 を 与 え た と 構 成 す る

︒ そ の 契 約 条 件 が 細 部 に わ た っ て 周 知 さ れ て い な か っ た と し て も

そ の

拘 束

さ せ

拠 に

い と

る ︒

(14)

こ の 説 に よ る と

︑ 採 用 に お け る 申 込 を 労 働 者 が し た だ け で

︑ 就 業 規 則 に お け る 契 約 条 件 に つ い て 同 意 が あ っ た と す る の は

︑ や や 無 理 も あ る ︒ ま た

︑ 就 業 規 則 に お け る 契 約 条 件 の 不 知 を 問 わ な い 論 理 構 成 を と っ て い る ば か り か

︑ そ の 契 約 条 件 の 認 識 可 能 性 す ら 採 用 の 段 階 で は な い に も か か わ ら ず

︑ 採 用 段 階 で の 申 込 み を 以 て 同 意 を す る の は

︑ や や 論 理 的 な 飛 躍 が あ る よ う に も 思 わ れ る

︒ 契 約 説 に 立 つ と し な が ら も

︑ こ れ で は

︑ 法 規 説 が 一 方 的 な 決 定 と と ら え る の と あ ま り 大 差 が な く な る の で は な い か と 思 わ れ る

︒ 三 戦 時 体 制 と 就 業 規 則 法 制

産 業 報 国運 動 と 国 家総 動 員 法

・ 二 六 事 件 後

︑ 労 使 協 調 に よ る 軍 需 生 産 の 増 強 を は か る た め 各 企 業 内 に 設 立 さ れ た 労 働 組 織

︑ 産 業 報 国 会 が 生 ま れ た

︒ 労 使 一 体

︑ ﹁ 産 業 報 国

﹂ を ス ロ ー ガ ン と し て 軍 需 生 産 に 協 力 さ せ る 産 業 報 国 運 動 が 進 行 し た ︒ 一 九 三 八 年

︵ 昭 和 一三 年

︑ 協 調 会 に 時 局 対 策 委 員 会 が 設 け ら れ

︑ 軍 部

︑ 官 庁

︑ 民 間 労 務 関 係 者 ︑ 労 働 組 合 代 表 に よ っ て

︑ ﹁ 労 使 関 係 調 整 方 策 ﹂ が 話 し 合 わ れ

︑ 労 使 関 係 調 整 法 策 要 綱 が 決 定 さ れ た

︒ こ の 後

︑ 労 資 は 産 業 に お け る 職 分 を 通 じ て 国 に 奉 仕 す る と い う 理 念 の 下 で

︑ 各 事 業 場 を 単 位 と し て 産 業 報 国 会 が 結 成 さ れ た

︒ 一 九 三 八 年

︵ 昭 和 一 三 年

末 に は 事 業 場 数 の 一 割 余 に あ た る 一 一 五 七 件 の 設 立 を

73

み た

︒ 一 二 年 末 か ら 一 三 年 末 ま で の 間 に ︑ 二 万 人 が 労 働 組 合 を 解 体 し た と さ

74

れ る ︒ 政 府 は

︑ 一 九 三 九 年

︵ 昭 和 一 四 年

産 業 報 国 運 動 を 戦 時 労 働 行 政 の 根 幹 と す る と し た ︒ 労 働 組 合 は 解 散 す る か

︑ 産 業 報 国 に 積 極 的 に 協 力 す る か の 選 択 肢 を 迫 ら れ た

︒ ド イ ツ の ポ ー ラ ン ド 侵 略

︑ 第 二 次 近 衛 内 閣 で の 新 体 制 運 動 の 開 始 に よ る 政 友 会 等 の 政 党 解 党 と い う 状 況 を 受 け て

組 合

主 的

余 儀

る ︒

(15)

