• 検索結果がありません。

Dicto-gloss を用いた授業の実践報告

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Dicto-gloss を用いた授業の実践報告"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.はじめに

 平成21年3月に告示された高等学校新学習指導要領では,外国語科目の目 標を「コミュニケーション能力を養う」こととし,コミュニケーション能力 の中核をなすものとして,「情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えた りする」能力を育成すること,そして,4技能を統合的に活用できるコミュ ニケーション能力を育成することが求められている。

 これらの背景を踏まえ,文学部では平成26年度より英語ネイティブ講師2 名,日本人講師2名が合計24クラスの「基礎英語」を担当し,各クラス21~

28名程度で英語教育を行っている。週1回の通年科目ではあるが,英語母語 教員と日本語母語教員が半期ごとに1クラスを担当し,入学時の TOEIC テ ストの成績ごとに学科 ・ 専攻コース内でクラス分けされている。この授業の 特徴は,シラバス ・ 教材 ・ 授業方針等を統一した上で情報や意見を密接に交 換し,文学部事務室等の協力で,受講生に対してきめ細かく対応しているこ とである。英語母語教員の授業ではスピーキングを中心に授業を進め,コミュ ニケーション能力の向上を図っている。また日本語母語教員の授業では,文 法演習,語彙増強,ディクテーション,リーディング,ライティングを行い,

英語の四技能,語彙力,文法力などの基礎力を強化している。そして到達目 標として,初級から中級程度(日常会話から時事問題等)の対話やディスカッ ションができるようになることを目指している。

Dicto-gloss を用いた授業の実践報告

―その効果と課題について―

瀧 口 美 佳

(2)

 本稿では筆者の担当する「基礎英語」における「学生の英語力,特に聴解 力の向上に有効である」とされる英語指導法“Dicto-gloss”の取り組みにつ いての実践報告を行うとともに,英語教育における Dicto-gloss の位置づけを 明確にし,今後の課題点について述べる。

2.Dicto-gloss(ディクトグロス)について

2.1 Dicto-gloss とは何か

 Dicto-gloss は,Wajnryb(1989)によって提唱された「文章復元法」と呼 ばれる英語指導法の一つで,以下のような活動であると定義される。

⒜  A short, dense text is read (twice) to the learners at normal speed.

  獲得すべき文法を含んだ短い文章がノーマルスピードで(2回)読ま れる。

⒝  As  it  is  being  read,  the  learners  jot  down  familiar  words  and  phrases

  読まれている間,学習者は知っている単語や語句を中心にメモを取る。

⒞  Working in small groups, the learners pool their battered texts and  strive  to  reconstruct  a  version  of  the  text  from  their  shared  resources.

  小グループを作り,各々の断片的なメモや記憶をもとに,元の文を復 元する。

⒟  Each  group  of  students  produces  its  own  reconstructed  version,  aiming at grammatical accuracy and textual cohesion but not at rep- licating the original text.

  原文との同一性は求められないが,文法的な正確さと文章の一貫性に 留意して文を復元する。

⒠  The various version are analyzed and compared and the students 

(3)

refine their own texts in the light of the shared scrutiny and discus- sion.

  復元された文を分析 ・ 比較する。

以上のように Dicto-gloss は「リスニング」,「ピア ・ ラーニング」,「ライティ ング」,「プレゼンテーションと分析」の4つの活動から成り立っている。ま ず「リスニング」に関しては,「音声を聞き取る」ことよりも,「文脈を聞き 取る」ことに焦点をあてている。この点に関してディクテーション活動とは 大きく異なる。また「ライティング」に関しては,文脈のある素材を再構築 する作業を通して,文と文とのつながりやパラグラフのまとまり等を意識す るようになる。さらに“Grammar Dictation”とも呼ばれる Dicto-gloss は,

特定の文法項目に焦点がいくような素材を用いれば,その文法項目に関する 話し合い(メタトーク)を増やすことも可能である。

2.2 英語教育における Dicto-gloss  1)ディクテーションとの比較

 リスニング能力の向上を図る活動として普及しているディクテーションは,

英語の音声を聞いて文字に書き起こす活動である。聞き取れない箇所を明確 にすることや,英語として望ましい音声イメージをつかむことを目的として おり,英語の統合的な能力を測る手段としての評価も高い。また「一定期間 指導を継続することでリスニング能力を強化できる」ことや,第二言語とし て英語を学習する者にとっての「総合英語力を測るテスト」として有効であ ると示唆されている。

