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.緒言ゴール型競技スポーツにおいて、どのような戦術、
戦略を用いるかということは、競技力を高め、試合に 勝利するための必要な条件である。しかし、1つのコー トで、お互いのチームにより攻守が繰り返されるため、
常に局面が変化し、同じ場面が再現されるかは不明 である。そのため、試合前、試合中に戦術の方向付 けや局面の決断を下す。その行為を決定するための 理解度が競技力である1)。
その競技力は、「チーム」と「個人」があげられる。 共通の競技力要因「調整能力、協調能力、技術、戦 術」だけではなく、味方選手―敵方選手―ゲームの 理念―ゲーム空間―用具―競技ルールの複雑な相 互関係の体系に示される。試合の経過時間、得点差 などに合わせ、局面ごとに対応する戦術力、技術力 には、予測力、決断力、知覚能力など、すべての要
素、現象、過程に対応できる能力が必要となる。 ハンドボール競技の戦術は、攻撃、防御において それぞれ個人戦術とチーム戦術の2つに分類される。 さらに細分化すると個人戦術→グループ戦術に展開 され、プレイリズムの加速による攻守の切り換えから、
複雑なゲーム展開が繰り広げられている2)。ゲーム に勝利するために、防御局面を部分的、全体的に 判断し、行動を起こし、味方同士が協力し、アウトナ ンバーもしくは、空間が広いイーブンナンバーの状 況を作らせないようにする。これには、個人の技能的
能力とグループにおける戦術的能力の相互関係で 競技力が構成され、瞬時に有効性とリスクを考えな がら、最も有効な防御戦術を見いだし決断を下さな ければならない。
そこで、本研究では、自チームと対戦相手の防御 に着目し、試合のVTRを参考に反則時の罰則をゲー ム展開にどのような影響を与えるのかを明らかにする ことで、競技力をあげるための、今後の指導の一助 とすることを目的とした。
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.方法2−1.対象試合
平成26年度関東学生ハンドボール秋季リーグ戦 3試合における、東京女子体育大学(以下東女体大)
と対戦した上位チームを分析対象とした。
2−2.分析方法
自チームで記入しているスコアー用紙と日本ハンド ボール協会公式記録用紙、試合のVTRを基に東女 体大の規則違反による罰則時のプレー現象を抽出し た。
2−3.分析項目
1)試合全体の攻撃回数 2)1対1による失点の局面
・カットインによる突破
ハンドボール 競技 における 競技力向上 のための 一考察
―防御時の罰則に着目して―
A Study of Competiveness Improvement in Handball
―By Paying Attention to the Situation and Conceded Penalties at the Time of Defense― キーワード:ハンドボール、防御戦術、罰則
八尾 泰寛
・ロングシュート、ミドルシュート
・マークミス
・クイックスタートによる失点の局面 3)アウトナンバー時の失点の局面 4)2対2による失点の局面 5)速攻による失点の局面 6)リバウンド時の失点の局面
2−4.用語説明
本文における主要用語を以下のように定義する。
・攻守の切換え
攻撃権の獲得から得点もしくはミスによる攻撃完 了し防御への移行局面。
・アウトナンバー
攻撃時に防御者より攻撃者の人数が有利な局 面
・イーブンナンバー
攻撃時に攻撃者と防御者の人数が対等の局面
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.結果及び考察全3試合における1試合のあたりの全体の評価を 表1に示した。東女体大の得点は24.3±1.5点で、 対戦相手は22.0±2.6点あった。罰則による警告は、 全体2.5±0.8回、退場(2分間)は1.8±2.1回で、東 女体大の警告は2.7±0.6回、退場(2分)は3.0±2.6回、
対戦相手の警告は2.3±1.2回、退場は0.7±0.6回で、 東女体大の警告・退場の罰則が高い。スコアーシー トでみると、東女体大は3試合中2試合で9回(5回、
4回)の退場をしており、前後半60分で行われる試 合時間中で、時間にすると18分間、対戦別でみると、 対NT大に5回退場し10分間、対TK大に4回退場
