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X線分析の進歩38別刷

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試料灰化条件の検討

小寺浩史,上山智子,西岡 洋,村松康司

Ashing Conditions of Lead-Accumulating Blechnum niponicum

for X-Ray Fluorescence Spectrometry

Hirofumi KODERA, Tomoko UEYAMA, Hiroshi NISHIOKA and

Yasuji MURAMATSU

X線分析の進歩 第38集(2007)抜刷

Copyright ©

The Discussion Group of X-Ray Analysis, The Japan Society for Analytical Chemistry

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X線分析の進歩 38 249 Adv. X-Ray. Chem. Anal., Japan 38, pp.249-258 (2007)

鉛蓄積性植物シシガシラの蛍光 X 線定量分析における

試料灰化条件の検討

小寺浩史

*,#

,上山智子

**,†

,西岡 洋

*,**

,村松康司

*,**

Ashing Conditions of Lead-Accumulating Blechnum niponicum

for X-Ray Fluorescence Spectrometry

Hirofumi KODERA

*,#

, Tomoko UEYAMA

**,†

, Hiroshi NISHIOKA

*,**

and

Yasuji MURAMATSU

*,**

Graduate School of Engineering, University of Hyogo 2167 Shosha, Himeji, Hyogo 671-2201, Japan **Faculty of Engineering, Himeji Institute of Technology

2167 Shosha, Himeji, Hyogo 671-2201, Japan #corresponding author: [email protected]

present address: Hitachi ULSI Systems Co., Ltd. 5-22-1 Josuihon-cho, Kodaira-shi, Tokyo 187-8522, Japan

(Received 18 December 2006, Accepted 20 December 2006)

   To develop a quantitative analysis of heavy metals (Pb and Zn) in Blechnum

niponicum using fluorescent X-ray spectrometry (XRF), ashing conditions of the plant samples are evaluated with an electric furnace and a microwave furnace. In the electric furnace method, the ashing conditions are optimized as 700 o

C for 5 hr. Although the further optimization of the ashing conditions with the microwave fur-nace should be necessary, ashing with the microwave furfur-nace can be utilized for the sample ashing. It can be confirmed that ashing is a useful sample treatment for XRF measurements of Pb and Zn in Blechnum niponicum.

[Key words] XRF, Ashing, Blechnum niponicum, Lead, Zinc, Phytoremediation

 シシガシラに蓄積される重金属(Pb,Zn)の迅速かつ効率的な定量分析技術の確立をめざし, 蛍光 X 線分析における試料前処理として灰化に着目し,その灰化条件を検討した.電気マッフ

* 兵庫県立大学大学院工学研究科 兵庫県姫路市書写 2167 〒 671-2201  ** 姫路工業大学工学部 兵庫県姫路市書写 2167 〒 671-2201

# corresponding author: [email protected]

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ル炉による灰化では,X 線強度比が最大となる 700 ℃で 5 時間の加熱が最適条件であった.電 子レンジるつぼ炉による灰化では,最適条件の決定には更なる検討が必要であるが,7分加熱の 3回繰り返し処理で概ね灰化できることがわかった.以上から,シシガシラを用いたファイトレ メディエーションの実用化段階で必要となる迅速かつ効率的な重金属定量分析法として,灰化 を試料前処理とした蛍光 X 線分析が有効であることを明らかにした. [キーワード] 蛍光 X 線分析法,灰化,シシガシラ,鉛,亜鉛,ファイトレメディエー ション