 一方で Wajnryb は,ディクテーションの問題点として,音声に集中するあ まり意味が素通りされてしまうといった,いわゆる「思考のない機械的な学 び」になる可能性を指摘している。また学習者にとって,ディクテーション は難しい活動であること,読み上げるスピードやその回数によって,どの程 度の英語力向上が見られるのかについての明確な指標はない。

(4)

 Dicto-gloss は,ディクテーションの発展型であり,リスニング中に適切に メモを取ることが大切である。一人で考えるというより仲間と話し合い,答 えを見つけ最終的に元の文を完全に復元することが目標となっている。授業 において,Dicto-gloss を組み入れる方法については,染谷(2010)が表1の ように提案している。

1.Input Phase:テキストの提示と学習。

2 .Output Phase:メモ取り,メモに基づく原文の復元作業。

(ソロ,ペアまたはグループ)

3.Confirmation Phase:教師によるコメント。

表1 Dicto-gloss の3段階モデル

2.3 先行研究

 Dicto-gloss は,リスニングだけでなく,ピア ・ ラーニングやアウトプット を含んだ活動であり,英語教育に限らず日本語を含めた語学教育の分野にお いて,活用される機会も増えつつある。Dicto-gloss について述べた研究や報 告等も発表されてはいるものの,その研究対象は中 ・ 高校生に限られている ものが多い。例えば,前田(2008)は日本英語検定協会が作成した『Step-up  Listening』を教材として,高校生を対象にリスニング能力を伸ばすことを目 的に Dicto-gloss を用いた。その結果,「リスニング能力だけではなく,ライ ティング能力も伸ばせる」ことを示した。高野(2014)は,四技能を統合的 に指導する Dicto-gloss の有効性を検証し,「目標文法項目に一定の定着が見 られる」ことや,「ライティング ・ タスクにおいて,流暢さと正確さにある程 度の向上が見られる」と分析した。これらの先行研究から,Dicto-gloss をタ スクなどの他の活動と組み合わせて行うことが,特定の文法項目の理解や基 礎学力の定着につながる可能性があること,さらに,学習者のライティング 能力の伸長に関係することが推察できる。

 さらに村野井は Dicto-gloss を「テキストの題材内容を重視した読後活動

(post-reading  activity)であり,アウトプット活動を促す有効な学習法であ

(5)

る」と述べている。

3.授業におけるディクトグロスの実践

3.1 目 的

 Dicto-gloss の目的として,Wajnryb は以下の3点を挙げている。

① 原文を復元する過程やその後の分析を通して,学習者にその言語につい て何を知っていて,何を知らないのかを気づかせる。

② 文章の復元に関するタスクの中で,文法を学習者に意識させながら,ア ウトプットの機会を学習者に与える。

③ 学習者自身が訂正する過程の中で言語選択の総合的な分析をし,言語使 用能力を向上させる。

3.2 教材 ・ 手順について  1)教材について

 Dicto-gloss を行う教材には,文学部語学課程編著『Fundamental  English  Practice』を使用した。このテキストは,「基礎英語」の授業で使用すること を目的に作成された立正大学文学部オリジナルのテキストであり,表2のよ うな特徴を備えている。

①  Reading を中心に,英語の4技能を向上させる活動を多く取り入 れ,各 Unit を4~5 のパートに分けている。

②  Reading や会話練習において,学生の生活に関連した身近な話題を 扱っている。

③  基礎レベルの Unit1~6においては,比較的易しいレベルの単語 や構文を使っているため,英語に苦手意識を持っている学生であっ ても,無理なく学習を進めることができる。

④  Unit7~11においては中級レベルの単語や構文を使用している。ま た上級レベルの学生には,新出単語を同義語(または類義語)で言 い換えてみる等,日本語に訳すのではなく英語のまま理解していく ように指導できる。

(6)

⑤  Unit12~15では学科 ・ 専攻コースごとに専門分野に関連した内容 を扱い,「英語で専門を学ぶ」ための最初の機会を設ける。

⑤  コミュニケーションにつなげる英語力を強化するための教材であ るため,Reading は訳読を中心に行うわけではないことに注意する。

表2 『Fundamental English Practice』の特徴

音声に関しては学習者用にスピードを通常の70%程度の速度で録音したが,

授業においては音声スピードを調整できるソフトウェアや機器を用いて,各 クラスのレベルに合わせスピードを調整し,リスニング活動を行っている。

 2)手順について

① Preparation

 ・ Topical warm-up, understanding of the vocabulary of the text,  forming of groups

② Dictation  ・ Jot down notes

③ Reconstruction

 ・ Working in groups, students reconstruct the text based on each  note.