総 同 盟 が 同 年 七 月 に 解 散

︑ 日 本 労 働 組 合 会 議 も 解 散 し た

︒ 一 九 四 〇 年

︵ 昭和 一 五 年︶

︑ 政 府 は 勤 労 新 体 制 確 立 要 綱 を 決 定 し

︑ 全 国 組 織 と し て 大 日 本 産 業 報 国 会 を 発 足 さ せ た

︒ こ れ に よ っ て

︑ 労 働 組 合 の 自 主 的 な 団 結 は 否 認 さ れ

︑ そ の 活 動 は 国 家 的 な 統 制 の 下 で 排 除 さ れ た ︒ 産 業 報 国 会 は

︑ 六

〇 四 九 五 事 業 場 に 設 立 さ れ

︑ 四 八 一 万 五 四 七 八 人 の 会 員 を 擁

75

し た

︒ 労 働 組 合 運 動 の 消 滅 を 余 儀 な く さ れ た ︒ こ う し た な か ︑ 一 九 三 七 年

︵昭 和 一 二 年

に は

︑ 労 務

︑ 資 本 ︑ 施 設

︑ 物 価 等 国 民 生 活 の あ ら ゆ る 部 門 を 勅 令 に よ っ て 政 府 の 統 制 下 に 置 く こ と を 求 め た 国 家 総 動 員 法 が 制 定 さ れ た

︒ 同 年 九 月 か ら は

﹁ 八 絋 一 宇

﹂ ﹁ 挙 国 一 致

﹂ 等 の 標 語 の も と に 国 家 精 神 総 動 員 運 動 が 開 始 し て い た

︒ 同 法 は

︑ 戦 争 の 進 展 に よ る 人 的 資 源 の 不 足

︑ 軍 需 生 産 の 要 請 の た め

︑ 労 働 力 の 国 家 統 制 を 行 う

︒ 人 的

︑ 物 的 な 資 源 の 統 制

・ 動 員 ・ 運 用 を 行 う 目 的 で あ っ た

︒ 国 家 総 動 員 法 は

︑ 四 条 に お い て 国 民 の 徴 用 を 定 め る

︒ 政 府 ハ 戦 時 ニ 際 シ 国 家 総 動 員 上 必 要 ア ル ト キ ハ 勅 令 ノ 定 メ ル 所 ニ 依 リ 帝 国 臣 民 ヲ 徴 用 シ テ 総 動 員 業 務 ニ 従 業 セ シ ム ル コ ト ヲ 得 但 シ 兵 役 法 ノ 適 用 ヲ 妨 ゲ ズ

﹂ と 定 め る

︒ 戦 時 に 際 し て 人 的 資 源 の 統 制 上 必 要 が あ る と き は ︑ 国 民 を 徴 用 し て 総 動 員 業 務 に 従 事 さ せ る 趣 旨 で

76

あ る

︒ 同 法 は

︑ 六 条 に お い て

︑ 労 務 統 制 に つ い て 次 の よ う に 定 め て い る

︒ 政 府 ハ 戦 時 ニ 際 シ 国 家 総 動 員 上 必 要 ア ル ト キ ハ 勅 令 ノ 定 ム ル 所 ニ 依 リ 従 業 者 ノ 使 用

︑ 雇 入 若 ハ 解 雇 又 ハ 賃 金 其 ノ 他 ノ 労 働 条 件 ニ 付 必 要 ナ ル 命 令 ヲ 為 ス コ ト ヲ 得

﹂ と 定 め る

︒ こ れ に よ り

︑ 一 定 の 従 業 者 の 使 用

・ 雇 入 れ を 制 限 ・ 禁 止 を 命 令 に よ り 行 え る

︒ 例 と し て ︑ 不 要 不 急 産 業 の 使 用

・ 雇 入 れ の 制 限

︑ 一 定 の 労 務 資 源 に つ い て の 使 用

・ 雇 入 れ の 制 限 等 が あ り

77

う る ︒ ま た

︑ 解 雇 は 事 業 所 に 支 障 を 生 じ さ せ る も の で あ る の で

︑ 解 雇 に つ い て 届 出 を 要 す る 趣 旨 で

78

あ る

︒ さ ら に ︑ 賃 金

︑ そ の 他 の 労 働 条 件 に つ い て は

︑ ﹁

(16)