1. はじめに

 特定の元素や化合物(化学物質)を選択的かつ高濃度に摂取・蓄積する特異な能力 を備えた植物を利用して土壌環境の修復を指向する技術はファイトレメディエーショ ン(phytoremediation)と称され,近年注目を浴びている1).このような特異能力を有 する植物はハイパーアキュームレータ(hyperaccumulator)と呼ばれ,特に重金属のハ イパーアキュームレータの探索が続けられている.一般に,カドミウムに対しては 100 mg kg-1 以上,コバルト,ニッケル,銅,鉛に対しては 1000 mg kg-1 以上,必須微 量元素のマンガン,亜鉛に対しては 10000 mg kg-1以上蓄積する植物がハイパーア キュームレータとして定義される2).一方,重金属による土壌汚染の実態としては,鉛 が特に重要であり,環境省の『平成15年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調 査・対策事例等に関する調査結果の概要』には,環境基準の超過事例数は重金属では 鉛が最も多いことが示されている3).そこで,我々は鉛に着目したファイトレメディ エーション技術の確立を目指し,特に鉱山由来の鉛による土壌汚染の低減化をはかる ため,高濃度の鉛を蓄積する植物を探索してきた.これまでに鉱山跡地に生育する 様々な植物の重金属蓄積性を調べたところ,シダ植物シシガシラ(Blechnum niponicum) が数千 mg kg-1もの高濃度で鉛を蓄積することを見出した4) .したがって,シシガシラ は十分に鉛のハイパーアキュームレータとして位置づけられる.さらに,シシガシラ は山地に生育する常緑性のシダであるので,土壌の肥沃度や気候などの環境にあまり 影響されずに生育するという特長がある.そのため,シシガシラは鉱山由来の鉛汚染 の低減をその場(原位置)で実施するという目的に叶った優れたハイパーアキューム レータである.  ファイトレメディエーションによる汚染除去を実施するには,対象地域ごとの様々 な植生条件に適合できるハイパーアキュームレータを見出し,その特性を把握してお くことが重要である.新規ハイパーアキュームレータ探索には数多くの植物試料につ

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X線分析の進歩 38 251 いての分析が必要となるため,植物中の重金属濃度定量の迅速化および効率化が必須 条件である.植物中の重金属を定量する場合,一般的には,洗浄,乾燥,酸分解など の操作を経た溶液試料として,原子吸光法(AAS)または誘導結合プラズマ原子発光 分析 / 質量分析法(ICP-AES/MS)などの分析法によるものが多い.しかし,通常は酸 分解の操作に 1.0 g の試料で約 30 時間かかり,分析操作を含めた全分析時間は約 40 時 間もかかる.加えて実験操作に不慣れな者では信頼性の高い結果が得られず,このよ うな方法は迅速かつ効率的な分析手法とは言い難い.そこで我々は,試料を前処理で 溶液にする必要がなく,固体試料で分析できる蛍光 X 線分析法(XRF)での定量分析 に着目し,これまでに前処理として試料粉砕を施す XRF 測定を試みた.その結果,粉 砕したシシガシラ試料の粒度をふるいで 212∼300 µm にそろえて簡便に XRF 測定す ることにより,鉛と亜鉛について概ね良好な定量分析結果を迅速に得ることができた5) . しかし,一般に重金属は植物中で均一に分布せず,特定の器官に偏在する例が見られ るため6),この手法では粉砕試料の粒度分布が分析結果に影響を及ぼす場合が想定さ れる.そこで本研究では,より信頼性の高い植物中重金属の XRF 分析を目指し,ふる い分けによる粒度分布がほぼ無視でき,かつ迅速な前処理法である灰化による植物試 料の調整を検討し , その最適条件を探った.