④ Analysis and correction

表3 Dicto-gloss の手順 (Wajnryb, 1990)

 表3に,Wajnryb が提唱した Dicto-gloss の4段階の手順を示した。それを

「基礎英語」の受講生用にアレンジし,以下の手順で実行した。

① 準備段階:読まれる英文を含む Reading パッセージの内容を確認し,

サマリー等の作成やシャドーイング練習を行う。

② ディクテーション:パッセージを3回流して聞かせる。1回目は聞く ことに集中しメモは取らない。2回目,3回目は読まれるパッセージの 中から重要だと思う語句を,ワークシートの Memo の欄に記入する。

③ 英文復元(ピア ・ ラーニング,ライティング):Memo 欄に記入した 語句をもとに,グループで10分間話し合い,Answer の欄に読まれたパッ セージを復元する。英語を苦手とする学生の多いクラスでは,話し合い

(7)

は日本語で行う。

④ 発表 ・ 確認:グループごとに復元したパッセージを,黒板に板書し読 み上げる。

⑤ 修正 ・ 分析:読まれた英文と復元したパッセージを比較し,修正をす る。自分の復元したパッセージに色ペンで修正する。

⑥ その後,ワークシートに自分の行った Dicto-gloss について感想を書 く。

3.3 被験者について

 今回 Dicto-gloss の被験者は文学部1年生の筆者が担当する「基礎英語」の うち4クラス97名である。ほぼ毎回の授業でディクテーションを行い,リス ニング力の強化及びメモを取る習慣を身につけた。また合計3回の Dicto-gloss を実践し,リスニング力とライティング力等を中心に指導を行った。また彼

資料① ワークシート

(8)

らの英語力についてであるが,入学時に受験した TOEIC の平均スコアは,

234  ~266点となっており,一番低い学生は205点,一番高い学生は300点で あった。被験者の英語及び英語学習に対する意識に関しては,2015年4月に 文学部1年生を対象に行った㈱ベネッセi-キャリアの「大学生基礎力レポー トⅠ」のアンケート結果において,表4,5のような結果が出ている。この ように英語学習に対して積極的であるとはいえない学生にとって,ディクテー ション作業はハードルが高いものであったかもしれない。高校までの英語授 業において,ディクテーションあるいは Dicto-gloss を経験したという被験者 は1割弱であり,多くの被験者にとって,新しい英語学習法であったためか,

慣れるまで多少時間がかかったが,各自真面目に取り組む姿勢が見られた。

ディクテーションを3回の授業で行った後に Dicto-gloss を1回行うといった 形式を合計3度実践した。

■これまでの英語の学習状況(選択率%)

すごく勉強した よく勉強した 普  通 少しは勉強した まったく勉強しなかった 無  回  答

英語を今までどのくらい勉強してき

たと思いますか(選択率%) 1.8 11.7 39.3 28.2 9.8 9.1

通じる自信がある 何とか通じる 通じそうにない 逃げ出したい 無  回  答

自分から英語を話しかける際の気持

ちはどれですか。(選択率%) 1.3 31.0 38.6 19.5 9.5

(9)

十分に対応できる 何とか対応できる 対応できそうにない 逃げ出したい 無  回  答

急に英語で話しかけられた時の気持

ちはどれですか。(選択率%) 0.7 34.6 38.6 15.8 10.2 表4 2015年4月に行われた「大学生基礎力レポートⅠ」より

(ベネッセi-キャリア)

■身につけたい英語のレベル

内      容 選択率(%)