務 需 給 調 整 及 び 労 働 力 維 持 増 強

﹂ の た め 重 要 で あ る こ と か ら

︑ ﹁ 総 動 員 上 必 要 な 措 置 を 取 り う る

﹂ と さ

79

れ た

︒ 同 法 は

︑ 七 条 に お い て は ︑ 争 議 の 制 限 ︑ 禁 止 を 定 め る ︒

﹁ 政 府 ハ 戦 争 時 ニ 際 シ 国 家 総 動 員 上 必 要 ア ル ト キ ハ

︑ 勅 令 ノ 定 ム ル 所 ニ 依 リ 労 働 争 議 ノ 予 防 若 ハ 解 決 ニ 関 シ 必 要 ナ ル 命 令 ヲ 為 シ

・ ・ 労 働 争 議 ニ 関 ス ル 行 為 ノ 制 限 若 ハ 禁 止 ヲ 為 ス コ ト ヲ 得

﹂ ︒ こ れ に よ り

︑ 争 議 行 為 が 禁 止 さ れ る こ と は あ ま り な か っ た が

︑ そ の 代 わ り に

︑ 調 停 に 付 さ れ る こ と に な

80

っ た

︒ こ れ に よ り

︑ ﹁ 労 働 力 の 保 全 と 培 養 が 国 家 の 重 大 な 関 心 事 と な り

︑ 疑 似 労 働 保 護 法 が 要 請 さ れ る こ

81

と に

﹂ な っ た ︒ 国 家 総 動 員 法 の 四 条 に 基 づ き

︑ 国 民 徴 用 令

︵ 昭和 一 四 年七 月 八 日 勅 令 第 四 五 一 号

を 定 め て い る

︒ 国 の 行 う 総 動 員 業 務 に つ い て は ︑ 職 業 紹 介 所 の 職 業 紹 介 そ の 他 の 募 集 に よ っ て 目 的 を 達 成 し え な い 場 合 に お い て

︑ 労 働 者 又 は 技 術 者 を 徴 用 し 総 動 員 業 務 に 従 事 さ せ る こ と に し た

︒ 軍 管 理 工 場 で の 徴 用 に よ る 労 務 の 強 制 配 置 を 可 能 に し た

︒ そ の 範 囲 は

︑ 第 一 次 改 正

︵ 昭 和 一 五 年 改 正

に よ り

︑ 総 動 員 業 務 か ら 政 府 管 理 の 工 場 で の 総 動 員 業 務 等 へ

︑ 第 二 次 改 正 に よ り

︵ 昭 和一 六 年 一二 月 一 五日 勅 令 第一 一 二 九号

厚 生 大 臣 の 指 定 す る 工 場

・ 事 業 場 に ま で 拡 大 し て

82

い く ︒ こ の 結 果 ︑ 陸 軍

︑ 海 軍 関 係 の 業 務 の ほ か

︑ 軍 需 会 社 等 の 工 場 で も 徴 用 が 行 わ れ た

︒ 昭 和 一 六 月 一 一 月 に は

︑ 国 民 勤 労 報 国 協 力 令

︵ 昭 和 一 六 年 一 一 月 二 二 日 勅 令 第 九 九 五 号

が 制 定

︑ 公 布 さ れ

︑ 国 家 総 動 員 業 務 に 協 力 さ せ る た め

︑ 一 四 歳 以 上

︑ 四

〇 歳 未 満 の 男 子 及 び 一 四 歳 以 上

︑ 二 五 歳 未 満 の 女 子 に は 勤 労 報 国 隊 へ の 参 加 が 義 務 づ け ら れ た ︒ 国

︑ 地 方 公 共 団 体 又 は 厚 生 大 臣 の 指 定 す る 者 の 行 う 総 動 員 業 務 に 従 事 し た

︵生 産 配 給

︑ 運 輸 通 信︑ 医 療 関 係︑ 土 木 建築

︑ 警 備等

︒ 同 令 は

︑ 昭 和 一 九 年 八 月 に は

︑ 学 徒 勤 労 令

︵ 昭和 一 九 年八 月 二 三 日 勅 令 第 五 一 八 号︶

︑ 女 子 挺 身 勤 労 令

︵昭 和 一 九 年 八 月 二 三日 勅 令 第 五一 九 号

に ま で 拡 大 し て い く

︒ 学 徒 動 員 を 積 極 的 に 行 う た め の 法 的 な 根 拠 が 与 え ら れ た

(17)