2. 実 験

2.1 試料灰化処理  植物試料は兵庫県の鉱山跡地と非鉱山跡地に生育するシシガシラである.採取した シシガシラを超音波洗浄し,乾燥後,ブレンダーにより粉砕した.この乾燥・粉砕試 料を電気マッフル炉と電子レンジるつぼ炉の 2 種類の炉で灰化した.電気マッフル炉 による灰化では,1.0 g の粉砕試料をるつぼに入れ,後述する最適条件として 700 ℃で 5時間加熱した.一方,電子レンジるつぼ炉では,炉内発熱体として塗布された SiC が マイクロ波を吸収し,その輻射熱によって,わずか 7 分で約 850 ℃に達する.そこで, 電子レンジるつぼ炉による灰化では,乾燥粉砕試料 0.80 g に対して 7 分間(到達温度 = 850 ℃)の灰化を 3 回繰り返し,計 21 分間の灰化処理を施した.灰化処理した粉末 試料 1.0 g に 0.55 g のホウ酸をバインダーとして添加し,700 kgf cm--2の圧力で加圧成 型してペレット状試料(20 mmφ× 2 mmT)とした.これを蛍光 X 線分析に供した.  ペレット試料作製の再現性を確認するため,電気マッフル炉(700 ℃,5 時間)と 電子レンジるつぼ炉(7 分間昇温×3回)で灰化した試料をそれぞれ5個ずつ作製し,そ の平均重量を測定した.その結果,電気マッフル炉で作製した試料は 0.618 ± 0.0016 g (相対標準偏差 RSD = 0.157 %),電子レンジるつぼ炉の試料は 0.650 ± 0.0376 g

(6)

(RSD=4.22 %)であった.電子レンジるつぼ炉での灰化は相対標準偏差がやや大きい 値を示したが,どちらの灰化法も試料作製の再現性に実用上問題はないと判断した.  定量分析に使う検量線の作成に必要な標準試料は,非鉱山地域で採取した鉛(Pb)と 亜鉛(Zn)をほとんど含まないシシガシラを灰化処理して作製した.具体的には,乾 燥・粉砕試料 1.0 g に対して,Table 1 に示す量の Pb および Zn 標準溶液(1000 mg L-1 を添加して十分に混合したものを乾燥させた.そして各試料 1.0 g を電気マッフル炉 (700 ℃,5 時間)または電子レンジるつぼ炉(7 分間昇温×3回)で灰化し,0.55 g のホウ酸をバインダーとして添加後,ペレット状試料に成型して蛍光X線測定を行っ た.さらに,乾燥粉砕試料の一部を硝酸と塩酸で湿式分解後,原子吸光分析法により Pbと Zn を定量した.得られた検量線を Fig.1 に示す.両元素について,原点をほぼ通 る直線が得られたことから,灰化による両元素の損失がないことが確認できた. 2.2 蛍光 X 線測定  各灰化試料について Zn Kα および Pb Lβ 蛍光 X 線強度を波長分散型一結晶蛍光 X Standard sample # 1 2 3 4 5 Pb /µg 0.2 0.5 1.0 2.0 3.0 (concentration / mg kg-1 ) (200) (500) (1000) (2000) (3000) Zn /µg 0.1 0.2 0.5 1.0 1.5 (concentration / mg kg-1 ) (100) (200) (500) (1000) (1500)

Table 1     Quantity of lead and zinc which are added to the 1.0 g dried samples and the concentrations

in the samples.

Fig.1 Calibration curve for determination of Pb (left panel) and Zn (right) concentrations in ashed

plant samples using the atomic absorption spectrometry (AAS).

y = 3.0㬍10-5 x + 5.0㬍10-3 R2 = 0.9842 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0 1000 2000 3000 4000 absorbance Pb concentration / mg kg--1 Zn concentration / mg kg--1 y = 6.0㬍10-4 x + 0.20 R2 = 0.9357 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0 500 1000 1500 2000 㬍 㬍

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X線分析の進歩 38 253 線装置(Rigaku,RIX2000)で測定した.分光結晶は LiF(200)であり,検出器はシン チレーションカウンターである.Pb の測定において強度の高い Pb Lα 線ではなく Pb Lβ 線を測定した理由は,モエジマシダ(Pteris vittata)のようにシダ類はしばしばヒ 素を蓄積するので7) ,As Kα 線と重なる Pb Lα 線を避けたためである.なお,蛍光 X 線測定は,着目する Pb と Zn の蛍光 X 線ピーク位置を中心として高低 0.6°ずつ離れた 角度位置を結ぶ領域をバックグラウンドとし,そのバックグラウンド強度をピークの 全体強度から差し引く「強度測定(INT)」モードで行った.この領域では植物中に共 存する他の重金属元素の蛍光X線ピークは高次回折光も含めて存在しない.測定条件 を Table 2 にまとめて示す.