英語圏の大学 ・ 大学院への留学や,英語を使って仕事をする際

に支障がないレベル   7.3

英語圏に長期滞在して生活するのに支障がないレベル 16.2

身の回りの話題に関してやりとりができ海外ホームステイや短

期の語学研修で楽しめるレベル 40.1

道順やメニューの説明など簡単な質問に答えられる 29.0

英語を積極的に身につけようとは考えていない   6.2

表5 2015年4月に行われた「大学生基礎力レポートⅠ」より

(ベネッセi-キャリア)

3.4 実践 ・ 誤答分析

 今回の実践で扱ったターゲット ・ パッセージは,Dicto-gloss を行う1回前 の授業時に,シャドーイング活動等で音読をし,さらに授業外学修として音 読を10回以上行ってくることを課したパッセージであった。2.1でも述べたよ うに,Dicto-gloss は“Grammar Dictation”と呼ばれ,「原文との同一性は求 められないが,文法的な正確さ」が求められる活動である。そのため,日頃 より学習者には「復元したパッセージが文法的に成立するのかどうか」,「冠 詞や代名詞は適切に挿入されているか」などの助言を与え,グループによる 話し合いの中で文法事項に関する学生自身の「気づき」を促した。

(10)

 次に,実際に Dicto-gloss において,グループによって復元されたパッセー ジをいくつか挙げ,多くのグループが正確に復元できなかった箇所を指摘し,

分析する。また2.3で挙げた前田(2008)の報告では,何度か実験をした後 Dicto-gloss において最も正確に文章を復元できたグループが,男子2名女子 2名の混合グループであったという非常に興味深いデータが提示されている。

今回の実践報告では,グループにおける男女の比率等に関する詳しい分析は 避けるが,今後の参考のために,各グループにおける人数,男女比,そして TOEIC の平均点を記しておく。

1)【Dicto-gloss 1回目】

 Dicto-gloss1回目では次のパッセージをターゲットとした。このパッセージ は,3.2で説明したテキストの Unit3“Campus Life in the United States”か らの抜粋である。

 In American universities, most students enroll in about five classes a week. 

Each class meets for a total of three hours per week an hour and a half per  week as in Japanese universities. The classes in American universities meet  three times a week for one hour, or twice a week for one hour and a half.

1回目の教材 『Fundamental English Practice』Unit3より

・ 各グループによって復元されたパッセージ

①  In American university, most enroll in about five classes a week. Each  classes        three houres . . . . (女子3/240点)

②  In American university the most enroll in the five classes a week each  classes meets for talk        not hour half per week as in Japa- nese  universities.  The  classes  in  American  universities  meet  3  times  a  week for one hour, or twice week for one hour a half. (女子4/265点)

③  In American universities most students enroll in about five classes a  week. Each class meets for total three hours a week not half in Japanese  universities. The classes in American universities meets 3 times a week 

(11)

for one hour twice a week one hour and half. (女子2男子1/233点)

④  In American university most students roll as in about five class for a  week. Each class meet told three hours per week. The classes in Ameri- can universities meet three time for hour or twice times for hour and a  hurf. (男子4/238点)

⑤  In American unibercity most students         in  about  5  classes.  Each  classes  meets  for  3  hours  for  a  week,  . . . . The  classes in American unibercity         as in Japa- nise unibercity as in on twice week for hour half. (女子2男子1/245点)

・ 誤答分析

⑴  each +単数形 ,  3単現のsは,中学校レベルの基本英文法である。しか し each の後を複数形にしているがゆえに,3単現のsを挿入しなかった例 や,each 単数形は聞き取れていたが,3単現のsを聞き取れなかった例が あった。Dicto-gloss は,聞き取れなかった箇所であっても,文法上矛盾す る点等を修正していく作業である。この点については,復元作業中にも学 習者に伝えていたが,徹底することができなかったようである。

⑵  文脈から,日米の大学についての内容であることは分かっているようで あるが,university を複数形にしていないグループが多かった。また“uni- versity”“Japanese”といった TOEIC 220点取得に必要と言われる単語の スペルが徹底されていない学習者もおり,リメディアル教育の必要性をあ らためて感じた。

2)【Dicto-gloss 2回目】

 2回目の Dicto-gloss におけるターゲット ・ パッセージは,図2の通りであ る。テキスト Unit7“Keeping in touch in the 21st century”からの抜粋である。

(12)

 Today, there are more than two hundred million registered users worldwide,  most  of  them  in  Japan.  In  addition,  LINE  continues  to  evolve  with  LINE  Manga, LINE game, and LINE camera. Best of all, we no longer have to rely  on phone calls to contact each other during an emergency.