勤 労 動 員 が 法 的 に 促 進 す る 法 的 措 置 が と ら れ た

︒ ま た

︑ 第 一 次 世 界 大 戦 後 に 制 定 さ れ た 職 業 紹 介 法 の 改 正 が 一 九 三 八 年

︵昭 和 一 三年

に 行 わ れ た

︒ ﹁ 労 務 ノ 適 正 ナ ル 配 置

一 条

の た め

︑ つ ま り

︑ 軍 需 生 産 の た め に

︑ 国 家 の あ っ せ ん 業 務 の 一 元 的 な 管 理 を 通 じ て 人 的 資 源 を 確 保 し

︑ 人 を あ っ せ ん す る と い う 機 能 を 期 待 さ れ て い っ た

︒ 職 業 選 択 の 自 由 を 確 保 す る と い う よ り は

︑ む し ろ こ れ を 否 定 し

︑ 軍 需 生 産 の た め の 労 務 統 制 の 手 段 と し て 用 い ら れ て い る こ と が 予 定 さ

83

れ た

︒ さ ら に

︑ 一 般 国 民 職 業 能 力 申 告 令

︵ 昭 和一 四 年 一月 七 日 勅令 第 五 号︶

に よ り

︑ 戦 時 労 務 動 員 に 最 も 必 要 と さ れ る 職 業 能 力 を 有 す る 者 に 限 定 し て

︑ 職 業 紹 介 所 に 登 録 す る こ と と さ れ た

︒ こ の ほ か

︑ 国 家 総 動 員 法 六 条 に も と づ き

︑ 労 働 者 の 移 動 を 制 限 し

︑ 技 術 者 や 経 験 者 を 軍 需 産 業 な ど 国 策 遂 行 に 必 要 な 人 材 を 確 保 し

︑ そ の 移 動 を 制 限 す る た め

︑ 従 業 者 雇 入 制 限 令

︵昭 和 一 四 年 三 月 三 一日 勅 令 第 一二 六 号

公 布 さ れ た ︒ 一 六 才 か ら 五

〇 歳 未 満 の 男 子 で

︑ 金 属 工 業 や 機 械 器 具 工 業 ︑ 鉱 業 に 関 係 す る 九 三 種 の 重 要 職 業 に 従 事 す る 者 や そ の 経 験 者 等 を 雇 入 れ る 場 合 に は

︑ 職 業 紹 介 所 長 の 許 可 を 要 す る と さ れ た

2 国 家 主 義的 労 働 法 学へ の 転 換 と 戦時 体 制 へ の協 賛

こ う し た 情 勢 の 下 で

︑ 労 働 法 学 の 一 部 も

︑ 戦 時 体 制 へ の 協 力 を 余 儀 な く さ れ る

︒ 後 藤 教 授 は

︑ 統 制 経 済 は ︑ 経 済 的 な 秩 序 の 全 体 的 な 立 場 か ら

︑ 自 覚 的

︑ 計 画 的 に 策 定 す る と い う

﹁ 合 目 的 な 立 場 に 立 脚 す る

﹂ も の で あ り

︑ ﹁

﹃ 国 ノ 全 力 ヲ 最 モ 有 効 ニ 発 揮 セ シ ム ル 様 人 的 及 物 的 資 源 ヲ 統 制 運 用 ス ル

﹄ こ と を 志 向 す る 以 上

︑ 物 的 資 源 と な ら ん で

﹂ ︑

﹁ 人 的 資 源 を 量 的 確 保 と 質 的 向 上 を は か る 方 策 施 設 を 不 可 欠

﹂ と す る と 述

84

べ る

︒ 続 け て

︑ ﹁ 戦 争 が 勃 発 す る と

︑ 物 的 資 源 を 運 用 す べ き 肝 心 な 人 的 資 源 の 調 達 の 上 に お い て

︑ 種 々 の 支 障 に ぶ つ か ら ざ る を 得 な か っ た

︒ 農 村 を 工 業 労 働 力 の 尽 く る こ と な き 源 泉 と 信 じ て 多 年 に わ た っ て 続 け ら れ た 労 働 力 の 虐 使 濫 用 の 報 ひ は

︑ 壮 丁 の 体 位 低 下 と い ふ 然 た る 事 実 に よ っ て 露 骨 に 示 さ れ

⁝ ⁝ 結 果 は

⁝ ⁝

の 不

(18)