し8分間、フィールドプレーヤー5人で試合を行って いた。また、対戦相手は、3試合で2回と少なく、14 分間数的不利の状況で試合をしていた。したがって、 防御時の罰則による数的不利な時間帯が攻撃に影 響し、苦しい試合展開であったことが推察される。ハ ンドボール競技規則2014年度版で、明らかに(ボー ルではなく)相手の身体を狙った反則に対しては、罰 則を適用しなければならないとされている。はじめに 警告、次に退場、そして失格の、段階的に重い罰則 の付加が必要と記載され3)、チームで累積3枚を超 えると、その選手が初めての警告に相当するプレー であっても退場となる。また、より激しい違反行為に対 しては、判断基準によって罰則を1.即座に2分間退 場とすべき違反行為、2.直接失格とすべき違反行為、
3.直接失格とし、さらに報告書の提出を必要とする違 反行為と記載されている3)。
シュートまで到達された防御局面の割合を図1に示 した。1対1の局面が19.1%で、アウトナンバーの局 面が9.3%で、2対2の局面が27.2%で、速攻の局面 が15.4%で、防御やゴールキーパーにあたり、プレー イングエリア内にはね返ったリバウンド局面が4.3% であった。シュートまで到達される局面は、ノーマー クのシュート、防御に対し、フェイントや味方とのコン ビネーションで防御間からのカットインシュート、ポ ストシュート、サイドシュート、防御を前にしたミドル、 ロングシュートがあげられる。試合のスコアーシート、
n=122
1対1の局面 アウトナンバーの局面 4.3
19.1
9.3 27.2
15.4
2対2の局面 速攻 リバウンドボール局面
全体 東女体大 対戦大学 攻撃回数(回) 54.0 ±2.8 54.0 ±3.5 54.0 ±2.6 得点(点) 23.2 ±2.3 24.0 ±2.0 22.0 ±2.6 警告(回) 2.5 ±0.8 2.7 ±0.8 2.3 ±1.2 退場(回) 1.8 ±2.1 3.0 ±2.6 0.7 ±0.6 攻撃成功率(%) 42.6 45.1 40.7
表1 3試合の評価
図1 シュートまで到達された割合(%)
VTRで退場局面を抽出すると、1対1、2対2が3回 ずつ、アウトナンバーの局面が1回、速攻局面が1回、
リバウンド局面が1回の9回であった。警告は、危 険な反則やスポーツマンシップに反する行為、退場 は、退場に相当するプレー、もしくは個人に対し、警 告2回目から2分間の退場となる。警告が、チームで 累積3枚まで、4枚目から、その選手が初めての警告 に相当するプレーであっても退場となる。
1対1の退場局面を図2に示した。このプレーは、 攻撃者と防御者の人数が対等のイーブンナンバー であるが、左右の防御者との間に2人分の空間があ り、攻撃側に意図とした戦術が見受けられる。また、 シューターに対し横からプッシング行為を行ってい る。このことで、防御者は、早めのマークをしなけれ ばならない局面であるが、対応が遅れていることが 伺える。防御方法は、ボールが空中に位置し、攻撃 プレーヤーがパスを受け取る瞬間に、決断力をもっ
てアタックすること、攻撃側の動く空間をさえぎる事で 攻撃者の選択肢をなくすことが挙げられる。
チーム警告が累積3枚後の1対1の攻撃者のフェ イント動作による退場局面を図3に示した。このプレー は、図2と同じイーブンナンバーで、左右の防御者と の間にひと1人空間がある。また、攻撃者との縦の空 間も空いていることで、攻撃者が戦術判断をしやすく、 フェイント動作も掛けやすい条件を防御者が作ってし まっていることが伺える。防御者は左右の防御者との 間が広いと判断した際は、縦の空間をつぶし、駆け 引きをすることにより、正面に対する防御が可能である と思われる。また、シュート確率の高いゴールエリア からのシュートを防ぐ必要性がある。それは、チーム 防御では、防御バランスの確保が重要な原則であり、 プレーヤー同士の協力のもとに行われ、1人の防御 によるミスが防御システムを崩壊させ、相手チームに
得点の機会を増やすことと述べられている6)。
図3 1対1の退場局面 攻撃者のフェイント動作に横移動
図2 1対1の退場局面 防御の判断ミスによる対応遅れ