図2 Dicto-gloss 2回目の教材 『Fundamental English Practice』Unit5より

・ 各グループによって復元されたパッセージ

①  Today, their modern 200 million register users world wide most of them  in japan. In addition line continued line mange, line games and line cam- era.  Best  of  all  no  longer  have  to          during        . 

(女子3/263点)

②  Today, they are more 200 million registred users most them in Japan. 

Indition LINE continu LINE Manga, LINE game, and       . Best  of all     longer have to     during emp . . . . (女子5/269点)

③  Today, they are more than 200 million register user world wide them in  Japan. In adition, Line continue twelve of LINE Man LINE Game LINE  Cam . Best of all in no longer have to      phone call contact each  other during emergency. (女子3男子2/263点)

④  Today, there were more than 200 million registered users world wide  most of them in Japan. In addition LINE continue to revolve of all LINE  Manga, LINE Game and LINE Camera. Best of all no longer have to re       phone call contact each other during on emergency. (女子3/

276点)

⑤  Today there are more than 200 million        most of  them  in  Japan.  In  edition  LINE  continues          LINE  Manga,  LINE  Game  and  LINE  Camera.  Best  of  all  we  no  longer  have  to              contact  each  other  during  emergency. (男子4/

265点)

(13)

・ 誤答分析

⑴  “there are”を“they are”と聞き間違えていたグループが多かった。一 方で Memo 欄には“their”とあったが,メタトークの中で誤りに気付いて 修正したグループも見られた(資料②)。一方同じく資料②にあるように,

Memo 欄には“there are”と書いてあるにも関わらず,グループ内の多数 派の意見に押されたようで,“they are”と答えてしまっている学生も見ら れた。これは本来プラスに作用するはずであったグループによる協同作業 の負の要素が見られた例であった。

⑵  語彙に関しては,“evolve”(「発展する」の意味)を“twelve”“revolve” などと聞き間違える,あるいは聞き逃すグループが見られた。“evolve”は 英検であれば2級,TOEIC であれば600点以上の取得に必須となってくる 単語であるが,予習を含め Unit7の新出単語で2週間かけて学習してあっ た。しかし,この単語を正解できた学生は一人もおらず,あらためて授業 における「語彙学習の教授方法」を見直すことも検討していきたい。

 資料② 被験者A

被験者B

(14)

⑶  機能語,内容語によっても,聞き取りに大きな違いが出ている。瀧口

(2014)において,to, in 等の前置詞の欠如が多く見られている。その要因 は単語の連結等による音の「脱落」によるものである。機能語,内容語で 聞き取り結果に違いは出ているのだろうか。

4.総括的な考察と今後の課題

4.1 学生による「気づき」

Dicto-gloss を2回実践した後の学生からの感想を次にまとめた。

・  だんだん聞き取れるようになりました。1つ分かると不思議と他の所も分 かるようになりました。

・  前回と同様,グループでなければできないことが多かった。またスペルミ スが目立った。

・  単語が見えても,発音の時にくっついてしまうと,いきなり何の単語か分 からなくなると感じた。

・  ふだんあまり気にしていない文法などを気にかけて解いた。

・  前回よりも自分一人で聞き取れた量が,若干増えたと思う。ただ文が増え るほど,余裕がなくなって聞き取る単語が少なくなってしまった。

・  前回よりは解けたかは分からないが,聞こうという意識で聞いた。グルー プでやると心強い。

 以上のように学生によって反応は様々であるが,「ピア ・ ラーニング」に対 する好意的な意見が多く,さらに前回よりも音声を聞き取ることに集中した という意見も多く見られた。中には,文法を意識し,リスニングでは聞き取 れなかった音(“3単現のs”,“過去分詞形- ed”等)を文全体の時制,構 成を基に挿入したグループも存在した。彼ら自身が気づけたことは大きな進 歩である。また,ある学生が「発音の時にくっついてしまう」といった感想 を述べているが,これはリスニングの時に起こる「連結」によって音が消え てしまい,まるで違う単語のような音になってしまう事例を示しており,具