ば な ら な か

85

っ た ﹂ と 述 べ て ︑ 経 済 の 国 家 化 が 始 ま り

︑ ﹁ 国 民 経 済 の 自 覚 的

︑ 計 画 的 な 形 成

﹂ を 行 お う と す る 統 制 経 済 の 発 展 の た め ︑ 人 的 資 源 の 保 全 策 が と ら ざ る を 得 な い と の 自 由 主 義 経 済 か ら 統 制 経 済

︑ 労 務 統 制 に 転 換 せ ざ る を 得 な か っ た 経 過 を 説 明

86

す る ︒ 末 弘 教 授 は

︑ 国 家 総 動 員 法 の 下 で は

︑ 計 画 経 済 に よ り 計 画 と 組 織 が 必 要 で あ り

︑ 労 働 法 は

﹁ 計 量 組 織 の 有 期 的 一 部 ﹂ と し て 構 想

87

す る

︒ 計 画 経 済 を 遂 行 す る た め に

︑ 資 本 と 人 間 を 国 力 の す べ て の た め に 能 率 よ く 発 揮 し な け れ ば な ら な い と

88

す る

︒ 自 由 競 争 に よ る 個 人 の 利 益 の 追 求 だ け で は 許 さ れ ず

︑ 公 共 奉 仕 を 養 成 し な け れ ば

︑ す べ て の 国 民 に 国 家 目 的 の 為 に 協 力 さ せ よ う と

89

す る

︒ そ し て

︑ 社 会 政 策 で は

︑ ﹁ 自 由 を 捨 て て 寧 ろ 安 定 原 理 の 上 に 組 み 立 て ら れ な け れ ば な ら

90

な い ﹂ と 述 べ る ︒ 確 か に

︑ 自 由 主 義 を 制 限 し て

︑ 雇 用 の 安 定 性 を 図 る と い う の は ︑ 正 当 な 目 的 で あ る と い え る

︒ た だ ︑ そ れ を 国 家 総 動 員 法 や 国 家 目 的 と 結 び つ け て

91

い る

︒ 石 田 教 授 は

︑ 末 弘 教 授 が こ の よ う な 発 想 に 至 っ た の が

︑ ﹁ 社 会 改 良 的 方 策 の 実 現 が

︑ ﹃ 安 定 原 理

﹄ を 甦 ら さ せ る こ と に よ っ て ︑ 統 制 経 済 の も と で も 可 能 で あ る と 考 え た の だ

92

ろ う ﹂ と 指 摘 す る ︒ 末 弘 教 授 は

︑ ﹁ 企 業 者 の 私 的 利 益 追 求 の 為 に 濫 り に 労 働 力 を す ら す こ と は 許 さ れ な い

﹂ ︒

﹁ 労 働 力 の 保 全 を 計 る 必 要 あ る と 同 時 に ︑ 他 面 健 康 保 険

・ 失 業 保 険

・ 養 老 保 険 等 の 社 会 保 険 制 度 を 樹 立 し て 勤 労 者 に 対 す る 生 活 の 安 定 を 保 障 す る 必 要 が

93

あ る

﹂ と す る ︒ 但 し

︑ さ ら に ︑ 末 弘 教 授 は

︑ 労 働 者 側 の 自 由 を 制 限 す る こ と も 述 べ て い る

︒ ﹁ 個 々 の 勤 労 者 か ら 自 由 が 奪 わ れ る 代 わ り に 勤 労 者 全 体 の 為 に 安 定 が 確 立 さ

94

れ る

﹂ と 説 明 す る

︒ ﹁ す べ て の 国 民 を し て 安 ん じ て 国 家 目 的 に 専 念 奉 仕 せ し め ん と す る 以 上

⁝︶

国 家 の 力 に 依 っ て 其 適 当 な る 保 全 を 計 ら ね ば な ら

95

な い

﹂ と あ り

︑ 国

(19)