3. 結果と考察

3.1 電気マッフル炉による灰化温度と灰化時間の検討  電気マッフル炉による灰化温度と灰化時間の条件最適化を検討した.灰化温度を 300, 500, 600, 650, 700, 750, 800, 900℃と変化させ,灰化時間はいずれも 1 時間に設定 した.灰化温度に対する Pb Lβ 線と Zn Kα 線強度を Fig.2 に示す.Pb は 700 ℃まで, Znは 750 ℃まで温度上昇にともなって X 線強度が増大した.これは温度上昇にした がって試料中有機物の揮発量が増加し,見かけの重金属濃度が増大したためであると 考えられる.しかし,それ以上の温度では X 線強度は減少した.これは,750℃以上

X-ray tube Rh target

Tube voltage 50 kV

Tube current 50 mA

Analyzing crystal LiF(200)

Atmosphere vacuum (0.1 Torr)

Collimator 10 mm diameter

Sample spin on

Element Pb Zn

Spectrum Lβ Kα

Peak position 28.24 deg (40 sec) 41.78 deg (40 sec)

Background point 1 27.64 deg (10 sec) 41.18 deg (10 sec)

Background point 2 28.84 deg (10 sec) 42.38 deg (10 sec)

Table 2 Measurement conditions of X-ray fluorescence spectrometry in the regions of Zn Kα and

(8)

の温度では試料中の Pb と Zn が揮発したためと考えられる.したがって,電気マッフ ル炉による灰化の最適温度は 700 ℃に設定した.  次に,灰化時間について検討した.上記のように灰化温度を 700 ℃に設定し,それ ぞれの試料について 1,3,5,7,10 時間処理した灰化試料の X 線強度を Fig.3 に示す. Pb,Zn ともに 5 時間で X 線強度が最大値を示し,それ以降は減少した.したがって, 灰化の最適時間は 5 時間に設定した. 3.2 検量線による亜鉛と鉛の定量  標準試料を用いて蛍光 X 線測定で求めた Pb と Zn の検量線を Fig.4 に示す.なお,同 0 500 1000 1500 2000 2500 0 200 400 600 800 1000 ZnKα PbLβ Ashing temperature / ͠ X-ray intensity / cps

Fig.3 Ashing-time-dependence on the fluorescent X-ray intensity (Zn Kα, Pb Lβ ) of the ashed plant

samples. Ashing temperature was fixed at 700 ℃.

Fig.2 Ashing-temperature-dependence on the fluorescent X-ray intensity (Zn Kα, Pb Lβ ) of the

ashed plant samples. Ashing time is fixed at 1 hr.

Ashing time / hour

X-ray intensity / cps 0 500 1000 1500 2000 2500 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ZnKα PbLβ