サイドでの2対1の警告局面を図4に示した。この プレーは、映像で見る限り、左45プレーヤー(レフト バック)が視野に入ることで、内側への空間に走り込 むサイドプレーヤーへの対応が遅れ自由にプレーで きる状態で、防御者が身体やユニホームを捕まえて いる。これは、明らかに相手の身体を狙った違反で あり、サイドの防御者と内側の防御者との空間が広く、 防御のコンビネーションが整っていないことが浮き彫 りとなった。内側の防御者がポジショニングを下げ ることや前後のけん制を行うことで、攻撃者の左45プ レーヤー(レフトバック)のロング、ミドルシュートに 対応でき、かつサイド防御者が内側の防御者に声を かけ、内側の防御者まで正面で押し上げる防御がで きていれば、罰則は防げたと考えられる。
縦の2対2の退場局面を図5に示した。このプレー は、ゴールエリアラインとフリースローラインの間に 位置するポストプレーヤーとのコンビネーションプ レーで、バスケットボールでいうスクリーンプレーで ある。防御側は、防御間を取られないようにイーブ
ンナンバーを作る防御が望まれる。防御時のチェン ジするタイミングミスにより、攻撃側のパサーとポスト プレーヤーで防御者1人に対し2人の攻撃の形を作 られ、ポストプレーヤーの側面から胴体を掴み防御 している。防御方法は、マークの受け渡しをタイム ング良く行うことで、2人のコンビネーションに繋がり、 また、マークの距離が離れた場合は、別の防御方
法に切換える判断力と連携が必要である。
速攻時の退場局面を図6に示した。自チームの安 易な攻撃ミスが原因で、防御への移行時に得点の取 り易い速攻局面に持ち込まれている。高速で走る相 手に対しての違反であり、競技規則からも即座に退 場と明記されている。少しでも攻撃者を外側に追い込 んで、接触することなくシュートを打たせ、味方ゴー ルキーパーの取りやすい状況を作らなければならな いが、側面から胴体を掴み、外側へ押し出している。 これは、時間や得点差といった焦りや経験不足から
起こる判断ミスであると思われる。
防御やゴールキーパーにあたり、プレーイングエ 図5 縦の2対2の退場局面
図4 サイドでのアウトナンバーによる罰則
リア内にはね返ったリバウンド時の退場局面を図7 に示した。このプレーは、ゴールキーパーがセービ ングし、攻撃へ移行した際にボールがサイドエリア へ転がり、慌ててリバウンドのボール処理に向った 結果、対応が遅れ、攻撃側にボールを保持され、 後方から胴体をホールディングしている。速攻局面 と同様に味方ゴールキーパーが阻止したボールで あった事で、得点を許さないよう必死に防御した結果 と伺える。罰則の可能性のある、時間帯や得点差な どをプレーしながら常に把握しておく必要があり、失 点に罰則の2分間の退場となれば、対戦相手に有利 なゲーム展開の機会を与えることになる。
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.まとめ本研究では、関東学生ハンドボール秋季リーグ 戦3試合から自チームの採用した防御システムでの 失点局面、罰則時の局面について調査し、以下の 所見を得た。シュートまで到達された防御局面では、
1対1の局面、2対2の局面で約5割であったことで、 防御隊形時、左右に空間がある1対1の基本防御は、 攻撃者の選択肢を少なくすることが挙げられ、攻撃者 よりも先に正面に位置取りする。ボールが空中に位 置し、攻撃プレーヤーがパスを受け取る瞬間に、決 断力をもってアタックすること。攻撃側の動く空間をさ えぎる事で攻撃者の選択肢をなくすことを実践するこ とが挙げられた。また、防御時のコンビネーションミ スは、罰則を受ける可能性が高いことが明らかになっ た。
引用・参考文献
1) ヤーン・ケルン(1998).大修館.スポーツの戦 術入門.pp. 54.
2) 八尾泰寛,高野亮(2011).東京女子体育大学 第46号紀要.ハンドボールのゲーム分析―得 点パターンからみたゲームの流れについて―.
pp. 11 19.
3) 公益財団法人日本ハンドボール協会.ハンド 図7 リバウンド時の退場局面
図6 速攻時の退場局面
ボール競技規則2014.日本ハンドボール協会.
pp. 25.
4) 荒木祥生,池田拓人(2014).和歌山大学教育 学部第64集紀要.3対2アウトナンバーゲーム の練習がハンドボールにおける状況判断力に 及ぼす影響.pp. 1 8.
5) 公益財団法人日本ハンドボール協会.レフェ リーハンドブック(2014).
6) ヨアン・クンスト=ゲルマネスク著(1981).ベー スボールマガジン社.ハンドボールの技術と戦 術.pp. 251 263.