考 え る の は

︑ ﹁ す べ て の 国 民 ﹂ で あ り

︑ 使 用 者 の み な ら ず

︑ 労 働 者 を も 意 味 す る の で あ ろ う

︒ 末 弘 教 授 も

︑ さ ら に

︑ 勤 労 根

96

本 法 が 政 策 的 な 課 題 と な る と

︑ 次 の よ う に 述 べ て い る

︒ ﹁ 重 要 な る は 勤 労 の 国 家 性 を 高 調 し

︑ 国 民 皆 勤 労 制 を 宣 明 確 立 す る こ と で あ る ︒

⁝ 国 民 の す べ て が 男 女 の 別 な く 国 家 の 必 要 と す る 如 何 な る 勤 労 に も 従 事 す る の 義 務 あ る こ と を 徹 底 的 に 国 民 全 体 の 脳 裡 に た ゝ き 込 ま な い 限 り

︑ 国 民 勤 労 力 を 最 大 限 度 ま で 国 家 目 的 に 向 つ て 動 員 す る こ と は 不 可 能 で

97

あ る

﹂ ︒ そ し て

︑ 末 弘 教 授 は

︑ 勤 労 の 人 格 性 を 能 率 の 生 産 性 ︑ 国 家 目 的 と 結 び つ け る

︒ こ れ に 続 け て ︑

﹁ 勤 労 者 の 側 よ り す る 人 格 的 要 求 も 自 ら 国 家 目 的 に 向 つ て 統 合 さ れ て 生 産 性 の 要 求 と 矛 盾 す る こ と な く

︑ 使 用 者 側 に も 自 ら 人 格 性 尊 重 の 精 神 が 徹 底 し て 勤 労 の 能 率 を 最 高 度 ま で 発 揮 し 得 る の で

98

あ る

﹂ と 述 べ る

︒ 自 由 主 義 経 済 で は

︑ 生 産 性 の 下 で 資 本 家 の 営 利 性 が 強 調 さ れ た と 批 判 す る

︒ ﹁ 勤 労 根 本 法 は 自 由 主 義 の 残 滓 の す べ て を 清 算 し 去 つ て

︑ 国 家 的 生 産 の 基 礎 た る 其 使 命 を 完 全 に 果 た し 得 る で あ

99

ら う ﹂ と 述 べ て い た

︒ 津 曲 教 授 も

︑ 統 制 経 済 の 下 で

︑ 労 働 関 係 よ り 契 約 を 放 逐 す る こ と が 必 要 で あ る と 述 べ る ︒ ナ チ ス 民 族 労 働 秩 序 法 と 同 様 に

︑ 権 利 本 位 の 体 制 を 破 棄 し

︑ ﹁

﹃ 義 務 本 位

﹄ の 労 働

秩 序

﹂ を 志 向 す べ き で あ る と 説 く

︒ 国 家 へ の 忠 実 義 務 を 説 き

︑ ﹁ 労 務 は 直 接 国 家 へ の 奉 仕 義 務 に よ っ て 規 制 さ

れ る

﹂ と 述 べ る

︒ 労 働 の 人 格 性 乃 至 倫 理 性 の 高 揚 こ そ

︑ 統 制 経 済 法 の 特 色 な の で あ る

︒ ﹃ 労 働 者 保 護 の 慈 恵 政 策 よ り 物 的 管 理 と し て の 生 産 政 策 へ の 転 向

﹄ か ら

︑ 更 に

﹃ 労 働 の 人 格 的

・ 倫 理 的 関 係 へ の 転 換

﹄ こ そ が

︑ 戦 時 体 制 下 の 労 働 関 係 法 で

あ る

﹂ ﹁ 統 制 経 済 法 は

︑ 独 占 企 業 や 独 占 労 働 を 止 揚 し た 協 力 関 係 の 経 済 体 制 で

あ る

︒ ﹂ 労 働 が

︑ 国 家 の た め の 勤 労 と し て 位 置 付 け ら れ

︑ 労 働 者 は 勤 労 を 通 じ て そ の 人 格 を 投 入 せ ざ る を 得 な く な っ て い っ た

︒ 労 働 契 約 関 係 と い っ て も

︑ ﹁ 市 民 法 の 意 識 の

欠 如

﹂ が 顕 著 で あ っ た だ け に

︑ 労 働 者 へ の 人 格 支 配 を 強 め る 性 格 を 帯 び て い た と い

え る

参照

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