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X線分析の進歩 38 255 濃度の試料について既報5) と比較した結果, Pb では約 3 倍,Zn では約 2 倍の蛍光 X 線強度が得られた.灰化によって,試料中の Pb と Zn の密度が高まったためと考えら れる.両元素において,電気マッフル炉で灰化処理した場合に比べて電子レンジるつ ぼ炉の方が検量線の傾きが若干小さくなるものの,両処理法ともに,検量線はほぼ原 点を通る直線となった.したがって,数千 mg kg-1の金属濃度であればペレット試料 のマトリクス効果は現れず,この検量線を用いて Pb と Zn の蛍光 X 線定量分析が可能 となることが確かめられた.電子レンジるつぼ炉で検量線の傾きが小さくなったのは, 試料が完全に灰化しきっていないためと考えられる.つまり,電子レンジるつぼ炉で は灰化温度の昇温制御が困難であり,7 分の灰化処理を 3 回繰り返したことが必ずし も最適条件とは言えないと思われる.  鉱山跡地で採取した 5 種類のシシガシラについて(Table 3 および 4 の sample 1-5), 本検量線を用いたPbとZnの定量分析結果をTable 3とTable 4に示す.前者は電気マッ フル炉で灰化処理した場合の結果であり,後者は電子レンジるつぼ炉で処理した結果 である.なお,原子吸光分析の検量線(Fig. 1)から求めた濃度も示し,XRF での定量 値に対する AAS との相対誤差(R. E.),| (XRF)−(AAS) | / (XRF)×100 %,も併せて 示す.いずれの元素に対しても,数百 mg kg-1レベルの低濃度試料では,概ね 10 % 以 上の大きな相対誤差を示すが,千 mg kg-1 を超える比較的高濃度の試料では,相対誤 差が概ね 10% 以下であり,XRF と AAS との定量結果がほぼ一致することを確認でき た.また,この傾向は,電気マッフル炉と電子レンジるつぼ炉による灰化処理の違い にあまり依存しない.したがって,比較的高い濃度の Pb と Zn を蓄積したシシガシラ に対しては,灰化処理を行うことによって十分な精度で蛍光 X 線による Pb と Zn の定 y = 0.81x + 31.5 R2 = 0.9983 y = 0.72x + 19.3 R2 = 0.9966 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 0 1000 2000 3000 4000 E.F. M.W. y = 0.81x + 154 R2 = 0.9502 y = 0.92x + 196 R2 = 0.9457 0 500 1000 1500 2000 0 500 1000 1500 2000 E.F. M.W. Pb concentration / mg kg-1 X-ray intensity / cps Zn concentration / mg kg-1

Fig.4 Calibration curve for determination of Pb (left panel) and Zn (right) concentrations in ashed

plant samples using the X-ray fluorescence spectrometry. The samples were ashed by an electric furnace (EF) and a microwave (MW) methods.

(10)

量が可能であることが明らかになった.なお,非鉱山地域で採取したシシガシラでは (Table 3 および 4 の Sample 6),電気マッフル炉に比べて電子レンジるつぼ炉で灰化 した場合の方が若干検出濃度値が高いものの,Pb と Zn の濃度は鉱山地域で採取した シシガシラよりも 1 ∼ 2 桁低濃度であり,確かに鉱山地域で生育したシシガシラが多 くの重金属を蓄積することが確認できる.  Table 3 の XRF による定量値をもとにしてプロットした Pb と Zn の相関を Fig.5 に示 す.鉱山跡地で採取したシシガシラは数千 mg kg-1の Pb,および数百∼千 mg kg-1 Znを含有しているが,両元素の含有量には相関が認められなかった.したがって,シ シガシラにおけるPbの蓄積メカニズムはZnの蓄積メカニズムと直結しないことが示 唆された.  一般に,AAS による定量分析では,植物試料の前処理として酸分解処理が必要 であり,この前処理と AAS 測定を合わせると約 40 時間もの時間がかかる.一方, Pb concentration / mg kg-1 Zn concentration / mg kg-1 Sample #

XRF AAS R.E. / % XRF AAS R.E./ %

1 2 3 4 5 6* 907 1998 2785 1922 3723 58.1 757 2081 2757 2214 3773 --- 17 4.2 1.0 15 1.3 --- 1030 790 340 880 890 30.3 1115 835 140 789 824 --- 8.3 5.7 59 10.3 7.4 --- *: sample picked at the non-mining area

Table 4 Quantitative results of lead and zinc in Blechnum niponicum samples ashed with a

microwave method. Pb concentration / mg kg-1 Zn concentration / mg kg-1 Sample # XRF AAS R.E. / % XRF AAS R.E./ % 1 2 3 4 5 6* 1007 1889 2672 2185 3741 134.1 757 2081 2757 2214 3773 --- 25 10 3.2 1.3 0.8 --- 1038 726 337 868 881 92.5 1115 835 140 789 824 --- 7.4 15 58 9.1 6.5 --- *: sample picked at the non-mining area

