父母による親子関係の認知 : 養育態度・行動の同 調性について
その他のタイトル Cognition of parent‑child relationship by parents
著者 辻岡 美延, 山本 吉廣
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 8
号 1
ページ 157‑170
発行年 1977‑01‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/00023139
一養育態度・行動の同調性について—
岡 本 辻 山
延 廣 美 吉
(問題〕
そもそも親子関係の解明には,家庭における父母がおのれの子どもに対して示す養育行動や養 育態度をその子ども自身がいかに認知し,また子どもが父や母に示す行動を父自身あるいは母自 身がいかに認知するかという親子間の相互認知構造の解明が必要となる。しかし,このような親 子関係の認知は,一方,両親間の親子関係への相互認知の構造によっても深く影轡されるもので あり,このためには,父・母・ 子からなる一つのトリオ関係を考慮しなければならない。もっと も,子どもの数は一人とは限らないから,実際の親子関係は,きょうだい関係その他をも含めた より複雑な家族成員間のフィードバック関係を実際の基盤として成立することはいうまでもな い。しかし,問題解明の方法論の第一歩として,まず親子関係の親と子の間における相互認知構 造(辻岡・ 山本
1977)をあきらかにし, ついで, 本論文におけるような子どもに対する父母相 互の認知構造をあきらかにするのが最も生産的な方法と考えられる。
①
父~====. 母 父
~~
⇒ ↓ t
子 子
② 母
H 子 子
母 ー
父 \
③ 子 母 / 父 \
`
④
Fig. 1
親子関係研究(点線は夫婦関係を示す)
「親子関係の相互認知」なる先の研究(辻岡・山本
1977)は
Fig.1の①と③の研究であり,
今回の研究発表は⑧の分析に該当する。これらの研究を成功させるために,われわれはすでにい くつかのその基礎となる研究を続けて来た。
すなわち,筆者らは
E.S. Schaefer (1965a)の
Children'sReports of Parental Behavior Inventory(以後
CR‑PBIとよぶ)の
Fortn‑1の因子分析(辻岡・ 山本
1975a)および
Form‑II
の因子分析(辻岡・山本
1975b,山本・辻岡
1975)を通じて,子どもによって認知される
「親の子どもに対する態度・行動」の次元としては 4個の源泉的特性が存在し,それらの一次因 子は,「情緒的支持」, 「同一化」, 「統制」および「自律性」と名づけられる 4因子であり,これ
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8巻第
1号
らの因子に対して父一息子,父ー娘,母一息子,母ー娘の
4種のいずれの関係においても転移可能 性を保持するような質問紙法の尺度が計画され.因子的真実性の原理による項目分析により「親 子関係診断尺度
EICA」なる
4つの尺度からなる質問紙法が考案された(辻岡・山本
1976a)。 そして.これによって親子関係診断のための客観的な分類原理が考案され.子どもの側からの親 子関係についての父母それぞれの単独類型と父母の組合せ類型が親子関係研究のために提案され た(辻岡・山本
1976b,山本・辻岡
1976,山本
1976)。
ところでこのような研究方向に関して,筆者らの研究に先立ち,すでに小嶋氏は,
CR‑PBIの
Form‑IIの日本語版と,氏がこれに準拠して作成された親用の
Parents'Reportsof Parental Behavior Inventory (PR‑PBI)を中学生とその父母の
3者それぞれに施行し. 男子
150組 . 女子
153組の資料を得.その分析結果を発表されている(小嶋
1969, 1975)。この
2つの論文に おける氏の主たる関心は,
Schaefer (1965b)の見出している, 1 .
Acceptance vs. Rejection, 2. Psychological Autonomy vs. Psychological Control, 3. Firm Control vs. Lax Con・ trolとよばれる
3因子が小嶋氏の邦訳版においても. 1 . 受容一拒否,
2.心理的統制,
3.ゆるい 統制の 3因子として,親と子別々のいずれの分析においても共通して出現することに関し(小嶋
1967, 1968a, 1968b),これら抽出された因子は,親子関係そのものの次元なのか. それとも被 験者の質問項目に対する単なる反応パターン,すなわち被験者の意味構造の次元なのかを検討す ることであった。氏はこの解明のためにバッテリー間因子分析
(Tucker,L. R. 1958)を適用 し.父と息子,母と息子,父と娘,母と娘の 4 群においても親子に共通して出現する 3 因子は.