(15)

体例としては,2回目の Dicto-gloss のターゲット ・ パッセージ中の“most  of them”や“In addition”などを挙げることができよう。

 また,教員側からの助言にも関わらず,文法的に正しく復元できなかった ことについては,普段の授業を通して,多くの「気づき」を与えていけるよ うに,今後の文法指導を工夫していく必要性があることが分かった。

4.2 まとめ

 Robinson(2003)は,リスニングで最も重要なことのうちの一つは集中す ることであり,「注意力は言語をインプットに変え,それが作用や短期記憶を 活発化させる」と述べた。今回の実践を通して,学生はまず「メモを取る」

ことで集中力を高めた。さらに Dicto-gloss を行い,ある程度パッセージを復 元できた後で,もう一度ターゲット ・ パッセージを聞かせてみると,学習者 は身を乗り出すほどに集中して聞いていた。これは,授業中の課題を解くと いう目的以外に,彼らに英語を聞く必要性をどの程度与えられるかにかかっ てはいるが,リスニング力の育成だけでなく,集中力の育成をも期待できる のではないだろうか。

4.3 最後に

 本稿では,「基礎英語」における Dicto-gloss の実践報告を行った。ディク テーションの発展型であり“Grammar  Dictation”とも呼ばれる Dicto-gloss は,その活動を通して,リスニング能力,ライティング能力,ディスカッショ ン能力,さらにプレゼンテーション能力を総合的に向上させることができる。

また Dicto-gloss は,他の学習者と力を合わせて文章を復元する「協同学習」

(collaborating learning)でもあり,復元の段階で,学習者間に英文構造や意 味内容に関しての多くの発話が生じ,協同学習の利点も大きい。そして何よ り,学習者自身が文章を復元して誤りを訂正していく能力や集中力の育成に 寄与する活動でもある。さらに,このように多くのアウトプット活動を伴う ことによって,学習者自身による「気づき」を促すことができる Dicto-gloss

(16)

を今後も授業において,積極的に活用していきたいと考える。

参考文献

Nation, I.S.P. and Newton, J. 2009. Teaching ESL/EFL Listening and Speaking. 

New York: Routledge.

Robinson. P. 2003. “Attention and Memory during SLA.” C.J. Doughty& M. Long 

(Eds.). The handbook of second language acquisition. Oxford, UK: Blackwell  Publishing. 631.

Wajnryb. R. 1990. Grammar Dictation. Oxford: Oxford UP.

岩本藤男,2013.「中学校の英語授業で Dicto-gloss が果たす役割」『中部地区英語 教育学会紀要』第42号.166.

白畑知彦他,2001.『英語教育用語辞典』.大修館書店.

染谷泰正,2010.「英語教育におけるプロダクション訓練の方法論とその理論」.

『関西大学外国語学部紀要』.92-132.

高野真依,2014.「4技能の統合的な活用を目指す授業づくり- Dicto-gloss を用 いた実践を通して-」.『神奈川県立総合教育センター長期研究員研究報告』.25

-30.

瀧口美佳,Samuel  Rose,  Todd  Armstrong,時國滋夫,2014.「2014  Kiso-Eigo  Classes:Using Teamwork and Communication to Increase Abilities」.『立正 大学文学部論叢』138号.99-137.

前田昌寛 , 2008.「ディクトグロスを用いたリスニング能力を伸ばす指導-技能間 の統合を視野に入れて-」.STEP BULLETIN, vol.20.日本英語検定協会.149

-161.

村野井仁 , 2006. 『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法 ・ 指導法』大修 館書店.

文部科学省 , 2009. 『高等学校学習指導要領解説 外国語編英語編』.

山本成代 ,  2011. 「ディクトグロスを取り入れた英語授業の有効性」.『MEDIA,  ENGLISH AND COMMUNICATION』No.1 119-133.

ベネッセi-キャリアサポート,2015.「2015年度大学生基礎力レポートⅠ(立正 大学文学部)」.

(2015年11月30日受理,2016年1月29日採択)

参照

関連したドキュメント

「養子縁組の実践:子どもの権利と福祉を向上させるために」という

C :はい。榎本先生、てるちゃんって実践神学を教えていたんだけど、授