Table 3 Quantitative results of lead and zinc in Blechnum niponicum samples ashed with an

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X線分析の進歩 38 257 上記のように,XRFによる定量では,前処理の灰化処理に電気マッフル炉で5時間, 電子レンジるつぼ炉で数十分しかかからず,XRF 測定を合わせた全分析時間を約 10∼ 15 時間に短縮できる.したがって,灰化処理を前処理とする XRF 測定により, シシガシラに蓄積された重金属の迅速かつ効率的な定量分析ができることを実証で きた.

4. まとめ

 シシガシラに蓄積される重金属(Pb, Zn)の迅速かつ効率的な定量分析技術の確立 を目指し,蛍光 X 線分析における試料前処理として灰化に着目して,その灰化条件を 検討した.加熱手段として,電気マッフル炉および電子レンジるつぼ炉による二通り の灰化方法を用いた.電気マッフル炉による灰化では,試料 1.0 g に対して 700 ℃,5 時間の加熱が最適灰化条件であることを明らかにした.一方,電子レンジるつぼ炉で は僅か 7 分で約 850℃に達するため,便宜的に 7 分の加熱を 3 回繰り返した.しかし, 電子レンジるつぼ炉での灰化試料は,電気マッフル炉の場合に比べて,試料の重量変 化がいささか大きいことと,Pb と Zn に対する検量線の傾きが若干小さいことから, 試料が完全には灰化されていないと考えられる.しかしながら,電子レンジるつぼ炉 による灰化は,電気マッフル炉よりも大幅に処理時間を短縮できる可能性が高いこと から,電子レンジるつぼ炉を用いた灰化条件のさらなる検討が必要である.  XRF分析におけるPb とZnの検量線を作成し,これを用いて鉱山跡地で採取したシ シガシラの灰化試料に含まれる Pb と Zn の濃度を定量した.この定量値と AAS から 求めた値を比較した結果,千 mg / kg-1を超える比較的高濃度の試料では,10 % 以下の 相対誤差で XRF と AAS との定量結果が一致した.したがって,比較的高い濃度で Pb 0 1000 2000 3000 4000 5000 0 500 1000 1500 Zn concentration / mg kg-1 Pb concen tration / mg kg -1

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および Zn を蓄積したシシガシラに対して,試料灰化処理を施した XRF 分析により, 実用的には十分な精度で Pb と Znの定量が可能であることが明らかになった.以上か ら,シシガシラを用いたファイトレメディエーションの実用化段階で必要となる迅速 かつ効率的な定量分析には,灰化を試料前処理とした蛍光X線分析法が有効であるこ とを示した. 参考文献

1) S.Fiorenza, C.L.Oubre, C.H.Ward 著 , 池上雄二 , 角田英男 訳:「ファイトレメディエーショ ン 植物による土壌汚染の修復」,(2001),(シュプリンガー・フェアラーク東京).

2) Mitch M. Lasat: J. Environ. Qual., 31, 109-120 (2002).

3) 環境省ホームページ: http://www.env.go.jp/water/report/h17-09/index.html (2006 年 12 月現 在).

4) H.Nishioka, H.Kodera:“Metal accumulating ability of Blechnum niponicum” International Chemical Congress of Pacific Basin Societies, PACIFICHEM 2005, Honolulu, Hawaii, Dec.15-20,Program

number 433 (2005), (Abstract in CD-ROM).

5) 小寺浩史,西岡 洋,村松康司:X 線分析の進歩,37,65-74 (2006).

6) 寺田靖子:分光研究,54, 176-177 (2005).

Table 1          Quantity of lead and zinc which are added to the 1.0 g dried samples and the concentrations
Table 2  Measurement conditions of X-ray fluorescence spectrometry in the regions of Zn K α and
Table 4  Quantitative results of lead and zinc in Blechnum niponicum samples ashed with a

参照

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