機能的にも共通性をもつものであることを検証しようとされた
cしかし.小嶋の
3因子解は. 共通性
(communality)を用いない主成分解に続く
Varimax解であり,筆者らの見出した第
4番目の因子である「同一化」の次元が見落されている。また,
このバッテリー間因子分析で見出された親子共通の因子は.親と子の
2者の報告から構成された テスト・バッテリーの全体空間から独立に取り上げられた部分空間内における共通次元であっ て.方法論的に,全体空間内での親の側の次元が子どもの側の次元といかなる共変関係を有して いるかを直接的に説明することを困難にしている。
そこで,筆者らは.小嶋氏より,氏の絶大なる厚意によって貴重な原資料の提供を受け.この 資料を親と子の各
18尺度合計
36尺度間の相関行列としてこれを求め.その相関行列を共通因子分 析し, 7因子を抽出したが. これら 7因子は親と子において共通の次元として出現した同一化
(Identification)の因子と,親と子においてそれぞれ . o
1350. 439の相関を有しつつもそれぞ れ一次独立的
(linearlyindependent)に出現した情緒的支持
(Emotional Suppot),統制
(Control)および自律性
(Autonomy)の因子であることが明らかにされた(辻岡・山本
1977)。
この
7因子のうち.同一化の因子は,まさに親と子を結びつけている胴帯であり.他人同志の人 間関係にはみられない親子の一体感をあらわすものであることが明らかにされた。
先にも述べたとおり親子関係は父と母と子の 3 者間に繰り広げられるダイナミックな関係であ
るから,親子関係の研究のためには,親から子への一方向的な関係のみをとらえるだけでは不十 分であり,子どもから親への行動をも取り上げる必要があることは言うまでもない。また,父親 と母親の子どもに対する養育行動は, 相互に関連し合っていることが明白であるにもかかわら ず,従来の研究はややもすれば父と母を独立に取り上げ,養育行動の類型による比較は行われて も,相互連関の様態を解明しようとする研究は少なかった。すなわち,父と母との行動が同調的 であるのかあるいは対立的であるのかという差異は子どもの認知・態度・行動にいかなる影轡を 与えるのかという問題は今なお不明なままであり,この問題の科学的な解明が待ち望まれている といえるであろう。われわれはこの問題解明の基礎的研究として, 次のような分析をこころみ た 。
筆者らは,小嶋氏の原資料を氏とは観点を変え,同一の子どもに対する父母の行動の相互連関 の様態を探ることとし,次のような 2 つの分析を行うことを計画した。 1 つは ( 1 ) 父親と母親の報 告間の分析であり
(Fig.1の⑧),もう
1つは ( 2 ) 子どもの父親と母親に関する報告間の分析であ る
(Fig.1の④)。紙面の都合上,本論文においては,父親と母親による自己の子どもに対する 態度・行動の報告間の相互連関構造についての分析結果を子どもが息子と娘の
2つの場合に分け て報告することにし. ( 2 ) の分析結果の報告は別の論文に譲ることにしたい。
〔方法〕
( 1 ) 被 験 者
小嶋氏の調査における被験者は"息子とその父母 のトリオ
15Dt且,"娘とその父母 のトリオ
153組で,被験者の平均年令は息子の組では子ども
13.4才,父
45.1オ,母
40.6才,娘の組では子
ども
13.3才,父
45.3オ,母
40.5オであり,その年令構成はほぼ同一であった(小嶋
1969, 1975)。 ( 2 ) 尺 度 名
筆者らは,
Schaeferが
1965年に発表した
26尺度・
260項目からなる
CR‑PBIを
Form‑I,そ の改訂版で
18尺度・
192項目からなるものを
Form‑IIと便宜的に区別しているが(辻岡・山本
1975b),小嶋氏の資料は後者の
Form‑IIである。この
Form‑IIの
18尺度のうち
6尺度は
16項 目,残りの
12尺度は
8項目で全項目は
192項目となっている。ここでは,本論文に必要な尺度名 と尺度略号のみを掲載するに留めるが,各尺度名とその尺度に含まれる質問項目の子ども用と親 用については, 小嶋氏がすでに公表されているので(小嶋
1969),そちらを参照されたい。な お , 尺度の配列順序はわれわれの分析結果
Gt岡・山本
1975b)に従って組み直してある。ま
た,尺度番号の右肩に+が付されている尺度は
16項目から構成されていることを示している。
い 受 容
(Acceptance: AC)が積極的関与
(Positiveinvolvement : Pl)か個性化の受容
(Accept;:inceof individuation : AI)~-159-
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4子供中心主義 (Child•centeredness
: CH)5
所有欲
(Possessiveness: PO) 6干渉的
(Intrusiveness: IN)7
十非好意的離反
(Hostiledetachment : HD) 8一貫しないしつけ
(Inconsistentdiscipline : IC) 9関係の撤回
(Withdrawalof relations : WR)町 拒 否
(Rejection: RE)11
強制
(Enforcement: EN)12
罪悪感による統制
(Controlthrough guilt : CG) 13統制
(Control: CO)1
が 敵 対 的 統 制
(Hostilecontrol : HC)15
永続的不安感情の押しつけ
(Instillingpersistent anxiety : IP) 16非強制
(Nonenforcement: NO)17
甘いしつけ
(Laxdiscipline : LD) 18自由放任
(Extremeautonomy : EA)( 3 ) 分 析 法
①父親の子どもに対する行動の報告
(18尺度)と母親の子どもに対する行動の報告
(18尺度)
の合計 3 6 尺度について,子どもが息子と娘の 2 群別々に,尺度得点平均,標準偏差,積率相関を 求め,以下の分析を行った。
