東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要 第47号 2012 103
Ⅰ.はじめに
ハンドボール競技におけるゲーム局面は大別 すると攻撃と防御によって構成し、ボールの獲得 から攻撃戦術、速攻(Fast Break)と組織攻撃(Set Offense)に分けられる1)。攻撃の起点は相手の得点 による場合と相手の攻撃を防御により奪い得る場合と に分けられる3)。前者では、組織攻撃を選択せざる を得ないが、後者では、相手の防御隊形が整う前で あれば速攻が有効な攻撃となる2)。そして、試合に 勝利するにあたり、1試合において30点前後の得点 能力を備え、20点以内に失点を抑える防御力を備え る必要がある。
ところで、1試合における平均攻撃回数は約30秒 に1回の割合で行われていることが報告され6)、失 点以外で攻撃権を獲得するには、防御において攻 撃側にファールやミスプレーを誘発させなければな らない。そしてミスの誘発により、ゲーム中にどちらの ボールではないルーズボールとなる局面が表れる。 また、犬塚ら7)は、ボール保持ミスによるボールの 所在はプレーイングエリア内であること、主にコートプ レーヤーは前方で生じた状況に対処することになる。 もうひとつは、シュートブロックの場合、約4割がプ レーイング内に跳ね返ったルーズボールと述べてい る。このことから、ルーズボールの獲得は攻撃局面で は再攻撃の機会を得るチャンスであり、防御局面で は攻撃権の獲得から速攻への展開、組織攻撃での
得点チャンスに繋がり、失点を減らす要因ともなる。 そこで、本研究ではルーズボールの局面に着目し、 攻撃側のボール保持ミス時のエリア、獲得時のエリ アの視点から技術、戦術あるいはトレーニングの基 礎資料として、その性質を把握し競技力向上の一助 とすることを目的とした。
Ⅱ.方法 1.対象試合
平成23年度関東学生ハンドボール女子秋季リー グ戦、本学との対戦大学(全7試合)を対象とした。
全7試合をVTRカメラにてコート全体を撮影したデー ターを基に、ハンドボールコートの半面を12分割し た記録用紙に記入し、ルーズボール局面の分析を 行った。
ハンドボール 競技 におけるゲーム 分析
―ルーズボールの
局面について―
Game Analysis in the Handball Competition:
Aspects of the Loose Ball
キーワード:ハンドボール・ゲーム分析・ルーズボール
八尾 泰寛
図1 分析コートエリア
①②③④…ゴールエリア内 ABCD…アタックエリア内 abcd…ミドルエリア内
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2.分析項目
①ボール保持ミスエリア
②ボール保持ミスによる獲得エリア
③ボール獲得エリアからの攻撃内容および成功率
3.用語説明
・プレーイングエリア:ゴールエリア以外のフロン トコート内。
・ルーズボール:どちらのチームにもボールの所 有がはっきりしないボールの状況。
・リバウンドボール:シュートがゴールキーパー、 ゴールポストに当たり跳ね返り、どちらのチーム にもボールの所有がはっきりしないボールの状
況。
・パッシブプレー:攻撃、シュートの意図を示さな いで、チームがボールを所持し続けること。
Ⅲ.結果及び考察
ボール保持(パス・キャッチ)ミスによるボール喪 失位置を図2に示した。アタックエリア内全体での ボール喪失は46.1%、ミドルエリア内全体でのボー ル喪失は53.9%であった。コートの4分割では、エリ アB・b・C・cで、ボール喪失割合が全体の82%を 超え、攻撃はセンターエリア中心に行われていた。
ボール保持(パス・キャッチ)ミスによるボールの 獲得位置を図3に示した。ゴールエリア内全体は 7.7%、アタックエリア内全体が58.2%、ミドルエリ
ア内全体が34.1%でルーズボールを獲得していた。 攻撃側のボールの喪失は、プレーイングエリア内 であり、防御ライン付近か前方の対処となることで、 ルーズボールを確実に獲得するためのフィジカル、 ファールを犯さずに獲得する技術の必要性が伺え た。
ボール獲得エリア別の攻撃内容を図4に示した。 アタックエリア内は、防御側のボール獲得後の攻撃 は約8割で、その内速攻が39.6%、遅攻が45.3%で であった。すなわち、ボール獲得後の速攻は5割弱 であり、アタックエリア内の密集した攻防の中では、 ルーズボールを獲得できるかどうかの判断が難しく、 またボールに向かわない他の選手が速攻に走ると、 仮に攻撃側にボールを再度奪われた場合ディフェン スの崩れが起きるため、速攻へと結びつきにくいもの と思われる。
図2 ボール保持ミスによるボール喪失位置
図3 ボール保持ミスによるボール獲得位置
図4 ボール獲得エリアからの攻撃内容 八尾 泰寛
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ミドルエリア内では、防御側のボール獲得後の攻 撃は約8割で、アタックエリア内とほぼ同様であった。 しかし、その内速攻が51.6%、遅攻が25.8%で、速
攻の割合が高かった。これは、防御ラインの前方(自 陣のゴールから遠い位置)で処理を行えることにより、 ボールに向かわない選手も速攻に走ることのリスクが 少なく、高い位置でのディファンスがより有効な攻撃 となることが伺えされた。
ボール獲得エリアごとの攻撃成功率を図5に示し た。ゴールエリア内からの攻撃(キーパーからのパ ス)は速攻・遅攻ともに約7割の成功率があり、ボー ルの行方がはっきりしていることで、防御から素早い 攻撃への動き出しが可能であることが示された。ア タックエリア内は、攻撃側が再度ボールを獲得した 回数は約2割と少ないが、再度ボールを獲得した再 攻撃で攻撃成功率は75.0%と高かった。守備側の 攻撃への切換えによる防御隊形の崩れが、成功率を 高めたものと思われる。なお、アタックエリア内で防 御側がボールを獲得し成功した速攻は38.1%であっ た。前述のように、アタックエリア内からの速攻は4 割弱と少なく、また成功率も低いことから、この位置 でのボール保持ミスはリスクが少ないことを示してい る。
ミドルエリア内は、攻撃側が再度ボールを獲得し た再攻撃の成功率は28.6%で、防御側がボールを 獲得した速攻が87.5%と高かった。これは防御隊形 の前方でのボール処理による攻撃への切換えが行い
やすく、また相手の帰陣の局面となることから速攻の 成功率が高いと思われる。このことで、ミドルエリア 内でボールを獲得した攻撃展開は、速攻にて多くの 得点をあげることが可能であると示唆された。
Ⅳ.まとめ
ボール保持ミスによるルーズボールに関する調査 から次の結論を得た。
1. ルーズボールは、確実に獲得するためのフィジ カルとファールを犯さずに獲得する技術の必要 性。
2. アタックエリアでのボール保持ミスはリスクが 少ないことが示された。
3. ミドルエリアでは、ボールの所在が明確であるこ とで、防御からの速攻が有効な攻撃手段であっ
た。
引用・参考文献
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5. 杉森弘幸・大西武三・水上一・河村レイ子
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る攻撃のミスプレーについて.東京女子体育大 図5 ボール獲得エリアごとの攻撃成功率
106
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7. 犬塚秀幸・浅野幹也・小山哲央(1998):ハン ドボールのゲーム分析.中京大学体育学論叢
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八尾 泰寛