③この相関行列
(R)の固有値,固有ベクトルをハウスホルダー法により求め,
ScreeGraph, Scree Test(辻岡・東村
1975),および
StrataGraphの結果から抽出因子数を息子と娘のグ ループ共に 7個と決定した。
③ハウスホルダー法を用い.主因子法の繰り返し法で共通性の推定を行った。
④上で求めた共通性の推定値を相関行列
(R)の対角要素に入れ, この主因子解を
VarimaX回転し,さらに
Promax法で斜交回転を行った。
⑥上で求まった
Promax解を
Potoplot法で回転し,単純構造化を計った。最終解では,一 次因子パクーン行列
(primaryfactor pattern matrix, V:r,),一次因子構造行列
(primary factor structure matrix, V:,.),準拠パクーン行列
(referencepattern matrix, V,.J)),準拠 構造行列
(referencestructure matrix,V , テ . ) . 一次因子間相関行列
(primaryfactor corre‑ lation matrix, C:r),準拠軸間相関行列
(referenceaxis correlation matrix, Cr)等の斜交 解を算出した。
⑥上で算出した一次因子間相関行列
(C:,)を次元数を 4個とし, 主成分分析の後,
Varimax回転し.さらに
Promax法で斜交回転を行い.二次因子分析を実施した。
⑦上で求まった
Promax解を
Rotoplot法で回転し,単純構造化を計り,最終解を得た。
〔結果)
( 1 ) 一次因子分析
R一次因子準拠構造間の一致性係数
Table 1‑1
と
Table1‑2 IC., Rotoplot最終解の準拠構造行列
(Yr.)を掲げた。この息子と娘の
2群それぞれの別々の分析で得られた因子間の対応をみるため,因子の一致性係数
(coefficient of factor congruence)を
Table2 , Table 3のように
2通りの方法で求めた。
Table 2
は.父と母の報告の
36尺度に対する準拠構造値
(Yra)すべてを用いて算出した息子 と娘の
2群間の一致性係数であって,各々対応する因子の一致性係数をゴチックで示した。これ をみると.息子と娘の
2群間の父親の情緒的支持の因子 (ES‑F) では . o
952,母親の情緒的
支持の因子 (ES‑M) では . o
918,父親の統制の因子 (CO‑F) では . o
944,母親の統制の
因子 (CO‑M) では
0.973,父親の自律性の因子 (AU‑F) では . o
907,母親の自律性の因 子 (AU‑M) では
0.839の極めて高い一致性係数が得られている。しかし,第
7番目の因子間 では一
0.288の値であり,これは息子の組と娘の組で得られた第
7番目の因子は,それぞれ異な
った構造を有していることを示している
(Table2参照)。
Table 1‑1
準拠構造行列(息子の組)
ES‑F ES‑M CO‑F CO‑M AU‑F AU‑M AL‑S h' 1 AC 672 ‑025 ‑017 059 077 006 029 815 2 Pl 558 049 140 016 005 037 051 705 3 A I 505 ‑023 ‑064 ‑oos・ 087 ‑016 100 508 父'4 CH 525 066 156 ‑049 046 021 ‑095 643 5 PO 239 055 534 ‑013 ‑028 079 ‑081 623 6 IN 459 ‑026 366 008 ‑199 070 042 673 親 7 HD ‑300 003 384 033 361 024 ‑074 626 8 IC ‑126 021 370 066 337 ‑033 ‑173 503
の
9 WR ‑124 028 519 009 260 074 ‑008 570 10 RE ‑341 073 506 023 377 011 ‑001 744 11 EN 033 ‑049 512 043 ‑114 153 418 722 報 12 CG 141 006 613 ‑012 053 066 060 694 13 co 291 ‑018 453 061 ‑180 031 174 695 14 HC 215ー
126 561 048 ‑162 140 044 732 告 15 IP 181 ・047 551 ‑007 ‑039 006 141 641 16 NO ‑047 026 ‑125 090 676 ‑083 ‑150 670 17 LD 091 ‑023 093 012 619 052 051 578 18 EA 021 ‑054 ‑013 ‑070 595 142 197 608 19 AC* 104 488 ‑026 049 ‑004 ‑003 126 680 20 PI・
126 447 015 138 ‑023 012 051 57621 A I
・
009 429 ‑057 ‑063 ‑053 106 160 530母 22en• ‑049 592 080 024 040 ‑042 ‑lrn 567
23 po• ‑002 286 ‑001 464 ・049 ‑054 ‑093 474 24 IN
・
095 296 047 362 ‑080 ‑193 031 540鐵 25 HD* ‑029 ‑231 012 442 063 141 ‑06i 638 26 I c• 053 ‑124 044 341 007 210 ‑252 515
' l : 1
W R・
158 ・248 ‑038 427 ‑033 282 ‑020 485の
28 RE・
‑058 ‑176 ‑120 587 046 175 ‑011 721 29 EN・
mo ‑034 058 471 065 ・043 552 733帽 aocc• 112 ‑010 053 545 027 006 rr,4 569
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